(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】トランスミッションの支持構造
(51)【国際特許分類】
B60K 17/06 20060101AFI20250611BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
B60K17/06 F
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2021133398
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】早川 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】桑野 祐希
(72)【発明者】
【氏名】水谷 聡志
(72)【発明者】
【氏名】村田 拡一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-002310(JP,A)
【文献】実開昭55-127142(JP,U)
【文献】特開2019-093910(JP,A)
【文献】特開2015-077896(JP,A)
【文献】特開2009-286303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047542(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0037904(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力伝達経路に設けられたトランスミッションと、
前記トランスミッションを車体に支持するミッションマウントと、
を備えるトランスミッションの支持構造であって、
前記ミッションマウントの周辺には、周辺部品が配置されており、
前記ミッションマウントは、前記トランスミッションに取り付けられるマウントブラケットを有し、
前記マウントブラケットは、前記トランスミッションに取り付けられる本体部と、前記本体部から離間した位置に配され、振動吸収用の錘であるマス部と、前記本体部と前記マス部とを接続する接続部と、を有し、且つ、前記本体部と前記マス部と前記接続部とが一体形成されてなる構成を有し、
前記接続部は、前記車両が衝突して前記マス部が
前記周辺部品の外表面に衝突した場合に変形・破断するように設けられた、前記マウントブラケットにおける他の部分よりも相対的に強度が低い低強度部を有する、
トランスミッションの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスミッションの支持構造において、
前記マス部を第1マス部とするとき、
前記マウントブラケットは、前記本体部と一体形成された、前記第1マス部とは離間して配置された第2マス部をさらに有し、
前記第1マス部と前記第2マス部とは、互いに形状および質量の少なくとも一方が異なる、
トランスミッションの支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載のトランスミッションの支持構造において、
前記接続部を第1接続部とし、前記低強度部を第1低強度部とするとき、
前記マウントブラケットは、前記本体部および前記第2マス部と一体形成されて、前記本体部と前記第2マス部とを接続する第2接続部をさらに有し、
前記第2接続部は、前記第1低強度部を除く前記マウントブラケットにおける他の部分よりも相対的に強度が低い第2低強度部を有する、
トランスミッションの支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載のトランスミッションの支持構造において、
前記周辺部品は、当該周辺部品の外殻を構成するケースと、前記ケースの外方であって、前記マス部に対向する部分に設けられた保護部材であるガードプレートと、を有する、
トランスミッションの支持構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のトランスミッションの支持構造において、
前記車両は、車室内に向けて膨出し、車両前後方向に延びるように形成されたトンネル部を有するフロアパネルを備え、
前記トランスミッションは、前記トンネル部の下方に配置されており、
前記マウントブラケットは、前記本体部に対して前記マス部が車両前後方向の後方に位置する姿勢で配置されており、
前記周辺部品は、前記フロアパネルの下面における、前記マス部よりも車両前後方向の後方であって、且つ、前記トンネル部に対して車幅方向の側方となる部分に固定されている、
トランスミッションの支持構造。
【請求項6】
請求項5に記載のトランスミッションの支持構造において、
前記フロアパネルの下方には、車両前後方向の延びるように排気管が設けられており、
前記排気管は、前記トランスミッションに対して車幅方向の側方を車両前後方向に延びる前部と、前記前部の後端に連続し、車両前後方向における
前記ミッションマウントの後方で前記トンネル部の下方に位置するように斜行する傾斜部と、前記傾斜部の後端に連続し、前記トンネル部の下方を車両前後方向の後方に向けて延びる延伸部と、を有し、
