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特許7693144車両運行システム、自動運転車両、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】車両運行システム、自動運転車両、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250609BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20250609BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025031272
(22)【出願日】2025-02-28
(62)【分割の表示】P 2024152407の分割
【原出願日】2024-09-04
(65)【公開番号】P2025078693
(43)【公開日】2025-05-20
【審査請求日】2025-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2023146412
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 茂由
(72)【発明者】
【氏名】津田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】玉瀬 善久
(72)【発明者】
【氏名】前川 智史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英二
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-183002(JP,A)
【文献】特開2020-028259(JP,A)
【文献】特開2023-062286(JP,A)
【文献】特開2022-043200(JP,A)
【文献】特開2023-118573(JP,A)
【文献】特開2023-038857(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055823(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行可能な自動運転車両と、
ドライバーが運転する手動運転車両と、
前記自動運転エリア内の前記自動運転車両及び前記手動運転車両の各種の車両の運行を管理する運行管理システムと、
前記自動運転エリア内の前記各種の車両の安全性を管理する保安管理システムと、を備え、
前記運行管理システムは、前記運行ルート上において前記各種の車両が走行する際のルートの設定を要求する指令を示す運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信し、
前記保安管理システムは、前記運行ルート設定指令を受信した場合、前記自動運転エリア内における前記各種の車両の位置情報に基づいて、前記運行ルートのうちで前記各種の車両の走行においてルート上に他の車両が存在せずに車両同士の衝突を回避可能な安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定し、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を前記運行管理システムに送信し、
前記運行管理システムは、前記保安条件情報を受信した場合、当該保安条件情報を含む運行指令を、前記各種の車両に向けて送信し、
前記自動運転車両は、前記運行指令を受信した場合、前記保安条件情報で示される前記保安条件に従って前記保安ルートに沿って自動走行することが可能である、車両運行システム。
【請求項2】
前記自動運転車両は、
前記運行ルートを自動走行する自動運転モードと、ドライバーの運転操作で前記運行ルートを走行する手動運転モードとの間で運転モードが切り替え可能であり、
前記自動運転モードに設定された状態で前記運行指令を受信した場合には、前記保安条件情報で示される前記保安条件に従って前記保安ルートに沿って自動走行し、
前記手動運転モードに設定されて前記ドライバーの運転操作によって走行する場合に備えて、前記運行指令を受信する通信制御ユニットと、前記運行指令を、前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を記憶する変換情報記憶ユニットと、前記変換情報を参照して、前記通信制御ユニットが受信した前記運行指令を前記認識可能データに変換する変換ユニットと、前記変換ユニットで変換された前記認識可能データを報知する報知ユニットと、を備える、請求項1に記載の車両運行システム。
【請求項3】
前記手動運転車両は、前記運行指令を受信し、前記運行指令を前記ドライバーが認識可能な認識可能データに変換し、その変換された前記認識可能データを報知する端末装置が搭載されている、請求項1に記載の車両運行システム。
【請求項4】
前記運行管理システムは、前記運行ルート上に予め設定された停車地点に停車した前記各種の車両が存在する場合、前記運行ルートにおいて前記停車地点から先のルートの設定を指令する前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信し、
前記保安管理システムは、前記運行ルートにおいて前記停車地点から先のルートで安全の確保された前記保安ルート及び前記制限速度を含む前記保安条件を設定して、前記保安条件情報を前記運行管理システムに送信し、
前記運行管理システムは、前記保安条件情報を受信した場合、前記停車地点に停車している前記各種の車両に前記運行指令を送信する、請求項1に記載の車両運行システム。
【請求項5】
前記運行ルートには、前記停車地点が複数設定され、
前記運行管理システムは、複数の前記停車地点に設けられた車両検知器の検知結果に基づいて、複数の前記停車地点ごとに前記各種の車両の存在を認識して、複数の前記停車地点ごとの前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信し、
前記保安管理システムは、複数の前記停車地点ごとに、前記各種の車両の走行方向において互いに隣り合う前記停車地点間のルートが前記保安ルートであるかを判定して、複数の前記停車地点ごとの前記保安条件情報を前記運行管理システムに送信する、請求項4に記載の車両運行システム。
【請求項6】
前記運行管理システムは、
前記停車地点に近接する位置に、前記停車地点とは別に、前記各種の車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点を設定し、
前記一時停車地点に停車する前記各種の車両については前記停車地点に停車しているものと見做す、請求項5に記載の車両運行システム。
【請求項7】
自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを走行する車両において、自動運転モードと手動運転モードとの間で運転モードが切り替え可能であり、前記自動運転モードに設定された状態で前記運行ルートを自動走行し、前記手動運転モードに設定された状態ではドライバーの運転操作で前記運行ルートを走行し、ドライバーが運転する手動運転車両とともに保安管理システムによって安全性が管理された上で運行管理システムによって運行が管理された自動運転車両であって、
前記手動運転モードに設定されて前記ドライバーの運転操作によって走行する場合に備えて、
前記自動運転エリア内における前記自動運転車両及び前記手動運転車両の各種の車両の位置情報に基づいて、前記運行ルートのうちで前記各種の車両の走行においてルート上に他の車両が存在せずに車両同士の衝突を回避可能な安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件が前記保安管理システムによって設定され、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を含む運行指令が前記運行管理システムによって送信されると、前記運行指令を受信する通信制御ユニットと、
前記運行指令を、前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を記憶する変換情報記憶ユニットと、
前記変換情報を参照して、前記通信制御ユニットが受信した前記運行指令を前記認識可能データに変換する変換ユニットと、
前記変換ユニットで変換された前記認識可能データを報知する報知ユニットと、を備える、自動運転車両。
【請求項8】
自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行する自動運転車両とともに、保安管理システムによって安全性が管理された上で、運行管理システムによって運行が管理された、ドライバーが運転する手動運転車両に搭載される端末装置を含めた前記保安管理システム及び前記運行管理システムが行う処理を一又は複数のプロセッサーに実行させるプログラムであって、
前記自動運転エリア内における前記自動運転車両及び前記手動運転車両の各種の車両の位置情報に基づいて、前記運行ルートのうちで前記各種の車両の走行においてルート上に他の車両が存在せずに車両同士の衝突を回避可能な安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件が前記保安管理システムによって設定され、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を含む運行指令が前記運行管理システムによって送信されると、前記端末装置が前記運行指令を受信する処理と、
前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を参照して、前記運行指令を前記認識可能データに変換する処理と、
変換された前記認識可能データを前記端末装置が報知する処理と、を前記プロセッサーに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転エリア内における車両の運行を管理する車両運行システム、自動運転車両、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転車両の運転を支援する運転支援装置を備えたシステムが開示されている。運転支援装置は、自動運転車両の走行ルートの近辺に設置され、自動運転車両の周囲を監視するとともに、走行ルート上の障害物を迂回する回避ルートを含む将来位置情報を自動運転車両から受信する。運転支援装置は、監視結果と将来位置情報とに基づいて、回避ルートを走行する移動体との衝突予測を行って、衝突を回避するための走行制御情報を自動運転車両に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-50627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるシステムでは、回避ルートを作成する処理は、自動運転車両によって行われる。この場合、自動運転車両の処理負荷が増大することになる。また、回避ルートを走行する移動体と自動運転車両との衝突予測は、運転支援装置によって行われる。このため、運転支援装置が設置されていない走行ルートの区間においては、自動運転車両は、安全の確保された回避ルートを作成することができない。すなわち、特許文献1に開示されるシステムでは、安全の確保されたルート等の条件を効率よく設定することが困難な場合がある。
【0005】
本発明の目的は、自動運転エリア内における車両の安全性を確保し、且つ車両の運行を効率よく管理することが可能な車両運行システム、自動運転車両、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る車両運行システムは、自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行可能な自動運転車両と、前記自動運転エリア内の前記自動運転車両を含む各種の車両の運行を管理する運行管理システムと、前記自動運転エリア内の前記車両の安全性を管理する保安管理システムと、を備える。前記運行管理システムは、前記運行ルート上において前記車両が走行する際のルートの設定を要求する指令を示す運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信する。前記保安管理システムは、前記運行ルート設定指令を受信した場合、前記自動運転エリア内における前記車両の位置情報に基づいて、前記運行ルートのうちで前記車両の走行において安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定し、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を前記運行管理システムに送信する。前記運行管理システムは、前記保安条件情報を受信した場合、当該保安条件情報を含む運行指令を、前記車両に向けて送信する。前記自動運転車両は、前記運行指令を受信した場合、前記保安条件情報で示される前記保安条件に従って前記保安ルートに沿って自動走行することが可能である。
【0007】
この車両運行システムによれば、自動運転車両は、自動運転エリア内の運行ルートを自動走行可能に、自動走行するための制御に関する処理を行う機能を有し、一方で、安全の確保されたルートの設定などの安全性及び運行の管理に関する処理を行わない。これにより、自動運転車両の処理負荷が増大することを抑制できる。
【0008】
自動運転エリア内の自動運転車両を含む各種の車両の安全性及び運行の管理は、運行管理システムと保安管理システムとに分担される。保安管理システムは、運行管理システムから運行ルート設定指令を受信した場合に、自動運転エリア内の車両の位置情報に基づいて、ルートを設定する対象の車両の前方のルートに他の車両などが存在するか等の安全性を判定することで、安全の確保された保安ルート及び車両の横転等を抑制可能な制限速度を含む保安条件を設定することができる。すなわち、保安管理システムは、安全性の判定と保安条件の設定とを一元的に行うことにより、自動運転エリア内の車両の安全性を管理することができる。一方、運行管理システムは、運行ルート設定指令に応答する情報として保安条件情報を保安管理システムから受信した場合に、保安条件情報を含む運行指令を車両に向けて送信する。すなわち、運行管理システムは、保安管理システムに対するルート設定の指令と車両に対する保安条件情報に従った運行の指令とを一元的に行うことにより、安全性が確保された状態での車両の運行を効率よく管理することができる。
【0009】
第2の態様に係る車両運行システムは、第1の態様の車両運行システムにおいて、前記運行管理システムは、前記運行ルート上に予め設定された停車地点に停車した前記車両が存在する場合、前記運行ルートにおいて前記停車地点から先のルートの設定を指令する前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信する構成であってもよい。この場合、前記保安管理システムは、前記運行ルートにおいて前記停車地点から先のルートで安全の確保された前記保安ルート及び前記制限速度を含む前記保安条件を設定して、前記保安条件情報を前記運行管理システムに送信する。そして、前記運行管理システムは、前記保安条件情報を受信した場合、前記停車地点に停車している前記車両に前記運行指令を送信する。
