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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】自車位置推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20250611BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021154532
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023045913
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】式町 健
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203515(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029734(WO,A1)
【文献】特開2020-64046(JP,A)
【文献】特開2020-112417(JP,A)
【文献】特開2021-26387(JP,A)
【文献】特開2017-161501(JP,A)
【文献】国際公開第2020/184013(WO,A1)
【文献】特開2008-293380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(200)に搭載されて用いられる自車位置推定装置(100)において、
前記自動車の周囲の物体および周囲の道路標示に関する外部情報を取得する外部情報取得部(110)と、
前記自動車の走行に関する状態量を取得する自車状態量取得部(110)と、
衛星測位システムにより前記自動車の位置する緯度経度を取得する衛星測位取得部(110)と、
車線に関する道路情報を有する地図データを取得する地図データ取得部(110)と、
前記外部情報、前記状態量、前記緯度経度および前記地図データに基づいて、前記自動車の地図上における自車位置を推定する位置推定部(120)と、
前記外部情報、前記状態量、前記緯度経度および前記地図データに基づいて、前記自動車の車線変更を判定する車線変更判定部(123)と、を備え、
前記位置推定部は、
複数の車線を有する道路上に前記自動車が位置する場合、前記外部情報および前記地図データを用いて、複数の車線のうち、どの車線に前記自動車が位置するかの確率を示す信頼度を車線毎に算出する信頼度算出部(121)と、
前記信頼度算出部が算出した信頼度を用いて、前記自動車の位置する車線を推定する車線推定部(122)と、を有し、
前記信頼度算出部は、前記車線変更判定部が車線変更したと判定した場合、車線変更した向きとは反対側の端に位置する車線の信頼度を、他の車線よりも低く設定し、
前記外部情報取得部は、前記自動車の両側の道路端までの距離をそれぞれ取得し、
前記車線変更判定部は、前記自動車から一方側の道路端までの距離が減少する変化、または他方側の道路端までの距離が増加する変化を用いて、前記一方側への車線変更を判定する自車位置推定装置。
【請求項2】
前記外部情報取得部は、前記自動車の両側に隣接する区画線の情報を取得し、
前記地図データの前記道路情報は、区画線の情報を含み、
前記信頼度算出部は、前記外部情報取得部が取得した両側に隣接する区画線の情報と、前記地図データに含まれる区画線の情報とを比較して、取得した両側に隣接する区画線が前記地図データの区画線と一致する車線の信頼度を、一致しない車線の信頼度よりも高くする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項3】
前記外部情報取得部は、道路の総車線数および前記自動車の左側に位置する車線数、および前記自動車の右側に位置する車線数をそれぞれ取得し、
前記地図データの前記道路情報は、車線数の情報を含み、
前記信頼度算出部は、前記外部情報取得部が取得した総車線数と、前記地図データに含まれる車線数とを比較して、取得した総車線数が前記地図データの車線数と一致する場合、両側に位置する車線数を用いて特定される前記自動車が位置する車線の信頼度を、他の車線の信頼度よりも高くする請求項1または2に記載の自車位置推定装置。
【請求項4】
前記外部情報取得部は、前記自動車の走行車線の前方の路面に形成されているマーク情報を取得し、
前記地図データの前記道路情報は、前記マーク情報を含み、