前記マス部は、前記傾斜部に対して間隔を空けて斜め前方に位置するように形成されている、
トランスミッションの支持構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載のトランスミッションの支持構造において、
前記低強度部は、前記本体部と前記マス部との接続方向に対して交差する方向に延びる溝である、
トランスミッションの支持構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載のトランスミッションの支持構造において、
前記周辺部品は、バッテリである、
トランスミッションの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションの支持構造に関し、特にトランスミッションの振動低減と周辺部品の損傷抑制との両立を図るための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、動力伝達機構の振動を低減するためにダイナミックダンパーなどが採用されることがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、プロペラシャフトとドライブシャフトとを連結するデファレンシャルギアが収容されたアクスルケースにマス(振動吸収用の錘)が取り付けられた構造が開示されている。特許文献1に開示の構造では、アクスルケースに直にマスを固定するのはなく、長尺状のブラケットの一端部をアクスルケースに取り付けるとともに、アクスルケースから離間した他端部にマスが取り付けられている。特許文献1では、上記のような構造を採用することにより、マスの質量を小さく抑えながら、アクスルケースの振動を低減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に対しては、衝突時の安全性を確保することが求められるが、上記特許文献1に開示の構造では、マスが取り付けられたブラケットの他端部がアクスルケースから離間するように突設されているため、衝突時にマスを含むブラケットの上記他端部が周辺部品に当接して当該周辺部品を損傷することが懸念される。例えば、近年の電気自動車やハイブリッド電気自動車などでは、フロアパネルの下にバッテリが配されることがあるが、衝突時にブラケットが移動や変形をしてマスやブラケットの他端部がバッテリの外装ケースを破損させる場合も考えられる。
【0006】
なお、衝突時におけるマスによる周辺部品の損傷という問題は、マスをアクスルケースに取り付けた場合に限らず、トランスミッションに取り付けた場合にも同様に懸念される。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、トランスミッションの振動を低減するとともに、車両衝突時における周辺部品の損傷を抑制することができるトランスミッションの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るトランスミッションの支持構造は、トランスミッションと、ミッションマウントとを備える。前記トランスミッションは、車両の動力伝達経路に設けられている。前記ミッションマウントは、前記トランスミッションを車体に支持する。前記ミッションマウントの周辺には、周辺部品が配置されている。
【0009】
本態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記ミッションマウントは、前記トランスミッションに取り付けられるマウントブラケットを有する。前記マウントブラケットは、前記トランスミッションに取り付けられる本体部と、前記本体部から離間した位置に配され、振動吸収用の錘であるマス部と、前記本体部と前記マス部とを接続する接続部と、を有し、且つ、前記本体部と前記マス部と前記接続部とが一体形成されてなる構成を有する。そして、本態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記接続部は、前記車両が衝突して前記マス部が前記周辺部品の外表面に衝突した場合に変形・破断するように設けられた、前記マウントブラケットにおける他の部分よりも相対的に強度が低い低強度部を有する。
【0010】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、マウントブラケットの接続部に低強度部を設けているので、仮に車両が衝突したような場合であってもマス部が周辺部品の外表面に衝突しても低強度部が変形・破断する。よって、上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、仮に車両が衝突(オフセット衝突を含む。)してマウントブラケットが周辺部品の方へと移動したとしても、マウントブラケットのマス部による周辺部品の損傷を抑制することができる。
