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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-09
(45)【発行日】2025-06-17
(54)【発明の名称】運動検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20250610BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20250610BHJP
【FI】
G01D5/12 A
G01D5/245 W
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024033861
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2025-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】染谷 雅行
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/157328(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/157601(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188859(WO,A1)
【文献】特許第7642183(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12- 5/252
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持体と、
前記第1の支持体に対して相対移動する第2の支持体と、
前記第1の支持体に配置された発電センサと、
前記第2の支持体に支持された磁界発生源と、を含み、
前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルと、前記磁性ワイヤの軸方向の中心位置に設定される対称面に対して互いに対称な一対の軟磁性体からなる磁束伝導片と、を含み、
前記一対の磁束伝導片は、前記磁性ワイヤの両端部から前記軸方向に直交する軸直交方向に互いに平行に延びる一対の軸直交部と、前記一対の軸直交部の先端部から前記軸方向に沿って互いに接近する方向に延び、近接端同士が前記軸方向に間隔を空けて対向する一対の軸平行部と、を備え、前記軸直交部と、前記磁性ワイヤの両端部が固定される、前記軸方向に貫通する穴または溝からなるワイヤ配置部を有しており、
前記発電センサは、前記軸平行部に対して前記磁性ワイヤとは反対側を検出領域とするように構成されており、
前記磁界発生源は、前記第2の支持体が前記第1の支持体に対して相対移動するときに、前記磁性ワイヤの前記軸方向に平行な軌道に沿って前記検出領域に順に進入し、前記発電センサに異なる極性の磁極が交互に空隙を介して対向するように前記第2の支持体に配置された複数の磁極を有し、
各磁極の磁束の方向は、当該磁極の移動方向に垂直であり、かつ前記発電センサに対向するときに前記磁性ワイヤと交差する方向であり、
前記軌道上での前記複数の磁極の配置間隔は、前記磁性ワイヤの全長よりも長く、
前記軌道上での前記磁極の長さは、前記磁性ワイヤの全長より短く、かつ前記配置間隔の50%以下である、運動検出装置。
【請求項2】
前記軌道上での前記磁極の長さは、前記磁性ワイヤの全長の半分以下である、請求項1に記載の運動検出装置。
【請求項3】
前記軌道上での前記磁極の配置間隔は、前記磁性ワイヤの全長の1.5倍以上である、請求項2に記載の運動検出装置。
【請求項4】
前記発電センサの前記軸方向の中央部に位置する前記磁極の極性を判別するセンサをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の運動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤを利用した発電センサを備える運動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果(大バルクハウゼンジャンプ)を有する磁性ワイヤは、ウィーガンドワイヤまたはパルスワイヤの名で知られている。この磁性ワイヤは、芯部とその芯部を取り囲むように設けられた表皮部とを備えている。芯部および表皮部の一方は弱い磁界でも磁化方向の反転が起きるソフト(軟磁性)層であり、芯部および表皮部の他方は強い磁界を与えないと磁化方向が反転しないハード(硬磁性)層である。このような磁性ワイヤにコイルを巻回することにより、発電センサを構成することができる。
【0003】
ハード層とソフト層とがワイヤの軸方向に沿って同じ向きに磁化されているときに、その磁化方向とは反対方向の外部磁界強度が増加して或る磁界強度に達すると、ソフト層の磁化方向が反転する。この磁化方向の反転は、磁性ワイヤの或る部分を開始位置としてワイヤ全体に伝播し、ソフト層の磁化方向が一斉に反転する。このとき、大バルクハウゼン効果が発現し、磁性ワイヤに巻かれたコイルにパルス信号が誘発される。上述の外部磁界強度がさらに増加し、或る磁界強度に達すると、ハード層の磁化方向が反転する。
【0004】
この明細書では、ソフト層の磁化方向が反転するときの磁界強度を「動作磁界」といい、ハード層の磁化方向が反転するときの磁界強度を「安定化磁界」という。
【0005】
コイルから得られる出力電圧は、入力磁界(外部磁界)の変化スピードにかかわらず一定であり、入力磁界に対するヒステリシス特性を持つためチャタリングがない、などの特徴を有する。そのため、コイルから生成されるパルス信号は、位置検出装置などに使用される。コイルからの出力は電力を持つため、外部電力の供給を要しない発電型のセンサ(発電センサ)を構成できる。
【0006】
大バルクハウゼン効果が発現するためには、ハード層およびソフト層の磁化方向が一致している状態から、ソフト層のみの磁化方向が反転することが必要である。ハード層およびソフト層の磁化方向が不一致の状態で、ソフト層のみの磁化方向が反転したとしても、パルス信号は生じないか、あるいは生じたとしても非常に小さい。
【0007】
また、得られる電力を最大化するためには、磁性ワイヤ全体の磁化方向が揃っている状態から、ソフト層の磁化反転が磁性ワイヤ全体に及ぶことが重要である。磁性ワイヤの磁化方向が部分的に揃っていない場合には、非常に小さいパルス信号が得られるに過ぎない。そのため、磁性ワイヤの全体に一様な磁界がかかることが好ましい。
【0008】
発電センサを用いる運動検出装置は、たとえば、特許文献1,2,3に開示されている。
【0009】
特許文献1は、回転軸まわりの回転を検出する構成を開示している。この構成は、回転軸方向に着磁された2極磁石と、回転軸から径方向にオフセットして配置された発電センサとを備える。発電センサは、回転軸まわりの円周の接線方向に磁性ワイヤの軸方向を平行にして配置されている。磁極の回転によって、磁性ワイヤの軸方向の磁界が変化し、一方向の安定化磁界が印加されてパルス発生準備状態となった後、反対方向の動作磁界が印加されると大バルクハウゼン効果が発現してパルス電圧が発生する。特許文献1においては、磁石の着磁の強さを変えて、回転角度に対する磁束密度の変化を増やし、パルス電圧発生位置のばらつきを抑えることが提案されている。特許文献1の図2の着磁状態に対する磁性ワイヤ付近の磁束密度の変化は同文献の図3に線M1で示されている。この場合、急峻な磁束変化によりパルス電圧発生位置のばらつきは抑えられるものの、磁束密度が0の付近に変化のない平坦部が生じる。そのため、回転方向によるパルス電圧発生位置の位相差が大きくなる。特許文献1の図4には着磁の強さを変える領域を工夫した構成が示されている。この場合、磁束密度の変化は同文献の図5の線M3のとおりであり、磁束密度が0の付近の平坦部が生じない。
【0010】
