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特許7693805エラストマー製品、特には車両用タイヤのためのゴム被覆された少なくとも1種の第一のヤーンを含む強度メンバー、ゴム被覆された強度メンバーを製造するための方法、及び少なくとも1種のゴム被覆された強度メンバーを有する車両用タイヤ
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  • 特許-エラストマー製品、特には車両用タイヤのためのゴム被覆された少なくとも1種の第一のヤーンを含む強度メンバー、ゴム被覆された強度メンバーを製造するための方法、及び少なくとも1種のゴム被覆された強度メンバーを有する車両用タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-09
(45)【発行日】2025-06-17
(54)【発明の名称】エラストマー製品、特には車両用タイヤのためのゴム被覆された少なくとも1種の第一のヤーンを含む強度メンバー、ゴム被覆された強度メンバーを製造するための方法、及び少なくとも1種のゴム被覆された強度メンバーを有する車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/16 20060101AFI20250610BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20250610BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20250610BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20250610BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20250610BHJP
【FI】
D07B1/16
B60C9/00 B
B60C9/08 J
D01F6/62 302C
D02G3/48
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023526103
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2021079488
(87)【国際公開番号】W WO2022111927
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】20209683.0
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クラマー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ナビ・ネルミーン
(72)【発明者】
【氏名】レーゼ・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シューナック・ミヒャエル
【審査官】曽川 マリー
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504338(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108084424(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02708380(EP,A1)
【文献】特開2012-041463(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2017-0002992(KR,A)
【文献】特開2004-100087(JP,A)
【文献】特開2003-119268(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102277646(CN,A)
【文献】国際公開第2022/049171(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/001039(WO,A1)
【文献】特開2005-2197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-6/96
D01F9/00-9/04
D07B1/00-9/00
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー製品のための、ゴム被覆された強度メンバーであって、前記強度メンバーが、少なくとも1種の第一のヤーンを含み、前記第一のヤーンが、リサイクルPETを含むHMLS-PETのヤーンであり、前記第一のヤーンが、「×2コード」に撚糸され、前記コードが、150~250の撚り係数及び少なくとも6.3g/denの破断力を有し、0.0056%/den未満の45Nでの伸び、及び3%未満の熱収縮を有し、およびHMLS-PETの前記第一のヤーンが、45%~53.5%の結晶化レベルを有していることを特徴とする、ゴム被覆された強度メンバー。
【請求項2】
HMLS-PETの前記第一のヤーンが、10重量%~100重量%のリサイクルPETを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム被覆された強度メンバー。
【請求項3】
HMLS-PETの前記第一のヤーンが、0.12重量%~5重量%のイソフタル酸(IPA)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム被覆された強度メンバー。
【請求項4】
HMLS-PETの前記第一のヤーンが、300~4000デニール(den)の繊度を有していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム被覆された強度メンバー。
【請求項5】
HMLS-PETの前記第一のヤーンが、5den未満のフィラメント繊度を有し、かつ、8%未満の熱収縮、及び0.0056%/den未満の45Nでの伸びを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム被覆された強度メンバー。
【請求項6】
請求項1に記載のゴム被覆された強度メンバーを製造するためのプロセスであって、少なくとも以下の、
a)100重量%の、PETボトル又はその他のPET製品からのリサイクルPETを含むPETチップを備えるステップ;
b)ステップa)からの前記PETを、予備結晶化、結晶化、及び固相重合させて、0.85~1.15dl/gの固有粘度を有する高粘度PETチップを得るステップであって、予備結晶化が150~180℃の温度で0.5~1.5時間行われ、結晶化が200~230℃の温度で4~6時間行われる、ステップ;
c)乾燥ステップ、ステップb)からの前記高粘度PETチップを用い、ヤーンを紡糸するために、前記PETチップを溶融及び押出し加工し、それに続けて、緩衝ゾーンを有するリヒーターを含む紡糸口金の手段によりヤーンを紡糸するステップ、並びに未延伸のヤーンを段階的に冷却するステップであって、乾燥後の前記チップの水分が、30ppm未満であり、前記紡糸口金の下の前記リヒーターの温度が、280~350℃であり、前記段階的な冷却の際の前記リヒーターの下の前記緩衝ゾーンの長さが、20~100mmである、ステップ;
d)ステップc)における前記段階的な冷却の後で、オイリング、延伸、熱硬化、及び巻取りをして、HMLS-PETヤーンを得るステップ;
e)撚糸ステップ;
g)浸漬処理を用いて接着性を改質するステップ;
h)ゴム被覆混合物を用いてゴム被覆するステップ;
の加工ステップを含むプロセス。
【請求項7】
ステップa)が、バージンのPETのチップを備えるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップc)が、前記リサイクルPETのチップをバージンのPETのチップと混合して、10重量%~100重量%未満の、リサイクルPETからのチップを含むPETチップを得るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
