(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、通信システム、送信方法、受信方法、制御回路および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04L 1/06 20060101AFI20250609BHJP
【FI】
H04L1/06 180
(21)【出願番号】P 2024562354
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2023003657
(87)【国際公開番号】W WO2024161654
(87)【国際公開日】2024-08-08
【審査請求日】2024-10-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山口 歌奈子
(72)【発明者】
【氏名】中島 昭範
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-191645(JP,A)
【文献】特表2009-521827(JP,A)
【文献】国際公開第2020/144828(WO,A1)
【文献】HO, Paul et al.,A Space-time Block Code Using Orthogonal Frequency-Shift-Keying,IEEE International Conference on Communications, 2005. ICC 2005. 2005,IEEE,2005年08月15日,pp.2896-2900,https://ieeexplore.ieee.org/document/1494908,DOI: 10.1109/ICC.2005.1494908 Print ISBN:0-7803-8938-7
【文献】HORI, Yuta et al.,A New Transmit Diversity Technique for FSK Exploiting Its Orthogonality,IEEE Communications Letters (Volume: 25, Issue: 9, September 2021),IEEE,2021年06月16日,pp.3094-3098,https://ieeexplore.ieee.org/document/9456967,DOI: 10.1109/LCOMM.2021.3089709
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/06
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナと、
周波数偏移変調により変調信号を生成する変調部と、
前記周波数偏移変調により変調された前記変調信号の周波数キャリアにおいて、周波数領域で隣り合う前記周波数キャリアで異なる時空間ブロック符号則が適用されるように、前記変調信号の値に応じて
前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択部と、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
複数の送信アンテナと、
変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号の値に応じて時空間ブロック符号則を選択する符号則選択部と、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化部と、
を備え、
前記変調部は、
入力された送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する拡散ビット生成部と、
シフト直交振幅変調方式により前記拡散ビット系列から前記変調信号を生成するシフト直交振幅変調部と、
を有し、
前記変調信号は、0番目からn-1番目までのnサンプルで構成され、
前記符号則選択部は、前記変調信号のn/2番目のサンプルの値に基づいて、前記時空間ブロック符号則を選択することを特徴とする送信装置。
【請求項3】
前記符号則選択部は、周波数領域で隣り合う前記周波数キャリアで負符号の位置が異なる前記時空間ブロック符号則が適用されるように、前記時空間ブロック符号則を選択することを特徴とする請求項
1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記拡散ビット生成部は、前記シフト直交振幅変調部が使用する変調方式と、予め定められた拡散率とに基づいて、前記送信ビット系列から前記拡散ビット系列を生成することを特徴とする請求項
2に記載の送信装置。
【請求項5】
前記変調信号は、0番目からn-1番目までのnサンプルで構成され、
前記符号化部は、前記変調信号の同一シンボル内で間にn/2-1個のサンプルを挟んで配置されたサンプルの組み合わせを用いて前記時空間ブロック符号化を行うことを特徴とする請求項
1または2に記載の送信装置。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の送信装置により送信された送信信号を、受信信号として受信する受信装置であって、
前記受信信号に対して、前記送信装置において使用した前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択部と、
選択された前記時空間ブロック符号則を用いて、前記受信信号に対して時空間ブロック復号を行う復号部と、
前記復号部による復号結果に対して復調を行う復調部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項7】
請求項1
または2に記載の送信装置と、
前記送信装置により送信された送信信号を、受信信号として受信する受信装置と、
を備え、
前記受信装置は、
前記受信信号に対して、前記送信装置において使用した前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択部と、
選択された前記時空間ブロック符号則を用いて、前記受信信号に対して時空間ブロック復号を行う復号部と、
前記復号部による復号結果に対して復調を行う復調部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項8】
