(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】電力変換装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250611BHJP
【FI】
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2022059355
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2024-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2021073198
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】江頭 大也
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/064884(WO,A1)
【文献】特開2015-002657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相3線式の交流電路に交流出力を提供する電力変換装置であって、
インバータと、
前記インバータと前記交流電路との間に設けられた交流リアクトルと、
前記インバータに直流電圧を供給するDCバスと、
前記DCバスの2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧となる第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列体と、
前記DCバスの2線間に設けられ、前記中点電圧を制御する中点電圧制御部と、
前記交流電路の第1電圧線と中性線との間の第1相電圧、及び、前記交流電路の第2電圧線と前記中性線との間の第2相電圧を取得する交流側電圧センサと、
前記インバータに対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、前記中点電圧制御部を制御する制御部と、を備え、
前記交流リアクトルは、前記インバータの出力端から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に至る2線に共通のコアを有するものであり、
前記制御部は、
前記第1電圧線と前記第2電圧線との間の線間電圧が目標値となるように前記インバータを制御し、
前記第1相電圧と前記第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記中点電圧が、前記DCバスの2線間の電圧の中間値からずれるように、前記中点電圧制御部を制御する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1相電圧の位相と前記第2相電圧を反転させた反転電圧の位相とが一致するように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1相電圧の位相又は前記第2相電圧を反転させた反転電圧の位相と、前記線間電圧の位相とが一致するように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1相電圧及び前記反転電圧の位相差がある場合に、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記位相差を低減する、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1相電圧又は前記反転電圧と、前記線間電圧とに位相差がある場合に、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記位相差を低減する、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記線間電圧のゼロクロス検出時における前記第1相電圧、及び、前記線間電圧のゼロクロス検出時における前記第2相電圧、のうち少なくとも1つの電圧に基づいて、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記第1相電圧及び前記反転電圧の位相差を低減する、
請求項3又は請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1相電圧及び前記第2相電圧の差がある場合に、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記差を低減する、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記バイアス電圧は、矩形波、正弦波又は三角波である、
請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第1相電圧及び前記第2相電圧は、瞬時値又は実効値である、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記交流リアクトルは和動接続されている、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
インバータと、前記インバータと単相3線式の交流電路との間に設けられた交流リアクトルと、前記インバータに直流電圧を供給するDCバスと、前記DCバスの2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧となる第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列体と、前記DCバスの2線間に設けられ、前記中点電圧を制御する中点電圧制御部と、前記インバータに対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、前記中点電圧制御部を制御する制御部と、を備え、前記交流電路に交流出力を提供する電力変換装置についての、前記制御部による制御方法であって、
前記交流電路の第1電圧線と第2電圧線との間の線間電圧が目標値となるように前記インバータを制御し、
前記交流電路の中性線から見た第1相電圧と第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する、
電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電力変換装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単相3線式の自立出力を提供することができる電力変換装置が、例えば特許文献1に提案されている。特許文献1の電力変換装置は、2相ハーフブリッジのインバータと、DCバスの中点電位を調節するコンバータとを含むものである。このインバータは、DCバスの2線間に、ハイサイドの第1スイッチング素子及びローサイドの第2スイッチング素子の直列体と、ハイサイドの第3スイッチング素子及びローサイドの第4スイッチング素子の直列体とが、接続されている。DCバスの中点電位を制御するコンバータは、DCバスの2線間に接続した一対のコンデンサの直列体における相互接続点の電位が、DCバスの2線間の電位の中間になるように制御する。この相互接続点は、単相3線の中性線と直結されている。
【0003】
