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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】赤外線センサおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20250611BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20250611BHJP
   H04N 5/33 20230101ALI20250611BHJP
   H04N 25/20 20230101ALI20250611BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20250611BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/42 B
H04N5/33
H04N25/20
H04N25/70
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020091375
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188929
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】田中 朋
(72)【発明者】
【氏名】深津 公良
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/088478(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/078956(WO,A1)
【文献】特開2016-048720(JP,A)
【文献】特開2018-190775(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02
G01J 1/42 - G01J 1/46
G01J 5/02
G01J 5/10 - G01J 5/345
G01J 5/48
H04N 5/30 - H04N 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 - H04N 23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 - H04N 25/61
H04N 25/615- H04N 25/79
H10D 44/00 - H10D 44/45
H10F 39/00 - H10F 39/18
H10F 39/95
H10K 39/32 - H10K 39/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の赤外線検出素子が格子状に配置され、前記赤外線検出素子の各々に対応付けられた第1端子が複数配置された第1基板を含む検出基板と、
前記複数の第1端子の各々に対応付けられた第2端子が複数配置され、前記複数の赤外線検出素子の各々によって検出される赤外線に基づく電気信号を読み出す読み出し回路が形成された第2基板を含む読み出し基板と、
前記複数の第1端子の各々と、前記複数の第1端子の各々に対応付けられた前記複数の第2端子とを電気的に接続する複数のバンプとを備え、
前記複数の第1端子と前記複数の第2端子とは、同一のピッチで格子状に配置され、
互いに対応付けられた第1端子と第2端子とは、上面視において、互いに重なり合う位置に配置され、
前記複数の第1端子、前記複数の第2端子、および前記複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部の中心が、上面視において、前記複数の第1端子、前記複数の第2端子、および前記複数のバンプのうち前記一部以外の中心が形成する行列を構成する行または列がなす直線からずらされて、隣接し合う前記赤外線検出素子の間の位置に配置される赤外線センサ。
【請求項2】
前記複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部が、
前記複数の第1端子と前記複数の第2端子の間に形成される隙間の位置に配置される請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記複数のバンプのうち少なくともいずれかは、
前記複数の赤外線検出素子のピッチサイズの10パーセント以上50パーセント以下の範囲内で、前記複数の赤外線検出素子の中心からずらして配置される請求項1または2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記第1基板および前記第2基板が長方形であり、
前記複数のバンプのうち少なくともいずれかは、
前記第1基板および前記第2基板の長手方向に沿ってずらして配置される請求項2または3に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記複数のバンプの全てが、
前記複数の第1端子と前記複数の第2端子の間に形成される隙間の位置に配置される請求項2乃至4のいずれか一項に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
互いに対応付けられた前記複数の第1端子および前記複数の第2端子の組のうち少なくともいずれかの組は、
上面視において、隣接し合う前記赤外線検出素子の間の位置に配置される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の赤外線センサ。
【請求項7】
前記複数の第1端子および前記複数の第2端子の角は、隣接する前記複数の第1端子および前記複数の第2端子と電気的に接触しないように変形されている請求項6に記載の赤外線センサ。
【請求項8】
前記第1基板および前記第2基板が長方形であり、
互いに対応付けられた前記複数の第1端子および前記複数の第2端子の組のうち少なくともいずれかの組は、
前記第1基板および前記第2基板の長手方向に沿ってずらして配置される請求項6または7に記載の赤外線センサ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の赤外線センサと、
前記赤外線センサの受光面に赤外線を集光するレンズと、
前記赤外線センサを冷却する冷却器と、
