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特許7694570車載装置、情報配信装置、運転支援システム、制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】車載装置、情報配信装置、運転支援システム、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250611BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20250611BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/01 A
G09B29/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022546152
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027665
(87)【国際公開番号】W WO2022049924
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020149678
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】小川 明紘
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 進
【審査官】山田 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185756(JP,A)
【文献】特開2020-038360(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からデータを受信する通信部と、
動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図を前記データから生成する生成部と、
前記動的地図と前記静的地図とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記動的地図のうち、前記静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、
前記判定部は、前記所定領域に対応する前記動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、
前記判定部により、前記所定領域に対応する前記動的地図を更新すると判定されたことを受けて、前記通信部は、前記確度に関する所定条件を満たすデータの送信要求を前記外部に送信し、
前記通信部が、前記送信要求に応答して送信されたデータを受信したことを受けて、前記生成部は、当該動的地図を、前記通信部により新たに受信した前記データから生成した新たな動的地図で更新する、車載装置。
【請求項2】
前記データは、センサデータを含み、
前記動的地図は、前記生成部により前記センサデータが解析されて検出された動的物体の変位に関する動的情報を含み、
前記確度は、前記所定領域に対応する前記動的地図に含まれる前記動的情報の鮮度である、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記動的物体に関し、現在から所定時間経過後までの前記動的物体の変位を予測する予測処理部をさらに含み、
前記判定部により、前記所定領域に対応する前記動的地図を更新すると判定されたことを受けて、前記予測処理部は、当該所定領域に含まれる前記動的物体に関し、現在から所定時間経過後までの前記動的物体の前記変位を予測し、
前記生成部は、前記変位を用いて、前記所定領域に対応する前記動的地図を補完する、請求項に記載の車載装置。
【請求項4】
前記車載装置が搭載された車両の自動運転を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記動的地図を前記車両の自動運転に利用する、請求項又は請求項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記車載装置が搭載された車両の走行予定区間に対応する前記動的地図の確度を判定する確度判定部をさらに含み、
前記確度判定部により、確度が低いと判定されたことを受けて、前記制御部は、前記走行予定区間に対応する前記動的地図を前記車両の自動運転に利用しない、請求項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記車載装置が搭載された車両の自動運転を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記動的地図を前記車両の自動運転に利用し、
前記生成部により補完された前記動的地図の確度を判定する確度判定部をさらに含み、
前記確度判定部により、確度が低いと判定されたことを受けて、前記制御部は、補完された前記動的地図を前記車両の自動運転に利用しない、請求項に記載の車載装置。
【請求項7】
前記静的地図は、道路地図であり、
前記所定領域は、前記道路地図において、少なくとも道路を含む領域を格子状に区分することにより決定される複数のグリッド領域の1つである、請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項8】
前記通信部は、前記生成部により前記新たな動的地図が生成されたことを受けて、前記新たな動的地図を前記外部に送信する、請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項9】
外部からデータを受信する通信部と、
動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図を前記データから生成する生成部と、
前記動的地図と前記静的地図とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記動的地図のうち、前記静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、
前記判定部は、前記所定領域に対応する前記動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、
前記判定部により、前記所定領域に対応する前記動的地図を更新すると判定されたことを受けて、前記通信部は、前記確度に関する所定条件を満たすデータの送信要求を前記外部に送信し、
前記通信部が、前記送信要求に応答して送信されたデータを受信したことを受けて、前記生成部は、当該動的地図を、前記通信部により新たに受信した前記データから生成した新たな動的地図で更新し、
前記通信部は、前記生成部により前記新たな動的地図が生成されたことを受けて、前記新たな動的地図を前記外部に送信する、情報配信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか1項に記載の車載装置、又は、請求項に記載の情報配信装置を第1装置として含み、
前記車載装置において、前記通信部は、前記生成部により前記新たな動的地図が生成されたことを受けて、前記新たな動的地図を前記外部に送信し、
前記第1装置から前記動的地図を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記動的地図を利用して、前記受信部が搭載された車両の自動運転を制御する自動運転制御部とを含む、前記車両に搭載された第2装置をさらに含む、運転支援システム
【請求項11】
請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか1項に記載の車載装置、又は、請求項に記載の情報配信装置を第1装置として含み、
前記車載装置において、前記通信部は、前記生成部により前記新たな動的地図が生成されたことを受けて、前記新たな動的地図を前記外部に送信し、
前記第1装置から前記動的地図を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記動的地図から運転支援情報を生成して提示する提示部とを含む、車両に搭載された第2装置をさらに含む、運転支援システム
【請求項12】
前記確度は前記動的情報の鮮度であり、
前記動的情報は、当該動的情報の生成時刻と有効期限とを前記鮮度として含み、
前記判定部は、前記生成時刻と前記有効期限とに基づいて前記動的地図を更新するか否かを判断する、請求項1から請求項3及び請求項6のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項13】
サーバ及び車載装置を含む運転支援システムであって、
前記サーバは、
外部からセンサデータを受信し、
前記センサデータを解析して動的物体を検出し、前記動的物体の変位に関する動的情報を生成し、
前記センサデータ及び前記動的情報の少なくとも一方を含むデータを前記車載装置に送信し、
前記車載装置は、
前記サーバから送信される前記データを受信する通信部と、
前記動的情報を静的地図に対応付けた動的地図を前記データから生成する生成部と、
前記動的地図と前記静的地図とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記動的地図のうち、前記静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、
前記判定部は、前記所定領域に対応する前記動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、
前記判定部により、前記所定領域に対応する前記動的地図を更新すると判定されたことを受けて、前記通信部は、前記確度に関する所定条件を満たすデータの送信要求を前記サーバに送信し、
前記通信部が、前記送信要求に応答して送信されたデータを前記サーバから受信したことを受けて、前記生成部は、当該動的地図を、前記通信部により新たに受信した前記データから生成した新たな動的地図で更新する、運転支援システム。
【請求項14】
通信機能を有する装置の制御方法であって、
外部からデータを受信する通信ステップと、
動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図を前記データから生成する生成ステップと、
前記動的地図と前記静的地図とを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップにより記憶された前記動的地図のうち、前記静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを、前記所定領域に対応する前記動的地図の確度に応じて判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、前記所定領域に対応する前記動的地図を更新すると判定されたことを受けて、前記確度に関する所定条件を満たすデータの送信要求を前記外部に送信する送信ステップと、
前記通信ステップにより、前記送信要求に応答して送信されたデータを受信したことを受けて、当該動的地図を、前記通信ステップにより新たに受信した前記データから生成した新たな動的地図で更新する更新ステップとを含む、制御方法。
【請求項15】
コンピュータに、
外部からデータを受信する通信機能と、
動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図を前記データから生成する生成機能と、
前記動的地図と前記静的地図とを記憶する記憶機能と、
