(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-09
(45)【発行日】2025-06-17
(54)【発明の名称】静脈針ディスロッジメントを検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20250610BHJP
G01S 5/18 20060101ALI20250610BHJP
【FI】
A61M1/36 145
G01S5/18
(21)【出願番号】P 2022581546
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021039744
(87)【国際公開番号】W WO2022006193
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-06-14
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508180910
【氏名又は名称】フレセニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522503702
【氏名又は名称】オー・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シェファー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シェファー、ガレス・ティー.
(72)【発明者】
【氏名】マッキントッシュ、スコット
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、ディペン・エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】エスピナ、ピーター・ジー.
(72)【発明者】
【氏名】クルンコビチ、マーティン・ジェイ.
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-517686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
G01S 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外回路に関連付けられた少なくとも1つのライン内を流れる流体の流体ダイナミクスの変化を検出するためのシステムであって、
内腔を横断する前記流体の一部分を通って音響波が進むように、前記音響波を前記少なくとも1つのラインの前記内腔内に送信するための音響波送信機と、
前記流体を通過した後の前記音響波の少なくとも一部分を検出するための検出器と、
前記送信された音響波と前記検出された音響波との間の位相差を示す位相信号を測定するための位相検出器と、
前記測定された位相信号を、前記少なくとも1つのラインを流れる前記流体の前記流体ダイナミクスに関連する予想される位相シグネチャと比較するための比較器と、
を備え、
前記測定された位相信号と前記予想される位相シグネチャとの間の、前記比較器によって特定された偏移は、前記流
体の途絶の発生を示す、システム。
【請求項2】
前記偏移を前記流体ダイナミクスの前記変化を引き起こす事象に相関させるための分析器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記分析器は、前記事象を、(1)1つまたは複数の気泡の通過、(2)血餅、および(3)予想される位置からの前記少なくとも1つのラインの少なくとも一部分の少なくとも部分的なディスロッジメントのいずれかとして特定するために、前
記偏移を分析するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記音響波送信機は、約1MHz~約20MHzの範囲の周波数を有する音響波を生成する、請求項
2~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記音響波送信機は、単色音響波を生成するように構成される、請求項
2~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのラインは、透析システムの静脈戻りラインを備える、請求項2~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記分析器は、前記静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントに対応する前記位相信号の偏移を特定するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記分析器は、前記位相信号の実質的な消失を、前記静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントと相関させるように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記音響波送信機および前記検出器のいずれかは、前記静脈戻りラインに取り外し可能に結合される、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記音響波送信機および前記検出器のいずれかを前記静脈戻りラインに取り外し可能に結合するための結合要素をさらに備え
、前記結合要素はクランプを備え、任意選択的に前記クランプは、ばね装填されたクランプを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記透析システムは、患者の循環系から透析器の入口ポートを介して血流を受け取るための透析器を備え、前記静脈戻りラインは、前記透析器を出て前記患者の循環系に入る血液を送達する、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出器は、前記静脈戻りラインに近接して配置され、前記静脈戻りラインの一部分に音響定在波を確立するように構成され、前記分析器は、前記音響定在波に関連する位相信号をモニタリングし、予想される位相シグネチャに対する前記位相信号の偏移に基づいて、前記静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントを特定するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記音響波送信機および前記検出器を含むセンサをさらに備え
、前記センサは、前記送信された音響波の位相と前記検出された音響波の位相との間の位相シフトを決定するための位相比較器を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記音響
波送信機および前記検出器は、前記静脈戻りラインの両側に位置付けられる、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項15】
前記音響
波送信機および前記検出器は、前記静脈戻りラインの同じ側に位置付けられる、請求項11または12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2020年7月2日に出願された米国仮特許出願第63/047,727号の優先権を主張するものであり、該出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、体外回路内を流れる流体の流体ダイナミクス(fluid dynamics)の変化を検出するためのシステムおよび方法を対象とし、より具体的には、透析システムにおける静脈針ディスロッジメント(VND:venous needle dislodgement)を検出するために用いることができる該システムおよび方法を対象とする。
【0003】
透析中の静脈針ディスロッジメント(VND)は、まれな事象である。しかしながら、VNDが迅速に検出されない場合、わずか数分で致命的な失血につながる可能性がある。例えば、透析中200~500ml/分の正常な体外血液流量にされた正常な血液量3~5Lの患者は、たいていVND後2~5分以内に致命的な失血に至る。報告された処置あたりのVNDの数は、0.0008%~0.1%という広い範囲内にあり、VNDのうち10~33%が死に至ると推定される。
【0004】
VNDを検出するためのいくつかの異なるアプローチが実施されている。しかし、これらの従来のアプローチは、いくつかの欠点を抱えている。いくつかのそのような従来のアプローチでは、静脈ライン圧力の急激な減少に基づいてVNDを検出しようとするために、静脈ライン圧力が様々な方法で測定される。しかしながら、VNDは静脈戻りライン内の小さい圧力変化しか引き起こさないので、そのような圧力モニタリングアプローチはロバストではない。そのような小さい圧力変化を検出するのに十分な感度を有する従来の圧力モニタリングシステムが利用されてきたが、そのようなシステムでは、測定における雑音を低減するために十分な減衰または平均化が必要となり、そうしなければ、システムの応答時間に悪影響を及ぼすことになる。さらに、そのようなシステムは、血液とのセンサ接触が必要となる。さらに、これらのシステムは、典型的には、多くの誤検出を起こすので、したがって、モニタリングや誤警報への対処を行う負担が増加する。
【0005】
別のアプローチは、患者のアクセスポイントにまたはその近くに濡れ検出器を置くことであるが、これは、血液が漏れて検出器において収集された後に警告を出すことになる。また濡れ検出器は、検出器が誤って置かれるとこのようなシステムを無価値にする可能性があり、漏れの経路が常に確実に予測できるわけではないので、最適とはいえない。機械式チューブ圧縮デバイスもまた、不適切に実施される可能性があるので最適とはいえない。
【0006】
したがって、VNDを検出するための、信頼性が高く、ロバストで、コスト効率の良い解決策が必要である。
【発明の概要】
【0007】
1つの態様では、体外回路を流れる流体の流体ダイナミクスの変化を検出する方法が開示され、本方法は、流体が流れる体外回路に関連付けられたラインの少なくとも一部分を横切って音響波共振を確立することと、共振音響波の位相信号をモニタリングすることと、共振音響波の観測された位相信号が、流体流れに関連する予想される位相シグネチャからの偏移を示すときに、流れる流体の流体ダイナミクスの変化の発生を特定することと、を含む。
【0008】
「位相シグネチャ(phase signature)」という用語は、本明細書で使用されるとき、流体流れに関連する正常な(所望の)流体ダイナミクスを示す位相信号の時間的変動を指す。例えば、そのような「位相シグネチャ」は、位相信号の周期的変動(例えば、患者の鼓動に起因する位相信号の周期的変動)および/または平均位相信号値を指すことができる。
