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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-09
(45)【発行日】2025-06-17
(54)【発明の名称】害虫捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/10 20060101AFI20250610BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20250610BHJP
   A01M 1/06 20060101ALI20250610BHJP
   A01M 1/08 20060101ALI20250610BHJP
   A01M 1/14 20060101ALI20250610BHJP
   A01M 1/22 20060101ALI20250610BHJP
【FI】
A01M1/10 S
A01M1/02 A
A01M1/06
A01M1/08
A01M1/14 S
A01M1/22 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023187712
(22)【出願日】2023-11-01
(65)【公開番号】P2025076059
(43)【公開日】2025-05-15
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】523414881
【氏名又は名称】根本 清次
(73)【特許権者】
【識別番号】523414892
【氏名又は名称】清川 拓馬
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】根本 清次
(72)【発明者】
【氏名】清川 拓馬
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142206(JP,A)
【文献】特開2003-164246(JP,A)
【文献】特開2017-192306(JP,A)
【文献】特開2005-013232(JP,A)
【文献】特開2010-142207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0315193(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0123037(KR,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0442596(KR,Y1)
【文献】登録実用新案第3125788(JP,U)
【文献】特開2021-073899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び前後方向を有し、前後方域と内部に収容スペースとを有する装置本体を備えた害虫捕獲装置であって、
前記装置本体は、前面に位置する前面開口と、害虫を前記収容スペース内に誘引する機能を有する第1及び第2誘引ユニットと、前記害虫を捕獲する害虫捕獲部とを備え、
前記第1誘引ユニットは、前記収容スペース内において前記前面から後方へ空気流を発生させるための送風手段を含み、
前記第2誘引ユニットは、前記前方域において、酵母の発酵作用によって二酸化炭素と発酵臭を発生させる誘引要素発生部を含み、
前記前方域は、上方に位置する照明部と、下方に位置する基台とを有し、
前記基台は、通気性を有する前方カバーと、前記前方カバーの後方に位置する基台本体とを有し、前記基台本体は、前方側に位置する副送風手段と、前記副送風手段の上方に位置する前記第2誘引ユニットとを備え、
前記送風手段と前記第2誘引ユニットの下面とに囲まれた領域には、制御部が配置されていて、
前記第2誘引ユニットは、上側開口を有するボックス状であって、その内部において前記誘引要素発生部と発熱部とを有し、
前記誘引要素発生部の発酵作用によって生じた熱と前記制御部の周辺に発生する熱とを前記前面側へ送風し、その空気流が前記送風手段による前方から後方へ向かう空気流に合流することを特徴とする前記害虫捕獲装置。
【請求項2】
前記誘引要素発生部の発酵作用には、廃糖蜜とビール酵母菌とを用いる請求項に記載の害虫捕獲装置。
【請求項3】
前記害虫捕獲部は、収容袋に収容された複数の粘着シートを有する請求項1又は2に記載の害虫捕獲装置。
【請求項4】