前記赤外線センサから出力される電気信号を取得し、前記赤外線センサに含まれる前記複数の赤外線検出素子の受光に応じた画像データを生成する制御器と、を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を検出する赤外線センサ等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な赤外線センサは、赤外線を検出する赤外線検出素子が格子状に配置された検出部が形成された基板と、読み出し回路が形成された基板とがフリップチップ接続された構造を有する。例えば、検出部が形成される基板の素材はヒ化ガリウム(GaAs)などの化合物半導体であり、読み出し回路が形成される基板の素材はシリコン(Si)である。検出部に含まれる複数の素子(画素とも呼ぶ)の各々は、読み出し回路の各後段回路と、一対一で金属のバンプで接続される。そのため、検出部と読み出し回路を接続する複数のバンプは、複数の画素に合わせて格子状に配置される。
【0003】
量子型赤外線カメラは、液体ヘリウムや液体窒素によって冷却されながら使用される。そのため、赤外線検出素子が形成された基板(検出基板とも呼ぶ)と読み出し回路が形成された基板(読み出し基板とも呼ぶ)の熱膨張率の差によって、赤外線センサに反りが発生しやすい。検出基板と読み出し基板に反りが発生した場合、比較的薄く形成される検出基板に亀裂が発生しやすい。検出基板に亀裂が発生すると、量子型赤外線カメラによって撮影された画像に不鮮明な箇所が表れる。
【0004】
特許文献1には、基板と、基板上に複数の行にわたって配置された導電パッドと、導電パッドに電気的に接続されるように複数の行にわたって配置されたバンプを含む駆動回路チップと、を含む表示装置について開示されている。特許文献1の表示装置において、同一の行に配置され、複数の導電パッドの各々に対応する複数のバンプは、重心または列方向の端部の位置がジグザグ状に、隣り合うバンプ同士の間で列方向に互いにずれるように配置される。
【0005】
特許文献2には、化合物半導体結晶上に2次元に配列された複数の素子と、それらの素子からの信号を処理するための集積回路を、複数のバンプを用いて電気的かつ機械的に接合するハイブリッド型デバイスの製造方法について開示されている。特許文献2の製造方法は、二つの工程を含む。一つ目の工程は、化合物半導体結晶上のバンプのピッチが、集積回路上のバンプのピッチよりも大きくなるように、化合物半導体結晶および集積回路の各々にバンプを形成する工程である。二つ目の工程は、化合物半導体結晶と集積回路の各々を異なる温度で加熱膨張させて、化合物半導体結晶と集積回路のバンプのピッチが一致した状態で接合させる工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-092169号公報
【文献】特開平07-111323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の手法においては、隣り合うバンプ同士が列方向にずらして配置される。そのため、特許文献1の手法においては、実装過程で発生する圧力や温度などの要因により、駆動回路チップを実装する際に基板上にクラックや破損が発生しにくくなる。特許文献1の手法によれば、同一の行を構成する複数の導電パッドに関しては、導電パッド上におけるバンプをずらすことによって、反りやクラックを低減できる。しかしながら、特許文献1の手法では、導電パッド間に発生する反りやクラックを低減することはできなかった。
【0008】
特許文献2の手法によれば、デバイスの使用温度である液体窒素温度(77ケルビン)において、集積回路上の画素アレイの両端間の距離よりも、化合物半導体結晶上の画素アレイの両端間の距離の方が小さくなることによってバンプの歪みが発生する。特許文献2の手法によれば、冷却時の歪みが室温時の歪みによって相殺される分だけ小さくなるため、冷却時の歪みによる応力がもたらすダイオード特性の劣化が低減される。しかしながら、特許文献2の手法では、室温時と冷却時の両方においてバンプに歪みが発生した状態になるため、室温時においてもデバイスに反りが発生する可能性があった。
【0009】
本発明の目的は、赤外線検出素子が形成された基板の反りを低減できる赤外線センサ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の赤外線センサは、複数の赤外線検出素子が格子状に配置され、赤外線検出素子の各々に対応付けられた第1端子が複数配置された第1基板を含む検出基板と、複数の第1端子の各々に対応付けられた第2端子が複数配置され、複数の赤外線検出素子の各々によって検出される赤外線に基づく電気信号を読み出す読み出し回路が形成された第2基板を含む読み出し基板と、複数の第1端子の各々と、複数の第1端子の各々に対応付けられた複数の第2端子とを電気的に接続する複数のバンプとを備え、複数の第1端子、複数の第2端子、および複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部が、上面視において、隣接し合う赤外線検出素子の間の位置に配置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、赤外線検出素子が形成された基板の反りを低減できる赤外線センサ等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る赤外線センサの一例の平面図である。
図2】第1の実施形態に係る赤外線センサの一例の側面図である。
図3】第1の実施形態に係る赤外線センサの一例の別の側面図である。
図4】第1の実施形態に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図5】関連技術に係る赤外線センサの一例の平面図である。
図6】関連技術に係る赤外線センサの一例の側面図である。
図7】変形例1に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図8】変形例1に係る赤外線センサの一例の側面図である。
図9】変形例2に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図10】変形例3に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図11】第2の実施形態に係る赤外線センサの一例の平面図である。
図12】第2の実施形態に係る赤外線センサの一例の側面図である。
図13】第2の実施形態に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図14】変形例4に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図15】変形例4に係る赤外線センサの一例の側面図である。
図16】変形例5に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図17】変形例6に係る赤外線センサの一例に関する概念図である。
図18】第3の実施形態に係る撮像装置の一例を示す概念図である。