【0009】
以下で説明する実施形態では、ラインの横断方向を横切って(例えば、直径を横切って)音響定在波が確立される。より一般には、音響波は、ラインの軸方向寸法に対して非0の角度を形成するラインの寸法に沿って確立され得、ここで、軸方向寸法は、流体流れの方向に実質的に平行である。
【0010】
共振音響波を確立するステップは、音響波をラインの一部分内に、例えば、その横断寸法に沿って(例えば、ラインの直径に沿って)送信することと、流れる流体を通過した後の音響波の少なくとも一部分を検出することとを含むことができる。位相信号は、送信された音響波の位相と検出された音響波の位相との間の差に対応することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、体外回路は体外透析回路(血液透析回路など)を含み、ラインは体外透析回路の静脈戻りラインである。
【0012】
いくつかの実施形態では、予想される位相シグネチャは、体外回路、例えば血液透析回路の静脈戻りラインに結合された患者の鼓動に関連する位相シグネチャを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、流体ダイナミクスの変化は、静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントによって引き起こされる。例えば、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相の偏移は、静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントを示す、位相シグネチャの実質的な変化(例えば、消失)を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、音響波は単色である。例として、そのような実施形態では、音響波は、約1~約20MHzの範囲、例えば、約1MHz~約5MHzの範囲の周波数を有することができる。音響波は、周波数範囲内の選択された周波数を有する任意の周期的波形(例えば、正弦波、矩形波等)によって励起され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相信号の偏移は、音響波共振がそれを横切って確立されるラインの一部分を1つまたは複数の気泡が通過することによって引き起こされ得る。いくつかの場合では、ラインを1つまたは複数の気泡が通過したことは、音響信号の振幅の顕著な低下および/または大きい位相シフトの検出により検出され得る。いくつかの実施形態では、約0.1秒未満の時間期間にわたって発生する位相信号の変化は、デバイスの感知部分を1つまたは複数の気泡が通過したことを示すことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、体外ラインを通過する流体の流量は、流体流れの中の気泡の検出に応答して調整され得る。典型的には、検出された気泡の量に依存して、血液ポンプの流量を遅くする、または完全に停止させる必要がある。例えば、いくつかのそのような実施形態では、流体は血液、例えば、透析システムの体外ライン内を流れる血液であり得る。そのような実施形態では、気泡の検出に応答して、血液の流量は、位相信号がモニタリングされている間に、気泡が検出されなくなるまで低減され得る。いくつかの実施形態では、デバイスの感知部分を流れる1つまたは複数の気泡の検出に応答して血液ポンプの動作を調整するために、位相出力信号に基づくフィードバック制御信号が生成され、血液ポンプに印加され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相信号の偏移は、体外回路を流れる流体の流体力学的圧力の変化によって引き起こされ得る。いくつかのそのような実施形態では、流体の流体力学的圧力の変化は、ラインの少なくとも一部分の横断寸法の変化を引き起こし、したがって、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相のシフトの一因になり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、予想される位相シグネチャからのモニタリングされた位相の偏移は、体外回路を通る流体の一貫性のない流量を示すことができる。
【0019】
流体が血液であるいくつかの実施形態では、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相の偏移は、少なくとも1つの血餅によって引き起こされ得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、体外回路のラインはチューブの形態とすることができる。例として、そのようなチューブは、血液透析システムの体外回路の静脈戻りラインを提供することができ、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相の偏移の変化は、流体がチューブを通過するときのチューブの周期的な膨張と収縮によって少なくとも部分的に引き起こされ得る。
【0021】
予想される位相シグネチャからの測定された位相の偏移は、例えば、測定された位相を、正常な流体流れの予想される流体ダイナミクスに対応する以前に得られた位相シグネチャと比較することによって観測され得る。いくつかの実施形態では、事象、例えば、静脈針ディスロッジメント(VND)は、位相信号シグネチャの実質的な消失をもたらし、それによって事象の発生を示すことができる。
【0022】
関連する態様では、患者の血管と流体連通しているライン内を流れる流体(例えば、血液)の流体ダイナミクスの変化を検出する方法が開示され、本方法は、ラインの一部分に共振定在音響波を確立することと、共振定在音響波の位相信号をモニタリングすることと、共振音響波の観測された位相(すなわち、送信音響信号の位相と受信音響信号の位相との間の差)が、流れる流体の正常な流体ダイナミクスに関連する予想される位相シグネチャからの偏移を示すときに、流れる流体の流体ダイナミクスの変化の発生を特定することと、を含む。いくつかの実施形態では、そのような偏移は、位相信号の実質的な(または完全な)消失に対応することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、位相偏移は、ラインを1つまたは複数の気泡が通過することによって引き起こされ得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、ラインは透析システムの静脈戻りラインであり、ラインを通る血流に関連する予想される位相シグネチャに対する位相信号の偏移は、静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントによって引き起こされ得る。例えば、位相信号の特有の特徴(位相信号シグネチャ)の実質的な消失は、静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントを示すことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、血液が流れることができる内腔を有するチューブが静脈戻りラインを形成する。いくつかの場合では、そのようなチューブは、約3mm~約5mmの範囲(例えば、3.5mm(小児)または4.3mm(標準))の内径(ID)と、約5mm~約7mmの範囲(例えば、5.5mm(小児)または6.8mm(標準))の外径(OD)とを有することができる。さらに、いくつかの場合では、チューブは、例えば、ラインを通って循環する血液の拍動に起因して、周期的な膨張と収縮を受け得、そのような周期的な膨張と収縮は、位相シグネチャの生成をもたらし得る。上述するように、また以下で詳述するように、位相シグネチャの変化は、事象の発生、例えば、透析システムの静脈戻りラインの部分的または完全なディスロッジメントを示すことができる。
【0026】
チューブは、例えば、ポリウレタン、ガラス、ポリ塩化ビニル、およびシリコーン等の様々な異なる材料で形成されていてよい。
【0027】
ラインを横切る(例えば、チューブの直径を横切る)音響定在波の確立は、2つの音響トランスデューサをラインの両側に結合することによって達成することができ、ここで、一方の音響トランスデューサ(例えば、圧電デバイス)は、音響波を生成し、波をライン内にその横断寸法に沿って送信することができ、他方の音響トランスデューサは、チューブ壁および流れる流体(例えば、流れる血液)を通って送信された音響波の少なくとも一部分を検出することができる。いくつかの実施形態では、音響送信機および/または検出器は、ラインに取り外し可能に結合され得る。
【0028】
関連する態様では、体外回路に関連付けられたライン内を循環する流体の流体ダイナミクスの変化を検出するためのシステムが開示され、本システムは、内腔を横断する流体の一部分を通って音響波が進むように、音響波をラインの内腔内に、例えばその横断寸法を横切って送信するための音響波送信機を含む。本システムはさらに、流体を通過した後の音響波の少なくとも一部分を検出するための検出器と、送信された音響波と検出された音響波との間の位相差を示す位相信号を測定するための位相検出器とを含むことができる。測定された位相信号を流体流れに関連する予想される位相シグネチャと比較するために比較器回路が用いられ得、測定された位相信号と予想される位相シグネチャとの間の、比較器によって特定された偏移は、流れる流体の流体ダイナミクスの変化の発生を示すことができる。いくつかの実施形態では、本システムは、観測された位相偏移を、位相シフトを引き起こす流体ダイナミクスに関連する事象に相関させるための分析器を含むことができる。
【0029】
例として、分析器は、位相偏移に関連する事象を、(1)1つまたは複数の気泡の通過、(2)1つまたは複数の血餅の通過、および(3)ラインの少なくとも一部分の予想される位置からの少なくとも部分的なディスロッジメントのいずれかとして特定するために、位相偏移を分析するように構成され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、音響送信機は、約1~約20MHzの範囲、例えば約5MHz~約10MHzの範囲の周波数を有する音響波を生成することができる。いくつかのそのような実施形態では、音響波は単色である。
【0031】