【0011】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記マス部を第1マス部とするとき、前記マウントブラケットは、前記本体部と一体形成された、前記第1マス部とは離間して配置された第2マス部をさらに有し、前記第1マス部と前記第2マス部とは、互いに形状および質量の少なくとも一方が異なる、としてもよい。
【0012】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、互いに形状および質量の少なくとも一方が異なる第1マス部と第2マス部とをマウントブラケットに設けているので、第1マス部により低減できる振動周波数と第2マス部により低減できる振動周波数とが異なる。よって、上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、トランスミッションの振動を広い周波数域で低減することが可能である。
【0013】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記接続部を第1接続部とし、前記低強度部を第1低強度部とするとき、前記マウントブラケットは、前記本体部および前記第2マス部と一体形成されて、前記本体部と前記第2マス部とを接続する第2接続部をさらに有し、前記第2接続部は、前記第1低強度部を除く前記マウントブラケットにおける他の部分よりも相対的に強度が低い第2低強度部を有する、としてもよい。
【0014】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、本体部と第2マス部とを接続する第2接続部にも相対的に強度が低い第2低強度部を設けているので、仮に車両が衝突してマウントブラケットが移動したとしても、第2マス部による周辺部品の損傷を抑制することができる。
【0015】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記周辺部品は、当該周辺部品の外殻を構成するケースと、前記ケースの外方であって、前記マス部に対向する部分に設けられた保護部材であるガードプレートと、を有する、としてもよい。
【0016】
上記のように、周辺部品におけるケースの外方にガードプレートを設けることとすれば、仮に車両の衝突によってマウントブラケットが周辺部品の方へ移動したとしても、マス部が直接ケースに衝突するのをガードプレートで防ぐことができる。よって、上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、マウントブラケットのマス部による周辺部品の損傷を抑制するのにさらに有効である。
【0017】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記車両は、車室内に向けて膨出し、車両前後方向に延びるように形成されたトンネル部を有するフロアパネルを備え、前記トランスミッションは、前記トンネル部の下方に配置されており、前記マウントブラケットは、前記本体部に対して前記マス部が車両前後方向の後方に位置する姿勢で配置されており、前記周辺部品は、前記フロアパネルの下面における、前記マス部よりも車両前後方向の後方であって、且つ、前記トンネル部に対して車幅方向の側方となる部分に固定されている、としてもよい。
【0018】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、周辺部品の斜め前方にマウントブラケットが位置し、仮に車両がオフセット衝突した場合にはマウントブラケットが周辺部品に向けて移動することになるが、上述のように低強度部が変形・破断することにより、周辺部品の損傷を抑制することができる。
【0019】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記フロアパネルの下方には、車両前後方向の延びるように排気管が設けられており、前記排気管は、前記トランスミッションに対して車幅方向の側方を車両前後方向に延びる前部と、前記前部の後端に連続し、車両前後方向における前記ミッションマウントの後方で前記トンネル部の下方に位置するように斜行する傾斜部と、前記傾斜部の後端に連続し、前記トンネル部の下方を車両前後方向の後方に向けて延びる延伸部と、を有し、前記マス部は、前記傾斜部に対して間隔を空けて斜め前方に位置するように形成されている、としてもよい。
【0020】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、排気管の傾斜部に対してマス部が間隔を空けて配置されているので、マス部の振動が排気管の傾斜部によって阻害され難い。よって、上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、排気管のレイアウト設計の高い自由度を確保しながら、トランスミッションの振動低減を確実に図ることができる。
【0021】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記低強度部は、前記本体部と前記マス部との接続方向に対して交差する方向に延びる溝である、としてもよい。