図19】第3の実施形態に係る撮像装置の検出器の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態の説明に用いる一部の図面においては、視座を明確にするために、互いに直交するx軸、y軸、およびz軸を示す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る赤外線センサについて図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、使用時に赤外線センサが冷却される量子型赤外線カメラに搭載される赤外線センサを想定する。なお、本実施形態の赤外線センサは、量子型赤外線カメラに限らず、任意の赤外線カメラに適用できる。
【0015】
図1図4は、本実施形態の赤外線センサ100の構造について説明するための概念図である。図1は、赤外線センサ100の平面図である。図2は、図1の赤外線センサ100の左側面を見た際の側面図である。図3は、図1の赤外線センサ100の下側面を見た際の側面図である。図4は、後述する検出基板110を取り外した際の平面図である。図1においては、後述する検出基板110の電極(第1端子115)や、読み出し基板120の電極(第2端子125)、バンプ130の位置を破線で示す。図2図4においては、理解しやすくするために、互いに隣接する行を構成する複数のバンプ130を異なるハッチングで示す。
【0016】
赤外線センサ100は、検出基板110、読み出し基板120、および複数のバンプ130を備える。検出基板110は、第1基板111、複数の赤外線検出素子113、および複数の第1端子115を有する。読み出し基板120は、第2基板121、読み出し回路123、および複数の第2端子125を有する。複数の第1端子115の各々は、複数の第2端子125のいずれかに対応付けられる。複数の第1端子115の各々は、バンプ130を介して、対応する第2端子125に接続される。赤外線センサ100は、複数のバンプ130によって、検出基板110と読み出し基板120がフリップチップ接続された構造を有する。
【0017】
第1基板111は、ヒ化ガリウム(GaAs)等の化合物半導体を材料とする基板である。第1基板111には、複数の赤外線検出素子113が格子状に形成される。図1には、赤外線センサ100を構成する複数の赤外線検出素子113の中心の位置(格子点とも呼ぶ)を結んだ格子(一点鎖線)を示す。なお、第1基板111は、赤外線検出素子113を形成できれば、GaAs以外の材料の基板であってもよい。例えば、第1基板111は、窒化ガリウム(GaN)やリン化インジウム(InP)などの化合物半導体を材料とする基板であってもよい。第1基板111は、複数のバンプ130を介して、第2基板121とフリップチップ接続される。赤外線の受光ロスを防ぐために、第1基板111は、できる限り薄く研磨されることが好ましい。そのため、第1基板111は、第2基板121と比べて機械的な強度が小さい。
【0018】
複数の赤外線検出素子113は、複数の画素を構成する。複数の赤外線検出素子113の各々は、受光した赤外線を電気信号に変換する。複数の赤外線検出素子113の各々によって変換された電気信号は、バンプ130を介して、読み出し基板120の読み出し回路123に読み出される。
【0019】
複数の第1端子115の各々は、複数の赤外線検出素子113のうちいずれかに対応付けて配置される。例えば、複数の第1端子115の各々は、表面に金(Au)がめっきされた銅(Cu)などの導電性のよい金属を主成分とする。複数の第1端子115の各々は、バンプ130に接続される。複数の第1端子115の各々は、バンプ130を介して、対応する第2端子125に電気的に接続される。
【0020】
本実施形態においては、複数の赤外線検出素子113が、m行×n列の格子を構成する例を示す(m、nは自然数の偶数)。図2には、mとnが偶数の例を示すが、mとnは奇数であってもよい。例えば、複数の赤外線検出素子113は、256×320や480×640の画素を構成する。例えば、1画素の赤外線検出素子113を30マイクロメートル程度の四角形とすれば、256×320の画素の赤外線センサ100の大きさは1センチメートル角程度になる。なお、複数の赤外線検出素子113が構成する画素数は、256×320や480×640以外であってもよい。通常、赤外線センサ100の周辺部分には、接地用の電極が配置される。例えば、赤外線検出素子113に対応付けられていない最外周の格子点のバンプ130をずらして配置し、赤外線検出素子113に対応付けられたバンプ130を通常の配置にしてもよい。
【0021】
第2基板121は、シリコン(Si)を材料とする基板である。そのため、第2基板121は、第1基板111とは熱膨張率が異なる。第2基板121には、読み出し回路123が形成される。なお、第2基板121は、読み出し回路123を形成できれば、Si以外の材料の基板であってもよい。
【0022】
読み出し回路123は、検出基板110に形成された複数の赤外線検出素子113の各々によって受光される赤外線を検出するための回路である。例えば、読み出し回路123は、シリコンウェハに形成されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路によって実現される。読み出し回路123は、複数の赤外線検出素子113の各々から電気信号を読み出す。数の赤外線検出素子113の各々から読み出し回路123によって複読み出された電気信号は、画像データに変換される。
【0023】
複数の第2端子125の各々は、複数の第1端子のうちいずれかに対応付けられて配置される。例えば、複数の第2端子125の各々は、表面に金(Au)がめっきされた銅(Cu)などの導電性のよい金属を主成分とする。複数の第2端子125の各々は、バンプ130に接続される。複数の第2端子125の各々は、バンプ130を介して、対応する第1端子115に電気的に接続される。
【0024】
複数のバンプ130の各々は、複数の赤外線検出素子113のうちいずれかに対応付けられて配置される。複数のバンプ130の各々は、複数の赤外線検出素子113の各々に対応付けられた第1端子115と、その第1端子115に対応付けられた第2端子125とを一対一で電気的に接続する。複数のバンプ130の形状や大きさは、均一であることが好ましい。通常、複数のバンプ130の形状や大きさは、製造上の誤差を含む。なお、複数のバンプ130の形状や大きさは、機械的/電気的な接続に問題がない程度に異なっていてもよい。例えば、バンプ130の配置は、赤外線センサ100を研磨してバンプを削り出したり、X線カメラによって赤外線センサ100を検査したりすることによって特定できる。
【0025】