【0010】
第3の態様に係る車両運行システムは、第2の態様の車両運行システムにおいて、前記運行ルートには、前記停車地点が複数設定されていてもよい。この場合、前記運行管理システムは、複数の前記停車地点に設けられた車両検知器の検知結果に基づいて、複数の前記停車地点ごとに前記車両の存在を認識して、複数の前記停車地点ごとの前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信する。そして、前記保安管理システムは、複数の前記停車地点ごとに、前記車両の走行方向において互いに隣り合う前記停車地点間のルートが前記保安ルートであるかを判定して、複数の前記停車地点ごとの前記保安条件情報を前記運行管理システムに送信する。
【0011】
この態様では、運行ルート上に予め設定された停車地点に停車し、車両検知器により検知された車両を対象に、保安管理システムは、停車地点から先のルートで安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定することができ、運行管理システムは、運行指令を送信することができる。車両は、停車地点に停車している状態で運行指令を受信した場合に、運行指令に含まれる保安条件情報に基づいて、保安条件に従って保安ルートに沿って走行することができる。これにより、車両は、保安ルート上において他の車両などとの衝突が回避されて、横転等を抑制可能な制限速度の条件などに基づき安全性が確保された状態で、走行することができる。なお、車両が保安ルートに沿って自動走行して保安ルートにおける目標到着点となる停車地点に設けられた車両検知器により検知されると、運行管理システムは車両が保安ルートを走行済みとなったことを認識し、保安管理システムは保安ルート及び制限速度を含む保安条件の設定を解除する。
【0012】
第4の態様に係る車両運行システムは、第1から第3の態様のいずれかの車両運行システムにおいて、前記自動運転エリア内における前記車両に含まれる手動運転車両の走行を指示するために前記自動運転エリア内に設置され、前記手動運転車両の走行許可、走行停止、及び走行条件に関する走行条件情報の少なくともいずれか1つを報知する報知装置を、更に備えてもよい。この場合、前記保安管理システムまたは前記運行管理システムは、前記自動運転エリア内における前記自動運転車両の位置情報に基づいて、前記自動運転エリア内に設置された前記報知装置を作動させる。
【0013】
この態様では、自動運転エリア内には、自動運転車両と手動運転車両とが共存する。手動運転車両は、自動運転エリア内に設置された報知装置による報知情報に従って、ドライバーの手動運転、或いは操作者による遠隔操作によって走行する。このように、自動運転車両と手動運転車両とが共存する状況下において、保安管理システムまたは運行管理システムは、自動運転エリア内における自動運転車両の位置情報に基づいて、自動運転エリア内に設置された報知装置を作動させる。この場合、手動運転車両のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、自動運転エリア内に設置された報知装置による報知情報に従って手動運転車両を運転することにより、運行ルートに沿った自動運転車両の自動走行に応じて、手動運転車両を走行させることができる。
【0014】
第5の態様に係る車両運行システムは、第2又は第3の態様の車両運行システムにおいて、前記自動運転エリアは、当該自動運転エリアの内外を区分するインターチェンジを有し、前記インターチェンジには、前記自動運転エリアに対する前記車両の入退出が行われる入退出地点が前記停車地点として設定されていてもよい。この場合、前記運行管理システムは、前記入退出地点に設けられた車両検知器の検知結果に基づいて、前記入退出地点に停車した前記車両が存在することを認識する。そして、前記運行管理システムは、前記自動運転エリア外から前記入退出地点に進入した前記車両については、当該車両に固有の車両情報を登録し、一方で、前記入退出地点から前記自動運転エリア外へ退出する前記車両については、当該車両に固有の車両情報の登録を抹消する。
【0015】
この態様では、運行管理システムは、自動運転エリアの内外を区分するインターチェンジに設定された入退出地点に停車している車両を対象に、当該車両に固有の車両情報の登録、及び登録抹消を行う。この場合、車両情報が登録されている車両を対象に、保安管理システムによって安全性を管理することができるとともに、運行管理システムによって運行を管理することができる。
【0016】
第6の態様に係る車両運行システムは、第3の態様の車両運行システムにおいて、前記自動運転エリアには、2つの前記停車地点間において、前記運行ルートが第1ルートと第2ルートとを含む複数車線に分離された複数車線区間が存在してもよい。この場合、前記運行管理システムは、前記複数車線区間を区画する2つの前記停車地点の各々に、走行方向が対向関係にある前記車両が存在する場合、2つの前記停車地点ごとの前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信する。そして、前記保安管理システムは、2つの前記停車地点において、一方の停車地点に対しては前記第1ルートを前記保安ルートとする前記保安条件を設定し、他方の停車地点に対しては前記第2ルートを前記保安ルートとする前記保安条件を設定する。
【0017】
この態様では、保安管理システムは、複数車線区間を区画する2つの停車地点ごとの運行ルート設定指令を運行管理システムから受信した場合、一方の停車地点に対しては第1ルートを保安ルートとする保安条件を設定し、他方の停車地点に対しては第2ルートを保安ルートとする保安条件を設定する。この場合、運行ルート上の複数車線区間においては、一方の停車地点に停車している車両は第1ルートに沿って走行し、他方の停車地点に停車している車両は第2ルートに沿って走行することになる。この場合、2つの停車地点にそれぞれ停車している各車両の走行方向が対向関係にあったとしても、各車両は、車両同士の衝突が回避されて安全性が確保された状態で、複数車線区間を走行することができる。
【0018】
第7の態様に係る車両運行システムは、第6の態様の車両運行システムにおいて、前記複数車線区間において、前記第1ルートと前記第2ルートとの間に迂回ルートが設定されてもよい。この場合、前記保安管理システムは、前記第1ルート及び前記第2ルートの少なくともいずれかのルートが前記保安ルートとして設定できない場合には、前記迂回ルートを前記保安ルートとする前記保安条件を設定する。
【0019】
運行ルート上の複数車線区間において、散水車などの低速走行車両による作業が行われている、故障車両が停車している、ルートの一部に破損が生じている、工事中である、などが原因で、車線規制が行われる場合がある。この場合、保安管理システムは、第1ルート及び第2ルートの少なくともいずれかのルートが保安ルートとして設定できない。そこで、保安管理システムは、その対処として、第1ルートと第2ルートとの間に設定された迂回ルートを保安ルートとする保安条件を設定する。これにより、車線規制が行われている場所を避けるように、迂回ルートに沿って車両を迂回させることができる。
【0020】
第8の態様に係る車両運行システムは、第3、第6、第7の態様のいずれかの車両運行システムにおいて、前記運行管理システムは、前記停車地点に近接する位置に、前記車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点を設定し、前記一時停車地点に停車する前記車両については前記停車地点に停車しているものと見做すように構成されていてもよい。
【0021】
この態様では、運行管理システムは、先行の車両が停車している停車地点に向かって後行の車両が走行してくる場合に、当該後行の車両を一時停車地点に停車させることができる。この場合、運行管理システムは、一時停車地点に停車する後行の車両については停車地点に停車しているものと見做すことで、後行の車両の運行を効率よく管理することができる。
【0022】
第9の態様に係る車両運行システムは、第3、第6、第7の態様のいずれかの車両運行システムにおいて、前記運行管理システムは、前記停車地点に近接する位置に、前記車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点を設定し、一の停車地点に一の前記車両が停車している状態で、前記一の停車地点よりも先の他の停車地点に近接する前記一時停車地点に他の前記車両が停車していない場合には、前記他の停車地点に他の前記車両が停車していないものと見做して、前記一の停車地点を出発点とし前記他の停車地点を到着点とするルートの設定を指令する前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信するように構成されていてもよい。
【0023】
一の停車地点に一の車両(後行の車両)が停車している状態で、一の停車地点よりも先の他の停車地点に近接する一時停車地点に他の車両(先行の車両)が停車していない場合を想定する。この場合、運行管理システムは、後行の車両が停車している一の停車地点よりも先の他の停車地点に先行の車両が停車していないものと見做して、一の停車地点を出発点とし他の停車地点を到着点とするルートの設定を指令する運行ルート設定指令を保安管理システムに送信する。この場合、運行管理システムは、運行ルート設定指令に応答する情報として保安条件情報を保安管理システムから受信し、保安条件情報を含む運行指令を後行の車両に送信することになる。これにより、運行管理システムは、後行の車両の目標到着点となる停車地点に先行の車両が停車していないものと見做して、後行の車両の運行を効率よく管理することができる。
【0024】
第10の態様に係る車両運行システムは、第2、第3、第5から第9の態様のいずれかの車両運行システムにおいて、前記自動運転車両は、被運搬物を積載可能な荷台と、前記荷台を傾けるダンプ装置とを有する車両であってもよい。前記自動運転エリアには、前記荷台に前記被運搬物を積み込む作業、又は、前記荷台から前記被運搬物を荷降ろしする作業が行われる作業地点と、前記停車地点とが設定された作業エリアが存在している。前記作業エリアには、前記車両として前記積み込む作業を行うことが可能な特殊車両が配置されている。この場合、前記運行管理システムは、前記作業エリア内の前記停車地点に停車した前記自動運転車両が存在する場合、前記特殊車両から発信された停車位置指定指令の情報を含む前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信する。前記保安管理システムは、前記作業エリア内の前記停車地点から前記停車位置指定指令で示される停車位置に対応した前記作業地点までの作業進入ルートを前記保安ルートとする前記保安条件を設定して、前記作業進入ルートの情報を含む前記保安条件情報を前記運行管理システムに送信する。そして、前記運行管理システムは、前記作業進入ルートの情報を含む前記運行指令を、前記停車地点に停車している前記自動運転車両に送信する。
【0025】
自動運転エリア内の作業エリアに設定された作業地点では、自動運転車両の荷台に被運搬物を積み込む作業が特殊車両によって行われる。また、作業地点では、自動運転車両におけるダンプ装置の作動によって、荷台に積載された被運搬物を荷降ろしする作業が行われる。このような作業が行われる作業エリア内の停車地点に自動運転車両が停車している場合、運行管理システムは、特殊車両から発信された停車位置指定指令の情報を含む運行ルート設定指令を保安管理システムに送信する。この場合、保安管理システムは、作業エリア内の停車地点から停車位置指定指令で示される停車位置に対応した作業地点までの作業進入ルートを保安ルートとする保安条件を設定する。そして、運行管理システムは、作業進入ルートの情報を含む運行指令を自動運転車両に送信する。これにより、作業エリア内の停車地点から作業地点まで、作業進入ルートに沿って自動運転車両を自動走行させることができる。この場合、自動運転車両が停車する作業地点は、特殊車両から発信された停車位置指定指令で示される停車位置に対応した作業地点であるので、作業地点における特殊車両の作業効率が向上する。
【0026】
第11の態様に係る車両運行システムは、第10の態様の車両運行システムにおいて、前記作業地点において前記特殊車両が前記自動運転車両の前記荷台に前記被運搬物を積み込む作業を行う場合、前記運行管理システムは、前記自動運転車両が前記作業地点に横付けで停車する指示を示す情報を含む前記運行指令を、前記停車地点に停車している前記自動運転車両に送信するように構成されていてもよい。
【0027】
この態様では、特殊車両が自動運転車両の荷台に被運搬物を積み込む作業を行う場合、自動運転車両は、作業地点に横付けで停車する。これにより、特殊車両による被運搬物の積み込み作業の作業効率が向上する。
【0028】
第12の態様に係る車両運行システムは、第10又は第11の態様の車両運行システムにおいて、前記作業地点において前記自動運転車両が前記ダンプ装置の作動によって前記荷台を傾けて前記被運搬物の荷降ろし作業を行う場合、前記運行管理システムは、前記自動運転車両が前記作業地点にバックで停車する指示を示す情報を含む前記運行指令を、前記停車地点に停車している前記自動運転車両に送信するように構成されていてもよい。
【0029】
この態様では、自動運転車両がダンプ装置の作動によって荷台を傾けて被運搬物の荷降ろし作業を行う場合、自動運転車両は、作業地点にバックで停車する。これにより、ダンプ装置の作動による被運搬物の荷降ろし作業の作業効率が向上する。
【0030】
第13の態様に係る車両運行システムは、第3、第6から第9の態様のいずれかの車両運行システムにおいて、前記運行管理システムは、前記車両の走行方向に互いに隣り合う前記停車地点間のルート区間において、複数の前記ルート区間を一括した一括ルートの設定を指令する前記運行ルート設定指令を前記保安管理システムに送信するように構成されていてもよい。この場合、前記保安管理システムは、前記一括ルートが安全の確保されたルートである場合に、当該一括ルートを前記保安ルートとする前記保安条件を設定して、前記保安条件情報を前記運行管理システムに送信する。
【0031】
この態様では、運行管理システムは、保安管理システムに対して連続した複数のルート区間の全ての設定の指令を行うことなく、統括された一括ルートとしての設定の指令が可能となり、ルート設定の要求処理が簡素化される。そして、保安管理システムは、一括で設定される可能性のあるルート区間を予め把握しておくことで、ルート設定の要求処理があれば、定められた組み合わせのルートからなる一括ルートを保安ルートとして速やかに設定することができる。
【0032】