複数の送信アンテナを備える送信装置が、
周波数偏移変調により変調信号を生成する変調ステップと、
前記周波数偏移変調により変調された前記変調信号の周波数キャリアにおいて、周波数領域で隣り合う前記周波数キャリアで異なる時空間ブロック符号則が適用されるように、前記変調信号の値に応じて
前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化ステップと、
を含むことを特徴とする送信方法。
【請求項9】
複数の送信アンテナを備える送信装置が、
変調信号を生成する変調ステップと、
前記変調信号の値に応じて時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化ステップと、
を含み、
前記変調ステップは、
入力された送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する拡散ステップと、
シフト直交振幅変調方式により前記拡散ビット系列から前記変調信号を生成するシフト直交振幅変調ステップと、
を含み、
前記変調信号は、0番目からn-1番目までのnサンプルで構成され、
前記符号則選択ステップにおいて、
前記送信装置は、前記変調信号のn/2番目のサンプルの値に基づいて、前記時空間ブロック符号則を選択することを特徴とする送信方法。
【請求項10】
前記符号則選択ステップにおいて、
前記送信装置は、周波数領域で隣り合う前記周波数キャリアで負符号の位置が異なる前記時空間ブロック符号則が適用されるように、前記時空間ブロック符号則を選択することを特徴とする請求項
8に記載の送信方法。
【請求項11】
前記拡散ステップにおいて、
前記送信装置は、前記シフト直交振幅変調ステップにおいて使用される変調方式と、予め定められた拡散率とに基づいて、前記送信ビット系列から前記拡散ビット系列を生成することを特徴とする請求項
9に記載の送信方法。
【請求項12】
前記変調信号は、0番目からn-1番目までのnサンプルで構成され、
前記符号化ステップにおいて、前記送信装置は、前記変調信号の同一シンボル内で間にn/2-1個のサンプルを挟んで配置されたサンプルの組み合わせを用いて前記時空間ブロック符号化を行うことを特徴とする請求項
8または9に記載の送信方法。
【請求項13】
請求項
8または9に記載の送信方法により送信された送信信号を、受信信号として受信する受信装置が、
前記受信信号に対して、前記送信方法において使用された前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
選択された前記時空間ブロック符号則を用いて、前記受信信号に対して時空間ブロック復号を行う復号ステップと、
前記復号ステップによる復号結果に対して復調を行う復調ステップと、
を含むことを特徴とする受信方法。
【請求項14】
複数の送信アンテナを有する送信装置を制御する制御回路であって、
周波数偏移変調により変調信号を生成する変調ステップと、
前記周波数偏移変調により変調された前記変調信号の周波数キャリアにおいて、周波数領域で隣り合う前記周波数キャリアで異なる時空間ブロック符号則が適用されるように、前記変調信号の値に応じて
前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化ステップと、
を前記送信装置に実行させることを特徴とする制御回路。
【請求項15】
複数の送信アンテナを有する送信装置を制御する制御回路であって、
変調信号を生成する変調ステップと、
前記変調信号の値に応じて時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化ステップと、
を前記送信装置に実行させ、
前記変調ステップは、
入力された送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する拡散ステップと、
シフト直交振幅変調方式により前記拡散ビット系列から前記変調信号を生成するシフト直交振幅変調ステップと、
を含み、
前記変調信号は、0番目からn-1番目までのnサンプルで構成され、
前記符号則選択ステップにおいて、
前記変調信号のn/2番目のサンプルの値に基づいて、前記時空間ブロック符号則を選択することを特徴とする制御回路。
【請求項16】
複数の送信アンテナを有する送信装置を制御するプログラムを記憶した記憶媒体において、該プログラムは、
周波数偏移変調により変調信号を生成する変調ステップと、
前記周波数偏移変調により変調された前記変調信号の周波数キャリアにおいて、周波数領域で隣り合う前記周波数キャリアで異なる時空間ブロック符号則が適用されるように、前記変調信号の値に応じて
前記時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化ステップと、
を前記送信装置に実行させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項17】
複数の送信アンテナを有する送信装置を制御するプログラムを記憶した記憶媒体において、該プログラムは、
変調信号を生成する変調ステップと、
前記変調信号の値に応じて時空間ブロック符号則を選択する符号則選択ステップと、
前記変調信号に対して、選択された前記時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、前記複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化ステップと、
を前記送信装置に実行させ、
前記変調ステップは、
入力された送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する拡散ステップと、
シフト直交振幅変調方式により前記拡散ビット系列から前記変調信号を生成するシフト直交振幅変調ステップと、
を含み、
前記変調信号は、0番目からn-1番目までのnサンプルで構成され、
前記符号則選択ステップにおいて、
前記変調信号のn/2番目のサンプルの値に基づいて、前記時空間ブロック符号則を選択することを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信ダイバーシティ伝送を行う送信装置、受信装置、通信システム、送信方法、受信方法、制御回路および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
