(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 8/50 20250101AFI20250611BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250611BHJP
H10D 12/00 20250101ALI20250611BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250611BHJP
H10D 64/20 20250101ALI20250611BHJP
【FI】
H10D8/50 D
H10D84/80 203D
H10D12/00 103S
H10D62/10 101G
H10D62/10 101V
H10D62/10 101M
H10D62/10 101F
H10D64/20 F
(21)【出願番号】P 2021153363
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】花岡 正行
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507849(JP,A)
【文献】特開2009-032728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0006579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 8/50
H10D 84/80
H10D 12/00
H10D 62/10
H10D 64/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性領域と不活性領域を有する第1導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域において前記第1半導体領域に達するように設けられた第1の溝と、
前記第1の溝に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の溝の内部に設けられた導電体と、
前記不活性領域において前記第1半導体領域に達するように設けられた第2の溝と、
前記第2の溝に形成された第2の絶縁膜と、
前記不活性領域において前記第2の溝と離隔し、前記第1半導体領域に達するように設けられた第3の溝と、
前記第1の溝と前記第2の溝との間の前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2の溝と前記第3の溝との間の前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第3半導体領域と、
前記第2の溝の前記第2の絶縁膜上に、前記第2半導体領域から離隔して配置された第1フィールド電極と、
前記第2の溝の前記第2の絶縁膜上に、前記第3半導体領域から離隔して配置された第2フィールド電極とを備え、
前記第1フィールド電極は、電気的に第1の主電極と接続され、前記第2フィールド電極は、電気的にフローティングであ
り、
前記第2半導体領域は電気的にフローティングである、半導体装置。
【請求項2】
活性領域と不活性領域を有する第1導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域において前記第1半導体領域に達するように設けられた第1の溝と、
前記第1の溝に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の溝の内部に設けられた導電体と、
前記不活性領域において前記第1半導体領域に達するように設けられた第2の溝と、
前記第2の溝に形成された第2の絶縁膜と、
前記不活性領域において前記第2の溝と離隔し、前記第1半導体領域に達するように設けられた第3の溝と、
前記第1の溝と前記第2の溝との間の前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2の溝と前記第3の溝との間の前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第3半導体領域と、
前記第2の溝の前記第2の絶縁膜上に、前記第2半導体領域から離隔して配置された第1フィールド電極と、
前記第2の溝の前記第2の絶縁膜上に、前記第3半導体領域から離隔して配置された第2フィールド電極とを備え、
前記第1フィールド電極は、電気的に第1の主電極と接続され、前記第2フィールド電極は、電気的にフローティングであり、
前記第2半導体領域と前記第1フィールド電極との間の距離は、前記第2半導体領域と前記導電体との間の距離より大きい、半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体領域は電気的にフローティングである、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
更に、前記活性領域の前記第1半導体領域上に配置された第2導電型の第4半導体領域を備え、
前記第4半導体領域の不純物濃度は、前記