以下:
f)製織ステップ;
をさらに含むことを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップb)において、固相重合が、200~220℃の壁温度の固相重合反応器の中で30~35時間行われることを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
車両用タイヤであって、請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1種の、ゴム被覆された強度メンバーを含む、車両用タイヤ。
【請求項12】
強度メンバープライの形態で、請求項1~5のいずれか一項に記載の、複数のゴム被覆された強度メンバーを含むことを特徴とする、請求項11に記載の車両用タイヤ。
【請求項13】
前記強度メンバープライが、少なくとも、カーカスプライ及び/又はベルトバンデージ及び/又はベルトプライ及び/又はビード補強材であることを特徴とする、請求項12に記載の車両用タイヤ。
【請求項14】
前記強度メンバープライが、少なくとも前記カーカスプライであり、前記カーカスプライが、折重ね状態で、ビードの周りを1回(1プライ構成)又は2回(2プライ構成)巻いていて、前記プライの端部が、コアとベルトの端部との間に位置していることを特徴とする、請求項13に記載の車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー製品、特には車両用タイヤのためのゴム被覆された少なくとも1種の第一のヤーンを含む強度メンバー(strength member)、そのゴム被覆された強度メンバーを製造するためのプロセス、及び少なくとも1種のゴム被覆された強度メンバーを含む自動車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のエラストマー製品を補強するための強度メンバーは、公知である。車両用タイヤに関しては、それらが通常、各種の構成要素の中に各種の強度メンバーを有してしていて、それらそれぞれが、ゴム混合物(これは、ゴム被覆混合物(rubberization mixture)とも呼ばれる)によって被覆されているということは、公知である。したがって、それらの強度メンバーは、車両用タイヤの中では、ゴム被覆された強度メンバーとして存在している。
【0003】
その中で織物強度メンバーが使用されている、それらの構成要素においては、その(織物)強度メンバーで使用される材料は、多くの場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0004】
たとえばHMLS-PETと呼ばれる、特定の性質を有するPETを使用することが可能であることも同様に公知である。HMLS-PETは、高モジュラス低収縮(High Modulus Low Shrinkage)ポリエチレンテレフタレート(HMLS-PET)である。
【0005】
HMLS-PETは特に、フラットスポット特性(=駐車した際の路面接触領域における可逆的塑性扁平化(reversible plastic flattening))を最適化させ、そしてサイドウォールの過剰な圧縮を回避させるために、車両用タイヤのカーカスプライで使用される。
【0006】
さらなる目的は、たとえば車両用タイヤのようなエラストマー製品のための材料を選択する際に実在する、持続可能性と性能要求との間のトレードオフの関係を、解決するか、或いは少なくとも改良することである。
【0007】
独国特許出願公開第102010017107A1号明細書には、リサイクルPETの少なくとも1種のヤーンを含む補強コードが開示されている。そのリサイクルPETは、特に、PET飲料用ボトルに由来するものであってよい。
【0008】
しかしながら、リサイクルPETの使用には、その性質を原因とする限界が存在する。たとえば、ボトルからのリサイクルPETには、その加工操作の際、たとえば、特には、工業用のヤーンを得るための紡糸プロセスの際に、その結晶化を損なう混入物が含まれている。それは、従来からのPET、すなわち、リサイクルPETではないバージンの製品からのPETに比較して、物理的性質を悪化させる。このことは、収縮、変形能、及び延伸、さらには強度の関連する高度な要求が求められるPETの場合、特に端的に表れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、エラストマー製品、特には車両用タイヤのためのゴム被覆された強度メンバーを提供することであり、ここでその強度メンバーには、高強度及び高伸展性を有し、そして同時に最大限の資源の保存性、最大限の持続可能性、及び環境への最小限の衝撃性が得られるような、少なくとも1種の第一のヤーンが含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、その第一のヤーンが、リサイクルPETを含むHMLS-PETのヤーンであることで、達成される。
【0011】
その第一のヤーンには、好ましくは、10重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0012】
リサイクルPET、好ましくは10重量%~100重量%のリサイクルPETを含むHMLS-PETの第一のヤーンは、本発明の文脈においては、「第一のヤーン」とも呼ばれる。
【0013】
驚くべきことには、そのヤーンにはリサイクルPETが、好ましくは10重量%~100重量%含まれ、そしてそれと同時に、低収縮と組み合わせて、高いモジュラス、従って高強度を有し、そのためHMLS-PETヤーンとして分類することが可能なPETの少なくとも1種のヤーンを含むゴム被覆された強度メンバーを提供することが可能であった。
【0014】
本発明の強度メンバーは、それが、バージンのPETよりも資源保存的且つ環境に優しい方法で製造され、それにも関わらず、特にたとえば車両用タイヤのカーカスプライにおけるエラストマー製品において使用するための高い要求性能に適合するという利点を有している。
【0015】
パーセントにおける重量の数字(重量%)は、ゴム被覆されてなく、そして前処理されていない、すなわち、特には浸漬処理されていないヤーンを基準にしたものである。
【0016】
「リサイクルPET」は、本発明の文脈においては、使用済みのPET製品たとえば、PETボトル又はその他のPET物品たとえば衣類から得られたPETを意味していると理解されたい。
【0017】
リサイクルPETのための直接的な出発材料は、鉱油ではなく、PETのボトル又はその他の物品である。
【0018】
HMLS性能を有するリサイクルPETを得るための好ましいプロセスについては、以下で詳しく説明する。
【0019】
本発明の強度メンバーのさらなる利点及び特徴は、本発明の有利な構成に関連する従属請求項からも明らかであり、そういうことなので、限定的と解釈してはならない。本発明にはさらに、技術的に可能であれば、それらの従属請求項が、相互に関連しなかったり、或いはそれらが異なった請求項のカテゴリーに属していたりしたとしても、異なった従属請求項の特徴の組み合わせもまた包含される。このことは、本明細書で後に説明するような作業実施例の個々の特徴の場合にも、当業者が、それらが必然的に共に属すると認識できなくなる程度にまでは、あてはまる。本発明には、同様に、「好ましい」、「特に好ましい」などと認識される特徴の組み合わせが包含され、その内容から、又は技術的な理由から、そうではないことが明確に明らかである場合を除き、たとえば、「好ましい」と認められた第一の特徴を、「特に好ましい」と認められたさらなる第二の特徴とを組み合わせることも可能である。
【0020】
その強度メンバーが、100重量%未満のリサイクルPETを含む、すなわち、たとえばそして具体的に、10重量%~100重量%未満のリサイクルPETを含んでいるような場合には、その残りの構成要素は、いかなるリサイクリングプロセスも経ることなく、鉱油ベース(石油化学的)又は再生可能な原料に由来するバージンのPETである。