いくつかの実施形態では、体外回路は、透析システム(例えば、血液透析システム)の体外回路とすることができ、分析器は、静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントを示す、予想される位相シグネチャに対する位相信号の偏移を特定するように構成され得る。例えば、分析器は、位相信号の実質的な変化(例えば、正常な流体ダイナミクスに関連する位相信号の特有の特徴の実質的な消失)を、静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントと相関させるように構成され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、音響波トランスデューサは、ライン、例えば透析システムの静脈戻りラインに近接し、および/または取り外し可能に結合され得る。例として、音響トランスデューサをラインに取り外し可能に結合するために、結合要素(例えば、クランプ)が用いられ得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、そのようなクランプは、互いに対してばね付勢された2つのアームを含み、それらの先端の間に体外ラインの一部分を取り外し可能に保持することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、クランプアームの先端は、凹部を含むことができ、その各々は、以下で詳述するように、音響トランスデューサのうちの1つを受容するように構成され得る要素(例えば、プラスチック要素)を受容することができる。
【0034】
例えば、各プラスチック要素は、音響トランスデューサのうちの1つを収めたハウジングがその中に位置付けられ得る凹部を含むことができる。さらに、各プラスチック要素は対の突起を含むことができ、対の突起は、静脈戻りラインの一部分がクランプアーム間に保持されたときに他方のプラスチック要素のそれぞれの対の突起と接触することができる。これは、ラインをクランプのアーム間に保持することを容易にすることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、各音響トランスデューサのためのハウジングは、本体の近位端からその遠位端まで延在する内腔を有する本体を含むことができる。いくつかの実施形態では、ハウジングの遠位端は、本体の遠位表面で終端する幅広になるテーパを呈することができる。各ハウジングは、音響信号を送信または受信するための圧電トランスデューサを収容することができる。複数の導電性要素が、ハウジングの内腔を通って延在しており、以下で詳述するように、電力を送信トランスデューサに供給し、受信トランスデューサによって生成された1つまたは複数の検出信号を信号の処理/分析モジュールに送信するために、トランスデューサに電気的に結合される。いくつかの実施形態では、2つのトランスデューサハウジングの内腔には、エポキシ、例えば、タングステンエポキシが少なくとも部分的に充填され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、透析システムが開示され、本透析システムは、透析器と、患者の循環系から透析器の入口ポートへの血流のための経路を提供するための動脈ラインと、透析器を出て患者の循環系に入る血液の流れのための経路を提供するための静脈血ラインと、静脈血ラインに脱着可能に結合された音響センサとを含む。音響センサは、静脈血ラインの一部分の横断寸法に沿って音響定在波を確立し、音響定在波に関連する位相信号をモニタリングするように構成され得る。予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相信号の偏移が、静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントを特定するために用いられ得る。いくつかのそのような実施形態では、静脈戻りラインのディスロッジメントは、位相信号の特有のシグネチャ(例えば、患者の鼓動に対応するシグネチャ)の実質的な消失をもたらし得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、音響センサは、音響波を生成するための送信機と、静脈ラインの一部分を通過した後の音響波の少なくとも一部分を検出するための検出器とを含むことができる。送信機および検出器は、静脈戻りラインの両側に位置付けられ得る。本システムはさらに、送信されたた音響波と検出された音響波との間の位相シフトを決定するための位相比較器を含むことができ、それによって、本明細書に開示される様式で静脈ラインのディスロッジメントを検出するために用いられ得る位相信号(本明細書では、位相差信号とも呼ばれる)を生成する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明する音響センサは、利用可能な血液透析(HD)装置上に見られる動脈または静脈ドリップチャンバに位置付けられるように構成され得る。これらのチャンバの直径は、例えば、約18mm~約30mmの範囲であり得る。
【0039】
以下で簡潔に説明する関連する図面と共に以下の詳細な説明を参照することによって、本教示の様々な態様のさらなる理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1-1】本教示の一実施形態に係る透析システムの概略図である。
【
図1-2】本教示の一実施形態に係る透析システムの概略図である。
【
図2A】送信音響トランスデューサおよび受信音響トランスデューサが収められた2つのアームのクランプを示し、このクランプは、静脈戻りラインを音響トランスデューサに取り外し可能に結合するために用いられる。
【
図2B】本教示の一実施形態に係る音響センサを概略的に示す。
【
図3A】音響波を生成および検出するために圧電フィルムが用いられる一実施形態に係る音響センサを概略的に示す。
【
図3B-1】位相差の決定およびデータ分析のためにソフトウェアアプローチが用いられる透析システムに組み込まれた本教示に係る静脈ラインディスロッジメントシステムの別の実施形態の概略図を示す。
【
図3B-2】位相差の決定およびデータ分析のためにソフトウェアアプローチが用いられる透析システムに組み込まれた本教示に係る静脈ラインディスロッジメントシステムの別の実施形態の概略図を示す。
【
図3C】以下の実施例のセクションで説明するシミュレート回路を使用することによって得られた検出された音響信号を提示する。
【
図3D】
図3Cの音響信号に関連する位相差信号を示し、ここで位相差信号はアナログ方法を使用して決定される。
【
図3E】
図3Cの音響信号に関連する位相差信号を示し、ここで位相差信号はソフトウェアアプローチを使用して決定される。
【
図4】本教示に係る制御および信号処理ユニットのためのハードウェアプラットフォームを概略的に示す。
【
図5A】透析システムの体外回路においてVNDを検出するための本教示の一実施形態に係るシステムの機能性をシミュレートするために用いられるシミュレーション回路を概略的に示す。
【
図5B】
図5Aに示されたシミュレーション回路で用いられるハードウェアコンポーネントを概略的に示す。
【
図6A】本教示に係る音響センサをシミュレーション回路の体外ラインの一部分に結合するために、
図5Aのシミュレーション回路で用いられるクランプの様々な概略図を示す。
【
図6B】本教示に係る音響センサをシミュレーション回路の体外ラインの一部分に結合するために、
図5Aのシミュレーション回路で用いられるクランプの様々な概略図を示す。
【
図7】体外透析システムにおけるVND事象の検出をシミュレートするための試験の様々な段階における位相信号を示すオシロスコープのトレースを提示する。
【
図8】体外透析システムにおけるVND事象の検出をシミュレートするための試験の様々な段階における位相信号を示すオシロスコープのトレースを提示する。
【
図9】体外透析システムにおけるVND事象の検出をシミュレートするための試験の様々な段階における位相信号を示すオシロスコープのトレースを提示する。
【
図10A-10B】
図10Aは、体外透析システムの正常動作に対応するシミュレートされた位相信号を示す。
図10Bは、
図10Aに示される位相信号に基づいて導出されたVND事象の確率を示す。
【
図10C-10D】
図10Cは、VND事象を示すシミュレートされた位相信号を示す。
図10Dは、
図10Cに示される位相信号に基づいて導出されたVND事象の確率を示す。
【
図11】本教示に係るVND検出システムによって検出された動脈ポンプのオンおよびオフに関連するシグネチャの例を示す。
【
図12】本教示に係るVND検出システムに基づく心拍数信号の検出を示す。
【
図13】本教示に係るVND検出システムによって測定された心拍数信号を、赤外線心拍数モニタによって測定されたものと比較する。
【
図14】典型的な心拍数信号のサイクルの特徴を示す。
【
図15A】動脈ポンプが作動している状態で検出された心拍数信号を、患者によって装着されたパルスオキシメータセンサによって測定された心拍数と比較する。
【
図15B】心拍数信号および動脈ポンプ信号を示す対応する時間・周波数データである。
【
図16A】静脈ドリップチャンバの前に薬剤(例えば、Mircera)の注入が導入された透析処置の毎日のログの一部分を示す。
【
図17】自動圧力保持試験からのシグネチャを示す。
【
図18A】限外濾過(UF)ポンプをオンおよびオフにした透析処置の毎日のログの一部分を示す。
【
図18B】動脈ポンプシグネチャと相互作用して特徴的なビート周波数が生じる限外濾過(UF)ポンプ信号を示す。
【
図19】自動アクセスフローボーラス(automated access flow bolus)に関連する信号を示す。
【
図20】ポンピング速度の変化に応答する位相信号の周波数成分を示す。
【
図21A】ヘパリンの注入が導入された透析処置の毎日のログの一部分を示す。
【
図21B】ヘパリンの注入に対する信号応答を示す。
【
図22A】薬剤(例えば、Hectorol)の注入が導入され、続いてポンプが停止された透析処置の毎日のログの一部分を示す。
【
図22B】薬剤の注入およびポンプの停止に対する信号応答を示す。
【
図23】光検出器を有する2008T透析装置の概略図を示す。
【
図24】光検出器と同じハウジング内に一体化されたVND検出センサの例を示す。
【
図25】光検出器と同じハウジング内に一体化されたVND検出センサの例を示す。
【
図26】2008T透析装置にフィットされたVND検出センサおよび光検出器を含むセンサモジュールの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