しかしながら、2極磁石に対して発電センサをオフセットする配置においては、発電センサの両端が同じ極性の磁極に対向する角度区間があり、その角度区間は、発電センサの配置が回転中心から遠ざかるほど広くなる。そのため、特許文献1の図5の線M3のように磁束密度変化に平坦部を生じさせない特性は、発電センサが回転中心の近く配置された場合に限られる。そのため、たとえば大口径の中空軸の回転検出に適用することはできない。また、回転角に対する磁束密度の変化も必ずしも十分に急峻ではなく、パルス電圧の発生位置はばらつく。
【0011】
特許文献2の図2の構成においては、周方向の半分ずつの領域をそれぞれ内周側および外周側に分けて、全部で4領域に分けて着磁を行ったリング状の磁石に対して、発電センサを半径方向に向けて配置している。この場合、周方向に関する着磁領域の境界の向きと発電センサの磁性ワイヤの軸方向とが一致する角度のときに、磁性ワイヤ付近の磁束密度は0となり、その近傍で磁束密度は大きく変化する。そのため、パルス電圧発生位置のばらつきは少なく、正転/逆転によるパルス電圧発生位置の位相差も少ない。
【0012】
しかし、発電センサの長さに近い幅の特殊な着磁のリング磁石が必要であるので、磁石のコストが高くなる。また、磁石重量や慣性が大きくなる課題がある。加えて、サイズの異なる検出装置を作る場合、それぞれのサイズの検出装置に専用の磁石が必要となる。
【0013】
特許文献2の図30(A)には、リング磁石の代わりに棒磁石を用いて同様の特性が得られるように工夫した構成が示されている。しかしながら、発電センサの長軸方向を半径方向に配置するため、半径方向に大きな幅が必要であるので、それに応じて、検出装置が大きくなる。また、中空軸の回転検出装置を構成しようとするとき、外径に対する中空径の比を大きく取れない課題がある。
【0014】
特許文献3の図6は、リング磁石を用いず、径方向に着磁した複数の個別磁石を円周方向に配置し、発電センサの長軸方向を半径方向に配置した構成を開示している。複数の個別磁石は、磁極の向きが交互に異なるように円周に沿って配列されている。個別磁石を使う場合は、リング磁石とは異なり、サイズの異なる検出装置を作る場合でも専用の磁石は必要がなく、汎用的な2極磁石を使用できるので、磁石コストは安い。
【0015】
しかしながら、隣合う磁石の間の角度域では、発電センサが磁極と対向しないので、磁束密度が0の付近で平坦になる角度区間が存在する。よって、回転方向による位相差が大きくなる。角度に対する磁束密度の変化もなだらかなので、パルス電圧の発生位置のばらつきも大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特許第6647478号公報
【文献】国際公開第2016/010141号
【文献】米国特許第8283914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この発明の一実施形態は、前述の先行技術において生じる課題の少なくとも一つを解決した運動検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明の一実施形態は、第1の支持体と、前記第1の支持体に対して相対移動する第2の支持体と、前記第1の支持体に配置された発電センサと、前記第2の支持体に支持された磁界発生源と、を含む、運動検出装置を提供する。前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルと、前記磁性ワイヤの軸方向の中心位置に設定される対称面に対して互いに対称な一対の軟磁性体からなる磁束伝導片と、を含む。前記一対の磁束伝導片は、前記磁性ワイヤの両端部から前記軸方向に直交する軸直交方向に互いに平行に延びる一対の軸直交部と、前記一対の軸直交部の先端部から前記軸方向に沿って互いに接近する方向に延び、近接端同士が前記軸方向に間隔を空けて対向する一対の軸平行部と、を備え、前記軸直交部と、前記磁性ワイヤの両端部が固定される、前記軸方向に貫通する穴または溝からなるワイヤ配置部を有している。前記発電センサは、前記軸平行部に対して前記磁性ワイヤとは反対側を検出領域とするように構成されている。前記磁界発生源は、前記第2の支持体が前記第1の支持体に対して相対移動するときに、前記磁性ワイヤの前記軸方向に平行な軌道に沿って前記検出領域に順に進入し、前記発電センサに異なる極性の磁極が交互に空隙を介して対向するように前記第2の支持体に配置された複数の磁極を有する。各磁極の磁束の方向は、当該磁極の移動方向(第2の支持体が第1の支持体に相対移動するときの磁極の移動方向)に垂直であり、かつ前記発電センサに対向するときに前記磁性ワイヤと交差する方向(空隙方向)である。前記軌道上での前記複数の磁極の配置間隔は、前記磁性ワイヤの全長よりも長い。前記軌道上での前記磁極の長さは、前記磁性ワイヤの全長より短く、かつ前記配置間隔の50%以下である。
【0019】
この構成により、磁極が発電センサの検出領域を通るときに、磁性ワイヤを通る磁束密度が、一方向の安定化磁界から他方向の安定化磁界へと急峻に変化し、この変化の過程で、磁束密度の変化が停滞する平坦部が生じない。そのため、パルス発生位置のばらつきが少なく、かつ運動方向によるパルス発生位置の差の少ない運動検出装置を提供できる。
【0020】
また、磁極の移動方向に垂直で、かつ発電センサに対向するときに磁性ワイヤと交差する方向(空隙方向)の磁束を発生する複数の磁極を有する磁界発生源は、空隙方向に着磁した複数の個別磁石を用いて構成することができる。このような個別磁石は、たとえば、空芯コイルにより着磁が可能な汎用的な2極磁石であってもよいので、磁石コストを安くできる。加えて、着磁方向が空隙方向であるので、第2の支持体に対する個別磁石の固定作業は容易であるから、組立コストを削減できる。
【0021】
前記軌道上での前記磁極の長さは、前記磁性ワイヤの全長の半分以下であることが好ましい。これにより、磁極が検出領域を通過するときの磁束密度の変化をより急峻にできる。
【0022】
また、前記軌道上での前記磁極の配置間隔は、前記磁性ワイヤの全長の1.5倍以上であることが好ましい。これにより、或る磁極が検出領域を通るときに、他の磁極からの磁界の影響を抑制できるので、磁束密度の変化を一層急峻にできる。
【0023】
前記運動検出装置は、前記発電センサの前記軸方向の中央部に位置する前記磁極の極性を判別するセンサをさらに含むことが好ましい。この構成により、位置の検出に加えて、運動方向を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A-1B】図1Aは第1の比較例の回転検出装置の平面図であり、図1Bはその正面図である。
図1C図1Cは第1の比較例の回転検出装置における回転角に対する磁束密度の変化を示す波形図である。
図2A-2B】図2Aは第2の比較例の回転検出装置の平面図であり、図2Bはその正面図である。
図2C図2Cは第2の比較例の回転検出装置における回転角に対する磁束密度の変化を示す波形図である。
図3A-3B】図3Aは第3の比較例の回転検出装置の平面図であり、図3Bはその正面図である。
図3C図3Cは第3の比較例の回転検出装置における回転角に対する磁束密度の変化を示す波形図である。
図4A-4B】図4Aは第4の比較例の回転検出装置の平面図であり、図4Bはその正面図である。
図4C図4Cは第4の比較例の回転検出装置における回転角に対する磁束密度の変化を示す波形図である。
図5A-5B】図5Aはこの発明の一実施形態に係る回転検出装置の平面図であり、図5Bはその正面図である。
図5C図5Cは上記実施形態の回転検出装置における回転角に対する磁束密度の変化を示す波形図である。
図6A図6Aはこの発明の一実施形態において用いられる発電センサの構成例を説明するための斜視図である。
図6B図6Bは上記発電センサの正面図である。
図7A図7Aは、この発明の他の実施形態に係る回転検出装置の構造例を説明するための斜視図である。
図7B図7Bは、図7Aの回転検出装置の平面図である。
図7C図7Cは、図7Aの回転検出装置の正面図である。
図8図8はこの発明の他の実施形態に係る回転検出装置の構成を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施形態の原理の理解のために、いくつかの比較例を示し、その後に、この発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1Aおよび図1Bは第1の比較例の回転検出装置1を示し、図1Cは回転角に対する磁束密度の変化を示す。
