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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-09
(45)【発行日】2025-06-17
(54)【発明の名称】点眼型洗眼用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20250610BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250610BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250610BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20250610BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/08
A61K47/04
A61P27/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020113202
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011824
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平田 あずさ
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176946(WO,A1)
【文献】特開2019-214560(JP,A)
【文献】特開2014-111588(JP,A)
【文献】特開2008-024701(JP,A)
【文献】特開2006-193521(JP,A)
【文献】特開2019-218369(JP,A)
【文献】特開2014-198740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1.5万~3万のコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を異物除去作用の有効成分として含有する、異物除去用の点眼型洗眼用組成物
ここで、前記点眼型洗眼用組成物中、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は合計量で0.01~0.05w/v%であり、
前記点眼型洗眼用組成物は、点眼後に眼内から回収される点眼型洗眼用組成物である
(但し、下記(1)~(4)の組成物を除く
(1)L-アスパラギン酸カリウムを含有する点眼型洗眼用組成物
(2)クロルフェニラミンマレイン酸塩を含有する点眼型洗眼用組成物
(3)アルギン酸及び/又はその塩を含有する点眼型洗眼用組成物
(4)ピリドキシン及び/又はその塩を含有する点眼型洗眼用組成物)。
【請求項2】
更に、ホウ酸及びホウ砂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の点眼型洗眼用組成物。
【請求項3】
点眼型洗眼用組成物に、重量平均分子量が1.5万~3万のコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を合計量で0.01~0.05w/v%となるように配合する、点眼型洗眼用組成物における異物除去効果を向上させる方法
ここで、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が配合された点眼型洗眼用組成物は、異物除去用の点眼型洗眼用組成物であり、点眼後に眼内から回収される点眼型洗眼用組成物である
(但し、該点眼型洗眼用組成物として下記(1)~(4)の組成物を除く
(1)L-アスパラギン酸カリウムを含有する点眼型洗眼用組成物
(2)クロルフェニラミンマレイン酸塩を含有する点眼型洗眼用組成物
(3)アルギン酸及び/又はその塩を含有する点眼型洗眼用組成物
(4)ピリドキシン及び/又はその塩を含有する点眼型洗眼用組成物)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼型洗眼用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗眼用カップ(アイカップ)を用いた洗眼方法が知られており、該方法の一例として、洗眼用カップに洗眼液を適量(例えば5mL程)注ぎ、次いで、該カップを片側の眼周辺に押し当てて該カップ内の洗眼液と眼とを接触させ、数回まばたきを行うことにより洗眼する方法が挙げられる。しかし、該方法は、洗眼用カップが必須であり、携帯性に欠けるといった問題がある。
【0003】
また、前記方法とは異なる洗眼方法として、洗眼液を眼に直接点眼して洗眼する方法が知られている(例えば、特許文献1)。該方法は、洗眼用カップが不要であるため携帯性に優れている。しかし、該方法では、前記方法と比較して、眼に適用する洗眼液の量が少なくなり、洗眼効果が不十分となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-210265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、効果的に異物を除去できる点眼型洗眼用組成物を提供すること、また、異物除去効果向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、点眼型洗眼用組成物に、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することにより、点眼型洗眼用組成物における異物除去効果を向上できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼型洗眼用組成物。
項2.更に、ホウ酸及びホウ砂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1に記載の点眼型洗眼用組成物。
項3.増粘剤、防腐剤及び抗ヒスタミン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有しない、項1または2に記載の点眼型洗眼用組成物。
項4.1眼あたり、1回に3~8滴点眼される、項1~3のいずれかに記載の点眼型洗眼用組成物。
項5.点眼型洗眼用組成物に、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合する、点眼型洗眼用組成物の異物除去効果向上方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効果的に異物を除去できる点眼型洗眼用組成物を提供することができ、また、点眼型洗眼用組成物において異物除去効果を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0009】