バンプ130は、インジウム(In)などの低融点金属を主成分とする。バンプ130には、In以外の添加物が混ざっていてもよい。バンプ130の材質は、検出基板110と読み出し基板120をフリップチップ接続できれば、Inに限定されない。バンプ130がInのような柔らかい金属を主成分とすると、バンプ130が変形することによって、第1基板111と第2基板121との熱膨張率の違いによる応力が緩和される。例えば、バンプ130は、配置パターンが開口されたマスクを介して、めっきや電子銃蒸着によって第1端子115または第2端子125の表面に形成される。バンプ130は、第1端子115または第2端子125の表面への形成時は円柱状であり、ウェットバックによって溶融させて球状に成形される。
【0026】
検出基板110と読み出し基板120がフリップチップ接続されると、複数のバンプ130の間には隙間が形成される。なお、バンプ130は、読み出し基板120の第2端子125の表面に形成されてもよい。また、バンプ130は、検出基板110の第1端子115の表面に形成されたバンプと、読み出し基板120の第2端子125の表面に形成されたバンプが溶融して合一化されたものであってもよい。
【0027】
通常、複数のバンプ130によって形成される隙間には、熱硬化性樹脂がアンダーフィルとして充填される。隣接し合うバンプ130間には、アンダーフィルを流しやすくするために、側面方向から見て、縦と横の比が1:1の空隙が形成される。例えば、アンダーフィルは、複数のバンプ130の間の空隙に真空状態で流し込まれる。なお、本実施形態においては、説明を簡略化するためにアンダーフィルを図示しない。
【0028】
複数のバンプ130のうち少なくとも一つの行および列をなすバンプ130は、複数の赤外線検出素子113によって形成される格子の格子点から、中心をずらして配置される。格子点から中心をずらして配置されるバンプ130は、製造プロセス上において上面視で最大の幅になるときに、隣接するバンプ130に接触しないように配置される。格子点から中心をずらして配置されるバンプ130は、隣接し合う第1端子115および第2端子125の間の隙間に端部が位置するように配置される。格子点から中心をずらして配置されるバンプ130は、隣接する格子点に対応付けられた第1端子115、第2端子125、およびバンプ130と電気的に接触しない位置に配置される。
【0029】
例えば、バンプ130は、赤外線検出素子113の画素のピッチサイズの10%以上50%以内の範囲内で、画素の中心からずらされて配置される。画素の中心からのずれが10%未満だと、バンプ130の間の隙間に印加される応力を緩和する効果が小さい。画素の中心からのずれが50%を超えると、第1基板111または第2基板121の内部の配線を形成しにくくなる。また、画素の中心からのずれが50%を超えると、隣接し合うバンプ130同士が接触しやすくなる。
【0030】
図1の例の場合、4行目および4列目のバンプ130が、格子点から中心をずらして配置される。4行目および4列目のバンプ130は、隣接し合う第1端子115(第2端子125)の間の隙間に一端が位置する。図1のように複数のバンプ130を配置すれば、全ての行および列に関して、複数の赤外線検出素子113に対応付けられたいずれかの電極(第1端子115/第2端子125)の間の隙間の線上に、いずれかのバンプ130の端部が位置することになる。例えば、4行目の電極と5行目の電極の間の隙間の線A上には、5行目4列目のバンプ130が位置する。例えば、3列目の電極と4列目の電極の間の隙間の線B上には、4行目4列目のバンプ130が位置する。
【0031】
第1基板111において、複数の第1端子115の間の隙間の位置は、バンプ130によって補強される第1端子115が形成された位置と比べて機械的強度が小さい。そのため、複数の第1端子115の間の隙間の位置に何もないと、赤外線センサ100が冷却された際に発生する反りに起因する応力が、その隙間にそのまま印加されて一直線に割れが発生する場合もありうる。複数の電極間の隙間の線上に少なくともいずれかのバンプ130が位置すれば、赤外線センサ100が冷却された際に発生する反りに起因する応力が、その隙間に配置されたバンプ130によって緩和される。その結果、第1基板111は、複数の赤外線検出素子113によって構成される格子の行方向および列方向に沿って変形しにくくなる。そのため、複数の電極間の隙間にかかる応力が緩和され、読み出し基板120と比べて相対的に強度の小さい検出基板110に反りやクラックが発生しにくくなる。
【0032】
〔関連技術〕
次に、関連技術の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。関連技術の赤外線センサは、複数の赤外線検出素子113によって形成される格子の格子点の位置に複数のバンプが配置される。図5および図6は、関連技術の赤外線センサ500の一例について説明するための概念図である。図5は、赤外線センサ500の平面図である。図6は、図5の赤外線センサ100の下側面を見た際の側面図である。
【0033】
赤外線センサ500は、検出基板510、読み出し基板520、および複数のバンプ530を備える。検出基板510は、第1基板511、複数の赤外線検出素子513、および複数の第1端子515を有する。読み出し基板520は、第2基板521、読み出し回路523、および複数の第2端子525を有する。複数の第1端子515の各々は、複数の第2端子525のいずれかに対応付けられる。複数の第1端子515の各々は、バンプ530を介して、対応する第2端子525に接続される。赤外線センサ500は、複数のバンプ530によって、検出基板510と読み出し基板520がフリップチップ接続された構造を有する。
【0034】
第1基板511において、複数の第1端子515の間の隙間の位置は、第1端子515が形成された位置と比べて機械的強度が小さい。そのため、複数の第1端子515の間の隙間の位置には、赤外線センサ500が冷却された際に発生する反りに起因する応力がそのまま印加される。その結果、複数の電極間の隙間にかかる応力に起因して、読み出し基板520と比べて相対的に強度の小さい検出基板510には、反りやクラックが発生しやすい。
【0035】
〔変形例1〕
次に、変形例1の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。本変形例の赤外線センサは、複数のバンプ130の全てをずらして配置させる例である。図7および図8は、本変形例の赤外線センサ100-1の一例について説明するための概念図である。図7は、検出基板110を取り外した際の平面図である。図8は、図7の赤外線センサ100-1の下側面を見た際の側面図である。
【0036】