第3半導体領域の不純物濃度よりも低い、請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の溝と前記第3の溝との間のピッチは、前記第1の溝同士のピッチよりも広い、請求項1~4の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2半導体領域の深さは、前記第2の溝の深さの半分よりも深く、前記第2の溝の深さよりも浅い、請求項1~5の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の絶縁膜の厚さは、前記第2の絶縁膜の厚さよりも薄い、請求項1~6の何れか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耐圧向上のために、活性領域と不活性領域を分断する終端トレンチを利用する方法がある。また、終端トレンチ内の左右の側面にフィールド電極を設け、両方のフィールド電極をアノード電位またはフローティング電位にすることで電界を緩和することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2020/0006579号公報
【文献】特許第5315638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、終端トレンチに設けられた両方のフィールド電極をアノード電位或いはフローティング電位にしても、終端トレンチの外周側のコーナー底部の酸化膜付近で電界が集中して耐圧の劣化或いは終端トレンチ上に形成された酸化膜の劣化が生じる可能性がある。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、高耐圧化可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、半導体装置は、第1半導体領域と、第1半導体領域に設けられた第1の溝と、第1の溝に形成された第1の絶縁膜と、第1の溝の内部に設けられた導電体と、第1半導体領域に設けられた第2の溝と、第2の溝に形成された第2の絶縁膜と、第2の溝の外側に離隔して第1半導体領域に設けられた第3の溝と、第1の溝と第2の溝との間に設けられた第2半導体領域と、第2の溝と第3の溝との間に設けられた第3半導体領域と、第2の溝の内部の第2の絶縁膜上に、第2半導体領域から離隔して形成された第1フィールド電極と、第2の溝の内部第2の絶縁膜上に、第3半導体領域から離隔して形成された第2フィールド電極とを備える。第1フィールド電極は、第1の主電極と電気的に接続され、第2フィールド電極は、電気的にフローティングであり、前記第2半導体領域は電気的にフローティングである。本発明の別の態様によれば、半導体装置は、活性領域と不活性領域を有する第1導電型の第1半導体領域と、前記活性領域において前記第1半導体領域に達するように設けられた第1の溝と、前記第1の溝に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の溝の内部に設けられた導電体と、前記不活性領域において前記第1半導体領域に達するように設けられた第2の溝と、前記第2の溝に形成された第2の絶縁膜と、前記不活性領域において前記第2の溝と離隔し、前記第1半導体領域に達するように設けられた第3の溝と、前記第1の溝と前記第2の溝との間の前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、前記第2の溝と前記第3の溝との間の前記第1半導体領域上に設けられた第2導電型の第3半導体領域と、前記第2の溝の前記第2の絶縁膜上に、前記第2半導体領域から離隔して配置された第1フィールド電極と、前記第2の溝の前記第2の絶縁膜上に、前記第3半導体領域から離隔して配置された第2フィールド電極とを備え、前記第1フィールド電極は、電気的に第1の主電極と接続され、前記第2フィールド電極は、電気的にフローティングであり、前記第2半導体領域と前記第1フィールド電極との間の距離は、前記第2半導体領域と前記導電体との間の距離より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高耐圧化可能な半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【
図3】実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る半導体装置において、第1フィールド電極にアノード電位、第2フィールド電極にフローティング電位とした場合の電位分布シミュレーション結果を示す模式図である。
【
図6】第1の比較例の半導体装置において、第1フィールド電極にアノード電位、第2フィールド電極にアノード電位とした場合の電位分布シミュレーション結果を示す模式図である。
【
図7】第2の比較例の半導体装置において、第1フィールド電極にフローティング電位、第2フィールド電極にフローティング電位とした場合の電位分布シミュレーション結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の長さの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置1の模式的な断面図である。また、
図2は、
図1の第2の溝31周辺X1の拡大図である。
【0012】
実施形態に係る半導体装置1は、
図1に示すように、活性領域101及び活性領域101の残余の領域の不活性領域102を有する半導体基体を備える。半導体基体は、一方の主面2aと他方の主面2bを有する。ここでは、実施形態に係る半導体装置1は、ファーストリカバリダイオード(FRD:Fast Recovery Diode)を活性領域101に配置した例について説明する。なお、実施形態に係る半導体装置1は、RFCダイオード(Relaxed Field of Cathode Diode)或いは逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(RC-IGBT:Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)を活性領域101に配置してもよい。以下の説明において、不活性領域102の耐圧構造を有する領域を接合終端領域とも称する。