インバータの制御部は、ユニポーラ方式のパルス幅変調制御(PWM(Pulse Width Modulation)制御)により4つのスイッチング素子の開閉を制御する。第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子が交互にオンすることにより、単相3線式の第1電圧線(U線)と中性線(O線)との間のU相電圧が出力される。第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子が交互にオンすることにより、単相3線式の第2電圧線(W線)と中性線(O線)との間のW相電圧が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の電力変換装置では、第1スイッチング素子と第4スイッチング素子との開閉、及び、第2スイッチング素子と第3スイッチング素子との開閉が、互いに同期しない。このため、DCバスの対地電位がスイッチングによって大きく変動し、交流出力端子に多大なコモンモードノイズが発生する。このコモンモードノイズを抑制するために、コモンモードチョークコイル及びYコンデンサを含む、高価で大きなフィルタ回路が必要になる。また、U線、W線には、それぞれ平滑用のリアクトルを配置しなければならない。そのため、電力変換装置を小型化することが困難である。また、それぞれのリアクトルで大きな鉄損が発生する。
【0006】
一方、自立出力を単相3線の交流負荷に供給する場合、U相の負荷とW相の負荷との不均衡があると、U相電圧とW相電圧とが一致しなくなる。この場合、上述のような中点電位の制御では、U相電圧とW相電圧とを一致させることができない。
【0007】
本開示は、単相3線式で自立出力を提供することができる電力変換装置において、小型化と相電圧の不均衡抑制とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は特許請求の範囲によって定められるものである。
【0009】
(電力変換装置)
開示するのは、単相3線式の交流電路に交流出力を提供する電力変換装置であって、
インバータと、
前記インバータと前記交流電路との間に設けられた交流リアクトルと、
前記インバータに直流電圧を供給するDCバスと、
前記DCバスの2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧となる第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列体と、
前記DCバスの2線間に設けられ、前記中点電圧を制御する中点電圧制御部と、
前記交流電路の第1電圧線と中性線との間の第1相電圧、及び、前記交流電路の第2電圧線と前記中性線との間の第2相電圧を取得する交流側電圧センサと、
前記インバータに対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、前記中点電圧制御部を制御する制御部と、を備える。
前記交流リアクトルは、前記インバータの出力端から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に至る2線に共通のコアを有するものであり、
前記制御部は、
前記第1電圧線と前記第2電圧線との間の線間電圧が目標値となるように前記インバータを制御し、
前記第1相電圧と前記第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する。
【0010】
(電力変換装置の制御方法)
インバータと、前記インバータと単相3線式の交流電路との間に設けられた交流リアクトルと、前記インバータに直流電圧を供給するDCバスと、前記DCバスの2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧となる第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列体と、前記DCバスの2線間に設けられ、前記中点電圧を制御する中点電圧制御部と、前記インバータに対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、前記中点電圧制御部を制御する制御部と、を備え、前記交流電路に交流出力を提供する電力変換装置についての、前記制御部による制御方法であって、
前記交流電路の第1電圧線と第2電圧線との間の線間電圧が目標値となるように前記インバータを制御し、
前記交流電路の中性線から見た第1相電圧と第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、単相3線式で自立出力を提供することができる電力変換装置において、小型化と相電圧の不均衡抑制とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、電力変換装置の一例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、制御部において実行されるインバータについての制御、及び、中点電圧制御部についての制御に関する、制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、交流電路のU線-O線間のみに抵抗負荷を接続し、W線-O線間を無負荷としたときの交流出力波形を示すグラフである。
【
図4】
図4は、制御部において実行されるインバータについての制御、及び、中点電圧制御部についての制御に関する、
図2とは異なる他の制御ブロック図である。
【
図5】
図5は、制御部において実行されるインバータについての制御、及び、中点電圧制御部についての制御に関する、
図2、
図4とは異なる他の制御ブロック図である。
【
図6】
図6は、交流電路のU線-O線間のみに半波整流の抵抗負荷を接続し、W線-O線間を無負荷としたときの交流出力波形を示すグラフである。
【
図7】
図7は、交流電路のU線-O線間を無負荷とし、W線-O線間に1.5kWの抵抗負荷を接続したときの交流出力波形及び中点制御電流を示すグラフである。
【
図8】
図8は、交流電路のU線-O線間を無負荷とし、W線-O線間に3kWの抵抗負荷を接続したときの交流出力波形及び中点制御電流を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第2例の交流符号指示部から出力される信号を説明する図である。
【
図10】
図10は、第4例における交流符号指示部の内部構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第4例の交流符号指示部から出力される信号を説明する図である。
【
図12】
図12は、交流電路のU線-O線間を無負荷とし、W線-O線間に3kWの抵抗負荷を接続したときの交流出力波形及び中点制御電流を示すグラフである。
【
図13】
図13は、第5例における交流符号指示部の内部構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、第6例における交流符号指示部の内部構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、
図9(a)のうち線間電圧のゼロクロス検出時の各電圧を拡大して示すグラフである。
【
図16】
図16は、第7例における交流符号指示部の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下のものが含まれる。
【0014】
(1)本開示の電力変換装置は、単相3線式の交流電路に交流出力を提供する電力変換装置であって、インバータと、前記インバータと前記交流電路との間に設けられた交流リアクトルと、前記インバータに直流電圧を供給するDCバスと、前記DCバスの2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧となる第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列体と、前記DCバスの2線間に設けられ、前記中点電圧を制御する中点電圧制御部と、前記交流電路の第1電圧線と中性線との間の第1相電圧、及び、前記交流電路の第2電圧線と前記中性線との間の第2相電圧を取得する交流側電圧センサと、前記インバータに対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、前記中点電圧制御部を制御する制御部と、を備えている。前記交流リアクトルは、前記インバータの出力端から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に至る2線に共通のコアを有するものであり、前記制御部は、前記第1電圧線と前記第2電圧線との間の線間電圧が目標値となるように前記インバータを制御し、前記第1相電圧と前記第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する電力変換装置である。