前記記憶機能により記憶された前記動的地図のうち、前記静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを、前記所定領域に対応する前記動的地図の確度に応じて判定する判定機能と、
前記判定機能により、前記所定領域に対応する前記動的地図を更新すると判定されたことを受けて、前記確度に関する所定条件を満たすデータの送信要求を前記外部に送信する送信機能と、
前記通信機能により、前記送信要求に応答して送信されたデータを受信したことを受けて、当該動的地図を、前記通信機能により新たに受信した前記データから生成した新たな動的地図で更新する更新機能とを実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、情報配信装置、運転支援システム、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。本出願は、2020年9月7日出願の日本出願第2020-149678号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車及び自動二輪車等(以下、車両という)の運転に関して運転者を支援する種々のシステムが提案されている。そのようなシステムにおいては、道路及びその周辺に設定された種々のセンサ機器(カメラ、レーダ等)を備えた路側装置からセンサの情報を収集し、それを解析して交通に関する情報(事故、渋滞等)を、動的な運転支援情報として車両に提供する。また、移動通信回線の高速化に伴い、路側装置に装備されたセンサ機器に限らず、車両に搭載されているセンサ機器からの情報を収集し、運転支援に有効利用することも提案されている。例えば、第3世代移動通信システム及びそれに続く移動通信システムの規格化を推進している3GPP(Third Generation Partnership Project)からは、セルラーV2Xという規格が提案されている。Vは車両(Vehicle)を意味し、Xは車両以外のものを意味している。この規格は、車両と車両以外のものとの通信を、LTE(Long Term Evolution)及び5G(第5世代移動通信システム)により行うことを目的とする。
【0003】
プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)及び電気自動車(EV:Electric Vehicle)等の導入が進んでいる。これらを含め近年の車両には、種々の電子機器が装備され、それらを制御するECU(Electric Control Unit)が搭載されている。例えば、自動運転可能な車両には、自動運転用ECUが搭載されている。自動運転用ECUは、適宜外部と通信し、必要な情報(交通情報、動的な運転支援情報)の取得を行う。その他、エンジン制御ECU、ストップスタート制御ECU、トランスミッション制御ECU、エアバッグ制御ECU、パワーステアリング制御ECU、ハイブリッド制御ECU等がある。
【0004】
下記特許文献1には、車車間通信において、情報の有効期限を算出し、それに基づいて情報の使用及び送信を実行するか否かを判定することにより、情報の鮮度を保ちつつ、通信負荷又は記憶容量を低減する車車間通信装置が開示されている。下記特許文献2には、自動運転車向けの地図情報の更新要否を、走行計画の評価値に基づいて判定する地図更新判定システムが開示されている。このシステムにおいては、走行計画の評価値は、車両の制御目標値と制御結果検出値との比較に基づき算出される。このシステムは、区域毎に走行計画の評価値を算出し、算出された評価値が評価閾値未満の区域に関して、地図情報の更新を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-81722号公報
【文献】特開2017-90548号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示のある局面に係る車載装置は、外部からデータを受信する通信部と、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成部と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、判定部は、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、生成部は、当該動的地図を、通信部により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する。
【0007】
本開示の別の局面に係る情報配信装置は、外部からデータを受信する通信部と、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成部と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、判定部は、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、生成部は、当該動的地図を、通信部により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新し、通信部は、生成部により新たな動的地図が生成されたことを受けて、新たな動的地図を外部に送信する。
【0008】
本開示のさらに別の局面に係る車載装置は、上記の車載装置、又は、上記の情報配信装置から動的地図を受信する受信部と、受信部により受信された動的地図を利用して、受信部が搭載された車両の自動運転を制御する自動運転制御部とを含む。
【0009】
本開示のさらに別の局面に係る車載装置は、上記の車載装置、又は、上記の情報配信装置から動的地図を受信する受信部と、受信部により受信された動的地図から運転支援情報を生成して提示する提示部とを含む。
【0010】
本開示のさらに別の局面に係る運転支援システムは、サーバ及び車載装置を含む運転支援システムであって、サーバは、外部からセンサデータを受信し、センサデータを解析して動的物体を検出し、動的物体の変位に関する動的情報を生成し、データを車載装置に送信し、データは、センサデータ及び動的情報の少なくとも一方を含み、車載装置は、サーバから送信されるデータを受信する通信部と、動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成部と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、判定部は、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、生成部は、当該動的地図を、通信部により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する。
【0011】
本開示のさらに別の局面に係る制御方法は、通信機能を有する装置の制御方法であって、外部からデータを受信する通信ステップと、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成ステップと、動的地図と静的地図とを記憶する記憶ステップと、記憶ステップにより記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて判定する判定ステップと、判定ステップにより、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、当該動的地図を、通信ステップにより新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する更新ステップとを含む。
【0012】
本開示のさらに別の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、外部からデータを受信する通信機能と、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから動的地図を生成する生成機能と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶機能と、記憶機能により記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて判定する判定機能と、判定機能により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、当該動的地図を、通信機能により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する更新機能とを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態に係る運転支援システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、車載装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、図2に示した車内外連携部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、図2に示した自動運転ECUのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、図1に示したサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、図1に示したインフラセンサのハードウェア構成を示すブロック図である。
図7図7は、車内外連携部及び自動運転ECUの機能構成を示すブロック図である。
図8図8は、交通状況の例を示す平面図である。
図9図9は、車内外連携部の処理を示すフローチャートである。
図10図10は、自動運転ECUの処理を示すフローチャートである。
図11図11は、本開示の運転支援システムにおける複数の車載装置及びサーバ間のデータの授受を示すブロック図である。
図12図12は、図9と異なる車内外連携部の処理を示すフローチャートである。
図13図13は、図11とは異なる、複数の車載装置及びサーバ間のデータの授受を示すブロック図である。
図14図14は、図11及び図13とは異なる、複数の車載装置及びサーバ間のデータの授受を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明が解決しようとする課題]
車両の運転支援、特に自動運転において、動的な運転支援情報を活用することが考えられる。自動運転には複数のレベルがある。リアルタイムの運転支援(自動運転を含む)においては、利用する情報を常に更新し、その確からしさ(確度)を維持することが重要である。情報の確度としては、例えば、情報の新しさ(鮮度)がある。古い情報による運転支援は、無意味であり、そのような情報による運転支援が行われないようにできれば好ましい。例えば、取得又は生成されてから比較的長い時間が経過した情報は、実際の交通状況と乖離しており、そのような情報が自動運転に利用されることを回避できれば好ましい。
【0015】
特許文献1及び2によっては、上記の好ましい態様を実現できない。即ち、特許文献1及び2に開示されている技術はいずれも、動的な運転支援に関するものではない。引用文献1は、有効でない情報を破棄することを開示しているが、情報を更新するものではない。特許文献2に開示された更新技術は、更新の対象が静的な地図情報であり、リアルタイム性の高い地図情報に適用できない。
【0016】
したがって、本開示は、動的な運転支援情報の確度を高い状態に維持でき、信頼性の高い自動運転を実現できる車載装置、情報配信装置、運転支援システム、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0017】
[発明の効果]