包絡線変動量が小さく、優れた電力効率を実現可能な変調方式として、FSK(Frequency Shift Keying)方式、PSK(Phase Shift Keying)方式などが知られている。
【0003】
また、伝送品質を高める方法として、これまで、MISO(Multi Input and Single Output)システム、MIMO(Multiple Input and Multiple Output)システムなど、複数の送信アンテナを備える無線通信システムにおける送信ダイバーシティ法が提案されている。
【0004】
送信ダイバーシティ法の1つとして、非特許文献1には、時空間ブロック符号であるSTBC(Space-Time Block Code)技術が開示されている。STBC技術では、時間的に連続した複数のシンボルに対して複素共役および符号反転を実施することにより直交した複数の系列を生成し、直交した系列のそれぞれを異なる送信アンテナから送信する。STBC技術では、送信系列は、時間および空間の2次元で直交符号化される。STBC技術における符号化すなわちSTBC符号化は、一般にAlamouti符号化と呼ばれている。STBC符号化された送信信号を受信する受信装置は、受信した2シンボルに対して伝送路情報を用いた復号を行うことで、容易に送信ビット系列の推定が可能となる。これにより、STBC技術では、送信アンテナの本数分のダイバーシティ利得、すなわち、送信フルダイバーシティ利得を獲得することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】S.M.Alamouti,“A Simple Transmit Diversity Technique for Wireless Communications,” IEEE Journal on Select Areas in Communications,Vol.16,No.8,pp.1451-1458,October 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、STBC技術においては、1つの送信アンテナから送信する信号における時間的に連続した2つのシンボル間で符号反転処理が存在する。このため、1シンボルが複数サンプルで構成されるFSK変調方式などにより変調された信号に対してSTBC符号化を適用した場合には、シンボル境界において振幅値が周期的に0に落ち込むことにより包絡線の変動量が増加するという問題があった。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、STBC符号化を適用した場合においても、包絡線の変動量を抑制することが可能な送信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる送信装置は、複数の送信アンテナと、周波数偏移変調により変調信号を生成する変調部と、周波数偏移変調により変調された変調信号の周波数キャリアにおいて、周波数領域で隣り合う周波数キャリアで異なる時空間ブロック符号則が適用されるように、変調信号の値に応じて時空間ブロック符号則を選択する符号則選択部と、変調信号に対して、選択された時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、複数の送信アンテナのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかる送信装置は、STBC符号化を適用した場合においても、包絡線の変動量を抑制することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる通信システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1にかかる送信装置の処理手順の一例を説明するためのフローチャート
【
図4】周波数領域における4値のFSK信号を示す図
【
図6】4値FSK信号に対するSTBC符号化部の符号化手順の具体例の説明図
【
図7】実施の形態1にかかる通信システムの機能を実現するための制御回路の構成例を示す図
【
図8】実施の形態2にかかる変調部の構成例を示す図
【
図9】
図8に示す変調部の拡散ビット生成部の動作の説明図
【
図10】
図8に示す変調部のシフトQAM部の動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態にかかる送信装置、受信装置、通信システム、送信方法、受信方法、制御回路および記憶媒体を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる通信システム3の構成例を示す図である。通信システム3は、送信装置1と受信装置2とを有する。
【0013】
送信装置1は、変調部10と、符号則選択部11と、STBC符号化部12と、複数の送信アンテナ13a,13bとを有する。以下、送信アンテナ13a,13bのそれぞれを区別する必要がない場合、単に送信アンテナ13と称する場合がある。
【0014】
変調部10は、周波数偏移変調により変調信号を生成する。具体的には、変調部10は、入力された送信ビット系列をFSK方式により一次変調する。すなわち、変調部10は、送信ビット系列を、FSK変調シンボル系列にマッピングする。送信ビット系列は、インタリーブ、誤り訂正符号化などの前処理が施されたビット系列であってもよい。以下、FSK方式により一次変調された変調信号をFSK信号とも呼ぶ。
【0015】
符号則選択部11は、変調部10で一次変調された信号の値に応じて、STBC符号化部12で使用するSTBC符号則を選択する。符号則選択部11がSTBC符号則を選択する詳細な方法については後述するが、符号則選択部11は、FSK信号のキャリア周波数に応じて、負符号の位置が異なる2つのSTBC符号則のうち、いずれか1つのSTBC符号則を選択する。
【0016】
