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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】蓄電装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/516 20210101AFI20250611BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20250611BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20250611BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20250611BHJP
   H01M 50/55 20210101ALN20250611BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M50/505
H01M50/209
B23K26/21 N
B23K26/21 G
H01M50/55 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022510006
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010816
(87)【国際公開番号】W WO2021193285
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2020053190
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】森口 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 伸介
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-239888(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047050(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/087455(WO,A1)
【文献】特開2014-063696(JP,A)
【文献】特開2017-164811(JP,A)
【文献】特開2018-174059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子とバスバーとを備える蓄電装置であって、
前記バスバーと接合される導電部材を備え、
前記バスバー及び前記導電部材の接合部は、
前記バスバー及び前記導電部材の一方の表面が溶融した表面溶融痕と、
前記表面溶融痕に隣接して配置され、前記一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕と、
前記内部溶融痕に隣接して配置され、前記バスバー及び前記導電部材が溶接された第一溶接痕と、を有する
蓄電装置。
【請求項2】
前記接合部は、さらに、
前記第一溶接痕に沿って、前記第一溶接痕の延設方向に延設されて配置される第二溶接痕を有し、
前記第二溶接痕は、前記表面溶融痕から遠い端部であって、溶融池痕が形成されていない溶接痕端部を有する
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第二溶接痕は、前記延設方向における前記第一溶接痕の一端から他端までに亘って、前記第一溶接痕に沿って延設されて配置される
請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第二溶接痕は、前記溶接痕端部から、前記表面溶融痕及び前記内部溶融痕の境界位置よりも前記表面溶融痕から離れる位置までに亘って、前記第一溶接痕に沿って延設されて配置される
請求項2または3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記表面溶融痕及び前記内部溶融痕の境界位置は、前記表面溶融痕から前記内部溶融痕に至る際の溶融痕の幅及び深さの少なくとも一方が変化する位置である
請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第一溶接痕と前記第二溶接痕とは、少なくとも一部が接続されている
請求項2~5のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
蓄電素子とバスバーとを備える蓄電装置の製造方法であって、
前記バスバーと導電部材とを接合する接合工程を含み、
前記接合工程では、
前記バスバー及び前記導電部材の一方の表面が溶融した表面溶融痕を形成し、
前記表面溶融痕に隣接して配置され、前記一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕を形成し、
前記内部溶融痕に隣接して配置され、前記バスバー及び前記導電部材が溶接された第一溶接痕を形成する
蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子とバスバーとを備える蓄電装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子とバスバーとを備え、バスバーと導電部材とが溶接により接合された蓄電装置が知られている。特許文献1には、バスバー(第1部材:アルミバスバー)と導電部材(第2部材:ニッケルめっきの銅端子)とが、レーザ溶接により接合された溶接構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-81183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、溶接品質の低下または短絡の発生等により、蓄電装置の品質に大きく影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、品質の低下を抑制できる蓄電装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子とバスバーとを備える蓄電装置であって、前記バスバーと接合される導電部材を備え、前記バスバー及び前記導電部材の接合部は、前記バスバー及び前記導電部材の一方の表面が溶融した表面溶融痕と、前記表面溶融痕に隣接して配置され、前記一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕と、前記内部溶融痕に隣接して配置され、前記バスバー及び前記導電部材が溶接された第一溶接痕と、を有する。
【0007】
本発明は、このような蓄電装置として実現できるだけでなく、バスバー及び導電部材の接合構造若しくは接合方法、または、当該接合方法を含む蓄電装置の製造方法としても実現できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明における蓄電装置等によれば、品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係るバスバーと蓄電素子の電極端子との接合部を示す平面図である。