本開示によれば、動的な運転支援情報の確度を高い状態に維持でき、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0018】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0019】
(1)本開示の第1の局面に係る車載装置は、外部からデータを受信する通信部と、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成部と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、判定部は、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、生成部は、当該動的地図を、通信部により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する。これにより、動的な運転支援情報である動的地図を、確度の高い状態に維持できる。したがって、動的地図を自動運転に利用すれば、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0020】
(2)判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、通信部は、確度に関する所定条件を満たすデータの送信要求を外部に送信し、通信部が、送信要求に応答して送信されたデータを受信したことを受けて、生成部は、当該データから新たな動的地図を生成できる。これにより、サーバから配信される動的地図の確度が低い場合には、他車両に搭載されている車載装置等から、必要なデータを受信できるので、動的地図の確度をより高い状態に維持できる。したがって、動的地図を自動運転に利用すれば、より信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0021】
(3)データは、センサデータを含み、動的地図は、生成部によりセンサデータが解析されて検出された動的物体の変位に関する動的情報を含み、確度は、所定領域に対応する動的地図に含まれる動的情報の利用可能性の程度を表す鮮度であってもよい。これにより、動的地図の鮮度を高い状態に維持できる。したがって、動的地図を自動運転に利用すれば、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0022】
(4)車載装置は、動的物体に関し、現在から所定時間経過後までの動的物体の変位を予測する予測処理部をさらに含み、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、予測処理部は、当該所定領域に含まれる動的物体に関し、現在から所定時間経過後までの動的物体の変位を予測し、生成部は、変位を用いて、所定領域に対応する動的地図を補完してもよい。これにより、サーバから配信される動的地図の確度が低く、他車両に搭載されている車載装置等からも必要なデータを受信できない場合であっても、動的地図を補完できるので、動的地図の鮮度を高い状態に維持できる。したがって、動的地図を自動運転に利用すれば、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0023】
(5)車載装置は、車載装置が搭載された車両の自動運転を制御する制御部をさらに含み、制御部は、記憶部に記憶された動的地図を車両の自動運転に利用できる。これにより、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0024】
(6)車載装置は、車載装置が搭載された車両の走行予定区間に対応する動的地図の確度を判定する確度判定部をさらに含み、確度判定部により、確度が低いと判定されたことを受けて、制御部は、走行予定区間に対応する動的地図を車両の自動運転に利用しないことができる。これにより、確度の低い動的地図が自動運転に利用されることを回避でき、信頼性の高い自動運転を実現できる。また、自動運転ECU等による無駄な処理を回避し、車載装置内部での無駄な通信を軽減し、記憶容量を軽減できる。
【0025】
(7)車載装置は、車載装置が搭載された車両の自動運転を制御する制御部をさらに含み、制御部は、記憶部に記憶された動的地図を車両の自動運転に利用し、生成部により補完された動的地図の確度を判定する確度判定部をさらに含み、確度判定部により、確度が低いと判定されたことを受けて、制御部は、補完された動的地図を車両の自動運転に利用しないことができる。確度の低い動的地図が自動運転に利用されることを回避でき、信頼性の高い自動運転を実現できる。また、自動運転ECU等による無駄な処理を回避し、車載装置内部での無駄な通信を軽減し、記憶容量を軽減できる。
【0026】
(8)静的地図は、道路地図であり、所定領域は、道路地図において、少なくとも道路を含む領域を格子状に区分することにより決定される複数のグリッド領域の1つであってもよい。これにより、動的地図の生成及び更新が容易になる。
【0027】
(9)通信部は、生成部により新たな動的地図が生成されたことを受けて、新たな動的地図を外部に送信してもよい。これにより、確度の高い動的地図を他車両に搭載された車載装置等で利用できる。
【0028】
(10)本開示の第2の局面に係る情報配信装置は、外部からデータを受信する通信部と、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成部と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、判定部は、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、生成部は、当該動的地図を、通信部により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新し、通信部は、生成部により新たな動的地図が生成されたことを受けて、新たな動的地図を外部に送信する。これにより、情報配信装置は、動的な運転支援情報である動的地図を、確度の高い状態に維持できる。したがって、動的地図を受信した車両は、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0029】
(11)本開示の第3の局面に係る車載装置は、上記の車載装置、又は、上記の情報配信装置から動的地図を受信する受信部と、受信部により受信された動的地図から運転支援情報を生成して提示する提示部とを含む。これにより、動的地図を受信した車両は、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0030】
(12)本開示の第4の局面に係る車載装置は、上記の車載装置、又は、上記の情報配信装置から動的地図を受信する受信部と、受信部により受信された動的地図から運転支援情報を生成して提示する提示部とを含む。これにより、動的地図を受信した車両は、信頼性の高い運転支援を実現できる。
【0031】
(13)確度は動的情報の鮮度であり、動的情報は、当該動的情報の生成時刻と有効期限とを鮮度として含み、判定部は、生成時刻と有効期限とに基づいて動的地図を更新するか否かを判断する。これにより、動的地図の更新の要否を効率的に判定できる。
【0032】
(14)本開示の第5の局面に係る運転支援システムは、サーバ及び車載装置を含む運転支援システムであって、サーバは、外部からセンサデータを受信し、センサデータを解析して動的物体を検出し、動的物体の変位に関する動的情報を生成し、センサデータ及び動的情報の少なくとも一方を含むデータを車載装置に送信し、車載装置は、サーバから送信されるデータを受信する通信部と、動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成部と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを判定する判定部とを含み、判定部は、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて、当該動的地図を更新するか否かを判定し、判定部により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、生成部は、当該動的地図を、通信部により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する。これにより、サーバは、動的な運転支援情報である動的地図を、確度の高い状態に維持できる。したがって、動的地図を受信した車両は、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0033】
(15)本開示の第6の局面に係る制御方法は、通信機能を有する装置の制御方法であって、外部からデータを受信する通信ステップと、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成ステップと、動的地図と静的地図とを記憶する記憶ステップと、記憶ステップにより記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて判定する判定ステップと、判定ステップにより、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、当該動的地図を、通信ステップにより新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する更新ステップとを含む。これにより、動的な運転支援情報である動的地図を、確度の高い状態に維持できる。したがって、動的地図を自動運転に利用すれば、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0034】
(16)本開示の第7の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、外部からデータを受信する通信機能と、動的物体に関する動的情報を静的地図に対応付けた動的地図をデータから生成する生成機能と、動的地図と静的地図とを記憶する記憶機能と、記憶機能により記憶された動的地図のうち、静的地図の所定領域に対応する動的地図を更新するか否かを、所定領域に対応する動的地図の確度に応じて判定する判定機能と、判定機能により、所定領域に対応する動的地図を更新すると判定されたことを受けて、当該動的地図を、通信機能により新たに受信したデータから生成した新たな動的地図で更新する更新機能とを実行させる。これにより、動的な運転支援情報である動的地図を、確度の高い状態に維持できる。したがって、動的地図を自動運転に利用すれば、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
[全体構成]
図1を参照して、本開示の実施形態に係る運転支援システム100は、複数の車両102a及び102bにそれぞれ搭載された車載装置104a及び104bと、サーバ106とを含む。車載装置104a及び104bの各々とサーバ106との通信は、無線通信の基地局108及びネットワーク110を介して行われる。基地局108は、例えば、4G(第4世代移動通信システム)回線及び5G(第5世代移動通信システム)回線等による移動通信サービスを提供している。
【0037】
車両102a及び102bがそれぞれ搭載している車載装置104a及び104bは、基地局108がサービスしている通信仕様(4G回線、5G回線等)による通信機能を有している。車載装置104a及び104bは、基地局108を介さずに相互に直接通信する機能(V2V(Vehicle to Vehicle))をも有する。
【0038】