STBC符号化部12は、変調部10で一次変調された信号に対して、符号則選択部11で選択されたSTBC符号則を用いた時空間ブロック符号化を行うことにより、複数の送信アンテナ13a,13bのそれぞれから送信する送信信号を生成し、生成した複数の送信信号のそれぞれを対応する送信アンテナ13a,13bへ出力する符号化部の一例である。
【0017】
送信アンテナ13a,13bは、STBC符号化部12から出力された送信信号を電波として放射する。
【0018】
また、送信装置1は、STBC符号化結果に対してCP(Cyclic Prefix)を付加したり、拡散等の後処理を施したりしてもよい。CPを付加する場合、例えばSTBC符号化部12と送信アンテナ13a,13bのそれぞれとの間に、送信アンテナ13の数分のCP付加部が設けられ、STBC符号化部12は、処理後の信号を対応するCP付加部へ出力する。CP付加部は、STBC符号化部12から出力された信号にCPを付加し、対応する送信アンテナ13にCP付加後の信号を出力する。また、拡散を行う場合には、例えば、STBC符号化部12と送信アンテナ13a,13bのそれぞれとの間に、送信アンテナ13の数分の拡散処理部が設けられる。STBC符号化部12は、処理後の信号を対応する拡散処理部へ出力する。拡散処理部は、STBC符号化部12から出力された信号に拡散系列を乗算し、対応する送信アンテナ13に拡散処理後の信号を出力する。
【0019】
ここでは、送信装置1が2本の送信アンテナ13を備える例について説明しているが、送信装置1は、3本以上の送信アンテナ13を備えていてもよい。すなわち、送信装置1は、2本以上の送信アンテナ13を備えればよい。送信アンテナ13が3本以上である場合には、STBC符号化部12は、送信アンテナ13の本数分の送信信号を生成し、生成した送信信号のそれぞれを対応する送信アンテナ13に出力する。
【0020】
なお、
図1では、送信装置1の構成要素のうちベースバンド信号処理にかかる構成要素を図示しているが、送信装置1は、
図1に図示していない構成要素を備えていてもよい。例えば、送信装置1は、
図1に示した構成要素に加えて、フィルタ、アナログ信号処理を行うアナログ部などを備えていてもよい。
【0021】
本実施の形態では、送信ダイバーシティ方式、つまりSTBC符号化として、Alamouti符号化を用いることを前提としている。また、本実施の形態では、STBC符号化単位を「ブロック」、周波数偏移変調の単位すなわちFSK変調のデータ単位を「シンボル」と呼ぶ。FSK変調された信号はビット値に応じた周波数の信号であり、ある時間間隔でサンプリングされた信号となる。FSK変調された信号である「シンボル」は、ビット値に応じた周波数の信号であり、「シンボル」を構成する時間信号を「サンプル」と呼ぶ。
【0022】
本実施の形態では、一次変調としてFSK変調を行うことを前提として説明するが、一次変調の方式はFSK変調に限定されず、MSK(Minimum Shift Keying)変調、GMSK(Gaussian MSK)変調などのように、信号点間の位相回転量に基づいて情報を伝達する変調方式であってもよい。一次変調の方式は、定包絡性を有する変調方式が望ましい。
【0023】
受信装置2は、受信アンテナ20と、符号則選択部21と、STBC復号部22と、復調部23とを有する。
【0024】
受信アンテナ20は、送信装置1から送信された信号を受信信号として受信し、受信信号を符号則選択部21およびSTBC復号部22のそれぞれへ出力する。
【0025】
符号則選択部21は、送信装置1において使用されたSTBC符号則と同じ符号則を選択し、選択したSTBC符号則をSTBC復号部22へ出力する。なお、送信装置1が、送信側で使用したSTBC符号則を、送信信号に含まれるパイロット信号などを用いて受信装置2に通知してもよいし、受信装置2が受信信号に基づいて送信側で使用したSTBC符号則を推定してもよい。符号則選択部21が、送信装置1において使用されたSTBC符号則を選択する方法は、手段を問わない。
【0026】
STBC復号部22は、符号則選択部21で選択されたSTBC符号則を用いて受信信号に対してSTBC復号を行い、復号信号を復調部23へ出力する。
【0027】
復調部23は、STBC復号部22で復号された結果である復号信号に対して一次変調であるFSK方式に対応した復調すなわち周波数偏移復調を行うことにより、送信ビット系列の推定結果である推定ビット系列を求める。
【0028】
なお、送信装置1において送信ビット系列に誤り訂正符号化などの前処理が施されている場合には、受信装置2は、復調部23による復調結果に対してデインタリーブ、誤り訂正復号などの前処理に対応した復号処理を行う。なお、復調部23による復調結果に対して軟判定誤り訂正復号が行われる場合には、復調部23が軟判定値を求めてもよい。また、送信装置1においてCP付加が行われている場合には、受信装置2は、受信アンテナ20の後段にCPを除去するCP除去部を備え、CP除去部によってCPが除去された後の受信信号が、符号則選択部21およびSTBC復号部22のそれぞれへ出力される。
【0029】
また、
図1では受信アンテナ20が1本の例を示しているが、受信アンテナ20は複数であってもよい。受信アンテナ20が複数の場合には、符号則選択部21または符号則選択部21の前段に設ける図示しない受信ダイバーシティ復号部が、複数の受信アンテナ20により受信された複数の受信信号を合成し、STBC復号部22は、合成された受信信号に対してSTBC復号を行う。
【0030】
なお、
図1では、受信装置2の構成要素のうちベースバンド信号処理にかかる構成要素を図示しているが、受信装置2は、
図1に図示していない構成要素を備えていてもよい。例えば、受信装置2では、時間同期処理、周波数同期処理、伝送路推定等も実施されるが、これらの処理は一般的な処理を適用することができるため、これらの処理を行う機能部の図示および説明を省略する。以降の受信装置2の動作の説明では、時間同期処理、周波数同期処理、伝送路推定処理などが理想的に行われると仮定して説明する。時間同期処理、周波数同期処理、伝送路推定処理などが理想的に行われない場合には、誤差が生じる場合などもあるが、誤差の対処法については、一般的なSTBC復号を実施する受信装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0031】