【0022】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、溝によって低強度部を形成しているので、質量や部品点数の増加を回避しながら、車両の衝突時における周辺部品の損傷を抑制することができる。
【0023】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造において、前記周辺部品は、バッテリである、としてもよい。
【0024】
上記態様に係るトランスミッションの支持構造では、マウントブラケットの周辺に配設された周辺部品がバッテリである。このため、マウントブラケットのマス部がバッテリの外表面に衝突したとしてもバッテリが損傷するのを抑制することが重要となるが、上述のように、仮にマス部がバッテリの外表面に衝突したとしても低強度部が変形または破断することによりバッテリの内部構造が損傷するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記の各態様に係るトランスミッションの支持構造では、トランスミッションの振動を低減するとともに、車両衝突時における周辺部品の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係るトランスミッションの支持構造を側方から示す断面図である。
【
図2】トランスミッションの支持構造を下方から示す下面図である。
【
図3】ミッションマウントのミッションメンバおよびラバーマウントと排気管とを取り除いた状態でトランスミッションの支持構造を下方から示す下面図である。
【
図4】(a)は
図3のA1部分を拡大して示す拡大図であり、(b)は
図3のA2部分を拡大して示す拡大図である。
【
図5】ミッションマウントの構成を示す斜視図である。
【
図6】ミッションマウントの内のマウントブラケットの構成を示す斜視図である。
【
図7】オフセット衝突時に低強度部で破断し、一方のマス部が切り離された状態のマウントブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0028】
以下の説明で用いる図において、「Fr」は車両前方、「Re」は車両後方、「Le」は車両左方、「Ri」は車両右方、「Up」は車両上方、「Lo」は車両下方をそれぞれ示す。
【0029】
1.トランスミッション10およびその周辺の構成
実施形態に係るトランスミッション10およびその周辺の構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0030】
図1および
図2に示すように、車両1は、車室内に向けて(上方に向けて)膨出し、車両1の前後方向に延びるように形成されたトンネル部1aを有するフロアパネル1cを備える。トンネル部1aは、前部でダッシュパネル1bに接続されている。
【0031】
トンネル部1aの下方には、トランスミッション10、プロペラシャフト11、および排気管13の一部が配置されている。トランスミッション10は、ダッシュパネル1bよりも前方のエンジン(図示を省略。)に接続され、トンネル部1aの下方を前後方向に向けて配設されている。
図1および
図2に示すように、トランスミッション10の後部は、ミッションマウント12を介してフロアパネル(車体)1cに支持されている。
【0032】
ミッションマウント12は、マウントブラケット120と、ラバーマウント121と、ミッションメンバ122とを有する。
図1に示すように、マウントブラケット120は、トランスミッション10に取り付けられている。
図2に示すように、ミッションメンバ122は、フロアパネル1cにおけるトンネル部1bの車幅方向の側方となる部分に取り付けられている。
【0033】
図2に示すように、フロアパネル1cにおけるトンネル部1aの下方の部分に対して車幅方向の側方となる部分には、バッテリ(周辺部品)14,15が固定されている。バッテリ14とバッテリ15とは、トンネル部1aの下方の空間を挟んで両側に配置されている。そして、車両1の前後方向において、バッテリ14,15は、トランスミッション10およびミッションマウント12よりも後方に配置されている。
【0034】
バッテリ14,15は、外殻を構成するケース14a,15aを有する。ケース14a,15aは、アルミニウム合金などの軽合金で構成されている。
【0035】
排気管13は、車両1の前後方向における前方側から順に、前部13aと、傾斜部13bと、延伸部13cとを有する。前部13aと傾斜部13bと延伸部13cとは、互いに連続するように設けられており、エンジンから排出された排気ガスを後方に導く経路である。前部13aは、フロアパネル1cの下方におけるトランスミッション10よりも右方を前後方向に延びるように配設されている。傾斜部13bは、前部13aの後端に連続し、トンネル部1aの下方に向けて斜行するように配設されている。延伸部13cは、トランスミッション10およびミッションマウント12よりも後方の部分で傾斜部13bの後端に連続し、プロペラシャフト11の下方を当該プロペラシャフト11に沿って前後方向に延びるように配設されている。
【0036】
ここで、排気管13は、傾斜部13bを含む全体が、ミッションマウント12のマウントブラケット120に対して間隔を空けて非接触の状態で配設されている。