【0015】
このような電力変換装置では、自立運転中に、インバータは相電圧を制御せず第1電圧線と第2電圧線との間の線間電圧を目標値に合わせるよう動作する。制御部は、中点電圧制御部を制御して中点電圧を調節することにより、第1相電圧と第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるようにする。中点電圧は中間値とは限らず、中間値からいずれか一方に偏る場合もある。また、バイポーラ方式のパルス幅変調制御により、DCバスの対地電圧が安定し、コモンモードノイズを低減することができ、電圧線の2線に共通のコアを持つ交流リアクトルを用いることができる。その結果、ノイズフィルタ及び交流リアクトルを小型化できるので、電力変換装置の小型化が可能となる。
【0016】
(2)前記(1)の電力変換装置において、前記制御部は、前記中点電圧が、前記DCバスの2線間の電圧の中間値からずれるように、前記中点電圧制御部を制御する。
この場合、第1相の交流負荷と、第2相の交流負荷とが、不均等であっても、中点電圧が中間値からずれることで、第1相電圧と第2相電圧とが、絶対値で互いに均等になることができる。
【0017】
(3)前記(1)又は(2)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1相電圧の位相と前記第2相電圧を反転させた反転電圧の位相とが一致するように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する。
これにより、交流側の相電圧調整を行いつつ、第1相電圧及び反転電圧の位相差を調整しない場合と比べて、中点制御電流を低減することができる。この結果、電流定格の小さい直流リアクトルを使用することができるため、直流リアクトルの大型化を抑制したり、高コスト化を抑制したり、損失の増大を抑制したりすることができる。
【0018】
(4)前記(1)又は(2)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1相電圧の位相又は前記第2相電圧を反転させた反転電圧の位相と、前記線間電圧の位相とが一致するように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する。
これにより、交流側の相電圧調整を行いつつ、第1相電圧又は反転電圧と、線間電圧との位相差を調整しない場合と比べて、中点制御電流を低減することができる。この結果、電流定格の小さい直流リアクトルを使用することができるため、直流リアクトルの大型化を抑制したり、高コスト化を抑制したり、損失の増大を抑制したりすることができる。また、第1相電圧及び第2相電圧のうち一方の位相を算出すればよいため、回路構成をより簡素化することができる。
【0019】
(5)前記(3)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1相電圧及び前記反転電圧の位相差がある場合に、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記位相差を低減する。
第1相電圧及び反転電圧の位相に基づいて中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与することで、第1相電圧及び反転電圧の位相差をゼロに近づける(又はゼロにする)ように調節することができる。
【0020】
(6)前記(4)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1相電圧又は前記反転電圧と、前記線間電圧とに位相差がある場合に、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記位相差を低減する。
第1相電圧又は反転電圧の位相と、線間電圧の位相とに基づいて中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与することで、第1相電圧又は反転電圧と、線間電圧との位相差をゼロに近づける(又はゼロにする)ように調節することができる。
【0021】
(7)前記(3)又は(4)の電力変換装置において、前記制御部は、前記線間電圧のゼロクロス検出時における前記第1相電圧、及び、前記線間電圧のゼロクロス検出時における前記第2相電圧、のうち少なくとも1つの電圧に基づいて、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記第1相電圧及び前記反転電圧の位相差を低減する。
これにより、第1相電圧及び第2相電圧の位相ではなく、線間電圧のゼロクロス検出時における各電圧に基づいてバイアス電圧を付与すればよいため、位相を算出する必要がなく、回路構成をより簡素化することができる。
【0022】
(8)前記(1)又は(2)の電力変換装置において、前記制御部は、前記第1相電圧及び前記第2相電圧の差がある場合に、前記中点電圧に正又は負のバイアス電圧を付与して前記差を低減する。
中点電圧を必ずしも中間値にするのではなく、バイアス電圧の付与により偏らせることで、第1相の交流負荷と、第2相の交流負荷とが、不均等であっても、第1相電圧と第2相電圧とが、絶対値で互いに均等になるように調節することができる。
【0023】
(9)前記(5)から(8)のいずれかの電力変換装置において、前記バイアス電圧は、矩形波、正弦波又は三角波である。
【0024】
(10)前記(1)又は(2)の電力変換装置において、前記第1相電圧及び前記第2相電圧は、瞬時値又は実効値である。
第1相電圧及び第2相電圧としては、瞬時値、実効値のいずれをも用いることができる。瞬時値を用いると制御のレスポンスが早いが若干過敏な制御になる。実効値を用いると制御のレスポンスは、瞬時値よりは遅いが、過敏にならない安定した制御になる。
【0025】
(11)前記(1)から(10)のいずれかの電力変換装置において、前記交流リアクトルは和動接続されている。
この場合、交流リアクトルを小型化することができる。
【0026】
(12)制御方法としての観点からは、インバータと、前記インバータと単相3線式の交流電路との間に設けられた交流リアクトルと、前記インバータに直流電圧を供給するDCバスと、前記DCバスの2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧となる第1コンデンサ及び第2コンデンサの直列体と、前記DCバスの2線間に設けられ、前記中点電圧を制御する中点電圧制御部と、前記インバータに対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、前記中点電圧制御部を制御する制御部と、を備え、前記交流電路に交流出力を提供する電力変換装置についての、前記制御部による制御方法であって、前記交流電路の第1電圧線と第2電圧線との間の線間電圧が目標値となるように前記インバータを制御し、前記交流電路の中性線から見た第1相電圧と第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるように、前記中点電圧制御部を制御して前記中点電圧を調節する、電力変換装置の制御方法である。
【0027】
