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特許7694014ISAR画像データ学習装置、目標類別装置及びレーダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】ISAR画像データ学習装置、目標類別装置及びレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20250611BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250611BHJP
【FI】
G01S13/90 191
G01S13/90 164
G06T7/00 350B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020181323
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072084
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】大政 洋平
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 啓
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】野上 陽平
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/003586(WO,A1)
【文献】特開2000-131429(JP,A)
【文献】特開2005-003602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0057216(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286989(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95,
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測点に設置された逆合成開口レーダによって得られたISAR画像データから目標を類別するために学習結果を生成するISAR画像データ学習装置であって、
前記ISAR画像データが入力されるISAR画像入力部と、
前記目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力される相違情報入力部と、
前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データから前記目標を類別するように学習する学習部とを備え
前記積分時間は、前記目標の観測開始時刻から観測終了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が設定されるISAR画像データ学習装置。
【請求項2】
前記学習部は、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データと前記目標の種別とを関連付けて学習する請求項1に記載のISAR画像データ学習装置。
【請求項3】
前記目標の種別は、前記目標の名前、前記目標の寸法、前記目標の性能、前記目標の所属国、および前記目標の所属組織のうち少なくとも一つが含まれた情報である請求項2に記載のISAR画像データ学習装置。
【請求項4】
前記アスペクト角は、前記観測点の位置と移動体である前記目標の移動方向の情報とから算出される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のISAR画像データ学習装置。
【請求項5】
前記アスペクト角は、前記観測点の位置と前記目標を追尾して得られた前記移動方向の情報とから算出される請求項4に記載のISAR画像データ学習装置。
【請求項6】
前記波高の情報は、前記目標が存在する海域の波高に応じて設定された風浪階級の値である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のISAR画像データ学習装置。
【請求項7】
前記積分時間は、前記積分開始時刻から前記積分終了時刻までが、前記目標の動揺の周期の一往復に相当する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のISAR画像データ学習装置。
【請求項8】
観測点に設置された逆合成開口レーダによって得られたISAR画像データが入力されるISAR画像入力部と、目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力される相違情報入力部と、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データから前記目標を類別するように学習する学習部とを有し、前記積分時間は、前記目標の観測開始時刻から観測終了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が設定されるISAR画像データ学習装置と、
新たに得た新規ISAR画像データが入力される新規ISAR画像入力部と、
前記新規ISAR画像データに対応する前記相違情報が入力される新規相違情報入力部と、
前記学習部が学習した学習結果に基づいて、前記新規ISAR画像データから前記目標を類別する目標類別部とを備える目標類別装置。
【請求項9】
前記目標類別部は、前記ISAR画像データごとの前記相違情報から、類別に使用する前記学習結果の範囲を制限する請求項に記載の目標類別装置。
【請求項10】
前記目標類別部は、前記学習部が学習して前記相違情報ごとに生成した前記学習結果に基づいて、前記目標を類別して、前記目標に対応する種別を判定する請求項に記載の目標類別装置。
【請求項11】
前記目標類別部は、前記新規ISAR画像データに対応する前記相違情報が、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報と一致するものがない、又は、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報からの誤差が予め定められた範囲にないときは、最も近い時間の前記学習結果に基づいて、前記目標を類別する請求項から請求項10のいずれか1項に記載の目標類別装置。
【請求項12】
前記新規ISAR画像入力部は、前記目標が同一で前記相違情報が異なる複数の前記新規ISAR画像データが入力され、
前記目標類別部は、前記学習部が学習した前記学習結果に基づいて、複数の前記新規ISAR画像データごとに対応する前記目標を類別する請求項から請求項11のいずれか1項に記載の目標類別装置。
【請求項13】
前記目標類別部は、複数の前記新規ISAR画像データごとに対応する前記目標を類別した結果が全て一致する場合は、前記目標に対応する種別を判定する請求項12に記載の目標類別装置。