続いて、実施の形態1にかかる通信システム3の動作について説明する。はじめに、送信装置1の全体動作について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる送信装置1の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0032】
送信装置1の変調部10は、入力された送信ビット系列に対してFSK変調を施すことによりFSK信号を生成する(ステップS101)。変調部10は、生成したFSK信号を符号則選択部11およびSTBC符号化部12へ出力する。
【0033】
符号則選択部11は、変調部10が出力するFSK信号に基づいて、STBC符号則を選択する(ステップS102)。符号則選択部11は、選択したSTBC符号則をSTBC符号化部12へ出力する。
【0034】
STBC符号化部12は、変調部10が出力するFSK信号のシンボル内のサンプルに対して、符号則選択部11で選択されたSTBC符号則を用いてSTBC符号化を行うことにより、STBC符号化信号を生成する。STBC符号化部12は、STBC符号化信号を送信アンテナ13a,13bのそれぞれに対応する信号に分けることによって送信信号を生成する(ステップS103)。STBC符号化部12は、生成した複数の送信信号のそれぞれを、対応する送信アンテナ13a,13bに出力する。
【0035】
FSK信号は包絡線の変動が少ないという利点があるが、シンボル間でSTBC符号化を施すと、時間的に連続するシンボルで符号反転処理が行われることによりシンボルの境界において振幅値が周期的に0に落ち込む。これにより、送信信号の包絡線が変動する。本実施の形態では、包絡線の変動を抑制するために、STBC符号化における時空間直交性を保持しながら、時間的に連続するシンボルの符号反転処理の影響を低減するように、FSK信号のキャリア周波数に基づいてFSK信号のシンボル内でSTBC符号化を行う。STBC符号則の選択方法とシンボル内でのSTBC符号化処理の詳細については、後述する。
【0036】
送信アンテナ13a,13bは、STBC符号化部12から出力された送信信号を、電波として送出することにより、受信装置2へ向けて送信する(ステップS104)。
【0037】
次に、送信装置1の符号則選択部11およびSTBC符号化部12の機能について説明する。符号則選択部11は、変調部10から出力されたFSK信号の周波数キャリアに基づいて、負符号の位置が異なる複数のSTBC符号則のうちの1つを選択する。
図3は、周波数領域におけるFSK信号を示す図である。
図3では、変調部10から出力されたM個の周波数キャリアを持つ周波数領域におけるFSK信号を示している。符号則選択部11では、
図3に示すように、M個のFSKキャリアにおいて、周波数領域で隣り合うFSKキャリアで異なるSTBC符号則が適用されるように、入力されたFSK信号の値に基づいてSTBC符号則を選択する。
【0038】
図4は、周波数領域における4値のFSK信号を示す図である。
図4に示すFSK信号は、M=4であり、送信ビット系列が「00」の場合にはf1、送信ビット系列が「01」の場合にはf2、送信ビット系列が「10」の場合には-f2、送信ビット系列が「11」の場合には-f1の周波数キャリアが割り当てられる。変調部10は、送信ビット系列に対応する周波数を選択してFSK信号を生成する。符号則選択部11は、隣り合うFSKキャリア間で異なるSTBC符号則が選択されるように、FSK信号の周波数がf1または-f2である場合には、符号則#1を選択し、FSK信号の周波数がf2または-f1である場合には、符号則#2を選択する。
【0039】
ここで、符号則#1は、以下の数式(1)で表される。数式(1)において、x
(k)
tは、k番目の送信アンテナ13からSTBCブロック内のt番目に送信される送信信号を表す。また、数式(1)において、z
tは、STBC符号化する対象のFSK信号におけるt番目のFSK信号を表す。kおよびtは自然数である。tの最大値は、STBC符号のサイズに応じて決定され、本実施の形態ではt=2とする。
図1に示した構成例では、送信アンテナ13aが1番目の送信アンテナ13であり、送信アンテナ13bが2番目の送信アンテナ13である。*は複素共役を示す。
【0040】
【0041】
また、符号則#2は、以下の数式(2)で表される。符号則#2は、符号則#1と負符号の位置が異なる。
【0042】
【0043】
図5は、STBC符号化部12の符号化手順の説明図である。STBC符号化部12は、符号則選択部11で選択されたSTBC符号則を用いて、変調部10から出力されたFSK信号のFSKシンボル内でSTBC符号化する。STBC符号化部12は、Mサンプルで構成される1シンボルのFSK信号のうち、0から(M/2-1)番目のFSKサンプルを数式(1)および数式(2)におけるz
0とし、M/2からM-1番目のFSKサンプルを数式(1)および数式(2)におけるz
1として、同一のFSKシンボル内の(M/2-1)サンプル離れたFSKサンプルの組み合わせを用いて、符号則選択部11で選択されたSTBC符号則を用いてSTBC符号化する。ここで、(M/2-1)サンプル離れたFSKサンプルの組み合わせとは、2つのFSKサンプルの間に(M/2-1)個のFSKサンプルが挟まれているような組み合わせのことを指す。
【0044】
図6は、4値FSK信号に対するSTBC符号化部12の符号化手順の具体例の説明図である。
図6では、変調部10で生成される4サンプルで構成されるFSKシンボルとして、0シンボル目はFSK信号の周波数がf1つまり情報ビット系列が「00」であり、1シンボル目はFSK信号の周波数がf2つまり情報ビット系列が「01」の場合を示している。このとき、符号則選択部11は、0シンボル目に対して符号則#1を選択し、1シンボル目に対して符号則#2を選択する。STBC符号化部12は、まず0シンボル目の0サンプル目のFSK信号をz
0とし、2サンプル目のFSK信号をz
1として、数式(1)で示す符号則#1を用いてSTBC符号化信号を生成し、STBC符号化信号の0シンボル目の0サンプル目をx
(k)
0、2サンプル目をx
(k)
1とする。同様に、0シンボル目の1サンプル目のFSK信号をz
0とし、3サンプル目のFSK信号をz
1として、数式(1)で示す符号則#1を用いてSTBC符号化信号を生成し、STBC符号化信号の0シンボル目の1サンプル目をx