このような電力変換装置の制御方法によれば、自立運転中に、インバータは相電圧を制御せず第1電圧線と第2電圧線との間の線間電圧を目標値に合わせるよう動作する。制御方法としては、中点電圧制御部を制御して中点電圧を調節することにより、第1相電圧と第2相電圧とが絶対値で互いに均等になるようにする。中点電圧は中間値とは限らず、中間値からいずれか一方に偏る場合もある。また、バイポーラ方式のパルス幅変調制御により、DCバスの対地電圧が安定し、コモンモードノイズを低減することができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の電力変換装置及びその制御方法の具体例について、図面を参照して説明する。
【0029】
《電力変換装置の構成》
図1は、電力変換装置の一例を示す回路図である。電力変換装置100は、直流電源20と、交流電路31との間に設けられている。電力変換装置100は、商用電力系統との系統連系運転、または、商用電力系統から解列した状態での自立運転が可能であるが、本開示では、自立運転について説明する。
【0030】
交流電路31は、単相3線式であり、電圧線のU線、W線と、接地された中性線のO線とを有する。交流電路31のU相(U線-O線間)には、U相負荷32uが接続されている。交流電路31のW相(W線-O線間)には、W相負荷32wが接続されている。U線-O線の線間には101V、W線-O線の線間にはU相と逆位相で101V、U線-W線の線間には202Vが印加される。
【0031】
電力変換装置100は、直流電源20と接続されたDC/DCコンバータ1と、このDC/DCコンバータの高圧側のDCバス2と、DCバス2の2線間に接続された平滑コンデンサ3と、DCバス2の2線間に接続された中点電圧制御部4と、DCバス2の2線間に接続されたDCバスコンデンサ5H,5Lの直列体5と、DCバスコンデンサ5Hの両端に接続された電圧センサ6Hと、DCバスコンデンサ5Lの両端に接続された電圧センサ6Lと、DCバス2の2線間に接続されたインバータ7と、交流リアクトル8と、交流側コンデンサ9u,9wと、電圧センサ10u,10wと、制御部11と、を備えている。なお、直流側電圧センサは、DCバス2の2線間の電圧を検出する電圧センサと、DCバスコンデンサ5H,5Lのいずれか一方の両端の電圧を検出する電圧センサとで、構成されていてもよい。
【0032】
電圧センサ6Hは、DCバスコンデンサ5Hの両端の電圧VHを検出し、検出信号を制御部11に送る。電圧センサ6Lは、DCバスコンデンサ5Lの両端の電圧VLを検出し、検出信号を制御部11に送る。DCバスコンデンサ5H,5Lのキャパシタンスは互いに同一である。
電圧センサ10uは、交流側コンデンサ9uの両端の電圧Vuoを検出し、検出信号を制御部11に送る。電圧センサ10wは、交流側コンデンサ9wの両端の電圧Vwoを検出し、検出信号を制御部11に送る。交流側コンデンサ9u,9wのキャパシタンスは互いに同一である。
【0033】
DC/DCコンバータ1は、直流リアクトル12と、ハイサイドのスイッチング素子Q7と、ローサイドのスイッチング素子Q8とを、図示のように接続して構成されている。スイッチング素子Q7には逆並列にダイオードd7が接続され、スイッチング素子Q8には逆並列にダイオードd8が接続されている。このDC/DCコンバータ1は昇圧回路であり、DCバス2に必要な電圧まで直流電源20の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータ1は、制御部11により、制御される。
【0034】
なお、直流電源20の電圧が十分に高い場合は、DC/DCコンバータ1を省略することもできる。さらに、直流電源20の電圧が高すぎる場合は、DC/DCコンバータとして降圧回路を採用することもありうる。DCバス2の2線間の電圧は平滑コンデンサ3により、平滑されている。
【0035】
中点電圧制御部4は、DC/DCコンバータであり、ハイサイドのスイッチング素子Q5と、ローサイドのスイッチング素子Q6と、直流リアクトル13とを、図示のように接続して構成されている。直流リアクトル13は、DCバスコンデンサ5H,5Lの相互接続点である直列体5の中点Mに接続されている。スイッチング素子Q5には逆並列にダイオードd5が接続され、スイッチング素子Q6には逆並列にダイオードd6が接続されている。中点電圧制御部4は、制御部11により、制御される。
【0036】
中点電圧制御部4が直接的に制御しようとしているのは、電圧VLである。DCバス2の2線間の電圧をVBとすると、電圧VHは、(VB-VL)となる。これらの電圧は、
VL=VH=(VB/2)であってもよいし、
VL>(VB/2)>VH、または
VL<(VB/2)<VH
となる場合もある。DCバスコンデンサ5H,5Lの相互接続点である直列体5の中点Mは、交流側のO線と直結するので、「電位」としては接地電位となる。
【0037】
インバータ7は、4つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4を備えている。スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4にはそれぞれ、逆並列にダイオードd1,d2,d3,d4が接続されている。インバータ7は、交流リアクトル8及び交流側コンデンサ9u,9wによるフィルタ回路を介して、交流電路31のU線-W線間に、202Vを出力する。インバータ7の出力を平滑化する交流リアクトル8は、共通のコアにU線、W線の巻線を巻いて、ノーマル電流に対して磁束を強め合う和動接続とされている。
【0038】
交流電路31のU線-W線間の電圧Vuwは、電圧センサ10uが検出する電圧Vuoと、電圧センサ10wが検出する電圧Vwoとの差となる。なお、U線-W線間の電圧Vuwを直接的に検出する電圧センサを設けてもよい。また、電圧Vuo、Vwoのいずれか一方の代わりにU線-W線間の電圧Vuwを検出する電圧センサを設けてもよい。要するに、電圧Vuw、Vuo,Vwoが、検出又は算出も含めて、取得できる状態であればよい。
【0039】
制御部11は、例えばコンピュータを含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部11の記憶装置(図示せず。)に格納される。
【0040】
なお、
図1に例示したスイッチング素子Q1~Q8は全てIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるが、代わりに、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることもできる。
【0041】
《電力変換装置の制御》
次に、上記のように構成された電力変換装置100におけるインバータ7及び中点電圧制御部4についての制御(制御方法)について説明する。
【0042】
(第1例)
図2は、制御部11において実行されるインバータ7についての制御、及び、中点電圧制御部4についての制御に関する、制御ブロック図である。このような制御は、ソフトウェアによって全て実現することもできるが、部分的にハードウェアで構成することもできる。
図2において、V
uw電圧基準指示部B1から、交流電圧(瞬時値)の目標値が指示される。この目標値と、実際に検出されたU線-W線間の電圧V
uwとの偏差が比較器B2により求められる。偏差は比例積分演算部B3を経て目標値に加算される(加算器B4)。加算されて得られた、補正された電圧値に基づいて、電圧指令信号生成部B5は、電圧指令信号を生成する。電圧指令信号は、キャリア信号発生部B6により出力されるキャリア信号(三角波又は鋸歯状波)と、PWM制御部B7で比較され、PWM制御信号となる。
【0043】
このPWM制御信号は、共通の電圧指令信号とキャリア信号とから発生し、これにより、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4が制御される。この制御は、スイッチング素子Q1,Q4のペアの開閉が同期し、かつ相補的に、スイッチング素子Q2,Q3のペアの開閉が同期するバイポーラPWM方式の制御となる。
【0044】
この結果、インバータ7は、U線-W線間の電圧V