【請求項14】
前記目標類別部は、複数の前記新規ISAR画像データごとに対応する前記目標を類別した結果に一致しないものが含まれており、一致するものの数に対して一致しないものの数が少ない場合は、一致するものを類別した結果として、前記目標に対応する種別を判定する請求項13に記載の目標類別装置。
【請求項15】
観測点に設置された逆合成開口レーダによって得られたISAR画像データが入力されるISAR画像入力部と、目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力される相違情報入力部と、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データから前記目標を類別するように学習する学習部とを有し、前記積分時間は、前記目標の観測開始時刻から観測終了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が設定されるISAR画像データ学習装置と、
新たに得た新規ISAR画像データが入力される新規ISAR画像入力部と、前記新規ISAR画像データに対応する前記相違情報が入力される新規相違情報入力部と、前記学習部が学習した学習結果に基づいて、前記新規ISAR画像データから前記目標を類別する目標類別部とを有する目標類別装置と、
前記目標を追尾する追尾装置と、
前記新規ISAR画像データを取得するために、前記追尾装置にて追尾した前記目標へ送信ビームを送信する前記逆合成開口レーダとを備えるレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ISAR画像データを学習するISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)は、レーダエコーから作成されるISAR画像を用いて目標識別を行う処理に利用されている。例えば、ISARにより捕捉された目標と予めデータベースに記憶されている目標形状モデルとを模擬、照合する手法、ISAR画像及び目標形状モデルの双方からそれぞれ複数の特徴点を抽出する手法がある。
【0003】
目標を類別するために画像データを得るセンサ装置としては、カメラや望遠鏡などの撮像素子を有する撮像装置(例えば、特許文献1参照)や、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)及び先に説明した逆合成開口レーダなどのレーダ装置(例えば、特許文献2参照)がある。
【0004】
特許文献1に開示される撮像装置である望遠鏡おいて、衛星を観測する観測装置が、画像から衛星の位置などから衛星の識別する機能が設けられている。この望遠鏡は、移動体の放射光又は反射光の輝度が小さい時間帯においても、移動体を識別することを特徴としている。ISAR画像から目標の識別する際に、目標モデルデータベースから選出された目標モデルと、実観測時に得られるシーステート等の環境条件と、レーダ諸元などの観測条件とに基づいて、疑似ISAR画像を生成するものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
従来、目標類別装置には、ISAR画像から目標の識別を常に精度良く行うために、ISAR画像から目標の全長と構造物の大きさとを抽出し、それらに基づいて目標の識別を行うものがある(例えば、特許文献4参照)。また、目標類別装置には、識別目標の回転運動による姿勢変化をパラメータとして、識別目標の三次元モデルから疑似ISAR画像を生成するものがある(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
さらに、ISAR画像の類別において、観測諸元パラメータの離散的分布の影響を補い、適合度の高いフィルタを生成して、高精度な種類判定を行うものがある(例えば、特許文献6参照)。一方、ISAR画像の類別などに使用するために、AI(Artificial Intelligence)などを使った機械学習による学習モデルを作成するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
なお、従来からISAR画像を時間で積分した上で抽出処理を行う手法がある(例えば、特許文献7参照)。ISAR画像を時間で積分すると、その積分時間に応じて複数枚の画像が重畳されることになるので、見た目の不鮮明さが改善される効果がある。特許文献7では、ISAR画像の積分時間に応じて複数枚の画像が重畳されることによる見た目の不鮮明さの改善よりも、全体の形状がぼやけてしまうことを嫌って、積分することなく1枚のISAR画像を用いて目標を特定する手法が開示されている。
【0008】
もちろん、全体の形状がぼやけてしまうことを避けるため、適切な積分時間(観測時間)を設定することが行われている(例えば、特許文献8参照)。通常、長時間観測すれば、積分効果により微弱信号を積上げることができるが、ISAR画像の場合は、適切な積分時間(観測時間)を超える長時間観測とすると、目標の各反射点の運動が複雑なものとなり、積分時間(観測時間)内で速度の変化が大きくなる。そのため、ドップラの広がりが大きくなり、画像にぼけが生じるので適切な観測時間を設定する必要がある。適切な観測時間は、ISARと目標との相対運動に依存して決められるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-72888号公報
【文献】WO2020-3586
【文献】特開2006-214755号公報
【文献】特開2001-221857号公報
【文献】特開2004-93166号公報
【文献】特開2012-127920号公報
【文献】特開2016-57164号公報
【文献】特開2009-162611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献6に開示されるような従来の機械学習は、類別するために使用する学習結果の範囲を制限する学習モデルが検討されていないという課題があった。なお、特許文献1に開示される手法は、制限のためアスペクト角を学習モデルに使用することを示唆していない。また、特許文献3に開示される手法は、制限のためシーステートを学習モデルに使用することを示唆していない。さらに、特許文献7及び8に開示される手法は、制限のため積分時間を学習モデルに使用することを示唆していない。
【0011】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、類別するために使用する学習結果の範囲を制限できるように、学習結果を生成するISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係るISAR画像データ学習装置は、観測点に設置された逆合成開口レーダによって得られたISAR画像データから目標を類別するために学習結果を生成するISAR画像データ学習装置であって、前記ISAR画像データが入力されるISAR画像入力部と、前記目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力される相違情報入力部と、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データから前記目標を類別するように学習する学習部とを備え、前記積分時間は、前記目標の観測開始時刻から観測終了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が設定されるものである。