本発明の第14の態様に係る端末装置は、自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行する自動運転車両とともに、保安管理システムによって安全性が管理された上で、運行管理システムによって運行が管理された、ドライバーが運転する手動運転車両に搭載される端末装置である。この端末装置は、前記自動運転エリア内における前記自動運転車両及び前記手動運転車両の各車両の位置情報に基づいて前記各車両の走行において安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件が前記保安管理システムによって設定され、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を含む運行指令が前記運行管理システムによって送信されると、前記運行指令を受信する通信制御ユニットと、前記運行指令を、前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を記憶する変換情報記憶ユニットと、前記変換情報を参照して、前記通信制御ユニットが受信した前記運行指令を前記認識可能データに変換する変換ユニットと、前記変換ユニットで変換された前記認識可能データを報知する報知ユニットと、を備える。
【0033】
この端末装置によれば、保安管理システムによって設定された保安条件を示す保安条件情報が含まれた、運行管理システムから送信された運行指令を認識可能データに変換し、その変換された認識可能データを報知する。この場合、自動運転エリア内に自動運転車両と手動運転車両とが共存する状況下において、手動運転車両を運転するドライバーは、端末装置で報知された認識可能データに基づいて、保安管理システムにより設定された保安条件を認識しながら、保安ルートに沿って手動運転車両を運転することができる。
【0034】
本発明の第15の態様に係る手動運転車両は、ドライバーが運転する車両であって、自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行する自動運転車両とともに、保安管理システムによって安全性が管理された上で、運行管理システムによって運行が管理され、第14の態様の端末装置が搭載されている。
【0035】
また、本発明の第16の態様に係る手動運転車両は、自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行する自動運転車両とともに、保安管理システムによって安全性が管理された上で、運行管理システムによって運行が管理された、ドライバーが運転する車両である。この手動運転車両は、前記自動運転エリア内における前記自動運転車両及び前記手動運転車両の各車両の位置情報に基づいて前記各車両の走行において安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件が前記保安管理システムによって設定され、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を含む運行指令が前記運行管理システムによって送信されると、前記運行指令を受信する通信制御ユニットと、前記運行指令を、前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を記憶する変換情報記憶ユニットと、前記変換情報を参照して、前記通信制御ユニットが受信した前記運行指令を前記認識可能データに変換する変換ユニットと、前記変換ユニットで変換された前記認識可能データを報知する報知ユニットと、を備える。
【0036】
この手動運転車両によれば、保安管理システムによって設定された保安条件を示す保安条件情報が含まれた、運行管理システムから送信された運行指令を認識可能データに変換し、その変換された認識可能データを報知する。この場合、手動運転車両を運転するドライバーは、報知された認識可能データに基づいて、保安管理システムにより設定された保安条件を認識しながら、保安ルートに沿って手動運転車両を運転することができる。
【0037】
本発明の第17の態様に係る自動運転車両は、自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを走行する車両において、自動運転モードと手動運転モードとの間で運転モードが切り替え可能であり、前記自動運転モードに設定された状態で前記運行ルートを自動走行し、前記手動運転モードに設定された状態ではドライバーの運転操作で前記運行ルートを走行し、保安管理システムによって安全性が管理された上で、運行管理システムによって運行が管理された車両である。この自動運転車両は、前記自動運転エリア内における前記自動運転車両を含む各種の車両の位置情報に基づいて前記車両の走行において安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件が前記保安管理システムによって設定され、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を含む運行指令が前記運行管理システムによって送信されると、前記運行指令を受信する通信制御ユニットと、前記運行指令を、前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を記憶する変換情報記憶ユニットと、前記変換情報を参照して、前記通信制御ユニットが受信した前記運行指令を前記認識可能データに変換する変換ユニットと、前記変換ユニットで変換された前記認識可能データを報知する報知ユニットと、を備える。
【0038】
この自動運転車両によれば、手動運転モードに設定されてドライバーが運転操作する状況下において、保安管理システムによって設定された保安条件を示す保安条件情報が含まれた、運行管理システムから送信された運行指令を認識可能データに変換し、その変換された認識可能データを報知する。この場合、手動運転モードに設定された状態の自動運転車両を手動で運転するドライバーは、報知された認識可能データに基づいて、保安管理システムにより設定された保安条件を認識しながら、保安ルートに沿って自動運転車両を手動で運転することができる。
【0039】
本発明の第18の態様に係るプログラムは、自動運転エリア内に予め設定された運行ルートを自動走行する自動運転車両とともに、保安管理システムによって安全性が管理された上で、運行管理システムによって運行が管理された、ドライバーが運転する手動運転車両に搭載される端末装置を含めた前記保安管理システム及び前記運行管理システムが行う処理を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、前記自動運転エリア内における前記自動運転車両及び前記手動運転車両の各車両の位置情報に基づいて前記各車両の走行において安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件が前記保安管理システムによって設定され、前記保安条件の情報を示す保安条件情報を含む運行指令が前記運行管理システムによって送信されると、前記運行指令を受信する処理と、前記運行指令を、前記ドライバーが認識可能な認識可能データに対応付けた変換情報を参照して、前記運行指令を前記認識可能データに変換する処理と、変換された前記認識可能データを報知する処理と、を前記プロセッサーに実行させる。
【0040】
このプログラムによれば、手動運転車両に搭載される端末装置のプロセッサーなどの一又は複数のプロセッサーに、保安管理システムによって設定された保安条件を示す保安条件情報が含まれた、運行管理システムから送信された運行指令を認識可能データに変換し、その変換された認識可能データを報知する各処理を実行させることができる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、自動運転エリア内における車両の安全性を確保し、且つ車両の運行を効率よく管理することが可能な車両運行システム、端末装置、手動運転車両、自動運転車両、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施形態に係る車両運行システムのブロック図である。
図2】自動運転車両が自動走行する自動運転エリアを模式的に示す図である。
図3】手動運転車両に搭載される端末装置のブロック図である。
図4】自動運転エリア内のインターチェンジエリアにおける車両の運行管理を説明するための図である。
図5】自動運転エリア内の第1作業エリア及び第2作業エリアにおける車両の運行管理を説明するための図である。
図6】自動運転エリア内の第3作業エリアにおける車両の運行管理を説明するための図である。
図7】自動運転エリア内の複数車線区間における車両の運行管理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、車両運行システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0044】
図1は、本実施形態に係る車両運行システム1のブロック図であり、図2は、自動運転車両4が自動走行する自動運転エリア6を模式的に示す図である。車両運行システム1は、自動運転エリア6内における自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の安全な運行を管理するためのシステムである。自動運転車両4は、自動運転で自動走行することが可能な車両である。自動運転車両4は、自動走行することにより、人や物品などの被運搬物を運搬することが可能である。なお、自動運転車両4は、自動運転エリア6外においては、後述の手動運転車両5Aのように、ドライバーの運転操作、或いは、操作者による遠隔操作によって走行する。以下の説明では、高炉で発生した水砕スラグからなる被運搬物を自動運転車両4で運搬する局面に適用される車両運行システム1を例示する。
【0045】
図1に示すように、車両運行システム1は、管理システム2と、地上設備3と、自動運転車両4と、手動運転車両5Aとしての特殊車両5とを備える。管理システム2と地上局31を含む地上設備3とは、例えば、光ネットワークなどの有線通信設備を介して有線通信可能に、または、無線通信機を介して無線通信可能に接続されている。自動運転車両4は、自動運転エリア6内において、車上局42を介して地上設備3の地上局31と無線通信可能に接続されている。このため、管理システム2と自動運転車両4とは、地上局31及び車上局42を介して通信可能に接続されている。また、管理システム2と特殊車両5を含む手動運転車両5Aも、後記の図3に示される端末装置5Bを介して通信可能に接続されている。
【0046】
管理システム2は、自動運転車両4とは別個独立に、自動運転エリア6の一画に設置されるコンピュータシステムである。本実施形態では、自動運転エリア6の一画に、1つの管理システム2が設置される。なお、管理システム2は、自動運転エリア6外に設置されてもよい。管理システム2は、自動運転エリア6内における自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の安全な運行を管理する。管理システム2は、運行管理システム21と、保安管理システム22とを含む。運行管理システム21は、自動運転エリア6内における自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の運行を管理するシステムである。保安管理システム22は、自動運転エリア6内における自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の安全性を管理するシステムである。運行管理システム21及び保安管理システム22はそれぞれ、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶領域、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)、各種の情報を表示するためのディスプレイ、各種の情報を入力するための操作盤、通信インターフェイスなどを備えたコンピュータ装置によって実現される。なお、保安管理システム22は、リレー回路や、プログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller)などで実現されてもよい。運行管理システム21及び保安管理システム22が実行する処理の詳細については、後述する。
【0047】
地上設備3は、自動運転エリア6内に設置される設備である。地上設備3は、地上局31と、車両検知器32と、交通信号機33と、案内表示器34と、踏切設備35と、ホッパー制御装置36と、を含む。
【0048】
地上局31は、管理システム2と有線通信設備を介して有線通信可能に接続されるとともに、自動運転車両4の車上局42との間で無線通信を実現する無線通信機である。また、本実施形態では、地上局31は、後述の特殊車両5の車上局52との間で無線通信可能である。車両検知器32は、自動運転車両4を検知するセンサである。車両検知器32は、例えば、自動運転エリア6内のLiDAR(Light Detection and Ranging)によって実現される。車両検知器32の検知結果は、地上局31を介して管理システム2に送信される。
【0049】
交通信号機33及び案内表示器34は、自動運転エリア6内における手動運転車両5Aの走行を指示するために自動運転エリア6内に設置される。交通信号機33は、手動運転車両5Aの走行許可及び走行停止を報知する報知装置の一例である。案内表示器34は、手動運転車両5Aの走行条件に関する走行条件情報を表示することにより報知する報知装置の一例である。走行条件情報は、自動運転エリア6内における手動運転車両5Aの走行が許可された保安ルートの情報、手動運転車両5Aの制限速度の情報などを含む。報知装置としての交通信号機33及び案内表示器34の作動は、保安管理システム22または運行管理システム21によって制御される。なお、自動運転エリア6内において、報知装置は、手動運転車両5Aの走行許可、走行停止、及び走行条件情報の少なくともいずれか1つを報知するように構成されていればよい。このため、自動運転エリア6内には、報知装置としての交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方が設置されていればよい。つまり、自動運転エリア6内には、交通信号機33及び案内表示器34の両方が設置されてもよいし、交通信号機33及び案内表示器34のいずれか一方が設置されてもよい。
【0050】
手動運転車両5Aは、ドライバーの運転操作、或いは、操作者による遠隔操作によって走行する車両である。手動運転車両5Aとしては、例えば、自動運転車両4に対して被運搬物を積み込む作業を行うことが可能なホイールローダーなどの特殊車両5、被運搬物としての水砕スラグが舞い散るのを抑止するために散水する散水車、一般車両が挙げられる。一般車両は、乗用車や、被運搬物を運搬可能なトラックなどの車両を含む。
【0051】
なお、手動運転車両5Aとしての特殊車両5は、車体50と、車体50に取り付けられたバケット501と、を有している。バケット501は、自動運転車両4に対して被運搬物を積み込む作業を行うときに作動する。車体50には、制御ユニット51、車上局52、位置指定ボタン53、及び出発要請ボタン54、車両到着表示器55などが搭載されている。特殊車両5では、制御ユニット51が、車上局52、位置指定ボタン53、出発要請ボタン54、及び車両到着表示器55を統括的に制御する。車上局52は、地上局31との間で無線通信を実現する無線通信機である。管理システム2と特殊車両5とは、地上局31及び車上局52を介して通信可能である。位置指定ボタン53は、被運搬物の積み込み作業を行う場合に自動運転車両4の停車位置を指定するための操作ボタンである。出発要請ボタン54は、被運搬物の積み込み作業の完了後に自動運転車両4の出発を要請するための操作ボタンである。車両到着表示器55は、詳細については後述するが、特殊車両5が配置される作業エリアの到着地点に自動運転車両4が到着した場合に運行管理システム21から地上局31を介して発信される車両到着情報DD4を表示するための表示器である。