前記信頼度算出部は、前記外部情報取得部が取得した前記マーク情報と、前記地図データに含まれる前記マーク情報とを比較して、取得した前記マーク情報が前記地図データの前記マーク情報と一致する場合、一致する車線の信頼度を、一致しない車線の信頼度よりも高くする請求項1~3のいずれか1つに記載の自車位置推定装置。
【請求項5】
前記車線変更判定部は、前記信頼度算出部が算出した信頼度の最も高い車線が他の車線に変更になった場合に、車線変更したと判定する請求項1~4のいずれか1つに記載の自車位置推定装置。
【請求項6】
前記信頼度算出部は、異なる特徴を用いて算出される各信頼度に対して重み係数を用いて各信頼度を統合した信頼度を算出する請求項1~のいずれか1つに記載の自車位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、自車両の道路上における走行位置を推定する自車位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車線内位置と絶対位置及びその誤差との相互関係に基づいて、車線内位置が車線情報によって特定される車線のいずれに該当するか判別し、判別結果に基づいて走行車線を推定する自己位置推定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-155732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の技術では、ジャイロセンサによる車線内位置の推定結果の誤差が車線幅よりも大きいと、車線候補を推定精度が悪化するという問題がある。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、走行車線の推定精度に優れる自車位置推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された自車位置推定装置は、自動車(200)に搭載されて用いられる自車位置推定装置(100)において、自動車の周囲の物体および周囲の道路標示に関する外部情報を取得する外部情報取得部(110)と、自動車の走行に関する状態量を取得する自車状態量取得部(110)と、衛星測位システムにより自動車の位置する緯度経度を取得する衛星測位取得部(110)と、車線に関する道路情報を有する地図データを取得する地図データ取得部(110)と、外部情報、状態量、緯度経度および地図データに基づいて、自動車の地図上における自車位置を推定する位置推定部(120)と、外部情報、状態量、緯度経度および地図データに基づいて、自動車の車線変更を判定する車線変更判定部(123)と、を備え、位置推定部は、複数の車線を有する道路上に自動車が位置する場合、外部情報および地図データを用いて、複数の車線のうち、どの車線に自動車が位置するかの確率を示す信頼度を車線毎に算出する信頼度算出部(121)と、信頼度算出部が算出した信頼度を用いて、自動車の位置する車線を推定する車線推定部(122)と、を有し、信頼度算出部は、車線変更判定部が車線変更したと判定した場合、車線変更した向きとは反対側の端に位置する車線の信頼度を、他の車線よりも低く設定し、外部情報取得部は、自動車の両側の道路端までの距離をそれぞれ取得し、車線変更判定部は、自動車から一方側の道路端までの距離が減少する変化、または他方側の道路端までの距離が増加する変化を用いて、一方側への車線変更を判定する。
【0008】
このような自車位置推定装置に従えば、複数の車線を有する道路上に自動車が位置する場合、複数の車線のうち、どの車線に自動車が位置するかの確率を示す信頼度を車線毎に算出する。車線毎の信頼度であるので、車線内の位置に依存する値ではない。したがって自動車の状態量に基づく位置推定精度が悪い場合でも、外部情報および地図データに基づいて、車線毎に信頼度が算出されるので、信頼度を用いて自動車が位置する車線を特定することができる。これによって走行車線の推定精度を向上することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両システムを示すブロック図。
図2】自車両を示す側面図。
図3】区画線を用いた信頼度の算出方法の一例を説明する図。
図4】車線数を用いた信頼度の算出方法の一例を説明する図。
図5】道路標示を用いた信頼度の算出方法の一例を説明する図。
図6】車線変更を用いた信頼度の算出方法の一例を説明する図。