uwが目標値と一致するように動作する。バイポーラPWM制御により、DCバスの対地電位が安定する。そのため、コモンモードノイズを低減することができる。また、U線及びW線のリアクトルのコアを共通化して和動接続することができるので、交流リアクトル8(
図1)を一つにまとめて小型化することができる。
【0045】
なお、参考までに、前述の特許文献1の電力変換装置において、相電圧Vuo、Vwoがそれぞれの目標値と一致するように、スイッチング素子Q1,Q2のペア、Q3,Q4のペアに、それぞれ異なる電圧指令信号を与えると、ブリッジの対角線方向にあるスイッチング素子Q1,Q4のペアの開閉、及び、スイッチング素子Q2,Q3のペアの開閉は同期しない。このため、DCバスの対地電位がスイッチングによって変動し、交流リアクトルに多大な電流が流れる。また、U線の交流リアクトルとW線の交流リアクトルとのコアを共通化して和動接続すると制御不能になる。そのため、交流リアクトルを一つにまとめて小型化することができない。
【0046】
次に、
図2において、U線-O線間で検出されるU相電圧V
uoと、W線-O線間で検出されるW相電圧V
woとが、加算器B8により加算される。U相電圧V
uoとW相電圧V
woとは互いに逆位相であり、符号が逆になるので、加算結果は、0になるか、又は、絶対値の差に、絶対値の大きい方の符号を付した値となる。この値は、比例積分演算部B9を経て、中点電圧基準指示部B10が指示する中点電圧基準に、加算器B11により加算される補正値となる。中点電圧基準とは例えば、DCバスの2線間の電圧をV
Bとすると、中間値の(V
B/2)である。
【0047】
加算器B11における加算結果は、比較器B12において、電圧VLと比較される。比較結果の偏差すなわちVLからのずれ(バイアス電圧)は、比例積分演算部B13を経て、電圧指令信号生成部B14に送られる。そして、電圧指令信号生成部B14において電圧指令信号が生成される。電圧指令信号は、キャリア信号発生部B15により出力されるキャリア信号(三角波又は鋸歯状波)と、PWM制御部B16で比較され、スイッチング素子Q5,Q6に対するPWM制御信号となる。
【0048】
こうして、U相電圧Vuoと、W相電圧Vwoとに差がある場合は、その差に応じて中点電圧が中間値からずれるように補正されることになる。中点電圧制御部4は、基本的には、電圧VL,VHが互いに均等になるように制御すれば、U相電圧VuoとW相電圧Vwoは概ね、振幅が同じで位相が反転した電圧波形となる。しかし、U線-O線間、W線-O線間にそれぞれ接続する負荷の容量の差が大きい場合には、電圧VL、VHを均等にするだけでは、U相電圧VuoとW相電圧Vwoの振幅が互いに一致しない。
【0049】
そこで、上述のように、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとの合計が常にゼロになるように中点電圧基準に補正値を加算する。
なお、その他、U相電圧VuoまたはW相電圧Vwoがそれぞれ制御目標値と一致するように必要な補正値を与えてもよい。
要するに、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが、絶対値で互いに均等になるように制御すればよい。
【0050】
図3は、交流電路のU線-O線間のみに抵抗負荷を接続し、W線-O線間を無負荷としたときの交流出力波形を示すグラフである。横軸の数値は時間[秒]、縦軸の数値は電圧[V]である。交流の周波数は50Hzである。振幅が大きい方の交流波形は、U線-W線間の電圧V
uwである。振幅が小さい方の、互いに位相が反転した関係にある2つの交流波形は、U相電圧V
uo、及び、W相電圧V
woである。直流の波形は、DCバスの中点電圧V
Lである。この結果より、負荷が不均等でも、目標値と一致する線間電圧V
uw、U相電圧V
uo、W相電圧V
woが得られていることがわかる。また、中点電圧V
Lが刻々と僅かに変動して、中点電圧を偏らせることによる交流側の相電圧調整を行っている。
【0051】
(第2例)
図4は、制御部11において実行されるインバータ7についての制御、及び、中点電圧制御部4についての制御に関する、
図2とは異なる他の制御ブロック図である。
図2との違いは、左上の中点電圧補正部P1である。左上の中点電圧補正部P1において、実効値演算部B20は、U相電圧V
uoに基づいて、その実効値を算出する。同様に、実効値演算部B21は、W相電圧V
woに基づいて、その実効値を算出する。
【0052】
U相の実効値とW相の実効値とは、比較器B22において互いに比較される。比較して得られた差は、比例積分演算部B23による比例積分を経て、乗算器B25により交流符号指示部B24から指示された符号と乗算される。この乗算は、実効値としてはU相、W相共に、符号が同一であるため、U相、W相の実効値の偏差に応じて、補正値を加算するか又は減算するかを決めることを意味する。乗算器B25の処理を経た補正値は、中点電圧基準指示部B26が指示する中点電圧基準に加算される(加算器B27)。中点電圧基準とは例えば、DCバスの2線間の電圧をVBとすると、中間値の(VB/2)である。
【0053】
加算器B27における加算結果は、比較器B28において、電圧V
Lと比較される。比較結果の偏差すなわちV
Lからのずれ(バイアス電圧)は、比例積分演算部B29を経て、電圧指令信号生成部B14に送られる。これ以後の処理、及び、インバータ7の制御に関する制御ブロック図は、
図2と同様である。
【0054】
U線-O線間に接続された負荷へ電力を供給するとき、U相電圧が正の期間ではDCバス2のプラス側電路と中点Mとの間のDCバスコンデンサ5Hから電流が流れる。U相電圧が負の期間では、中点MとDCバス2のマイナス側電路との間のDCバスコンデンサ5Lから電流が流れる。よって、U相電圧Vuoの実効値がW相電圧Vwoの実効値よりも小さい場合には、正の期間でVH>VLとなるように、負の期間でVL>VHとなるようにDCバス中点電圧VLを制御すれば、U相電圧Vuo、W相電圧Vwoの実効値が互いに一致する。
【0055】
なお、参考までに、前述の特許文献1に記載された電力変換装置では、電圧VL、VHが均等になるように中点電圧制御を行うだけであって、電圧を偏らせる(バイアス電圧を付与する)という制御は行っていない。
【0056】
(第3例)
図5は、制御部11において実行されるインバータ7についての制御、及び、中点電圧制御部4についての制御に関する、
図2、
図4とは異なる他の制御ブロック図である。
図2との違いは、左上の中点電圧補正部P2である。左上の中点電圧補正部P2において、実効値演算部B20は、U相電圧V
uoに基づいて、その実効値を算出する。同様に、実効値演算部B21は、W相電圧V
woに基づいて、その実効値を算出する。
【0057】
U相の実効値とW相の実効値とは、比較器B22において互いに比較される。比較して得られた差は、比例積分演算部B23による比例積分を経て、乗算器B25により交流符号指示部B24から指示された符号と乗算される。この乗算は、実効値としてはU相、W相共に、符号が同一であるため、U相、W相の実効値の偏差に応じて、補正値を加算するか又は減算するかを決めることを意味する。乗算器B25の処理を経た補正値は、中点電圧基準指示部B26が指示する中点電圧基準に加算される(加算器B27)。中点電圧基準とは例えば、DCバスの2線間の電圧をVBとすると、中間値の(VB/2)である。
【0058】
加算器B27における加算結果は、電圧指令信号生成部B14に送られる。これ以後の処理、及び、インバータ7の制御に関する制御ブロック図は、
図2、
図4と同様である。
【0059】
第3例の場合も、第2例と同様に、U線-O線間に接続された負荷へ電力を供給するとき、U相電圧が正の期間ではDCバス2のプラス側電路と中点Mとの間のDCバスコンデンサ5Hから電流が流れる。U相電圧が負の期間では、中点MとDCバス2のマイナス側電路との間のDCバスコンデンサ5Lから電流が流れる。よって、U相電圧Vuoの実効値がW相電圧Vwoの実効値よりも小さい場合には、正の期間でVH>VLとなるように、負の期間でVL>VHとなるようにDCバス中点電圧VLを制御すれば、U相電圧Vuo、W相電圧Vwoの実効値が互いに一致する。