【0052】
踏切設備35は、踏切遮断機351を含む設備である。踏切遮断機351の開閉は、保安管理システム22によって制御される。
【0053】
ホッパー制御装置36は、ホッパー装置361を制御する装置である。ホッパー装置361は、自動運転車両4により運搬されてきた被運搬物を、自動運転エリア6外の船などに積み込むための収集装置である。
【0054】
自動運転車両4は、自動運転で自動走行することが可能な車両である。本実施形態では、自動運転車両4は、自動運転モードと手動運転モードとの間で運転モードが切り替え可能である。自動運転車両4は、自動運転モードに設定された状態で自動走行し、一方で、手動運転モードに設定された状態ではドライバーの運転操作、或いは操作者による遠隔操作によって走行する。自動運転車両4は、手動運転モードに設定されてドライバーの運転操作によって走行する場合に備えて、特殊車両5等の手動運転車両5Aに搭載される、後述するタブレット等の端末装置5Bが搭載されていてもよい。
【0055】
本実施形態では、自動運転車両4は、車体40と、車体40に取り付けられた荷台401と、を有している。荷台401は、被運搬物を積載可能である。車体40には、制御ユニット41、車上局42、計測ユニット43、モード切替スイッチ44、及びダンプ装置45などが搭載されている。自動運転車両4では、制御ユニット41が、車上局42、計測ユニット43、モード切替スイッチ44、及びダンプ装置45を統括的に制御する。
【0056】
車上局42は、地上局31との間で無線通信を実現する無線通信機である。管理システム2と自動運転車両4とは、地上局31及び車上局42を介して通信可能である。
【0057】
計測ユニット43は、自動運転車両4の自己位置推定や障害物検知などを実現するユニットである。計測ユニット43は、例えば、RTK-GNSS(Real-time Kinematic Global Positioning System)、LiDAR、LADAR(Laser Detection and Ranging)、IMU(Inertial Measurement Unit)、カメラなどを含む。
【0058】
モード切替スイッチ44は、自動運転車両4の運転モードを、自動運転モードと手動運転モードとの間で切り替えるためのスイッチである。
【0059】
ダンプ装置45は、自動運転車両4の荷台401を傾ける装置である。荷台401は、ダンプ装置45を介して、自動運転車両4に傾動可能に設置されている。自動運転車両4は、ダンプ装置45の作動によって荷台401を傾けて、荷台401から被運搬物を荷降ろしする作業を行うことができる。
【0060】
地上設備3が設置されるとともに自動運転車両4が自動走行する自動運転エリア6内には、図2に示される運行ルート7が予め設定されている。運行ルート7は、自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両が走行する走行経路である。
【0061】
自動運転車両4では、モード切替スイッチ44が自動運転モードに設定された状態で、制御ユニット41は、計測ユニット43の計測結果に基づいて自己位置を推定しつつ、自動走行のための制御を行う。これにより、自動運転車両4は、自己位置の位置情報DC2を車上局42から地上局31を介して管理システム2に送信しつつ、車両内部に予め登録された運行ルート7の経路情報を参照しながら、運行管理システム21の指令に従って、運行ルート7に沿って自動走行する。
【0062】
運行管理システム21は、運行ルート7上において自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両が走行する際のルートの設定を要求する指令を示す運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。運行ルート設定指令DA1は、運行ルート7の初期状態の経路情報を示す初期経路情報を含む。また、運行管理システム21は、自動運転エリア6内に存在する全ての自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の位置情報DC2、DD5を保安管理システム22から受信する。
【0063】
保安管理システム22は、自動運転エリア6内に存在する全ての自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の位置情報DC2、DD5を、地上局31及び車上局42、52を介して受信する。また、保安管理システム22は、運行管理システム21から運行ルート設定指令DA1を受信した場合、自動運転エリア6内における全ての自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の位置情報DC2、DD5に基づいて、ルートを設定する対象の車両の走行において安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定する。保安条件は、自動運転エリア6内における車両の安全を確保するための条件であって、運行ルート7のうちで車両同士の衝突を回避可能な保安ルート、車両の横転等を抑制可能な制限速度、などの条件を含む。また、保安条件は、保安ルート及び制限速度に加えて、車両の走行許可、走行停止に関する条件を含んでもよい。
【0064】
具体的には、保安管理システム22は、全ての自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の位置情報DC2、DD5に基づいて、運行ルート設定指令DA1に含まれる初期経路情報で示される、ルートを設定する対象の車両の前方の出発点から到着点までのルートにおいて、他の車両などが存在するか、到着点が占有されていないか、他の車両に対応して設定されているルートと重複する区間が無いか、などの安全性を判定する。保安管理システム22は、初期経路情報で示されるルート上に他の車両などが存在しない等の場合には、当該ルートを安全の確保された保安ルートとして認識するとともに、当該保安ルートの走行時に車両の横転等を抑制可能な制限速度を認識することで、保安ルート及び制限速度を少なくとも含む保安条件を設定する。一方、初期経路情報で示されるルート上に他の車両などが存在する等の場合には、保安管理システム22は、他の車両が存在しなくなるなどして安全が確保されるまで、保安ルート及び制限速度を含む保安条件の設定を保留する。
【0065】
保安管理システム22は、運行管理システム21から受信した運行ルート設定指令DA1に対応して保安条件を設定すると、当該保安条件の情報を示す保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。
【0066】
運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信した場合、当該保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して自動運転車両4に送信する。また、運行管理システム21は、管理対象の車両が手動運転車両5Aである場合には、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を手動運転車両5Aに向けて送信する。手動運転車両5Aに向けて送信された運行指令DA2は、手動運転車両5Aに搭載される後記の図3に示される端末装置5Bによって受信される。運行指令DA2は、保安条件情報DB1以外に、車両が保安ルート上を走行する際の保安ルート上の出発点を出発する時刻、などの情報を含む。
【0067】
自動運転車両4は、運行管理システム21から地上局31及び車上局42を介して運行指令DA2を受信した場合、当該運行指令DA2に基づいて、保安条件情報DB1で示される保安条件に従って保安ルートに沿って自動走行することが可能である。
【0068】
本実施形態に係る車両運行システム1では、自動運転車両4は、自動運転エリア6内の運行ルート7を自動走行可能に、計測ユニット43の計測結果に基づく自動走行するための制御に関する処理を行う機能を有している。一方で、自動運転車両4は、安全の確保された保安ルートの設定などの安全性及び運行の管理に関する処理を行わない。これにより、自動運転車両4の処理負荷が増大することを抑制できる。
【0069】
自動運転エリア6内の自動運転車両4を含む各種の車両の安全性及び運行の管理は、運行管理システム21と保安管理システム22とに分担される。
【0070】
保安管理システム22は、運行管理システム21から運行ルート設定指令DA1を受信した場合に、自動運転エリア6内の自動運転車両4を含む各種の車両の位置情報DC2、DD5に基づいて、ルートを設定する対象の車両の進行方向の前方のルートに他の車両などが存在するか等の安全性を判定することで、安全の確保された保安ルート及び車両の横転等を抑制可能な制限速度を含む保安条件を設定することができる。すなわち、保安管理システム22は、安全性の判定と保安条件の設定とを一元的に行うことにより、自動運転エリア6内の自動運転車両4を含む各種の車両の安全性を管理することができる。保安管理システム22は、自動運転車両4を含む各種の車両の安全性を管理することに集中し、車両の運行の管理については運行管理システム21に任せる。これにより、保安管理システム22は、車両の安全性を効率よく管理することができる。
【0071】
一方、運行管理システム21は、運行ルート設定指令DA1に応答する情報として保安条件情報DB1を保安管理システム22から受信した場合に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、管理対象の車両に向けて送信する。すなわち、運行管理システム21は、保安管理システム22に対するルート設定の指令と車両に対する保安条件情報DB1に従った運行の指令とを一元的に行うことにより、安全性が確保された状態での車両の運行を管理することができる。運行管理システム21は、車両の安全な運行を管理することに集中し、車両の安全性の管理については保安管理システム22に任せる。これにより、運行管理システム21は、安全性が確保された状態での車両の運行を効率よく管理することができる。
【0072】
図2に示すように、自動運転エリア6内の運行ルート7には、自動運転車両4を含む各種の車両が停車すべき停車地点8が予め設定されている。運行管理システム21は、運行ルート7上に予め設定された停車地点8に停車した自動運転車両4を含む各種の車両が存在する場合、運行ルート7において停車地点8から先のルートの設定を指令する運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、運行ルート7において停車地点8から先のルートで安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定して、保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信した場合、停車地点8に停車している自動運転車両4に運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。また、停車地点8に手動運転車両5Aが停車している場合には、運行管理システム21は、当該手動運転車両5Aに向けて運行指令DA2を地上局31及び車上局52を介して送信する。
【0073】
具体的には、運行ルート7には、複数の停車地点8が予め設定されている。各停車地点8には、車両検知器32が設けられている。運行ルート7において各停車地点8の近傍にはルート境界70が設定され、各ルート境界70において複数の単位ルートが交差するように接続されている。なお、ルート境界70は、運行ルート7において複数の単位ルートが交差する地点に設定されることに限定されず、運行管理上、比較的長い単線の単位ルートの途中地点に設定されてもよい。
【0074】
保安管理システム22は、複数の停車地点8に設けられた車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した車両検知器32の検知結果に基づいて、複数の停車地点8ごとに自動運転車両4を含む各種の車両の存在を認識して、複数の停車地点8ごとの運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、複数の停車地点8ごとに、自動運転車両4を含む各種の車両の走行方向において互いに隣り合う停車地点8間のルートが保安ルートであるかを判定して、複数の停車地点8ごとの保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、複数の停車地点8ごとに、各停車地点8に停車している自動運転車両4を含む各種の車両に向けてそれぞれ運行指令DA2を、地上局31を介して送信する。
【0075】
上記説明のとおり、運行ルート7上に予め設定された停車地点8に停車し、車両検知器32により検知された自動運転車両4を含む各種の車両を対象に、保安管理システム22は、停車地点8から先のルートで安全の確保された保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定することができ、運行管理システム21は、運行指令DA2を送信することができる。自動運転車両4を含む各種の車両は、停車地点8に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に基づいて、保安条件に従って保安ルートに沿って走行することができる。これにより、自動運転車両4を含む各種の車両は、保安ルート上において、他の車両などとの衝突が回避されて、横転等を抑制可能な制限速度の条件などに基づき安全性が確保された状態で、走行することができる。なお、自動運転車両4を含む各種の車両が保安ルートに沿って走行して保安ルートにおける目標到着点となる停車地点8に設けられた車両検知器32により検知されると、運行管理システム21は自動運転車両4を含む各種の車両が保安ルートを走行済みとなったことを認識し、保安管理システム22は保安ルート及び制限速度を含む保安条件の設定を解除する。この場合には、複数の停車地点8のうちの一の停車地点8に後行の自動運転車両4を含む各種の車両が停車している状態で、一の停車地点8よりも先の他の停車地点8に先行の自動運転車両4を含む各種の車両が到着したことを車両検知器32により検知されると、運行管理システム21は、後行の車両に対応した運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信することになる。保安管理システム22は、運行管理システム21から運行ルート設定指令DA1を受信した場合に、後行の車両に対応した安全性を判定し、目標到着点となる他の停車地点8に先行の車両が存在しなくなった場合に保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定して、当該保安条件の情報を示す保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信することになる。