【0021】
その第一のヤーンの中に10重量%~100重量%のリサイクルPET含量がある場合、本発明のゴム被覆された強度メンバー及び自動車用タイヤの製造におけるコスト及びCO負荷は、個別に調整することが可能である。
【0022】
本発明の根底にある目的は、リサイクルPETの比率を高くするほど、特に好適に達成されはするが、たとえば、リサイクルPETの比率が10重量%であったとしても、資源の保存及びCO負荷の低下には寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】リサイクルPETの比率に対して、棒グラフの形でプロットした図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、20重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0025】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、30重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0026】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、40重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0027】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、50重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0028】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、60重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0029】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、70重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0030】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、80重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0031】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、90重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0032】
有利な実施態様においては、その第一のHMLS-PETのヤーンには、100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0033】
特に好ましくは、そのHMLS-PETのヤーンには、30重量%~100重量%、より好ましくは50重量%~100重量%のリサイクルPETが含まれる。
【0034】
リサイクルPETは、バージンのPETとは、混入物、たとえば、特にイソフタル酸(IPA)の含量の点で異なっている。それらの混入物、特にIPAは、たとえばそして特には、PETボトルの中に存在している。
【0035】
バージンのPETが、0重量%のイソフタル酸含量を有しているのに対して、リサイクルPETの中のIPA含量は、最高で5重量%ともなり得る。
【0036】
より具体的には、本発明の文脈において使用されるリサイクルPETの中では、それが、たとえばそして特には、1.2重量%~2.2重量%である。
【0037】
パーセントで表される重量の数字(重量%)は、この場合、PETを基準、したがって、本発明の強度メンバーにおいては、ゴム被覆されず、そした前処理されていない、すなわち、特には浸漬処理されていないヤーンを基準としたものである。
【0038】
10重量%のリサイクルPETと90重量%のバージンで鉱油ベースPETとの比率の場合においては、したがって、イソフタル酸含量は、0.12重量%~0.5重量%、好ましくは0.12重量%~0.22重量%である。
【0039】
したがって、その第一のHMLS-PETのヤーンは、好ましくはたとえば0.12重量%~5重量%、好ましくは0.12重量%~2.2重量%のイソフタル酸(IPA)含量を有している。
【0040】
「HMLSヤーン」とは、この場合、高モジュラスで低収縮のヤーンを意味していると理解されたい。
【0041】
この場合、その第一のHMLS-PETのヤーンは、具体的そして好ましくは、8%未満、より好ましくは4%~8%の熱収縮、及び0.0056%/den(1デニールあたりのパーセント)、より好ましくは0.002~0.0056%/denの45Nでの伸び、及びそれらと共に5den未満、より好ましくは3~5denのフィラメント繊度を有している。
【0042】
これらの数字は、HMLSヤーンとしての、第一のHMLS-PETのヤーンの特性決定には特に適している。
【0043】
本発明の強度メンバーの第一のヤーンが、7.0~9.0g/den(1デニールあたりのグラム数)の破断強度を有しているのが好ましい。
【0044】
本発明の強度メンバーの第一のヤーンが、10.2%~15.5%の破断時伸びを有しているのが好ましい。
【0045】
その第一のヤーンは、特にはそして好ましくは、連続マルチヤーンであり、したがって、好ましくはモノフィラメントヤーンでもなく、そして好ましくはステープルファイバーヤーンでもない。
【0046】
本発明の強度メンバーの第一のヤーンには、好ましくは、5den未満のフィラメント繊度を有するフィラメントが含まれるが、これは、そのヤーンのそれぞれのフィラメントが、好ましくは、5denよりも細いということを意味している。その第一のヤーンが、3~5denのフィラメント繊度を有しているのがより好ましい。
【0047】
その第一のヤーンが、0.0056%/den未満の、45Nの力のときの伸びを有しているのが好ましい。
【0048】
引張強度、45Nでの伸び、及び破断時伸びは、本発明の文脈においては、ASTM D885に従い、Instron引張試験器によって測定される:Instron 5564装置(クランプ;C-クランプ、2714-004(空気圧作動)、負荷容量;1kN(1キロニュートン))、試験条件:ゲージ長;250mm、クロスヘッド速度;300mm/分、プリテンション;0.05gf/den(1デニールあたりの重量グラム)、空気圧;0.4~0.6MPa、試験前の試料のコンディショニング:24±(プラス/マイナス)2℃、55±5%大気湿度で24時間。
【0049】
本発明の強度メンバーの第一のヤーンが、177℃で3.2%~5.2%の熱収縮を有しているのが好ましい。
【0050】
ヤーンの熱収縮は、本発明の文脈においては、ASTM D885に従った熱収縮法の手段により測定される。その試験条件は次のとおりである:温度177℃、荷重0.05g/den、時間10分。
【0051】
その第一のHMLS-PETのヤーンが、45%~53.5%の結晶化レベルを有しているのが好ましい。
【0052】
その結晶化レベルは、ASTM D1505に従い、次のようにして測定される:最初に、A密度勾配カラムを使用して、そのヤーンの密度を調べる。次いで、その結晶化レベルを、(後述する)100%非晶質PETと100%結晶質PETの密度についての文献値を使用して、補間により計算する。100%非晶質PETの密度は、1.333g/cmであり、それに対して100%結晶質PETの密度は、1.455g/cmである。
【0053】
そのような結晶化レベルを有していれば、そのヤーン、従って本発明の強度メンバーは製造可能であり、同時に、特に車両用タイヤのカーカスプライにおいて使用する場合において高い要求がされる、伸び及び収縮特性の点で必要とされる性能を有している。