図4図4は、実施の形態に係る接合部の構成を示す平面図である。
図5図5は、実施の形態に係る接合部の表面溶融痕、内部溶融痕及び第一溶接痕の構成を示す平面図及び断面図である。
図6図6は、実施の形態に係る接合部の表面溶融痕、内部溶融痕及び第一溶接痕の断面を示す写真である。
図7図7は、実施の形態に係る接合部の第二溶接痕の構成を示す平面図及び断面図である。
図8図8は、実施の形態の変形例1に係る接合部の構成を示す平面図である。
図9図9は、実施の形態の変形例2に係る接合部の構成を示す平面図である。
図10A図10Aは、実施の形態の変形例3に係る接合部の構成を示す平面図である。
図10B図10Bは、実施の形態の変形例3に係る接合部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記従来のような溶接構造では、バスバーと導電部材とがレーザ溶接により接合されるため、レーザ溶接時にスパッタが発生するおそれがある。スパッタが発生すると、溶接箇所が強度不足になる等により、溶接品質が低下するおそれがある。スパッタが基板等の電気機器に付着して短絡が発生したり、スパッタが蓄電素子の容器に付着して蓄電素子の容器同士が短絡したり、蓄電素子を収容する外装体のヒートシール部にスパッタが付着してヒートシール部が接合不良となったりする等の不具合が生じるおそれもある。このように、従来の構成では、溶接品質の低下または短絡の発生等により、蓄電装置の品質に大きく影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、品質の低下を抑制できる蓄電装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子とバスバーとを備える蓄電装置であって、前記バスバーと接合される導電部材を備え、前記バスバー及び前記導電部材の接合部は、前記バスバー及び前記導電部材の一方の表面が溶融した表面溶融痕と、前記表面溶融痕に隣接して配置され、前記一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕と、前記内部溶融痕に隣接して配置され、前記バスバー及び前記導電部材が溶接された第一溶接痕と、を有する。
【0013】
これによれば、蓄電装置において、バスバー及び導電部材の接合部は、バスバー及び導電部材の一方の表面が溶融した表面溶融痕と、当該一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕と、バスバー及び導電部材が溶接された第一溶接痕と、を有している。つまり、レーザ溶接時にレーザ出力を小さくしてバスバー及び導電部材の一方の表面を溶融させて表面溶融痕を形成し、レーザ出力を少し大きくして、当該一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕を形成する。レーザ出力をさらに大きくして、バスバー及び導電部材を溶接して第一溶接痕を形成する。このように、溶接対象部分の手前からレーザ出力を徐々に大きくして表面溶融痕及び内部溶融痕を形成していくことにより溶接対象部分が予熱されるため、溶接対象部分に第一溶接痕を形成する際のレーザ出力を抑制できる。レーザ出力を抑制できれば、スパッタの発生を抑制できる。これにより、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0014】
前記接合部は、さらに、前記第一溶接痕に沿って、前記第一溶接痕の延設方向に延設されて配置される第二溶接痕を有し、前記第二溶接痕は、前記表面溶融痕から遠い端部であって、溶融池痕が形成されていない溶接痕端部を有してもよい。
【0015】
これによれば、バスバー及び導電部材の接合部は、第一溶接痕に沿う第二溶接痕を有し、第二溶接痕は、表面溶融痕から遠い位置に、溶融池痕が形成されていない溶接痕端部を有している。このように、接合部での接合強度を高めるために第二溶接痕も形成する場合、第一溶接痕に沿って第二溶接痕を形成することで、第一溶接痕における熱を第二溶接痕での予熱に使用できる。特に、第二溶接痕の表面溶融痕から遠い溶接痕端部には溶融池痕が形成されていないため、第二溶接痕は、溶接痕端部から溶接が開始されたものと判断できる。このため、第一溶接痕の終端の溶接痕端部から溶接を開始することにより、第一溶接痕を形成した後の当該終端における熱を予熱として使用し、第二溶接痕の溶接を開始できる。これにより、第二溶接痕を形成する際に、レーザ出力を抑制できるため、スパッタの発生を抑制できる。したがって、第二溶接痕を形成する際においても、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0016】
前記第二溶接痕は、前記延設方向における前記第一溶接痕の一端から他端までに亘って、前記第一溶接痕に沿って延設されて配置されてもよい。
【0017】
これによれば、第二溶接痕が、第一溶接痕の一端から他端までに亘って第一溶接痕に沿って延設されていることにより、バスバー及び導電部材をより強固に接合できている。これにより、接合部での接合強度を向上させつつスパッタの発生を抑制できるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0018】
前記第二溶接痕は、前記溶接痕端部から、前記表面溶融痕及び前記内部溶融痕の境界位置よりも前記表面溶融痕から離れる位置までに亘って、前記第一溶接痕に沿って延設されて配置されてもよい。
【0019】
バスバー及び導電部材の接合は第一溶接痕によって行われ、表面溶融痕及び内部溶融痕は、バスバー及び導電部材の接合に寄与しない部分(溶接を必要としなかった部分)である。このため、第二溶接痕も、表面溶融痕及び内部溶融痕に対応する位置には形成する必要はなく、第二溶接痕の形成位置を、溶接痕端部から、表面溶融痕及び内部溶融痕の境界位置よりも表面溶融痕から離れる位置までとする。これにより、不要な位置に第二溶接痕を形成して溶接温度が上昇したりしてスパッタが発生してしまうのを抑制できる。したがって、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0020】
前記表面溶融痕及び前記内部溶融痕の境界位置は、前記表面溶融痕から前記内部溶融痕に至る際の溶融痕の幅及び深さの少なくとも一方が変化する位置であってもよい。
【0021】
表面溶融痕において溶融痕の幅及び深さの少なくとも一方を変化させることで、表面溶融痕から内部溶融痕に移行できる。
【0022】
前記第一溶接痕と前記第二溶接痕とは、少なくとも一部が接続されていてもよい。
【0023】
これによれば、第一溶接痕と第二溶接痕とを、少なくとも一部が接続(重複)するように形成することで、第一溶接痕における熱を予熱として効果的に活用して、第二溶接痕を形成できる。これにより、第二溶接痕を形成する際に、レーザ出力を抑制できるため、スパッタの発生を抑制できる。したがって、第二溶接痕を形成する際に、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0024】