(k)
0、3サンプル目をx
(k)
1とする。また、STBC符号化信号の1シンボル目については、符号則#2を用いて、0シンボル目と同様の方法で生成する。
【0045】
図6には、STBC符号化後の送信信号TX1,TX2が示されている。送信信号TX1は、k=1の送信アンテナ13aから送信される信号であり、送信信号TX2は、k=2の送信アンテナ13bから送信される信号である。また、
図6には、送信信号TX2における信号点遷移が示されている。図中の[]内の数字は、各FSKシンボル内のサンプルの順番を表しており、例えば、[0]は0サンプル目を指している。
図6に示すように、送信アンテナ13bにおける信号点遷移は、FSKシンボル内およびFSKシンボル間で連続しており、STBC符号化による包絡線変動量の増大を抑制することができていることが確認できる。
【0046】
本実施の形態では、符号則選択部11において、隣接するFSKキャリア間で負符号の位置が異なるSTBC符号則を選択するように、変調部10から出力されたFSK信号の周波数に応じて、STBC符号則を選択することで、FSKシンボル間の包絡線変動量の増大を抑制している。さらに、STBC符号化部12が、選択されたSTBC符号則を用いてFSKシンボルの0から(M/2-1)サンプル目とM/2からM-1サンプル目のFSK信号の組み合わせを用いてSTBC符号化することにより、FSKシンボル内での包絡線変動量増大を抑制することができる。
【0047】
なお、
図4に示す例では、符号則選択部11は、変調部10から出力されたFSK信号の周波数がf1つまり送信ビット系列が「00」である場合、および、FSK信号の周波数が-f2つまり送信ビット系列が「10」である場合には、数式(1)で表される符号則#1を選択し、FSK信号の周波数がf2つまり送信ビット系列が「01」である場合、および、FSK信号の周波数が-f1つまり送信ビット系列が「11」である場合には、数式(2)で表される符号則#2を選択することとした。しかしながら、符号則の割り当ては逆でもよい。つまり、符号則選択部11は、変調部10から出力されたFSK信号の周波数がf1つまり送信ビット系列が「00」である場合、および、FSK信号の周波数が-f2つまり送信ビット系列が「10」である場合には、数式(2)で表される符号則#2を選択し、FSK信号の周波数がf2つまり送信ビット系列が「01」である場合、および、FSK信号の周波数が-f1つまり送信ビット系列が「11」である場合には、数式(1)で表される符号則#1を選択することとしてもよい。また、符号則選択部11で選択するSTBC符号則は、数式(1)、数式(2)で表されるSTBC符号則以外であってもよく、各送信アンテナ13におけるSTBC符号化信号がシンボル内およびシンボル間で位相連続となるようなSTBC符号則の組み合わせを選択してもよい。
【0048】
また、変調部10がFSK信号を位相補間によりL倍のオーバーサンプルを施した場合は、STBC符号化部12において0から(ML/2-1)サンプル目とML/2からML-1サンプル目のFSK信号を用いてSTBC符号化することで、同様の効果が得られる。
【0049】
以上説明したように、実施の形態1にかかる送信装置1は、複数の送信アンテナ13a,13bと、変調信号を生成する変調部10と、変調信号の値に応じて時空間ブロック符号則を選択する符号則選択部11と、変調信号に対して、選択された時空間ブロック符号則を用いて時空間ブロック符号化を行うことにより、複数の送信アンテナ13a,13bのそれぞれから送信する送信信号を生成する符号化部であるSTBC符号化部12と、を有する。変調部10は、FSK方式により変調を行うことにより、FSK信号を変調信号として生成することができる。また、符号則選択部11は、FSK方式により変調された変調信号の周波数キャリアの値に基づいてSTBC符号則を選択することができる。より具体的には、符号則選択部11は、FSK方式で一次変調された変調信号の周波数キャリアにおいて、周波数領域で隣り合う周波数キャリアで異なるSTBC符号則が適用されるように、変調信号の値に基づいてSTBC符号則を選択する。このとき符号則選択部11は、周波数領域で隣り合う周波数キャリアで、負符号の位置が異なるSTBC符号則が適用されるように、STBC符号則を選択する。さらにSTBC符号化部12は、選択されたSTBC符号則を用いてFSKシンボル内でSTBC符号化することにより、FSK方式で一次変調された信号に対してSTBC符号化を適用した場合においても、従来のSTBC符号化に比べて送信信号の包絡線変動量の増大を抑制することができる。例えば、上記の構成によって、STBC符号化前の1ブランチ時のFSK信号と同等の包絡線変動量を実現することができる。したがって、本実施の形態では、従来のSTBC符号化に比べていずれの送信アンテナ13においても電力効率の低下を防ぐことができる。さらに、STBC符号化部12における処理は従来のSTBC符号化と同様に送信アンテナ13間の時空間直交性が保たれるため、送信ダイバーシティ利得の低下を防ぐことが可能である。
【0050】
なお、実施の形態1では、STBC符号化として、Alamouti符号化を用いることを前提として説明した。しかしながら、STBC符号化部12は、Alamouti符号化以外のSTBC符号化を用いてもよい。STBC符号化部12が用いる符号化の方式は、信号の複素共役と符号反転により符号化を行うものであればよい。
【0051】
次に、通信システム3を実現するためのハードウェア構成について説明する。変調部10、符号則選択部11、STBC符号化部12、符号則選択部21、STBC復号部22および復調部23の機能は、電子回路である処理回路により実現される。
【0052】
本処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリおよびメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備える制御回路であってもよい。
【0053】
上記の処理回路が、専用のハードウェアにより実現される場合、処理回路は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。
【0054】