【0054】
好ましくは、その第一のHMLS-PETのヤーンが、300~4000デニール(den)、好ましくは300~3100den、より好ましくは300~2000den、最も好ましくは900~2000denの繊度を有している。
【0055】
第一の実施態様においては、その第一のヤーンを撚糸し、さらに下記のようにして加工する。この実施態様においては、本発明の強度メンバーには、撚糸され、ゴム被覆されたヤーンが含まれる。
【0056】
さらなる有利な実施態様においては、1本又は複数のヤーンを撚糸して、コードを形成させることもまた可能である。それぞれの場合において、第一のヤーンは、本発明で記述しているように、好ましくは10重量%~100重量%のリサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンである。
【0057】
少なくとも1種のさらなる(第二の)ヤーンが、特に好ましい実施態様においては、同様に、好ましくは10重量%~100重量%のリサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンであり、それにより、この実施態様においては、少なくとも、記述された2種のHMLS-PETヤーンが、共に撚糸されて、1本のコードが形成される。
【0058】
本発明の有利な実施態様においては、第一のヤーンが撚糸されて「×2コード」の形態となるが、ここでそのコードは、150~250、好ましくは170~230の撚り係数(twist factor)、及び少なくとも6.3g/den、好ましくは6.3~10g/denの破断力(breaking force)を有し、そして0.0056%/den未満、好ましくは0.0005%~0.0040%/denの45Nでの伸び、及び3%未満、好ましくは1%~3%、より好ましくは1.5%~2.5%の熱収縮を有している。
【0059】
「×2コード」という表現は、2本のヤーンが、一緒に撚糸されたということを意味している。
【0060】
記述してきた実施態様においては、第一のヤーン(本発明で記述しているように、リサイクルPETを含むHMLS-PETヤーン)は、好ましくは第二の、さらなるリサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンと共に撚糸されて、1本のコードを与える。
【0061】
コードの熱収縮は、本発明の文脈においては、ASTM D885に従った180℃での熱収縮法の手段により測定される。その試験条件は次のとおりである:温度180℃、荷重0.05g/den、時間10分。
【0062】
さらなる好ましい実施態様においては、別法として、その少なくとも1種のさらなるヤーンが、別種のヤーンであり、そのため、本発明の強度メンバーが、好ましくは10重量%~100重量%のリサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンと、少なくとも1種のさらなるヤーンとを含む、ハイブリッドコードであるということも考えられる。その少なくとも1種のさらなるヤーンは、この場合、好ましくは、非金属材料である(非金属材料からなっている)。その非金属材料は、好ましくは、以下のものを含む群から選択される:ポリアミド(PA)及び/又はアラミド及び/又はポリエーテルケトン(PEK)及び/又はポリケトン(POK)及び/又はポリエチレンナフタレート(PEN)及び/又はレーヨン及び/又はビスコース及び/又は天然繊維及び/又はガラス繊維。
【0063】
記述されたヤーン及び/又は記述されたコードが、好ましい実施態様においては、製織されて織物プライ(textile ply)が形成され、その後で後者が、ゴム被覆混合物を用いた接着及びゴム被覆の活性化により、さらに加工される。
【0064】
本発明はさらに、複数の本発明のゴム被覆された強度メンバーで構成された強度メンバープライも提供する。
【0065】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1種のゴム被覆された強度メンバーを含む、車両用タイヤも提供する。
【0066】
本発明の有利な実施態様においては、その車両用タイヤには、強度メンバープライの中に、複数の本発明のゴム被覆された強度メンバーが含まれる。
【0067】
その強度メンバープライには、好ましくはカーカスプライ及び/又はベルトプライ及び/又はバンデージプライ及び/又はビード補強材、より好ましくは少なくともカーカスプライが含まれる。
【0068】
したがって、本発明の車両用タイヤにはさらに、一つ又は複数の構成要素の中、好ましくは少なくともカーカスプライの中に、本発明の強度メンバーを含んでいてもよい。
【0069】
本発明の有利な実施態様においては、その強度メンバープライが、少なくともカーカスプライであり、ここでそのカーカスプライが、折重ね状態で、ビードの周りを1回(1プライ構成)又は2回(2プライ構成)巻いていて、この場合、それらプライの端部は、コアとベルトの端部との間に位置している。
【0070】
このようにすると、その車両用タイヤは、それが必要とされる(それぞれの荷重指標を考慮に入れた)耐荷力(load-bearing capacity)を満たすことができる。
【0071】
この実施態様の有利な展開においては、ビードを巻いている1層又は2層のカーカスプライに加えて、本発明の強度メンバーを含むさらなる強度メンバープライを、ビードの上又は下のサイドウォールの中に配置する。
【0072】
このことにより、その車両用タイヤが、耐荷力の面で、さらに改良される。
【0073】
以下で、ゴム被覆された強度メンバーの第一のヤーンを得ることが可能な、特に好ましいプロセスを記述する。ヤーンは、前述のようにして、連続マルチヤーンとして製造される。詳細に述べるその加工ステップは、特に断らない限り、当業者には公知の装置を使用して、実施される。
a)100重量%の、PETボトル又はその他のPET製品からのリサイクルPETを含むPETチップを備えるステップ、及び場合によってはバージンのPETのチップを備えるステップ;
b)ステップa)からのPETチップを、予備結晶化、結晶化、及び固相重合(SSP)させて、0.85~1.15dl/g(1グラムあたりのデシリットル)の固有粘度を有する高粘度PETチップを得るステップ;
c)乾燥ステップ、場合によってはそのリサイクルPETのチップをバージンのPETのチップと混合して、10重量%~100重量%までの、リサイクルPETからのチップを含むPETチップを得るステップ、ヤーンを紡糸するために、そのPETチップを溶融及び押出し加工し、それに続けて、緩衝ゾーンを有するリヒーターを含む紡糸口金の手段により、ヤーンを紡糸するステップ、並びにその未延伸のヤーンを段階的に冷却するステップ(ここで、その乾燥後のチップの水分が、30ppm未満であり、その紡糸口金の下のリヒーターの温度が、280~350℃であり、そしてその段階的な冷却の際のリヒーターの下の緩衝ゾーンの長さが、20~100mmである);
d)ステップc)における段階的な冷却の後で、オイリング、延伸、熱硬化、及び巻取りをして、HMLS-PETヤーンを得るステップ。
【0074】
チップの形態でリサイクルPETを得ることが可能であるという事実は、当業者には公知である。それらのチップは、「グラニュール」と呼ぶこともできる。
【0075】
「100重量%の、PETボトル又はその他のPET製品からのリサイクルPETを含むPETチップ」は、本明細書では、「リサイクルPETのチップ」とも呼ばれる。
【0076】
固有粘度は、本発明の文脈においては、ASTM D4603に従い、ウベローデ細管粘度計の手段により測定される。
【0077】
そのヤーンが、100重量%未満のリサイクルPETを含む、すなわち、特には10重量%~100重量%未満のリサイクルPETを含んでいるような場合には、その残りの構成要素は、いかなるリサイクリングプロセスも経ることなく、鉱油ベース(石油化学的)又は再生可能な原料に由来するバージンのPETである。