【0027】
この回転検出装置1は、回転軸線11まわりに回転する2極磁石12と、回転軸線11と直交するように磁性ワイヤ14を配置した発電センサ13とを含む。発電センサ13は、磁性ワイヤ14と、磁性ワイヤ14に巻回したコイル15と、磁性ワイヤ14の両端部にそれぞれ結合した一対の円筒状のフェライトコア16とを含む。磁性ワイヤ14の軸方向17は回転軸線11と直交しており、磁性ワイヤ14の軸中心位置18(軸方向17の中心位置)は回転軸線11上にある。2極磁石12は、円板状であり、径方向に着磁されていて、半分の領域がN極であり、残りの半分の領域がS極である。
【0028】
磁性ワイヤ14の軸方向17と磁極境界線12aとが整合する図1Aのときの角度を0度とし、反時計回り方向CCWに角度の値が増加することとすると、2極磁石12の回転軸線11まわりの回転にともなう磁束密度の変化は、図1Cに表れているような正弦波状になる。ここでの磁束密度は、磁性ワイヤ14を通る磁束密度、すなわち、磁性ワイヤ14の付近における磁性ワイヤ14の軸方向17に平行な方向の磁束成分の密度をいう。後述する他の比較例および実施形態の説明においても同様である。磁性ワイヤ14の動作磁界および安定化磁界が図1Cに併せて示されている。
【0029】
2極磁石12が反時計回り方向CCWに回転するとき、磁束密度が負の安定化磁界を下回ると正パルス準備状態(ポジティブセット状態)となり、その後に磁束密度が正の動作磁界を上回ると正パルスPPが発生する。また、2極磁石12が反時計回り方向CCWに回転するとき、磁束密度が正の安定化磁界を上回ると負パルス準備状態(ネガティブセット状態)となり、その後に磁束密度が負の動作磁界を下回ると負パルスNPが発生する。したがって、図1Cに表れているように、0度の付近で正パルスPPが発生し、180度の付近で負パルスNPが発生する。
【0030】
同様に、2極磁石12が時計回り方向CWに回転するとき、磁束密度が負の安定化磁界を下回ると正パルス準備状態(ポジティブセット状態)となり、その後に磁束密度が正の動作磁界を上回ると正パルスPPが発生する。また、2極磁石が時計回り方向CWに回転するとき、磁束密度が正の安定化磁界を上回ると負パルス準備状態(ネガティブセット状態)となり、その後に磁束密度が負の動作磁界を下回ると負パルスNPが発生する。したがって、図1Cに表れているように、0度の付近で負パルスNPが発生し、180度の付近で正パルスPPが発生する。
【0031】
角度に対する磁束密度の変化には有限の傾きがあるので、反時計まわり方向CCWの回転時と時計回り方向CWの回転時とでは、パルス発生位置(パルスが発生する角度)が不一致となり、パルス発生位置のずれ、すなわち位相差PSが生じる。より具体的には、0度の付近および180度の付近で位相差PSが生じる。
【0032】
この比較例では、図1Cに表れているように、回転角に対する磁束密度の変化はなだらかであるので、パルス発生位置のばらつきが大きく、かつ回転方向による位相差PSも大きい。
【0033】
この比較例の構成は、回転軸線11上に発電センサ13が配置されているので、回転軸の両端に機械部品が結合されている構成には適用できず、また、中空軸状の検出装置を構成することもできない。
【0034】
図2Aおよび図2Bは第2の比較例の回転検出装置2を示し、図2Cは回転角に対する磁束密度の変化を示す。
【0035】
この回転検出装置2は、回転軸線11まわりに回転する2極着磁リング磁石22と、発電センサ13とを含む。発電センサ13の構成は、第1の比較例と同様である。磁性ワイヤ14の軸中心位置18は回転軸線11から径方向にオフセットされており、磁性ワイヤ14の軸方向17は回転軸線11に対して垂直であり、回転軸線11まわりの円周の一点における接線方向に沿っている。2極着磁リング磁石22は、回転軸線11を中心とする円環状であり、回転軸線11に平行な方向に着磁されていて、発電センサ13に空隙を空けて対向する表面においては、半分の角度領域がN極であり、残りの半分の角度領域がS極である。
【0036】
磁性ワイヤ14の軸方向17と磁極境界線22aとが平行である図2Aのときの角度を0度とし、反時計回り方向CCWに角度の値が増加することとすると、2極着磁リング磁石22の回転軸線11まわりの回転にともなう磁束密度の変化は、図2Cに表れているような台形波状になる。
【0037】
磁束密度の変化による発電センサ13の動作は第1の比較例と同様である。
【0038】
発電センサ13の両端部が同じ極性の磁極に対向する角度領域では磁束密度が0になるので、0度および180度をそれぞれ中心とする磁束密度0の平坦部が現れる。それに応じて、0度付近および180度付近では、回転方向による大きな位相差PSが発生する。この位相差PSは、回転軸線11から発電センサ13までのオフセットが大きくなるほど大きくなる。
【0039】
この比較例の構成は、全周にわたって着磁したリング磁石22が必要であるので、その作製には専用の着磁ヨークを準備する必要がある。また、検出装置のサイズ(径)に合わせたリング磁石22が必要である。したがって、汎用性のある磁石を用いることができないから、磁石コストが高くなる課題もある。
【0040】
特許文献1の構成は、第2の比較例のカテゴリに分類できる。
【0041】
図3Aおよび図3Bは第3の比較例の回転検出装置3を示し、図3Cは回転角に対する磁束密度の変化を示す。
【0042】
この回転検出装置3は、回転軸線11まわりに回転するリング磁石23と、発電センサ13とを含む。発電センサ13の構成は、第1の比較例と同様である。磁性ワイヤ14の軸中心位置18は回転軸線11から径方向にオフセットされており、磁性ワイヤ14の軸方向17は径方向に沿っている。リング磁石23は、回転軸線11を中心とする円環状であり、回転軸線11に平行な方向に多極着磁されていて、発電センサ13に空隙を空けて対向する表面に4つの着磁領域24を有する。
【0043】
具体的には、発電センサ13に対向するリング磁石23の表面が、径方向に関して内径部と外径部とに2分され、かつ回転軸線11まわりの周方向に関して2分されて、4つの着磁領域24に区分されている。より具体的には、内径部の半分の角度領域が円弧状のN極領域であり、残りの半分の角度領域が円弧状のS極領域である。また、外径部の半分の角度領域が円弧状のS極領域であり、残りの半分の角度領域が円弧状のN極領域である。内径部のS極領域の外側には外径部のN極領域が隣接しており、内径部のN極領域の外側には外径部のS極領域が隣接している。内径部と外径部とは、周方向の着磁領域24の境界が整合しており、磁極境界線25は径方向に沿っている。
【0044】
磁性ワイヤ14の軸方向17と磁極境界線25とが平行である図3Aのときの角度を0度とし、反時計回り方向CCWに角度の値が増加することとすると、リング磁石23の回転軸線11まわりの回転にともなう磁束密度の変化は、図3Cに表れているような台形波状になる。
【0045】
磁束密度の変化による発電センサ13の動作は第1の比較例と同様である。
【0046】
磁束密度が0になる0度および180度の付近での磁束密度の変化は急峻であり、したがって、パルス発生位置のばらつきが小さく、かつ回転方向による位相差PSも小さい。
【0047】
一方、発電センサ13の長軸方向が径方向であるので、検出装置の外径が大きくなる課題がある。
【0048】
また、この比較例の構成においても、全周にわたって着磁したリング磁石23が必要であるので、その作製には専用の着磁ヨークを準備する必要がある。また、検出装置のサイズ(径)に合わせたリング磁石23が必要である。したがって、汎用性のある磁石を用いることができないから、磁石コストが高くなる課題もある。
【0049】
特許文献2の構成は、第3の比較例のカテゴリに分類できる。
【0050】
図4Aおよび図4Bは第4の比較例の回転検出装置4を示し、図4Cは回転角に対する磁束密度の変化を示す。
【0051】