【0013】
実施形態に係る半導体装置1は、
図1及び
図2に示すように、第1導電型の第1半導体領域2と、第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体領域21と、第2導電型の第3半導体領域22と、第2導電型の第4半導体領域23と、第1導電型の第5半導体領域24と、第1導電型の第6半導体領域25と、第1の溝3と、第2の溝31と、第3の溝32とを備える。
【0014】
第1半導体領域2は、活性領域101と不活性領域102に共通に連続的に配置されている。
【0015】
第2半導体領域21は、不活性領域102に配置され、第1半導体領域2の上面に接し、一方の主面2aにおいて一部露出している。
【0016】
第3半導体領域22は、不活性領域102において、第2の溝31と接して配置され、第1半導体領域2の上面に接し、一方の主面2aにおいて一部露出している。
【0017】
第4半導体領域23は、活性領域101に配置され、第1半導体領域2の上面に接し、一方の主面2aにおいて一部露出している。
【0018】
第1の溝3は、活性領域101に配置され、一方の主面2aから第4半導体領域23を貫通し、底面が第1半導体領域2に到達する。
【0019】
第2の溝31は、不活性領域102において、第2半導体領域21と接して配置され、一方の主面2aから第2半導体領域21を貫通し、底面が第1半導体領域2に到達する。
【0020】
第3の溝32は、不活性領域102に配置され、一方の主面2aから第3半導体領域22を貫通し、底面が第1半導体領域2に到達する。
【0021】
第5半導体領域24は、第3の溝32と接して配置され、第1半導体領域2の上面に接し、一方の主面2aにおいて一部露出している。
【0022】
第6半導体領域25は、活性領域101と不活性領域102に共通に連続的に配置され、第1半導体領域2の下面に接し、他方の主面2bに露出している。
【0023】
第1導電型と第2導電型とは互いに反対の導電型である。即ち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型である。第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。ここでは、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合を例示的に説明する。また、以下の説明において、第2導電型の第2半導体領域21をフロートp-領域21、第2導電型の第3半導体領域22をフロートp領域22、第2導電型の第4半導体領域23をアノードp-領域23、第1導電型の第5半導体領域24をチャネルストッパn+領域24、第1導電型の第6半導体領域25をカソードn+領域25と称することもある。
【0024】
第1半導体領域2の不純物濃度は、例えば、1x1014cm-3~1x1015cm-3程度で形成されている。なお、第1半導体領域2の厚さは、耐圧600Vの場合、60~70μm程度、耐圧1200Vの場合、90~120μm程度あってもよい。
【0025】
フロートp
-領域21は、
図1及び
図2に示すように、第1の溝3と第2の溝31との間に配置されている。フロートp
-領域21の上部には、
図2に示すように、層間絶縁膜50が覆うようには配置されている。
【0026】
フロートp
-領域21の深さD2は、
図2に示すように、第2の溝31の深さD1の半分より深く、第2の溝31の深さD1よりも浅い。
【0027】
第1の溝3の側面及び底面には、
図1及び
図2に示すように、第1の絶縁膜4が設けられている。更に、第1の溝3の内側には、導電体5が充填されている。
【0028】
導電体5は、例えば、ポリシリコンであってもよい。また、導電体5は、第1の主電極11に電気的に接続されている。
【0029】
第1の主電極11は、
図1に示すように、アノード端子Aに電気的に接続されている。以下の説明において、第1の主電極11をアノード電極11とも称する。アノード電極11は、
図1及び
図2に示すように、アノードp
-領域23から第2の溝31を跨いで、フロートp領域22及び第3の溝32上まで延在した層間絶縁膜50上に形成されている。
【0030】
第2の溝31の側面及び底面には、
図1及び
図2に示すように、第2の絶縁膜41が設けられている。第2の溝31の内部には、第1フィールド電極13及び第2フィールド電極14が配置されている。例えば、第1フィールド電極13及び第2フィールド電極14は、ポリシリコンであってもよい。また、第2の溝31には、
図2に示すように、層間絶縁膜50が覆うように配置されている。すなわち、第1フィールド電極13及び第2フィールド電極14の上部には、層間絶縁膜50とその上のアノード電極11とが配置されている。
【0031】
第1フィールド電極13は、
図2に示すように、フロートp
-領域21から離隔して形成されている。また、第1フィールド電極13は、第1半導体領域2から離隔して形成されている。すなわち、第1フィールド電極13は、第2の絶縁膜41の側面と底面に接して配置されている。また、第1フィールド電極13は、アノード電極11と電気的に接続されている。第1フィールド電極13は、例えば、導電体5を介してアノード電極11と電気的に接続されている。すなわち、第1フィールド電極13は、アノード電極11と同じ電位である。詳細は、平面図である
図4で接続例を説明する。
【0032】