上記の処理回路が、メモリおよびメモリに格納されるプログラムを実行するCPUを備える制御回路である場合、制御回路は、例えば、
図7に示す制御回路300である。
図7は、実施の形態1にかかる通信システム3の機能を実現するための制御回路300の構成例を示す図である。制御回路300は、プロセッサ300aと、メモリ300bとを有する。
【0055】
プロセッサ300aは、メモリ300bに記憶された、各処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより、通信システム3の機能を実現することができる。プロセッサ300aは、CPUであり、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などとも呼ばれる。
【0056】
メモリ300bは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)などである。また、メモリ300bは、プロセッサ300aが実行する各処理における一時メモリとしても使用される。
【0057】
なお、送信装置1の有する変調部10、符号則選択部11、STBC符号化部12のそれぞれの機能が異なる処理回路で実現されてもよいし、変調部10、符号則選択部11、STBC符号化部12の機能がまとめて1つの処理回路で実現されてもよい。受信装置2における符号則選択部21、STBC復号部22、復調部23についても同様である。また、送信装置1および受信装置2のそれぞれの機能は、専用のハードウェアとCPUとを組み合わせて実現されてもよい。また、送信装置1および受信装置2のそれぞれの機能部の分け方は一例であり、1つの機能部として記載した構成要素を複数の処理回路を用いて実現してもよい。
【0058】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2にかかる変調部10aの構成例を示す図である。なお、実施の形態2にかかる送信装置1a(不図示)は、変調部10の代わりに変調部10aを有する点以外は、実施の形態1にかかる送信装置1と同様である。以下、実施の形態1と異なる部分について主に説明し、実施の形態1と同様の部分については説明を省略する。
【0059】
実施の形態1では、
図1に示した変調部10は、送信ビット系列に対して一次変調としてFSK変調のようにサンプル間の位相回転量に基づいて情報を伝達する変調方式を用いていた。実施の形態2では、変調部10aは、送信ビット系列に対して拡散を行い、拡散されたビット系列に対してπ/4シフトQAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式のシフトQAM方式を用いて変調することにより、実施の形態1と同様の効果を得る。つまり、実施の形態2では、各サンプル点の位相に基づいて情報を伝達する変調方式に対して拡散を行うことにより包絡線変動量を一定に保ち、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0060】
変調部10aは、拡散ビット生成部100と、シフトQAM部101とを有する。
【0061】
拡散ビット生成部100は、入力された送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する。具体的には、拡散ビット生成部100は、指定された拡散率Nと、シフトQAM部101が使用する変調方式とに基づいて、Nサンプルで構成される拡散ビット系列を生成する。拡散ビット生成部100は、生成した拡散ビット系列を、シフトQAM部101に出力する。
【0062】
シフトQAM部101は、拡散ビット生成部100が出力したNサンプル分の拡散ビット系列を、拡散率Nに対応したシフトQAM方式により一次変調し、マッピングした変調シンボル系列を含む変調信号を生成する。シフトQAM部101は、生成した変調信号を符号則選択部11およびSTBC符号化部12のそれぞれに出力する。
【0063】
ここでは、拡散ビット生成部100の拡散率Nが4、シフトQAM部101が用いる変調方式がπ/4シフトQPSK方式である例について説明する。しかしながら、変調部10aは、かかる例に限定されず、拡散率Nは4以外であってもよいし、シフトQAM部101が用いる変調方式はπ/4シフトQPSK方式以外の変調方式であってもよい。例えば、変調部10aは、拡散ビット生成部100の拡散率Nを4とし、シフトQAM部101が用いる変調方式をπ/4シフトDQPSK(Differential QPSK)方式としてもよい。また、変調部10aは、拡散ビット生成部100の拡散率Nを2とし、シフトQAM部101が用いる変調方式をπ/2シフトBPSK(Binary Phase Shift Keying)方式としてもよい。
【0064】
図9は、
図8に示す変調部10aの拡散ビット生成部100の動作の説明図である。
図9では、拡散ビット生成部100の拡散率Nが4、シフトQAM部101が用いる変調方式がπ/4シフトQPSK方式である例を示している。拡散ビット生成部100は、偶数シンボルについては、送信ビット系列が「00」の場合「00」「00」「01」「01」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成し、シフトQAM部101へ出力する。同様に、拡散ビット生成部100は、送信ビット系列が「01」の場合「00」「01」「10」「00」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成し、送信ビット系列が「10」の場合「00」「11」「01」「10」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成し、送信ビット系列が「11」の場合「00」「10」「10」「11」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成する。また、拡散ビット生成部100は、奇数シンボルについては、送信ビット系列が「00」の場合「11」「11」「10」「10」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成し、シフトQAM部101へ出力する。同様に、拡散ビット生成部100は、送信ビット系列が「01」の場合「11」「10」「01」「11」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成し、送信ビット系列が「10」の場合「11」「00」「10」「01」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成し、送信ビット系列が「11」の場合「11」「01」「01」「00」の4サンプル分の拡散ビット系列を生成する。