【0060】
図6は、交流電路のU線-O線間のみに半波整流の抵抗負荷を接続し、W線-O線間を無負荷としたときの交流出力波形を示すグラフである。横軸の数値は時間[秒]、縦軸の数値は電圧[V]である。交流の周波数は50Hzである。中点電圧制御は、上記第3例による。振幅が大きい方の交流波形は、U線-W線間の電圧V
uwである。振幅が小さい方の、互いに位相が反転した関係にある2つの交流波形は、U相電圧V
uo、及び、W相電圧V
woである。直流の波形は、DCバスの中点電圧V
Lである。この結果より、負荷が不均等でも、目標値と一致する線間電圧V
uw、U相電圧V
uo、W相電圧V
woが得られていることがわかる。また、中点電圧V
Lが刻々と僅かに変動して、中点電圧を偏らせることによる交流側の相電圧調整を行っている。
【0061】
(第4例)
上記の第2例では、U相電圧Vuoの実効値とW相電圧Vwoの実効値とを互いに一致させるために、中点電圧制御部4から直流リアクトル13に電流(以下、「中点制御電流IL」と称する。)を流す。当該電流は、DCバスコンデンサ5H又はDCバスコンデンサ5Lから流れることで、DCバス中点電圧VLが制御される。
【0062】
ここで、交流電路において、U線-O線間に接続される負荷と、W線-O線間に接続される負荷との間の不均衡度合いが大きいほど、U相電圧Vuoの実効値とW相電圧Vwoの実効値とを互いに一致させるために必要な中点制御電流ILが多くなる傾向があることが、発明者らの研究により明らかになった。
【0063】
図7及び
図8は、いずれも第2例の電力変換装置100における交流出力波形(a)と、中点制御電流(b)とを示すグラフである。
図7は、交流電路のU線-O線間を無負荷とし、W線-O線間に1.5kWの抵抗負荷を接続したときグラフである。
図8は、交流電路のU線-O線間を無負荷とし、W線-O線間に3kWの抵抗負荷を接続したときグラフである。すなわち、
図8は、
図7よりも負荷の不均衡度合いが大きい状態を示すグラフである。
【0064】
図7及び
図8のグラフにおいて、横軸の数値は時間[秒]、(a)の縦軸の数値は電圧[V]であり、(b)の縦軸の数値は電流[A]である。交流の周波数は50Hzである。振幅が大きい方の交流波形は、U線-W線間の電圧V
uwである。振幅が小さい方の、2つの交流波形は、U相電圧V
uoと、W相電圧V
woを反転させた反転電圧V
ow(=-V
wo)である。
図3及び
図6では、U相電圧V
uo及びW相電圧V
woを示したが、
図7以降では、U相電圧V
uo及びW相電圧V
woの位相を比較するために、反転電圧V
owを示している。
【0065】
中点制御電流I
Lの実効値は、
図7(b)(負荷の差が1.5kW)では31.1Aであるのに対し、
図8(b)(負荷の差が3kW)では62.0Aとなっており、負荷の不均衡度合いが大きいほど中点制御電流I
Lが多くなっている。
【0066】
より多い中点制御電流ILを流すためには、より電流定格の大きな直流リアクトル13が必要となり、直流リアクトル13の大型化、高コスト化といった課題が生じる。また、直流リアクトル13の電流定格が大きいほど、直流リアクトル13における損失が増加するため、直流リアクトル13における損失の増加という課題も生じる。
【0067】
以上により、発明者らは、U線-O線間及びW線-O線間の負荷の偏りが大きい場合に、U相電圧Vuo及びW相電圧Vwoの絶対値が均等になるように補償しつつ、中点制御電流ILの増加を抑制する方法を発明すべく、U相電圧Vuo及び反転電圧Vowの位相差に着目した。
【0068】
ここで、
図7(a)ではU相電圧V
uo及び反転電圧V
owの位相差が4.34°であるのに対し、
図8(a)ではU相電圧V
uo及び反転電圧V
owの位相差が8.55°となっている。このように、負荷の不均衡度合いが大きいほどがU相電圧V
uo及び反転電圧V
owの位相差も大きくなっている。
【0069】
上記の第2例では、U相電圧Vuo及びW相電圧Vwoの実効値が互いに一致するように中点制御を行う一方で、U相電圧Vuoの位相と反転電圧Vowの位相とが一致するような制御は行っていない。
【0070】
図9は、第2例の交流符号指示部B24から出力される信号を説明する図である。
図9(a)は
図8(a)の一部を拡大して示すグラフであり、
図9(b)は第2例の交流符号指示部B24から出力される信号を示すグラフである。
図9(a)では、説明のためにU相電圧V
uoとW相電圧V
woの反転電圧V
owとの位相差を誇張して示している。
【0071】
第2例の場合、交流符号指示部B24は線間電圧Vuwの符号に応じて、+1又は-1を出力する。すなわち、交流符号指示部B24の出力位相は、線間電圧Vuwの位相と一致している。このような場合、U相電圧Vuo及びW相電圧Vwoの実効値を互いに一致させることができるものの、U相電圧Vuo及び反転電圧Vowに位相差が発生することがある。
【0072】
そこで、本例では、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが絶対値で互いに均等になり、かつU相電圧Vuoの位相と反転電圧Vowの位相とが一致するように中点電圧制御部4を制御して中点電圧VLを調整する。すなわち、U相電圧Vuoの位相とW相電圧Vwoの位相とが180°となるように中点電圧制御部4を制御して中点電圧VLを調整する。これにより、交流側の相電圧調整を行いつつ、U相電圧Vuo及び反転電圧Vowの位相差を調整しない場合と比べて、中点制御電流ILを低減する。
【0073】
図10は、本例における交流符号指示部B241の内部構成を示す制御ブロック図である。本例の電力変換装置10は、第2例(
図4)の交流符号指示部B24に代えて交流符号指示部B241を備える点で第2例と構成上相違し、その他の点は共通する。
【0074】
交流符号指示部B241において、位相演算部B30は、U相電圧Vuoに基づいてU相電圧Vuoの位相を算出する。位相演算部B31は、W相電圧Vwoに基づいて反転電圧Vowの位相(すなわち、W相電圧Vwoの位相を180°反転させた位相)を算出する。位相演算部B32は、線間電圧Vuwに基づいて線間電圧Vuwの位相を算出する。位相演算部B30~B32は、例えばゼロクロス検出回路であってもよいし、フェーズロックループ(PLL:Phase Locked Loop)回路であってもよい。
【0075】
U相の位相とW相の位相とは、比較器B33において互いに比較される。比較して得られた偏差は、比例積分演算部B34による比例積分を経て、線間電圧Vuwの位相に加算される(加算器B35)。交流符号指示部B241は、加算により補正された位相を位相出力φとして乗算器B25に出力する。乗算器B25では、比較器B22及び比例積分演算部B23を経た各相の実効値の差と、交流符号指示部B241から指示された値とが乗算される。
【0076】
すなわち、制御部11は、U相電圧Vuoの位相とW相電圧Vwoの位相とに基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、U相電圧Vuo及びW相電圧Vwoの位相差を低減する。このように、中点電圧VLを必ずしも中間値にするのではなく、バイアス電圧の付与により偏らせることで、U相の交流負荷と、W相の交流負荷とが、不均等であっても、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが、絶対値で互いに均等になるように調節することができる。さらに、U相電圧Vuoの位相とW相電圧Vwoの位相とに基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、U相電圧Vuoと反転電圧Vowとの位相差をゼロに近づける(又はゼロにする)ように調節することができる。