本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、蓄電素子とバスバーとを備える蓄電装置の製造方法であって、前記バスバーと導電部材とを接合する接合工程を含み、前記接合工程では、前記バスバー及び前記導電部材の一方の表面が溶融した表面溶融痕を形成し、前記表面溶融痕に隣接して配置され、前記一方の表面から内部まで溶融した内部溶融痕を形成し、前記内部溶融痕に隣接して配置され、前記バスバー及び前記導電部材が溶接された第一溶接痕を形成する。これによれば、上述の通り、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置及びその製造方法について説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0026】
以下の説明及び図面中において、1つの蓄電素子における一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。複数の蓄電素子の配列方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、容器の厚さ方向を、Y軸方向と定義する。蓄電素子の容器の容器本体と蓋体との並び方向、蓄電素子の容器と電極端子との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0027】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0028】
(実施の形態)
[1 蓄電装置1の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置1の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。図1は、外装体30を透視して外装体30内方を示した図となっており、外装体30(及び2つの外部端子31)は破線で示している。図2は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係るバスバー20と蓄電素子10の電極端子200との接合部40を示す平面図である。図1に示された複数の蓄電素子10は、全て同様の構成を有するため、図2では、1つの蓄電素子10のみを図示している。同様に、図3では、1つのバスバー20と1つの蓄電素子10の電極端子200との接合部40を図示している。
【0029】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。蓄電装置1は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0030】
図1に示すように、蓄電装置1は、複数の蓄電素子10と、複数のバスバー20と、これら蓄電素子10及びバスバー20を収容する外装体30と、を備えている。蓄電装置1は、蓄電素子10間に配置されるスペーサ、蓄電素子10を拘束するエンドプレート及びサイドプレート、バスバー20の位置決めを行うバスバーフレーム、蓄電素子10の充電状態及び放電状態を監視するための回路基板、ヒューズ、リレー及びコネクタ等の電気機器、並びに、蓄電素子10から排出されるガスを外装体30の外方へ排気するための排気部等も備えていてもよいが、これらの図示は省略し、詳細な説明も省略する。
【0031】
外装体30は、蓄電装置1の外装体を構成する略直方体形状(箱形)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体30は、蓄電素子10及びバスバー20の外方に配置され、これら蓄電素子10及びバスバー20を所定の位置で固定し、衝撃等から保護する。外装体30は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。外装体30は、これにより、蓄電素子10等が外部の金属部材等に接触することを回避する。蓄電素子10等の電気的絶縁性が保たれる構成であれば、外装体30は、金属等の導電部材で形成されていてもよい。
【0032】
外装体30には、2つの外部端子31が設けられている。この2つの外部端子31は、蓄電装置1の外部からの電気を充電し、また蓄電装置1の外部へ電気を放電するための正極側及び負極側の外部接続端子であり、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、鋼、ステンレス等の金属製の導電部材で形成されている。
【0033】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、扁平な直方体形状(角形)を有しており、本実施の形態では、6個の蓄電素子10がY軸方向に並んで配列されている。蓄電素子10の大きさ、形状、及び、配列される蓄電素子10の個数は限定されず、例えば1つの蓄電素子10しか配置されていなくてもよい。蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子10は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。
【0034】
具体的には、図2に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対(正極側及び負極側)の電極端子200と、一対(正極側及び負極側)のガスケット300と、を備えている。容器100の内方には、電極体、一対(正極側及び負極側)の集電体、及び、電解液(非水電解質)等が収容されているが、これらの図示は省略する。電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択できる。集電体の側方等にスペーサが配置されていてもよいし、容器100の外面を覆う絶縁シートが配置されていてもよい。
【0035】
容器100は、直方体形状(角形または箱形)のケースであり、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の開口を閉塞する蓋体120と、を有している。容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、Y軸方向両側に一対の長側面部を有し、X軸方向両側に一対の短側面部を有し、Z軸マイナス方向側に底面部を有している。蓋体120は、容器100の蓋部を構成する平板状かつ矩形状の部材であり、容器本体110のZ軸プラス方向に配置されている。蓋体120には、容器100内方の圧力が上昇した場合にガスを排出して当該圧力を開放するガス排出弁121、及び、容器100内方に電解液を注液するための注液部122が配置されている。容器100の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0036】
電極端子200は、容器100の蓋体120に配置される蓄電素子10の端子(正極端子及び負極端子)であり、集電体を介して、電極体の正極板及び負極板に電気的に接続されている。つまり、電極端子200は、電極体に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、電極体に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子200は、蓋体120から上方(Z軸プラス方向)に向けて突出して配置されている。電極端子200は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属製(導電性)の部材で形成されている。