【0013】
本開示に係る目標類別装置は、観測点に設置された逆合成開口レーダによって得られたISAR画像データが入力されるISAR画像入力部と、目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力される相違情報入力部と、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データから前記目標を類別するように学習する学習部とを有し、前記積分時間は、前記目標の観測開始時刻から観測終了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が設定されるISAR画像データ学習装置と、新たに得た前記新規ISAR画像データが入力される新規ISAR画像入力部と、前記新規ISAR画像データに対応する前記相違情報が入力される新規相違情報入力部と、前記学習部が学習した学習結果に基づいて、前記新規ISAR画像データから前記目標を類別する目標類別部とを備えるものである。
【0014】
本開示に係るレーダ装置は、観測点に設置された逆合成開口レーダによって得られたISAR画像データが入力されるISAR画像入力部と、目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力される相違情報入力部と、前記相違情報入力部に入力された前記相違情報に対応する前記ISAR画像データから目標を類別するように学習する学習部とを有し、前記積分時間は、前記目標の観測開始時刻から観測終了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が設定されるISAR画像データ学習装置と、新たに得た前記新規ISAR画像データが入力される新規ISAR画像入力部と、前記新規ISAR画像データに対応する前記相違情報が入力される新規相違情報入力部と、前記学習部が学習した学習結果に基づいて、前記新規ISAR画像データから前記目標を類別する目標類別部とを有する目標類別装置と、前記目標を追尾する追尾装置と、前記新規ISAR画像データを取得するために、前記追尾装置にて追尾した前記目標へ送信ビームを送信する前記逆合成開口レーダとを備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、目標に対する前記逆合成開口レーダの送信ビームの角度であるアスペクト角、前記目標が存在する海域の波高の情報、および前記ISAR画像データを導出した積分時間のうち、少なくとも二つが相違情報として入力されることで、類別するために使用する学習結果の範囲を制限することができるISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置の機能ブロック図である。
図2】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置の動作(ISAR画像データ学習方法)を説明するフローチャートである。
図3】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置の機能ブロック図である(ISAR画像生成部13付き)。
図4】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。
図5】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置に入力されるISAR画像データ(実施の形態1に係る目標類別装置に入力される新規のISAR画像データ)を取得するための実施の形態1に係るレーダ装置、その走査範囲、目標を示す例示図である。
図6】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。
図7】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置に入力されるISAR画像データ(実施の形態1に係る目標類別装置に入力される新規のISAR画像データ)を取得するための実施の形態1に係るレーダ装置、その走査範囲、目標を示す例示図である。
図8】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。
図9】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。
図10】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。
図11】実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置及び目標類別装置の動作(目標類別方法)を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置(実施の形態1に係る目標類別装置、実施の形態1に係るレーダ装置)について、図1から図11を用いて説明する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示し、それらについての詳細な説明は省略する。ISARは、前述の通り、Inverse Synthetic Aperture Radarの略であり、逆合成開口レーダのことである。
【0018】
観測対象である目標1は、例えば、船舶や航空機などの移動体である。目標1の機体は、線状構造であるものが好ましい。つまり、目標1に対して相対的な観測点が変わったときに、目標1の形状が変わるようなものが好ましい。なお、線状構造であれば、側方から観察した場合と、前方又は後方から観察した場合は、形状が異なることは容易に理解できる。また、観測点自体が移動してもよいし、目標1が移動してもよい。本願では、複数の種別の目標1が存在することを前提にして学習するものである。よって、学習の量が進むにつれ、後述する新規のISAR画像データ撮影が未知の目標1のものの場合も、類似する種別の有無の判定や、類似のものがないという判定もすることができる。
【0019】