この回転検出装置4は、回転軸線11まわりに回転するリング状の支持基板26と、支持基板26上に周方向に間隔を空けて配置された2個の個別磁石27と、発電センサ13とを含む。発電センサ13の構成は、第1の比較例と同様である。
【0052】
磁性ワイヤ14の軸中心位置18は回転軸線11から径方向にオフセットされており、磁性ワイヤ14の軸方向17は径方向に沿っている。2個の個別磁石27は、径方向に着磁されており、回転軸線11まわりに180度の角度間隔で配置されている。2個の個別磁石27の一方は、回転軸線11に近い内方にN極を配置して支持基板26に固定されており、それらの他方は回転軸線11に近い内方にS極を配置して支持基板26に固定されている。各個別磁石27の磁極境界線27aは、回転軸線11まわりの円周の接線方向(より正確には各個別磁石27の位置での接線方向)に沿っている。各個別磁石27は、発電センサ13に対向するときに、一方の磁極が磁性ワイヤ14の一端部に対向し、他方の磁極が磁性ワイヤ14の他端部に対向するように支持基板26上に配置されている。
【0053】
発電センサ13が2個の個別磁石27の中間に位置する図4Aのときの角度を0度とし、反時計回り方向CCWに角度の値が増加することとすると、個別磁石27の回転軸線11まわりの回転にともなう磁束密度の変化は、図4Cに表れているような波形を示す。
【0054】
磁束密度の変化による発電センサ13の動作は第1の比較例と同様である。
【0055】
この比較例では、角度に対する磁束密度の変化が小さいので、パルス電圧の発生位置のばらつきが出やすい。また、磁束密度が0になる0度および180度の付近は、隣合う個別磁石27の間の角度区間に属し、磁束密度が変化しない平坦部である。そのため、回転方向による位相差PSが大きい。
【0056】
また、第3の比較例と同じく、発電センサ13の長軸方向が径方向であるので、検出装置の外形が大きくなる課題がある。
【0057】
一方、この比較例においては、空芯コイルにより着磁が可能な汎用的な2極磁石を個別磁石27として用いることができるので磁石コストが安い。加えて、異なるサイズの検出装置にも同じ構成の磁石27を用いることができるメリットがある。
【0058】
しかし、個別磁石27は、実際には視認できない磁極境界線27aが円周接線方向に沿うように方向を合わせて支持基板26に固定する必要があるので、組立作業が繁雑であり、それに応じて組立コストが嵩む課題がある。
【0059】
特許文献3の構成は、第4の比較例のカテゴリに分類できる。
【0060】
図5Aおよび図5Bはこの発明の一実施形態に係る運動検出装置の一例である回転検出装置5を示し、図5Cは回転角に対する磁束密度の変化を示す。
【0061】
この回転検出装置5は、第1の支持体51と、第1の支持体51に対して相対移動する第2の支持体52と、第1の支持体51に支持された発電センサ100と、第2の支持体52に支持された磁界発生源400とを含む。
【0062】
第1の支持体51は、この実施形態では、支持基板であり、その一つの主面に発電センサ100が支持されている。第2の支持体52は、この実施形態では、回転軸線40まわりに回転するリング状の支持基板である。磁界発生源400は、第2の支持体52上に周方向に間隔を空けて配置された複数個(この実施形態では2個)の個別磁石M1,M2を含む。
【0063】
発電センサ100は、磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤ110に巻回したコイル120と、磁性ワイヤ110の両端部にそれぞれ結合したL字形の一対の磁束伝導片130,131とを含み、第2の支持体52側(図5Bの下方側)を検出領域140とするように構成されている。発電センサ100の具体的な構成例は、図6Aおよび図6Bを参照して後述する。
【0064】
磁性ワイヤ110の軸方向中心位置である軸中心位置113は回転軸線40から径方向にオフセットされており、磁性ワイヤ110の軸方向xは回転軸線40まわりの周方向(より詳細には磁性ワイヤ110の軸中心位置113を通る回転軸線40まわりの円周上において、当該軸中心位置113での接線の方向)に沿っている。
【0065】
2個の個別磁石M1,M2は、回転軸線40に平行な方向に着磁されており、回転軸線40まわりの円周上に等間隔で、すなわち、180度の角度間隔で配置されている。2個の個別磁石M1,M2の一方は、発電センサ100に接近したときにN極n1が発電センサ100に対向するように配置して第2の支持体52に固定されており、それらの他方は発電センサ100に接近したときにS極s1が発電センサ100に対向するように配置して第2の支持体52に固定されている。第2の支持体52が回転軸線40まわりに回転するとき、各磁極n1,s1は円周状の軌道30に沿って移動する。
【0066】
このように、磁界発生源400は、第2の支持体52に配置された複数の磁極n1,s1を有し、この複数の磁極n1,s1は、第2の支持体52が第1の支持体51に対して相対回転(相対移動の一例)するときに、磁性ワイヤ110の軸方向xに実質的に平行な軌道30に沿って検出領域140に順に進入する。このとき、異なる極性の磁極n1,s1が交互に空隙31を介して発電センサ100に対向する。個別磁石M1,M2は回転軸線40に平行な方向に着磁されているので、各磁極n1,s1の磁束の方向は、当該磁極n1,s1の移動方向に垂直であり、かつ発電センサ100に対向するときに磁性ワイヤ110と交差する方向、すなわち、磁極n1,s1と発電センサ100との間の空隙31の開く方向(空隙方向)である。
【0067】
軌道30上での複数の磁極n1,s1の配置間隔λ、すなわち、周方向に隣合う磁極n1,s1の間の間隔は、磁性ワイヤ110の全長Lw(図6B参照)よりも長い。より具体的には、この例では、配置間隔λは、磁性ワイヤ110の全長Lwの1.5倍以上である。また、軌道30上での磁極n1,s1の長さα(軌道30に沿う長さ)は、磁性ワイヤ110の全長Lwより短く、かつ磁極配置間隔λの50%以下である。この例では、軌道30上での磁極n1,s1の長さαは、磁性ワイヤ110の全長Lwの半分以下である。
【0068】
第2の支持体52とともに2個の個別磁石M1,M2が反時計回り方向CCWに回転するとき、磁束密度が負の安定化磁界を下回ると正パルス準備状態(ポジティブセット状態)となり、その後に磁束密度が正の動作磁界を上回ると正パルスPPが発生する。また、第2の支持体52とともに2個の個別磁石M1,M2が反時計回り方向CCWに回転するとき、磁束密度が正の安定化磁界を上回ると負パルス準備状態(ネガティブセット状態)となり、その後に磁束密度が負の動作磁界を下回ると負パルスNPが発生する。したがって、図5Cに表れているように、90度の付近で負パルスNPが発生し、270度の付近で正パルスPPが発生する。
【0069】
同様に、第2の支持体52とともに2個の個別磁石M1,M2が時計回り方向CWに回転するとき、磁束密度が負の安定化磁界を下回ると正パルス準備状態(ポジティブセット状態)となり、その後に磁束密度が正の動作磁界を上回ると正パルスPPが発生する。また、第2の支持体52とともに2個の個別磁石M1,M2が時計回り方向CWに回転するとき、磁束密度が正の安定化磁界を上回ると負パルス準備状態(ネガティブセット状態)となり、その後に磁束密度が負の動作磁界を下回ると負パルスNPが発生する。したがって、図5Cに表れているように、90度の付近で正パルスPPが発生し、270度の付近で負パルスNPが発生する。
【0070】
90度および270度の付近において、回転角に対する磁束密度の変化は非常に急峻である。そのためパルス発生位置のばらつきが少なく、しかも、回転方向に応じたパルス発生位置のずれ、すなわち位相差PSが極めて小さい。加えて、動作磁化から安定化磁界までの角度差が非常に小さいので、移動方向(回転方向)が反転したときにいわゆるパルス抜けが生じる範囲(反転範囲)が狭い。
【0071】