図7】車線変更の判定方法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、図1図7を用いて説明する。本実施形態の自車位置推定装置100は、たとえば、ナビゲーションシステムが設けられた車両、あるいは自動運転機能を備える車両の車両システム10の一部として搭載されている。自車位置推定装置100は、自車両200が実際に走行する中で、後述する各種データに基づいて自車位置、つまり地図上のどの位置、具体的にはどの道路のどの車線を走行しているかを推定する。自車位置推定装置100は、推定した車線を含む自車位置を他の装置に出力する。
【0012】
自車位置推定装置100が自車両200の位置を推定することで、たとえば運転者に対して安全運転のための支援、および自動運転のための支援を行う。自車両200は、自動車に対応する。車両システム10は、図1に示すように、周辺監視センサ20、自車状態量センサ部30、GNSS受信器40、地図データ記憶部50、および自車位置推定装置100を含んで構成される。
【0013】
周辺監視センサ20は、図2に示すように、自車両200の周辺環境を監視するセンサである。周辺監視センサ20は、自車周囲の検出範囲から、歩行者、サイクリスト、人間以外の動物および他車両等の移動物体、さらに路上の落下物、ガードレール、縁石、道路標識、路面標示、及び道路脇にある構造物等の静止物体を検出可能である。周辺監視センサ20は、自車両200の周囲の物体を検出した外部情報であるセンシング情報を、自車位置推定装置100に出力する。
【0014】
周辺監視センサ20は、自車両200の周囲の物体および周囲の道路標示に関する外部情報を取得する。具体的には、周辺監視センサ20は、自車両200の両側に隣接する区画線の情報、道路の総車線数、自車両200の両側に位置する車線数を検出する。また周辺監視センサ20は、自車両200の走行車線の前方の路面標示などのマーク情報、自動車の両側の道路端までの距離をそれぞれ取得する。
【0015】
周辺監視センサ20は、物体検出のための検出構成として、たとえばフロントカメラ及びミリ波レーダを有している。フロントカメラは、自車両200の前方範囲を撮影した撮像データ、及び撮像データの解析結果の少なくとも一方を、センシング情報として出力する。ミリ波レーダは、たとえば自車両200の前後の各バンパーに互いに間隔を開けて複数配置されている。ミリ波レーダは、ミリ波又は準ミリ波を、自車両200の周囲に向けて照射する。ミリ波レーダは、移動物体及び静止物体等で反射された反射波を受信する処理によりセンシング情報を生成する。
【0016】
自車状態量センサ部30は、自車両200の走行に関する状態量、たとえば、車速、加速度およびヨーレート等を検出する。自車状態量センサ部30は、検出した状態量のデータを自車位置推定装置100に出力する。
【0017】
GNSS(Global Navigation Satellite System)受信器40は、図2に示すように、複数の人工衛星から送信された測位信号を受信する。人工衛星は、測位衛星ともいう。GNSS受信器40は、GPS、GLONASS、Galileo、IRNSS、QZSSおよびBeidouの衛星測位システムのうち少なくとも一つの衛星測位システムの各測位衛星から、測位信号を受信可能である。GNSS受信器40は、受信した測位信号をGPS情報として、自車位置推定装置100に出力する。
【0018】
地図データ記憶部50は、地図データを保有する部位である。地図データ記憶部50は、自車位置推定装置100に接続され、地図データが自車位置推定装置100によって読み出し可能である。地図データは、たとえばリンクおよびノードを用いて道路を表現した地図を定義している。具体的には、地図データは、道路に沿う所定長さの線分として形成されたリンクが、ノードによって順次接続されて形成されている。
【0019】
地図データには、道路に関する道路情報が含まれる。道路情報は、車線数、車線位置、車線形状およびマーク情報を含んでいる。マーク情報は、路面に形成されている記号、矢印および図形などの情報であり、路面標示の情報を含んでいる。マーク情報は、道路交通法などの法律で定められている路面標示以外の情報として、たとえばその地域独自で使用されている図形などの情報も含む。路面標示の情報には、区画線および道路標示の情報が含まれる。
【0020】