本発明は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼型洗眼用組成物を提供する。
【0010】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの2糖が反復する糖鎖に硫酸がエステル結合した構造を有するムコ多糖であり、公知の物質である。
【0011】
コンドロイチン硫酸の塩としては、本発明を制限するものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が例示される。本発明を制限するものではないが、コンドロイチン硫酸の塩として、好ましくは、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等が例示される。
【0012】
本発明において使用されるコンドロイチン硫酸やその塩はこの限りにおいて制限されないが、その分子量として、異物除去効果を一層向上させる観点から、好ましくは重量平均分子量が0.5万~4.5万程度が例示され、より好ましくは1万~4万程度、更に好ましくは1.5万~3万程度が例示される。重量平均分子量はゲルろ過クロマトグラフィーにより測定される。コンドロイチン硫酸やその塩は市販されており、例えば商品名局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社製、重量平均分子量20000)で販売されている。
【0013】
コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、異物除去効果を一層向上させる観点から、本発明の点眼型洗眼用組成物中、0.005~0.5w/v%が例示され、好ましくは0.005~0.4w/v%、より好ましくは0.006~0.3w/v%、更に好ましくは0.007~0.1w/v%、特に好ましくは0.008~0.08w/v%が例示される。
【0014】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、ホウ酸を含有してもよい。ホウ酸の含有量は、本発明の効果を妨げない限り制限されないが、異物除去効果を一層向上させる観点から、本発明の点眼型洗眼用組成物中、0.2~2.5w/v%が例示され、好ましくは0.5~2.2w/v%、より好ましくは1~2w/v%、更に好ましくは1.2~2w/v%、特に好ましくは1.4~1.8w/v%が例示される。
【0015】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、ホウ砂を含有してもよい。ホウ砂の含有量は、本発明の効果を妨げない限り制限されないが、異物除去効果を一層向上させる観点から、本発明の点眼型洗眼用組成物中、0.001~0.6w/v%が例示され、好ましくは0.002~0.1w/v%、より好ましくは0.003~0.05w/v%、更に好ましくは0.005~0.025w/v%、特に好ましくは0.01~0.02w/v%が例示される。
【0016】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、更に、点眼や洗眼における使用に許容可能な任意の他の成分を含有してもよい。該他の成分として、本発明を制限するものではないが、薬効成分、安定剤、等張化剤、清涼化剤、溶剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤等が例示される。該他の成分は、目的等に応じて適宜選択すればよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量も適宜決定すればよい。
【0017】
この限りにおいて本発明を制限するものではないが、他の成分の一例として薬効成分を例示すると、薬効成分として、アミノ酸類、ビタミン類、抗炎症剤(消炎剤)、角膜表層保護剤、抗ヒスタミン剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の点眼型洗眼用組成物が薬効成分を含有する場合、本発明を制限するものではないが、好ましくは、アミノ酸類、ビタミン類、抗炎症剤(消炎剤)、角膜表層保護剤及び抗ヒスタミン剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが例示され、より好ましくは、該群より選択される1~5種を含有することが例示され、更に好ましくは、該群より選択される2~4種または2~3種を含有することが例示される。
【0019】
本発明を限定するものではないが、例えば、アミノ酸類として、グルタミン酸及びその塩(グルタミン酸ナトリウム等)等のアミノ酸及びその塩;タウリンなどのアミノ酸類似物等が挙げられ、好ましくはタウリン等のアミノ酸類似物が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明の点眼型洗眼用組成物は、アミノ酸及び/またはその塩を配合しないで調製することができる。ここでいうアミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ蛋白質の構成ユニットとなりえるアミノ酸を意味し、例えばL-アスパラギン酸等が含まれる。
【0020】
本発明を限定するものではないが、例えば、抗炎症剤として、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、イプシロン-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸及びその塩(グリチルリチン酸二カリウム等)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明を限定するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は好ましくは硫酸亜鉛及び/または乳酸亜鉛を含有しない。
【0021】
本発明を限定するものではないが、例えば、角膜表層保護剤として、ヒアルロン酸及びその塩(ヒアルロン酸ナトリウム等)等が例示されるが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、ヒアルロン酸及び/またはその塩を配合しないで調製することができる。
【0022】
本発明の点眼型洗眼用組成物が薬効成分を含有する場合、本発明の効果を妨げない限り、薬効成分の含有量は制限されず、該組成物中、薬効成分の含有量は0.01~1w/v%が例示され、好ましくは0.025~0.8w/v%、より好ましくは0.05~0.5w/v%、更に好ましくは0.1~0.4w/v%、特に好ましくは0.13~0.3w/v%が例示される。なお、コンドロイチン硫酸及びその塩は、薬効成分としても公知であるが、これらの成分は、ここでは前記薬効成分の説明には包含されず、従って、薬効成分の該含有量にコンドロイチン硫酸及びその塩の含有量は含まれない。
【0023】