図1及び図3において、ISAR画像データ学習装置2は、観測点に設置された逆合成開口レーダ12によって得られたISAR画像データから対応する目標1を類別して目標1に対応する種別を判定するときに、同じ目標1で異なるISAR画像データを学習していき、目標1を類別するために使用する学習結果の範囲を制限できるように、学習結果を生成する(実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置)。ISAR画像入力部3は、目標1ごとにISAR画像データが入力されるものである。相違情報入力部4は、ISAR画像入力部3に入力されたISAR画像データごとの相違情報が入力されるものである。学習部5は、相違情報入力部4に入力された相違情報に対応するISAR画像データと、目標1の種別とを関連付けて学習するものである。目標1の種別の情報は、ISAR画像データに付与しておけばよい。また、学習部5は、相違情報ごと学習結果に生成してもよい。
【0020】
好適には、相違情報入力部4は、入力される相違情報が、アスペクト角、波高の情報、積分時間(観測時間)の三つのうち、いずれか二つ以上である。さらに、詳しくは、相違情報入力部4は、入力される相違情報のうち、アスペクト角は、目標1に対する逆合成開口レーダ12の送信ビームの角度であり、波高の情報は、目標1が存在する海域の波の高さの情報であり、積分時間は、ISAR画像データを積分によって導出した時間である。相違情報としての積分時間(観測時間)に応じて、複数枚のISAR画像が重畳されてISAR画像データが構成されるため、同じ目標1のISAR画像データでも得るために積分した時間が変わると、ISAR画像データが変わることになる。
【0021】
相違情報としてのアスペクト角は、目標1の機体が線状構造である場合、目標1の線状構造に対する逆合成開口レーダ12の送信ビームの角度であるといえる。また、アスペクト角は、観測点からISAR12の送信ビーム方向と、観測点のISAR12に対して相対的な目標1の移動方向とが成す角度ともいえる。いずれの場合でも、アスペクト角は、方位角及び仰角で構成されているものである。方位角方向の角度を固定(又は値なしに)して、アスペクト角が仰角だけの情報としてもよいし、仰角方向の角度を固定(又は値なしに)して、アスペクト角が方位角だけの情報としてもよい。相違情報としての波高の情報は、波高に応じて設定された階級の値である。波高に応じて設定された階級の値は、例えば、波高を0~9の10階級に区分した風浪階級(SEA STATE)の値である。
【0022】
前述のように、相違情報入力部4は、観測点の位置と、移動体である目標1の移動方向の情報とから算出されたアスペクト角が、相違情報として入力されるものである。また、相違情報入力部4は、観測点の位置と、目標1を追尾して得られた移動方向の情報とから算出されたアスペクト角が、相違情報として入力されるものである。さらに、相違情報入力部4は、波高の情報として波高に応じて設定された階級の値が、相違情報として入力されるものである。
【0023】
また、相違情報としての積分時間と観測時間とを等価に説明してきたが、厳密には異なる扱いをすることが可能である。ここで、積分時間は、積分開始時刻と積分終了時刻とで区切られた時間である。同じく、観測時間は、観測開始時刻と観測終了時刻とで区切られた時間である。例えば、相違情報入力部4には、同じ目標1のISAR画像データであって、目標1の観測開始時刻から観測修了時刻までの間に、積分開始時刻と積分終了時刻が入る積分時間が入力されておればよい。もちろん、積分時間が同じでも、目標1の観測開始時刻から観測修了時刻までの時間が異なるものでよい。これに含まれる例で、積分時間が異なっても、相違情報入力部4は、積分開始時刻が同じ積分時間が入力されてもよい。同じく、相違情報入力部4は、積分開始時刻が異なる積分時間が入力されてもよい。
【0024】
さらに、相違情報入力部4は、積分開始時刻が同じで、目標1の動揺の周期が一往復するまでの時間に積分終了時間が来る積分時間が、相違情報として入力されてもよい。次に、相違情報入力部4は、積分開始時刻から積分終了時刻までが、同じ目標1の動揺の周期の一往復に相当する、積分時間が、相違情報として入力されてもよい。もちろん、ISAR画像入力部は3、同じ目標1のISAR画像データであって、積分時間が異なるものが、相違情報として入力されてもよい。
【0025】
目標1の種別としては、目標1の機種名、機体の寸法、機体の性能、機体の所属国・所属組織の少なくとも一つが含まれた情報であればよい。また、同じ目標1の種別であっても、ISAR画像データごとの相違情報が異なれば、ISAR画像データが異なる。すなわち、ISAR画像入力部3に入力されるISAR画像データは、同じ目標1であっても、相違情報入力部4に入力される相違情報が異なる場合があるということになる。ISAR画像データは、実際にISAR12で取得したものでなく模擬用のデータであってもよい。相違情報であるアスペクト角、波高の情報、積分時間(観測時間)は、実際に取得したものでなく模擬用のデータであってもよい。
【0026】
図1(A)は、観測点から目標1までの距離の情報は、学習部5が学習する対象にしていないISAR画像データ学習装置2を示している。一方、図1(B)は、観測点から目標1までの距離の情報は、学習部5が学習する対象にしているISAR画像データ学習装置2を示している。学習部5で学習させる距離の情報の入力は、図1(B)に示すように、ISAR画像入力部3経由でも、相違情報入力部4経由でもよい。つまり、ISAR画像入力部3は、観測点から目標1までの距離の情報と関連付けられたISAR画像データが入力されるものとしてもよい。また、相違情報入力部4は、観測点から目標1までの距離の情報と関連付けられた相違情報が入力されるものとしてもよい。観測点から目標1までの距離の情報があれば、学習部5は、距離の情報から、ISAR画像データを所定の縮尺で学習することが可能である。
【0027】
図3は、ISAR画像入力部3及び相違情報入力部4が、それぞれISAR画像生成部13から出力されたISAR画像データ及び積分時間が入力される場合を図示している。すなわち、相違情報入力部4に相違情報として、積分時間が入力される場合についての付加的な説明である。図3(A)が図1(A)に対応し、図3(B)が図1(B)に対応している。つまり、図3(A)は、観測点から目標1までの距離の情報は、学習部5が学習する対象にしていないISAR画像データ学習装置2を示している。図3(B)は、観測点から目標1までの距離の情報は、学習部5が学習する対象にしているISAR画像データ学習装置2を示している。なお、ISAR画像データ学習装置2は、ISAR画像生成部13を備えていてもよいし、ISAR画像生成部13を外部に設けていてもよい。
【0028】
目標1を観測する観測点には、レーダ装置10(追尾レーダ11、ISAR12)が設置されている。観測点が移動してもよい。つまり、レーダ装置10は、船舶や航空機などの移動体に搭載されたものであってもよい。走査範囲は、観測点を中心としたレーダ装置10(追尾レーダ11、ISAR12)から走査可能な範囲である。レーダ装置10は、方位角方向に360度の走査ができるものをなどが考えられる。観測点(レーダ装置10)は、それ自体が移動する船舶や航空機を想定しているが、観測点は固定点でもよい。
【0029】