【0078】
この場合においては、追加の加工ステップ(上では、「場合によっては混合するステップ」と呼ばれている)において、リサイクルPETのチップとバージンのPETのチップとを、紡糸プロセスの前に、互いに混合する。この混合は、乾燥ステップの後で、一軸スクリュー搬送システムの中で実施するのが好ましい。
【0079】
100重量%のリサイクルPETを使用するのならば、追加の混合ステップは不要であり、それらのチップを直接乾燥させ、押出し加工する。
【0080】
リサイクルPETの中に存在している混入物、たとえばp-テレフタル酸に代わるモノマー、たとえばIPAは、紡糸プロセスの際にPETが結晶化する性能を弱める。このことが、ヤーンを成形するための紡糸及び延伸を複雑化させ、それらの性質を、バージンのPETのヤーンに比較して、劣化させる。
【0081】
ステップb)における、予備結晶化、結晶化、及び固相重合(SSP)では、さらなる重合を達成させ、それにより、より短いポリマーの分子の比率が低下し、それにより、分子鎖が成長する。それらの結果、固有粘度が高くなる。これにより、その材料の延伸性が改良され、同時にそのヤーンの引張剛性及びモジュラス(剛性)も同様に改良される。
【0082】
予備結晶化及び結晶化と、ステップc)において、紡糸口金の下のリヒーターの温度を280~350℃とし、段階的な冷却の際のリヒーターの下の緩衝ゾーンの長さを20~100mmとすることを組み合わせることによって、その紡糸プロセスにおいて、高い紡糸速度と、高い引張速度が選択できるようにして、その結晶化速度を調節することが可能となる。
【0083】
さらには、フィラメント及びヤーンの破断の頻度が低下し、その結果、高引張剛性及び高モジュラスを有するヤーンが得られる。
【0084】
固相重合(SSP)とは、粗原料のPETチップを反応器の中に入れ、加熱して重合させるプロセスである。このことによって、分子鎖長が伸び、固有粘度が上がる。リサイクルPETチップの固有粘度は、0.55~0.75dl/gである。
【0085】
固相重合は、固相縮合とも呼ばれるが、その理由は、水を取り去ることにより縮合がもたらされるからである。
【0086】
まだ比較的に低い粘度であるそれらの粗原料のチップを、以下のように処理するのが、より好ましい。
【0087】
粗原料のPETチップを、好ましくは、150~180℃の温度で0.5~1.5時間かけて予備結晶化させ、次いで200~230℃の温度で4~6時間かけて結晶化させ、そして最終的に、200~220℃の壁温度のSSP反応器の中で30~35時間かけて反応させる。
【0088】
装置の全体のシステムを、窒素雰囲気で運転するが、その際、その窒素の酸素含量を30~70ppmに保ち、そしてその露点は、好ましくは-70℃未満(マイナス70℃未満)である。
【0089】
ここで、その粗原料のPETチップの固有粘度が上昇して、0.85~1.15dl/gとなり、高粘度チップが得られる。
【0090】
ステップc)においては、窒素下で乾燥させるのが好ましいが、その場合、乾燥温度は、120~160℃が好ましく、そして乾燥時間は、8時間より長いのが好ましい。それによって、その高粘度チップの水分が30ppm未満にまで低下する。
【0091】
ステップc)において、スクリューエクストルーダーの中、溶融押出しの形態で、高粘度PETチップの溶融及び押出し加工を実施するのが好ましいが、この場合、スクリューエクストルーダーのフィードゾーンの中の温度が300~330℃であり、圧縮ゾーンの中の温度が290~320℃であり、そして計量ゾーン(吐出ゾーン)の中の温度が280~310℃であり、且つエクストルーダーヘッドでの圧力が14~18MPa(メガパスカル)である。これにより、溶融物が得られる。
【0092】
この溶融押出しが、その高粘度チップの溶融粘度及び流動性を更に改良し、そしてさらには、IPAを含むことによる悪影響を低減させ、それにより、延伸性をさらに改良することができる。
【0093】
高粘度のリサイクルPETのチップを予め、バージンのPETのチップと混合した場合には、その押出しステップが、リサイクルPETとバージンのPETとの混合物の均質性をさらに改良する。
【0094】
(ステップcにおける)紡糸は、有利な実施態様における紡糸口金の孔の長さ対直径の比率(L/D)が1.2~3.0であるような、紡糸ジェット法の手段により実施するのが好ましい。
【0095】
その紡糸口金には、有利な実施態様においては、180~480個の孔が含まれ、1000~1500デニールのヤーンが得られる。
【0096】
さらなる有利な実施態様においては、300~4000デニール(den)、好ましくは300~3100den、より好ましくは300~2000den、さらにより好ましくは900~2000den、たとえば、特には500デニール、2000デニール、又は4000デニールのヤーンを得ることが可能である。1500デニールよりも高い繊度を選択した場合、紡糸口金の孔の数は、480を越え得る。
【0097】
5デニール(den)未満のフィラメント繊度を有するフィラメントを有するヤーンが得られれば、好ましい。3~5denのフィラメント繊度を有するフィラメントを有するヤーンが得られれば、より好ましい。
【0098】
ステップc)における段階的な冷却は、未延伸のヤーンの溶融物を固化させるのが目的である。
【0099】
ステップc)における段階的な冷却が、緩衝ゾーンの下流に、環状の急冷システムを含んでいるのが好ましく、この場合、冷却空気を、外側の環から内側の環へと吹き出し、その場合の吹出し圧力は、15~50Paであり、そしてその吹出し温度は22~65℃である。
【0100】
これにより、未延伸のヤーンの融着が防止され、下流のステップd)における延伸プロセスが、単純化される、すなわち複雑にはならない。吹込まれる空気の吹出し圧力及び温度を好適なパラメーターにすれば、過剰に急速な冷却及び過剰に遅い冷却が避けられ、それによって、未延伸のヤーンの融着や、物理的性質の劣化が防止される。
【0101】
未延伸のヤーンを、あまりにも急速に冷却すると、特に紡糸操作における延伸が、より困難となる。
【0102】
未延伸のヤーンを、あまりにもゆっくりと冷却すると、融着の増大と物理的性質における劣化という、特定の危険性が存在する。
【0103】
上で述べた理由から、溶融紡糸の後に、未延伸のヤーンを再加熱し、緩衝ゾーンの下流の環状急冷システムの手段によって段階的に冷却し、そして冷却空気を用いて冷却すれば、特に有利である。
【0104】
ステップd)におけるオイリングは、未延伸のヤーンの凝集性が増大し、そして摩擦力及び静電荷が低減するという利点を有している。これは、同様に、下流での延伸プロセスを容易とし、フィラメント及びヤーンの破断頻度を低下させる。さらには、これは、オイリングの結果としてヤーンが滑りやすくなっているので、ゴム被覆された強度メンバーを得たり、すなわち、特には、撚糸及び製織で織物のプライを得たりする、下流での加工ステップのためにも有利である。
【0105】
好ましくは、そのオイルが、エマルションの形態で使用され、そしてそのオイルの吸尽率が、ヤーンを基準にして好ましくは0.3重量%~0.9重量%であるのが好ましい。
【0106】
ステップd)における延伸は、ゴデットロール構成の手段により実施するのが好ましく、その場合、第一のゴデットロールのペア(GR1)(速度2700~3200m/分、温度60~80℃)、第二のゴデットロールのペア(GR2)(速度3800~5000m/分、温度70~90℃)、及び第三のゴデットロールのペア(GR3)(速度5800~6200m/分、温度210~260℃)で運転し、その引張率は、好ましくは1.81%~2.30%である。
【0107】
このようにすることで、製造されたヤーンの最適な性質、たとえば、最適化された破断強度及び破断時伸び、並びに最適化された熱収縮及びモジュラスを達成することが可能となる。
【0108】