1つの態様では、本開示は、高感度位相検出器回路を用いることによって静脈拍動を連続的に感知することができるVND検出システムおよび方法を対象とする。いくつかの実施形態では、VND事象を検出するために、位相シグネチャがないこと(または実質的にないこと)が使用され得る。例として、センサは、透析システムの一部として組み込まれ得、使い捨て静脈血ラインに(例えば、取り外し可能に)結合するように構成され得る。センサは送信機を含むことができ、該送信機は、静脈血ラインの反対側にある受信機要素に静脈血ラインを横切って進み、そしてチューブ境界から反射して戻る超音波定在波を生成するように構成される。受信機トランスデューサは、流体で充填されたチューブの直径内に確立された定在波を検出するために使用され、したがって、送信信号と受信信号との間の位相シフトのモニタリングが可能になる。
【0042】
血流の流体ダイナミクスの変化は、予想される位相シグネチャ、例えば患者の鼓動に起因して生成されるものに対する、静脈血流によって引き起こされる定在波(共振状態)の送信信号と受信信号との間の位相シフトを測定することによってモニタリングされ得る。測定される位相シフトは、血流によって変動し、鼓動または動作中のポンプから生じる流れ状態の微かな変動を検出するのに十分な感度を有する。以下の説明では、本教示の様々な特徴についてVNDの検出に関連させて説明するが、本教示は、概して、心肺装置などの他の体外回路を流れる流体(例えば、液体)の音速または流体ダイナミクスの変化を検出するために適用可能であることを理解されたい。
【0043】
図1および
図2は、静脈針ディスロッジメント(VND)の検出のための本教示の一実施形態に係るVND検出システム102が組み込まれた透析システム100を概略的に示す。
【0044】
図示の血液透析透析システム100は、動脈アクセスポイント110(例えば、自己血管使用皮下動静脈瘻(AV)瘻)を通して血液を受け取る動脈ライン109を介して動脈血を受け取る透析器103を含む。血液ポンプ108aが、透析システムを通る血液の循環を容易にする。血流が透析器103内に導入される前に、血液希釈剤、例えばヘパリンが、ヘパリンポンプ108を介して血流に導入され得る。透析器103は血液を濾過し、濾過された血液は、患者の循環系に挿入された静脈針107aを含む静脈アクセスポイント107(例えば、自己血管使用皮下動静脈(AV)瘻)を介して患者の静脈に結合された静脈戻りライン105を介して患者に戻される。血流中に気泡がある場合それが患者に導入されるのを防止するために、空気検出器/エアトラップ111が静脈戻りラインに結合され得る。
【0045】
例として、透析器103は、何千もの微多孔性チューブを含むことができ、血液がチューブの中を流れ、透析液溶液がチューブの外を流れる。チューブの孔により、老廃物および過剰な体液が血液から透析液に移ることが可能になる。使用済み透析液は透析器の出口ポートを介して廃棄され、新しい透析液がリザーバから透析器の入口ポートを介して透析器内に導入される。
【0046】
図1ならびに
図2Aおよび
図2Bを引き続き参照すると、この実施形態では、VND検出システム102は、クランプ115を介して静脈戻りライン105の一部分に(例えば、取り外し可能に)結合され得る、音響送信ユニット114aおよび音響受信機ユニット114bを有する音響センサ114(例えば、
図2Bに例示)を含む。様々な音響送信および受信ユニットを用いることができる。例えば、用いられ得る非限定的な例には、Ultranによってモデル番号PT25-4-Xで販売されている超音波トランスデューサがある。音響ユニット114のクランプ115は、互いに対してばね付勢されている2つのアーム117aおよび117bを含んでおり、2つのアームの先端の間に静脈血ライン105の一部分を取り外し可能に保持することが可能になり得る。
【0047】
クランプ115の2つのアーム117a/117bの先端は、2つの取り付け要素120a/120bを受容するための凹部118aおよび118bを含み得、以下で詳述するように、取り付け要素120a/120bの各々は、音響センサ114の音響トランスデューサユニット114aおよび114bのうちの一方を受容するように構成される。さらに、各取り付け要素120a/120bは、対の突起(突起121a/121bなど)を含み、対の突起は、クランプの2つのアームの間に静脈戻りラインの一部分を固定したとき、他方のプラスチック要素のそれぞれの対の突起と接触することができる。
【0048】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、各音響トランスデューサユニット114a/114bは、取り付け要素120a/120bの中央開口部内に位置付けられるように構成されたハウジング112a/112bを含む(例えば、
図2Aに示す)。ハウジング112a/112bは、この実施形態では、好適なプラスチック材料(例えば、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)(PDMS))から形成されていてよく、内腔116a/116bを含み得、該内腔は、ハウジングの近位端からその遠位端まで延在し得、ハウジングの遠位表面で終端する幅広になるテーパを呈する。ハウジング112a/112bの各々は、音響信号を送信または受信するための圧電トランスデューサ119a/119bを収容している。
【0049】
複数の導電性要素122a/122bが、ハウジングの内腔を通して延在しており、以下で詳述するように、送信トランスデューサユニット114aに電力を供給し、受信トランスデューサユニット114bによって生成された1つまたは複数の検出信号を受信し、検出信号(単数または複数)を信号処理/分析モジュールに送信するために、トランスデューサ119a/119bに電気的に結合されている。この実施形態では、2つのトランスデューサハウジングの内腔には、トランスデューサの周波数応答を広くする目的で、タングステンエポキシ122が少なくとも部分的に充填されている。
【0050】
各音響トランスデューサユニット114a/114bは、取り付け要素120a/120bのうちの1つのそれぞれの凹部に脱着可能に位置付けられ得る。音響トランスデューサユニットは、クランプ115の先端の間に保持された静脈ラインの一部分との接触に可撓性をもたせるためにばね装填され得る。例えば、静脈ラインを流れる血液の拍動は、静脈ラインのある程度の膨張と収縮を引き起こし得る。以下で詳述するように、送信トランスデューサユニットおよび受信トランスデューサユニット114a/114bと静脈ラインとの間の可撓性のある接触(すなわち、あまり剛性ではないので、静脈ラインの半径方向の膨張と収縮の発生を可能にする接触)により、静脈ラインのそのような半径方向の振動が、送信音響信号と受信音響信号との間の位相シフトの一因になることを可能にする。
【0051】
いくつかの実施形態では、音響信号を生成および/または受信するために圧電フィルムが用いられ得る。例として、
図3Aは、2つの圧電フィルム400a/400bが静脈戻りライン105の一部分の両側に配置された実施形態を概略的に示す。圧電フィルム400a/400bを静脈戻りライン105に対して適所に維持するために、クランプ401が用いられる。この実施形態では、圧電フィルム400aは、流体流れの方向に対して実質的に垂直な方向に静脈ラインを通って送信するための音響信号を生成するために用いられ、圧電フィルム400bは、送信信号の少なくとも一部分を受信し、検出信号を生成するために用いられる。例えば、圧電フィルム400aに印加される振動電圧が、そのフィルムの振動を引き起こしてラインの内腔内に送信するための音響信号が生成され得る。ラインを流れる媒体を通過する音響波は、圧電フィルム400bの振動運動を引き起こすことができ、これは次に電気信号の生成をもたらす。
【0052】
再び
図1を参照すると、送信/受信ユニット200は、音響送信トランスデューサおよび音響受信トランスデューサ114a/114bを制御するように制御および信号処理ユニット201の制御下で動作する。特に、制御および信号処理ユニット201は、静脈ライン105の直径を横切って連続波(CW)音響信号を送信するように音響送信ユニットを動作させ、静脈ライン壁および血流を通過した後の送信された音響信号の少なくとも一部分を検出するように音響受信ユニットを動作させることができる。このようにして、音響送信ユニットと音響受信ユニットとの間の静脈ラインの内径内に定在波音響共振が確立され得る。
【0053】
音響信号の周波数は、静脈ラインの横断寸法内に定在波音響共振を確立するのを容易にするように選択され得る。整数個の半波長の音響波が流路内に収まると、流体中に定在波が確立される。例として、音響波の周波数は、約1~約20MHzの範囲、例えば、約5MHz~約10MHzの範囲であり得るが、他の周波数を用いることもできる。周波数の選択は、一般に、チューブ材料の音伝達特性に基づいており、本教示を限定するものではない。例えば、この実施形態では、音響波の周波数は約3MHzであるが、他の周波数を使用することもできる。この周波数は、共振状態を示す受信信号の最大振幅に基づいて選択されており、それはチューブの直径および流体の音速に依存する。詳述するように、いくつかの実施形態では、印加された音響信号の周波数はスイープされ得、検出された位相信号は、音響センサへの印加のための最適周波数(すなわち、共振音響波の確立につながる周波数)を特定するためにモニタリングされ得る。
【0054】
以下で詳述するように、送信信号と受信信号との間の位相差は、静脈拍動および/または流れの流体ダイナミクスにおける他の変動に応答して変化する。
【0055】
図1に示すように、音響トランスデューサ受信機ユニット114bによって生成された検出信号は、信号処理モジュール202によって受信される。信号処理モジュール202は、受信信号を増幅する低雑音増幅器(LNA)204を含む。位相検出器205が、送信信号の一部分と増幅された受信信号とを受信し、位相差信号を生成するために2つの信号の位相を比較する。位相差信号は、この実施形態では約100Hzのカットオフ周波数を有するローパス周波数フィルタ207によってフィルタリングされ、増幅器209によって増幅されてから、制御および信号処理ユニット201と通信している送信/受信ユニット200に送信される。
【0056】
引き続き