道路及びその周辺等(以下、路側ともいう)に固定して設置されたインフラセンサ112、及び道路交通用の信号機114も、車載装置104a、車載装置104b及びサーバ106と通信可能である。歩行者300、車両102a及び102bは、インフラセンサ112の検出対象である。歩行者300は、車両102a及び102bに搭載されたセンサ(以下、車載センサともいう)の検出対象でもある。
【0039】
インフラセンサ112は路側に設置され、路側における情報を取得する機能を備えた装置であり、基地局108との通信機能を有している。インフラセンサ112は、例えば、イメージセンサ(デジタルの監視カメラ等)、レーダ(ミリ波レーダ等)、又はレーザセンサ(LiDAR(Light Detection And Ranging)等)等である。なお、インフラセンサ112は、演算機能を有する路側器に装備又は接続されていてもよい。
【0040】
サーバ106は、インフラセンサ112等から基地局108を介してアップロードされるデータ(以下、センサデータともいう)を受信し、それを解析して動的地図を生成し、動的な運転支援情報として記憶する。車載装置104a及び車載装置104bの各々が搭載しているセンサから出力されたセンサデータがサーバ106に送信される場合には、サーバ106は、それらのセンサデータをも動的な運転支援情報の生成に利用する。動的な運転支援情報は、動的地図、解析結果及びセンサデータ自体を含む。「動的地図」とは、センサにより検出された動的物体に関する情報(以下、動的情報という)を、静的地図(道路地図等)に対応付けたものである。例えば、動的地図として、{動的物体を特定する情報,動的情報,地図上のエリアを特定する情報}を1つのデータセットとし、動的物体の数だけデータセットを含むデータ構造を採用できる。
【0041】
動的物体とは、移動している物体(人、車両等)に限らず、移動機能を有しているが停止している物体をも含む。動的情報とは、動的物体の変位(位置、その変化の大きさ及び方向)に関する情報を含み、例えば、動的物体毎の位置、移動速度、移動方向及び時間情報等により構成される。また、動的情報は、予測情報を含み得る。例えば、サーバ106が、予測機能を有していれば、動的物体の現在までの移動軌跡、移動速度及び移動方向を用いて、将来(現在から所定時間以内)の移動軌跡、移動速度及び移動方向を予測できる。したがって、それらを、動的情報に含んでもよい。時間情報は、例えば、動的情報の生成時刻、及び、有効期限を含む。これは、時間情報を含まない動的情報の生成時刻と有効期限とを、当該動的情報(時間情報を含まず)に追加して、新たな動的情報とすることを意味する。有効期限は、その動的情報が生成されてから、有効に利用され得る上限時間を表す。
【0042】
地図上のエリアは、例えば、道路地図を格子状に区切った各領域(以下、グリッド領域という)である。その場合、動的地図は、各グリッド領域に対応させて、その領域内に含まれる動的情報を記憶したものである。動的地図は、新たなデータを用いて、時々刻々と更新される。動的情報は、信号機の情報(点灯状態等を表す情報)を含んでいてもよい。
【0043】
サーバ106は、動的な運転支援情報を車両102a及び102bに送信する。即ち、サーバ106は、情報配信装置として機能する。また、サーバ106は、基地局108を介して信号機114からアップロードされる信号機の状態を表す情報(例えば、点灯又は点滅状態の色を表す情報等であり、以下、交通情報という)をも受信して、動的な運転支援情報の生成に利用する。
【0044】
図1には、例示的に1つの基地局108、1つのインフラセンサ112、1台の信号機114、並びに、2台の車両102a及び102bを示しているが、通常、複数の基地局が設けられ、3台以上の車両に移動通信機能が提供されている。インフラセンサ112は、交差点等の所定領域に2台以上設置されていてもよい。
【0045】
[車載装置のハードウェア構成]
図2を参照して、車両102aに搭載されている車載装置104aのハードウェア構成の一例を示す。車両102bに搭載された車載装置104bも同様に構成されている。車載装置104aは、車内外連携部120、車載ゲートウェイ122、自動運転ECU124、I/F部126、通信部128、バス130及び132を含む。なお、車載装置104aは、自動運転ECU124以外にも、複数のECUを含むが、図2には図示していない。
【0046】
通信部128は、車両102aの外部装置と無線通信(例えば、基地局108を介したサーバ106との通信)を行う。通信部128は、無線通信において採用されている変調及び多重化を行うためのIC、所定周波数の電波を送信及び受信するためのアンテナ、並びにRF回路等を含む。通信部128は、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System、全地球衛星測位システム)との通信機能をも有する。
【0047】
車載ゲートウェイ122は、車外との通信機能(通信仕様)と車内での通信機能(通信仕様)とを接合する役割(通信プロトコル変換等)を担う。自動運転ECU124は、車載ゲートウェイ122及び通信部128を介して、外部装置と通信できる。車内外連携部120は、通信部128を介して外部から受信する情報のうち、動的地図及びその生成に利用するデータ(センサデータ、センサデータの解析結果等)を取得し、後述するように、動的地図を更新する。車内外連携部120は、車載ゲートウェイ122を介して、動的地図及びその生成に利用するデータを取得してもよい。更新された動的地図は、自動運転ECU124に送信される。各部間のデータ交換は、バス130及び132を介して行われる。
【0048】
センサ134は、車両102aに搭載されている。センサ134は、車両102a外部の情報を取得するためのセンサ(ビデオ映像の撮像装置(例えば、デジタルカメラ(CCDカメラ、CMOSカメラ))、レーザセンサ(LiDAR)等)、及び、車両自体の情報を取得するためのセンサ(加速度センサ、荷重センサ等)を含む。センサ134は、検知範囲(カメラであれば撮像範囲)内の情報を取得してセンサデータとして出力する。デジタルカメラであれば、デジタルの画像データを出力する。センサ134からの信号(アナログ又はデジタル)はI/F部126に入力される。I/F部126は、A/D変換部を含み、アナログ信号が入力されるとデジタルデータを生成して出力する。生成されたデジタルデータは、バス132を介して、車内外連携部120、車載ゲートウェイ122及び自動運転ECU124に送信される。センサ134の出力信号がデジタルデータであれば、I/F部126は、入力されるデジタルデータをバス132に出力する。
【0049】
自動運転ECU124は、車両102aの走行を制御する。例えば、自動運転ECU124は、I/F部126からセンサデータを取得し、それを解析して車両周囲の状況を把握し、自動運転に関連する機構(エンジン、変速機、ステアリング、ブレーキ等の機構。以下、自動運転機構という)を制御する。自動運転ECU124は、車内外連携部120から取得した動的地図を自動運転に利用する。自動運転ECU124は、外部装置から、通信部128及び車載ゲートウェイ122を介して動的な運転支援情報、交通情報等をも受信し、それらを自動運転に利用する。
【0050】
センサデータは、サーバ106に送信されてもよい。例えば、車内外連携部120は、I/F部126から取得したセンサデータを含むパケットデータを生成し、通信部128から基地局108を介してサーバ106に送信する。
【0051】
[車内外連携部のハードウェア構成]
図3を参照して、車内外連携部120は、制御部140及びメモリ142を含む。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成されており、メモリ142を制御する。メモリ142は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリであり、制御部140が実行するプログラムを記憶している。メモリ142は、制御部140が実行するプログラムのワーク領域を提供する。
【0052】
[自動運転ECUのハードウェア構成]
図4を参照して、自動運転ECU124は、制御部150、メモリ152及びI/F部154を含む。制御部150は、CPUを含んで構成されており、メモリ152及びI/F部154を制御する。メモリ152は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリであり、制御部150が実行するプログラムを記憶している。メモリ152は、制御部150が実行するプログラムのワーク領域を提供する。I/F部154は、自動運転のための制御データを、制御対象である自動運転機構に出力する。
【0053】
[サーバのハードウェア構成]
図5を参照して、サーバ106は、制御部160、メモリ162、通信部164及びバス166を含む。サーバ106は、例えばコンピュータである。各部の間のデータ送信は、バス166を介して行われる。制御部160は、例えばCPUを含み、各部を制御し、サーバ106の種々の機能を実現する。メモリ162は、書換可能な不揮発性の半導体メモリ及びHDD(Hard Disk Drive)等の大容量記憶装置を含む。通信部164は、車載装置及びインフラセンサ等からアップロードされるセンサデータ等を受信する。通信部164により受信されたデータは、メモリ162に送信され、データベースとして記憶される。制御部160は、適宜メモリ162からデータを読出し、所定の解析処理(例えば、動的な運転支援情報を得るための解析)を実行し、その結果を動的地図としてメモリ162に記憶する。制御部160は、適宜メモリ162から動的な運転支援情報として、動的地図及びセンサデータ自体等を読出し、車載装置104a及び104bに送信する。
【0054】
[インフラセンサのハードウェア構成及び機能]
図6を参照して、インフラセンサ112のハードウェア構成の一例を示す。インフラセンサ112は、制御部170、データを記憶するメモリ172、無線通信を行う通信部174、I/F部176、センサ178、及び、各部の間でデータを交換するためのバス180を含む。制御部170は、各部を制御する。
【0055】
センサ178は、例えば、ビデオ映像の撮像装置(例えば、デジタルカメラ)である。センサ178からの信号(アナログ又はデジタル)はI/F部176に入力される。I/F部176は、I/F部126(図2)と同様に構成されており、入力される信号からデジタルデータを生成して出力する。出力されたデータは、バス180を介してメモリ172に送信されて記憶される。メモリ172は、例えば書換可能な不揮発性の半導体メモリ又はHDDである。
【0056】
通信部174は、移動通信機能を有し、基地局108(図1)を介してサーバ106との通信を行う。インフラセンサ112は固定設置されているので、複数の移動通信方式に対応している必要はなく、近くにある基地局108により提供されている移動通信方式(例えば5G回線)に対応していればよい。通信部174は、採用されている変調及び多重化を行うためのIC、所定周波数の電波を放射及び受信するためのアンテナ、並びにRF回路等により構成されている。なお、固定設置されているインフラセンサ112の通信機能は、基地局108を介する場合に限定されず、任意である。有線LAN、又はWiFi等の無線LANによる通信機能であってもよい。WiFi通信の場合、移動通信の基地局108とは別にWiFiサービスを提供する装置(無線ルータ等)が設けられ、インフラセンサ112は基地局108を介してサーバ106と通信する。
【0057】
制御部170は、CPUを含んで構成されており、各部を制御することによりインフラセンサ112の機能を実現する。即ち、制御部170は、I/F部176により取得されメモリ172に記憶されたセンサデータ(例えば、動画像データ)を所定の時間間隔で読出し、パケットデータを生成し、通信部174から基地局108を介してサーバ106に送信する。