本変形例では、奇数行目のバンプ130を電極(第2端子125)の右上方向にずらし、偶数行目のバンプ130を電極(第2端子125)の左上方向にずらす。なお、本変形例は一例であって、バンプ130をずらす方向や位置等には、特に限定を加えない。本変形例では、規則性を持たせてバンプ130をずらすが、バンプ130はランダムにずらしてもよい。
【0037】
本変形例では、隣接し合う行および列に属する複数のバンプ130を互いに逆向きにずらす。そのため、本変形例の赤外線センサ100-1の複数のバンプ130は、電極間の全ての隙間にバンプ130が位置する。例えば、4行目の電極と5行目の電極の間の隙間の線A上には、5行目の全てのバンプ130が位置する。例えば、3列目の電極と4列目の電極の間の隙間の線B上には、3列目および4列目の全てのバンプ130が位置する。図1図4の赤外線センサ100と比べて、本変形例の赤外線センサ100-1の方が、電極間の隙間に位置するバンプ130の数が多い。そのため、本変形例の赤外線センサ100-1によれば、図1図4の赤外線センサ100よりも、赤外線センサ100の行方向および列方向に沿って変形しにくくなる。
【0038】
〔変形例2〕
次に、変形例2の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。本変形例の赤外線センサは、複数のバンプ130の全てを行方向にずらして配置させる例である。図9は、本変形例の赤外線センサの一例について説明するための概念図である。図9は、検出基板110を取り外した際の平面図である。
【0039】
本変形例では、奇数行目のバンプ130を電極(第2端子125)の右向き(+x)にずらし、偶数行目のバンプ130を電極(第2端子125)の左向き(-x)にずらす。なお、本変形例は一例であって、バンプ130をずらす方向や位置等には、特に限定を加えない。
【0040】
本変形例では、隣接し合う行に属する複数のバンプ130を、行方向(x方向)に沿って互いに逆向きにずらす。そのため、本変形例の赤外線センサにおいては、行方向(x方向)に隣接する電極間の全ての隙間にバンプ130が位置する。例えば、4行目の電極と5行目の電極の間の隙間の線A上にはバンプ130はない。その一方で、例えば、3列目の電極と4列目の電極の間の隙間の線B上には、3列目および4列目のいくつかのバンプ130が位置する。変形例1の赤外線センサ100-1と比べると、本変形例の赤外線センサの方が、電極間の隙間に位置するバンプ130の数が少ない。例えば、ラインセンサのように長手方向(第1方向とも呼ぶ)と短手方向(第2方向とも呼ぶ)の長さの比が大きい赤外線検出素子では、長手方向の反りが発生しやすい。そのため、長手方向と短手方向の長さに差がある場合、相対的に大きな応力が短手方向に沿って印加されやすく、短手方向に沿って割れやすくなる。そのような場合、長手方向に沿って並んだ電極の間の隙間にバンプ130の一部が位置するようにすれば、長手方向の反りが発生しにくくなる。
【0041】
〔変形例3〕
次に、変形例3の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。本変形例の赤外線センサは、少なくとも一部の電極(第1端子115、第2端子125)の形状を変形させる例である。図10は、本変形例の赤外線センサの一例について説明するための概念図である。図10は、検出基板110を取り外した際の平面図である。以下においては、変形された第2端子125に対応付けられた第1端子115も、対応付けられた第2端子125と同様に変形するものとする。
【0042】
本変形例では、偶数行目のバンプ130を右向き(+x)または左向き(-x)に大きくずらして配置するように、偶数行目の第2端子125を変形する。図10の例では、2行目の第2端子125の右辺は、半円が突出した形状に変形される。また、2行目の2~n列目の第2端子125の左辺は、左隣りの第2端子125から突出する半円を避けて欠けた形状に変形される。また、4行目の第2端子125の左辺は、半円が突出した形状に変形される。また、4行目の1~n-1列目の第2端子125の右辺は、右隣りの第2端子125から突出する半円を避けて欠けた形状に変形される。バンプ130は、突出する半円上に配置される。なお、本変形例は一例であって、第2端子125の形状や、バンプ130を配置する位置等には、特に限定を加えない。また、偶数行目のみならず、奇数行目の第2端子125を変形させてもよい。また、行方向のみならず、列方向に沿って第2端子125を変形させてもよい。
【0043】
本変形例では、電極を変形させることによって、電極間の隙間の線上に電極の一部が位置する。そして、電極間の隙間の線上に位置する電極上にバンプを配置する。そのため、本変形例の赤外線センサの複数のバンプ130は、電極間の隙間に電極およびバンプ130が位置する。例えば、3列目の電極と4列目の電極の間の隙間の線B上には、2行目3列目、4行目4列目、およびn行目3列目の第2端子125およびバンプ130が位置する。変形例1や2と比べると、本変形例の方が、電極間の隙間に電極およびバンプが位置する分だけ、電極間の隙間に沿った変形が起こりにくい。
【0044】
以上のように、本実施形態の赤外線センサは、検出基板、読み出し基板、および複数のバンプを備える。検出基板は、複数の赤外線検出素子が格子状に配置され、赤外線検出素子の各々に対応付けられた第1端子が複数配置された第1基板を含む。読み出し基板は、複数の第1端子の各々に対応付けられた第2端子が複数配置され、複数の赤外線検出素子の各々によって検出される赤外線に基づく電気信号を読み出す読み出し回路が形成された第2基板を含む。複数のバンプは、複数の第1端子の各々と、複数の第1端子の各々に対応付けられた複数の第2端子とを電気的に接続する。複数の第1端子、複数の第2端子、および複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部が、上面視において、隣接し合う赤外線検出素子の間の位置に配置される。
【0045】
本実施形態においては、上面視において、隣接し合う赤外線検出素子の間の位置に、複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部が配置される。そのため、本実施形態によれば、赤外線検出素子が形成された基板の反りを低減できる。
【0046】
本実施形態の一態様において、複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部が、複数の第1端子と複数の第2端子の間に形成される隙間の位置に配置される。例えば、複数のバンプのうち少なくともいずれかは、複数の赤外線センサのピッチサイズの10パーセント以上50パーセント以下の範囲内で、複数の赤外線センサの中心からずらして配置される。例えば、第1基板および第2基板が長方形であり、複数のバンプのうち少なくともいずれかは、第1基板および第2基板の長手方向に沿ってずらして配置される。例えば、複数のバンプの全てが、複数の第1端子と複数の第2端子の間に形成される隙間の位置に配置される。例えば、複数の第1端子および複数の第2端子が、複数のバンプのずれに合わせて変形されている。