区画線は、車道外側線と車線境界線と含む。車道外側線は、車道と路肩との境界を示す区画線であり、実線で示されている。車線境界線は、車線同士の境界を示す区画線であり、実線または破線で示されている。区画線の情報には、線の色、たとえば黄色および白色などの情報も含む。道路標示は、たとえば転回禁止、進行方向別通行区分、最高速度など交通制御、交通規制のための路面に描かれたペイントである。
【0021】
また地図データには、車線が区切られていない区間である無車線区間の情報が含まれている。無車線区間においては、車線境界線が示されておらず、車道外側線のみが示されている。無車線区間の情報には、無車線区間の距離を示す情報や、位置を示す情報が含まれる。
【0022】
地図データ記憶部50は、自車位置推定装置100に設けられるものに代えて、たとえば、クラウド上のサーバを活用したものとしてもよい。クラウドサーバから自車位置推定装置100へ地図データを送信することで同様の機能を持たせることができる。
【0023】
自車位置推定装置100、複数の取得情報を組み合わせる複合測位により、自車両200の高精度な位置情報等を生成する。また自車位置推定装置100は、複数車線を含む道路において、自車両200が走行する一つの車線を推定する。
【0024】
自車位置推定装置100は、制御装置であって、記憶媒体に記憶されているプログラムを実行し、各部を制御する。自車位置推定装置100は、少なくとも一つの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体とを有する。自車位置推定装置100は、たとえばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって実現される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって実現される。
【0025】
自車位置推定装置100は、機能ブロックとして、情報取得部110と、位置推定部120とを有する。情報取得部110は、周辺監視センサ20からのセンシング情報、自車状態量センサ部30からの状態量のデータ、GNSS受信器40からのGPS情報、地図データ記憶部50からの地図データを取得する。したがって情報取得部110は、外部情報取得部、自車状態量取得部、衛星測位取得部、および地図データ取得部として機能する。情報取得部110は、取得した情報を位置推定部120に与える。
【0026】
位置推定部120は、センシング情報、状態量のデータ、GPS情報、および地図データ等に基づいて、自車両200の地図上における自車位置を推定する。たとえば位置推定部120は、GNSS受信器40が取得したGPS情報から、自車両200の現在位置を示す緯度経度を推定する。また位置推定部120は、自車状態量センサ部30によって検出された状態量のデータから、自車両200が直線路を走行しているのか、どの程度の曲率のカーブ路を走行しているのか、あるいは、車線から外れるような走行をしているのか等を推定する。
【0027】
位置推定部120は、サブ機能ブロックとして、信頼度算出部121、車線推定部122、車線変更判定部123とを有する。信頼度算出部121は、複数の車線を有する道路上に自車両200が位置する場合、複数の車線のうち、どの車線に自車両200が位置するかの確率を示す信頼度を車線毎に算出する。
【0028】
車線推定部122は、信頼度算出部121が算出した信頼度を用いて、自車両200の位置する車線を推定する。車線推定部122は、たとえば信頼度が最も高い車線を自車両200が位置する車線と推定する。また車線推定部122は、たとえば信頼度が最も高い車線が複数ある場合には、自車両200が位置する車線を1つに推定しない。
【0029】
車線変更判定部123は、センシング情報、状態量のデータ、GPS情報および地図データに基づいて、自車両200の車線変更を判定する。車線変更とは、走行している車線から、右側または左側に隣接する車線に移動して、走行する車線を変更することである。
【0030】
次に、信頼度の算出に関して説明する。図3に示す例では、位置推定部120は、現在、片側4車線の道路のうち第1車線L1を走行していると推定している。しかし、実際は、第2車線L2を走行している。そして、センシング情報では、自車の両側に隣接する区画線の情報が、両方とも破線である。地図データには、走行中の区画線の情報として、5本の区画線があり、その線種は左側と右側が実線であり、中央の3本が破線の情報が記憶されている。したがって両側の区画線が破線である車線は、第2車線L2および第3車線L3である。第1車線L1を走行している場合には、左側の区画線が実線であり、右側の区画線は破線が検出されるはずである。