【0037】
ガスケット300は、容器100の蓋体120と電極端子200との間に配置され、蓋体120と電極端子200との間を電気的に絶縁し、かつ、封止する平板状の絶縁性の封止部材である。蓋体120と集電体との間にも、蓋体120と集電体との間を電気的に絶縁し、かつ、封止するガスケットが配置されるが、詳細な説明は省略する。これらのガスケットは、PP、PE等の、上述した外装体30に使用可能ないずれかの絶縁部材により形成できる。
【0038】
電極体は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成された蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属からなる集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。負極板は、銅または銅合金等の金属からなる集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なものであれば、適宜公知の材料を使用できる。電極体は、極板(正極板及び負極板)が巻回されて形成された巻回型の電極体、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体等、どのような形態の電極体でもよい。
【0039】
集電体は、電極端子200と電極体とに電気的に接続される導電性の部材(正極集電体及び負極集電体)である。正極集電体は、正極板の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極集電体は、負極板の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0040】
バスバー20は、蓄電素子10に接続される導電性の平板状かつ矩形状の部材である。具体的には、バスバー20は、複数の蓄電素子10の上方に配置され、複数の蓄電素子10の電極端子200に接続(接合)されて、複数の蓄電素子10の電極端子200同士を電気的に接続する。本実施の形態では、バスバー20は、隣り合う蓄電素子10の正極端子と負極端子とを順に接続することで、複数の蓄電素子10を直列に接続している。具体的には、バスバー20は、両端が、隣り合う蓄電素子10の正極端子と負極端子とに溶接により接合されることで、当該隣り合う蓄電素子10の正極端子と負極端子とを電気的に接続する。
【0041】
図1では、バスバー20の外部端子31との接続部分は省略して図示しているが、端部に配置されるバスバー20には、正極側及び負極側の外部端子31が接続されている。当該端部に配置されるバスバー20は、外部端子31に溶接またはボルト締結等により接合されることで、端部に配置される蓄電素子10と外部端子31とを電気的に接続する。バスバー20は、厚みが1~3mm程度と厚く、また、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材で形成されている。バスバー20は、厚みが1mm未満の薄いものでもよい。
【0042】
バスバー20の形状(外形状及び厚み等)並びに材質は、特に限定されない。バスバー20の接続形態も特に限定されず、複数の蓄電素子10がどのような組み合わせで直列に接続され、また、並列に接続されるように配置されていてもよい。
【0043】
図3に示すように、バスバー20は、蓄電素子10の電極端子200と溶接によって接合されて、接合部40が形成されている。本実施の形態では、バスバー20及び電極端子200の重なり部分におけるX軸方向両側に、Y軸方向に延びる2つの接合部40が形成されている。以下に、この接合部40の構成について、詳細に説明する。図3に示した2つの接合部40は、同様の構成を有するため、以下では、1つの接合部40について、詳細に説明する。
【0044】
[2 接合部40の説明]
図4は、本実施の形態に係る接合部40の構成を示す平面図である。図4は、図3に示した接合部40を拡大し、かつ、第一溶接痕43の長さを短く省略して図示している。図5は、本実施の形態に係る接合部40の表面溶融痕41、内部溶融痕42及び第一溶接痕43の構成を示す平面図及び断面図である。具体的には、図5の(a)は、接合部40の形成過程において、表面溶融痕41、内部溶融痕42及び第一溶接痕43を形成した状態をZ軸プラス方向から見た平面図である。図5の(b)は、図5の(a)の状態をVb-Vb線を通りYZ平面に平行な面で切断した場合の構成を示す断面図である。図6は、本実施の形態に係る接合部40の表面溶融痕41、内部溶融痕42及び第一溶接痕43の断面を示す写真である。具体的には、図6は、図5の(b)に対応する写真である。図7は、本実施の形態に係る接合部40の第二溶接痕44の構成を示す平面図及び断面図である。具体的には、図7の(a)は、接合部40の形成過程において、図5に引き続き第二溶接痕44を形成した状態をZ軸プラス方向から見た平面図である。図7の(b)は、図7の(a)の状態をVIb-VIb線を通りYZ平面に平行な面で切断した場合の構成を示す断面図である。つまり、図5図7は、蓄電装置1の製造方法におけるバスバー20及び電極端子200の接合方法を示している。
【0045】
図5の(a)及び図7の(a)におけるY軸方向に対するX軸方向の縮尺は、一例であり、Y軸方向に対してX軸方向に拡大されたり縮小されたりされ得る。図5の(b)及び図7の(b)におけるY軸方向に対するZ軸方向の縮尺についても同様に、Y軸方向に対してZ軸方向に拡大されたり縮小されたりされ得る。以降の図についても同様である。
【0046】
これらの図に示すように、バスバー20と蓄電素子10の電極端子200との接合部40は、表面溶融痕41と、内部溶融痕42と、第一溶接痕43と、第二溶接痕44とを有している。蓄電素子10の電極端子200は、バスバーと接合される導電部材の一例であり、接合部40は、バスバー及び導電部材の接合部の一例である。
【0047】
表面溶融痕41は、バスバー20及び電極端子200(導電部材)の一方の表面が溶融した溶融痕である。本実施の形態では、表面溶融痕41は、バスバー20の平坦な(平面状の)表面20aが溶融した溶融痕である。具体的には、図5及び図6に示すように、バスバー20の表面20aに微小な出力のレーザ光L1が照射されて、バスバー20の表面20aが溶融され、Y軸方向に延びる表面溶融痕41が形成される。
【0048】
レーザ光L1の出力は、後述するレーザ光L3の最大出力の0~30%程度である。レーザ光L1は、表面溶融痕41のY軸マイナス方向の端部からY軸プラス方向の端部に亘って、Y軸プラス方向に向かうほど出力がレーザ光L3の0%から30%まで徐々に大きくされて(または、出力がレーザ光L3の0~30%の間の一定値で維持されて)照射される。
【0049】
これにより、バスバー20の表面20aが溶融して、Z軸方向の深さが0.01~0.2mm程度、Y軸方向の長さが0.3~0.8mm程度、及び、X軸方向の幅が0.3~0.5mm程度の表面溶融痕41が形成される。当該数値は一例であって、当該数値に限定されるものではなく、レーザ光のスポット径等に応じて適宜変更され得る。レーザ光のスポット径が大きければ、表面溶融痕41のX軸方向の幅が大きくなり、レーザ光のスポット径が小さければ、表面溶融痕41のX軸方向の幅が小さくなる。表面溶融痕41のZ軸方向の深さ及びY軸方向の長さについても、溶接条件等により、適宜変更される。