図1を参照すると、送信/受信ユニット200は、増幅された位相信号を受信し、その信号をデジタル化するADC(アナログデジタルコンバータ)モジュールを含む。ADCは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)と通信しており、FPGAは、水晶発振器から基準信号を受信し、デジタル化された位相信号をサンプリングするためのサンプリングクロックを供給し、サンプリングされたデジタル化された位相信号を、USB制御モジュールを介して制御および信号処理ユニット201の通信インターフェースに送信する。制御および信号処理ユニット201は、流れる流体の流体ダイナミクスの変化、例えば、部分的または完全なVND事象を検出するように、例えば、本明細書で説明する様式で、受信された音響信号に作用するように構成され得る。
【0057】
制御および信号処理ユニット201は、通信インターフェースに加えて、プロセッサ、メモリモジュール、ならびにディスプレイ、およびキーパッドを含む。例として、プロセッサは、特定用途向け命令セットプロセッサ、グラフィックス処理ユニット、物理処理ユニット、デジタル信号プロセッサ、画像プロセッサ、コプロセッサ、浮動小数点プロセッサ、ネットワークプロセッサ、および/またはデジタルコンピューティング回路で使用され得る任意の他の好適なプロセッサなどの、汎用および/または専用マイクロプロセッサであり得る。代替的または追加的に、プロセッサは、少なくとも1つのマルチコアプロセッサおよびフロントエンドプロセッサを備えることができる。例として、いくつかの実施形態では、メモリモジュールは、1つまたは複数の永久メモリユニット、および1つまたは複数のランダムアクセスメモリ(RAM)ユニットを含むことができる。例として、永久メモリユニットは、磁気ディスク(例えば、内部またはリムーバブルディスク)、光磁気ディスク、半導体メモリデバイス(例えば、EPROMまたはEEPROM(登録商標))、フラッシュメモリ、CD-ROM、および/またはDVD-ROMディスクのうちの1つまたは複数であり得る。
【0058】
音響トランスデューサ、血液ポンプなどのシステムの様々な構成要素を動作させるため、ならびに本教示に係る検出された音響信号の分析のための命令およびデータが、永久メモリに記憶され得、実行中にRAMに転送され得る。
【0059】
通信バスは、制御および信号処理ユニット201の様々な構成要素間の通信を可能にする。いくつかの実施形態では、受信された位相信号の分析のための命令は、メモリモジュールに記憶され得る。プロセッサは、受信された位相信号、すなわち位相差データを分析するためにこれらの命令を実行することができる。以下で詳述するように、位相差データの分析は、予想されるシグネチャからの偏移の検出をもたらし得る。いくつかの実施形態では、制御および信号処理ユニット201は、位相信号のそのような偏移の検出に応答して警報を生成するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御および信号処理ユニット201は、予想される位相シグネチャからの位相信号の偏移の検出に応答してポンプの速度を調整するために、血液ポンプ108aと通信するように構成され得る。
【0060】
より具体的には、この実施形態では、制御および信号処理ユニット201は、VND事象が発生したかどうかを決定するように位相差信号に作用するように構成され得る。特に、制御および信号処理ユニット201は、例えば、静脈ラインを流れる血液に関連する途絶および/または異常な流れがある場合にそれを特定するために、測定された位相差信号、例えば、位相差信号の時間的変動を、予想される血流シグネチャに関連する予想される位相信号と比較するように構成され得る。より具体的には、この実施形態では、予想される位相シグネチャは、透析を受けている患者の鼓動に関連するシグネチャである。換言すれば、静脈針が患者の静脈内にしっかりと位置付けられているとき、患者の鼓動は、静脈ライン中に特徴的な拍動を発生させることができ、これは鼓動の位相差シグネチャとして検出され得る。このような鼓動位相シグネチャは、静脈針ディスロッジメント(例えば、部分的または実質的に完全なディスロッジメント)を特定するためにモニタリングされ得る。例えば、静脈針ディスロッジメントは、特有の鼓動位相シグネチャの実質的な消失をもたらし得る。
【0061】
引き続き
図1を参照すると、制御および処理ユニット201はまた、送信/受信ユニットの動作を制御して、例えば、VND音響センサ114に所望の音響周波数を適用するように送信/受信ユニットに命令するように構成される。例えば、この実施形態では、制御および処理ユニット201は、音響センサ114に適用するための所望の周波数のデジタル周波数信号を生成するために、FPGAに組み込まれた波形発生器(AWG)に制御信号を送るように構成され得る。
【0062】
デジタルアナログコンバータ(DAC)が、デジタル周波数信号をアナログ信号に変換し、アナログ信号は、音響センサ114に適用するためにバッファに記憶され得る。信号の一部分は、送信信号と受信信号との間の位相差を決定するために位相検出器に基準信号を供給することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、制御および処理ユニット201は、音響センサに適用するための最適な音響周波数、例えば共振音響周波数を決定するために、周波数範囲にわたって音響センサ114に適用された音響周波数をスイープする。
【0064】
上述したように、制御および処理ユニット201は、位相差信号を受信し、予想される位相シグネチャからの位相信号の偏移を示すためにその信号をモニタリングする。いくつかの実施形態では、制御および処理ユニット201は、予想される位相信号からの位相偏移を検出するために、移動FFTウィンドウを位相信号に適用して信号を分析するように構成され得る。例として、
図10Aは、正常動作に対応するシミュレートされた位相信号を示す。
図10Bは、位相信号から導出されたVND事象の確率を示す。
図10Cは、VND事象を示すシミュレートされた位相信号を示し、
図10Dは、
図10Cに示される位相信号から導出されたVND事象の確率を示す。この例では、位相シグネチャを特徴付ける複数の独立した特徴を確率的分類器アルゴリズムで使用して、VND事象が発生した尤度を決定した。このアプローチは、誤警報の発生を最小限にしながら、例えば
図10Dに示すように、高速ステップ変化応答を提供することが示された。
【0065】
いくつかの実施形態では、流体流れ中の1つまたは複数の血餅を検出するために、予想される位相シグネチャに対するモニタリングされた位相信号の変化が用いられ得る。例えば、1つまたは複数の血餅は、受信信号の位相シフトおよび/または振幅の変化の検出により検出され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,228,740(本明細書では「‘740特許」と呼ぶ)に開示されている方法およびシステムは、送信音響信号と受信音響信号との間の位相差を測定し、測定された位相信号を分析して血液の組成の変化についての情報を得るために、本教示によって知らされるように用いられ得る。さらに、‘740特許に開示された方法およびシステムは、音響周波数のスイープを提供し、周波数の関数として位相差信号を測定し、測定された位相差信号の周波数依存性を分析して組成情報を得るために用いられ得る。
【0067】
上記実施形態はハードウェアベースである。以下で詳述するように、位相検出は、以下で詳述するように、デジタル化された送信信号および受信信号に対して行われるソフトウェア動作を介して行われ得る。
【0068】
より具体的には、
図3Bは、本教示の別の実施形態に係るVND検出システム302が組み込まれた透析システム300を概略的に示す。上述の透析システム100と同様に、音響センサ114は、透析システムの静脈戻りラインに(例えば、取り外し可能に)結合され得る。この実施形態では、制御および信号処理ユニット310の制御下で動作する送信/受信ユニット320は、音響波を静脈戻りラインの直径を横切って発するように音響送信ユニット114aを発動させ、受信音響ユニット114bによって生成された検出信号を、低雑音増幅器204による検出信号の増幅後に受信する。
【0069】
この実施形態では、送信音響信号と受信音響信号との間の位相差の検出は、制御および信号処理ユニット310上に存在するソフトウェアモジュールによって行われる。例えば、低雑音増幅器204によって出力された増幅された高周波音響信号は、送信/受信ユニット320によって受信され、次に送信/受信ユニットは、音響信号のデジタル化されたバージョンを制御および処理ユニット310に送る。次いで、以下で説明するものなどの制御および処理ユニット310上に記憶されている命令が、送信音響信号と受信音響信号との間の位相差を決定するために用いられ得る。
【0070】
例として、位相信号を決定および分析するために、以下の手順が用いられ得る。
【0071】
信号の位相は、以下の式によって与えられる。
φ=atan(Q/I) 式(1)
ここで、Iは信号の同相成分であり、典型的には実数成分と呼ばれ、Qは典型的には信号の直交成分または虚数成分と呼ばれる。上式によれば、位相角を計算するために、IおよびQを計算する必要がある。以下のセクションでは、IおよびQを計算するために必要なステップについて概説する。
【0072】
[IおよびQ生成]
IおよびQを計算するための手順を以下のステップに示す。以下の説明では、Rxは受信トランスデューサから測定された信号であり、Txは直接測定された送信信号である。
1.IおよびQを生成する際の最初のステップは、送信信号の同相および直交バージョンを生成することである。これは、測定された送信信号にヒルベルト変換を適用することによって行うことができる。これにより、変換された信号の実数成分が同相成分(単に元の送信信号のレプリカである)であり、虚数成分が元の送信信号の90度位相シフトされたバージョン(直交成分としても知られる)である、複素信号が生成される。
2.次のステップは、同相成分および直交成分を受信信号(Rx)と混合することである。例として、混合は、2つの信号の点ごとの乗算(point-by-point multiplication)を適用することによって行うことができる。
3.信号を混合した後、混合された信号にローパスフィルタ(lpf)が適用され得る。
4.続いて、いくつかの実施形態では、データは、例えば、ローパスフィルタリングされた信号の中間80%を維持して、クロップされ得る。これは、ローパスフィルタリングステップによって発生されるエンド効果の影響を低減することができる。
5.最後に、クロップされたデータの平均が決定され得、これによりIおよびQそれぞれが得られる。
【0073】
例示として、
図3Cは、以下の実施例のセクションで説明するシミュレート回路を使用することによって得られた音響受信信号を提示する。提示された音響受信信号は、3MHzの周波数および0.7秒の持続時間を有する。
図3Dは、