【0077】
図11は、交流符号指示部B241から出力される信号を説明する図である。
図11(a)は本例の電力変換装置100における交流出力波形を拡大して示すグラフであり、
図11(b)~(d)は交流符号指示部B241から出力される信号の一例をそれぞれ示すグラフである。
【0078】
交流符号指示部B241は、比例積分演算部B34によって、U相の位相とW相の位相との差が0になるようにフィードバック制御することで、位相出力φを行う。位相出力φは、U相の位相とW相の位相との差に応じて求められるため、線間電圧V
uwの位相と一致するとは限らない。位相出力φは、
図11(b)に示すように、例えば矩形波である。位相出力φが矩形波である場合、位相出力φは以下に示す値となる。
【0079】
【0080】
なお、位相出力φは、
図11(c)に示すように、正弦波(sinφ)であってもよい。また、位相出力φは、
図11(d)に示すように、三角波であってもよい。位相出力φが三角波である場合、位相出力φは以下に示す値となる。
【0081】
【0082】
図11(a)に示すように、交流符号指示部B241によってU相電圧V
uo及び反転電圧V
owの位相を互いに一致させることで、中点制御電流I
Lを低減させることができる。
【0083】
図12は、本例の電力変換装置100における交流出力波形(a)と、中点制御電流(b)とを示すグラフである。
図12は、交流電路のU線-O線間を無負荷とし、W線-O線間に3kWの抵抗負荷を接続したときグラフである。横軸の数値は時間[秒]、(a)の縦軸の数値は電圧[V]であり、(b)の縦軸の数値は電流[A]である。交流の周波数は50Hzである。振幅が大きい方の交流波形は、U線-W線間の電圧V
uwである。振幅が小さい方の2つの交流波形は、U相電圧V
uo及びW相の反転電圧V
owである。
【0084】
図12(a)に示すように、U相電圧V
uo及び反転電圧V
owの位相差(すなわち、U相電圧V
uoの位相及びW相電圧V
woの位相を180°反転させた位相の差)はほぼ0となっている。そして、
図12(b)における中点制御電流I
Lの実効値は39.7Aであり、
図12の例と同様に負荷の差が3kWである
図8(b)の値(62.0A)よりも低減している。
【0085】
以上により、U相電圧Vuo及び反転電圧Vowの位相が概ね一致するように中点電圧VLを調節することによって、中点制御電流ILを低減することができる。これにより、直流リアクトル13として電流定格の小さいリアクトルを使用することができるため、直流リアクトル13の大型化を抑制したり、高コスト化を抑制したり、損失の増大を抑制したりすることができる。
【0086】
(第5例)
図13は、本例における交流符号指示部B242の内部構成を示す制御ブロック図である。本例の電力変換装置100は、第4例(
図10)の交流符号指示部B241に代えて交流符号指示部B242を備える点で第4例と構成上相違し、その他の点は共通する。
【0087】
交流符号指示部B241では、3個の位相演算部B30~B32によって、U相電圧Vuo、W相電圧Vwo及び線間電圧Vuwの位相をそれぞれ算出する。これに対し、交流符号指示部B242では、線間電圧Vuwの位相がU相電圧Vuoの位相とW相電圧Vwoの位相との中間の値となることを利用して、U相電圧Vuoの位相と線間電圧Vuwの位相との差分をゼロにするように制御する。W相電圧Vwoの位相はU相電圧Vuoの位相に連動するため、当該制御によって、反転電圧Vowの位相も線間電圧Vuwの位相に一致させられる。
【0088】
交流符号指示部B242において、比較器B33は、位相演算部B30により算出されたU相電圧Vuoの位相と、位相演算部B32により算出された線間電圧Vuwの位相とを比較して偏差を算出する。当該偏差は、比例積分演算部B34による比例積分を経て、線間電圧Vuwの位相に加算される(加算器B35)。交流符号指示部B242は、加算により補正された位相を位相出力φとして乗算器B25に出力する。
【0089】
すなわち、制御部11は、U相電圧Vuoの位相と線間電圧Vuwの位相とに基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、U相電圧Vuo及び線間電圧Vuwの位相差を低減する。このように、中点電圧VLを必ずしも中間値にするのではなく、バイアス電圧の付与により偏らせることで、U相の交流負荷とW相の交流負荷とが不均等であっても、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが、絶対値で互いに均等になるように調節することができる。さらに、U相電圧Vuoの位相とW相電圧Vwoの位相とに基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、U相電圧Vuoと反転電圧Vowの位相差をゼロに近づける(又はゼロにする)ように調節することができる。
【0090】
交流符号指示部B242によれば、交流符号指示部B241と比べて1個の位相演算部B31を省略することができるため、回路構成をより簡素化することができる。
【0091】
なお、交流符号指示部B242は、反転電圧Vowの位相と線間電圧Vuwの位相との差分をゼロにするように制御してもよい。この場合、比較器B33は、位相演算部B31により算出された反転電圧Vowの位相と、位相演算部B32により算出された線間電圧Vuwの位相とを比較して偏差を算出する。
【0092】
すなわち、この場合、制御部11は、反転電圧Vowの位相と線間電圧Vuwの位相とに基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、反転電圧Vow及び線間電圧Vuwの位相差を低減する。そして、U相電圧Vuoの位相は反転電圧Vowの位相に連動するため、当該制御によって、U相電圧Vuoの位相も線間電圧Vuwの位相に一致させられる。
【0093】
(第6例)
図14は、本例における交流符号指示部B243の内部構成を示す制御ブロック図である。本例の電力変換装置100は、第4例(
図10)の交流符号指示部B241に代えて交流符号指示部B243を備える点で第4例と構成上相違し、その他の点は共通する。
【0094】
図15は、
図9(a)のうち線間電圧V
uwのゼロクロス検出時の各電圧を拡大して示すグラフである。線間電圧V
uwの瞬時値がゼロとなる時点(すなわち、ゼロクロス検出時)におけるU相電圧V
uoの瞬時値を「瞬時値X1」と称する。また、線間電圧V
uwのゼロクロス検出時におけるW相電圧V
woの反転電圧V
owの瞬時値を「瞬時値X2」と称する。ここで、瞬時値X1は瞬時値X2の正負の対値となる(X1=-X2)。すなわち、線間電圧V
uwのゼロクロス検出時のU相電圧V
uoの瞬時値X1とW相電圧V
woの瞬時値(-X2)は等しい。
【0095】
本例では、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時のU相電圧Vuoの瞬時値X1がゼロとなるように制御することで、U相電圧Vuoの位相と線間電圧Vuwの位相とを一致させる。W相電圧Vwoの位相はU相電圧Vuoの位相に連動するため、当該制御によって、反転電圧Vowの位相も線間電圧Vuwの位相に一致させられる。
【0096】
交流符号指示部B243において、瞬時値演算部B36は、U相電圧Vuo及び線間電圧Vuwに基づいて、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時のU相電圧Vuoの瞬時値X1を算出する。比較器B33は、瞬時値演算部B36により算出された瞬時値X1とゼロとを比較して偏差を算出する。当該偏差は、比例積分演算部B34による比例積分を経て、線間電圧Vuwの位相に加算される(加算器B35)。交流符号指示部B243は、加算により補正された位相を位相出力φとして乗算器B25に出力する。