同じ目標1の種別であっても、ISAR画像データを取得したアスペクト角が異なれば、ISAR画像データに表される目標1の形状が異なる。目標1が前述の線状構造であれば、これが顕著である。すなわち、ISAR画像入力部3に入力されるISAR画像データは、同じ目標1であっても、相違情報入力部4に入力される相違情報としてのアスペクト角が異なる場合があるということになる。ISAR画像データは、実際にISAR12で取得したものでなく模擬用のデータであってもよい。アスペクト角は、実際に追尾レーダ11(後述)で取得したものでなく模擬用のデータであってもよい。なお、目標1は線状構造が好適としたが、目標1は、アスペクト角が異なると、ISAR画像データに表される目標1の形状が異なるものと定義してもよい。また、同じ目標1でも、ISAR画像データに表される目標1の形状が異なるようになるアスペクト角のものを選抜して学習するとしてもよい。
【0030】
同じく、同じ目標1の種別であっても、相違情報入力部4に入力される相違情報としての波高の情報が異なる場合があるということになる。例えば、目標1が存在する海域の波高が高くなると、目標1の揺れが大きくなり、目標1の単位時間当たりの移動量が大きくなる。よって、目標1の速度が大きくなり、目標1のレーダエコーに含まれるドップラー周波数が高くなる。ISAR画像データは、目標1のレーダエコーに含まれるドップラー周波数に基づいて生成されている。そのため、目標1が存在する海域の波高が高い場合と低い場合とでは、生成されるISAR画像データに表される目標1の形状が異なる。つまり、同じ目標1の種別であっても、存在する海域の波高が異なる場合は生成されるISAR画像データに表される目標1の形状が異なる。特に、目標1において、水面からの距離が遠いマストなどの部分では、水面付近の部分と比較して、波による揺れが大きくなるのでドップラー周波数の変化が顕著である。
【0031】
次に、図2を用いて実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置の動作(実施の形態1に係るISAR画像データ学習方法)を説明する。図2において、ステップ1は、ISAR画像入力部3に、目標1ごとにISAR画像データが入力される処理ステップである。ステップ2は、相違情報入力部4に、ISAR画像入力部3に入力されたISAR画像データごとの相違情報が入力される処理ステップである。ステップ1及びステップ2は、処理の順序は問わない。同時でもよい。ステップ3は、ISAR画像データと相違情報とに基づいて、学習部5に類別(判定)の根拠となる、相違情報入力部4に入力された相違情報に対応するISAR画像データと、目標1の種別とを関連付けて学習させる処理ステップである。目標1の種別の情報は、ステップ1を行う際に、ISAR画像データに付与しておけばよい。
【0032】
図4、後述の図6図8図9図10において、好適には、新規相違情報入力部8に入力される新規の相違情報は、アスペクト角、波高の情報、積分時間(観測時間)の三つのうち、いずれか二つ以上である。さらに、詳しくは、新規相違情報入力部8は、入力される新規の相違情報のうち、アスペクト角は、目標1に対する逆合成開口レーダ12の送信ビームの角度であり、波高の情報は、目標1が存在する海域の波の高さの情報であり、積分時間は、新規のISAR画像データを積分によって導出した時間である。相違情報としての積分時間(観測時間)に応じて、複数枚の新規のISAR画像が重畳されて新規のISAR画像データが構成されるため、同じ目標1の新規のISAR画像データでも得るために積分した時間が変わると、新規のISAR画像データが変わることになる。
【0033】
図4において、目標類別装置6は、図1及び図4に示すISAR画像データ学習装置2の学習結果(学習モデル)を用いたものである(実施の形態1に係る目標類別装置)。相違情報及び新規の相違情報として積分時間を利用する場合に好適な構成である。後述の図6図8図9図10に示す目標類別装置6と併用すれば、相違情報及び新規の相違情報としてアスペクト角又はシーステートの少なくとも一方を利用することができる。
【0034】
図4において、新規ISAR画像入力部7は、新たに得たISAR画像データが入力されるものである。新規相違情報入力部8は、新規ISAR画像入力部7に入力された新たに得たISAR画像データごとの積分時間が相違情報として入力されるものである。ここでいう新規のISAR画像データ(新たに得たISAR画像データ)、新規の積分時間(新たに得た積分時間)は、後述するレーダ装置10(実施の形態1に係るレーダ装置)や、後段の回路の演算で取得すればよい。後段の回路の演算とは、例えば、ISAR画像生成部13を新規用の演算に用いたり、後述の積分処理部14を使用したりすればよい。
【0035】
図4において、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、新たに得たISAR画像データに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するものである。また、学習部5が、観測点から目標1までの距離の情報も学習している場合、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、新たに得たISAR画像データを所定の縮尺に変換してから、対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するようにしてもよい。
【0036】
目標類別部9は、処理の高速化を図るため、新たに得たISAR画像データごとの相違情報から、類別に使用する学習結果の範囲を制限してもよい。なお、学習部5が相違情報ごと学習結果に生成している場合、目標類別部9は、学習部5が学習して相違情報ごとに生成した学習結果に基づいて、目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができる。
【0037】
学習部5の学習が進むと、目標類別部9は、新たに得たISAR画像データごとの相違情報が、相違情報入力部4に入力された相違情報と一致するものがない、又は、相違情報入力部4に入力された相違情報からの誤差が予め定められた範囲にないときは、最も近い角度の学習結果に基づいて、目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することが可能となる。
【0038】
また、新規ISAR画像入力部7は、目標1が同一で、相違情報である積分時間が異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力されるようにしてもよい。また、新規ISAR画像入力部7は、目標1及び積分時間がそれぞれ同一で当該積分時間の積分開始時刻と積分終了時刻とが異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力されるようにしてもよい。これらの場合、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができるので、判定の精度が上がる。