好ましくは、この場合、延伸の後で実施される熱硬化を、第四のゴデットロールのペア(GR4)(速度5800~6200m/分、温度210~260℃)、下流の第五のゴデットロールのペア(GR5)(速度5600~6200m/分、温度210~260℃)、及び下流の第六のゴデットロールのペア(GR6)(速度5450~6000m/分、温度100~150℃)の手段により実施するのが好ましく、ここで、その緩和率が、2.5%~6.0%である。
【0109】
このようにすることで、最適な結晶化、安定したミクロ構造、最適な破断強度、及び最適なモジュラス、並びに熱収縮の低減を達成することが可能となる。このようにして、ヤーンが、下流の巻取りプロセス及び熱硬化のために最適に調製される。
【0110】
ステップd)における巻取りは、5450~5950m/分の巻取り速度で実施するのが好ましい。
【0111】
記述してきた加工ステップa)~d)によって、ヤーンが得られ、そのものは、7.5~9.0g/dの破断強度、及び10.2%~15.5%の破断時伸び、3.2%~5.2%の熱収縮、45%~53.5%の結晶化レベル、並びに0.12重量%~5重量%、特には0.12重量%~2.2重量%のIPA含量を有している。
【0112】
それに加えて、300~4000デニールの繊度を有するヤーンを得ることも可能である。
【0113】
そのようにして得られた、10重量%~100重量%のリサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンは、特にはそして好ましくは、本発明のゴム被覆された強度メンバーを得る目的で、少なくとも以下の加工ステップによってさらに加工される:
e)撚糸ステップ;
f)場合によっては、製織ステップ;
g)浸漬処理を用いて接着性を改質するステップ;
h)ゴム被覆混合物を用いてゴム被覆するステップ。
【0114】
本発明の有利な実施態様においては、そのヤーンは、最初にそれ自体で撚糸され、次いで、同様に撚糸されたヤーンを用いて撚糸されて、コードを形成する。
【0115】
コードにおいて使用されるヤーンはそれぞれ、S方向及びZ方向に撚糸されたフィラメントから形成されるのがよい。したがって、たとえば、リサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンを、S方向又はZ方向に撚糸することが可能である。
【0116】
その撚糸されたヤーンは次いで、S方向又はZ方向に撚糸されて、補強コードが形成される。補強コードのヤーンがすべて、同じ回転方向を有している、すなわち、それらが、S方向又はZ方向のいずれかに撚糸されているのが有利である。この有利な変法においては、その補強コードが、ヤーンからは反対の回転方向を有している。たとえば、S方向に撚糸された、リサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンは、最終的に、さらなるS方向に撚糸されたHMLS-PETヤーン(リサイクルPETを含む)を用いて、Z方向にさらに撚糸されて、補強コードが形成されてもよい。
【0117】
別な方法として、相当するハイブリッドコードが含まれるが、ここで、たとえば、S方向に撚糸された、リサイクルPETを含むHMLS-PETヤーンが、最終的に、さらなるヤーンと共に撚糸されるということも考えられる。さらなるヤーンのための、説明的且つ好適な材料については、先に述べた。
【0118】
本発明の有利な実施態様においては、2本のヤーンが、直接撚糸機(direct cabling machine)で撚糸されて、2本のヤーンからのコード(「×2コード」)が形成される。
【0119】
ヤーン及びコードの撚り数(tpm、「1メートルあたりの撚り数(turns per meter)」)は、それぞれの場合において、好ましくは100~500tpmである。
【0120】
第一のヤーンを含むコードは、好ましくは、150~250の撚り係数(twist factor)TFを有している。撚り係数は、式I)に従って計算される:
I) TF=N(K/9000)^0.5
[式中、Nは、撚り数(単位、tpm)であり、Kは、コードの繊度であり、そして^0.5は、(カッコの中の数式の)平方根を表すと考えられる、すなわち、
TF=撚り数(単位、tpm)×[コードの繊度(単位、デニール)/9000]^0.5(0.5乗)である。]
【0121】
製織(ステップf)においては、好ましくは、以下のことに注意するべきである。
【0122】
パッケージクリール上でのヤーンの配置においては、それぞれのヤーンのパッケージにかかる歪みが、ローラーベアリング及びゴムベルトで制御されて、均一な歪みを確保する。製織プロセスの際には、ヤーンが、仕様書に従って合わせた筬(おさ)を通して導入され、空気ジェット製織機で製織される。次いで、コードが製織されて、予め設定された幅の生機(きばた)布が得られるが、そのよこ糸方向のヤーンは、特に、たとえば綿で巻かれた、たとえばPET又はナイロンの弾性のコアを有するヤーンである。
【0123】
ステップf)で得られた生機布を、次いで、ステップg)における浸漬処理の手段により、さらに加工する。この結果として、強度メンバー、特にヤーン又はコードに、理想的な物理的性質、及び後ほど適用されるゴム被覆混合物に対する最適化された接着能力が与えられる。
【0124】
より具体的には、浸漬処理には、予備浸漬処理、及び当業者公知のRFL(レソルシノール・ホルムアルデヒド・ラテックス)浸漬処理又はRFLフリーの代替え処理(これは、環境及び健康に優しいものであり、たとえば、独国特許出願公開第102014211362A1号明細書又は国際公開第2019015792A1号パンフレットに記載がある)が含まれていてよい。
【0125】
したがって、ステップg)における浸漬処理の手段による接着性の改質には、特には、当業者公知の一浴法又は二浴法(予備浸漬処理及び浸漬処理)が含まれていてよい。
【0126】
浸漬法の際には、たとえば、浸漬処理溶液タンク、引張ゾーン、及びオーブンのような、当業者公知の装置及び条件を上手に使用する。ここで、布又はコードを0%~8%、特には0%~3%延伸させる(これは、ステップf)における製織が実施されるか否かに依存する)。
【0127】
その次のステップh)におけるゴム被覆は、当業者公知のゴム被覆混合物及び装置の手段により、当業者公知の方法で実施される。これには、ゴム被覆の前での、特には100℃を越える高温での乾燥が含まれていてもよい。
【0128】
そのゴム被覆混合物は、強度メンバー、特には織物強度メンバーを覆い込むための、当業者公知の各種好適なゴム被覆混合物であってよい。
【0129】
そのゴム被覆混合物に、少なくとも1種のジエンゴムが含まれているのが好ましい。
【0130】
ジエンゴムとは、ジエン及び/又はシクロアルケンを重合又は共重合させることによって形成され、そのために、主鎖又は側基のいずれかにC=C二重結合を有しているゴムである。
【0131】
有利な実施態様においては、そのジエンゴムが、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合法スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、及びエマルション重合法スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群より選択される。
【0132】
有利な実施態様においては、そのゴム被覆混合物には、非極性充填剤としての、少なくとも1種のカーボンブラックが含まれる。
【0133】
そのカーボンブラックは、ゴム被覆混合物の中で、好ましくは0.1~100phrの量、より好ましくは40~100phrの量、最も好ましくは40~80phrの量で使用される。その結果として、そのゴム混合物に、57~67phrの少なくとも1種のカーボンブラックが使用されていれば、特に好ましい。このようにすることで、引裂性能に関した、特に良好な混合物の性能が達成される。
【0134】