図3Cに提示された音響信号に関連する位相差信号(すなわち、送信信号と受信信号との間の位相差)を示し、ここで、位相差信号は、アナログ回路(AD8302チップ)を使用することによって得られたものである。
図3Eは、
図3Cに提示された音響信号に関連する位相差信号を提示し、ここで、位相差信号は、ソフトウェアを使用して生成されたものである。
【0074】
以下でさらに説明するように、部分的または完全なVNDの検出後に、いくつかの対策を講じることができる。例えば、
図1を参照すると、制御および信号処理ユニット201は、失血を遅らせるためにポンプ108aをオフにするように構成され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、VNDを検出すると、制御および信号処理ユニット201は、任意の措置を講じることを既定の時間期間、例えば、約5~約10秒の範囲の時間期間にわたって遅延させ、位相差信号をモニタリングし続けてVND事象が実際に発生したことを確実にするように構成される。このようなアプローチは、誤検出の発生を改善することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、流れの流体ダイナミクスの変化を示す位相変動の検出に応答して、制御および信号処理ユニット201は、血液ポンプ108aの速度を調整するように構成され得る。例えば、血液ポンプ108aの速度を低減し得、流れの中に気泡が検出されなくなるまで位相信号をモニタリングし得る。
【0077】
制御および信号処理ユニット201は、本教示によって知らされるように、当技術分野で知られている様式でハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを使用して実装され得る。例として、
図4は、他の構成要素の中でもとりわけ、プロセッサ602、永久メモリ604、ランダムアクセスメモリ(RAM)606、および通信モジュール(WIFIまたはBluetooth(登録商標))608、ならびにプロセッサ602をこれらの構成要素に接続するための通信バス610を含む、ハードウェアプラットフォーム600を概略的に示す。
【0078】
上述したように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の音響センサは、利用可能なHD装置に見られる動脈または静脈ドリップチャンバに位置付けられるように構成され得る。これらのチャンバの直径は、例えば、約18mm~約30mmの範囲であり得る。
【0079】
以下の実施例は、本教示の様々な態様をさらに明らかにするために提供される。実施例は、例示の目的で提供され、本教示を実施する最適な方法および/または得ることができる最適な結果を必ずしも示すことを意図するものではない。
【0080】
[実施例1]
血液透析針を介して血液ポンプ(フレゼニウスの透析装置のポンプ、モデル:2008T、本明細書では「フレゼニウス血液ポンプ」と呼ぶ)の出力に接続されたシミュレートされた静脈拍動(瘻)を、血液ポンプによって生成される「雑音」を上回るシミュレートされた静脈拍動を検出するために用いた。
【0081】
図5Aは、本教示の一実施形態に係る位相検出システムおよび方法を使用して静脈拍動を検出するために用いられたシミュレート回路を示す。図は、液圧回路と、心臓拍動シミュレーションポンプおよびフレゼニウス血液ポンプに対するVNDセンサおよび透析針挿入点の場所とを示す。
【0082】
特定の透析器部品番号16LU04016を含む、モデル2008T透析装置セット向けのフレゼニウス医療用チューブを使用した。VNDシステムは、100~275ml/分に設定された血液ポンプと、静脈針の0.5m前に位置するVNDセンサとを用いて評価された。
【0083】
静脈針が挿入される小型の蠕動ポンプを使用して、静脈または心臓の拍動(瘻)をシミュレートした。
【0084】
VNDセンサとの間で信号を送受信するとともに正確な位相検出のために信号を処理するために使用されるハードウェアを
図5Bに示す。
【0085】
連続波信号(Tx1)をVNDセンサ内の1つの圧電素子に送信するためにデュアルチャネルアナログディスカバリ2デバイスを用い、一方、第2の圧電素子からの信号がRx1を介して受信された。
【0086】
精密な位相差測定を確実にするために、同じTx1送信信号を、アナログディスカバリ2デバイス上の第2の入力チャネル(Rx2)も使用して測定した。
【0087】
アナログディスカバリ2デバイスを制御し、上述した様式で受信信号を処理し、生処理データをログ記録するために、タブレットコンピュータ上で動作するPython(登録商標)プログラミング言語で書かれたアプリケーションソフトウェアを使用した。
【0088】
以下の手順を使用して試験結果を得た。
1.機器のセットアップ:
1.1 6.5mmの医療用チューブおよび透析器をフレゼニウス2008T透析装置内に設置する。同様の医療用チューブおよび特定の蠕動ポンプを使用して、
図5Aに示される心臓シミュレータ回路を形成する。
1.2
図5Aに示すように、静脈針の約0.5m前の静脈ラインにVNDセンサを設置する。ワセリンを使用して、センサをチューブに音響的に結合する。
1.3 BNCコネクタをVNDセンサに接続する。
1.4 血液リザーバに赤い染色水を充填する。
1.5 フレゼニウス透析装置をオンにし、「サービス」モードをエンターし、次いで「保守」および「アートポンプ」を選択する。これにより、血液ポンプ流量の手動制御が可能となる。ポンプ速度を100~275ml/分に設定し、次いでポンプをオフにする。
1.6 両方のポンプを同時に作動させることによって、静脈シミュレーションラインおよび透析ラインを充填する。
1.7 VNDアプリケーションを起動し、測定を開始する。
1.8 タブレットPC画面および透析針挿入領域を記録するために2つのUSBウェブカメラをセットアップする。以下の試験ステップを実行する前に記録を開始する。
2.試験ステップ
2.1 心臓シミュレーションポンプをオンにして最低設定(3.5V)にし、VNDアプリ上の位相出力信号を見ることによってポンプ脈動が観察されることを確認する。
2.2 透析針を拍動シミュレーションラインから注意深く抜去し、好適なキャッチベースンの上に置く。位相出力信号が現在平坦である(すなわち、脈動がない)ことを確認する。
2.3 透析針を再挿入し、VNDアプリ上で位相出力信号を見ることによってポンプ脈動が再び観察されることを確認する。
2.4 静脈拍動シミュレーションポンプがまだ作動している状態で、フレゼニウス血液ポンプをオンにする。
2.5 透析針を拍動シミュレーションラインから注意深く抜去する。位相出力信号の振幅が著しく減少し、血液ポンプからのより小さい脈動のみを示すことを確認する。
2.6 透析針を非常にゆっくりと再挿入して、針が完全に挿入され、漏れていないときにのみ静脈拍動が観察されることを実証する。
2.7 血液ポンプ速度を500ml/分に設定し、次いで透析針を拍動シミュレーションラインから抜去する。位相出力信号が周波数成分の著しい変化を示すことまたは顕著な位相シフトを経ることを確認する。
2.8 透析針を再挿入して、針が完全に挿入され、漏れていないときにのみ静脈拍動が再び観察され、平均位相値が前の状態に戻ることを実証する。
【0089】
図7、
図8、および
図9は、上述の試験ステップに関連する位相検出信号のオシロスコープのトレースを提示する。
【0090】
図7を参照すると、パネルAは、静脈ポンプをオンにしたときの観測された位相信号を示す。パネルBは、静脈ポンプが作動している状態で透析針を抜去した後の位相信号を示しており、パネルAで観察された位相信号の特徴的なシグネチャの実質的な消失を示している。そしてパネルCは、透析針を再挿入した後の位相信号を示し、位相信号の特徴的なシグネチャの再出現を示している。
【0091】
図8を参照すると、パネルAは、フレゼニウス血液ポンプがオンにされたときの観測された位相信号を示す。パネルBは、両方のポンプが作動している状態で透析針を抜去した後の位相信号を示しており、パネルAで観察された位相信号の特徴的なシグネチャの実質的な消失を示している。そしてパネルCは、透析針をゆっくりと再挿入した後の位相信号を示し、パネルAで観察された特徴的な位相シグネチャが徐々に再出現するのを示している。
【0092】
図9を参照すると、パネルAは、血液ポンプ速度が500ミリリットル/分に設定され、それに続いて静脈ポンプがまだ作動している状態で透析針を抜去したときの位相信号を示しており、透析針を抜去したことに起因して位相信号の顕著な変化を示している。パネルBは、透析針をゆっくりと再挿入したときの位相信号を示しており、位相信号がパネルAで観察された特徴的な位相信号に徐々に戻るのを示している。
【0093】
上記の結果は、試験が成功裏に行われたことを実証しており、血液ポンプを500ml/分の流量で動作させていたときでも、VND検出のための本教示に係るシステムおよび方法の実施形態の実現可能性および高い感度を示している。
【0094】
当業者であれば、請求項に記載の主題の範囲から逸脱することなく、本教示を考慮して上記の実施形態に様々な変更を加えることができることを理解するであろう。
【0095】
[実施例2]
本教示に係るプロトタイプVNDセンサシステムを用いて臨床研究を行った。臨床研究は10人の患者に対して行い、各患者につき2つのデータ収集、すなわち、合計20個のデータセットを収集した。10人の患者のうち、9人の患者が瘻アクセスを有し、1人の患者がカテーテルアクセスを使用していた。
【0096】
臨床研究を通して、システムは患者間で一貫性のある測定値を実証し、透析装置に起因する信号は一貫性があり、再現可能であった。測定されたシグネチャの多くは、各データ収集で記録された処置ログに記された事象と相関していた。さらに、試験結果は、患者の動きに起因する顕著な影響がないことを示した。
【0097】
臨床研究中に収集されたデータシグネチャの検査は、本教示に係るVNDセンサシステムが、透析装置の正常動作によって生成される様々な信号を検出することができることを示す。測定されたシグネチャに基づいて、本教示に係る測定技法は、VND事象を透析手順の動作から生じる他の様々なシグネチャと区別することが可能であることが実証された。
【0098】
臨床研究のために、リアルタイムでヘマトクリット値、血液量のパーセント変化、および酸素飽和度を非侵襲的に測定する2008T透析装置の構成要素であるCLiCデバイスハウジング内のモデル2008T透析装置に、VND検出センサをレトロフィットした。VND検出センサシステムは、上述したように、PZT超音波送信機および受信機を含む。システムは、最大振幅応答を導き出す周波数を突きとめるために、結晶の共振周波数(3MHz)辺りの周波数スイープを送信する。次いで、システムは、この周波数で送信し、血液ライン内部の圧力または音速の変化によって引き起こされる送信信号と受信信号との間の位相の変化を測定する。上述したように、位相変化を測定することによって、VND事象を検出することができ、いくつかの場合では、患者の行動/動きによって引き起こされるものなど、透析装置の動作から生じる他の様々なシグネチャも検出することができる。