【0076】
また、自動運転エリア6内には、自動運転車両4と特殊車両5などの手動運転車両5Aとが共存する。この場合、保安管理システム22は、複数の停車地点8に設けられた車両検知器32により手動運転車両5Aが検知された場合についても、当該車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。これにより、運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した車両検知器32の検知結果に基づいて、複数の停車地点8ごとに手動運転車両5Aの存在を認識することができる。
【0077】
自動運転エリア6内において、複数の停車地点8の一部または全部の近傍には、交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方が設置されている。本実施形態では、複数の停車地点8の全部の近傍に、交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方が設置されている。手動運転車両5Aは、自動運転エリア6内に設置された交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方により報知される報知情報に従って、ドライバーの手動運転、或いは操作者による遠隔操作の運転によって走行する。このように、自動運転車両4と手動運転車両5Aとが共存する状況下において、保安管理システム22または運行管理システム21は、自動運転エリア6内における自動運転車両4の位置情報DC2、手動運転車両5Aの位置情報DD5に基づいて、自動運転エリア6内に設置された交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方を作動させる。この場合、手動運転車両5Aのドライバー或いは遠隔操作の操作者は、交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方により報知される報知情報に従って手動運転車両5Aを運転することにより、運行ルート7に沿った自動運転車両4の自動走行に応じて、手動運転車両5Aを走行させることができる。
【0078】
図3は、手動運転車両5Aに搭載される端末装置5Bのブロック図である。手動運転車両5Aは、自動運転エリア6内において、自動運転車両4とともに、保安管理システム22によって安全性が管理された上で、運行管理システム21によって運行が管理される。この場合、運行管理システム21と手動運転車両5Aとは、手動運転車両5Aに搭載される端末装置5Bを介して通信可能に接続されている。端末装置5Bは、例えばタブレットで構成される。端末装置5Bは、自動運転エリア6内における手動運転車両5Aの安全を確保するための保安条件を示す保安条件情報DB1が含まれる運行指令DA2をドライバーが認識可能に報知するために用いられる。手動運転車両5Aのドライバーは、端末装置5Bにより報知される運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に従って手動運転車両5Aを走行させることができる。この場合、万が一、交通信号機33及び案内表示器34が故障した場合でも、ドライバーは、手動運転車両5Aを安全に走行させることができる。
【0079】
自動運転エリア6内に自動運転車両4と手動運転車両5Aとの各種の車両が共存する状況下において、保安管理システム22は、既述のとおり、各種の車両を対象に、保安ルート及び制限速度を含む保安条件を設定し、当該保安条件の情報を示す保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、手動運転車両5Aを対象とした保安条件情報DB1を受信した場合、手動運転車両5Aに搭載される端末装置5Bに対して保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を送信する。
【0080】
図3に示すように、端末装置5Bは、情報処理が可能なプロセッサー5B1と、通信ユニット5B2と、報知ユニット5B3と、プログラム記憶ユニット5B4と、を備える。
【0081】
通信ユニット5B2は、プロセッサー5B1により制御され、運行管理システム21から送信された各種の情報を受信する。報知ユニット5B3は、プロセッサー5B1により制御され、自動運転エリア6内においてドライバーが手動運転車両5Aを運転するために必要な各種の情報やデータを報知する。報知ユニット5B3は、各種の情報やデータを報知することが可能であれば、その構造は特に限定されない。報知ユニット5B3は、例えば、画像やテキストなどの視覚データを表示するディスプレイ等の表示ユニット、音声やブザー音などの聴覚データを出力するユニット、光の点灯及び点滅などの視覚データを出力するインジケータやパトライト(登録商標)、振動を発生させるバイブレータ、などによって構成される。
【0082】
プロセッサー5B1は、機能構成として、通信制御ユニット5B11と、変換情報記憶ユニット5B12と、変換ユニット5B13と、報知制御ユニット5B14と、を含む。
【0083】
通信制御ユニット5B11は、運行管理システム21から送信された運行指令DA2を、通信ユニット5B2を介して受信する。
【0084】
変換情報記憶ユニット5B12は、保安条件を示す保安条件情報DB1が含まれる運行指令DA2を、手動運転車両5Aのドライバーが認識可能な認識可能データDE2に対応付けた変換情報DEを記憶する。つまり、変換情報記憶ユニット5B12に記憶された変換情報DEは、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1が示す保安条件に含まれる保安ルート、制限速度、走行許可及び走行停止などの条件ごとに認識可能データDE2が対応付けられた情報である。なお、認識可能データDE2は、手動運転車両5Aのドライバーが認識可能なデータであれば特に限定されるものではない。認識可能データDE2は、例えば、画像やテキスト、或いは光の点灯及び点滅などの視覚データ、音声やブザー音などの聴覚データ、振動などの触覚データである。
【0085】
変換ユニット5B13は、変換情報記憶ユニット5B12に記憶された変換情報DEを参照して、通信制御ユニット5B11が受信した、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を認識可能データDE2に変換する。
【0086】
報知制御ユニット5B14は、変換ユニット5B13で変換された認識可能データDE2を報知ユニット5B3に報知させる。この場合、報知ユニット5B3は、報知制御ユニット5B14の制御に基づいて、認識可能データDE2を報知する。
【0087】
手動運転車両5Aに搭載される端末装置5Bでは、保安管理システム22によって設定された保安条件を示す保安条件情報DB1が含まれた、運行管理システム21から送信された運行指令DA2を、変換ユニット5B13において認識可能データDE2に変換する。そして、報知制御ユニット5B14の制御に基づき報知ユニット5B3は、変換ユニット5B13で変換された認識可能データDE2を報知する。この場合、自動運転エリア6内に自動運転車両4と手動運転車両5Aとが共存する状況下において、手動運転車両5Aを運転するドライバーは、端末装置5Bで報知された認識可能データDE2に基づいて、保安管理システム22により設定された保安条件情報DB1が示す保安条件を認識しながら、保安ルートに沿って手動運転車両5Aを運転することができる。例えば、ドライバーは、認識可能データDE2に基づき走行許可であることを認識すると、安全の確保された保安ルート上を、車両の横転等が抑制可能な制限速度の範囲で手動運転車両5Aを走行させることができる。また、ドライバーは、認識可能データDE2に基づき走行停止であることを認識すると、保安ルート上で手動運転車両5Aの走行を停止させることができる。
【0088】
プログラム記憶ユニット5B4は、プログラムPGを格納する。プログラムPGは、手動運転車両5Aに搭載される端末装置5Bを含めた保安管理システム22及び運行管理システム21が行う各処理を、プロセッサー5B1を含めた一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。このプログラムPGは、保安管理システム22により設定された保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、通信ユニット5B2を介して運行管理システム21から受信する処理と、変換情報DEを参照して運行指令DA2を認識可能データDE2に変換する処理と、変換された認識可能データDE2を報知ユニット5B3を介して報知する処理と、をプロセッサー5B1を含めた一又は複数のプロセッサーに実行させる。
【0089】
端末装置5Bのプロセッサー5B1は、プログラム記憶ユニット5B4に格納されたプログラムPGに従って、通信制御ユニット5B11において運行指令DA2を受信する処理と、変換ユニット5B13において運行指令DA2を認識可能データDE2に変換する処理と、報知制御ユニット5B14において報知ユニット5B3から認識可能データDE2を報知する処理と、の各処理を行うことができる。
【0090】
上記のとおり、手動運転車両5Aは、ドライバーが運転する車両であって、自動運転エリア6内に予め設定された運行ルート7を自動走行する自動運転車両4とともに、保安管理システム22によって安全性が管理された上で、運行管理システム21によって運行が管理され、端末装置5Bが搭載されている。
【0091】
なお、手動運転車両5Aは、端末装置5Bを構成するプロセッサー5B1、通信ユニット5B2、及び報知ユニット5B3の各々が組み込まれていてもよい。この場合、手動運転車両5Aは、通信ユニット5B2を介して運行管理システム21から運行指令DA2を受信する通信制御ユニット5B11と、運行指令DA2と認識可能データDE2とを対応付けた変換情報DEを記憶する変換情報記憶ユニット5B12と、変換情報DEを参照して運行指令DA2を認識可能データDE2に変換する変換ユニット5B13と、報知制御ユニット5B14の制御に基づき認識可能データDE2を報知する報知ユニット5B3と、を備える。この手動運転車両5Aによれば、保安管理システム22によって設定された保安条件を示す保安条件情報DB1が含まれた、運行管理システム21から送信された運行指令DA2を認識可能データDE2に変換し、その変換された認識可能データDE2を報知する。この場合、手動運転車両5Aを運転するドライバーは、報知された認識可能データDE2に基づいて、保安管理システム22により設定された保安条件情報DB1が示す保安条件を認識しながら、保安ルートに沿って手動運転車両5Aを運転することができる。
【0092】
また、自動運転車両4は、手動運転モードに設定されてドライバーの運転操作によって走行する場合に備えて、端末装置5Bが搭載されていてもよい。また、自動運転車両4は、端末装置5Bの機能構成が制御ユニット41に組み込まれていてもよい。この場合、自動運転車両4において、制御ユニット41は、車上局42を介して運行管理システム21から運行指令DA2を受信する通信制御ユニット5B11としての機能と、運行指令DA2と認識可能データDE2とを対応付けた変換情報DEを記憶する変換情報記憶ユニット5B12としての機能と、変換情報DEを参照して運行指令DA2を認識可能データDE2に変換する変換ユニット5B13としての機能と、認識可能データDE2を報知する報知ユニット5B3としての機能と、を備える。このような自動運転車両4では、手動運転モードに設定されてドライバーが運転操作する状況下において、保安管理システム22によって設定された保安条件を示す保安条件情報DB1が含まれた、運行管理システム21から送信された運行指令DA2を認識可能データDE2に変換し、その変換された認識可能データDE2を報知する。この場合、手動運転モードに設定された状態の自動運転車両4を手動で運転するドライバーは、報知された認識可能データDE2に基づいて、保安管理システム22により設定された保安条件情報DB1が示す保安条件を認識しながら、保安ルートに沿って自動運転車両4を手動で運転することができる。
【0093】
図2に示すように、本実施形態では、自動運転エリア6は、インターチェンジエリア61と、第1作業エリア62と、第2作業エリア63と、第3作業エリア64とを有している。自動運転エリア6内では、インターチェンジエリア61、第1作業エリア62、第2作業エリア63、及び第3作業エリア64の各エリアが、運行ルート7により繋がっている。このため、自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両は、運行ルート7に沿って走行することにより、各エリアに移動することができる。
【0094】
インターチェンジエリア61は、自動運転エリア6の内外を区分するインターチェンジ611を有するエリアである。インターチェンジ611では、自動運転エリア6内の運行ルート7と自動運転エリア6外の一般道路7Aとが相互に接続されている。インターチェンジ611には、自動運転エリア6に対する自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の入退出が行われる入退出地点81が停車地点8として設定されている。この入退出地点81には、車両検知器32が設けられている。インターチェンジ611には、運行ルート7上において入退出地点81の前方に踏切遮断機351が設置されている。また、インターチェンジエリア61内には、車両検知器32の設けられた複数の入退出待機地点811が設定されている。入退出待機地点811は、インターチェンジエリア61内において自動運転車両4などの各種の車両が待機するための駐車場として機能する停車地点8である。
【0095】
運行ルート7において入退出地点81から延びてインターチェンジエリア61を出て直ぐの場所には、車両検知器32の設けられた停車地点8として第1待機地点82が設定されている。運行ルート7において入退出地点81とは反対側に第1待機地点82から延びるルートとしては、ルート境界70を介して、第1作業エリア62に向かって延びるルートと、第2作業エリア63に向かって延びるルートと、第3作業エリア64に向かって延びるルートと、が存在する。第1待機地点82からルート境界70を介して第2作業エリア63に向かって延びるルートには、車両検知器32の設けられた停車地点8として第2待機地点83が設定されている。また、第1待機地点82からルート境界70を介して第3作業エリア64に向かって延びるルートには、車両検知器32の設けられた停車地点8として、第3待機地点84及び第4待機地点85が所定の間隔をおいて設定されている。
【0096】