【0065】
図10は、
図8に示す変調部10aのシフトQAM部101の動作の説明図である。シフトQAM部101は、拡散ビット生成部100が出力した4サンプルの拡散ビット系列に対し、サンプル毎にマッピング点がπ/4シフト遷移するπ/4シフトQPSK方式によりマッピングし、変調信号を生成する。ここでは、シフトQAM部101は、偶数サンプルについては、サンプル毎に、拡散ビット系列の値が「00」である場合には位相「0」、拡散ビット系列の値が「01」である場合には位相「π/2」、拡散ビット系列の値が「10」である場合には位相「-π/2」、拡散ビット系列の値が「11」である場合には位相「π」にマッピングする。また、ここでは、シフトQAM部101は、奇数サンプルについては、サンプル毎に、拡散ビット系列の値が「00」である場合には位相「π/4」、拡散ビット系列の値が「01」である場合には位相「3π/4」、拡散ビット系列の値が「10」である場合には位相「-π/4」、拡散ビット系列の値が「11」である場合には位相「-3π/4」にマッピングする。
【0066】
送信装置1aの符号則選択部11は、変調部10aから出力された変調信号の0番目からN-1番目までのNサンプルのうち、N/2番目のサンプルの値に基づいて、符号則を選択する。例えば、
図9および
図10に示すN=4の場合には、符号則選択部11は、0番目から3番目までの4サンプルのうち、2番目のサンプルの値に基づいて、符号則を選択する。具体的には、符号則選択部11は、変調信号のN/2番目のサンプルが位相π/2に該当する信号点である場合には、上記の数式(1)で表される符号則#1を選択し、変調信号のN/2番目のサンプルが位相-π/2に該当する信号点である場合には、上記の数式(2)で表される符号則#2を選択する。
【0067】
なお、
図10に示す例では、シフトQAM部101は、偶数サンプルの場合はI/Q軸上に信号点をマッピングしているが、奇数サンプルの場合にI/Q軸上に信号点をマッピングしてもよい。なお、この場合には、符号則選択部11は、例えば、変調信号のN/2番目のサンプルが位相3π/4に該当する信号点である場合には、上記の数式(1)で表される符号則#1を選択し、変調信号のN/2番目のサンプルが位相-3π/4に該当する信号点である場合には、上記の数式(2)で表される符号則#2を選択すればよい。また、符号則と変調信号の値との対応関係は逆であってもよい。つまり、上記では、符号則選択部11は、変調信号のN/2番目のサンプルが位相π/2に該当する信号点である場合に符号則#1、変調信号のN/2番目のサンプルが位相-π/2に該当する信号点である場合に符号則#2としているが、変調信号のN/2番目のサンプルが位相-π/2に該当する信号点である場合に符号則#1、変調信号のN/2番目のサンプルが位相π/2に該当する信号点である場合に符号則#2を選択するようにしてもよい。
【0068】
送信装置1aのSTBC符号化部12は、変調部10aから出力された変調信号に対して、符号則選択部11で選択されたSTBC符号則を用いてSTBC符号化する。なお、STBC符号化部12におけるSTBC符号化の動作は、実施の形態1と同様であり、Nサンプルで構成される変調シンボルのうち0から(N/2-1)番目のサンプルと、N/2から(N-1)番目のサンプルとの組み合わせを用いてSTBC符号化する。
【0069】
以上説明したように、実施の形態2にかかる送信装置1aは、拡散ビット系列を生成し、生成された拡散ビット系列に対するシフトQAM変調を実施し、さらにシフトQAM変調されたシンボルの値に応じてSTBC符号則を選択することにより、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。実施の形態2において受信側の構成および動作は、実施の形態1にかかる受信装置2と同様であるため説明を省略する。
【0070】
以上説明したように、実施の形態2にかかる送信装置1aの変調部10aは、入力された送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する拡散ビット生成部100と、シフトQAM変調方式により拡散ビット系列から変調信号を生成するシフトQAM部101とを有する。拡散率Nの場合、変調信号は、0番目からN-1番目までのnサンプルで構成される。このとき符号則選択部11は、変調信号のN/2番目のサンプルの値に基づいて、STBC符号則を選択する。拡散ビット生成部100は、シフトQAM部101が使用する変調方式と、予め定められた拡散率Nとに基づいて、送信ビット系列から拡散ビット系列を生成する。このような変調部10aを有する送信装置1aにおいても、実施の形態1にかかる送信装置1と同様に、送信信号の包絡線変動量の増大を抑制することができる。
【0071】
なお、送信装置1aのハードウェア構成についても、実施の形態1にかかる送信装置1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0072】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0073】
例えば、上記で数式(1)および数式(2)で示した符号則#1および符号則#2についても一例であり、例えば、符号則#1と符号則#2とで負符号の位置が異なれば、数式(1)および数式(2)で表したものに限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1,1a 送信装置、2 受信装置、3 通信システム、10,10a 変調部、11,21 符号則選択部、12 STBC符号化部、13,13a,13b 送信アンテナ、20 受信アンテナ、22 STBC復号部、23 復調部、100 拡散ビット生成部、101 シフトQAM部、300 制御回路、300a プロセッサ、300b メモリ。