前記害虫捕獲部は、陰極板と陽極板とを有する複数の電極部を含む請求項1又は2に記載の害虫捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊、ブユ(ブヨ)等の吸血害虫を捕獲するための害虫捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫を捕獲するための装置は、公知である。例えば、特許文献1には、殺虫剤を染みこませたマットを発熱体の上に載置することにより、発熱体の熱による殺虫剤を周囲に発散させる害虫捕獲装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-136890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された害虫捕獲装置によれば、発散される殺虫剤によって蚊を捕獲することができる。しかしながら、発散された殺虫剤の成分が人間の身体に悪影響を与えるおそれがあり、人間の身体に悪影響がない程度に殺虫剤の成分を低い濃度にした場合には、蚊を十分に捕獲することができないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、従来技術の改良であって、使用者の身体に影響を与えることがなく、確実に蚊、ブユ(ブヨ)等の吸血害虫を捕集、捕獲することのできる害虫捕獲装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的課題を解決するために、本発明に係る害虫捕獲装置、上下方向及び前後方向を有し、前後方域と内部に収容スペースとを有する装置本体を備えた害虫捕獲装置に関する。
【0007】
本発明に係る害虫捕獲装置は、前記装置本体は、前面に位置する前面開口と、害虫を前記収容スペース内に誘引する機能を有する第1及び第2誘引ユニットと、前記害虫を捕獲する害虫捕獲部とを備え、前記第1誘引ユニットは、前記収容スペース内において前記前面から後方へ空気流を発生させるための送風手段を含み、前記第2誘引ユニットは、前記前方域において、酵母の発酵作用によって二酸化炭素と発酵臭を発生させる誘引要素発生部を含み、前記前方域は、上方に位置する照明部と、下方に位置する基台とを有し、前記基台は、通気性を有する前方カバーと、前記前方カバーの後方に位置する基台本体とを有し、前記基台本体は、前方側に位置する副送風手段と、前記副送風手段の上方に位置する前記第2誘引ユニットとを備え、前記送風手段と前記第2誘引ユニットの下面とに囲まれた領域には、制御部が配置されていて、前記第2誘引ユニットは、上側開口を有するボックス状であって、その内部において前記誘引要素発生部と発熱部とを有し、前記誘引要素発生部の発酵作用によって生じた熱と前記制御部の周辺に発生する熱とを前記前面側へ送風し、その空気流が前記送風手段による前方から後方へ向かう空気流に合流することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る害虫捕獲装置の一つ以上の実施態様によれば、第1誘引ユニットは、収容スペース内において前面から後方へ空気流を発生させるための送風手段を含み、第2誘引ユニットは、前方域において、酵母の発酵作用によって二酸化炭素と発酵臭を発生させる誘引要素発生部を含むことから、害虫を後方へ誘引し、後方域に位置する害虫捕獲部において確実に捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本発明の第1実施形態に係る害虫捕獲装置の前方から視た斜視図。
図2】害虫捕獲装置の後方から視た斜視図。
図3】装置本体の内部の様子を示す斜視図。
図4】装置本体の内部の様子を示す斜視図。
図5】第2誘引ユニットの構成を示す図。
図6】第2実施形態に係る害虫捕獲装置の図3と同様の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照し、本発明に係る害虫捕獲装置1の詳細を説明すると、以下のとおりである。また、以下の実施形態は、本発明の欠くことのできない要件を含む他に、選択的に採用することのできる要件及び適宜に組み合わせることのできる要件を含んでいる。なお、図3図4及び図6では、害虫捕獲装置1の内部を示すために、装置本体10の外形をなす外周面の一部を省略している。
【0011】
<第1実施形態>
図1図4を参照すると、本実施形態に係る害虫捕獲装置1は、互いに交差する上下方向Y、横方向X及び前後方向Zを有し、装置本体10を含む。装置本体10は、略直方体状の外形をなし、前後方向Zにおいて互いに対向する前後面11,12と、上下方向Yにおいて対向する上下面13,14と、横方向Xにおいて互いに対向する第1及び第2側面15,16とを有する。
【0012】