【0097】
位相出力φにより、瞬時値X1がゼロとなるように制御される。交流符号指示部B243によれば、交流符号指示部B241と比べて2個の位相演算部B30,B31を省略することができるため、回路構成をより簡素化することができる。
【0098】
なお、交流符号指示部B243は、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時のW相電圧Vwoの瞬時値(当該瞬時値は、上記のとおり瞬時値X1と等しい)がゼロとなるように制御してもよい。この場合、瞬時値演算部B36は、W相電圧Vwo及び線間電圧Vuwに基づいて、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時のW相電圧Vwoの瞬時値を算出する。
【0099】
すなわち、制御部11は、瞬時値X1(線間電圧Vuwのゼロクロス検出時におけるU相電圧Vuoの電圧)又は瞬時値-X2(線間電圧Vuwのゼロクロス検出時におけるW相電圧Vwoの電圧)に基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、U相電圧Vuo及び反転電圧Vowの位相差を低減する。
【0100】
(第7例)
図16は、本例における交流符号指示部B244の内部構成を示す制御ブロック図である。本例の電力変換装置100は、第6例(
図14)の交流符号指示部B243に代えて交流符号指示部B244を備える点で第6例と構成上相違し、その他の点は共通する。
【0101】
第6例では、瞬時値X1がゼロとなるように制御する。これに対し、本例では、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時のU相電圧Vuoの瞬時値X1と、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時の反転電圧Vowの瞬時値X2との差がゼロになるように制御する。すなわち、瞬時値X1と瞬時値X2が互いに等しくなるように制御する。
【0102】
交流符号指示部B244において、瞬時値演算部B37は、反転電圧Vow及び線間電圧Vuwに基づいて、線間電圧Vuwのゼロクロス検出時の反転電圧Vowの瞬時値X2を算出する。比較器B33は、瞬時値演算部B36により算出された瞬時値X1と、瞬時値演算部B37により算出された瞬時値X2とを比較して偏差を算出する。当該偏差は、比例積分演算部B34による比例積分を経て、線間電圧Vuwの位相に加算される(加算器B35)。交流符号指示部B244は、加算により補正された位相を位相出力φとして乗算器B25に出力する。
【0103】
位相出力φにより、瞬時値X1と瞬時値X2とが互いに等しくなるように制御される。交流符号指示部B244によれば、交流符号指示部B241と比べて2個の位相演算部B30,B31を省略することができるため、回路構成をより簡素化することができる。
【0104】
すなわち、制御部11は、瞬時値X1及び瞬時値X2に基づいて、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与することで、U相電圧Vuo及び反転電圧Vowの位相差を低減する。
【0105】
《開示のまとめ》
以上の開示は、以下のように一般化して表現することができる。
単相3線式の交流電路に交流出力を提供する電力変換装置100は、DCバス2の2線間に設けられ、相互接続点が中点電圧VLとなるDCバスコンデンサ5H及びDCバスコンデンサ5Lの直列体5と、DCバス2の2線間に設けられ、中点電圧VLを制御する中点電圧制御部4と、を備えている。電力変換装置100の制御部11は、インバータ7に対してバイポーラ方式のパルス幅変調制御を行うとともに、中点電圧制御部4を制御する。そして、交流リアクトル8は、インバータ7の出力端からU線及びW線に至る2線に共通のコアを有するものである。制御部11は、U線とW線との間の線間電圧が目標値となるようにインバータ7を制御し、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが絶対値で互いに均等になるように、中点電圧制御部4を制御して中点電圧VLを調節する。
【0106】
このような電力変換装置100では、自立運転中に、インバータ7は相電圧を制御せずU線とW線との間の線間電圧を目標値に合わせるよう動作する。制御部11は、中点電圧制御部4を制御して中点電圧VLを調節することにより、U相電圧とW相電圧とが絶対値で互いに均等になるようにする。中点電圧VLは中間値とは限らず、中間値からいずれか一方に偏る(ずれる)場合もある。また、バイポーラ方式のパルス幅変調制御により、DCバス2の対地電圧が安定し、コモンモードノイズを低減することができ、電圧線の2線(U線,W線)に共通のコアを持つ交流リアクトル8を用いることができる。その結果、交流リアクトル8を小型化できるので、電力変換装置100の小型化が可能となる。
【0107】
制御部11は、中点電圧VLが、DCバス2の2線間の電圧の中間値からずれるように、中点電圧制御部4を制御することができる。これにより、U相の交流負荷と、W相の交流負荷とが、不均等であっても、中点電圧が中間値からずれることで、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが、絶対値で互いに均等になることができる。
【0108】
別の表現をすれば、制御部11は、U相電圧Vuo及びW相電圧Vwoの差がある場合に、中点電圧VLに正又は負のバイアス電圧を付与して差を低減することができる。このように、中点電圧VLを必ずしも中間値にするのではなく、バイアス電圧の付与により偏らせることで、U相の交流負荷と、W相の交流負荷とが、不均等であっても、U相電圧VuoとW相電圧Vwoとが、絶対値で互いに均等になるように調節することができる。
【0109】
交流リアクトル8は和動接続されていることにより、小型化することができる。
また、U相電圧及びW2相電圧としては、瞬時値、実効値のいずれをも用いることができる。瞬時値を用いると制御のレスポンスが早いが若干過敏な制御になる。実効値を用いると制御のレスポンスは、瞬時値よりは遅いが、過敏にならない安定した制御になる。
【0110】
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
1 DC/DCコンバータ
2 DCバス
3 平滑コンデンサ
4 中点電圧制御部
5 (コンデンサの)直列体
5H,5L DCバスコンデンサ
6H,6L 電圧センサ
7 インバータ
8 交流リアクトル
9u,9w 交流側コンデンサ
10u,10w 電圧センサ
11 制御部
12,13 直流リアクトル
20 直流電源
31 交流電路
32u U相負荷
32w W相負荷
100 電力変換装置
d1,d2,d3,d4,d5,d6,d7,d8 ダイオード
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8 スイッチング素子
B1 Vuw電圧基準指示部
B2 比較器
B3 比例積分演算部
B4 加算器
B5 電圧指令信号生成部
B6 キャリア信号発生部
B7 PWM制御部
B8 加算器
B9 比例積分演算部
B10 中点電圧基準指示部
B11 加算器
B12 比較器
B13 比例積分演算部
B14 電圧指令信号生成部
B15 キャリア信号発生部
B16 PWM制御部
B20,B21 実効値演算部
B22 比較器
B23 比例積分演算部
B24 交流符号指示部
B25 乗算器
B26 中点電圧基準指示部
B27 加算器
B28 比較器
B29 比例積分演算部
B30,B31,B32 位相演算部
B33 比較器
B34 比例積分演算部
B35 加算器
B36,B37 瞬時値演算部
B241,B242,B243,B244 交流符号指示部
M 中点
P1,P2 中点電圧補正部
X1,X2 瞬時値