本発明はさらに、少なくともステップa)~h)を含む、上述のプロセスも提供する。本発明の強度メンバーが、この方法によって製造されているのが好ましい。したがって、本発明はさらに、上述のプロセスの手段により得られる強度メンバーも提供する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.エラストマー製品、特には車両用タイヤのための、ゴム被覆された強度メンバーであって、前記強度メンバーが、少なくとも1種の第一のヤーンを含み、前記第一のヤーンが、リサイクルPETを含むHMLS-PETのヤーンであることを特徴とする、ゴム被覆された強度メンバー。
2.HMLS-PETの前記第一のヤーンが、10重量%~100重量%、好ましくは30重量%~100重量%、より好ましくは50重量%~100重量%のリサイクルPETを含むことを特徴とする、上記1に記載のゴム被覆された強度メンバー。
3.HMLS-PETの前記第一のヤーンが、0.12重量%~5重量%、特には0.12重量%~2.2重量%のイソフタル酸(IPA)を含むことを特徴とする、上記1又は2に記載のゴム被覆された強度メンバー。
4.HMLS-PETの前記第一のヤーンが、45%~53.5%の結晶化レベルを有していることを特徴とする、上記1~3のいずれか一項に記載のゴム被覆された強度メンバー。
5.HMLS-PETの前記第一のヤーンが、300~4000デニール(den)、好ましくは300~3100den、より好ましくは300~2000den、最も好ましくは900~2000denの繊度を有していることを特徴とする、上記1~4のいずれか一項に記載のゴム被覆された強度メンバー。
6.HMLS-PETの前記第一のヤーンが、フィラメント繊度が5den未満の場合において、8%未満の熱収縮、及び0.0056%/den未満の45Nでの伸びを有することを特徴とする、上記1~5のいずれか一項に記載のゴム被覆された強度メンバー。
7.前記第一のヤーンが、「×2コード」に撚糸され、前記コードが、150~250の撚り係数及び少なくとも6.3g/denの破断力を有し、0.0056%/den未満の45Nでの伸び、及び3%未満の熱収縮を有することを特徴とする、上記1~6のいずれか一項に記載のゴム被覆された強度メンバー。
8.上記1に記載のゴム被覆された強度メンバーを製造するためのプロセスであって、少なくとも以下の、
a)100重量%の、PETボトル又はその他のPET製品からのリサイクルPETを含むPETチップを備えるステップ、及び場合によってはバージンのPETのチップを備えるステップ;
b)ステップa)からの前記PETを、予備結晶化、結晶化、及び固相重合させて、0.85~1.15dl/gの固有粘度を有する高粘度PETチップを得るステップ;
c)乾燥ステップ、場合によっては前記リサイクルPETのチップをバージンのPETのチップと混合して、10重量%~100重量%までの、リサイクルPETからのチップを含むPETチップを得るステップ、ステップb)からの前記高粘度PETチップを用い、ヤーンを紡糸するために、前記PETチップを溶融及び押出し加工し、それに続けて、緩衝ゾーンを有するリヒーターを含む紡糸口金の手段によりヤーンを紡糸するステップ、並びに未延伸のヤーンを段階的に冷却するステップであって、乾燥後の前記チップの水分が、30ppm未満であり、前記紡糸口金の下の前記リヒーターの温度が、280~350℃であり、前記段階的な冷却の際の前記リヒーターの下の前記緩衝ゾーンの長さが、20~100mmである、ステップ;
d)ステップc)における前記段階的な冷却の後で、オイリング、延伸、熱硬化、及び巻取りをして、HMLS-PETヤーンを得るステップ;
e)撚糸ステップ;
f)場合によっては、製織ステップ;
g)浸漬処理を用いて接着性を改質するステップ;
h)ゴム被覆混合物を用いてゴム被覆するステップ;
の加工ステップを含むプロセス。
9.車両用タイヤであって、上記1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の、ゴム被覆された強度メンバーを含む、車両用タイヤ。
10.強度メンバープライの形態で、上記1~7のいずれか一項に記載の、複数のゴム被覆された強度メンバーを含むことを特徴とする、上記9に記載の車両用タイヤ。
11.前記強度メンバープライが、少なくとも、カーカスプライ及び/又はベルトバンデージ及び/又はベルトプライ及び/又はビード補強材であることを特徴とする、上記10に記載の車両用タイヤ。
12.前記強度メンバープライが、少なくとも前記カーカスプライであり、前記カーカスプライが、折重ね状態で、ビードの周りを1回(1プライ構成)又は2回(2プライ構成)巻いていて、前記プライの端部が、コアとベルトの端部との間に位置していることを特徴とする、上記11に記載の車両用タイヤ。
【0135】
以後において、いくつかの作業実施例により、本発明を詳しく説明する。これに関して、まず第一に、表1に、本発明の強度メンバーにおいて、例を挙げて使用されるヤーン及びそれらの製造パラメーターの概要を示している。
【0136】
上述の概要は、特別に指定されたパラメーターに加えて、ここで適用することができる。より具体的には、実施例E1~E6のすべてにおいて、先に挙げた固相重合も含めて、ステップa)~d)に従ったプロセスが実施された。粗原料のPETチップを、150~180℃の温度で0.5~1.5時間かけて予備結晶化させ、次いで200~230℃の温度で4~6時間かけて結晶化させ、そして最終的に、200~220℃の壁温度のSSP反応器の中で30~35時間かけて反応させた。
【0137】
装置の全体のシステムを、窒素雰囲気で運転したが、その際、その窒素の酸素含量をl、30~70ppmに保ち、そしてその露点は、好ましくは-70℃未満(マイナス70℃未満)であった。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
図1に、実施例E1~E6を、リサイクルPETの比率に対して、棒グラフの形でプロットしたが、ここで、棒の高さが、COの排出量(CO(kg)/製品(kg))を表している。それらの数字は、PETチップ製造から、モノエチレングリコール(MEG)及びPTA(精製テレフタル酸)のようなモノマーの製造における寄与を引き算したものを基準にしている。ヤーンの製造から始まる、それに続くプロセスは、CO排出量に関しては、PET原料からは独立しているとみなしている。
【0141】
左端の棒グラフが、バージンのPETのCO排出量を示しているのに対して、右端の2本の棒グラフは、バイオベースのPET(そのエチレングリコールモノマーは、トウモロコシから得られたものなので、その原料の約30重量%が、再生可能な原料由来である)、及びHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)のCO排出量を示している。
【0142】
図1からも明らかなように、100重量%のリサイクルPETから製造されたPETを用いると、最も低いCO排出量が達成される。リサイクル品のCOバランスは、たとえば、PETボトルとして使用された後にのみ始まる。
【0143】
「バージンのPET」及び「バイオPET」の棒グラフには、別の原料から製造されたモノマー由来のCO排出量は含まれていない。これは、これらの数値には、実質的には、PETチップへの重縮合が含まれているということを意味している。
【0144】
100%リサイクルPETの場合においては、その数値には、実質的に、PETチップを得るための粉砕及び再溶融が含まれている。
【0145】
それらの間のもの(すなわち、10%~90%PET)の数値は、「バージンのPET」と「100%リサイクルPET」との数値から、比例配分で計算したものである。
【0146】
それに加えて、さらなる実験を実施したが、そこでは、100重量%のリサイクルPET(たとえばE1)を使用したが、それぞれの場合において、異なった加工ステップを適応させた。
【0147】
比較実験V2における手順は、E1の場合と同様であるが、ただし、固相重合のプロセス全体を省略した。
【0148】
比較実験V3における手順は、E1と同様であるが、ただし、予備結晶化及び結晶化ステップ無しで、固相重合を実施した。