【0031】
センシング情報と地図データとの区画線の情報を比較すると、第2車線L2と第3車線L3の情報が一致し、第1車線L1と第4車線L4の情報が一致しない。したがって、この場合は、第2車線L2および第3車線L3にいる確率が、第1車線L1および第4車線L4にいる確率よりも高い。そこで、図3に示すように、確率を示す信頼度を、第2車線L2および第3車線L3について、第1車線L1および第4車線L4よりも高くなるように設定する。これによって位置推定部120は、信頼度を用いて、第1車線L1にはいないと判断して、第2車線L2または第3車線L3に位置すると推定し直す。
【0032】
このように信頼度算出部121は、センシング情報による両側に隣接する区画線の情報と、地図データに含まれる区画線の情報とを比較して、取得した両側に隣接する区画線が地図データの区画線と一致する車線の信頼度を、一致しない車線の信頼度よりも高くする。たとえば区画線の色を用いても判断する。両側に隣接する区画線が白色であるか、または黄色であるかなどによって、地図データに含まれる情報を一致するか否かを判断し、信頼度を設定する。
【0033】
次に、車線数を用いる信頼度の算出方法に関して説明する。図4に示すように、自車両200は、片側3車線の第2車線L2を走行中である。センシング情報には、走行している道路の総車線数および自車両200の左側に位置する車線数、および自車両200の右側に位置する車線数が含まれている。センシング情報には、区画線情報が含まれるので、区画線の本数を用いて車線数を取得する。図4に示す例では、センシング情報が適切であれば、左側の車線数は1、右側の車線数は1となる。
【0034】
そして地図データから走行中の車線数は3とわかるので、センシング情報が示す両側に位置する車線数を用いて自車の走行車線を推定することができる。具体的には、片側3車線の第1車線L1を走行している場合は、左側の車線数は0、右側の車線数は2となる。また片側3車線の第2車線L2を走行している場合は、左側の車線数は1、右側の車線数は1となる。さらに片側3車線の第3車線L3を走行している場合は、左側の車線数は2、右側の車線数は0となる。したがって信頼度算出部121は、検出した車線数を用いて、走行車線の信頼度を高くして、他の車線の信頼度を低くする。
【0035】
しかし、周辺監視センサ20が車線数を検出できない場合がある。たとえば右側に隣接する車線に他の周辺車両201が走行している場合は、右側の車線を認識することができず、センシング情報を用いて左側の車線数は1、右側の車線数は0となることがある。したがって地図データの車線数と異なるので、信頼度算出部121は、各車線の信頼度に高低を付けることが困難である。
【0036】
したがって地図データの車線数とセンシング情報の総車線数とが一致する場合には、前述のように両側の車線数に応じた車線の位置する信頼度を、一致しない車線に比べて高くなるように算出する。逆に、地図データの車線数とセンシング情報の総車線数とが一致しない場合には、センシング情報に誤りがある可能性があるので、どの車線の信頼度も同じになるように算出する。
【0037】
このように信頼度算出部121は、センシング情報の総車線数と、地図データに含まれる車線数とを比較して、取得した総車線数が地図データの車線数と一致する場合、両側に位置する車線数を用いて特定される自動車が位置する車線の信頼度を、他の車線の信頼度よりも高くする。
【0038】
次に、道路標示を用いる信頼度の算出方法に関して説明する。図5に示す例では、位置推定部120は、現在、自車両200が片側3車線の中央の第2車線L2と推定している。しかし、実際は、第1車線L1を走行している。そして、センシング情報では、自車両200の前方の路面標示は、直進左折矢印である。地図データには、路面標示が直線左折矢印の車線は、第1車線L1に位置すると記憶されている。したがってセンシング情報の前方の路面標示と、地図データに含まれる路面標示とは一致しない。仮に、第2車線L2を走行している場合は、自車両200の前方の路面標示は、直進矢印である。したがって、この場合は、図5に示すように、直進左折矢印と一致する第1車線L1の信頼度を、一致しない第2車線L2および第3車線L3よりも高くなるように設定する。
【0039】