【0050】
本実施の形態では、表面溶融痕41は、Z軸方向から見た場合に、Y軸マイナス方向の端縁が曲線状(長円または楕円の弧形状)であり、Y軸プラス方向に延設された形状を有している。表面溶融痕41は、断面形状をX軸方向から見た場合に、Y軸方向に直線状に延設された形状を有している。
【0051】
内部溶融痕42は、表面溶融痕41に隣接して配置され、バスバー20及び電極端子200の一方の表面から内部まで溶融した溶融痕である。本実施の形態では、内部溶融痕42は、表面溶融痕41のY軸プラス方向に表面溶融痕41と接続されて配置され、バスバー20の表面20aから内部まで溶融した溶融痕である。具体的には、図5及び図6に示すように、バスバー20の表面20aに、レーザ光L1よりも大きな出力のレーザ光L2が照射されて、バスバー20の表面20aから内部までが溶融され、Y軸方向に延びる内部溶融痕42が形成される。
【0052】
レーザ光L2の出力は、レーザ光L3の最大出力の30~80%程度である。レーザ光L2は、表面溶融痕41のY軸プラス方向の端部からY軸プラス方向に向けて出力がレーザ光L3の30~80%程度まで徐々に大きくされて(または、出力がレーザ光L3の30~80%の間の一定値で維持されて)照射される。レーザ光L2が照射され始める位置(表面溶融痕41のY軸プラス方向の端部または内部溶融痕42のY軸マイナス方向の端部)を、表面溶融痕41及び内部溶融痕42の境界位置42aとも呼ぶ。境界位置42aは、レーザ光の出力がレーザ光L1からレーザ光L2になるように出力を増加させて、溶融痕の溶融幅(X軸方向の幅)が大きくなり始め、かつ、溶融深さ(Z軸方向の深さ)が深くなり始める(キーホールが形成され始める)位置である。表面溶融痕41及び内部溶融痕42の境界位置42aは、表面溶融痕41から内部溶融痕42に至る際の溶融痕の幅及び深さの少なくとも一方が変化する位置である。つまり、境界位置42aよりもY軸マイナス方向の表面溶融痕41は、キーホールが形成されなかった溶融部分であり、境界位置42aよりもY軸プラス方向の内部溶融痕42は、キーホールが形成された溶融部分である。
【0053】
これにより、バスバー20の表面20aから内部までが溶融して、Z軸方向の深さが1~2mm程度、Y軸方向の長さが4~8mm程度、及び、X軸方向の幅が1~3mm程度の内部溶融痕42が形成される。内部溶融痕42は、Z軸方向の深さがバスバー20のZ軸方向の厚みの1/4~3/4程度であり、Y軸方向の長さがZ軸方向の深さの2~4倍程度である。当該数値は一例であって、当該数値に限定されるものではなく、バスバー20の厚み等に応じて適宜変更され得る。バスバー20の厚みが大きければ、内部溶融痕42のZ軸方向の深さが深くなり、バスバー20の厚みが小さければ、内部溶融痕42のZ軸方向の深さが浅くなる。内部溶融痕42のX軸方向の幅及びY軸方向の長さについても、溶接条件等により、適宜変更される。
【0054】
本実施の形態では、内部溶融痕42は、Z軸方向から見た場合に、Y軸マイナス方向の端縁(境界位置42a)が曲線状(長円または楕円の弧形状)であり、Y軸プラス方向に延設された形状を有している。内部溶融痕42は、断面形状をX軸方向から見た場合に、Y軸マイナス方向の端縁がZ軸マイナス方向に凹むように湾曲する曲線状であり、Y軸プラス方向に延設された形状を有している。
【0055】
第一溶接痕43は、内部溶融痕42に隣接して配置され、バスバー20及び電極端子200(導電部材)が溶接された溶接痕である。本実施の形態では、第一溶接痕43は、内部溶融痕42のY軸プラス方向に内部溶融痕42と接続されて配置され、バスバー20の表面20aから内部を貫通し、電極端子200の内部まで溶融した溶接痕である。具体的には、図5及び図6に示すように、バスバー20の表面20aに、レーザ光L2よりも大きな出力のレーザ光L3が照射されて、バスバー20の表面20aから電極端子200の内部までが溶融され、Y軸方向に延びる第一溶接痕43が形成される。
【0056】
レーザ光L3は、内部溶融痕42のY軸プラス方向の端部からY軸プラス方向に向けて、出力がレーザ光L2の出力(レーザ光L3の最大出力の30~80%程度)から徐々に大きくされて照射され、その後、レーザ光L3の最大出力で維持されて照射される。レーザ光L3が照射され始める位置(内部溶融痕42のY軸プラス方向の端部または第一溶接痕43のY軸マイナス方向の端部)を、内部溶融痕42及び第一溶接痕43の境界位置43aとも呼ぶ。境界位置43aは、レーザ光の出力がレーザ光L2からレーザ光L3になるように出力を増加させて、溶融深さが深くなり始める位置である。
【0057】
これにより、バスバー20の表面20aから電極端子200の内部までが溶融して、Z軸方向の深さが2~4mm程度、及び、X軸方向の幅が1~3mm程度のY軸方向に延びる第一溶接痕43が形成される。当該数値は一例であって、当該数値に限定されるものではなく、バスバー20及び電極端子200の厚み等に応じて適宜変更され得る。バスバー20及び電極端子200の厚みが大きければ、第一溶接痕43のZ軸方向の深さが深くなり、バスバー20及び電極端子200の厚みが小さければ、第一溶接痕43のZ軸方向の深さが浅くなる。第一溶接痕43のX軸方向の幅についても、溶接条件等により、適宜変更される。
【0058】
本実施の形態では、第一溶接痕43は、Z軸方向から見た場合に、Y軸マイナス方向の端縁(境界位置43a)が曲線状(長円または楕円の弧形状)であり、Y軸プラス方向に延設され、かつ、Y軸プラス方向の端縁も曲線状(長円または楕円の弧形状)を有している。第一溶接痕43は、断面形状をX軸方向から見た場合に、Y軸マイナス方向の端縁がZ軸マイナス方向に凹むように湾曲する曲線状であり、Y軸プラス方向に延設され、かつ、Y軸プラス方向の端縁もZ軸マイナス方向に凹むように湾曲する曲線状を有している。
【0059】
第一溶接痕43のY軸プラス方向の端部には、第一溶融池痕43bが形成されている。第一溶融池痕43bは、溶接時に溶融池が形成された痕であり、Z軸方向から見て長円形状または楕円形状を有している。図5の(b)では、第一溶融池痕43bの図示は省略している。
【0060】
第二溶接痕44は、第一溶接痕43に沿って、第一溶接痕43の延設方向(Y軸方向)に延設されて配置される溶接痕である。本実施の形態では、第二溶接痕44は、第一溶接痕43のX軸プラス方向に第一溶接痕43と接続されて配置され、バスバー20の表面20aから内部を貫通し、電極端子200の内部まで溶融した溶接痕である。具体的には、図7に示すように、バスバー20の表面20aにレーザ光L4が照射されて、バスバー20の表面20aから電極端子200の内部までが溶融され、Y軸方向に延びる第二溶接痕44が形成される。
【0061】
レーザ光L4は、レーザ光L3と同等の出力を有し、第一溶接痕43のY軸プラス方向の端部よりもX軸プラス方向に少しずれた位置からY軸マイナス方向に進みながら、バスバー20の表面20aに向けて照射される。これにより、バスバー20の表面20aから電極端子200の内部までが溶融して、第一溶接痕43と同程度の深さ、幅及び長さの第二溶接痕44が形成される。
【0062】