害虫捕獲装置1の前面11には、害虫、例えば、蚊8を内部に進入させるための略円形状の前面開口(誘引開口)18が設けられている。また、後面12の外面には、送風手段19の排気口19bが露出している。図示例において、装置本体10は、略直方体であるが、三角形状、球状等の各種公知の立体的形状であってもよい。また、前面開口18は、略円形状以外に、三角形状、矩形状等の各種公知の形状であってもよいし、複数の開口から形成されていてもよい。
【0013】
本発明に係る害虫捕獲装置1は、屋内外において害虫を捕獲するための装置であるが、対象となる害虫は、蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、サシバエ等の有翅の吸血害虫である。本明細書においては、日常的に生息する蚊8を例示として挙げている。
【0014】
装置本体10の第1側面15には、電源スイッチ2と内部に収容された充電式のリチウム電池に充電するためのUSBポート4とが位置し、第2側面16には、内部に連通する空気孔5,6が前後方向Zへ並んで位置している。
【0015】
装置本体10は、前方域21と、後方域22と、前後方域21,22内の前収容スペースS1と後方域内の後収容スペースS2とからなる収容スペースSをさらに有する。前方域21と後方域22との境界部分は後方寄りに位置していて、前方域21の前後方向Zの長さ寸法は、後方域22の前後方向Zの長さ寸法の1.2~1.5倍の大きさを有する。
【0016】
また、装置本体10の後面側には、前後方向Zにおいて前面開口18と対向して位置し、収容スペースS内に後方へ向う空気流P1を生成する送風手段19が配置されている。送風手段19は、収容スペースS内に位置するファン19aと、収容スペースS内の空気を外部に排出するための排気口19bとを有する。
【0017】
本実施形態において、装置本体10の前後方域21,22は、互いに分離可能に連結される第1及び第2ケース24,25によって形成されている。第1及び第2ケース24,25は、公知の連結手段、例えば、係合爪と係合凹部とからなる連結手段(図示せず)を介して互いに分離可能に連結されていて、内部の境界部分に位置する連通口23を介して、互いに連通されている。
【0018】
装置本体10は、蚊を収容スペースS内へ誘引するための手段として、光や空気流により誘引する機能を有する第1誘引ユニットU1と、二酸化炭素と蚊の好む発酵臭により誘引する機能を有する第2誘引ユニットU2とを備える。第1誘引ユニットU1は、収容スペースS内に配置された、送風手段19からなる空気流生成部と、光源32を有する照明部30とを有し、第2誘引ユニットU2は、前方域21に位置する誘引要素発生部51とそれを加熱する発熱部52とを有する。
【0019】
前方域21は、上方に位置する照明部30と、下方に位置する基台40とを有する。照明部30は、装置本体10の上面13と上下方向Yにおいて離隔対向して位置する天壁31と、天壁31に固定された複数の光源32とを有する。天壁31は、前方に位置する段差部分と、段差部分から後方へ延びる平坦部分と、平坦部分から後方へ向かって次第に上方へ傾斜して延びる傾斜部分とを有する。
【0020】
光源32には、LED、レーザー発光素子、蛍光管等を用いることができ、好適にはLEDを使用する。前方域21の上方に照明部30が配置されていることによって、例えば、夜間のキャンプ場等の暗い場所に装置本体10を置いた場合、光源32の灯が目立ち、装置本体10の外にいる蚊を前面開口18から内部に進入させるための初期の誘引手段として機能しうる。
【0021】
基台40は、前面から後方へ曲状に延びる、好ましくは通気性を有する前方カバー41と、前方カバー41の後方に位置する基台本体45とを有する。基台本体45は、前方側に位置する送風手段(副送風手段)46と、送風手段46の上方に位置する第2誘引ユニットU2を有する。
【0022】
送風手段46と第2誘引ユニットU2の下面との囲まれた領域には、制御部60が配置されている。制御部60は、CPU,メモリ等の回路基板を有し、後方域22の下方に位置する、リチウム電池を含む電源部61を電源として駆動され、検出されたスイッチ部(不図示)の開閉状態に基づき、照明部30、第1誘引ユニットU1および第2誘引ユニットU2等へ駆動制御信号が送出される。
【0023】
第2誘引ユニットU2は、上側開口50aを有する上面50と、前後面と、側面と、底面とを有するボックス状であって、内部には、誘引要素発生部51と、誘引要素発生部51の下方に位置する発熱部(ヒーター)52とを有する。
【0024】