このように信頼度算出部121は、センシング情報の路面標示と、地図データに含まれる路面標示とを比較して、取得した路面標示が地図データの路面標示と一致する場合、一致する車線の信頼度を、一致しない車線の信頼度よりも高くする。これによって位置推定部120は、信頼度を用いて、第1車線L1に位置すると推定し直す。
【0040】
次に、車線変更を用いる信頼度の算出方法に関して説明する。図6に示すように、位置推定部120は、現在、自車両200が片側3車線の中央を走行中と推定している。そして、実際も、第2車線L2を走行している。そして、車線変更判定部123によって、走行車線を右側の車線に変更したと判定した場合について説明する。
【0041】
右側に車線変更したと判定された場合には、第1車線L1にいる確率は、第2車線L2および第3車線L3にいる確率よりも低くなる。逆に、左側に車線変更したと判定された場合には、第3車線L3にいる確率は、第1車線L1および第2車線L2にいる確率よりも低くなる。したがって図6に示す例では、右側に車線変更したので、第2車線L2および第3車線L3にいる確率を第1車線L1よりも高くなるように算出する。
【0042】
片側2車線の場合には、右側に車線変更したと判定された場合には、第1車線L1にいる確率は、第2車線L2にいる確率よりも低くなる。逆に、左側に車線変更したと判定された場合には、第2車線L2にいる確率は、第1車線L1にいる確率よりも低くなる。
【0043】
このように信頼度算出部121は、車線変更判定部123が車線変更したと判定した場合、車線変更した向きとは反対側の端に位置する車線の信頼度を、他の車線よりも低くする。
【0044】
このように信頼度算出部121は、車線数、路面標示、車線変更などを用いて、車線それぞれの信頼度を算出する。そして信頼度算出部121は、異なる特徴を用いて算出される各信頼度に対して重み係数を用いて各信頼度を統合した信頼度を算出する。たとえば路面標示を用いた信頼度を、車線変更を用いた信頼度よりも重要と設定して、重みを大きくする。これによって位置推定部120は、総合した信頼度を用いて、走行する車線を推定することができる。
【0045】
次に、車線変更判定部123の車線変更の判定方法に関して説明する。車線変更判定部123は、第1の判定方式として、区画線を検出している場合、区画線を横断したときに車線変更したと判定する。また車線変更判定部123は、第2の判定方式として、自車両200は車線中心線付近を走行している場合、車線中心線と自車両200の中心位置との距離が増加傾向にあり、かつ所定の閾値を超えた場合、車線変更したと判定する。
【0046】
また車線変更判定部123は、第3の判定方式として、自動車から一方側の道路端までの距離が減少する変化、または他方側の道路端までの距離が増加する変化を用いて、一方側への車線変更を判定する。周辺監視センサ20が区画線を認識できないが、道路端を認識している場合に有効な方式である。区画線は、劣化および水溜まりなどによって検出困難な場合があるが、道路端は段差などによって検出が容易な場合が多い。
【0047】
具体的には、図7に示すように、道路端までの距離として、自車の中心から、左側の道路端までの左端距離W2と、右側の道路端までの右端距離W1を検出している。そして車線を、図7に示すように、左側の車線に変更する場合、左端距離W2は減少し、その減少とともに右端距離W1が増加する。そして減少幅または増加幅が閾値を超えた場合は、車線変更したと判定する。
【0048】
また車線変更判定部123は、第4の判定方式として、信頼度算出部121が算出した信頼度の最も高い車線が他の車線に変更になった場合に、車線変更したと判定する。信頼度は車線毎に算出され、信頼度が高い車線がある場合には、その車線に自車が位置する可能性が高い。したがって信頼度が高い車線が他の車線に変更になった場合は、車線変更をしたと判定する。
【0049】
このように車線変更判定部123は、4つの判定方式を用いて車線変更を判定する。車線変更判定部123は、4つの判定方式のいずれか1つだけを用いて車線変更を判定してもよく、2つ以上の判定方式の判定結果を総合して車線変更を判定してもよい。
【0050】
以上説明したように本実施形態の自車位置推定装置100に従えば、複数の車線を有する道路上に自車両200が位置する場合、信頼度を車線毎に算出する。車線毎の信頼度であるので、車線内の位置に依存する値ではない。したがって自動車の状態量に基づく位置推定精度が悪い場合でも、センシング情報および地図データに基づいて、車線毎に信頼度が算出されるので、信頼度を用いて自動車が位置する車線を特定することができる。これによって走行車線の推定精度を向上することができる。