また、発電センサ100の長軸方向が円周接線方向であるので、回転検出装置5の外形を小さくできる。別の見方をすれば、第2の支持体52の中空部の径を大きくすることができる。加えて、空芯コイルで厚み方向に着磁して作製できる汎用的な個別磁石M1,M2を用いることができるので、磁石コストを安くできる。むろん、同じ設計の個別磁石M1,M2を異なるサイズの回転検出装置に対して汎用的に用いることができるので、専用設計の特別な磁石を要しない。しかも、厚み方向に着磁した個別磁石M1,M2のN極またはS極を一方向に交互に向けて第2の支持体52に固定すればよく、磁極境界を径方向と整合させる必要のある第4の比較例に比べて、組立作業が簡単であり、それに応じて組立コストを削減できる。
【0072】
前述のとおり、複数の磁極n1,s1の軌道30上での配置間隔λが磁性ワイヤ110の全長よりも長い(好ましくは1.5倍以上)ことにより、図5Cに表れているように、パルスが発生する90度および270度の間の中間域において、磁束密度が0となる平坦部が現れる。それにより、軌道30上で隣合う磁極n1,s1からの磁界の影響を分離することができ、90度および270度の付近における磁束密度の変化を急峻にすることができる。この傾向は、軌道30上での磁極n1,s1の長さαを磁極の配置間隔λの50%以下とすることによって、さらに強められる。
【0073】
また、前述のとおり、軌道30上での磁極n1,s1の長さαは、磁性ワイヤ110の全長よりも短い。それにより、90度および270度の付近において、磁束密度の変化に平坦部を生じさせることなく、急峻な磁束密度変化を確保できる。磁極n1,s1の長さαを磁性ワイヤ110の全長の半分以下とすることで、磁束密度変化をより急峻にできるので好ましい。
【0074】
図6Aは発電センサ100の構成例を説明するための斜視図であり、図6B図6Aの矢印101の方向に見た正面図である。発電センサ100と磁界発生源400(たとえば個別磁石)の磁極401とが相対的に移動することによって、発電センサ100がパルス信号を発生する。発電センサ100と磁界発生源400との相対移動は、発電センサ100および磁界発生源400の少なくとも一方の移動によって達成される。以下では、主として、磁界発生源400の移動によって相対運動が達成される例について説明する。
【0075】
発電センサ100は、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤ110に巻回されたコイル120と、軟磁性体部品を持つ一対の磁束伝導片130,131とを含む。コイル120は、磁性ワイヤ110の第1端部111と第2端部112とを同じ長さで露出するように、磁性ワイヤ110に巻回されている。この実施形態では、コイル120は、一対の磁束伝導片130,131の間で磁性ワイヤ110に巻回されている。一対の磁束伝導片130,131は、磁性ワイヤ110の第1端部111および第2端部112にそれぞれ磁気的に結合している。
【0076】
一対の磁束伝導片130,131は、実質的に同形同大の構成を有している。より具体的には、一対の磁束伝導片130,131は、磁性ワイヤ110の軸方向x(長さ方向、線長方向)の中心位置(以下「軸中心位置」という。)113において軸方向xに直交する対称面115(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)に対して互いに対称に構成されている。一対の磁束伝導片130,131は、磁性ワイヤ110の両端部111,112から軸方向xに直交する軸直交方向zに互いに平行に延びる軸直交部133と、軸直交部133の先端部から軸方向xに沿って互いに接近する方向に延びる軸平行部134とを備えている。
【0077】
一対の磁束伝導片130,131の軸直交部133の基端部に、磁性ワイヤ110の両端部111,112がそれぞれ固定されている。より具体的には、軸直交部133の基端部には、軸方向xに貫通する穴または溝が形成されたワイヤ配置部130a,131aが設けられている。図6A等には、ワイヤ配置部130a,131aを穴で構成した例を示す。ワイヤ配置部130a,131aを溝で構成する場合には、当該溝は、後述する検出領域140とは反対側の端面に開放するように軸直交方向zに沿って延びる溝であることが好ましい。磁性ワイヤ110の第1端部111および第2端部112は、ワイヤ配置部130a,131aにおいて軸直交部133を貫通した状態で、当該軸直交部133に固定されている。さらに具体的には、ワイヤ配置部130a,131aを構成する穴または溝内に樹脂(図示省略)が配置されることにより、磁性ワイヤ110の端部111,112が軸直交部133に固定され、それらが互いに結合されている。これにより、磁性ワイヤ110と一対の磁束伝導片130,131とが、互いに機械的に結合され、かつ互いに磁気的に結合されている。
【0078】
一対の磁束伝導片130,131の軸平行部134は、それらの近接端134a同士が、磁性ワイヤ110の軸中心位置113を通る対称面115を挟んで互いに対向している。すなわち、それらの近接端134aは、軸方向xに間隔を空けて互いに対向している。この間隔の軸方向xの中間位置は、軸中心位置113の軸方向xの位置に相当しており、したがって、一対の軸平行部134の近接端134aから対称面115までの軸方向xの距離は等しい。当該間隔の軸方向xの距離Lは、磁性ワイヤ110と軸直交部133との結合位置における一対の軸直交部133の間の距離Dの5%~50%とされ、より好ましくは、20%~40%とされる。距離Dは、より具体的には、磁性ワイヤ110との結合位置において軸方向xに対向する一対の磁束伝導片130,131の内側面130b,131b(軸直交部133の内側面)の間の軸方向xの距離である。
【0079】
磁束伝導片130,131を構成する軟磁性体部品は、保磁力が磁性ワイヤ110の保磁力以下であり、かつ比透磁率が500以上の材料からなることが好ましい。このような材料は、低磁気抵抗、低ヒステリシス、低自己誘電等の特性を有する。それにより、磁界発生源400が高速に移動したときに生じる高周波の交番磁界が印加されたときでも、発電センサ100の出力特性に対する影響が少ない。具体的には、軟磁性体部品は、Ni系フェライトまたはMn系フェライトの材料からなることが好ましい。
【0080】
この発電センサ100は、軸平行部134に対して磁性ワイヤ110とは反対側の領域を検出領域140とするように構成されている。この検出領域140に、検出すべき磁界を発生する磁界発生源400が配置される。発電センサ100と磁界発生源400とは、軸直交方向zの空隙31(ギャップ)を有するように配置されている。この空隙31は、完全なエアギャップであってもよく、たとえば、第1の支持体51を構成するプリント基板45が介装されていてもよい。すなわち、プリント基板45の一方の主面側に発電センサ100が配置され、その他方の主面側に磁界発生源400が配置されてもよい。プリント基板45の一方または両方の主面には、電気部品および/または電子部品が実装されていてもよい。一つの具体例では、プリント基板45の一主面に発電センサ100が実装される。
【0081】
典型的には、磁界発生源400は、検出領域140を通過するように、発電センサ100に対して相対的に移動する。すなわち、磁界発生源400の移動経路上に検出領域140が配置される。この実施形態では、磁界発生源400は、軸直交方向zに着磁された複数の個別磁石で構成されている。それにより、磁界発生源400は、検出領域140を通る軌道30に沿って移動するときに発電センサ100(より具体的には軸平行部134)に対向する複数の磁極401を有する。
【0082】
複数の磁極401は、この実施形態では、第2の支持体52が第1の支持体51(プリント基板45)に対して相対移動するとき、異なる極性の磁極401が交互に発電センサ100に対向するように配置されている。磁極401が検出領域140を通って移動するときに生じる磁界の変化によって、発電センサ100がパルス電圧を出力する。このパルス電圧を信号処理して計数することによって、位置情報を生成する位置検出装置、すなわちエンコーダ(運動検出装置の一例)を構成することができる。
【0083】