誘引要素発生部51は、酵母の発酵により、蚊に対する誘引効果を奏する匂いと二酸化炭素とを発生しうる。発酵とは、酵母などの微生物がエネルギーを得るために有機化合物を分解して、アルコール類・有機酸類・二酸化炭素などを生成する過程である。本発明における発酵は、好ましくはアルコール発酵であり、より好ましくはエタノール発酵である。エタノール発酵は、酵母が利用可能なブトウ糖、果糖、ショ糖などの糖類に酵母を作用させて、エタノールと二酸化炭素を生成させる反応である。
【0025】
本実施形態における誘引要素発生部51では、廃糖蜜にビール酵母菌(ドライイースト)を作用させて、エタノール(EtOH)と二酸化炭素(CO)を生成している。また、誘引要素発生部51には、廃糖蜜等の糖類とビール酵母菌等の酵母菌のほかに、尿素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アルデヒドを配合してもよい。
【0026】
このように、食品にも使用される廃糖蜜とビール酵母とを用いたエタノール発酵により発生した二酸化炭素や発酵臭は、人間の身体に悪影響を及ぼすものではないことから、子供や乳幼児の近くでも安全に害虫捕獲装置1を使用することができる。また、廃棄時に焼却しても有毒ガス等が発生しないことから、安全に廃棄することができる。
【0027】
発熱部52が発熱されることによって、上方に位置する誘引要素発生部51が加熱されて、酵母による発酵が促進される。それによって、発酵が進行し、生体的温度に加熱されるとともに、加熱される前よりもより多くのエタノール、二酸化炭素及び酵母による匂いを生成し、上側開口50aから収容スペースS内に流出させることができる。
【0028】
蚊やブユ等の害虫は、発酵や腐敗、果実の熟成等、微生物による植物の分解により生じるような甘酸っぱい香りやアルコールの香り等を好むことから、誘引要素発生部51により発生する発酵臭及びエタノールの蒸発する匂いを好むといえる。
【0029】
また、蚊等の吸血虫は、人間が吐き出す炭酸ガスを感知する高度な能力を有し、待機中のガス濃度が0.01%変化しただけでも感知しうることから、誘引要素発生部51から生成される二酸化炭素は蚊を誘引し得る要素といえる。
【0030】
送風手段46は、横方向Xへの並ぶ複数のファン46aから構成されている。ファン46aの駆動は、制御部60によって回転が制御されている。ファン46aは副次的なものであって、空気孔5,6から外気を取り込むとともに、誘引要素発生部51の発酵作用によって生じた熱と制御部の周辺に発生する熱とを前面11側へ送風し、その空気流P2が送風手段19による前方から後方へ向かう空気流P1に合流する。
【0031】
それによって、空気流P1が生体適温度に近づくような温風となって、蚊8をより後方へ誘引することができるといえる。
【0032】
なお、本実施形態において、発熱部52は制御部60によって制御されているが、例えば、使い捨てカイロのような化学反応による発熱作用によって発熱してもよい。この場合には、電力消費及び製造コストを抑えることができるといえる。
【0033】
後方域22の後収容スペースS2は、分離壁29を介して上下に区分された後上方スペースと後下方スペースとを有する。後上方スペースには、前方域21側に位置する害虫捕獲部70と、害虫捕獲部70の後方に位置する送風手段(主送風手段)19とを有する。
【0034】
害虫捕獲部70は、前方側が開口しているネット状の収容袋71に収容された複数の粘着シート72を有する。粘着シート72は、蚊やハエ等を捕獲できる粘着力を備え、合成樹脂、不織布、紙等から形成されたベース材と、ベース材に塗布された粘着剤とを有する。粘着剤の材料は特に限定されないが、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレンなどのポリオレフィン系高分子エラストマーが考えられる。
【0035】
害虫捕獲部70の位置する上面の部分には、スライド式に開閉可能な取り出し口73が設けられており、使用後において、粘着シート72に蚊が捕集された状態で、取り出し口73から収容袋71ごと外に取り出して廃棄し、新しいものとすぐに交換することができる。
【0036】
送風手段19は、制御部60によって駆動制御された上下方向Yに並ぶ複数のファン19aから構成されていて、その前方には集塵フィルターが配置されている。
【0037】
本実施形態に係る害虫捕獲装置1を使用する際には、まず、電源スイッチ2を入れて、制御部60から制御信号が送信されて、照明部30と、送風手段19,46からなる空気流発生部と、誘引要素発生部51とが駆動される。
【0038】
まず、照明部30による光源32が点灯することで、外にいる蚊が装置本体10内部に進入する。次に、空気流発生部によって発生した空気流P1と、誘引要素発生部51により生成されて、上側開口50aから収容スペースSに放出された二酸化炭素と発酵臭とが相俟って、蚊を収容スペースSの奥側へ、すなわち、後方へ向かって誘引する。