【0051】
また本実施形態では、信頼度算出部121は、センシング情報が示す両側に隣接する区画線の情報と、地図データに含まれる区画線の情報とを比較して、取得した両側に隣接する区画線が地図データの区画線と一致する車線の信頼度を、一致しない車線の信頼度よりも高くする。区画線を用いるので、信頼度の精度を算出することができる。
【0052】
さらに本実施形態では、信頼度算出部121は、センシング情報が示す総車線数と、地図データに含まれる車線数とを比較して、取得した総車線数が地図データの車線数と一致する場合、両側に位置する車線数を用いて特定される自車両200が位置する車線の信頼度を、他の車線の信頼度よりも高くする。両側の車線数を用いるので、信頼度の精度をさらに向上することができる。
【0053】
また本実施形態では、信頼度算出部121は、センシング情報のマーク情報と、地図データに含まれるマーク情報とを比較して、取得したマーク情報が地図データのマーク情報と一致する場合、一致する車線の信頼度を、一致しない車線の信頼度よりも高くする。マーク情報を用いるので、信頼度の精度をさらに向上することができる。
【0054】
さらに本実施形態では、信頼度算出部121は、車線変更判定部123が車線変更したと判定した場合、車線変更した向きとは反対側の端に位置する車線の信頼度を、他の車線よりも低くする。車線変更を用いることで、信頼度が低い車線の推定精度を向上することができる。
【0055】
また本実施形態では、車線変更判定部123は、自車両200から一方側の道路端までの距離が減少する変化、または他方側の道路端までの距離が増加する変化を用いて、一方側への車線変更を判定する。道路端までの距離を用いて走行車線を変更の有無を判定するので、区画線が検出できない場合であっても、車線変更を判定することができる。
【0056】
さらに本実施形態では、車線変更判定部123は、信頼度算出部121が算出した信頼度の最も高い車線が他の車線に変更になった場合に、車線変更したと判定する。これによって信頼度を用いて車線変更を判定することができる。
【0057】
また本実施形態では、信頼度算出部121は、異なる特徴を用いて算出される各信頼度に対して重み係数を用いて各信頼度を統合した信頼度を算出する。信頼度を統合することで、より信頼度の精度を向上することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0059】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0060】
前述の第1実施形態では、情報取得部110は、外部情報取得部、自車状態量取得部、衛星測位取得部および地図データ取得部の機能を有するが、これらを一体にする構成に限るものではなく、別の箇所でそれぞれの機能を実現してもよい。
【0061】
前述の第1実施形態において、自車位置推定装置100によって実現されていた機能は、前述のものとは異なるハードウェアおよびソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実現してもよい。自車位置推定装置100は、たとえば他の制御装置と通信し、他の制御装置が処理の一部または全部を実行してもよい。自車位置推定装置100が電子回路によって実現される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって実現することができる。
【0062】
前述の第1実施形態では、自車位置推定装置100は車両で用いられているが、車両に搭載された状態に限定されるものではなく、少なくとも一部が車両に搭載されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…車両システム 20…周辺監視センサ 30…自車状態量センサ部
40…GNSS受信器 50…地図データ記憶部 100…自車位置推定装置
110…情報取得部(外部情報取得部,自車状態量取得部,衛星測位取得部)(地図データ取得部) 120…位置推定部 121…信頼度算出部 122…車線推定部
123…車線変更判定部 200…自車両(自動車) L1…第1車線
L2…第2車線 L3…第3車線 L4…第4車線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7