検出領域140における磁極401の移動方向、すなわち運動方向は、軸方向xに沿っている。すなわち、磁性ワイヤ110とほぼ平行である。換言すれば、軌道30は、検出領域140において、軸方向xに実質的に平行な部分を有する。一つの具体例では、軌道30は、検出領域140において軸方向xと平行な直線部を有する。軌道30は、全体が直線状であってもよいし、曲線部を有していてもよい。他の具体例では、軌道30は、検出領域140において軸方向xに平行な接線を持つ円弧部を有する。この円弧部は、軸直交方向zに平行な回転軸線40上に中心を有していてもよい。軌道30は、全体が円弧部、すなわち円周状であってもよい。また、軌道30は、直線部、楕円形部など、円弧状以外の形状の部分を有していてもよい。図5Aおよび図5Bに示した例では、軌道30が円周状である。
【0084】
一対の磁束伝導片130,131は、検出領域140に配置された磁界発生源400が当該磁束伝導片130,131を含む空間に形成する磁界を軸方向xの磁界に補正して磁性ワイヤ110に印加するように構成されている。
【0085】
さらに具体的に説明すると、軟磁性体部品からなる磁束伝導片130,131は、略直方体形状の軸直交部133と、軸直交部133の磁界発生源400に対向する側、すなわち検出領域140側の端部である先端部に連設された略直方体形状の軸平行部134とを有し、軸直交部133と軸平行部134との結合部で直角に曲がったL字形状を有している。軸平行部134は、磁性ワイヤ110を覆うように、すなわち、磁性ワイヤ110と検出領域140との間を遮蔽するように、軸方向xに沿って延びている。互いに対称な形状を有する一対の磁束伝導片130,131の軸平行部134は、磁性ワイヤ110の軸中央側に延びており、それらの近接端134aは、磁性ワイヤ110の軸中心位置113の付近で間隔を空けて互いに対向している。近接端134aは、軸方向xに直交する平面をなしており、2つの近接端134aをそれぞれ形成する2つの平面は互いに平行であり、それらが軸方向xに対峙している。2つの近接端134aの間の間隔の方向xの距離Lは、2つの近接端134aを形成する2つの平面の間の距離である。
【0086】
軟磁性体部品からなる磁束伝導片130,131とコイル120とは、それらを覆うケース(図示省略)に接着樹脂、嵌合、その他の適切な固定手段によって固定される。前述のとおり、磁性ワイヤ110の両端部111,112は、2つの貫通する穴または溝からなるワイヤ配置部130a,131aに樹脂(図示省略)によって固定されている。したがって、一対の磁束伝導片130,131、コイル120および磁性ワイヤ110が互いに固定されて一体化された構造によって発電センサ100が構成されている。
【0087】
コイル120の両端は、軸平行部134に設けた外部電極に接続されていてもよい。この外部電極をプリント基板45の一主面に設けた配線導体に接合することによって、発電センサ100がプリント基板45に面実装されていてもよい。
【0088】
上記のような構成の発電センサ100においては、検出領域140の磁界は、軟磁性体部品を持つ磁束伝導片130,131によって磁性ワイヤ110の両端部111,112に導かれる。そのうえ、検出領域140と磁性ワイヤ110との間には磁性ワイヤ110の軸方向xに平行な軸平行部134が位置しているので、検出領域140から磁性ワイヤ110の軸方向中間部(軸方向途中位置)へと向かう磁束は、軸平行部134によって遮蔽される。とくに、一対の磁束伝導片130,131の軸平行部134の近接端134a同士の軸方向xの距離Lが磁性ワイヤ110との結合位置における軸直交部133の間の距離Dの5%~50%とすると、優れた磁気遮蔽効果が得られる。したがって、磁性ワイヤ110の軸方向xの広い範囲にわたってその軸方向xの磁界を印加することができるので、大バルクハウゼン効果を十分に引き起こすことができ、高出力の信号を得ることができる。
【0089】
しかも、発電センサ100が磁束伝導片130,131を備えており、その磁束伝導片130,131と磁性ワイヤ110とが互いに固定されて結合されているので、検出領域140に検出媒体としての磁界発生源400(典型的には磁石)が配置されるようにすればよい。したがって、異なる形状および/または極性を有する磁界発生源400との組合せが容易である。
【0090】
発電センサ100と磁界発生源400とが相対運動するとき、磁界発生源400の磁極401は、検出領域140を通る軌道30に沿って移動する。その軌道30は、検出領域140において軸方向xと平行な直線部を含むか、または検出領域140において軸方向xと平行な接線を有する円弧部を含む。したがって、磁極401が検出領域140を通るとき、その磁極401は軸平行部134に対向するので、磁極401が発生する磁束が磁束伝導片130,131を通って磁性ワイヤ110に印加される。
【0091】
磁束伝導片130,131の軸平行部134は、磁性ワイヤ110の軸方向xに延びているので、その磁気遮蔽効果により、磁極401から磁性ワイヤ110の軸方向中間部には磁束は入り難い。磁性ワイヤ110の軸方向xに延びる軸平行部134は、多くの磁束を集めることができる。そのため、磁極401から発生する磁束が弱くても、大バルクハウゼン効果の発現に必要な磁界を磁性ワイヤ110に印加できる。また、軸平行部134は、検出領域140内の広い範囲で磁極401に対向でき、かつ磁性ワイヤ110の軸方向中間部への磁束の進入を抑制する。
【0092】
そのため、磁極401が磁性ワイヤ110の軸中心位置113に対向して一対の磁束伝導片130,131から磁性ワイヤ110の両端部111,112に導かれる磁束がバランスしている状態から、磁極401が軌道30に沿ういずれかの方向にわずかに移動することにより、磁性ワイヤ110内の磁束密度が急変する。それにより、磁極401の位置の変動に対する磁束密度の変化が急峻になる。
【0093】
図7Aは、回転検出装置5Aの具体的な構造例を説明するための斜視図であり、図7Bはその平面図である。また、図7Cは、図7Bの右側から見て発電センサ100の付近の構成を示す正面図である。
【0094】
回転検出装置5Aは、エンコーダの一例であり、回転軸50の中心軸線に一致する回転軸線40まわりの回転位置を検出する。回転検出装置5Aは、発電センサ100と、磁界発生源400とを含む。回転検出装置5Aは、この例では、センサ55(たとえば磁気センサ)をさらに含む。図示は省略するが、回転検出装置5Aは、発電センサ100が発生するパルス出力を信号処理して計数するカウント処理回路、カウント処理回路による計数結果を保存する不揮発性メモリなどをさらに含んでいてもよい。カウント処理回路は、センサ55の出力を考慮して計数動作を行うように構成されていてもよい。
【0095】
発電センサ100は、第1の支持体51に配置され、当該第1の支持体51に支持されている。この実施形態では、第1の支持体51に、センサ55も搭載されている。
【0096】
磁界発生源400は、第2の支持体52に固定されている。第2の支持体52は、第1の支持体51に対して相対移動する。具体的には、第2の支持体52は、回転軸50に結合(固定)されており、回転軸50とともに回転軸線40まわりに回転する。したがって、第2の支持体52は、回転体の一部であり得る。それに対して、第1の支持体51は、固定配置されていて、非回転状態に保持されている。それにより、磁界発生源400は、第2の支持体52とともに回転軸線40まわりに回転して、第1の支持体51に対して相対移動する。
【0097】
回転軸50は、典型的には、電動モータ(図示せず)の駆動軸からの駆動力によって回転される。電動モータが双方向に駆動される場合には、それに応じて、回転軸50は反時計回り方向CCWおよび時計回り方向CWの双方向に回転する。第1の支持体51は、回転軸線40に直交する平面に沿って配置されたプリント基板45であってもよい。
【0098】
磁界発生源400は、この例では、複数個、すなわち2k個(図示の例ではk=2)の個別磁石M1,M2,…を含み、これらは第2の支持体52に固定されている。個別磁石M1,M2,…は、回転軸線40に平行な方向、すなわち軸直交方向zに着磁されており、回転軸線40まわりに等角度間隔で配置されている。個別磁石M1,M2,…は、この例では、厚み方向に着磁された板状(より具体的には円板状)であるが、個別磁石M1,M2,…の形状は、これに限られない。図6Aに示すような直方体状または矩形板状であってもよく、平面視の形状が円弧状(具体的には径方向内方部を切り取った扇形状)の磁石が用いられてもよい。