【0039】
誘引された蚊は、境界部分の連通口23を通過して害虫捕獲部70に移動し、害虫捕獲部70において粘着シート72に捕集される。このように、照明、空気流、二酸化炭素、発酵臭からなる複数の誘引要素が組み合わさることで、例えば、LED等の光源のみで蚊を捕獲しようとする装置や発酵臭のみで蚊を捕獲しようとする装置等に比べて、蚊を確実に装置本体10の収容スペースSに誘引して、捕集、捕獲することができる。
【0040】
ここで、蚊、ハエ、アブ、ダニなどの害虫を忌避する方法としては、従来より忌避剤を含有する液剤を皮膚に直接噴霧、塗布することが行われている。しかし、このような忌避剤を含有する液剤を皮膚に直接噴霧、塗布する方法は、人によっては口から吸引してむせてしまったり、或いは皮膚に炎症を起こしたりアレルギー症状などを引き起こすおそれがある。
【0041】
また、害虫を忌避する別の方法として、蚊取り線香や電気蚊取りなどが用いられている。しかし、蚊取り線香は火を使うため安全ではないし、電気蚊取りは自由に持ち運ぶことが難しいものである。
【0042】
さらに、近年、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、日本脳炎、ウエストナイル熱などの病原体を保有する蚊に刺されることによって起こる感染症(蚊媒介感染症)が、中南米やアジアなどの熱帯、亜熱帯地域で流行していることが報告されており、社会問題となっている。これらの感染症に罹らないための予防策としては、感染症の原因となる蚊に刺されないことが重要になる。
【0043】
本発明に係る害虫捕獲装置1によれば、蚊を確実に捕集、捕獲することができるので、かかる社会問題を解決することができる。また、直接的に忌避剤を含有する液剤を皮膚に直接噴霧、塗布するものではないことから、使用者にアレルギーを発症させることもなく、さらに、充電式であることから携帯性に優れ、キャンプ場や夏のビアガーデン会場等の電源のない場所でも簡易に使用することができる。
【0044】
<第2実施形態>
本実施形態に係る害虫捕獲装置1は、その基本構造が第1実施形態のそれと同じであるから、相違点についてのみ以下に説明する。
【0045】
本実施形態に係る害虫捕獲装置1では、害虫捕獲部80に複数の電極部が配置されている。電極部は、互いに対向する陰極板81と陽極板82とから構成されており、リチウム電池等が収容された電源部61内に配置された変圧器と電気コードを介して電気的に接続されている。
【0046】
電源スイッチ2によって、電源が投入されると、電極部の陰極板81と陽極板82とに高電圧が印加される。害虫捕獲部80に誘引された蚊が陰極板81と陽極板82との間の隙間を通過する際に、絶縁破壊が起こって蚊を通して電流が流れて放電が生じ、放電に電撃を受けて感電した虫は、熱死又は焼死して落下する。落下した蚊は、電極部の下方に配置された受皿(不図示)に蓄積される。
【0047】
電極部の陰極板81と陽極板82とはメッシュ状を有し、後方へ向かうにつれて網目が次第に小さくなっている。このように、網目が次第に小さくなることによって、比較的に大きな害虫は前方側で捕獲し、比較的に小さな害虫を後方側で捕獲することができる。また、電極部を構成する陰極板81と陽極板82との上下方向Yの寸法が、後方へ向かうにつれて次第に大きくなっている。かかる構成を有することによって、送風手段19の前方に位置する電極部が少なくなるので、電極部が壁となって空気流P1の流れが阻害されるのを最小限に抑えることができる。
【0048】
このように、害虫捕獲部80において電撃によっても蚊を確実に、捕獲、捕集することができる。
【0049】
上記本発明は、少なくとも下記実施形態を含むことができる。実施形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
)前記誘引要素発生部の発酵作用には、廃糖蜜とビール酵母菌とを用いる。
)前記害虫捕獲部は、収容袋に収容された複数の粘着シートを有する。
)前記害虫捕獲部は、陰極板と陽極板とを有する複数の電極部を含む。
【符号の説明】
【0050】
1 害虫捕獲装置
8 害虫(蚊)
10 装置本体
11 前面
18 前面開口
30 照明部
51 誘引要素発生部
52 発熱部
70 害虫捕獲部
71 収容袋
72 粘着シート
80 害虫捕獲部
81 陰極板
82 陽極板
P1 空気流
S 収容スペース
U1 第1誘引ユニット
U2 第2誘引ユニット
X 横方向
Y 上下方向
Z 前後方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6