【0099】
以下、透析手順中のVNDデータ測定値におけるシグネチャの例について、
図11~
図20を参照して説明する。
【0100】
図11は、上述のVNDシステムによって検出された、動脈ポンプのオンおよびオフに関連するシグネチャの例を示す。
図11に示すように、データ収集中、動脈ポンプをオフにしたことに応答して、位相信号は、約10°/秒の初期降下を示し、その後に約0.25°/秒のより緩やかな減少が続いた。対照的に、動脈ポンプをオフ状態からオン状態に切り替えたことに応答して、位相信号は急激な増加を示した。したがって、位相信号は、ポンプの動作状態を示す明確なシグネチャを示す。
【0101】
透析装置の動作に関連するシグネチャに加えて、いくつかの実施形態では、本教示に係るVNDセンサは、患者の心拍数に関連するシグネチャを提供することができる。例として、
図12に示すように、動脈ポンプがオフにされたときに、心拍数信号を容易に観察することができる。
【0102】
図13は、VND検出システムによって測定された心拍数信号を、赤外線心拍数モニタによって測定されたものと比較し、
図14は、典型的な心拍数信号のサイクルに関連するより詳細な特徴を示す。
図13および
図14を参照すると、本実施例で使用されたVND検出システムが、動脈ポンプがオフであるときに心拍数を精密にモニタリングすることが可能であったことがわかる。
【0103】
図15Aおよび
図15Bは、動脈ポンプが作動している間に被験者の心拍数信号を検出することも実現可能であったことを例示している。
図15Aは、動脈ポンプが作動している状態で検出された心拍数信号を、患者によって装着されたパルスオキシメータセンサによって測定された心拍数と比較する。
図15Bは、心拍数信号および動脈ポンプ信号を示す対応する時間・周波数データである。このプロットでは、より明るい色が高い振幅レベルを示し、より暗い色がより弱い信号を示す。ここでは、STFFT(短時間高速フーリエ変換)法を使用して心拍数信号を抽出した。しかしながら、本教示は、STFFT法に限定されず、他の様々なデータ処理方法が、数サイクルの心拍数(例えば、約2~3秒)内の心拍数信号を抽出するために使用され得る。
【0104】
図16Aおよび
図16Bは、それぞれ、透析処置の毎日のログと、静脈ドリップチャンバの前に導入された薬剤(例えば、Mircera)の注入に対する信号応答とを示す。
図16Bに示すように、薬剤の注入は、滑らかに変動する正の位相シフトを生じさせ、これは、典型的なポンプ信号を上回り識別可能である。
【0105】
図17は、自動圧力保持試験からのシグネチャを示す。
図17では、位相角の微増を見ることができ、これは、約12分間隔で発生し、透析装置によって行われた自動圧力保持試験を示すシグネチャを提供する。
【0106】
図18Aおよび
図18Bを参照すると、測定された信号は、動脈ポンプシグネチャと相互作用して特徴的なビート周波数を生じさせる限外濾過(UF)ポンプ信号を示すことができる。
図18Bの最初の半分は、UFポンプがオン状態の信号を表し、ここで特徴的なビート周波数が見える。約13:14に、UFポンプはオフにされ(
図18A参照)、ビート周波数は消失する。いくつかの実施形態では、このようなシグネチャが、UFポンプの動作状態を識別するために用いられ得る。
【0107】
図19は、(例えば、透析装置によって行われる自動導電性試験のための生理食塩水ボーラスの注入に起因する)自動アクセスフローボーラスに関連する信号を示す。
図19では、自動アクセスフローボーラスに起因して、位相データの数度(例えば、約2°)の減少が、約41.5分ごとに発生し、6分継続することがわかる。
【0108】
図20は、ポンピング速度の変化に対する信号応答を示す。信号は、ポンプが作動している状態での心拍数検出について上述したものと同じSTFFT法を使用して生成された。
図20では、およそ17:10にポンプ速度が52CPMから72CPM(すなわち、300~400mL/分)に増加したことがわかる。
【0109】
図21Aおよび
図21Bは、それぞれ、透析処置の毎日のログの一部分と、ヘパリンの注入に対する信号応答とを示す。
図21Bに示すように、薬剤の注入は、滑らかに変動する正の位相シフトを生じさせ、これは、典型的なポンプ信号を上回り識別可能である。
【0110】
図22Aおよび
図22Bは、それぞれ、透析処置の毎日のログの一部分と、薬剤(例えば、Hectoral)の注入およびそれに続く動脈ポンプを停止させるようにトリガする動脈圧警報に対する信号応答とを示す。
図22Bに示すように、薬剤の注入は、滑らかに変動する正の位相シフトを生じさせ、これは、典型的なポンプを上回り識別可能である。位相信号は、
図11に示される位相信号シグネチャと同様に、ポンプ停止に応答して初期降下を示した。
図11~
図20を参照して上述したように、本教示に係るVND検出技法は、VND事象だけでなく、様々な他の事象(例えば、1つまたは複数のポンプの動作状態、薬剤注入、および患者の腕の動き)を識別するのにも十分な感度、信頼性、および再現可能性を提供することができ、それによって、VND事象と他の事象を判別することが可能になる。これは、次に誤警報の確率を減少させるのに役立つことができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、透析システムとVND検出システムとの間のデータ(例えば、入力および出力)の通信は、双方向であり得る。例えば、VND検出システムは、透析システムに1つまたは複数の出力(例えば、VND警報、VND生データ(例えば、位相角))を送信し得、VND検出システムは、透析システムから1つまたは複数の入力(例えば、透析液温度、透析液導電率、TMP、動脈圧、静脈圧、UF速度、透析液流バイパス、BTM動脈および静脈の温度、Hct、血圧、電圧、および透析装置警報(例えば、漏血、動脈圧、静脈圧、TMP、透析液温度、透析液導電率、血液ポンプの停止、ヘパリンの停止、および空気の検出))を受信し得る。上記で特定されたデータに加えて、透析システムおよびVND検出システムは、2つのシステム間で他のデータ(例えば、臨床医の入力、薬剤投与等)を受信および送信するように構成され得る。そのような実施形態では、2つのシステム(VND検出システムおよび透析システム)にとって利用可能なデータが用いられて、VND検出の感度および/または特異度を高め、特に、誤警報の確率を減少させることができる。例として、VND特定アルゴリズムは、入力(例えば、UFポンプ停止または薬剤投与)を使用し、VND事象ではない位相信号の変化を予期および/または確認することができる。
【0112】
[実施例3-VNDセンサを透析装置にレトロフィットし、VNDセンサを血液感知センサと組み合わせる]
いくつかの実施形態では、本教示に係るVND検出センサを、フレゼニウスメディカルケアによって販売されているモデル2008Tまたは5008S透析装置などの既存の透析装置にレトロフィットすることができる。
【0113】
例として、
図23は、不透明な流体流れ(例えば、血液)と透明な流体流れ(例えば、生理食塩水)とを光学的に区別する光検出器2100を装備した2008T透析装置のフロントパネルを示す。
【0114】
いくつかの実施形態では、本教示に係るVND検出センサは、光検出器と一体化され得る。例示として、
図24および
図25は、同じハウジング2110の中に一体化された、VND検出センサ2300および光検出器2100の例を示す。
【0115】
図24および
図25を参照すると、VNDセンサ2300の対の音響送信/受信ユニット2314aおよび2314bは、血液ラインを受容するように構成された溝2120の対向する壁に設けられた2つの対向する空洞内に配置されている。送信/受信ユニット2314a/2314bは、上述した様式で、血液が送信/受信ユニット間を通過しているときに、血液ラインを流れる血液の一部分に定在共振音響波を確立するために用いられ得る。
【0116】
上述したように、対の音響トランスデューサユニット2314aおよび2314bは、血液ライン内の流れの流体ダイナミクスの変化を検出するために共振音響波の位相信号をモニタリングするために使用され得る。この実施形態では、光検出器2100の構造および機能は修正されずに維持され得る。さらに、蓋2130がハウジング2110にヒンジ結合され得、ばね付勢されたラッチ2140によって固定され得、それにより蓋2130が血液ラインを溝2120内に保持することができるようになっている。
【0117】
図26は、2008T透析装置にレトロフィットされたVND検出センサ2300および光検出器2100を含むセンサモジュール2500の例を示す。VNDレトロフィットセンサの動作をサポートするために、プリント回路基板(PCB)2510が、例えばレベル検出器PCBに隣接して追加され得る。VNDセンサと2008T装置のメインプロセッサとの間の通信を可能にするために、通信ケーブル(例えば、RS-232コネクタ)を収容するようにソケット2520がPCB2510上に設けられ得る。いくつかの実施形態では、センサモジュールをより小型にするために、VND検出センサ2300に関連付けられた電子構成要素がセンサモジュール2500のハウジング2110内に含められ、追加のPCB2510の必要をなくすことができる。いくつかの実施形態では、センサモジュール2500はさらに、例えば、血液感知センサ、気泡検出器、電解液センサ、静脈圧トランスデューサ、または温度センサなどの他のセンサを中に含むことができ、それにより、さらなるデータが用いられて、VND検出の感度および/または特異度を高め、特に、誤警報の確率を減少させることができる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
体外回路を流れる流体の流体ダイナミクスの変化を検出する方法であって、
前記流体が流れる前記体外回路に関連付けられたラインの少なくとも一部分の横断寸法を横切って音響波共振を確立することと、
前記共振音響波の位相信号をモニタリングすることと、
前記共振音響波の観測された前記位相信号が、前記流体流れに関連する予想される位相シグネチャからの偏移を示すときに、前記流れる流体の前記流体ダイナミクスの変化の発生を特定することと、
を備える、方法。
[C2]