【0099】
回転軸線40に平行な方向から見た平面視(図7B参照)において、周方向にN極n1,n2,…およびS極s1,s2,…が交互に並んでいる。すなわち、第2の支持体52が回転軸線40まわりの一方向に回転することにより、異なる極性の磁極であるN極およびS極が発電センサ100の検出領域140(図7C参照)に交互に進入し、発電センサ100の近傍に交番磁界を生成する。
【0100】
発電センサ100は、第1の支持体51(プリント基板45)の一方主面に実装されている。発電センサ100の磁性ワイヤ110は、回転軸線40上に中心を有する円周の接線上にあり、磁性ワイヤ110の軸中心位置113は、当該接線の接点上にある。発電センサ100は、個別磁石M1,M2,…の一つ、すなわち複数の磁極n1,n2,…,nk;s1,s2,…,skのいずれかの中央と磁性ワイヤ110の軸中心位置113とが整合するときに、2つの磁束伝導片130,131から伝導される磁気がバランスするように配置されている。
【0101】
磁束伝導片130,131の軸平行部134は、検出領域140に対向する検出領域対向面134bを検出領域140側に形成している。検出領域対向面134bは、軸方向xに平行な平坦面である。この検出領域対向面134bは、検出領域140に磁極が配置されたときに、その磁極からの磁束を磁束伝導片130,131の内部へと導く磁束伝導端を形成している。
【0102】
磁束伝導片130,131の軸平行部134が第1の支持体51(プリント基板45)の一方の主面に形成された配線パターン(図示せず)に接合され、それによって、発電センサ100が第1の支持体51(プリント基板45)に面実装されている。発電センサ100は、回転軸線40上に中心を有する円周上の一つの点(接点)における接線に磁性ワイヤ110の軸方向xが沿うように配置されており、磁性ワイヤ110の軸中心位置113が当該接点に一致する配置となっている。発電センサ100の検出領域140は、軸平行部134に対して磁性ワイヤ110とは反対側であり、この例では、第1の支持体51(プリント基板45)の他方の主面側の領域である。
【0103】
第2の支持体52は、この例では、回転軸線40を取り囲む円環状に構成されている。より具体的には、第2の支持体52は、円環状の板状体で構成されており、回転軸線40と直交する平面に沿って配置されていて、第1の支持体51(プリント基板45)と平行になっている。第2の支持体52において、第1の支持体51(プリント基板45)の前記他方の主面に対向する面に、複数の個別磁石M1,M2,…が固定されている。複数の個別磁石M1,M2,…は、この実施形態では、回転軸線40まわりの周方向に等間隔で配置されている。図示の具体例では、回転軸線40まわりに90度の角度間隔で4つの個別磁石M1,M2,M3,M4が配置され、それらが第1の支持体51(プリント基板45)に対向するように、第2の支持体52に固定されている。回転軸線40から個別磁石M1,M2,…の中心までの距離は、回転軸線40から磁性ワイヤ110の軸中心位置113までの距離に等しくてもよい。すなわち、回転軸線40に沿う平面視において、磁性ワイヤ110および個別磁石M1,M2,…は、回転軸線40を中心軸線とする等しい半径の円周上に位置し、それによって、回転軸線40に平行な方向に対向可能な位置関係となっていてもよい。第2の支持体52は、軟磁性体で構成されたヨークであることが好ましい。
【0104】
第2の支持体52が回転軸50とともに回転軸線40まわりに回転することにより、個別磁石M1,M2,…は、回転軸線40を中心とし、検出領域140を通る円周状の軌道30上を移動する。磁性ワイヤ110の軸方向xは、円周状の軌道30上の或る点(接点)を通る接線と平行であり、軸中心位置113は、当該接点において当該接線に立てた垂線(この例では、回転軸線40に平行な垂線)上にある。換言すれば、磁性ワイヤ110の軸中心位置113は、回転軸線40上に中心を有し、円周状の軌道30と等しい半径の円周上の或る点(接点)に位置し、磁性ワイヤ110は、当該接点における接線に沿っている。
【0105】
第1の支持体51および第2の支持体52の回転軸線40に沿う方向の距離は、第2の支持体52の回転によって、個別磁石M1,M2,…が発電センサ100の検出領域140に進入可能な適切な値に定められる。
【0106】
第1の支持体51を構成するプリント基板45において、発電センサ100が実装されている主面には、さらに、たとえば磁気センサからなるセンサ55が実装されている。プリント基板45の主面には、さらに前述のカウント処理回路、不揮発性メモリなどの他の電気部品または電子部品が実装されていてもよい。
【0107】
センサ55は、発電センサ100の中央部に対向する磁極の極性を検出できるように配置されている。センサ55は、たとえば、ホールIC等の磁気センサからなり、N極を検知すると(発電センサ100の中央部にN極が対向すると)H信号を出力し、S極を検知すると(発電センサ100の中央部にS極が対向すると)L信号を出力する。それにより、センサ55は、その近傍を通る磁極の極性を判別し、結果として、発電センサ100の中央部に対向する磁極の極性を識別する識別信号を出力する。この実施形態では、センサ55は、発電センサ100に対して、回転軸線40まわりの位相差180度の位置、すなわち、回転軸線40に関して対称な位置で磁極を検出するように配置されている。kが偶数(たとえば2)であれば、センサ55は、発電センサ100の中央部に対向する磁極と同じ極性の磁極を検出する。kが奇数(たとえば3)のとき、センサ55は、発電センサ100の中央部に対向する磁極と反対の極性の磁極を検出する。いずれの場合でも、センサ55は、発電センサ100の中央部に対向する磁極の極性を検出できる。
【0108】
このような構成により、回転軸線40まわりの反時計回り方向CCWの回転によって、一つの磁極対n1,s1;n2,s2;…;nk,skが円周状の軌道30に沿って検出領域140を通過するたびに、一つの負パルスNPと一つの正パルスPPとが順に生成される(図5C参照)。また、回転軸線40まわりの時計回り方向CWの回転によって、一つの磁極対n1,s1;n2,s2;…;nk,skが円周状の軌道30に沿って検出領域140を通過するたびに、一つの正パルスPPと一つの負パルスNPとが順に生成される(図5C参照)。そして、これらのパルスと、磁束伝導片130,131の間の円周状の軌道30上にある磁極の極性を表す識別信号を出力するセンサ55とによって、回転位置および回転方向を識別することができる。
【0109】
具体的には、負パルスNPが発生したときにセンサ55がN極を検出している場合、および正パルスPPが発生したときにセンサ55がS極を検出している場合には、回転方向を反時計回り方向CCWと識別してもよい。一方、正パルスPPが発生したときにセンサ55がN極を検出している場合、および負パルスNPが発生したときにセンサ55がS極を検出している場合には、回転方向を時計回り方向CWと識別してもよい。
【0110】
図6Aおよび図6Bに示した構成の場合と同様に、軌道30上での複数の磁極の配置間隔λは、磁性ワイヤ110の全長よりも長い。この例では、配置間隔λは、磁性ワイヤ110の全長Lwの1.5倍以上である。また、軌道30上での磁極の長さα(軌道30に沿う長さ)は、磁性ワイヤ110の全長Lwより短く、かつ磁極配置間隔λの50%以下である。この例では、軌道30上での磁極の長さαは、磁性ワイヤ110の全長Lwの半分以下である。
【0111】
このような構成により、図6Aおよび図6Bに示した構成と同様の効果を実現できる。
【0112】
図8はこの発明の他の実施形態に係る運動検出装置の一例である回転検出装置6の構成を説明するための平面図である。
【0113】
この回転検出装置6は、第1の支持体51Aと、第1の支持体51Aに対して相対移動する第2の支持体52Aと、第1の支持体51Aに支持された発電センサ100と、第2の支持体52Aに支持された磁界発生源400とを含む。第1の支持体51Aは、この実施形態では、支持基板であり、その一つの主面に発電センサ100が支持されている。第2の支持体52Aは、この実施形態では、回転軸線40まわりに回転する円筒状である。磁界発生源400は、第2の支持体52Aの外周面に周方向に間隔を空けて配置された複数個(この実施形態では2個)の個別磁石M1,M2を含む。