【0058】
[信号機のハードウェア構成及び機能]
信号機114は、道路交通用の信号機である。車両用信号機であれば、青、黄及び赤の3色の表示灯と、それらの点灯及び点滅を制御する制御部と、表示灯の状態を表す情報である交通情報をサーバ106に送信するための通信部とを備えている。歩行者用信号機であれば、表示灯が青及び赤の2色である点で車両用信号機と異なるが、車両用信号機と同様に構成されている。信号機114の通信部は、インフラセンサ112の通信部174と同様に、移動通信機能を有し、基地局108を介してサーバ106と通信を行う。なお、固定設置されている信号機114の通信機能は任意である。有線LAN、又はWiFi等の無線LANによる通信機能であってもよい。信号機114の制御部は、CPUを含んで構成されており、表示灯の点灯及び点滅を制御することに加えて、表示灯の状態が変更される度に、現在の信号機の状態を表す交通情報を、基地局108を介してサーバ106に送信する。
【0059】
[基地局のハードウェア構成及び機能]
基地局108は、サーバ106と同様に構成されたコンピュータと、コンピュータの制御を受けて動作する無線通信機器とを含む。基地局108は、所定の無線通信方式にしたがって、無線通信機器により、車載装置104a、車載装置104b、インフラセンサ112及び信号機114に無線通信サービスを提供する。
【0060】
[機能的構成]
図7を参照して、車載装置104aにおける車内外連携部120及び自動運転ECU124の機能について説明する。車内外連携部120は、情報取得部200、動的地図生成部202、記憶部204、対象エリア特定部206、更新要否判定部208、予測処理部210及び出力部212を含む。自動運転ECU124は、走行予定区間特定部220、鮮度判定部222、走行計画生成部224及び制御情報生成部226を含む。車内外連携部120の各機能は、図3に示した制御部140が、メモリ142から読出したプログラムを、メモリ142をワークエリアとして用いて実行することにより実現される。自動運転ECU124の各機能は、図4に示した制御部150が、メモリ152から読出したプログラムを、メモリ152及びI/F部154を用いて実行することにより実現される。なお、車内外連携部120及び自動運転ECU124の機能は、専用のハードウェア(回路基板、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等)により実現されてもよい。
【0061】
[車載連携装置の機能的構成]
情報取得部200は、通信部128が外部装置(サーバ106、インフラセンサ112及び車載装置104b)から受信したデータを取得し、動的地図生成部202、対象エリア特定部206、予測処理部210及び走行予定区間特定部220に出力する。対象エリア特定部206及び走行予定区間特定部220には、受信データのうちGPSデータ等の位置情報が出力される。動的地図生成部202及び予測処理部210には、受信データのうちセンサデータ、解析結果データ(動的情報、動的地図等)等が出力される。情報取得部200は、後述するように、更新要否判定部208から入力される判定結果に応じて、通信部128を介して、動的情報を更新するためのデータの送信を外部装置に要求する。また、情報取得部200は、出力部212に、出力部212を動作させるための制御信号を出力する。
【0062】
動的地図生成部202は、情報取得部200又はセンサ134からデータが入力されると、入力されたデータを用いて、サーバ106に関して上記したように、動的地図を生成する。動的地図生成部202は、入力されたデータ(センサデータ)を解析して、動的物体を検出し、その動的情報を生成し、動的地図に組込む。動的地図生成部202は、生成した動的地図を記憶部204に出力して記憶させる。情報取得部200が、サーバ106から動的地図を受信した場合、動的地図生成部202は、情報取得部200から入力される動的地図を、そのまま記憶部204に出力して記憶させる。
【0063】
図8を参照して、グリッド領域及び動的地図に関して、具体的に説明する。図8は、ある交差点における、ある瞬間の道路上の車両、歩行者及び信号機の状態を示している。道路は道路地図に対応し、道路地図は複数の破線により格子状に区切られている。破線により区切られた各矩形領域(例えば、点320、322、324及び326を頂点とする矩形領域)は1つのグリッド領域を表す。道路地図を複数の小領域(グリッド領域)に区切ることにより、後述する動的地図の生成及び更新が容易になる。
【0064】
点320~326により特定されるグリッド領域及びその周囲のグリッド領域において、歩行者用信号機302及び304(これら以外の歩行者用信号機は図示せず)、車両用信号機306~312等の複数の信号機が設置されている。複数の車両102a~102gが走行又は停止している。図8において、インフラセンサは図示していない。歩行者用信号機302、車両用信号機306及び車両用信号機308が青の点灯状態であり、歩行者用信号機304、車両用信号機310及び312が赤の点灯状態である。複数の歩行者300が横断歩道を渡っている。各車両に付した矢印は、進行方向を示す。矢印が付加されていない車両は、停止している。車両102aは、左折の予定であり、車両102b及び102dは停止線で停止し、車両102cは右折しようとしている。車両102e、102f及び102gは直進している。
【0065】
複数の車両102a~102gの各々には、車載装置及び車載センサが搭載され、車載センサから出力されたセンサデータはサーバ106にアップロードされる。インフラセンサからもセンサデータが、サーバ106にアップロードされる。サーバ106は、インフラセンサ、車載装置及び信号機と通信して情報(センサデータ等)を収集する。サーバ106は、収集した情報を解析して、動的物体として、歩行者及び車両等を検出し、その動的情報を記憶する。例えば、所定時間にわたってセンサから取得した画像データを解析することにより、各車両の位置の変化から、走行速度(ゼロを含む)及び走行方向を検出できる。歩行者に関しても同様に、移動速度及び移動方向を検出できる。また、車両(例えば、車両102a)の右左折は、車両の方向指示器の点滅を検出することにより、実際に車両が方向を変更する前に判定できる。
【0066】
再び図7を参照して、記憶部204は、入力されるデータを記憶し、要求されるデータを出力する。記憶部204は、メモリ142により実現される。記憶部204は、予め静的地図(道路地図)を記憶している。
【0067】
対象エリア特定部206は、入力される位置情報から車両102aの現在位置を特定する。さらに、対象エリア特定部206は、記憶部204から読出した動的地図のうち、現在位置を含む所定範囲(複数のグリッド領域を含む)を、動的地図の更新の要否を判定する対象エリアとして特定する。例えば、現在位置を中心とする所定半径内の領域を対象エリアとして特定する。なお、対象エリアの形状及びその特定方法は任意である。対象エリアは、矩形領域であってもよい。また、車両が走行中であれば、走行方向の前方をより広く含み、後方をより狭く含むように対象エリアを特定してもよい。特定された対象エリアを表す情報は、更新要否判定部208に出力される。
【0068】
更新要否判定部208は、対象エリア特定部206から対象エリアの情報が入力されると、記憶部204から動的地図を読出し、対象エリアに含まれる複数のグリッド領域を特定する。さらに、更新要否判定部208は、特定されたグリッド領域毎の動的地図の鮮度を評価し、動的地図の更新の要否を判定する。例えば、動的地図の鮮度は、各グリッド領域に含まれる動的物体毎の動的情報の鮮度を評価することにより判定される。動的情報の鮮度には、例えば動的情報の生成時刻と有効期限とを用いることができる。即ち、グリッド領域に1つの動的物体が含まれる場合、現在時刻が、動的情報の生成時刻と有効期限とを加算して得られた時刻(以下、有効時刻ともいう)を経過しているか否かにより判定できる。有効時刻を経過していなければ、更新は不要(そのグリッド領域の動的地図の鮮度は高い)と判定される。有効時刻を経過していれば、更新は必要(そのグリッド領域の動的地図の鮮度は低い)と判定される。1つのグリッド領域に複数の動的物体が含まれている場合、動的物体毎に有効時刻を経過しているか否かを判定する。少なくとも1つの動的情報に関して、現在時刻が有効時刻を経過していれば、そのグリッド領域の動的地図の更新は必要と判定される。いずれの動的情報に関しても、現在時刻が有効時刻を経過していなければ、そのグリッド領域の動的地図の更新は不要と判定される。動的情報の生成時刻と有効期限とを動的情報の鮮度として用いることにより、動的地図の更新の要否を効率的に判定できる。
【0069】
なお、検出結果により動的物体が存在しないと判定された場合であっても、必ずしも存在しないとは限らない。動的地図の更新時刻が古いために、実際に動的物体が存在するにもかかわらず、存在しないと判定される場合もあり得る。したがって、各グリッド領域に関して、そのグリッド領域の動的地図に存在していた動的物体が全て消失した時刻(以下、消失時刻という)を鮮度に含めてもよい。例えば、消失時刻が存在するグリッド領域(動的物体が存在しないと判定されたグリッド領域)のうち、現在時刻が消失時刻から所定時間以上経過しているグリッド領域に関しては、動的地図の鮮度は低く、動的地図の更新が必要と判定する。現在時刻が消失時刻から所定時間以上経過していないグリッド領域に関しては、動的地図の鮮度は高く、動的地図の更新は不要と判定する。更新要否判定部208は、必要と判定されたグリッド領域を特定する情報(以下、グリッド領域特定情報という)を情報取得部200に出力する。グリッド領域特定情報は、例えば、矩形のグリッドの4つの頂点の座標である。
【0070】
なお、更新要否判定部208が記憶部204から読出した動的地図に、対象エリア特定部206から受信した情報により特定される対象エリアに対応する動的地図が存在しない場合には、そのグリッド領域は動的地図の更新が必要と判定される。通常、記憶部204(メモリ142)は、静的地図の全てに対応する動的地図を記憶しているわけではなく、車両の走行により、自動運転のために必要となる動的地図の範囲は変化する。したがって、現在記憶している動的地図を超えた範囲の動的地図が必要になる場合がある。なお、動的地図の更新の要否を判定しないときに、サーバ106からデータをダウンロードし、ある程度広い領域の動的地図を生成して記憶しておけば、対象エリアに対応する動的地図が存在しない状態が生じることを回避できる。
【0071】
情報取得部200は、更新要否判定部208からグリッド領域特定情報が入力されると、グリッド領域特定情報とそれに対応する所定の要求有効期限又は消失時刻とを付したデータ送信要求を、通信部128を介して送信する。この送信は、マルチキャスト又はブロードキャストにより行われる。データの送信を要求する相手装置(サーバ、車載装置及びインフラセンサ等)の通信アドレスが分かっている場合には、マルチキャストし、不明であれば、ブロードキャストすればよい。なお、サーバ106が動的地図を記憶しており、車載装置104aが定期的にサーバ106から動的地図を受信している場合には、データ送信要求は、サーバ106以外の装置(例えば、車載装置及びインフラセンサ等)に対して実行されればよい。要求有効期限は、上記の有効期限と同様に、データを有効利用できる上限時間である。情報取得部200は、車載装置104aが必要とするリアルタイム性に応じて、要求有効期限を設定すればよい。
【0072】