【0037】
2.トランスミッション10へのマウントブラケット120の取付形態とバッテリ14,15の前部構造
トランスミッション10へのマウントブラケット120の取付形態とバッテリ14,15の前部構造について、
図3および
図4を用いて説明する。
【0038】
図3に示すように、トランスミッション10のミッションケースに対しては、4箇所の螺結によってマウントブラケット120が取り付けられている。具体的には、マウントブラケット120の前部には2箇所の通し孔が開けられており、当該通し孔にボルトBLTを差し込んでミッションケースに螺結されている。また、マウントブラケット120の後部にも2箇所の通し孔が開けられており、ミッションケース側から延びるボルトBLTが挿通され、当該ボルトBLTにナットNTが締結されている。
【0039】
バッテリ14は、ケース14aの外方の一部に配設されたガードプレート14bを有する(矢印A1で指し示す部分)。同様に、バッテリ15は、ケース15aの外方の一部に配設されたガードプレート15bを有する(矢印A2で指し示す部分)。
図4(a)に示すように、ガードプレート14bは、ケース14aにおける前コーナー部14cの外方を覆うように設けられている。即ち、ガードプレート14bは、ケース14aにおける前コーナー部14cとマウントブラケット120との間に配置される。
【0040】
図4(b)に示すように、ガードプレート
15bは、ケース15aにおける前コーナー部15cの外方を覆うように設けられている。即ち、ガードプレート15bは、ケース15aにおける前コーナー部15cとマウントブラケット120との間に配置される。
【0041】
なお、本実施形態においては、ガードプレート14b,15cは、鉄鋼からなる板材を曲折加工することで形成されている。
【0042】
3.ミッションマウント12の詳細構成
ミッションマウント12の詳細構成について、
図5を用いて説明する。
【0043】
図5に示すように、ミッションマウント12は、下方側(トランスミッション10の側)から順に、マウントブラケット120、ラバーマウント121、およびミッションメンバ122が積層された構成を有する。この内、マウントブラケット120の詳細構造については、後述するが、ラバーマウント121を間に挟んだ状態でボルトBLTによりミッションメンバ122に取り付けられている。なお、ミッションメンバ122へのマウントブラケット120の取付には、トランスミッション10のミッションケースから延びるボルトBLT(
図3を参照。)に用いられている。
【0044】
ミッションメンバ122は、ベース部122aと、アーム部122b,122cとが一体形成されている。ベース部122aは、板状の部位であって、マウントブラケット120が取り付けられる部位である。アーム部122bは、ベース部122aから左斜め下方へと伸びるように設けられた部位であって、フロアパネル1cに複数(本実施形態では、一例として3本)のボルトBLTを用いて固定される部位である。アーム部122cは、ベース部122aから右斜め下方へと延びるように設けられた部位であって、フロアパネル1cに複数(本実施形態では、一例として3本)のボルトBLTを用いて固定される部位である。
【0045】
4.マウントブラケット120の詳細構成
マウントブラケット120の詳細構成について、
図6を用いて説明する。
【0046】
図6に示すように、マウントブラケット120は、本体部120aと、マス部120b,120cと、接続部120d,120eとが一体形成されている。本体部120aは、トランスミッション10およびミッションメンバ122に取り付けられる部位であって、6箇所の通し孔が開けられている。マス部120bは、本体部120aに対して左後方に向けて延出した状態で形成されている。マス部120cは、本体部120aに対して右後方に向けて延出した状態であって、マス部120bに対して車幅方向(左右方向)に間隔を空けて形成されている。
【0047】
マス部120b,120cは、トランスミッション10の振動を吸収する錘として機能する部位である。マス部120bは、前後方向の長さがL1で、車幅方向の幅がW1である。マス部120cは、前後方向の長さがL2で、車幅方向の幅がW2である。本実施形態において、マス部120bとマス部120cとは、
図6に示すように形状が互いに異なるとともに、質量も互いに異なるように形成されている。
【0048】
接続部120dは、本体部120aとマス部120bとを接続するように設けられた部位であって、本体部120aとマス部120bとを結ぶ方向に対して交差する方向での横断面がマス部120bよりも小さく形成されている。接続部120eは、本体部120aとマス部120cとを接続するように設けられた部位であって、本体部120aとマス部120cとを結ぶ方向に対して交差する方向での横断面がマス部120cよりも小さく形成されている。
【0049】
接続部120dには、下側の面から上向きに凹入し、本体部120aとマス部120bとを結ぶ方向に対して交差する方向に延びる溝が形成されている(矢印B1で指し示す部分)。接続部120dに形成された溝は、マウントブラケット120における他の部分よりも相対的に強度が低い低強度部120fを構成している。