なお、本実施形態では、第3待機地点84と第4待機地点85との間の区間は、運行ルート7が第1ルート71と第2ルート72とを含む複数車線に分離された複数車線区間65となっている。複数車線区間65では、複数車線の車線数は、第1ルート71及び第2ルート72の2本に限定されず、3本以上であってもよい。また、複数車線区間65において、第1ルート71には、車両検知器32の設けられた停車地点8として第1通過待機地点841が設定され、第2ルート72には、車両検知器32の設けられた停車地点8として第2通過待機地点851が設定されている。
【0097】
第1作業エリア62は、自動運転車両4の荷台401に被運搬物を積み込む作業、又は、荷台401から被運搬物を荷降ろしする作業が行われるエリアである。第1作業エリア62には、手動運転車両5Aとしての特殊車両5が配置されている。第1作業エリア62には、第1作業エリア62外から第1作業エリア62に到着した自動運転車両4を含む各種の車両が待機する第1到着地点8Aが停車地点8として設定されるとともに、第1作業エリア62内から外に出発する自動運転車両4を含む各種の車両が待機する第1出発地点8Bが停車地点8として設定されている。第1到着地点8A及び第1出発地点8Bには、車両検知器32がそれぞれ設けられている。また、第1作業エリア62には、被運搬物の積み込み作業又は荷降ろし作業が行われる第1作業地点91が設定されている。第1作業地点91には、車両検知器32が設けられている。
【0098】
第2作業エリア63は、ベルトコンベア等により運搬された被運搬物が一定期間保管されるエリアであって、当該保管された被運搬物を自動運転車両4の荷台401に積み込む作業が行われるエリアである。第2作業エリア63には、手動運転車両5Aとしての特殊車両5が配置されている。第2作業エリア63には、第2作業エリア63外から第2作業エリア63に到着した自動運転車両4を含む各種の車両が待機する第2到着地点8Cが停車地点8として設定されるとともに、第2作業エリア63内から外に出発する自動運転車両4を含む各種の車両が待機する第2出発地点8Dが停車地点8として設定されている。第2到着地点8C及び第2出発地点8Dには、車両検知器32がそれぞれ設けられている。また、第2作業エリア63には、被運搬物の積み込み作業が行われる第2作業地点92が設定されている。第2作業地点92には、車両検知器32が設けられている。
【0099】
第3作業エリア64は、自動運転エリア6外の船などに被運搬物を積み込むための収集作業がホッパー装置361によって行われるエリアであって、自動運転車両4の荷台401から被運搬物を荷降ろしする作業が行われるエリアである。第3作業エリア64には、第3作業エリア64外から第3作業エリア64に到着した自動運転車両4を含む各種の車両が待機する第3到着地点8Eが停車地点8として設定されるとともに、第3作業エリア64内から外に出発する自動運転車両4を含む各種の車両が待機する第3出発地点8Fが停車地点8として設定されている。第3到着地点8E及び第3出発地点8Fには、車両検知器32がそれぞれ設けられている。また、第3作業エリア64には、被運搬物の荷降ろし作業が行われる第3作業地点93が設定されている。第3作業地点93には、車両検知器32が設けられている。更にまた、第3作業エリア64には、第3到着地点8Eと第3作業地点93との間に作業待機地点86が停車地点8として設定されている。作業待機地点86には、車両検知器32が設けられている。
【0100】
本実施形態では、運行管理システム21は、第1作業エリア62内の第1到着地点8A及び第1出発地点8Bの少なくとも何れか1つの地点に近接する位置に、自動運転車両4を含む各種の車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点8Gを設定してもよい。同様に、運行管理システム21は、第2作業エリア63内の第2到着地点8C及び第2出発地点8Dの少なくとも何れか1つの地点に近接する位置に、自動運転車両4を含む各種の車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点8Gを設定してもよい。また、運行管理システム21は、第3作業エリア64内の第3到着地点8E及び第3出発地点8Fの少なくとも何れか1つの地点に近接する位置に、自動運転車両4を含む各種の車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点8Gを設定してもよい。更にまた、運行管理システム21は、第1待機地点82、第2待機地点83、及び第3待機地点84に近接する位置に、自動運転車両4を含む各種の車両を一時的に停車させることが可能な一時停車地点8Gを設定してもよい。
【0101】
上記のとおり、運行管理システム21は、第1到着地点8A、第1出発地点8B、第2到着地点8C、第2出発地点8D、第3到着地点8E、第3出発地点8F、第1待機地点82、第2待機地点83、及び第3待機地点84などの停車地点8に近接する位置に、一時停車地点8Gを設定する。これにより、運行管理システム21は、先行の自動運転車両4を含む各種の車両が停車している停車地点8に向かって後行の自動運転車両4を含む各種の車両が走行してくる場合に、当該後行の車両を一時停車地点8Gに停車させることができる。この場合、運行管理システム21は、一時停車地点8Gに停車する後行の車両については停車地点8に停車しているものと見做す。これにより、運行管理システム21は、一時停車地点8Gに停車している後行の車両を停車地点8に停車しているものと見做して、後行の車両の運行を効率よく管理することができる。
【0102】
一時停車地点8Gに停車している後行の車両が自動運転車両4である場合、当該自動運転車両4は、先行の車両が停車地点8から移動した後に、計測ユニット43の計測結果を参照しながら停車地点8まで自動走行し、当該停車地点8で停車する。
【0103】
また、複数の停車地点8のうちの一の停車地点8に一の自動運転車両4を含む各種の車両(後行の車両)が停車している状態で、一の停車地点8よりも先の他の停車地点8に近接する一時停車地点8Gに他の自動運転車両4を含む各種の車両(先行の車両)が停車していない場合を想定する。この場合、運行管理システム21は、後行の車両が停車している一の停車地点8よりも先の他の停車地点8に先行の車両が停車していないものと見做して、一の停車地点8を出発点とし他の停車地点8を到着点とするルートの設定を指令する運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、運行管理システム21は、運行ルート設定指令DA1に応答する情報として保安条件情報DB1を保安管理システム22から受信し、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を後行の車両に対して、地上局31を介して送信することになる。これにより、運行管理システム21は、後行の車両の目標到着点となる停車地点8に先行の車両が停車していないものと見做して、後行の車両の運行を効率よく管理することができる。
【0104】
図4は、自動運転エリア6内のインターチェンジエリア61における自動運転車両4を含む各種の車両の運行管理を説明するための図である。
【0105】
自動運転エリア6外では、自動運転車両4は、ドライバーの運転操作、或いは、操作者による遠隔操作によって走行し、自動運転エリア6内、より詳しくは自動運転エリア6内のインターチェンジ611に設定された入退出地点81まで移動される。保安管理システム22は、インターチェンジ611に設定された入退出地点81に設けられた車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した車両検知器32の検知結果に基づいて、入退出地点81に停車した自動運転車両4が存在することを認識する。運行管理システム21は、自動運転エリア6外から入退出地点81に進入した自動運転車両4については、当該自動運転車両4から車両情報DC1を受信し、当該車両情報DC1を登録する。車両情報DC1が登録された自動運転車両4は、自動、手動又は遠隔でのモード切替スイッチ44の操作によって運転モードが自動運転モードに設定される。一方、入退出地点81から自動運転エリア6外へ退出する自動運転車両4については、運行管理システム21は、車両情報DC1の登録を抹消する。車両情報DC1の登録が抹消された自動運転車両4は、自動、手動又は遠隔でのモード切替スイッチ44の操作によって運転モードが手動運転モードに設定される。なお、車両情報DC1は、自動運転車両4に固有の情報であり、車両の識別情報、車両サイズに関する情報、車両における被運搬物の積載可能量に関する情報などを含む。
【0106】
上記のように、運行管理システム21は、入退出地点81に停車している自動運転車両4を対象に、当該自動運転車両4に固有の車両情報DC1の登録、及び登録抹消を行う。この場合、車両情報DC1が登録されている自動運転車両4を対象に、保安管理システム22によって安全性を管理することができるとともに、運行管理システム21によって運行を管理することができる。
【0107】
また、運行管理システム21は、自動運転エリア6内に存在する特殊車両5を含む手動運転車両5Aに固有の車両情報DD1についても、登録するように構成されていてもよい。この場合、運行管理システム21は、車両情報DD1が登録されている自動運転車両4とともに、車両情報DD1が登録された手動運転車両5Aを管理することができる。
【0108】
入退出地点81に停車している自動運転車両4を含む各種の車両の車両情報DC1、DD1の登録が完了すると、運行管理システム21は、運行ルート7において入退出地点81から第1待機地点82までの間の区間のルートの設定を指令する運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、車両情報DC1、DD1が登録された全ての車両の位置情報DC2、DD5に基づいて、入退出地点81から第1待機地点82までの間の区間が保安ルートであるかを判定する。保安ルートである場合、保安管理システム22は、入退出地点81から第1待機地点82までの間の区間のルートを保安ルートとする保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。その後、保安管理システム22は、運行管理システム21の指令に基づいて、インターチェンジ611内の踏切遮断機351が開くように作動させる。運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1及び踏切遮断機351の開完了状態情報を受信した場合に、入退出地点81に停車している自動運転車両4を含む各種の車両に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31を介して送信する。
【0109】
自動運転車両4を含む各種の車両は、入退出地点81に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に基づいて、入退出地点81から第1待機地点82まで走行し、第1待機地点82で停車する。保安管理システム22は、自動運転車両4を含む各種の車両が踏切遮断機351を通過した後に、踏切遮断機351が閉じるように作動させる。自動運転車両4を含む各種の車両は、第1待機地点82で停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0110】
図5は、自動運転エリア6内の第1作業エリア62及び第2作業エリア63における自動運転車両4を含む各種の車両の運行管理を説明するための図である。
【0111】
保安管理システム22は、第1作業エリア62内に設定された第1到着地点8Aに設けられた車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した車両検知器32の検知結果に基づいて、第1到着地点8Aに停車した自動運転車両4を含む各種の車両が存在することを認識する。
【0112】
第1到着地点8Aに停車した車両が自動運転車両4である場合について以下に説明する。まず、第1到着地点8Aに停車した自動運転車両4に対して被運搬物の積み込み作業を行う場合を想定する。この場合、自動運転車両4は、積み込まれた被運搬物を、第1作業エリア62から複数車線区間65を経由して第3作業エリア64に運搬することになる。
【0113】
第1作業エリア62内に配置される手動運転車両5Aとしての特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、第1到着地点8Aに自動運転車両4が到着したことを確認すると、位置指定ボタン53を操作して停車位置指定指令DD2を発信させる。停車位置指定指令DD2は、特殊車両5が被運搬物の積み込み作業を行う場合における、自動運転車両4の停車位置を指定するための指令を示す。停車位置指定指令DD2は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bから出力されてもよい。
【0114】
運行管理システム21は、特殊車両5から発信された停車位置指定指令DD2を、地上局31及び車上局52を介して受信すると、当該停車位置指定指令DD2の情報を含む運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。
【0115】
なお、運行管理システム21は、第1到着地点8Aに自動運転車両4が停車していること、停車位置指定指令DD2を運行管理システム21が受信したことを、特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者に報知するための情報を示す車両到着情報DD4を、地上局31及び車上局52を介して特殊車両5に発信するように構成されていてもよい。この場合、特殊車両5では、車両到着情報DD4が車両到着表示器55に表示される。或いは、運行管理システム21は、自動運転車両4が第1到着地点8Aに到着した状態で、自動運転車両4に搭載されたパトライト(登録商標)を点灯させるように構成されてもよい。この場合、特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、自動運転車両4に搭載されたパトライト(登録商標)の点灯によって、第1到着地点8Aに自動運転車両4が到着したことなどを確認することができる。なお、車両到着情報DD4は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bによって報知されてもよい。
【0116】
保安管理システム22は、運行管理システム21から運行ルート設定指令DA1を受信した場合、第1到着地点8Aから停車位置指定指令DD2で示される停車位置に対応した第1作業地点91までの作業進入ルートを保安ルートとする保安条件を設定する。そして、保安管理システム22は、作業進入ルートの情報を含む保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信した場合に、第1到着地点8Aに停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0117】