このように、第二溶接痕44は、第一溶接痕43の延設方向(Y軸方向)における第一溶接痕43の一端から他端までに亘って、第一溶接痕43に沿って延設されて配置される。具体的には、第二溶接痕44は、表面溶融痕41から遠い端部(表面溶融痕41とは反対側(Y軸プラス方向)の端部)である溶接痕端部44aから、表面溶融痕41及び内部溶融痕42の境界位置42aよりも表面溶融痕41から離れる位置(内部溶融痕42側の位置)までに亘って、第一溶接痕43に沿って延設されて配置される。溶接痕端部44aは、第二溶接痕44において溶接が開始される側の端部であり、第一溶接痕43のY軸プラス方向の端部よりもY軸プラス方向に配置される。つまり、第二溶接痕44は、第一溶接痕43のY軸プラス方向の端部よりもY軸プラス方向の位置から、第一溶接痕43のY軸マイナス方向の端部(境界位置43a)までに亘って、第一溶接痕43と平行に延設されて配置される。これにより、第二溶接痕44における溶接の開始時点で予熱を行うことができている。溶接痕端部44aは、溶接が開始される側の端部であるため、溶融池痕は形成されていない。
【0063】
第二溶接痕44は、第一溶接痕43に対して、Y軸方向にずれて形成されていてもよいし、Y軸方向に長く形成されていてもよいし、短く形成されていてもよい。第二溶接痕44のY軸プラス方向の端部(溶接痕端部44a)は、第一溶接痕43のY軸プラス方向の端部とY軸方向において同じ位置、または、第一溶接痕43のY軸プラス方向の端部よりもY軸マイナス方向に配置されていてもよい。第二溶接痕44のY軸マイナス方向の端部は、第一溶接痕43のY軸マイナス方向の端部よりも、Y軸マイナス方向またはY軸プラス方向に配置されていてもよい。
【0064】
第二溶接痕44は、第一溶接痕43と重ねられて(接続されて)形成されている。つまり、第二溶接痕44は、X軸方向において第一溶接痕43と重なりつつ(接続されつつ)、Y軸方向に延設されている。このように、第一溶接痕43と第二溶接痕44とは、少なくとも一部が接続されている。本実施の形態では、第一溶接痕43と第二溶接痕44とは、Y軸方向の一端から他端までに亘って重ねられて(接続されて)いる。第一溶接痕43と第二溶接痕44との重なり量は、特に限定されないが、X軸方向において、第一溶接痕43または第二溶接痕44の幅の1/4~1/2程度(例えば0.5~1mm程度)重なっている。
【0065】
さらに具体的には、第二溶接痕44は、Z軸方向から見た場合に、Y軸プラス方向の端縁が曲線状(長円または楕円の弧形状)であり、Y軸マイナス方向に延設され、かつ、Y軸マイナス方向の端縁も曲線状(長円または楕円の弧形状)を有している。第二溶接痕44は、断面形状をX軸方向から見た場合に、Y軸プラス方向の端縁がZ軸マイナス方向に凹むように湾曲する曲線状であり、Y軸マイナス方向に延設され、かつ、Y軸マイナス方向の端縁もZ軸マイナス方向に凹むように湾曲する曲線状を有している。
【0066】
第二溶接痕44のY軸マイナス方向の端部には、第二溶融池痕44bが形成されている。第二溶融池痕44bは、溶接時に溶融池が形成された痕であり、Z軸方向から見て長円形状または楕円形状を有している。図7の(b)では、第二溶融池痕44bの図示は省略している。
【0067】
このように、バスバー20及び電極端子200にレーザ光を照射し、当該レーザ光の出力をレーザ光L1の出力からレーザ光L4の出力まで変化していくことにより、バスバー20及び電極端子200がレーザ溶接された接合部40が形成される。バスバー20及び電極端子200の溶接は、パルス溶接ではなく連続的な溶接である。当該レーザ溶接は、発振器等の公知の装置を用いて、レーザ光の出力を制御することにより行うことができる。
【0068】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置1によれば、バスバー20及び電極端子200(導電部材)には、接合部40が形成されている。接合部40は、バスバー20及び電極端子200の一方(バスバー20)の表面20aが溶融した表面溶融痕41と、当該一方の表面20aから内部まで溶融した内部溶融痕42と、バスバー20及び電極端子200が溶接された第一溶接痕43と、を有している。つまり、レーザ溶接時にレーザ出力を小さくして当該一方の表面20aを溶融させて表面溶融痕41を形成し、レーザ出力を少し大きくして、当該一方の表面20aから内部まで溶融した内部溶融痕42を形成する。レーザ出力をさらに大きくして、バスバー20及び電極端子200を溶接して第一溶接痕43を形成する。このように、溶接対象部分の手前からレーザ出力を徐々に大きくして表面溶融痕41及び内部溶融痕42を形成していくことにより溶接対象部分が予熱されるため、溶接対象部分に第一溶接痕43を形成する際のレーザ出力を抑制できる。特に、アルミニウム等の被溶接材は固体状態ではレーザ吸収率が低く、溶融状態ではレーザ吸収率が高くなるため、予熱により被溶接材の表面を溶融することで、レーザ吸収率を上げ、レーザ出力を低く抑えることができる。レーザ出力を抑制できれば、スパッタの発生を抑制できる。特に、バスバー20の厚みが厚いと、バスバー20を貫通させるためにレーザ出力を高くする必要がありスパッタが出やすいが、上述の通りレーザ出力を抑制することで、厚みが厚いバスバー20を用いてもスパッタの発生を抑制できる。これにより、スパッタが蓄電装置1の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置1の品質の低下を抑制できる。
【0069】
接合部40は、第一溶接痕43に沿う第二溶接痕44を有し、第二溶接痕44は、表面溶融痕41から遠い位置に、溶融池痕が形成されていない溶接痕端部44aを有している。このように、接合部40での接合強度を高めるために第二溶接痕44も形成する場合、第一溶接痕43に沿って第二溶接痕44を形成することで、第一溶接痕43における熱を第二溶接痕44での予熱に使用できる。特に、第二溶接痕44の表面溶融痕41から遠い溶接痕端部44aには溶融池痕が形成されていないため、第二溶接痕44は、溶接痕端部44aから溶接が開始されたものと判断できる。このため、第一溶接痕43の終端の溶接痕端部44aから溶接を開始することにより、第一溶接痕43を形成した後の当該終端における熱を予熱として使用し、第二溶接痕44の溶接を開始できる。これにより、第二溶接痕44を形成する際に、レーザ出力を抑制できるため、スパッタの発生を抑制できる。したがって、第二溶接痕44を形成する際においても、スパッタが蓄電装置1の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置1の品質の低下を抑制できる。
【0070】
第二溶接痕44が、第一溶接痕43の一端から他端までに亘って第一溶接痕43に沿って延設されていることにより、バスバー20及び電極端子200(導電部材)をより強固に接合できている。これにより、接合部40での接合強度を向上させつつスパッタの発生を抑制できるため、蓄電装置1の品質の低下を抑制できる。
【0071】