【0039】
もちろん、これらの場合(目標1が同一で積分時間が異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力される場合、目標1及び積分時間がそれぞれ同一で当該積分時間の積分開始時刻と積分終了時刻とが異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力される場合)において、目標類別部9は、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別した結果が全て一致する場合、目標1に対応する種別を判定してもよい。また、目標類別部9は、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別した結果に一致しないものが含まれており、一致するものの数に対して一致しないものの数が少ない場合は、一致するものを類別した結果として、目標1に対応する種別を判定するようにしてもよい。
【0040】
学習部5が、積分時間の異なるISAR画像データを複数使って総合的に学習しておれば、目標類別部9も総合的に類別することが可能となる。積分時間は、信号処理で自由に色々な場合のデータを生成できるため、学習部5の学習時も、目標類別部9の類別時も、自然環境条件を使用するよりも、有利であることが明らかである。
【0041】
同じく、図4において、目標類別装置6(ISAR画像データ学習装置2及び目標類別装置6)を有するレーダ装置10は、次の構成を有している。追尾レーダ11は、前述のものと同じレーダで、目標1を追尾するものである。逆合成開口レーダ12(ISAR12)は、追尾レーダ11で追尾した目標1へ送信ビームを送信し、目標1から反射された電波を受信するものである。積分処理部14は、逆合成開口レーダ12と、新たに得たISAR画像データを生成して、新規ISAR画像入力部7へ送るために、目標1から反射された電波から得たビデオ信号を積分するものである。つまり、積分処理部14(ISAR画像生成部13も同様)は、複数枚のISAR画像を重畳して、ISAR画像データを生成するものであるといえる。
【0042】
前述のように、新規ISAR画像入力部7が、目標1が同一で相違情報が異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力されるようになる。よって、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができるので、判定の精度が上がる。
【0043】
観測点の位置と、移動体である目標1の移動方向の情報とから算出されたアスペクト角が、相違情報として相違情報入力部4に入力される場合の詳細を説明する。図5に示すように、相違情報入力部4は、観測点の位置と、追尾レーダ11によって目標1を追尾して得られた移動方向の情報とから算出されたアスペクト角が、相違情報として入力されるものであってもよい。図5において、観測点には、レーダ装置10(追尾レーダ11、ISAR12)が接地されている。観測点が移動してもよい。つまり、レーダ装置10は、船舶や航空機などの移動体に搭載されたものであってもよい。走査範囲15(撮影範囲15)は、観測点を中心としたレーダ装置10(追尾レーダ11、ISAR12)が走査可能な範囲を点線で仮想的に示したものである。レーダ装置10は、方位角方向に360度の走査ができるものを例示している。
【0044】
図5では、目標1が船舶であるものを例示している。図5(A)は目標1を側方から観察した場合であり、図5(B)は目標1後方から観察した場合である。目標1が船舶(通常の線状構造を有する者)であるため、図5(A)と図5(B)のそれぞれの状況によって得られたISAR画像データは、同じ目標1であっても形状が異なることは容易に理解できる。また、図5の観測点(レーダ装置10)は、前述のように、それ自体が移動する船舶や航空機を想定しているが、観測点は固定点でもよい。なお、図5では、説明の簡略化のために、仰角方向の角度を0°、すなわち仰角を0°に固定して、アスペクト角が方位角だけの情報として仮想的に平面の情報で図示している。ここで、仰角とは、水平から起き上がっている角度を指している。一方、鉛直方向からの倒れている角度は、入射角と呼ばれる。仰角と入射角との関係は、仰角=90°-入射角となる。したがって、アスペクト角は、方位角及び入射角で構成されているともいえる。
【0045】
新規ISAR画像入力部7は、目標1が同一で、相違情報であるアスペクト角が異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力される場合においても、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができるので、判定の精度が上がる。もちろん、目標類別部9は、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別した結果が全て一致する場合、目標1に対応する種別を判定してもよい。また、目標類別部9は、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別した結果に一致しないものが含まれており、一致するものの数に対して一致しないものの数が少ない場合は、一致するものを類別した結果として、目標1に対応する種別を判定するようにしてもよい。
【0046】
図6において、目標類別装置6は、図1及び図6に示すISAR画像データ学習装置2の学習結果(学習モデル)を用いたものである(実施の形態1に係る目標類別装置)。相違情報及び新規の相違情報としてアスペクト角を利用する場合に好適な構成である。図4、後述の図8図9図10に示す目標類別装置6と併用すれば、相違情報及び新規の相違情報として積分時間又はシーステートの少なくとも一方を利用することができる。
【0047】
図6において、新規ISAR画像入力部7は、新たに得たISAR画像データが入力されるものである。目標類別装置6(ISAR画像データ学習装置2及び目標類別装置6)を有するレーダ装置10は、次の構成を有している。追尾レーダ11は、前述のものと同じレーダで、目標1を追尾するものである。前記逆合成開口レーダ12(ISAR12)は、前述のものと同じレーダで、新たに得たISAR画像データを新規ISAR画像入力部7へ送るために、追尾レーダ11で追尾した目標1へ送信ビームを送信するものである。詳しくは、追尾レーダ11は、新たに得たISAR画像データごとのアスペクト角を新規相違情報入力部8へ送るために、目標1を追尾するものである。
【0048】