【0047】
本態様によれば、複数の赤外線検出素子によって構成される格子の行方向および列方向に沿って変形しにくくなる。そのため、複数の電極間の隙間にかかる応力が緩和され、読み出し基板と比べて相対的に強度の小さい検出基板に反りやクラックが発生しにくくなる。
【0048】
通常、量子型赤外線検出器は、液体ヘリウム温度(4.2ケルビン)や液体窒素温度(77ケルビン)で使用される。そのため、量子型赤外線検出器の使用時において、フリップチップ接続された基板の熱膨張係数の違いに起因して、赤外線センサを構成するチップに反りが発生する。チップに反りが発生した場合、相対的に強度の弱い検出基板が割れやすい状態になる。検出基板の割れ(チップ割れとも呼ぶ)は、量子型赤外線検出器のオペラビリティの低下につながる。例えば、格子状に配列された複数の赤外線検出素子によって検出された赤外線を画像化する際には、各素子の感度ばらつきやバッドピクセルが補正される。チップ割れが発生すると、チップ割れに起因する筋が画像に表れる。チップ割れに起因する筋は、補正をかけても完全に消すことはできないため、画像の鮮明性を落とす要因となる。
【0049】
本実施形態では、複数のバンプの配列を、整った格子状からあえてずらすことによって、チップを横断するよう直線的に機械的強度が低い場所をなくし、チップ全体の機械的強度を上げる。その結果、チップ割れを防ぐことができ、オペラビリティが向上する。
【0050】
例えば、検出基板に用いられるGaAs基板は、割れやすい面方位を有する。GaAs基板は、結晶軸(面方位)の方向を示す直線の切れ込み(オリヒラとも呼ぶ)に対して平行/垂直な方向に割れやすい。例えば、結晶軸に対して斜め方向に沿って複数のバンプを関連技術のように配置した場合、画素の行列に沿った方向に対しては基板を割れにくくすることができる。しかし、そのような場合であっても、結晶軸に沿って基板が割れやすいことにはかわりない。本実施形態によれば、そのような場合であっても、チップ割れを防ぐことができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る赤外線センサについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の赤外線センサは、複数の赤外線検出素子に対応付けられた電極を、複数の赤外線検出素子の中心(格子点)からずらす点において、第1の実施形態とは異なる。
【0052】
図11図13は、本実施形態の赤外線センサ200の構造について説明するための概念図である。図11は、赤外線センサ200の平面図である。図12は、図11の赤外線センサ200の下側面を見た際の側面図である。図13は、後述する検出基板210を取り外した際の平面図である。図11においては、後述する検出基板210の電極(第1端子215)や、読み出し基板220の電極(第2端子225)、バンプ230の位置を破線で示す。図12および図13においては、理解しやすくするために、互いに隣接する行を構成する複数のバンプ230を異なるハッチングで示す。
【0053】
赤外線センサ200は、検出基板210、読み出し基板220、および複数のバンプ230を備える。検出基板210は、第1基板211、複数の赤外線検出素子213、および複数の第1端子215を有する。読み出し基板220は、第2基板221、読み出し回路223、および複数の第2端子225を有する。複数の第1端子215の各々は、複数の第2端子225のいずれかに対応付けられる。複数の第1端子215の各々は、バンプ230を介して、対応する第2端子225に接続される。赤外線センサ200は、複数のバンプ230によって、検出基板210と読み出し基板220がフリップチップ接続された構造を有する。赤外線センサ200は、第1基板211、第2基板221、およびバンプ130の配置以外は、第1の実施形態の赤外線センサ100と同様である。そのため、以下においては、赤外線センサ100と同様の箇所については説明を省略する。以下においては、電極(第1端子215、第2端子225)の配置に関して、主に図13(第2端子225)を用いて説明する。
【0054】
複数の第2端子225のうち少なくともいずれかは、上面視において、複数の赤外線検出素子213の間の線上に位置するように、複数の赤外線検出素子213の直下からずらして配置される。ずらして配置される第2端子225は、隣接する第2端子225と電気的に接触しない位置に配置される。例えば、第2基板221の表面に第2端子225を形成する際に用いられるマスクを変更すれば、第2端子225の配置を変更できるので、製造において新たなプロセスを追加しなくてもよい。第1端子215についても、第2端子225と同様に、マスクを変更すれば配置を変更できる。
【0055】
図13の例の場合、4行目の赤外線検出素子213と5行目の赤外線検出素子213の間のA上には、5行目1列目、5行目3列目、および5行目5列目の第2端子225の一部が位置する。また、3列目の赤外線検出素子213と4列目の赤外線検出素子213の間の線B上には、1行目3列目、2行目4列目、3行目3列目、4行目4列目、5行目3列目、およびm行目4列目の第2端子225の一部が位置する。
【0056】
赤外線センサ200においては、上面視において、全ての行および列に関して、複数の赤外線検出素子213の間に、少なくともいずれかの電極(第1端子215、第2端子225)が位置する。そのため、赤外線センサ200においては、複数の赤外線検出素子213の直下に複数の電極が整然と格子状に配列する場合と比較して、複数の赤外線検出素子213の間における機械的強度が高い。その結果、第1基板211は、複数の赤外線検出素子213によって構成される格子の行方向および列方向に沿って変形しにくくなる。そのため、複数の赤外線検出素子213の間にかかる応力が緩和され、読み出し基板220と比べて相対的に強度の小さい検出基板210に反りやクラックが発生しにくくなる。
【0057】
〔変形例4〕
次に、変形例4の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。本変形例の赤外線センサは、複数の電極(第1端子215、第2端子225)に加えて、複数のバンプ230をずらして配置させる例である。図14および図15は、本変形例の赤外線センサ200-4の一例について説明するための概念図である。図14は、検出基板210を取り外した際の平面図である。図15は、図14の赤外線センサ200-4の下側面を見た際の側面図である。
【0058】