バスバー20及び電極端子200(導電部材)の接合は第一溶接痕43によって行われ、表面溶融痕41及び内部溶融痕42は、バスバー20及び電極端子200の接合に寄与しない部分(溶接を必要としなかった部分)である。このため、第二溶接痕44も、表面溶融痕41及び内部溶融痕42に対応する位置には形成する必要はなく、第二溶接痕44の形成位置を、溶接痕端部44aから、表面溶融痕41及び内部溶融痕42の境界位置42aよりも表面溶融痕41から離れる位置までとする。これにより、不要な位置に第二溶接痕44を形成して溶接温度が上昇したりしてスパッタが発生してしまうのを抑制できる。したがって、スパッタが蓄電装置1の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置1の品質の低下を抑制できる。溶接温度の上昇を抑制できれば、蓄電装置1の部品の劣化を抑制できるため、蓄電装置1の品質の低下を抑制できる。
【0072】
表面溶融痕41において溶融痕の幅及び深さの少なくとも一方を変化させることで、表面溶融痕41から内部溶融痕42に移行できる。
【0073】
第一溶接痕43と第二溶接痕44とを、少なくとも一部が接続(重複)するように形成することで、第一溶接痕43における熱を予熱として効果的に活用して、第二溶接痕44を形成できる。これにより、第二溶接痕44を形成する際に、レーザ出力を抑制できるため、スパッタの発生を抑制できる。したがって、第二溶接痕44を形成する際に、スパッタが蓄電装置1の品質に影響を及ぼすのを抑制できるため、蓄電装置1の品質の低下を抑制できる。第一溶接痕43と第二溶接痕44とを重複させて形成することで、バスバー20及び電極端子200の接合強度を向上させ、また、省スペース化を図ることもできる。
【0074】
蓄電装置1の製造方法(バスバー20及び電極端子200の接合方法)においても、上記の蓄電装置1についての効果と同様の効果を奏する。
【0075】
[4 変形例の説明]
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。図8は、本実施の形態の変形例1に係る接合部40aの構成を示す平面図である。図8は、図4に対応する図である。
【0076】
図8に示すように、本変形例における接合部40aは、上記実施の形態における接合部40とは異なり、表面溶融痕41、内部溶融痕42及び第一溶接痕43と、第二溶接痕44とが離間している。つまり、本変形例では、第二溶接痕44は、第一溶接痕43に沿って、第一溶接痕43の延設方向(Y軸方向)に延設されて配置されるが、第一溶接痕43と第二溶接痕44とは、接続されておらず、近傍に配置されている。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0077】
以上のように、本変形例に係る蓄電装置によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本変形例において、第二溶接痕44は、第一溶接痕43から離間しているが、第一溶接痕43の近傍に配置されているため、第一溶接痕43における熱を予熱として活用できる。これにより、本変形例においても、スパッタの発生を抑制できるため、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制でき、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0078】
本変形例において、第二溶接痕44は、Y軸方向における一部が、第一溶接痕43と接続(重複)されていてもよい。第二溶接痕44は、Y軸プラス方向の端部が第一溶接痕43と接続されていてもよいし、Y軸方向中央部またはY軸マイナス方向の端部が第一溶接痕43と接続されていてもよい。
【0079】
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。図9は、本実施の形態の変形例2に係る接合部40bの構成を示す平面図である。図9は、図4に対応する図である。
【0080】
図9に示すように、本変形例における接合部40bは、上記実施の形態における接合部40の第二溶接痕44に代えて、表面溶融痕45a、内部溶融痕45b及び第三溶接痕45cを有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
表面溶融痕45a、内部溶融痕45b及び第三溶接痕45cは、表面溶融痕41、内部溶融痕42及び第一溶接痕43と同様の構成を有しており、かつ、これらからX軸プラス方向にずれた位置に配置されている。つまり、表面溶融痕45aは、バスバー20の表面20aが溶融した溶融痕であり、内部溶融痕45bは、表面溶融痕45aに隣接して配置され、バスバー20の表面20aから内部まで溶融した溶融痕である。第三溶接痕45cは、内部溶融痕45bに隣接して配置され、バスバー20及び電極端子200が溶接された溶接痕であり、第三溶接痕45cのY軸プラス方向の端部には、第三溶融池痕45dが形成されている。第三溶接痕45cは、第一溶接痕43の延設方向(Y軸方向)における第一溶接痕43の一端から他端までに亘って、第一溶接痕43に沿って、第一溶接痕43の延設方向(Y軸方向)に延設されて配置されている。第一溶接痕43と第三溶接痕45cとは、少なくとも一部が接続されている。
【0082】
以上のように、本変形例に係る蓄電装置によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本変形例において、第三溶接痕45cにおいても、表面溶融痕45a及び内部溶融痕45bを形成することにより、溶接対象部分が予熱されるため、溶接対象部分に第三溶接痕45cを形成する際のレーザ出力を抑制できる。これにより、本変形例においても、スパッタの発生を抑制できるため、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制でき、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0083】
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。図10A及び図10Bは、本実施の形態の変形例3に係る接合部40c及び40dの構成を示す平面図である。図10A及び図10Bは、図3におけるバスバー20及び電極端子200に対応する図である。
【0084】
図10Aに示すように、本変形例における接合部40cは、上記実施の形態における接合部40の表面溶融痕41、内部溶融痕42、第一溶接痕43及び第二溶接痕44に代えて、表面溶融痕46a、内部溶融痕46b、第一溶接痕46c及び第二溶接痕46dを有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0085】
表面溶融痕46a、内部溶融痕46b、第一溶接痕46c及び第二溶接痕46dは、上記実施の形態における表面溶融痕41、内部溶融痕42、第一溶接痕43及び第二溶接痕44と同様の構成を有しているが、上記実施の形態と異なり、湾曲した形状を有している。具体的には、バスバー20に、円形状の開口部21が形成されており、この開口部21の周囲を囲うように、表面溶融痕46a、内部溶融痕46b、第一溶接痕46c及び第二溶接痕46dが、Y軸方向に湾曲状に延びて形成されている。開口部21は、電極端子200に形成された円形状の凸部が配置される円形状の貫通孔である。
【0086】