【0149】
比較実験V4における手順は、E1と同様であるが、ただし、紡糸プロセスの後の未延伸のヤーンを、緩衝ゾーン(ステップcを参照)を用いた再加熱無しで、冷却空気の手段により直接冷却した。
【0150】
比較実験V5における手順は、E3と同様であるが、ただし、紡糸プロセスの後の未延伸のヤーンを、緩衝ゾーン(ステップcを参照)を用いた再加熱無しで、冷却空気の手段により直接冷却した。
【0151】
表2に、それらそれぞれのヤーンの物理的性質におよぼす、各種異なったタイプのプロセスの影響を示している。
【0152】
それらの性質は、先に述べた方法の手段により測定した。
【0153】
使用した、さらなる基準は、ヤーンの製造プロセスにおけるフィラメントの破断のレベルであった。それぞれのボビン(9kg、長さ62km、1300den)について、合格(qualified=Q)であると分類されるためには、フィラメントの破断数が10未満でなければならないと規定した。そうでないものでは、その試料が、不合格(inadequate=NQ)と評価した。
【0154】
【表3】
【0155】
表2のデータは、固相重合、紡糸、冷却プロセス、及び延伸プロセスを含む、ステップa)~d)を含むプロセスにより製造されたヤーンは、従来法で製造されたヤーンに匹敵する性質、たとえば破断強度及び破断時伸びを有しているということを示している。したがって、実施例E1~E6によるヤーンを使用すれば、本発明のゴム被覆された強度メンバー及びそのゴム被覆された強度メンバーを、特には強度メンバープライの形態で含む車両用タイヤを、効率よく且つ低い欠陥率(4%未満)で製造することが可能であると同時に、その高品質な性質が理由で、使用時における相応の要件が満たされる。
【0156】
V2に比較して、E1における固相重合は、分子鎖の成長、及びリサイクルPETの中に存在している混入物、たとえばp-テレフタル酸に代わるモノマー、たとえばIPAの低減を達成している。
【0157】
V3に比較して、E1における固相重合プロセスの一部としての予備結晶化及び結晶化は、改良された品質及び高粘度チップの加工性を達成し、そしてSSP反応器における悪影響、たとえばセメンテーション及びアグロメレーションを抑制している。それらの悪影響が起きると、SSP反応器の、規則から外れた排出が必要となり、そして高粘度チップの固有粘度の分散が高くなる。さらには、それにより、たとえば、ヤーンの不均一な融点、不均一な溶融特性、及び不均一な結晶化速度など、さらなる不都合な結果がもたらされる。このことは、フィラメント及びヤーンの破断の頻度を増やし、そして一般的に、ヤーンの製造を顕著に困難なものとする。
【0158】
固相重合プロセスの一部として予備結晶化及び結晶化を実施した場合には、高粘度チップの粘度、融点、及び結晶化速度の均質性を効果的に制御することができる。
【0159】
SSPプロセスを実施しない場合には、製造されたヤーンの破断強度が要件を満たさず、フィラメント及びヤーンの破断の頻度が増し、製造効率が低下する。
【0160】
比較例V4は、紡糸の後での再加熱及び緩衝ゾーンを省略した場合に、未延伸のヤーンの冷却が早すぎて、早すぎる硬化と結晶化が起こり、そのために、製造効率が低下し、物理的性質も低下するということを示している。
【0161】
比較例V5は、SSPプロセスで予備結晶化及び結晶化を省略し、且つ紡糸の後での再加熱及び緩衝ゾーンを省略した場合には、高粘度チップの均質性が低下し、紡糸における結晶化速度が早くなり、曳糸性に劣り、そして最終的なヤーンの結晶化レベルが下がるということを示している。
【0162】
したがって、結晶化速度を遅らせ、結晶化レベルを高めるためには、予備結晶化及び結晶化を、前述のように、再加熱及び緩衝ゾーンと組み合わせるべきである。
【0163】
上で挙げた実施例E1~E6及び比較例V2~V5のヤーンをそれぞれ使用して、2本のヤーンを撚糸することによりコードを作製し、それらのコードを製織及び浸漬処理して、浸漬処理された布を得た。
【0164】
その撚糸は、直接撚糸機で2本のヤーンを撚糸することにより撚糸して、2本のヤーンから1本のコードを作製した(×1×2コード)。
【0165】
それらのヤーンは、S方向で撚糸されたが、その一方で、そのコードは、Z方向で撚糸された。
【0166】
その製織においては、以下のような条件が観察された。
【0167】
パッケージクリール上でのヤーンの配置においては、それぞれのヤーンのパッケージにかかる歪みが、ローラーベアリング及びゴムベルトで制御されて、均一な歪みが確保された。製織プロセスの際には、ヤーンが、仕様書に従って合わせた筬(おさ)を通して導入され、空気ジェット製織機で製織された。次いで、そのコードを製織して、予め設定された幅の生機布を形成させたが、そのよこ糸は、22.2テックスのナイロンのコアコアスパンヤーン(ナイロンモノフィラメントで構成されたコア、綿のステープルファイバーを用いて覆い込まれた)であった。
【0168】
次いで、そのようにして得られた生機布を、浸漬処理の手段によりさらに加工した。この場合、二浴浸漬処理が採用された。エポキシ化合物(商品名:Grilbond(登録商標)G1701、EMS-GRIL TECH製)及びイソシアネート化合物(商品名:Grilbond(登録商標)IL-6 50%F、EMS-GRIL TECH製)を、第一の浴の中に準備し、その中にヤーンを浸漬させ、それにより、それらの表面的な(superficial)フィラメントを活性化させた。
【0169】
第二の浴の中には、レソルシノール・ホルムアルデヒド・ラテックス(水性分散体の形態の、レソルシノール及びホルムアルデヒドを予め縮合させた樹脂をホルムアルデヒドと混合、なかんずくラテックス)を準備し、第一の浴の手段により活性化された布を、その中へ浸漬させた。浸漬法の際には、たとえば、浸漬処理溶液タンク、引張ゾーン、及びオーブンのような、当業者公知の装置及び条件を上手に使用した。
【0170】
それに加えて、熱延伸を実施して、正味の延伸を0%~1%とした。
【0171】
そのようにして得られたコードについて、それらの性質を調べ、それらの結果を表3に列記した。
【0172】
「1500/2」の表記は、1500den/2と読むべきであり、それぞれ1500denの繊度を有する2本のヤーンを撚糸して、コードを形成させたことを意味している。同じことが、「1000/2」の表記にもあてはまる。
【0173】
表3における1メートルあたりの撚り数(tpm)は、それぞれのコードに関連する。
【0174】
残存強度は、Goodrich疲労試験の手段により、次の条件下で測定した:1800rpm(1分あたりの回転数)、24時間、20%圧縮、6.5%歪み、室温。
【0175】
【表4】
【0176】
表3からも明らかなように、実施例E1~E6によって、本発明のゴム被覆された強度メンバーで使用するため、特には車両用タイヤのための要件を満たす性質を有するコードを製造することが可能であった。それとは対照的に、比較例V2~V5は、より貧弱な性質を示し、そのため、不適切である。特に、高速紡糸におけるフィラメントに対する大きなダメージは、そのようにして製造されたコードの耐疲労性が、顕著に悪影響を受けていることを意味している。比較例V2からも明らかなように、その試料は、疲労試験が終了するより前に破損した。
【0177】
したがって、実施例E1~E6に見られるように、エラストマー製品のため、特には車両用タイヤのための、本発明のゴム被覆された強度メンバーを得ることが可能となったが、それは、特に資源保存的且つ環境に優しい方法で製造され、それと同時に、特に車両用タイヤの駆動操作における要件を満たすような、良好な物理的性質を有している。それと同時に、本発明の車両用タイヤには、少なくともカーカスプライの形態にあるゴム被覆された強度メンバー、及び特には、そのカーカスプライを形成している相当する強度メンバープライの中の複数のゴム被覆された強度メンバーが含まれる。
【0178】
本発明のゴム被覆された強度メンバーのゴム被覆混合物の例示的な組成を表4に示す。
【0179】
【表5】
図1