本変形例では、奇数行目のバンプ230を電極(第2端子225)の右上方向にずらし、偶数行目のバンプ230を電極(第2端子225)の左上方向にずらす。なお、本変形例は一例であって、バンプ230をずらす方向や位置等には、特に限定を加えない。本変形例では、規則性を持たせてバンプ230をずらすが、バンプ230はランダムにずらしてもよい。
【0059】
本変形例では、隣接し合う行および列に属する複数のバンプ230を、行方向に沿って互いに逆向きにずらす。そのため、本変形例の赤外線センサ200-4の複数のバンプ230は、複数の赤外線検出素子213の間の線上にバンプ230が位置する。例えば、4行目の赤外線検出素子213と5行目の赤外線検出素子213の間の線A上には、5行目1列目、5行目3列目、および5行目5列目のバンプ230が位置する。例えば、3列目の赤外線検出素子213と4列目の赤外線検出素子213の間の線B上には、1行目3列目、2行目4列目、3行目3列目、4行目4列目、5行目3列目、およびm行目4列目のバンプ230が位置する。このように、本変形例の赤外線センサ200-4では、上面視において、複数の赤外線検出素子213の間の線上にバンプ230が位置する。そのため、図11図13の赤外線センサ200と比べて、本変形例の赤外線センサ200-4の方が、行方向および列方向に沿って変形しにくくなる。
【0060】
〔変形例5〕
次に、変形例5の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。本変形例の赤外線センサは、複数の電極(第1端子215、第2端子225)の形状を変形する例である。図16は、本変形例の赤外線センサの一例について説明するための概念図である。図16は、検出基板210を取り外した際の平面図である。本変形例の赤外線センサは、第2の実施形態の赤外線センサ200と同様の構成を有するが、一部の構成は図示せずに符号を転用する。
【0061】
本変形例では、角が丸められた複数の第2端子225-5のうち少なくともいずれかが、上面視において、複数の赤外線検出素子213の間の線上に位置するように、複数の赤外線検出素子213の直下からずらして配置される。図示しないものの、第1基板211に配置される複数の第1端子の角も、第2端子225-5と同様に丸められる。なお、第2端子225-5の角は、隣接する他の第2端子225-5と電気的に接触しないように変形されていれば、その形状に限定を加えない。
【0062】
本変形例の赤外線センサにおいては、角を丸めた分だけ、第2の実施形態の赤外線センサ200よりも電極(第1端子215、第2端子225)を大きくずらすことができる。例えば、第2の実施形態の赤外線センサ200においては、上面視において、4行目の赤外線検出素子213と5行目の赤外線検出素子213の間の線A上には、2列目、4列目、およびn列目のバンプ230を位置させることができなかった。一方、本変形例の赤外線センサにおいては、上面視において、4行目の赤外線検出素子213と5行目の赤外線検出素子213の間の線A上に、5行目1列目、4行目2列目、5行目3列目、4行目4列目、5行目5列目、および4行目n列目のバンプ230が位置する。このように、本変形例の赤外線センサでは、第2の実施形態よりも、電極を大きくずらすことができる。そのため、第2の実施形態の赤外線センサ200と比べて、本変形例の赤外線センサの方が、行方向および列方向に沿って変形しにくくなる。
【0063】
〔変形例6〕
次に、変形例6の赤外線センサについて一例を挙げて説明する。本変形例の赤外線センサは、複数の電極(第1端子215、第2端子225)の全てを行方向にずらして配置させる例である。図17は、本変形例の赤外線センサの一例について説明するための概念図である。図17は、検出基板210を取り外した際の平面図である。本変形例の赤外線センサは、第2の実施形態の赤外線センサ200と同様の構成を有するが、一部の構成は図示せずに符号を転用する。
【0064】
本変形例では、奇数行目の電極(第2端子225)を右向き(+x)にずらし、偶数行目の電極(第2端子225)を左向き(-x)にずらす。なお、本変形例は一例であって、電極(第2端子225)をずらす方向や位置等には、特に限定を加えない。また、図示しないものの、第1端子215も、第2端子225に対応させてずらす。
【0065】
本変形例では、隣接し合う行に属する複数の電極を、行方向(x方向)に沿って互いに逆向きにずらす。そのため、本変形例の赤外線センサにおいては、行方向(x方向)において隣接する赤外線検出素子213の間の全てに電極が位置する。例えば、上面視において、4行目の赤外線検出素子213と5行目の赤外線検出素子213の間の線A上には電極はない。その一方で、例えば、上面視において、3列目の電極と4列目の電極の間の線B上には、3列目および4列目のいずれかの電極が位置する。第2の実施形態の赤外線センサ200と比べると、本変形例の赤外線センサの方が、上面視において、複数の赤外線検出素子213の間に位置する電極の数が少ない。例えば、ラインセンサのように長手方向(第1方向とも呼ぶ)と短手方向(第2方向とも呼ぶ)の長さの比が大きい赤外線検出素子では、長手方向の反りが発生しやすい。そのため、長手方向と短手方向の長さに差がある場合、相対的に大きな応力が短手方向に沿って印加されやすく、短手方向に沿って割れやすくなる。そのような場合、上面視において、長手方向に沿って並んだ赤外線検出素子213の間に電極が位置するようにすれば、長手方向の反りが発生しにくくなる。
【0066】
以上のように、本実施形態の赤外線センサは、検出基板、読み出し基板、および複数のバンプを備える。検出基板は、複数の赤外線検出素子が格子状に配置され、赤外線検出素子の各々に対応付けられた第1端子が複数配置された第1基板を含む。読み出し基板は、複数の第1端子の各々に対応付けられた第2端子が複数配置され、複数の赤外線検出素子の各々によって検出される赤外線に基づく電気信号を読み出す読み出し回路が形成された第2基板を含む。複数のバンプは、複数の第1端子の各々と、複数の第1端子の各々に対応付けられた複数の第2端子とを電気的に接続する。複数の第1端子、複数の第2端子、および複数のバンプのうち少なくともいずれかの一部が、上面視において、隣接し合う赤外線検出素子の間の位置に配置される。
【0067】
本実施形態においては、上面視において、隣接し合う赤外線検出素子の間の位置に、複数の第1端子および複数の第2端子のうち少なくともいずれかの一部が配置される。そのため、本実施形態によれば、赤外線検出素子が形成された基板の反りを低減できる。
【0068】