本発明の点眼型洗眼用組成物が安定剤を含有する場合、安定剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、安定剤の含有量は、本発明の効果を妨げない限り制限されず、該組成物中、0.001~0.5w/v%が例示され、好ましくは0.05~0.2w/v%、より好ましくは0.08~0.12w/v%が例示される。
【0024】
本発明の点眼型洗眼用組成物が等張化剤を含有する場合、等張化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、等張化剤の含有量は、本発明の効果を妨げない限り制限されず、該組成物の浸透圧比(対生理食塩水)が後述のように0.6~1.6の範囲になるように、該組成物中、0.3~2w/v%の範囲から適宜選択することできる。
【0025】
本発明の点眼型洗眼用組成物が清涼化剤を含有する場合、清涼化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、清涼化剤の含有量は、本発明の効果を妨げない限り制限されず、該組成物中、0.0001~0.6w/v%が例示され、好ましくは0.002~0.01w/v%、より好ましくは0.004~0.008w/v%が例示される。
【0026】
本発明の一実施形態として、本発明を制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0027】
また、本発明の一実施形態として、本発明を制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、ならびにホウ酸及び/またはホウ砂を含む。
【0028】
また、本発明の一実施形態として、本発明を制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、(1)コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、(2)ホウ酸及び/またはホウ砂、ならびに(3)薬効成分、安定剤、等張化剤、清涼化剤、溶剤及びpH調整剤からなる群より選択される少なくとも1種を含み、増粘剤及び/または防腐剤(特に第4級アンモニア系の防腐剤(例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等))を含まない。
【0029】
また、ホウ酸やホウ砂は緩衝剤として使用可能であり、本発明の点眼型洗眼用組成物は、ホウ酸やホウ砂以外の緩衝剤を含有してもよいが、含有しなくてもよい。
【0030】
また、本発明の一実施形態として、本発明を制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、(1)コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、(2)ホウ酸及び/またはホウ砂、ならびに(3)薬効成分、安定剤、等張化剤、清涼化剤、溶剤及びpH調整剤からなる群より選択される少なくとも1種からなる。
【0031】
また、本発明の一実施形態として、本発明を制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、前記各一実施形態において、アミノ酸及びその塩を含有しないもの、抗ヒスタミン剤を含有しないものが例示される。
【0032】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、必要に応じてホウ酸及び/またはホウ砂、また、必要に応じて前記他の成分を混合することにより製造することができる。
【0033】
本発明の点眼型洗眼用組成物のpHは、点眼剤や洗眼剤として使用可能な範囲であれば制限されないが、室温(24℃)でpH5~8、好ましくはpH5.5~7.5、好ましくはpH6~7.5が例示される。pHは、卓上型pHメーターF-52(株式会社堀場製作所製)で測定される。
【0034】
本発明の点眼型洗眼用組成物の形態は制限されず、通常、室温で液状である。
【0035】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、後述の通り、通常、点眼容器に収容され、点眼される。このことから、該組成物の粘度は、点眼可能な範囲であれば制限されないが、好ましくは室温で0.9~2.5mPa・s、より好ましくは0.9~1.6mPa・s、更に好ましくは0.9~1.2mPa・sが例示される。粘度は、コーンプレート型粘度計(レオメーターMCR302、Anton Paar社製)を用いて、せん断速度100s-1、測定温度25℃で測定される。より具体的には、レオメーターのサンプルプレートに組成物5mLを添加し、半径50mm、コーン角度1°のコーンプレートセンサーをセットし、25℃で、せん断速度が100s-1となるようにセンサーを回転させ、粘度を測定する。100秒間計測を行い、2秒毎に1点データを取得し、45~49点目のデータ5点から平均値を算出し、これを粘度とする。
【0036】
本発明の点眼型洗眼用組成物の浸透圧は、点眼剤や洗眼剤として使用可能な範囲であれば制限されないが、例えば、浸透圧比は0.6~1.6が例示され、好ましくは0.7~1.3、より好ましくは0.8~1.2が例示される。浸透圧比は、自動浸透圧分析装置(オズモステーション OM-6060、アークレイ株式会社製)を用いて測定、算出される、第十七改正日本薬局方2.47浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)に従う値であって、該組成物と生理食塩液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)のオスモル濃度を測定し、生理食塩液の測定値を1とした場合の値である。
【0037】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、コンタクトレンズを装着した状態で使用してもよく、装着していない状態で使用してもよい。コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズの別を問わない。
【0038】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、点眼により使用できる限り制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、該組成物は、通常、点眼容器に収容して使用される。
【0039】
点眼容器としては、該組成物を収容して点眼できる限り制限されず、例えば、従来公知の点眼剤や点眼型洗眼剤等に使用されている点眼容器(例えば、容器本体、中栓(ノズル)、キャップを含む)が例示される。点眼容器は、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップのそれぞれが独立しているタイプ、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップの少なくとも2つが一体型となっているタイプ、中栓(ノズル)に穴が設けられているタイプ、中栓(ノズル)に穴が無く、使用時にキャップを巻き締めることによって中栓(ノズル)に穴を開けて使用するタイプ等のいずれであってのよい。