【0114】
発電センサ100は、図6A等の場合と同様の構成を有し、磁性ワイヤ110と、磁性ワイヤ110に巻回したコイル120と、磁性ワイヤ110の両端部にそれぞれ結合したL字形の一対の磁束伝導片130,131とを含み、第2の支持体52A側(回転軸線40側)を検出領域140とするように構成されている。すなわち、この回転検出装置6は、磁界発生源400(個別磁石)と発電センサ100との間の空隙が開く方向(空隙方向)を径方向としたラジアルギャップ型である。
【0115】
磁性ワイヤ110の軸中心位置113は回転軸線40から径方向にオフセットされており、磁性ワイヤ110の軸方向xは回転軸線40まわりの周方向(より詳細には磁性ワイヤ110の軸中心位置113を通る回転軸線40まわりの円周上において、当該軸中心位置113での接線の方向)に沿っている。2個の個別磁石M1,M2は、回転軸線40に直交する径方向(空隙方向)に着磁されており、回転軸線40まわりの円周上に等間隔で、すなわち、180度の角度間隔で配置されている。2個の個別磁石M1,M2の一方は、発電センサ100に接近したときにN極n1が発電センサ100に対向するように配置して第2の支持体52Aに固定されており、それらの他方は発電センサ100に接近したときにS極s1が発電センサ100に対向するように配置して第2の支持体52Aの外周面に固定されている。
【0116】
第2の支持体52Aが回転軸線40まわりに回転するとき、各磁極n1,s1は円周状の軌道30に沿って移動する。このように、磁界発生源400は、第2の支持体52Aに配置された複数の磁極n1,s1を有し、この複数の磁極n1,s1は、第2の支持体52Aが第1の支持基板に対して相対回転(相対移動の一例)するときに、磁性ワイヤ110の軸方向xに実質的に平行な軌道に沿って検出領域140に順に進入する。このとき、異なる極性の磁極n1,s1が交互に空隙を介して発電センサ100に対向する。個別磁石M1,M2は回転軸線40に直交する径方向に着磁されているので、各磁極n1,s1の磁束の方向は、当該磁極n1,s1の移動方向に垂直であり、かつ発電センサ100に対向するときに磁性ワイヤ110と交差する方向、すなわち、磁極n1,s1と発電センサ100との間の空隙の開く方向(空隙方向)である。
【0117】
軌道30上での複数の磁極n1,s1の配置間隔λは、磁性ワイヤ110の全長よりも長い。より具体的には、この例では、配置間隔λは、磁性ワイヤ110の全長Lwの1.5倍以上である。また、軌道30上での磁極n1,s1の長さα(軌道30に沿う長さ)は、磁性ワイヤ110の全長Lwより短く、かつ磁極配置間隔λの50%以下である。この例では、軌道30上での磁極n1,s1の長さαは、磁性ワイヤ110の全長Lwの半分以下である。
【0118】
この構成によっても、図6Aおよび図6Bに示した構成と同様の効果を得ることができる。
【0119】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、以下に例示するとおり、この発明はさらに他の形態で実施することができる。
【0120】
前述の実施形態では、主として回転を検出する装置、すなわち、無端状の軌道に沿う相対移動を検出する装置について説明したが、円弧状や直線状など、有端軌道に沿う運動(直線運動など)を検出する検出装置も同様に構成できる。この場合、発電センサ100が支持される第1の支持体と磁界発生源が支持される第2の支持体とは、少なくとも一方が軌道に沿って移動する。磁界発生源は、一方向への移動によって、異極性の磁極が発電センサ100の検出領域に交互に進入するように第2の支持体に支持される。第2の支持体には、軌道に沿って、N極とS極とが交互に配置されればよく、全体の磁極数は偶数であっても奇数であってもよい。
【0121】
また、前述の実施形態では、複数の個別磁石で複数の磁極を構成する磁界発生源の例を示したが、所望の軌道の形状に合わせて設計した多極着磁磁石で磁界発生源を構成してもよい。具体的には、回転検出装置の場合には、回転軸線40を取り囲むリング状の多極着磁磁石で磁界発生源を構成してもよい。たとえば、図7A等に示した構成の場合には、リング状の硬磁性体に対して、個別磁石M1~M4と同様の位置に周方向に間隔を空けた局所的な着磁領域(4つの着磁領域)を設けて複数の磁極を構成することで、磁界発生源として用いることができる。着磁方向は、回転軸線40と平行、すなわち、軸直交方向zである。こうしてできる4極着磁リング磁石は、回転軸線40の一方向から見たときに、回転軸線40を中心とする円周上にN極およびS極が交互に配列されたk個(kは自然数。好ましくはk≧2。図示の例ではk=2)の磁極対(N極とS極との対)が配列された構成を有し、k個のN極n1,n2,…,nkおよびk個のS極s1,s2,…,skを有する。軌道30上での複数の磁極(着磁領域)の配置間隔λは、磁性ワイヤ110の全長Lwよりも長く、好ましくは、磁性ワイヤ110の全長Lwの1.5倍以上である。また、軌道30上での磁極(着磁領域)の長さα(軌道30に沿う長さ)は、磁性ワイヤ110の全長Lwより短く、かつ磁極配置間隔λの50%以下である。軌道30上での磁極の長さαは、好ましくは、磁性ワイヤ110の全長Lwの半分以下である。
【0122】
また、磁極は磁石(着磁された硬磁性体)である必要はなく、たとえば磁石から磁束を誘導する軟磁性体(ヨーク)を設けて、その軟磁性体の表面(典型的には端面)を磁極とすることもできる。
【0123】
また、前述の実施形態では、磁束伝導片の軸直交部は、磁性ワイヤ110から検出領域140に向かって延びる第1部分と、磁性ワイヤ110から検出領域140とは反対側に向かって延びる第2部分とを有しているが、第2部分を省いても磁束伝導機能(集磁機能)に実質的な影響はない。
【0124】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0125】
5,5A,6:回転検出装置
30 :軌道
31 :空隙
40 :回転軸線
45 :プリント基板
50 :回転軸
51,51A:第1の支持体
52,52A:第2の支持体
55 :センサ
100 :発電センサ
110 :磁性ワイヤ
113 :軸中心位置
115 :対称面
120 :コイル
130,131:磁束伝導片
130a,131a :ワイヤ配置部
133 :軸直交部
134 :軸平行部
134a :近接端
140 :検出領域
400 :磁界発生源
401 :磁極
Lw :磁性ワイヤの全長
M1,M2,M3,M4:個別磁石
PP :正パルス
NP :負パルス
PS :位相差
n1,n2:N極(磁極)
s1,s2:S極(磁極)
x :軸方向
z :軸直交方向
λ :磁極の配置間隔
α :磁極の長さ
【要約】
【課題】運動方向によるパルス発生位置の差の少ない運動検出装置を提供する。
【解決手段】回転検出装置5は、第1の支持体51と、それに対して相対移動する第2の支持体52と、第1の支持体に配置された発電センサ100と、第2の支持体に支持された磁界発生源400とを含む。発電センサは、磁性ワイヤ110と、コイル120と、磁束伝導片130,131と、を含む。磁束伝導片は、軸直交部および軸平行部を備え、軸直交部と磁性ワイヤの両端部が固定されるワイヤ配置部を有している。発電センサは、軸平行部に対して磁性ワイヤとは反対側を検出領域140とするように構成されている。磁界発生源は、複数の磁極を有する。極性の異なる磁極が、磁性ワイヤの軸方向に平行な軌道30に沿って検出領域に順に進入して発電センサに対向する。各磁極の磁束の方向は、その移動方向に垂直であり、かつ磁性ワイヤと交差する方向である。
【選択図】図5A-5B
図1A-1B】
図1C
図2A-2B】
図2C
図3A-3B】
図3C
図4A-4B】
図4C
図5A-5B】
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8