【0050】
同様に、接続部120eには、下側の面から上向きに凹入し、本体部120aとマス部120cとを結ぶ方向に対して交差する方向に延びる溝が形成されている(矢印B2で指し示す部分)。接続部120eに形成された溝は、マウントブラケット120における他の部分(接続部120dの低強度部120fを除く。)よりも相対的に強度が低い低強度部120gを構成している。
【0051】
なお、本実施形態において、マス部120bおよびマス部120cの一方が「第1マス部」に該当し、他方が「第2マス部」に該当する。また、接続部120dと接続部120eの内、第1マス部に対応する方が「第1接続部」に該当し、他方が「第2接続部」に該当する。また、低強度部120fおよび低強度部120gの内、第1接続部に設けられている方が「第1低強度部」に該当し、他方が「第2低強度部」に該当する。
【0052】
5.車両1が衝突した場合のマウントブラケット120の変形・破断
本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、マウントブラケット120を含むミッションマウント12が上記のような構成を備えることにより、車両1が衝突(オフセット衝突を含む。)した際にマウントブラケット120が変形・破断する。これについて、
図7を用いて説明する。なお、
図7は、車両1がオフセット衝突して右斜め前方から衝撃を受けた場合のマウントブラケット120の状態を示している。
【0053】
車両1がオフセット衝突した場合、エンジン(図示を省略。)やサイドフレームなどからトランスミッション10が左斜め後方に移動することが考えられる。
図3に示す下ように、トランスミッション10が左斜め後方に移動した場合には、トランスミッション10に取り付けられているミッションマウント12のマウントブラケット120も左斜め後方へと移動する。
【0054】
マウントブラケット120が左斜め後方に移動した場合には、マス部120bがバッテリ14のガードプレート14bに衝突する。マス部120bがバッテリ14のガードプレート14bに衝突すると、マス部120bよりも横断面が小さい接続部120dを起点に変形する。接続部120dには、低強度部120fが設けられているので、変形は低強度部120fで生じるものと考えられる。そして、バッテリ14のガードプレート14bへのマウントブラケット120の衝突荷重が所定の値を超えると、
図7に示すように、低強度部120fが起点に破断して、マス部120bがマウントブラケット120の他の部分から脱離する。これにより、車両1の衝突時においても、周辺部品であるバッテリ14の破損(ケース14a内に収容されている電極体などの破損)を防止することができる。
【0055】
なお、上記では、車両1のオフセット衝突によりマウントブラケット120が左斜め後方に移動してガードプレート14bに衝突した場合について説明したが、マウントブラケット120が右斜め後方に移動してマス部120cがバッテリ15のガードプレート15bに衝突した場合にも同様の形態でマウントブラケット120が変形・破断する。
【0056】
6.効果
本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、マウントブラケット120の接続部120d,120eに低強度部(溝)120f,120gを設けているので、仮に車両1が衝突(オフセット衝突を含む。)したような場合であってもマス部120b,120cがバッテリ(周辺部品)14,15のガードプレート(外表面)14b,15bに衝突しても低強度部120f,120gが変形・破断する。よって、本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、仮に車両1が衝突してマウントブラケット120を含むミッションマウント12がバッテリ14,15の方へと移動したとしても、マウントブラケット120のマス部120b,120cによるバッテリ14,15の損傷(ケース14a,15a内の電極体などの損傷)を抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、互いに形状および質量が異なるマス部120bとマス部120cとをマウントブラケット120に設けているので、マス部120bにより低減できる振動周波数とマス部120cにより低減できる振動周波数とが異なる。よって、本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、トランスミッション10の振動を広い周波数域で低減することが可能である。
【0058】
本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造を適用する車両1では、バッテリ14,15におけるケース14a,15aの外方にガードプレート14b,15bを設けているので、仮に車両1の衝突によってマウントブラケット120がバッテリ14またはバッテリ15の方へ移動したとしても、マス部120b,120cが直接ケース14a,15aに衝突するのをガードプレート14b,15bで防ぐことができる。よって、車両1では、マウントブラケット120のマス部120b,120cによるバッテリ14,15の損傷(ケース14a,15a内の電極体などの損傷)を抑制することができる。