車両102a以外の車両に搭載された車載装置104b及びインフラセンサ112等の装置は、自己が取得したデータ(センサデータ、解析結果等)の有効期限を管理しているとする。即ち、時間経過に応じて有効期限は短縮され、有効利用可能なデータ(有効期限>0)が保持され、古いデータ(有効期限≦0)は破棄される。データ送信要求は、車載装置104b、インフラセンサ112及びサーバ106により受信され得る。データ送信要求を受信した装置は、データ送信要求に含まれる要求有効期限を満たし、且つデータ送信要求に含まれるグリッド領域情報により特定される領域に含まれるデータ(センサデータ、動的情報等)を自己のメモリに記憶しているか否かを判定する。要求有効期限を満たすとは、例えば、自己が管理している有効期限が要求有効期限以上(有効期限≧要求有効期限)であることを意味する。また、データ送信要求を受信した装置は、消失時刻を受信した場合、例えば、消失時刻よりも後に自己が取得したデータ(センサデータ、解析結果等)を自己のメモリに記憶しているか否かを判定する。条件を満たすデータを記憶していると判定した装置は、その旨を表す情報(以下、送信可能応答という)を、車両102aに送信し、情報取得部200は、その装置から、動的地図の更新に使用するデータを取得する。情報取得部200は、上記したように、受信したデータを動的地図生成部202に出力し、動的地図生成部202は動的地図を生成し、現在記憶している動的地図と置き換える(更新する)。
【0073】
予測処理部210は、情報取得部200の指示を受けて、予測処理により動的地図を補完する。情報取得部200は、データ送信要求を送信(例えばマルチキャスト)した後、所定時間経過しても送信可能応答を受信しなければ、予測処理部210に予測処理を実行するように指示する。このとき、情報取得部200は、グリッド領域特定情報を予測処理部210に送信する。予測処理部210は、記憶部204に記憶されている動的情報の中から、予測処理部210により指示されたグリッド領域及びその周囲のグリッド領域の動的地図を読出す。さらに、予測処理部210は、それらに含まれる動的情報を用いて、動的物体の移動経路等を予測し、予測結果を用いて動的地図を補完する。例えば、特定の動的情報の鮮度が低い(有効期限を超過、又は、消失時刻から所定時間以上経過)場合、その動的情報(過去の情報)を用いて、将来(現在から所定時間以内)の移動経路、移動速度等を予測する。これらの予測結果を、動的地図に加えることにより、動的地図を補完できる。なお、予測処理部210は、補完できないグリッド領域に関しては、現在の動的地図を維持する。
【0074】
出力部212は、情報取得部200の指示を受けて、更新された動的地図を記憶部204から読出して、自動運転ECU124の鮮度判定部222に送信する。例えば、情報取得部200は、動的地図生成部202から動的地図の更新完了が通知(破線の矢印参照)された場合、又は、予測処理部210から補完完了が通知(破線の矢印参照)された場合に、出力部212に動的地図の出力を指示する。
【0075】
[自動運転ECUの機能的構成]
走行予定区間特定部220は、上記したように、情報取得部200からGPSデータ等の位置情報が入力されると、それを用いて、現在の車両102aの位置を特定し、今後の走行予定区間を特定する。例えば、車両102aがカーナビゲーションシステムを搭載し、走行予定経路及び目的地等が登録されていれば、走行予定区間特定部220は、カーナビゲーションシステムと連携することにより、走行予定区間を特定できる。走行予定経路及び目的地のいずれも登録されていない場合には、例えば、記憶部204から道路地図(静的地図)を読出し、現在位置、走行方向及び走行速度等から、所定時間以内に走行可能な範囲を算出できる。したがって、走行可能な範囲を、走行予定区間として特定できる。走行予定区間を特定する情報は、鮮度判定部222に出力される。
【0076】
鮮度判定部222は、走行予定区間特定部220から入力された情報により走行予定区間を特定し、それに含まれるグリッド領域を特定する。鮮度判定部222は、出力部212から入力される動的情報のうち、特定されたグリッド領域の各々に対応する動的地図の鮮度を判定する。動的地図の鮮度の判定は、上記したように、各グリッド領域に含まれる動的情報に含まれる有効期限及び消失時刻を用いて判定できる。鮮度判定部222は、特定されたグリッド領域に対応する動的情報の全てが、鮮度が高いと判定した場合、出力部212から入力された動的地図を走行計画生成部224に出力する。鮮度判定部222は、少なくとも1つの動的情報の鮮度が低いと判定された場合、出力部212から入力された動的地図を走行計画生成部224に出力しない(例えば、破棄する)。
【0077】
走行計画生成部224は、鮮度判定部222から入力される動的地図と、センサ134から取得したセンサデータとを用いて、走行計画を生成する。走行計画とは、自動運転機構(エンジン、変速機、ハンドル等)の制御情報を決定するために必要となる、時間経過に伴う車両の位置及び状態に関する計画を意味する。なお、走行計画生成部224は、鮮度判定部222から動的地図が入力されなければ、センサデータのみを用いて、走行計画を生成する。生成された走行計画は、制御情報生成部226に出力される。
【0078】
制御情報生成部226は、走行計画生成部224から入力される走行計画に従って、自動運転機構(エンジン、変速機、ハンドル等)の制御情報を生成し、制御対象の自動運転機構に送信する。これにより、車両102aは自動運転により走行可能になる。
【0079】
これより、車両102aの車載装置104aは、記憶している動的地図において一部のグリッド領域の鮮度が低下していれば、そのグリッド領域に対応する動的地図を更新できる。即ち、車載装置104aは、動的地図を更新する必要があると判定すると、データ送信要求を送信する。車載装置104b等の外部装置は、データ送信要求を受信すると、記憶しているセンサデータ等が要求を満たすか判定し、要求を満たす場合、送信可能応答及び該当するセンサデータ等を車載装置104aに送信する。したがって、車載装置104aは、外部装置から受信したデータを用いて、自動運転に利用される動的地図を更新できる。動的地図の鮮度が低下すると、その動的地図を用いて自動運転制御を行うことは危険であるので、自動運転を実行できない。しかし、動的地図を上記したように更新することにより、動的地図の鮮度を高い状態に維持できるので、車両102aは信頼性の高い自動運転を実行可能になる。
【0080】
[車内外連携部の動作]
図9を参照して、車内外連携部120による処理に関して、図7に示した機能を参照しつつ、より具体的に説明する。図9に示した処理は、制御部140が、所定のプログラムをメモリ142から読出して実行することにより実現される。ここでは、サーバ106は、外部からの要求を受けて、記憶している動的な運転支援情報(動的地図、解析結果、センサデータ等)を送信しているとする。
【0081】
ステップ400において、制御部140は、動的地図の更新処理を実行するか否かを判定する。例えば、制御部140は、一定周期で更新する場合、前回更新した時刻から更新周期が経過したか否かを判定することにより、更新処理を実行するか否かを判定する。更新処理を実行すると判定された場合、制御はステップ402に移行する。そうでなければ、ステップ400が繰返される。なお、更新処理を実行するタイミング(例えば、1日における更新時刻)が予め設定されていてもよい。
【0082】
ステップ402において、制御部140は、センサ134から出力されたセンサデータ及びサーバ106から取得したデータを用いて、動的地図を更新する。例えば、制御部140は、サーバ106に要求して、サーバ106から動的地図を生成するためのデータ(動的な運転支援情報)を受信する。これは、上記した情報取得部200及び動的地図生成部202の機能に対応する。生成された動的地図は、メモリ142に記憶される。制御部140は、動的地図自体を受信した場合、そのままメモリ142に記憶させる。その後、制御はステップ404に移行する。
【0083】
ステップ404において、制御部140は、動的地図の鮮度を評価する。具体的には、制御部140は、現在の車両102aの位置を基準として、動的地図の更新の要否を判定する対象エリアを特定する(対象エリア特定部206の機能に対応)。制御部140は、対象エリアに対応する動的地図をメモリ142から読出し、上記したように、各グリッド領域に対応する動的地図の鮮度を評価する(更新要否判定部208の機能に対応)。各グリッド領域に関する評価結果は、メモリ142に一時的に記憶される。例えば、制御部140は、鮮度が低いグリッド領域に関してのみ、グリッド領域特定情報(例えば、4つの頂点の座標)をメモリ142に記憶する(鮮度が高いグリッド領域に関しては無視する)。その後、制御はステップ406に移行する。
【0084】
ステップ406において、制御部140は、鮮度が低い動的地図があるか否かを判定する。具体的には、制御部140は、メモリ142から、ステップ404により記憶されたグリッド領域特定情報を読出す。読出すことができた場合(グリッド特定情報が存在する場合)、鮮度が低い動的地図があると判定され、制御はステップ408に移行する。そうでなければ、即ち、読出すことができなかった場合(グリッド特定情報が存在しない場合)、鮮度が低い動的地図がないと判定され、制御はステップ418に移行する。
【0085】
ステップ408において、制御部140は、上記したように、外部装置にデータ送信要求を送信する(情報取得部200の機能に対応)。データ送信要求には、グリッド領域特定情報とそれに対応する要求有効期限又は消失時刻とが付加されている。その後、制御はステップ410に移行する。
【0086】
ステップ410において、制御部140は、外部装置から送信可能応答を受信したか否かを判定する(情報取得部200の機能に対応)。受信したと判定された場合、制御はステップ412に移行する。そうでなければ、制御はステップ414に移行する。
【0087】
ステップ412において、制御部140は、上記したように、送信可能応答を受信した外部装置からデータを受信し(情報取得部200の機能に対応)、それを用いて動的地図を更新する(動的地図生成部202の機能に対応)。なお、制御部140は、送信可能応答を送信した装置に、データの送信を要求してもよい。送信可能応答を送信した装置のアドレスは、送信可能応答が含まれていたパケットに含まれる送信元アドレスにより特定できる。その後、制御はステップ418に移行する。
【0088】
一方、ステップ414において、制御部140は、鮮度が低いと判定された動的地図を、予測処理により補完可能か否かを判定する。上記したように、予測処理は、過去の動的情報を用いて現在以降の動的情報を生成する処理である。したがって、予測処理に利用可能な適切な動的情報がメモリ142に記憶されていなければ、予測処理による補完はできない。補完可能と判定された場合、制御はステップ416に移行する。そうでなければ、制御はステップ420に移行する。
【0089】
ステップ416において、制御部140は、予測処理により動的地図を補完する。具体的には、制御部140は、鮮度が低いと判定されたグリッド領域に関して、各グリッド領域及びその周囲のグリッド領域に含まれる動的情報を用いて、将来(現在から所定時間T以内)の動的情報を生成する。制御部140は、例えば動的物体の軌跡及び速度変化等のデータを生成し、それらを対応する動的地図に組込む。さらに、制御部140は、例えば時間Tを、生成された動的情報の有効期限として動的地図に組込む。その後、制御はステップ418に移行する。
【0090】
ステップ418において、制御部140は、ステップ412又はステップ416において更新された動的地図を、バス132を介して自動運転ECU124に送信する。これは、上記した情報取得部200及び出力部212の機能に対応する。