自動運転車両4は、第1到着地点8Aに停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に基づいて、第1到着地点8Aから第1作業地点91までの作業進入ルートに沿って自動走行し、第1作業地点91で停車する。第1作業地点91に自動運転車両4が停車すると、特殊車両5は、自動運転車両4の荷台401に被運搬物を積み込む作業を行う。自動運転車両4が停車する第1作業地点91は、特殊車両5から発信された停車位置指定指令DD2で示される停車位置に対応した作業地点であるので、第1作業地点91における特殊車両5の作業効率が向上する。
【0118】
第1作業地点91において特殊車両5が自動運転車両4の荷台401に被運搬物を積み込む作業を行う場合、運行管理システム21は、自動運転車両4が第1作業地点91に横付けで停車する指示を示す情報を含む運行指令DA2を、第1到着地点8Aに停車している自動運転車両4に送信することが好ましい。この場合、自動運転車両4は、第1到着地点8Aから第1作業地点91までの作業進入ルートに沿って自動走行し、第1作業地点91に横付けで停車する。これにより、特殊車両5による被運搬物の積み込み作業の作業効率が向上する。
【0119】
第1作業地点91における自動運転車両4に対する被運搬物の積み込み作業が完了すると、特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、出発要請ボタン54を操作して出発要請指令DD3を発信させる。出発要請指令DD3は、特殊車両5による被運搬物の積み込み作業の完了後に自動運転車両4の出発を要請するための指令を示す。出発要請指令DD3は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bから出力されてもよい。
【0120】
運行管理システム21は、特殊車両5から発信された出発要請指令DD3を、地上局31及び車上局52を介して受信すると、当該出発要請指令DD3の情報を含む運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第1作業地点91から第1出発地点8Bまでの区間のルートを保安ルートとする保安条件を設定する。そして、保安管理システム22は、第1作業地点91から第1出発地点8Bまでの区間のルートの情報を含む保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信した場合に、第1作業地点91に停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0121】
自動運転車両4は、第1作業地点91に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に基づいて、第1作業地点91から第1出発地点8Bまで自動走行し、第1出発地点8Bで停車する。自動運転車両4は、第1出発地点8Bで停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0122】
次に、第1到着地点8Aに停車した自動運転車両4から被運搬物を荷降ろしする作業を行う場合を想定する。この場合、自動運転車両4は、第2作業エリア63において積み込まれた被運搬物を、第2作業エリア63から第1作業エリア62に運搬することになる。
【0123】
特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、第1到着地点8Aに自動運転車両4が到着したことを確認すると、位置指定ボタン53を操作して停車位置指定指令DD2を発信させる。停車位置指定指令DD2は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bから出力されてもよい。
【0124】
運行管理システム21は、特殊車両5から発信された停車位置指定指令DD2を、地上局31及び車上局52を介して受信すると、当該停車位置指定指令DD2の情報を含む運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第1到着地点8Aから停車位置指定指令DD2で示される停車位置に対応した第1作業地点91までの作業進入ルートを保安ルートとする保安条件を設定する。そして、保安管理システム22は、作業進入ルートの情報を含む保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信した場合に、第1到着地点8Aに停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0125】
自動運転車両4は、第1到着地点8Aに停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、第1到着地点8Aから第1作業地点91までの作業進入ルートに沿って自動走行し、第1作業地点91で停車する。第1作業地点91に停車した状態で、自動運転車両4は、ダンプ装置45の作動によって荷台401を傾けて、荷台401から被運搬物を荷降ろしする作業を行う。
【0126】
第1作業地点91において自動運転車両4が被運搬物の荷降ろし作業を行う場合、運行管理システム21は、自動運転車両4が第1作業地点91にバックで停車する指示を示す情報を含む運行指令DA2を、第1到着地点8Aに停車している自動運転車両4に送信することが好ましい。この場合、自動運転車両4は、第1到着地点8Aから第1作業地点91までの作業進入ルートに沿って自動走行し、第1作業地点91にバックで停車する。これにより、ダンプ装置45の作動による被運搬物の荷降ろし作業の作業効率が向上する。
【0127】
第1作業地点91における自動運転車両4からの被運搬物の荷降ろし作業が完了すると、特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、出発要請ボタン54を操作して出発要請指令DD3を発信させる。出発要請指令DD3は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bから出力されてもよい。
【0128】
運行管理システム21は、特殊車両5から発信された出発要請指令DD3を、地上局31及び車上局52を介して受信すると、当該出発要請指令DD3の情報を含む運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第1作業地点91から第1出発地点8Bまでの区間のルートを保安ルートとする保安条件を設定する。そして、保安管理システム22は、第1作業地点91から第1出発地点8Bまでの区間のルートの情報を含む保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信した場合に、第1作業地点91に停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0129】
自動運転車両4は、第1作業地点91に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に基づいて、第1作業地点91から第1出発地点8Bまで自動走行し、第1出発地点8Bで停車する。自動運転車両4は、第1出発地点8Bで停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0130】
また、保安管理システム22は、第2作業エリア63内に設定された第2到着地点8Cに設けられた車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した車両検知器32の検知結果に基づいて、第2到着地点8Cに停車した自動運転車両4が存在することを認識する。この場合、第2到着地点8Cに停車した自動運転車両4に対しては、第2作業エリア63において被運搬物の積み込み作業が行われる。自動運転車両4は、積み込まれた被運搬物を、第2作業エリア63から第1作業エリア62に運搬することになる。
【0131】
第2作業エリア63内に配置される特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、第2到着地点8Cに自動運転車両4が到着したことを確認すると、位置指定ボタン53を操作して停車位置指定指令DD2を発信させる。停車位置指定指令DD2は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bから出力されてもよい。
【0132】
運行管理システム21は、特殊車両5から発信された停車位置指定指令DD2を、地上局31及び車上局52を介して受信すると、当該停車位置指定指令DD2の情報を含む運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第2到着地点8Cから停車位置指定指令DD2で示される停車位置に対応した第2作業地点92までの作業進入ルートを保安ルートとする保安条件を設定して、保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、第2到着地点8Cに停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1と横付け停車の指示を示す情報とを含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0133】
自動運転車両4は、第2到着地点8Cに停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、第2到着地点8Cから第2作業地点92までの作業進入ルートに沿って自動走行し、第2作業地点92に横付けで停車する。第2作業地点92に自動運転車両4が停車すると、特殊車両5は、自動運転車両4の荷台401に被運搬物を積み込む作業を行う。第2作業地点92における自動運転車両4に対する被運搬物の積み込み作業が完了すると、特殊車両5のドライバー或いは遠隔操作の操作者は、出発要請ボタン54を操作して出発要請指令DD3を発信させる。出発要請指令DD3は、特殊車両5に搭載された端末装置5Bから出力されてもよい。
【0134】
運行管理システム21は、特殊車両5から発信された出発要請指令DD3を、地上局31及び車上局52を介して受信すると、当該出発要請指令DD3の情報を含む運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第2作業地点92から第2出発地点8Dまでの区間のルートを保安ルートとする保安条件を設定して、保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、第2作業地点92に停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0135】
自動運転車両4は、第2作業地点92に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、第2作業地点92から第2出発地点8Dまで自動走行し、第2出発地点8Dで停車する。自動運転車両4は、第2出発地点8Dで停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0136】
図6は、自動運転エリア6内の第3作業エリア64における自動運転車両4を含む各種の車両の運行管理を説明するための図である。
【0137】
保安管理システム22は、第3作業エリア64内に設定された第3到着地点8Eに設けられた車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した車両検知器32の検知結果に基づいて、第3到着地点8Eに停車した自動運転車両4を含む各種の車両が存在することを認識する。以下では、第3到着地点8Eに停車した車両が自動運転車両4である場合について説明する。この場合、第3到着地点8Eに停車した自動運転車両4は、第3作業エリア64に配置されるホッパー装置361に対して被運搬物を荷降ろしする作業を行うことになる。
【0138】
運行管理システム21は、第3作業エリア64内において第3到着地点8Eから作業待機地点86までの間の区間のルートの設定と、作業待機地点86から第3作業地点93までの間の区間のルートの設定とを指令する運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第3到着地点8Eから作業待機地点86までの作業進入ルートを保安ルートとする保安条件を設定し、作業待機地点86から第3作業地点93までの作業進入ルートを保安ルートとする保安条件を設定して、保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、第3到着地点8Eに停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1とバック停車の指示を示す情報とを含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0139】
自動運転車両4は、第3到着地点8Eに停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、第3到着地点8Eから作業待機地点86まで自動走行し、作業待機地点86にバックで一時停車する。その後、自動運転車両4は、作業待機地点86から第3作業地点93までバックで自動走行し、第3作業地点93にバックで停車する。
【0140】
第3作業地点93に停車した状態で、自動運転車両4は、ホッパー制御装置36から荷降ろし指令、または、荷降ろし可能である旨の情報を運行管理システム21経由で受信した場合に、ダンプ装置45の作動によって荷台401を傾けて、荷台401から被運搬物を荷降ろしする作業を行う。これにより、第3作業地点93に被運搬物が積載される。ホッパー装置361は、第3作業地点93に積載された被運搬物を、自動運転エリア6外の船などに積み込むための収集作業を行う。
【0141】
第3作業地点93における自動運転車両4からの被運搬物の荷降ろし作業が完了すると、運行管理システム21は、第3作業地点93から第3出発地点8Fまでの間の区間のルートの設定を指令する運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。この場合、保安管理システム22は、第3作業地点93から第3出発地点8Fまでのルートを保安ルートとする保安条件を設定して、保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、第3作業地点93に停車している自動運転車両4に、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。
【0142】
自動運転車両4は、第3作業地点93に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、運行指令DA2に含まれる保安条件情報DB1に基づいて、第3作業地点93から第3出発地点8Fまで自動走行し、第3出発地点8Fで停車する。自動運転車両4は、第3出発地点8Fで停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0143】