第二溶接痕46dは、上記実施の形態と同様に、第一溶接痕46cに沿って、第一溶接痕46cの延設方向(Y軸方向)に延設されて配置され、かつ、第一溶接痕46cに重ねられて形成されている。つまり、開口部21の周囲の外側に第一溶接痕46cが形成された後に、第一溶接痕46cの内側に第二溶接痕46dが形成されている。
【0087】
図10Bに示すように、本変形例における接合部40dは、上記実施の形態における接合部40の表面溶融痕41、内部溶融痕42、第一溶接痕43及び第二溶接痕44に代えて、表面溶融痕47a、内部溶融痕47b、第一溶接痕47c及び第二溶接痕47dを有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
表面溶融痕47a、内部溶融痕47b、第一溶接痕47c及び第二溶接痕47dは、図10Aに示した接合部40cにおける各構成要素と同様の構成を有しているが、接合部40cと異なり、第一溶接痕47cが形成された後に、第一溶接痕47cの外側に第二溶接痕47dが形成されている。
【0089】
以上のように、本変形例に係る蓄電装置によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本変形例の接合部40cにおいては、第一溶接痕46cが形成された後に、第一溶接痕46cの内側に第二溶接痕46dが形成されているため、第一溶接痕46cを形成した際の熱を第一溶接痕46cの内側に留めておくことができる。これにより、第一溶接痕46cを形成した際の熱を、第二溶接痕46dを形成する際の予熱として用いることができる。第一溶接痕46cの周囲にヒートシンクを配置して、第一溶接痕46cを形成した際の熱を放熱する構成の場合でも、第一溶接痕46cの内側からは放熱されないため、当該熱を、第二溶接痕46dを形成する際の予熱として用いることができる。したがって、スパッタの発生を抑制できるため、スパッタが蓄電装置の品質に影響を及ぼすのを抑制でき、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0090】
本変形例の接合部40dにおいては、第一溶接痕47cが形成された後に、第一溶接痕47cの外側に第二溶接痕47dが形成されている。このため、内側の第一溶接痕47cを形成してバスバー20の反りを抑制してから、外側の第二溶接痕47dを形成できる。これにより、接合部40dにおける接合品質の向上を図ることができるため、蓄電装置の品質の低下を抑制できる。
【0091】
本変形例において、バスバー20には、開口部21は形成されていなくてもよい。上記実施の形態及び変形例1、2において、バスバー20に開口部21が形成されていてもよい。
【0092】
(その他の変形例)
以上、本実施の形態及びその変形例に係る蓄電装置について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例には限定されない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0093】
上記実施の形態及びその変形例では、バスバー20及び電極端子200の重なり部分におけるX軸方向両側に、Y軸方向に向けて直線状または湾曲状に延びる2つの接合部が形成されていることとした。しかし、接合部は、当該重なり部分におけるY軸方向両側に形成されていてもよいし、その他の位置に形成されていてもよい。接合部の数も特に限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。接合部の延びる方向についても特に限定されず、X軸方向でもよいし、X軸方向またはY軸方向から傾斜した方向に延びていてもよい。
【0094】
上記実施の形態及びその変形例では、バスバー20及び電極端子200の接合部において、表面溶融痕は、Y軸マイナス方向の端部に配置(Y軸マイナス方向の端部から溶接が開始)されることとした。しかし、接合部において、表面溶融痕は、Y軸プラス方向の端部に配置(Y軸プラス方向の端部から溶接を開始)されてもよいし、接合部の形成位置及び形状(長さ、延設方向等)によっては、その他の位置に配置されてもよい。
【0095】
上記実施の形態及びその変形例では、バスバー20及び電極端子200の接合部において、第二溶接痕は、第一溶接痕の延設方向に(第一溶接痕と平行に)延設されて配置されることとした。しかし、第二溶接痕は、第一溶接痕の延設方向に対して傾斜した方向、または、第一溶接痕の延設方向と直交する方向等、第一溶接痕の延設方向と交差する方向に延設されてもよい。この場合でも、第二溶接痕の溶接開始時点では第一溶接痕の形成による熱を予熱として使用できるため、レーザ出力を抑制でき、スパッタの発生を抑制できる。
【0096】
上記実施の形態及び変形例1、3において、第二溶接痕は、第一溶接痕が形成された方向と同じ方向に向けて形成されてもよい。上記実施の形態においては、第一溶接痕43はY軸プラス方向に向けて形成されるため、第二溶接痕44も、Y軸プラス方向に向けて形成されてもよく、第二溶接痕44のY軸プラス方向の端部に第二溶融池痕44bが形成されてもよい。第一溶接痕43を形成した際の熱を利用することで、第二溶接痕44を当該方向でも形成できる。変形例1等においても同様である。
【0097】
上記実施の形態及びその変形例では、バスバー20及び電極端子200の全ての接合部が、上記の構成を有していることしたが、いずれかの接合部が上記の構成を有していなくてもよい。
【0098】
上記実施の形態及びその変形例では、「バスバー及び導電部材の接合部」の一例として、バスバー20及び電極端子200の接合部を例示したが、これには限定されない。「バスバー及び導電部材の接合部」の一例として、バスバー同士の接合部、または、バスバー及び電圧検出端子の接合部等を例示することもできる。つまり、バスバーにどのような導電部材が接合されても、「バスバー及び導電部材の接合部」の一例とできる。この場合、バスバー側からレーザ光を照射するのではなく、導電部材側からレーザ光を照射し、導電部材に表面溶融痕及び内部溶融痕を形成してもよい。導電部材が電極端子200の場合でも、形状によっては、電極端子200側からレーザ光を照射し、電極端子200に表面溶融痕及び内部溶融痕を形成することもできる。
【0099】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
本発明は、このような蓄電装置として実現できるだけでなく、バスバー及び導電部材(バスバー20及び電極端子200)の接合構造若しくは接合方法、または、当該接合方法を含む蓄電装置の製造方法としても実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 蓄電装置
10 蓄電素子
20 バスバー
20a 表面
21 開口部
30 外装体
31 外部端子
40、40a、40b、40c、40d 接合部
41、45a、46a、47a 表面溶融痕
42、45b、46b、47b 内部溶融痕
42a、43a 境界位置
43、46c、47c 第一溶接痕
43b 第一溶融池痕
44、46d、47d 第二溶接痕
44a 溶接痕端部
44b 第二溶融池痕
45c 第三溶接痕
45d 第三溶融池痕
100 容器
110 容器本体
120 蓋体
121 ガス排出弁
122 注液部
200 電極端子
300 ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B