【0091】
ステップ420において、制御部140は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けたと判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ400に戻り、上記の処理が繰返される。終了の指示は、例えば、車両102aに搭載されている電源がオフされることにより成される。
【0092】
これにより、車内外連携部120は、動的地図を動的に更新でき、鮮度の高い動的地図を維持できる。車内外連携部120は、サーバから鮮度の高い動的情報を取得できない場合には、それ以外の装置、例えば、インフラセンサ及び周囲の車載装置等から必要なデータを取得して動的地図を更新できる。また、サーバ106からも、それ以外の装置からも必要なデータを取得できなくても、予測処理により動的地図を補完できる。したがって、動的地図の鮮度を高い状態に維持でき、信頼性の高い自動運転を実現できる
【0093】
[自動運転ECUの動作]
図10を参照して、自動運転ECU124による処理に関して、図7に示した機能を参照しつつ、より具体的に説明する。図10に示した処理は、図4に示した制御部150が、所定のプログラムをメモリ152から読出して実行することにより実現される。
【0094】
ステップ500において、制御部150は、車内外連携部120から動的地図を受信したか否かを判定する。受信したと判定された場合、制御はステップ502に移行する。そうでなければ、制御はステップ508に移行する。
【0095】
ステップ502において、制御部150は、走行予定区間に対応する動的地図の鮮度が低いか否かを判定する。これは、上記した走行予定区間特定部220及び鮮度判定部222の機能に対応する。鮮度が低いと判定された場合、制御はステップ504に移行する。そうでなければ、制御はステップ506に移行する。
【0096】
ステップ504において、制御部150は、ステップ500により受信した動的地図を使用せずに走行計画を生成する。例えば、制御部150は、車両102a(自車両)に搭載されているセンサ134から出力されたセンサデータのみを用いて、走行計画を生成する。これは、上記した走行計画生成部224の機能に対応する。その後、制御はステップ508に移行する。
【0097】
一方、ステップ506において、制御部150は、ステップ500により受信した動的地図を使用して走行計画を生成する。例えば、制御部150は、車両102a(自車両)に搭載されているセンサ134から出力されたセンサデータと、動的地図とを用いて、走行計画を生成する。これは、上記した走行計画生成部224の機能に対応する。その後、制御はステップ508に移行する。
【0098】
ステップ508において、制御部150は、自動運転の実行が困難であるか否かを判定する。安全に自動運転を行うことができない場合(例えば、死角がある場合)、困難と判定される。困難と判定された場合、制御はステップ512に移行する。そうでなければ、制御はステップ510に移行する。
【0099】
ステップ510において、制御部150は、ステップ504又は506により生成された走行計画に従って、自動運転を実行する。既に、自動運転を実行している場合には、自動運転を継続する。具体的には、制御部150は、走行計画に従って、自動運転機構を制御するための制御情報を生成し、自動運転機構に送信する。これは、上記の制御情報生成部226の機能に対応する。
【0100】
一方、ステップ512において、制御部150は、自動運転を行わない。既に、自動運転を実行している場合には、制御部150は自動運転を中止する。例えば、制御部150は、遠隔操作による自動運転又は手動運転に切替える。制御部150は、安全な位置に車両102aを移動させて停車させてもよい。
【0101】
ステップ514において、制御部150は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けたと判定された場合、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ500に戻り、上記の処理が繰返される。終了の指示は、例えば、車両102aに搭載されている電源がオフされることにより成される。
【0102】
これにより、自動運転ECU124は、鮮度の高い動的地図を用いて自動運転を実行するための制御データを生成できるので、信頼性の高い自動運転を実現できる。動的地図の鮮度が低い場合には、それを使用しないので、無理な自動運転が行われることを回避できる。また、自動運転ECU124による無駄な処理を回避し、車載装置104a内部での無駄な通信を軽減し、記憶容量を軽減できる。
【0103】
図11を参照して、通常、サーバ106は、車載装置104a、104b及び104c、並びにインフラセンサ112(図11において図示せず)からアップロードされるセンサデータを解析して、動的地図を生成し、動的な運転支援情報として、定期的に車載装置104a、104b及び104cに送信している。図11において、太い矢印は、動的地図等のダウンロードを示し、細い矢印は、センサデータ等のアップロードを示す。矢印の幅で、通信帯域(通信速度)の違いを示している。
【0104】
例えば、車載装置104c及びサーバ106間の通信が困難になった場合、又は、車載装置104cからデータのアップロードに長時間かかる場合(図11において、破線の矢印で示す)、サーバ106が鮮度の高い動的地図を生成できない状況が発生し得る。そのような状況になると、例えば、サーバ106は鮮度の低い動的地図しか配信できなくなり、車載装置104aは、記憶している動的地図を適切に更新できなくなり、動的地図の鮮度が低下する。そのままでは自動運転に支障が生じる(例えば、自動運転を実行できなくなる)可能性がある。そのような状況において、車載装置104aは、上記したように、データ送信要求を送信(例えばマルチキャスト)することにより、サーバ106以外の装置(車載装置104b、車載装置104c及びインフラセンサ112)から必要なデータを受信して、動的地図を更新できる。したがって、車載装置104aは、自動運転に支障が生じることを回避でき、信頼性の高い自動運転を継続できる。
【0105】
従来の運転支援システムとしては、集約処理型のシステムが提案及び実現されてきた。集約処理型のシステムにおいては、単一のサーバにデータ(センサデータ等)が集約され、そのサーバ内に最新の動的地図が構築される。動的地図は、サーバから車載装置に送信される。それに対して、分散処理型のシステムが提案されており、今後は分散処理型のシステムが普及すると予想される。分散処理型のシステムにおいては、複数のサーバ及び複数の車載装置間で、データ処理を分担し、動的地図も分散構築される。本開示は、分散処理型の運転支援システムにおいて必要な技術を提供できる。
【0106】
図9及び図10に示した車内外連携部120の処理は適宜修正して実行され得る。例えば、予測処理を実行(ステップ416)した後に、動的地図を自動運転ECU124に送信する処理を実行する(ステップ418)場合を説明したが、これに限定されない。ステップ414において予測可能と判定され予測処理が実行された場合であっても、動的地図が十分に補完されない可能性がある。したがって、図12に示すように、図9に示したフローチャートを修正することが好ましい。図12に示したフローチャートは、図9に示したフローチャートにステップ430が追加されたものである。したがって、重複説明を繰返さず、異なる点に関して説明する。
【0107】
ステップ430において、制御部140は、補完された動的地図の鮮度を判定する。補完された動的地図の鮮度が低いと判定された場合、制御部140は、補完された動的地図を破棄し、制御はステップ420に移行する。そうでなければ(補完された動的地図の鮮度が高い場合)、制御はステップ418に移行する。これにより、不十分な補完後の動的地図が自動運転ECU124に送信されることを回避でき、信頼性の高い自動運転が可能になる。また、自動運転ECU124による無駄な処理を回避し、車載装置104a内部での無駄な通信を軽減し、記憶容量を軽減できる。
【0108】
(第1変形例)
上記では、車載装置が、動的地図の鮮度に応じて動的地図を更新し、自車両の自動運転ECUで利用し、自動運転に反映する場合を説明したが、これに限定されない。第1変形例においては、動的地図を更新した車載装置は、更新した動的地図を自車両で利用することに加えて、他車両の車載装置にも送信する。
【0109】
システム全体及び各構成要素の構成は、図1図6と同様である。また、車載装置(車内外連携部及び自動運転ECU)の機能は、図7と同様である。異なる点は、車載装置104aにおいて、更新された動的地図を外部に送信することである。
【0110】
具体的には、図13に示すように、サーバ及び車載装置間でデータの送受信が行われる。即ち、図7を参照して、車載装置104aにおいては、上記したように、車内外連携部120(情報取得部200)がデータ送信要求を送信する。例えば、車載装置104b及び104cがデータ送信要求を受信し、データを車載装置104aに送信する。車載装置104aは、受信したデータを用いて動的地図を更新する。更新された動的地図は、上記したように、自車両(車載装置104a)の自動運転ECU124に送信され、自動運転ECU124により自車両の自動運転に利用される。それに加えて、車載装置104a(車内外連携部120)は、更新された動的地図を記憶部204(メモリ142)から読出し、通信部128を介して送信する。送信は、マルチキャスト又はブロードキャストで行うことができる。車載装置104a(車内外連携部120)は、外部装置から要求を受けて、更新された動的情報をその外部装置に送信してもよい。
【0111】
車載装置104dは、車内外連携部を有していないが、自動運転ECUを有しており、自動運転機能を有する。車載装置104dは、車載装置104aから、更新された動的地図を受信し、その動的地図を自車両の自動運転に利用する。したがって、車載装置104dを搭載した車両は、信頼性の高い自動運転を実行できる。
【0112】
一方、自動運転機能を有しない車載装置104eも、車載装置104aから、更新された動的地図を受信する。車載装置104eは、受信した動的地図を自動運転には使用できないが、その動的地図を用いて、運転支援となる情報を提示できる。例えば、動的地図に動的物体の動的情報が含まれていれば、自車両の近くに動的物体(歩行者等)が存在すること、及びその動的物体の予測経路等を、搭載されているディスプレイに提示できる。また、音響装置により動的物体の存在を警告してもよい。したがって、信頼性の高い運転支援を実現できる。
【0113】
上記では、車載装置104aは、更新した動的地図を自車両(車両102a)で利用し、且つ、他車両の車載装置にも送信する場合を説明したが、自車両で利用しなくてもよい。車載装置104aが、更新した動的地図を他車両の車載装置(車載装置104d及び104e等)に送信することにより、上記したように、各車両は、動的地図を自動運転又は運転支援に利用できる。
【0114】
(第2変形例)
上記では、車載装置が、動的地図の鮮度に応じて動的地図を更新する場合を説明したが、これに限定されない。第2変形例においては、車載装置以外の装置(サーバ、路側器等)が、動的地図の鮮度に応じて動的地図を更新する。
【0115】
システム全体及び各構成要素の構成は、図1図6と同様である。また、車載装置(車内外連携部及び自動運転ECU)の機能は、図7と同様である。異なる点は、車載装置以外の装置が、図7に示したように、動的地図の鮮度に応じて動的地図を更新する機能を有することである。
【0116】