図7は、自動運転エリア6内の複数車線区間65における自動運転車両4を含む各種の車両の運行管理を説明するための図である。以下では、複数車線区間65を走行する車両が自動運転車両4である場合を例に挙げて説明する。
【0144】
図7に示すように、自動運転エリア6には、第3待機地点84と第4待機地点85との間において、運行ルート7が第1ルート71と第2ルート72とを含む複数車線に分離された複数車線区間65が存在している。複数車線区間65において、第1ルート71には第1通過待機地点841が設定され、第2ルート72には第2通過待機地点851が設定されている。
【0145】
保安管理システム22は、第3待機地点84及び第4待機地点85に設けられた車両検知器32の検知結果を運行管理システム21に送信する。運行管理システム21は、保安管理システム22から受信した各車両検知器32の検知結果に基づいて、第3待機地点84及び第4待機地点85の各々に走行方向が対向関係にある自動運転車両4が存在することを認識する。そして、運行管理システム21は、第3待機地点84及び第4待機地点85ごとの運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。
【0146】
この場合、保安管理システム22は、2つの第3待機地点84及び第4待機地点85において、一方の第3待機地点84に対しては第1ルート71を保安ルートとする保安条件を設定し、他方の第4待機地点85に対しては第2ルート72を保安ルートとする保安条件を設定する。そして、保安管理システム22は、設定した各保安条件の情報を示す保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。
【0147】
運行管理システム21は、保安管理システム22から保安条件情報DB1を受信すると、第3待機地点84及び第4待機地点85の各々に停車している各自動運転車両4に運行指令DA2を、地上局31及び車上局42を介して送信する。具体的には、第3待機地点84に停車している自動運転車両4に対しては、運行管理システム21は、第1ルート71を保安ルートとする保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を送信する。一方、第4待機地点85に停車している自動運転車両4に対しては、運行管理システム21は、第2ルート72を保安ルートとする保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を送信する。
【0148】
第3待機地点84に停車している自動運転車両4は、運行指令DA2に基づいて、第3待機地点84から第1ルート71上の第1通過待機地点841まで自動走行し、第1通過待機地点841で一時停車する。一方、第4待機地点85に停車している自動運転車両4は、運行指令DA2に基づいて、第4待機地点85から第2ルート72上の第2通過待機地点851まで自動走行し、第2通過待機地点851で一時停車する。
【0149】
第1通過待機地点841で一時停車している自動運転車両4は、第4待機地点85に停車していた自動運転車両4が第2ルート72へ移動した場合に、第1通過待機地点841から第4待機地点85まで第1ルート71に沿って自動走行し、第4待機地点85で停車する。自動運転車両4は、第4待機地点85で停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0150】
一方、第2通過待機地点851で一時停車している自動運転車両4は、第3待機地点84に停車していた自動運転車両4が第1ルート71へ移動した場合に、第2通過待機地点851から第3待機地点84まで第2ルート72に沿って自動走行し、第3待機地点84で停車する。自動運転車両4は、第3待機地点84で停車した状態で、次の運行指令DA2を受信するまで待機する。
【0151】
上記のとおり、運行ルート7上の複数車線区間65においては、第3待機地点84に停車している自動運転車両4は第1ルート71に沿って自動走行し、第4待機地点85に停車している自動運転車両4は第2ルート72に沿って自動走行することになる。この場合、第3待機地点84及び第4待機地点85にそれぞれ停車している各自動運転車両4の走行方向が対向関係にあったとしても、各自動運転車両4は、車両同士の衝突が回避されて安全性が確保された状態で、複数車線区間65を自動走行することができる。
【0152】
図7に示すように、複数車線区間65において、第1ルート71と第2ルート72との間に少なくとも1つの迂回ルート73が設定されてもよい。この場合、保安管理システム22は、第1ルート71及び第2ルート72の少なくともいずれかのルートが保安ルートとして設定できない場合には、迂回ルート73を保安ルートとする保安条件を設定する。
【0153】
運行ルート7上の複数車線区間65において、散水車などの低速走行車両による作業が行われている、故障車両が停車している、ルートの一部に破損が生じている、工事中である、などが原因で、車線規制が行われる場合がある。この場合、保安管理システム22は、第1ルート71及び第2ルート72の少なくともいずれかのルートを保安ルートとして設定できない。そこで、保安管理システム22は、その対処として、第1ルート71と第2ルート72との間に設定された迂回ルート73を保安ルートとする保安条件を設定する。これにより、車線規制が行われている場所を避けるように、迂回ルート73に沿って自動運転車両4を迂回させることができる。
【0154】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
【0155】
上記の実施形態では、自動運転車両4が水砕スラグからなる被運搬物を運搬する態様について説明したが、このような態様に限られない。自動運転車両4は、水砕スラグ以外の物品や人を被運搬物として運搬する車両であってもよい。自動運転車両4が人を運搬する車両である場合には、自動運転エリア6内の第1~第3作業エリア62~64は、自動運転車両4に対して人が乗降するエリアとなる。
【0156】
上記の実施形態では、自動運転エリア6内において、管理システム2と地上局31を含む地上設備3とが、光ネットワークなどの有線通信設備を介して有線通信可能に接続されている態様について説明したが、このような態様に限られない。管理システム2、地上設備3、及び自動運転車両4は、4G,5G,LTEなどのモバイルデバイス専用の通信規格に従って無線通信可能に接続されていてもよいし、無線LANを介して接続されていてもよい。また、クラウドを用いた無線通信としてもよい。
【0157】
上記の実施形態では、管理システム2が自動運転エリア6内における自動運転車両4及び手動運転車両5Aの各種の車両の安全な運行を管理する態様について説明したが、このような態様に限られない。管理システム2は、中央指令室に設置されるオペレータコンソールを有し、監視、判断、操作(介入操作、非常時対応、手動運転車両5Aの登録など)が行われる。そのため、管理システム2は、中央監視を行うための、映像システムや放送システムなどの通話・監視システムが設けられる場合もある。
【0158】
上記の実施形態では、運行管理システム21及び保安管理システム22が互いに別個独立のコンピュータ装置によって実現される態様について説明したが、このような態様に限られない。運行管理システム21及び保安管理システム22は、1つのコンピュータ装置によって実現されてもよい。
【0159】
上記の実施形態では、車両検知器32がLiDARによって実現される態様について説明したが、このような態様に限られない。車両検知器32は、自動運転エリア6内の地中に埋設されたループコイル、カメラ、無線方向探知機、RFID(Radio Frequency Identification)、QRコード(登録商標)の検知用カメラなどであってもよい。ただし、無線方向探知機の場合は検知対象の車両に無線標識(ラジオビーコン)などを取り付ける必要があり、RFIDの場合はRFタグ、QRコード(登録商標)の検知用カメラの場合はQRコード(登録商標)が印刷されたシート等を車両に貼り付ける必要がある。また、自動運転車両4を含む各種の車両の位置を検知するために、タブレット、Airタグ、GPS発信機などの携帯型無線通信機を用いてもよい。更に、自動運転車両4の位置を検知するために、自動運転車両4に搭載された計測ユニット43を用いてもよい。
【0160】
上記の実施形態では、複数の停車地点8の各々に車両検知器32が設けられる態様について説明したが、このような態様に限られない。複数の停車地点8を集約するように1つの車両検知器32が設けられてもよい。
【0161】
上記の実施形態では、ドライバーへ手動運転車両5Aの走行を指示するために、自動運転エリア6内に報知装置としての交通信号機33及び案内表示器34の少なくともいずれか一方を設置する態様について説明したが、このような態様に限られない。例えば、報知装置は、パトライト(登録商標)などであってもよい。また、既述のとおり、手動運転車両5Aに着脱自在のタブレット等の端末装置5Bを搭載し、当該端末装置5Bの報知ユニット5B3から、手動運転車両5Aの走行が許可された保安ルート、制限速度、走行許可、及び走行停止などの保安条件に関する認識可能データDE2を報知させてもよい。手動運転車両5Aを運転するドライバーは、端末装置5Bで報知された認識可能データDE2に基づいて、保安管理システム22により設定された保安条件情報DB1が示す保安条件を認識しながら、手動運転車両5Aを運転することができる。
【0162】
上記の実施形態では、第1作業エリア62及び第2作業エリア63において、特殊車両5から発信される停車位置指定指令DD2に応じた作業地点に自動運転車両4を停車させる態様について説明したが、このような態様に限られない。例えば、第1作業エリア62及び第2作業エリア63にLiDARなどの車両検知用のセンサを設置して、当該センサにより特殊車両5の位置を検知し、その検知位置に応じた作業地点に自動運転車両4を停車させてもよい。また、このLiDARを用いて、第1作業エリア62及び第2作業エリア63内に積載された被運搬物の量を検出するようにしてもよい。
【0163】
上記の実施形態では、特殊車両5が、ドライバーの運転操作、或いは、操作者による遠隔操作によって走行する手動運転車両5Aである態様について説明したが、このような態様に限られない。特殊車両5は、自動走行可能な自動運転車両4として適用されてもよい。
【0164】
上記の実施形態に係る車両運行システム1では、運行管理システム21は、降雨などの環境条件、自動運転エリア6内において水たまりが存在するなどの路面状態を監視するように構成されてもよい。この場合、運行管理システム21は、環境条件や路面状態に応じた制限速度の情報を含む運行指令DA2を、自動運転車両4を含む各種の車両に送信してもよい。また、運行管理システム21は、自動運転エリア6内における道路工事等の道路整備状況に応じて、自動運転車両4を含む各種の車両の運行を管理するように構成されてもよい。
【0165】
上記の実施形態では、保安管理システム22が、複数の停車地点8において、自動運転車両4を含む各種の車両の走行方向において互いに隣り合う停車地点8間のルートを保安ルートとして設定する態様について説明したが、このような態様に限られない。運行管理システム21は、自動運転車両4を含む各種の車両の走行方向に互いに隣り合う停車地点8間のルート区間において、複数のルート区間が連続して構成可能な場合、複数のルート区間を一括した一括ルートの設定を指令する運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信するように構成されていてもよい。この場合、保安管理システム22は、一括ルートの安全性を判定し、一括ルートが安全の確保されたルートである場合に、当該一括ルートを保安ルートとする保安条件を設定して、保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。例えば、保安管理システム22は、第1作業エリア62内の第1出発地点8Bから複数車線区間65を経由して第3作業エリア64内の第3到着地点8Eまでのルートを一括ルートとし、この一括ルートを保安ルートとする保安条件を設定してもよい。
【0166】
この場合、運行管理システム21は、保安管理システム22に対して連続した複数のルート区間の全ての設定の指令を行うことなく、統括された一括ルートとしての設定の指令が可能となり、ルート設定の要求処理が簡素化される。そして、保安管理システム22は、一括で設定される可能性のあるルート区間を予め把握しておくことで、ルート設定の要求処理があれば、定められた組み合わせのルートからなる一括ルートを保安ルートとして速やかに設定することができる。
【0167】
また、何らかの理由で、計画通りの運行ができない場合や、運行管理システム21に故障が生じた場合などには、オペレータが手動で保安管理システム22のコンソールからルート設定を行うが、連続した複数のルートを設定する場合に一括ルートの設定が可能であれば、ヒューマンエラーの防止にも寄与する。
【0168】
上記の実施形態では、複数の停車地点8のうちの一の停車地点8に後行の車両が停車している状態で、一の停車地点8よりも先の他の停車地点8に先行の車両が到着したことを車両検知器32により検知された場合に、保安管理システム22が、後行の車両に対応した安全性を判定して保安ルートを設定する態様について説明したが、このような態様に限られない。例えば、先行の車両が、一の停車地点8と他の停車地点8との間に設定されたルート境界70を通過したことを、タイマー設定で検知するようにしてもよい。この場合、追い抜き禁止の条件下において、先行の車両が他の停車地点8に到着したことを車両検知器32により検知されなくても、先行の車両がルート境界70を通過したことをタイマー設定で検知された場合に、運行管理システム21は、後行の車両に対応した運行ルート設定指令DA1を保安管理システム22に送信する。保安管理システム22は、運行管理システム21から運行ルート設定指令DA1を受信した場合に、後行の車両に対応した安全性を判定して保安条件を設定し、当該保安条件の情報を示す保安条件情報DB1を運行管理システム21に送信する。そして、運行管理システム21は、保安条件情報DB1を含む運行指令DA2を後行の車両に送信する。後行の車両は、一の停車地点8に停車している状態で運行指令DA2を受信した場合に、先行の車両の追い抜き禁止の条件下において、一の停車地点8から他の停車地点8に向かって走行することができる。
【符号の説明】
【0169】
1 車両運行システム
2 管理システム
21 運行管理システム
22 保安管理システム
32 車両検知器
33 交通信号機(報知装置)
34 案内表示器(報知装置)
4 自動運転車両
5 特殊車両
5A 手動運転車両
5B 端末装置
6 自動運転エリア
61 インターチェンジエリア
611 インターチェンジ
62 第1作業エリア
63 第2作業エリア
64 第3作業エリア
65 複数車線区間
7 運行ルート
71 第1ルート
72 第2ルート
73 迂回ルート
8 停車地点
8G 一時停車地点
91 第1作業地点
92 第2作業地点
93 第3作業地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7