【0040】
点眼容器の容量は制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、容量は8~20mLが例示され、好ましくは10~15mL、より好ましくは12~14mLが例示される。容量は、マルチドーズ型、ユニットドーズ型の別を考慮して適宜決定すればよい。
【0041】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、1眼あたり、1回に3~8滴点眼することにより使用される。この限りにおいて制限されないが、該組成物は、1眼あたり、1回に、好ましくは4~8滴、より効率良く異物除去効果を得る観点から、より好ましくは4~6滴が点眼される。
【0042】
該組成物の1滴あたりの滴下量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、例えば、1滴あたり、30~50μLが例示され、好ましくは35~40μL、より好ましくは35~37μLが例示される。
【0043】
該組成物の1日あたりの使用回数は特に制限されず、例えば、1眼あたり、1日1~12回、2~8回、3~6回等のいずれであってもよい。
【0044】
このようにして、本発明の点眼型洗眼用組成物によれば眼を洗浄することができる。特に、該組成物はコンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有することから、該組成物を点眼することによって、眼の表面等に存在する埃、花粉、タンパク質汚れ、化粧料等の異物をより効果的に除去することができ、これにより洗眼効果を高めることができる。また、該組成物が前述の薬効成分を更に含有している場合は、該薬効成分に基づく有用作用も提供することができる。
【0045】
このことから、本発明はまた、点眼型洗眼用組成物に、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合する、点眼型洗眼用組成物の異物除去効果向上方法を提供するといえる。
【0046】
該方法において、点眼型洗眼用組成物には、更にホウ酸及び/またはホウ砂を配合してもよく、また、必要に応じて前記他の成分を配合してもよい。このことから、本発明は、ホウ酸及び/またはホウ砂を含む点眼型洗眼用組成物に、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合する、該点眼型洗眼用組成物の異物除去効果向上方法を提供するともいえる。
【0047】
これらの方法において、点眼型洗眼用組成物、コンドロイチン硫酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種、ホウ酸、ホウ砂、他の成分、また、これらの成分の含有量等は前述と同様に説明される。
【実施例
【0048】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
試験例
1.点眼型洗眼用組成物の調製
次の表1に示す配合割合に従い各成分を混合して各組成物を調製し、組成物13mLを一般的な点眼容器(容量15mL、ポリエチレンテレフタレート樹脂製、マルチドーズ型、伸晃化学株式会社製)に充填した(実施例1及び2ならびに比較例1)。コンドロイチン硫酸エステルナトリウムは、局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社製、重量平均分子量20000)を使用した。
【0050】
2.異物除去評価
4名のパネラーに、アイカップを用いた洗眼方法(市販品アイボンマイルド(小林製薬株式会社製))により説明書に従い洗眼させた。該洗眼の6時間後、この4名の両眼周囲を洗浄綿できれいに拭き、比較例1の組成物を左眼に、実施例1の組成物を右眼に、上を向いて2滴ずつ(1滴あたり35μL)、組成物が眼の外にあふれ出ないように点眼容器から滴下した。次いで、上を向いたまま、それぞれの眼周辺にアイカップをあて、アイカップをあてたまま下を向くことで、眼に滴下した組成物をアイカップ内に回収した。組成物の点眼から回収までを合計3回繰り返すことにより、片眼あたり合計6滴滴下時の組成物を回収した。1回片眼につき1つのアイカップを使用した。
【0051】
実施例1の組成物に代えて、実施例2の組成物を用いる以外は前述と同様にして、実施例2の組成物についても片眼あたり合計6滴滴下時の組成物を回収した。
【0052】
各アイカップ内に回収した合計3回分の組成物を、1つのアイカップに移しながら生理食塩水(塩化ナトリウム0.9w/v%含有)で5mLになるようにメスアップし、パーティクルカウンター(型番APSS-2000、Particle Measuring Systems社製)を用いてパーティクル数を計測した。粒子径2~125μmのパーティクル数を異物数とし、4名の異物数の平均値(平均異物数)を求めた。次いで、比較例1の組成物における平均異物数を100として、実施例1、2の組成物を用いた場合の平均異物数を小数点第一位で四捨五入し、相対的に比較した。
【0053】
3.結果
結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す通り、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを含有していない比較例1の組成物を用いた場合よりも、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを更に配合した実施例1、2の組成物を用いた場合において、高い異物除去効果が得られた。
【0056】
このことから、点眼型洗眼用組成物において、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを配合することにより、点眼型洗眼用組成物の異物除去効果を高められることが分かった。また、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムについて、重量平均分子量を1万又は4万のものに代えた以外は、実施例1と同様に調製した点眼型洗眼用組成物でも、比較例1に比べて異物除去効果が高かったが、重量平均分子量2万のコンドロイチン硫酸エステルナトリウムを使用した実施例1が中でも特に優れた異物除去効果を有していた。
【0057】
処方例
以下に処方例を示す。処方例1~10に示す、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを含有する組成物によれば、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを含有しない(水に置き換える)以外は同組成の組成物と比較して、眼の異物除去効果を一層高めることができた。
【0058】
【表2】