【0059】
本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、マウントブラケット120が、バッテリ14の右斜め前方、バッテリ15の左斜め前方に位置し、仮に車両1がオフセット衝突した場合にはマウントブラケット120がバッテリ14またはバッテリ15に向けて移動することになるが、上述のように低強度部120f,120gが変形・破断することにより、バッテリ14,15の損傷(ケース14a,15a内の電極体などの損傷)を抑制することができる。
【0060】
車両1では、排気管13の傾斜部13bに対してマウントブラケット120のマス部120cが間隔を空けて(非接触状態で)配置されているので、マス部120cの振動が排気管13の傾斜部13bによって阻害され難い。よって、本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、排気管13のレイアウト設計の高い自由度を確保しながら、トランスミッション10の振動低減を確実に図ることができる。
【0061】
本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、接続部120d,120eのそれぞれに溝を設けることによって低強度部120f,120gを形成しているので、質量や部品点数の増加を回避しながら、車両1の衝突時におけるバッテリ14,15の損傷を抑制することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るトランスミッション10の支持構造では、トランスミッション10の振動を低減するとともに、車両1の衝突時におけるバッテリ14,15の損傷を抑制することができる。
【0063】
[変形例]
上記実施形態では、マウントブラケット120において2つのマス部120b,120cを有する構成を一例として採用したが、マウントブラケット120に設けられるマス部の数については1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、マウントブラケット120におけるマス部120bとマス部120cとが、互いに形状も質量も異なることとしたが、マス部120bとマス部120cとで形状および質量を同一とすることもできるし、形状および質量の一方が異なるようにすることもできる。
【0065】
上記実施形態では、マウントブラケット120の接続部120d,120eの両方に低強度部120f,120gを設けることとしたが、周辺部品の配置との関係を考慮して必要と考えられる方にだけ低強度部を設けることもできる。
【0066】
上記実施形態では、マウントブラケット120の接続部120d,120eに溝を設けることで低強度部120f,120gを形成することとしたが、接続部120d,120eの他の部分よりも断面方向に絞って相対的に強度が低い部分を設けて低強度部としてもよい。
【0067】
上記実施形態では、マウントブラケット120の配置について、本体部120aに対して後方側にマス部120b,120cが位置するようにしたが、トランスミッション10の振動モードを考慮して、本体部120aに対するマス部120b,120cの相対的な位置を決定するようにすることができる。例えば、振動モードによっては、本体部120aに対して斜め後方や横方向にマス部120b,120cを位置させることもできる。
【0068】
上記実施形態では、マウントブラケット120の周辺に配置される周辺部品の一例としてバッテリ14,15を適用したが、バッテリ以外でもインバータユニットや燃料パイプなどを周辺部品とすることもできる。
【0069】
上記車両1では、ガードプレート14b,15bを有するバッテリ14,15を周辺部品として採用したが、ガードプレート14b,15bは必須の構成ではない。例えば、ケースにおけるマウントブラケット120に近接して対向する部分の厚みを厚肉化したりすることで耐衝突性能の向上を図ることとしてもよい。
【0070】
上記車両1では、トランスミッション10がトンネル部1aの下方の空間に配置された形態を一例としたが、必ずしもトランスミッション10がトンネル部1aの下方の空間に配置されている必要はない。
【0071】
上記車両1では、排気管13が傾斜部13bを有する構成を一例としたが、排気管13が必ずしも傾斜部13bを有する必要はない。例えば、フロアパネル1cの下方をトランスミッション10の側方からそのまま後方に向けて延伸する形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 車両
1a トンネル部
10 トランスミッション
12 ミッションマウント
13 排気管
14,15 バッテリ(周辺部品)
120 マウントブラケット
120a 本体部
120b,120c マス部
120d,120e 接続部
120f,120g 低強度部
122 ミッションメンバ