前記共振音響波を確立するステップは、音響波を前記ラインの前記一部分内に前記横断寸法に沿って送信することと、前記流れる流体を通過した後の前記音響波の少なくとも一部分を検出することとを備える、C1に記載の方法。
[C3]
前記位相信号は、前記送信された音響波の位相と前記検出された音響波の位相との間の差に対応する、C2に記載の方法。
[C4]
前記体外回路は体外透析回路を備える、C1に記載の方法。
[C5]
前記ラインは、前記体外透析回路の静脈戻りラインである、C1に記載の方法。
[C6]
前記予想される位相シグネチャは、前記体外回路に結合された患者の鼓動に関連する位相シグネチャを備える、C1に記載の方法。
[C7]
前記体外回路は、血液透析回路の静脈戻りラインを備える、C1に記載の方法。
[C8]
前記流体ダイナミクスの前記変化は、前記静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントによって引き起こされる、C7に記載の方法。
[C9]
前記モニタリングされた位相信号の前記偏移は、前記静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントを示す、前記位相信号の前記シグネチャの実質的な消失を備える、C8に記載の方法。
[C10]
前記音響波は単色である、C1に記載の方法。
[C11]
前記音響波は、約1MHz~約20MHzの範囲の周波数を有する、C10に記載の方法。
[C12]
前記音響波の周波数を変化させることと、前記音響波についての最適周波数を特定するために周波数の関数として前記位相信号のシフトをモニタリングすることとをさらに備える、C1に記載の方法。
[C13]
前記音響波の周波数を変化させる前記ステップは、前記音響波に周波数変調を適用することを備える、C12に記載の方法。
[C14]
前記予想される位相シグネチャからの前記偏移は、前記体外回路に関連付けられた前記ラインの前記一部分を1つまたは複数の気泡が通過することによって引き起こされる、C1に記載の方法。
[C15]
前記1つまたは複数の気泡の検出に応答して前記流体の流量を調整することをさらに備える、C14に記載の方法。
[C16]
前記流体は血液である、C15に記載の方法。
[C17]
前記予想される位相シグネチャからの前記偏移は、前記流れる流体の流体力学的圧力の変化によって引き起こされる、C1に記載の方法。
[C18]
前記流体圧力の前記変化は、前記ラインの前記横断寸法の偏移を引き起こし、したがって前記位相偏移の一因となる、C17に記載の方法。
[C19]
前記予想される位相シグネチャからの前記偏移は、前記流体の一貫性のない流量によって引き起こされる、C1に記載の方法。
[C20]
前記流体は血液であり、前記流れる流体の前記流体ダイナミクスの前記変化の検出に応答して、前記血液の流量を調整することをさらに備える、C1に記載の方法。
[C21]
前記流体は血液であり、前記位相信号の前記偏移は、少なくとも1つの血餅によって引き起こされる、C1に記載の方法。
[C22]
前記ラインはチューブを備える、C1に記載の方法。
[C23]
前記チューブは、透析システムの体外回路の静脈戻りラインを備え、前記予想される位相シグネチャからの前記位相偏移は、前記流体が前記チューブを流れるときの前記チューブの膨張と収縮によって部分的に引き起こされる、C22に記載の方法。
[C24]
前記予想される流体流れシグネチャの前記偏移は、既定のしきい値よりも大きい前記位相信号の平均値のシフトを観測することによって特定される、C1に記載の方法。
[C25]
患者の血管と流体連通しているライン内を流れる流体の流体ダイナミクスの変化を検出する方法であって、
前記ラインの一部分に共振定在音響波を確立することと、
前記共振音響波の位相信号をモニタリングすることと、
前記共振音響波の観測された前記位相が、前記流れる流体に関連する予想される位相シグネチャからの偏移を示すときに、前記流れる流体の前記流体ダイナミクスの変化の発生を特定することと、
を備える、方法。
[C26]
前記偏移は、既定のしきい値よりも大きい前記観測された位相信号のシフトに対応する、C25に記載の方法。
[C27]
前記予想される位相シグネチャは、前記患者の鼓動に関連する、C26に記載の方法。
[C28]
前記予想される位相シグネチャからの前記位相信号の前記偏移は、前記ラインを1つまたは複数の気泡が通過することによって引き起こされる、C27に記載の方法。
[C29]
前記ラインは、透析システムの静脈戻りラインであり、前記予想される位相シグネチャからの前記位相信号の前記偏移は、前記静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントによって引き起こされる、C27に記載の方法。
[C30]
前記予想される位相シグネチャからの前記位相信号の前記偏移は、前記静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントを示す、前記位相信号の実質的な消失を備える、C27に記載の方法。
[C31]
前記ラインは、血液が流れる内腔を有するチューブを備える、C27に記載の方法。
[C32]
前記予想される位相シグネチャからの前記偏移は、前記チューブを流れる前記流体の流体力学的圧力の変化によって引き起こされる、C31に記載の方法。
[C33]
前記共振定在音響波を確立する前記ステップは、音響送信機および音響検出器を前記ラインに結合することを備える、C27に記載の方法。
[C34]
前記音響送信機および前記音響検出器のいずれかが、前記ラインに取り外し可能に結合される、C33に記載の方法。
[C35]
前記音響送信機は、前記ラインの一方側に位置付けられ、前記音響検出器は、前記ラインの反対側に位置付けられる、C34に記載の方法。
[C36]
体外回路に関連付けられたライン内を流れる流体の流体ダイナミクスの変化を検出するためのシステムであって、
内腔を横断する前記流体の一部分を通って音響波が進むように、前記音響波を前記ラインの前記内腔内に送信するための音響波送信機と、
前記流体を通過した後の前記音響波の少なくとも一部分を検出するための検出器と、
前記送信された音響波と前記検出された音響波との間の位相差を示す位相信号を測定するための位相検出器と、
前記測定された位相信号を、前記ラインを流れる前記流体の前記流体ダイナミクスに関連する予想される位相シグネチャと比較するための比較器と、
を備え、
前記測定された位相信号と前記予想される位相シグネチャとの間の、前記比較器によって特定された偏移は、前記流体流れの途絶の発生を示す、システム。
[C37]
前記偏移を前記流体ダイナミクスの前記変化を引き起こす事象に相関させるための分析器をさらに備える、C36に記載のシステム。
[C38]
前記分析器は、前記事象を、(1)1つまたは複数の気泡の通過、(2)血餅、および(3)予想される位置からの前記ラインの少なくとも一部分の少なくとも部分的なディスロッジメントのいずれかとして特定するために、前記位相偏移を分析するように構成される、C37に記載のシステム。
[C39]
前記音響波送信機は、約1MHz~約20MHzの範囲の周波数を有する音響波を生成する、C36に記載のシステム。
[C40]
前記音響波送信機は、単色音響波を生成するように構成される、C36に記載のシステム。
[C41]
前記ラインは、透析システムの静脈戻りラインを備える、C36に記載のシステム。
[C42]
前記分析器は、前記静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントに対応する前記位相信号の偏移を特定するように構成される、C37に記載のシステム。
[C43]
前記分析器は、前記位相信号の実質的な消失を、前記静脈戻りラインの実質的に完全なディスロッジメントと相関させるように構成される、C37に記載のシステム。
[C44]
前記音響波送信機および前記検出器のいずれかは、前記ラインに取り外し可能に結合される、C36に記載のシステム。
[C45]
前記音響波送信機および前記検出器のいずれかを前記ラインに取り外し可能に結合するための結合要素をさらに備える、C44に記載のシステム。
[C46]
前記結合要素はクランプを備える、C45に記載のシステム。
[C47]
前記クランプは、ばね装填されたクランプを備える、C46に記載のシステム。
[C48]
透析器と、
患者の循環系から前記透析器の入口ポートへの血流のための経路を提供するための動脈ラインと、
前記透析器を出て前記患者の循環系に入る血流のための経路を提供するための静脈血ラインと、
前記静脈血ラインに近接して配置された音響センサと、
を備え、
前記音響センサは、前記静脈血ラインの一部分に音響定在波を確立し、前記音響定在波に関連する位相信号をモニタリングするように構成され、
予想される位相シグネチャに対する前記モニタリングされた位相信号の偏移は、前記静脈戻りラインの少なくとも部分的なディスロッジメントを示す、透析システム。
[C49]
前記音響センサは、前記音響波を生成するための送信機を備える、C48に記載の透析システム。
[C50]
前記音響センサは、前記静脈ラインの前記一部分を通過した後の前記音響波の少なくとも一部分を検出するための検出器をさらに備える、C49に記載の透析システム。
[C51]
前記送信機および前記検出器は、前記静脈ラインの両側に位置付けられる、C50に記載の透析システム。
[C52]
前記送信機および前記検出器は、前記静脈ラインの同じ側に位置付けられる、C50に記載の透析システム。
[C53]
前記音響センサは、送信された前記音響波の位相と前記検出された音響波の位相との間の位相シフトを決定するための位相比較器をさらに備える、C50に記載の透析システム。
[C54]
前記音響センサは、前記透析システムのパネルに結合されたハウジング内に配置される、C48に記載の透析システム。
[C55]
前記ハウジングは、前記音響センサと、不透明度に基づいて流体流れを光学的に区別する光検出器との両方を収容する、C54に記載の透析システム。
[C56]
前記ハウジングは、前記静脈血ラインを受容するように構成された溝を含む、C55に記載の透析システム。
[C57]
前記音響センサは、
前記音響波を生成するための、前記溝の第1の壁に設けられた送信機と、
前記静脈ラインの前記一部分を通過した後の前記音響波の少なくとも一部分を検出するための、前記溝の第2の壁に設けられた検出器と、
を備え、前記第2の壁は前記第1の壁とは反対側にある、
C56に記載の透析システム。
[C58]
前記音響センサは、
前記ハウジングにヒンジ結合された蓋と、
前記静脈血ラインを前記溝内に保持するために前記蓋を係止するように構成されたラッチと、
をさらに備える、C57に記載の透析システム。