レーダ装置10で、新規のISAR画像データと新規のアスペクト角を取得する場合のレーダ装置10、走査範囲15、目標1を示す例示図は、図5と同じである。図5において、目標1は移動体である船舶が、図5(A)から図5(B)と移動している場合を例示している。このように、図5(A)から図5(B)と移動している場合は、前述のように、新規ISAR画像入力部7が、目標1が同一で、相違情報としてのアスペクト角が異なる複数の新たに得たISAR画像データが入力されるようになる。よって、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、複数の新たに得たISAR画像データごとに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができるので、判定の精度が上がる。
【0049】
逆合成開口レーダ12(ISAR12)から得られる目標1が存在する海域のシークラッタの信号強度から算出された波高の情報が、相違情報として相違情報入力部4に入力される場合の詳細を説明する。相違情報入力部4は、海域の波高を測定する装置から得られる波高の情報が入力されるものであってもよい。また、相違情報入力部4は、波高の情報として、目標1が存在する海域における気象情報から得られる波高の情報が入力されるものであってもよい。図7において、観測点には、レーダ装置10(ISAR12)が設置されている。観測点自体が移動してもよい。つまり、レーダ装置10は、船舶や航空機などの移動体に搭載されたものであってもよい。走査範囲15は、観測点を中心としたレーダ装置10(ISAR12)が走査可能な範囲を点線で仮想的に示したものである。レーダ装置10は、方位角方向に360度の走査ができるものを例示している。
【0050】
図6において、目標類別部9は、図4に示す目標類別部9と同じ構成で、学習部5が学習した学習結果に基づいて、新たに得たISAR画像データに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するものである。また、図4に示す同じ構成で、学習部5が、観測点から目標1までの距離の情報も学習している場合、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、新たに得たISAR画像データを所定の縮尺に変換してから、対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するようにしてもよい。
【0051】
図6において、図4に示す同じ構成で、目標類別部9は、処理の高速化を図るため、新たに得たISAR画像データごとの相違情報から、類別に使用する学習結果の範囲を制限してもよい。なお、図4に示す同じ構成で、学習部5が相違情報ごと学習結果に生成している場合、目標類別部9は、学習部5が学習して相違情報ごとに生成した学習結果に基づいて、目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができる。
【0052】
図6において、図4に示す同じ構成で、学習部5の学習が進むと、目標類別部9は、新たに得たISAR画像データごとの相違情報が、相違情報入力部4に入力された相違情報と一致するものがない、又は、相違情報入力部4に入力された相違情報からの誤差が予め定められた範囲にないときは、最も近い角度の学習結果に基づいて、目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することが可能となる。
【0053】
図8図9図10において、目標類別装置6は、図1及び図8図1及び図9図1及び図10に示すISAR画像データ学習装置2の学習結果(学習モデル)を用いたものである(実施の形態1に係る目標類別装置)。相違情報及び新規の相違情報としてシーステートを利用する場合に好適な構成である。図4及び図6に示す目標類別装置6と併用すれば、相違情報及び新規の相違情報として積分情報又はアスペクト角の少なくとも一方を利用することができる。
【0054】
図8図9図10において、新規ISAR画像入力部7は、新たに得たISAR画像データが入力されるものである。新規相違情報入力部8は、新規ISAR画像入力部7に入力された新たに得たISAR画像データごとの波高の情報が、相違情報として入力されるものである。ここでいう新規の波高の情報(新たに得た波高の情報)は、波高を測定する装置より取得、または逆合成開口レーダ12(ISAR12)より取得、または気象情報より取得すればよい。図8は、新規の波高の情報(新たに得た波高の情報)を、波高を測定する装置より取得する場合のISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。図9は、新規の波高の情報(新たに得た波高の情報)を、逆合成開口レーダ12(ISAR12)より取得する場合のISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。図10は、新規の波高の情報(新たに得た波高の情報)を、気象情報より取得する場合のISAR画像データ学習装置、目標類別装置、レーダ装置の機能ブロック図である。
【0055】
詳しくは、図8に示すように、新規相違情報入力部8は、目標1が存在する海域の波高を測定する装置(波高測定装置16)から得られる波高の情報が入力されるものであってもよい。波高測定装置16は、例えばISAR12とは異なるレーダ、水圧式波高計、ブイ式波高計等である。なお、波高測定装置16の代わりに目視にて波高を計測してもよい。波高測定装置16は、レーダ装置10に設けられる構成でもよいが、図8に示すように、レーダ装置10の外部に構成されていてもよい。例えば、レーダ装置10(ISAR12)が船舶や航空機などの移動体に搭載されており、波高測定装置16が陸上に固定されていてもよい。このように、レーダ装置10と波高測定装置16は異なる場所に設けられていてもよい。
【0056】
また、図9に示すように、新規相違情報入力部8は、逆合成開口レーダ12(ISAR12)から得られる、目標1が存在する海域のシークラッタの信号強度から算出された波高の情報が、相違情報として入力されるものであってもよい。また、図9に示すように、新規相違情報入力部8は、波高の情報として、目標1が存在する海域における気象情報から得られる波高の情報が、相違情報として入力されるものであってもよい。
【0057】
図8図9図10において、目標類別装置6(ISAR画像データ学習装置2及び目標類別装置6)を有するレーダ装置10は、次の構成を有している。逆合成開口レーダ12(ISAR12)は、前述のものと同じレーダで、新たに得たISAR画像データを新規ISAR画像入力部7へ送るために、目標1へ送信ビームを送信するものである。レーダ装置10で、新規のISAR画像データを取得する場合のレーダ装置10、走査範囲13、目標1を示す例示図は、図7と同じである。
【0058】
図8図9図10において、目標類別部9は、図4及び図6に示す目標類別部9と同じ構成で、学習部5が学習した学習結果に基づいて、新たに得たISAR画像データに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するものである。また、図4及び図6に示す同じ構成で、学習部5が、観測点から目標1までの距離の情報も学習している場合、目標類別部9は、学習部5が学習した学習結果に基づいて、新たに得たISAR画像データを所定の縮尺に変換してから、対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するようにしてもよい。