本実施形態の一態様において、互いに対応付けられた複数の第1端子および複数の第2端子の組のうち少なくともいずれかの組が、上面視において、隣接し合う赤外線検出素子の間の位置に配置される。例えば、複数の第1端子および複数の第2端子の角は、隣接する複数の第1端子および複数の第2端子と電気的に接触しないように変形されている。例えば、第1基板および第2基板が長方形であり、互いに対応付けられた複数の第1端子および複数の第2端子の組のうち少なくともいずれかの組は、第1基板および第2基板の長手方向に沿ってずらして配置される。
【0069】
本態様によれば、第1基板は、複数の赤外線検出素子によって構成される格子の行方向および列方向のうち少なくともいずれかの方向に沿って変形しにくくなる。そのため、複数の赤外線検出素子の間にかかる応力が緩和され、読み出し基板と比べて相対的に強度の小さい検出基板に反りやクラックが発生しにくくなる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る撮像装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の撮像装置は、第1または第2の実施形態の赤外線センサを備える。図18は、本実施形態の撮像装置30の構成の一例を示す概念図である。撮像装置30は、赤外線センサ300、レンズ31、冷却器33、および制御器35を備える。
【0071】
赤外線センサ300は、第1の実施形態の赤外線センサ100および第2の実施形態の赤外線センサ200と同様の構成である。赤外線センサ300は、制御器35の制御に応じて、受光した赤外線に基づく電気信号を制御器35に出力する。制御器35に出力される電気信号は、赤外線センサ300に含まれる複数の赤外線受光素子による受光に応じた画像データに変換される。例えば、赤外線センサ300は、赤外線を透過する窓を有する封止部材によって真空封止される。例えば、封止部材に設けられる窓の部分には、後述するレンズ31と同様の材質のものを用いることができる。
【0072】
レンズ31は、検出対象の波長帯の赤外線を集束可能なレンズ330を含む。レンズ31は、検出対象の波長帯の赤外線を赤外線センサ300の受光面に集束させる。例えば、レンズ31には、ゲルマニウム(Ge)や、シリコン(Si)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、サファイヤ(Al23)等の材料のレンズ330を用いることができる。例えば、レンズ31には、フッ化バリウム(BaF2)やフッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)、カルコゲナイドガラス等の材料のレンズ330を用いることができる。レンズ31には、検出対象の波長帯の赤外線を集束可能なレンズ330を用いればよい。例えば、レンズ31は、オートフォーカス機能を搭載し、制御器35の制御に応じて、赤外線センサ300の受光面に焦点を合わせる。
【0073】
冷却器33は、赤外線センサ300を冷却する機器である。図18においては、赤外線センサ300と冷却器33を接触させている。量子型の赤外線センサでは、暗電流等による雑音の影響を除くため冷却器33が必要である。例えば、冷却器33は、60~250ケルビン程度の温度範囲内になるように赤外線センサ300を冷却する。例えば、冷却器33には、スターリング機構を有する冷却器、またはペルチエ効果を利用した電子冷却素子を用いる。例えば、冷却器33は、制御器35の制御に応じて、適切な温度になるように赤外線センサ300を冷却する。
【0074】
制御器35は、赤外線センサ300から出力される電気信号を取得し、赤外線センサ300に含まれる複数の赤外線受光素子の受光に応じた画像データを生成する。なお、制御器35は、レンズ31や冷却器33を制御してもよい。図19は、制御器35の構成の一例を示すブロック図である。制御器35は、撮像制御部351、画像処理プロセッサ352、内部メモリ353、および画像出力部354を有する。
【0075】
撮像制御部351は、赤外線センサ300を制御して撮影対象範囲を撮像させ、赤外線センサ300から出力される電気信号を取得する。撮像制御部351は、取得した電気信号を画像データに変換する。撮像制御部351は、変換後の画像データを画像処理プロセッサ352に出力する。なお、画像処理プロセッサ352が一度に処理しきれない場合、撮像制御部351は、変換後の画像データを内部メモリ353に一時的に保存してもよい。
【0076】
画像処理プロセッサ352は、赤外線センサ300から出力される電気信号に基づく画像データを撮像制御部351から取得する。画像処理プロセッサ352は、取得した画像データに対して、暗電流補正や補間演算、色空間変換、ガンマ補正、収差の補正、ノイズリダクション、画像圧縮などの処理を実行する集積回路である。画像処理プロセッサ352は、画像処理を加えた画像データを画像出力部354に出力する。
【0077】
内部メモリ353は、画像処理プロセッサ352が一度に処理しきれない画像情報や、処理済みの画像情報を一時的に格納する記憶素子である。なお、赤外線センサ300によって検出された電気信号を内部メモリ353に一時的に記憶するように構成してもよい。内部メモリ353は、一般的なメモリによって構成できる。
【0078】
画像出力部354は、画像処理プロセッサ352によって処理された画像データを出力する。画像出力部354が画像データを出力する出力先には特に限定を加えない。例えば、画像出力部354は、撮像装置30によって撮像された画像データを用いるシステム(図示しない)に画像データを出力する。例えば、画像出力部354は、撮像装置30に搭載された表示器(図示しない)に画像データを表示させる。例えば、画像出力部354は、撮像装置30に搭載された記憶装置(図示しない)に画像データを記憶させる。
【0079】
以上のように、本実施形態の撮像装置は、第1または第2の実施形態の赤外線センサと、赤外線センサの受光面に赤外線を集光するレンズと、赤外線センサを冷却する冷却器と、制御器と、を備える。制御器は、赤外線センサから出力される電気信号を取得し、赤外線センサに含まれる複数の赤外線受光素子の受光に応じた画像データを生成する。本実施形態によれば、赤外線検出素子が形成された検出基板に割れが発生しにくくので、鮮明な画像を安定して撮像できる。
【0080】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0081】
30 撮像装置
31 レンズ
33 冷却器
35 制御器
100、200、300 赤外線センサ
110、210 検出基板
111、211 第1基板
113、213 赤外線検出素子
115、215 第1端子
120、220 読み出し基板
121、221 第2基板
123、223 読み出し回路
125、225 第2端子
130、230 バンプ
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