第2フィールド電極14は、
図2に示すように、フロートp領域22並びに第1フィールド電極13から離隔して形成されている。また、第2フィールド電極14は、第1半導体領域2から離隔して形成されている。すなわち、第2フィールド電極14は、第2の絶縁膜41の側面と底面に接して配置されている。つまり、第2フィールド電極14は、第2の絶縁膜41及び層間絶縁膜50に挟まれており、他の電極とは電気的に接続しておらず、電位がフローティングである。
【0033】
フロートp
-領域21と第1フィールド電極13との間の距離は、フロートp
-領域21と導電体5との間の距離より大きい。ここで、
図2に示すように、フロートp
-領域21と第1フィールド電極13との間の距離は、第2の溝31の側面及び底面に形成された第2の絶縁膜41の厚さN1と略等しい。また、フロートp
-領域21と導電体5との間の距離は、第1の溝3の側面及び底面に形成された第1の絶縁膜4の厚さN2と略等しい。すなわち、第2の溝31の側面及び底面に形成された第2の絶縁膜41の厚さN1は、
図2に示すように、第1の溝3の側面及び底面に形成された第1の絶縁膜4の厚さN2より厚くなっていることが望ましい。
【0034】
フロートp領域22の隣り合う溝間のピッチ(L1、L2、L3、・・・Ln)は、
図1に示すように、隣り合う第2の溝31と第3の溝32との幅L1または第3の溝32同士の幅(L2、L3、・・・、Ln)に相当する。また、第2の溝31からチャネルストッパn
+領域24方向に向かうにつれて、フロートp領域22の隣り合う溝間のピッチ(L1、L2、L3、・・・Ln)が狭くなるように配置されている。以下の説明において、隣り合う溝間の幅を隣り合う溝間のピッチとも称する。
【0035】
フロートp領域22の上部には、
図2に示すように、層間絶縁膜50が覆うようには配置されている。
【0036】
アノードp-領域23の不純物濃度は、フロートp領域22の不純物濃度よりも不純物濃度が低く設定されている。具体的には、アノードp-領域23の不純物濃度は、例えば、1x1015cm-3~1x1017cm-3程度で形成されている。
【0037】
アノードp
-領域23は、第1の主電極11と活性領域101のコンタクト領域30において、電気的に接続している。コンタクト領域30とは、
図1に示すように、アノードp
-領域23及び第1の溝3が一方の主面2aに露出する領域である。
図1に示すように、アノードp
-領域23の隣り合う第1の溝間のピッチM1は、活性領域101内の隣り合う第1の溝3同士の幅に相当する。
【0038】
隣り合う第2の溝31と第3の溝32とのピッチL1は、アノードp-領域23の隣り合う第1の溝3同士のピッチM1よりも広い。具体的には、隣り合う第2の溝31と第3の溝32とのピッチL1は、アノードp-領域23の隣り合う第1の溝同士のピッチM1の50倍程度である。例えば、アノードp-領域23の隣り合う第1の溝同士のピッチM1は、4~5μm程度である。隣り合う第2の溝31と第3の溝32とのピッチL1は、隣り合う第2の溝31と第1の溝3とのピッチよりも広い。
【0039】
第3の溝32の側面及び底面には、
図1に示すように、第3の絶縁膜42が設けられている。更に、第3の溝32の内側には、導電体52が充填されている。導電体52はアノード電極11と電気的に接続されている又は電位がフローティングである。
【0040】
導電体52は、例えば、ポリシリコンであってもよい。導電体52の上部には、
図2に示すように、層間絶縁膜50が覆うように配置されている。
【0041】
カソードn+領域25は、第2の主電極12と電気的に接続されている。
【0042】
第2の主電極12は、
図1に示すように、第1のカソード端子K1と電気的に接続されている。以下の説明において、第2の主電極12を第1のカソード電極12とも称する。第1のカソード電極12は、カソードn
+領域25が露出する他方の主面2b上に配置されている。
【0043】
チャネルストッパn+領域24は、第3の主電極15と電気的に接続されている。
【0044】
第3の主電極15は、
図1に示すように、第2のカソード端子K2と電気的に接続されている。以下の説明において、第3の主電極15を第2のカソード電極15とも称する。第2のカソード電極15は、チャネルストッパn
+領域24上に配置されている。
【0045】
図3は、実施形態に係る半導体装置1の構造を示す模式的な平面図である。
【0046】
活性領域101aには、
図3に示すように、平面視で、第1の溝3がアノードp
-領域23を囲むように配置されている。ここで、アノードp
-領域23は、
図3に示すように、ブロック状に形成されている。つまり、第1の溝3の延伸する方向(
図3のY方向)において、隣り合う第1の溝3同志は複数個所で接続しており、同様に第1の溝3内の導電体5も隣り合う導電体5同志が複数個所で接続している。なお、活性領域101aにおいて、第1の溝3とアノードp
-領域23のパターン構成は、図示されたブロック状のほかに、ストライプ状パターン、格子状パターン、千鳥格子状パターン、ドット状パターンであっても良い。ここで、「平面視」とは、一方の主面2aの面法線方向であり、
図3で紙面の上下方向(Z方向)から見た場合である。なお、
図3において、Z方向に垂直な平面をXY平面として、紙面の左右方向がY方向、紙面の上下方向がX方向である。
【0047】
活性領域101aの外側(半導体装置のコーナー側)101bでは、第1の溝3は円弧状になっており、円弧の中心側の第1の溝3と外側の第1の溝3とを複数個所で溝が繋がっており、その内部に設けられた導電体を通じて中心側の第1の溝3内の導電体5と外側の第1の溝3内の導電体5とを電気的に接続している。活性領域101は、