【0059】
図8図9図10において、図4及び図6に示す同じ構成で、目標類別部9は、処理の高速化を図るため、新たに得たISAR画像データごとの相違情報から、類別に使用する学習結果の範囲を制限してもよい。なお、図4及び図6に示す同じ構成で、学習部5が相違情報ごと学習結果に生成している場合、目標類別部9は、学習部5が学習して相違情報ごとに生成した学習結果に基づいて、目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することができる。
【0060】
図8図9図10において、図4及び図6に示す同じ構成で、学習部5の学習が進むと、目標類別部9は、新たに得たISAR画像データごとの相違情報が、相違情報入力部4に入力された相違情報と一致するものがない、又は、相違情報入力部4に入力された相違情報からの誤差が予め定められた範囲にないときは、最も近い角度の学習結果に基づいて、目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定することが可能となる。
【0061】
最後に、図11を用いて実施の形態1に係る主に目標類別装置の動作(実施の形態1に係る目標類類別方法)を説明する。図11は、図4図6図8図9図10に示す目標類別装置6の動作である。
【0062】
図11において、ステップ11は、新規ISAR画像入力部7へ新たに得たISAR画像データが入力される処理ステップである。ステップ12は、新規相違情報入力部8へ新たに得たISAR画像データが入力される処理ステップである。ステップ11及びステップ12は、処理の順序は問わない。同時でもよい。ここでいう新規のISAR画像データ(新たに得たISAR画像データ)、新規の相違情報(新たに得た相違情報)は、レーダ装置10(実施の形態1に係るレーダ装置)で取得すればよい。
【0063】
ステップ13は、新規ISAR画像入力部7及び新規相違情報入力部8から学習部5へ新規のISAR画像データ(新たに得たISAR画像データ)と新規の相違情報(新たに得た相違情報)とを入力させて学習モデルを使用する処理ステップである。ステップ14は、学習部5が学習した学習結果(学習モデル)に基づいて、新たに得たISAR画像データに対応する目標1を類別して、目標1に対応する種別を判定するものである処理ステップである。その他の実施の形態1に係る目標類類別方法は、前述の実施の形態1に係る主に目標類別装置の動作と同じため、説明を省略する。
【0064】
実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置では、学習部5が学習するISAR画像データ及び相違情報は、シミュレーションで得た模擬データでもよい。同じく、目標類別部9が類別する新規のISAR画像データ及び相違情報も、シミュレーションで得た模擬データでもよい。この模擬データで目標類別部9に類別させることによって、学習部5や目標類別部9の性能確認を行うことができる。つまり、ISAR画像生成部13が生成するISAR画像データ及び相違情報も、シミュレーションで得た模擬データでもよい。
【0065】
実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置では、学習部5が学習するために、相違情報入力部4に入力される相違情報が、アスペクト角、波高の情報、積分時間の三つのうち、いずれか二つ以上であれば性能が高くなる。一方、実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置を用いた目標類別装置及びレーダ装置では、新規相違情報入力部8に入力される相違情報が、アスペクト角、波高の情報、積分時間の三つのうち、いずれか二つ以上と設定しておけば、学習部5の学習結果を使用して目標類別部9が目標1を類別する際に、精度が高まる。仮に、学習部5が学習しているISAR画像データが対応している相違情報がアスペクト角及び波高の情報であり、新規相違情報入力部8に入力される新規の相違情報が波高の情報及び積分時間であっても、波高の情報が使って類別ができる。
【0066】
さらに、実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置では、学習部5が学習するために、相違情報入力部4に入力される相違情報が、アスペクト角、波高の情報、積分時間の三つ全てを使用すると新規相違情報入力部8の負担を減らすことができる。厳密にいえば、学習する相違情報の種類が多ければ多いほど新規相違情報入力部8の負担を減らすことができる。すなわち、新規相違情報入力部8に入力される相違情報が、アスペクト角、波高の情報、積分時間の三つのうち、仮に一つでも、学習部5は確実に学習している相違情報のため、目標類別部9が目標1の類別を実施することができる。もちろん、学習部5の学習状況に関わらず、新規相違情報入力部8に入力される相違情報は、アスペクト角、波高の情報、積分時間の三つのうち、一つでもよい。
【0067】
以上のように実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置は、相違情報に対応するISAR画像データと、目標1の種別とを関連付けて学習する、又は、その学習結果を利用するものであることから、相違情報を利用して目標1の類別をおこなうことができる。さらに、実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置は、相違情報として、アスペクト角、波高の情報、積分時間(観測時間)の三つのうち、いずれか二つ以上を用いることでさらに学習制度や類別精度が高くなる。
【0068】
実施の形態1に係るISAR画像データ学習装置、これを用いた目標類別装置及びレーダ装置で用いる相違情報及び新規の相違情報は、アスペクト角、波高の情報、積分時間のいずれか一つであれば実施可能であるが、相違情報及び新規の相違情報は、これらに限られない。相違情報は、ISAR画像データごとに同じ目標で1異なるISAR画像データとなっている要因の情報であればよい。同じく、新規の相違情報は、新規のISAR画像データごとに同じ目標で1異なる新規のISAR画像データとなっている要因の情報であればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 目標1、2 ISAR画像データ学習装置、3 ISAR画像入力部、
4 相違情報入力部、5 学習部、6 目標類別装置、7 新規ISAR画像入力部、
8 新規相違情報入力部、9 目標類別部、10 レーダ装置、
11 追尾レーダ、12 逆合成開口レーダ(ISAR)、13 ISAR画像生成部、
14 積分処理部、15 走査範囲(撮影範囲)、16 波高測定装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11