具体的には、図14に示すように、車載装置とその外部装置との間でデータの送受信が行われる。サーバ106は、外部からセンサデータ等を受信して、それを解析して、動的地図を生成して記憶している。サーバ106は、記憶している動的地図を適宜、車載装置104a及び104bに送信する。路側器116も、サーバ106と同様に、動的地図を生成し、車載装置104a及び104bに送信する。即ち、サーバ106及び路側器116の各々は、情報配信装置として機能する。ここでは、車載装置104aは、自動運転ECUを有しており、自動運転可能であるが、車内外連携部を有しておらず、動的地図の鮮度に応じて動的地図を更新する機能は有しないとする。車載装置104aは、サーバ106及び路側器116から受信した動的地図を、自車両の自動運転に利用する。一方、車載装置104bは、自動運転ECUを有しておらず、自動運転不可能であるとする。車載装置104bは、受信した動的地図を用いて、運転支援のための情報を提示する。
【0117】
以下、サーバ106の機能に関して説明するが、路側器116も同様の機能を有する。サーバ106は、図7を参照して上記したように、自己が記憶している動的地図の鮮度を評価し、鮮度が低下したグリッド領域があると判定した場合、データ送信要求を送信する。データ送信要求には、上記したように、グリッド領域特定情報とそれに対応する要求有効期限又は消失時刻とを含み、送信は、マルチキャスト又はブロードキャストで行うことができる。なお、サーバ106は設置された場所に固定されているので、自己の設置場所を基準とした所定範囲内の動的地図を管理する。
【0118】
インフラセンサ112及び車載装置(ここでは車載装置104a及び104b以外の車載装置とする)がデータ送信要求を受信し、データ送信要求を送信した装置(サーバ106)に、センサデータ等を送信する。サーバ106は、受信したデータを用いて動的地図を更新し、鮮度の高い動的地図を記憶する。さらに、サーバ106は、更新された動的地図(鮮度の高い動的地図)を送信する。送信は、マルチキャスト又はブロードキャストで行うことができる。サーバ106は、車載装置から要求を受けて、更新された動的情報をその車載装置に送信してもよい。
【0119】
車載装置104aは、自動運転ECUを有しているので、送信された動的地図(鮮度の高い動的地図)をサーバ106から受信すると、受信した動的地図を自動運転ECUに入力し、自動運転に利用する。したがって、車載装置104aを搭載した車両は、より信頼性の高い自動運転を実行できる。
【0120】
一方、自動運転機能を有しない車載装置104bも、更新された動的地図(鮮度の高い動的地図)をサーバ106から受信する。車載装置104bは、受信した動的地図を自動運転には使用できないが、その動的地図を用いて、運転支援となる情報を提示できる。即ち、動的地図に動的物体の動的情報が含まれていれば、例えば、自車両の近くに動的物体(歩行者等)が存在すること、及びその動的物体の予測経路等を、搭載されているディスプレイに提示し、音響装置により動的物体の存在を警告できる。
【0121】
上記では、道路地図を格子状に区切った矩形のグリッド領域を想定したが、これに限定されない。道路地図を複数の領域に区切った小領域であればよく、区切られた小領域の大きさ及び形状は任意であり、同じでなくてもよい。また、車両の走行が禁止されている領域、又は、車両が走行できない領域に関しては、そもそも動的地図は不要である。したがって、車両が走行可能な領域のみを複数の小領域に区切り、各小領域に対して動的地図を生成及び更新してもよい。
【0122】
上記では、動的地図に含まれる有効期限等の時間情報を用いて、鮮度を評価する。したがって、車内外連携部120から自動運転ECU124に送信される、更新された動的地図又は補完された動的地図も有効期限等の時間情報を含む。しかし、これに限定されない。例えば、ステップ418において、更新された動的地図又は補完された動的地図を自動運転ECU124に送信する前に鮮度を評価し、その評価結果(例えば、鮮度に対応するラベル)を付加してもよい。これにより、自動運転ECU124は、ステップ502における鮮度の判定処理をより簡単に行うことができる。
【0123】
上記では、グリッド領域毎の動的地図の鮮度に応じて動的地図の更新の有無を判定する場合を説明したが、判定の指標は鮮度に限定されない。動的地図の確からしさ(確度)を表す指標であればよい。確度の低い動的地図を自動運転に利用することは好ましくない。例えば、グリッド領域毎の動的地図の精度(粗さ)に応じて動的地図の更新の有無を判定してもよい。即ち、確度は、鮮度及び精度を含む。グリッド領域毎の動的地図の精度とは、そのグリッド領域に含まれる動的情報の精度を意味する。上記したように、動的情報は、センサデータを解析して検出された動的物体(人及び車両等)の位置、速度及び移動方向(走行方向)に関する情報(時間的変化、例えば軌跡等を含む)を含む。動的情報は、過去のデータの解析結果だけに限らず、予測情報を含み得る。
【0124】
動的情報の精度は、センサの検出性能、その周囲環境等に依存する。即ち、精度は、センサの検出性能、環境条件の関数である。検出性能には、センサ自体の性能が含まれ、予測情報を生成する場合には、センサデータを処理して動的物体の変化(移動等)を予測するエンジン(ソフトウェア)の処理能力等が含まれる。環境条件には、気象条件(天候(晴天、雨天、曇り、霧等)、気温、湿度等)、日照条件等、センサの検出性能に影響する要因が含まれる。例えば、センサの商品番号と、センサデータを取得するときの環境条件とを考慮して、精度を予め決定し、テーブル等の形式で記憶しておくことができる。予測する場合には、それらに加えて、使用するエンジンの種類をも考慮して精度を予め決定すればよい。センサデータをアップロードするときに、センサの商品番号を特定できる情報及びそのときの環境条件をもアップロードする。そのようにすれば、サーバ等は、精度を記憶したテーブルを参照することにより、受信したセンサデータに、又は、それを解析して得られた解析結果(動的情報)に、精度を付加できる。また、サーバ等は、自己が予測処理に使用するエンジンをも考慮して、解析結果(動的情報)に精度を付加できる。サーバ等は、センサデータ及び動的情報を送信するときには、精度を付加して送信する。
【0125】
車載装置は、サーバ等から受信したセンサデータ及び動的情報等を用いて、グリッド領域毎の動的地図を生成したときには、生成された動的地図に動的情報の精度を付加して記憶する。これにより、車載装置は、各グリッド領域に含まれている動的情報の精度と所定のしきい値とを比較することにより、そのグリッド領域の動的地図の更新の有無を判定できる。例えば、車載装置は、グリッド領域の動的地図に含まれている全ての動的情報の精度が、しきい値より大きい(確度(精度)が高い)場合には、その動的地図の更新は不要であると判定する。一方、グリッド領域の動的地図に含まれている動的情報のうち少なくとも1つの動的情報の精度が、しきい値以下である(確度(精度)が低い)場合には、そのグリッド領域に対応する動的地図の更新は必要であると判定する。これにより、鮮度を判定の指標に使用する場合と同様に、車載装置は必要に応じて、データ送信要求を送信できる。この場合、データ送信要求には、要求有効期限の代わりに、精度に関する要求の程度(要求有効精度)が付加されればよい。これにより、データ送信要求を受信した装置は、自己が記憶しているセンサデータ等が要求(要求有効精度)を満たすか否かを判定し、要求を満たす場合には、送信可能応答及びセンサデータ等を送信できる。したがって、データ送信要求を送信した車載装置は、外部装置から受信したデータを用いて動的地図を更新でき、更新された精度の高い動的地図を用いて、信頼性の高い自動運転を実現できる。
【0126】
なお、1つの確度(例えば、精度及び鮮度の一方のみ)を指標とする場合に限定されない。複数の確度(例えば、精度及び鮮度)を指標として用いて、グリッド領域毎の動的地図の確度に応じて動的地図の更新の有無を判定してもよい。複数の確度を用いる場合には、例えば、少なくとも1つの確度が低ければ、動的地図の更新が必要と判定し、全ての確度が高ければ更新は不要と判定すればよい。
【0127】
上記では、グリッド領域に対応する動的地図に含まれる動的情報の鮮度を、動的地図の更新の要否判定の指標として使用する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、グリッド領域に対応する動的地図を最後に更新した時刻を鮮度としてもよい。即ち、鮮度は、グリッド領域に対応する動的地図の最終更新時刻であってもよい。その場合、1つのグリッド領域に対して1つの指標(最終更新時刻)を対応させて記憶する。そのようにすれば、最終更新時刻から現在までの経過時間を所定のしきい値(動的地図の有効期限)と比較することにより、動的地図の更新の要否を判定できる。例えば、経過時間がしきい値以上であれば、動的地図の更新が必要と判定し、経過時間がしきい値未満であれば、更新は不要であると判定する。したがって、動的地図の更新の要否をより簡単に判定できる。
【0128】
上記したように、図7に示した各機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの混合により実現され得る。ハードウェアを用いて実現するには、車内外連携部120及び自動運転ECU124が実行する処理(例えば、図9及び図11に示した処理)の一部又は全てを実行するASIC等を使用すればよい。
【0129】
また、車内外連携部120及び自動運転ECU124が実行する処理(例えば、図9及び図10示した処理)をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体を提供できる。記憶媒体は、例えば光ディスク(DVD(Digital Versatile Disc)等)、着脱可能な半導体メモリ(USB(Universal Serial Bus)メモリ等)である。コンピュータプログラムは通信回線により伝送され得るが、記録媒体は非一時的な記録媒体を意味する。記録媒体に記憶されたプログラムをコンピュータに読込ませることにより、コンピュータは、上記したように、動的地図の確度に応じて動的地図を更新し、確度の高い動的地図を生成して、それを自動運転及び運転支援に利用できる。
【0130】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0131】
100 運転支援システム
102a、102b、102c、102d、102e、102f、102g 車両
104a、104b、104c、104d、104e 車載装置
106 サーバ
108 基地局
110 ネットワーク
112 インフラセンサ
114 信号機
116 路側器
120 車内外連携部
122 車載ゲートウェイ
124 自動運転ECU
126、154、176 I/F部
128、164、174 通信部
130、132、166、180 バス
134、178 センサ
140、150、160、170 制御部
142、152、162、172 メモリ
200 情報取得部
202 動的地図生成部
204 記憶部
206 対象エリア特定部
208 更新要否判定部
210 予測処理部
212 出力部
220 走行予定区間特定部
222 鮮度判定部
224 走行計画生成部
226 制御情報生成部
300 歩行者
302、304 歩行者用信号機
306、308、310、312 車両用信号機
320、322、324、326 点
400、402、404、406、408、410、412、414、416、418、420、430、500、502、504、506、508、510、512、514 ステップ
図1
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