図3に示すように、第2の溝31に囲われた内側に配置されている。また、不活性領域102は、第2の溝31の外側に配置されている。不活性領域102の第3の溝32等は第2の溝31を囲むように形成されているが、
図3では省略されている。
【0048】
また、
図4は、
図3の第2の溝31周辺X2の拡大図である。
図4では、アノード電極11、第2のカソード電極15、及び層間絶縁膜50の図示を省略している。
図4のV-V線に沿った断面図が
図2に相当している。
図4の破線CBは、コンタクトの境界を表している。
【0049】
図4に示すように、第2の溝31は面内で略均一的に複数個所から第1の溝3への接続溝が形成されており、その接続溝内に設けられた導電体を通じて、導電体5は第1フィールド電極13と電気的に接続されている。
【0050】
図5は、本発明の実施形態に係る半導体装置1において、第1フィールド電極13をアノード電極11と同じ電位、第2フィールド電極14をフローティング電位に設定した場合の電位分布シミュレーション結果の模式図である。
【0051】
すなわち、
図5においては、第1フィールド電極13をアノード電極11と同じ電位、第2フィールド電極14をフローティング電位に設定することにより、第1の溝3の底面周辺P1及び、第1フィールド電極13の底面周辺P2並びにP3において、電界の緩和効果が得られている。このため、実施形態においては高耐圧の半導体装置を得ることができる。
図5において、各ラインは10V/本で示されている。
【0052】
次に、
図6は、第1の比較例として、第1フィールド電極13をフローティング電位、第2フィールド電極14をフローティング電位に設定した場合の電位分布シミュレーション結果の模式図である。
【0053】
第1フィールド電極13及び第2フィールド電極14をフローティング電位に設定した場合、電気力線はフロートp-領域21内の上方へと持ち上がり、第1の溝3の底面付近の電界P3において電界が集中している。そのため、耐圧劣化または第1の溝3に形成される第1の絶縁膜4の劣化が生じる可能性がある。以下の説明において、電界が集中することを電界集中と称することもある。
【0054】
次に、
図7は、第2の比較例として、第1フィールド電極13をアノード電極11と同じ電位、第2フィールド電極14をアノード電極11と同じ電位に設定した場合の電位分布シミュレーション結果の模式図である。
【0055】
第1フィールド電極13及び第2フィールド電極14をアノード電極11と同じ電位に設定した場合、第2フィールド電極14の底面及び側面の酸化膜周辺P4において電界が集中している。そのため、耐圧劣化または第2の溝31に形成される第2の絶縁膜41の劣化が生じる可能性がある。
【0056】
以上に説明したように、実施形態に係る半導体装置1では、第2の溝31の内部に配置された第1フィールド電極13をアノード電極11と同じ電位、第2フィールド電極14をフローティング電位とすることにより、第2の溝31と第2の溝31と隣り合う第1の溝3との間に設けられた第2半導体領域21に電気力線が入り込むことを抑制し、電気力線をよりフラットにすることができる。そのため、接合終端領域における電界を緩和し、高耐圧化を図ることができる。なお、電気力線をよりフラットにするため、第2の溝31は第1の溝3より幅広に形成することが望ましい。
【0057】
また、第2フィールド電極14をフローティング電位にすることにより、一部の電気力線が第2の溝31内に入り込むことで、第2の溝31の底部の第2フィールド電極14側のコーナー部の周辺の電界集中を緩和することができる。
【0058】
第1の溝3と第2の溝31との間に、フロートp-領域21を配置し、フロートp-領域21の深さD2を第2の溝31の深さD1の半分より深く、第2の溝31の深さD1よりも浅く配置することにより、フロートp-領域21内における一部の電気力線が一方の主面2a方向へ延びない(フロートp-領域21内における一部の電気力線が上方向に持ち上がってこない)ため、耐圧低下への影響を低減することができる。
【0059】
フロートp-領域21をフローティング電位にすることにより、第1の溝3及び第2の溝31の底部付近の電界集中を緩和し、アノード電極11に電気力線を到達し難くして耐圧が向上することができる。
【0060】
第2の絶縁膜41の厚さN1を第1の絶縁膜4の厚さN2より厚くすることにより、第2の溝31の底面周辺の漏れ電流を低減することができる。
【0061】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0062】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…半導体装置
2…第1半導体領域
3…第1の溝
4…第1の絶縁膜
5…導電体
11…第1の主電極、アノード電極
12…第2の主電極、第1のカソード電極
13…第1フィールド電極
14…第2フィールド電極
15…第3の主電極、第2のカソード電極
21…第2半導体領域、フロートp-領域
22…第3半導体領域、フロートp領域
23…第4半導体領域、アノードp-領域
24…第5半導体領域、チャネルストッパn+領域
25…第6半導体領域、カソードn+領域
30…コンタクト領域
31…第2の溝
32…第3の溝
41…第2の絶縁膜
42…第3の絶縁膜
50…層間絶縁膜
52…導電体
101…活性領域
102…不活性領域
2a…一方の主面
2b…他方の主面
A…アノード端子
K1…第1のカソード端子
K2…第2のカソード端子
N1…第2の絶縁膜の厚さ
N2…第1の絶縁膜の厚さ