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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20250611BHJP
【FI】
E03D13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023056999
(22)【出願日】2023-03-31
(65)【公開番号】P2024144853
(43)【公開日】2024-10-15
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊博
(72)【発明者】
【氏名】南部 康夫
(72)【発明者】
【氏名】古田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 圭
(72)【発明者】
【氏名】井手 亮我
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1637024(JP,S)
【文献】特開2015-190308(JP,A)
【文献】特表2003-517159(JP,A)
【文献】特開昭51-085249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 13/00
日本意匠分類 D5-41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル面で尿を受けるボウル部と、
前記ボウル部の上部後側に形成され、機能部を収納する収納部と、
前記ボウル面の上端部から上方へ向けて延長するように形成されるとともに、前記収納部の前壁部の少なくとも一部を形成する延長部と
を備え、
前記延長部は、下端部から上方に向けて後方に傾斜するように形成される正面部と、前記正面部の上端部から連続し後方に延びるように形成される上面部とを備え
前記正面部の下端部は、前記ボウル面の上端部であり、
前記正面部は、下端部から上端部まで上方に向けて後方に傾斜する
ことを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記延長部の左右側の端部と前記ボウル面の左右側の端部とは、側面視において前記ボウル面の端部から前記延長部の端部に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
前記ボウル面は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部から上方に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成され、
前記延長部は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部の曲率半径が前記ボウル面の上端部の曲率半径と連続するように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項4】
前記ボウル面の上端部と前記延長部の下端部との境界線は、正面視において直線状である
ことを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項5】
前記ボウル面の左右側の端部、前記延長部の左右側の端部、前記延長部の上端部、および、前記延長部の下端部の各端部のうち、少なくとも2つ以上の端部は、同一のR形状となるように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器において、使用者の尿を受けるボウル部の上部後側に設けられた収納部を有し、収納部に機能部を収納するように構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-190308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した機能部は、小便器の吐水部へ給水する機能などを有するが、その機能に応じて大きさが異なる。そのため、小便器にあっては、意匠性を崩さずに、収納部における収納空間を確保することが求められていた。
【0005】
実施形態の一態様は、意匠性を崩さずに、収納部において機能部の収納空間を確保することができる小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る小便器は、ボウル面で尿を受けるボウル部と、前記ボウル部の上部後側に形成され、機能部を収納する収納部と、前記ボウル面の上端部から上方へ向けて延長するように形成されるとともに、前記収納部の前壁部の少なくとも一部を形成する延長部とを備え、前記延長部は、下端部から上方に向けて後方に傾斜するように形成されることを特徴とする。
【0007】
このように、延長部は、ボウル面の上端部から上方へ向けて延長するように形成され、かつ、収納部の前壁部の一部を形成するように構成されることから、収納部の収納空間を延長部の分だけ広くすることができる。これにより、収納部にあっては、機能部の収納空間を十分に確保することができる、言い換えると、機能部の大きさに応じた収納空間を確保することが可能になる。
【0008】
また、延長部は、下端部から上方に向けて後方に傾斜するように形成されるため、ボウル面を含む小便器の意匠性を崩してしまうことを抑制することができる。また、延長部が後方に傾斜することで、例えば使用者は排泄された尿の方向を確認しながら排尿しやくなる、すなわち排尿時の視認性を向上させることができる。
【0009】
また、前記延長部の左右側の端部と前記ボウル面の左右側の端部とは、側面視において前記ボウル面の端部から前記延長部の端部に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成されることを特徴とする。
【0010】
これにより、延長部によって収納部の収納空間を確保しつつ、小便器の側面ラインの意匠性を向上させることができる。
【0011】
また、前記ボウル面は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部から上方に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成され、前記延長部は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部の曲率半径が前記ボウル面の上端部の曲率半径と連続するように形成されることを特徴とする。
【0012】
このように、延長部の下端部の曲率半径がボウル面の上端部の曲率半径と連続するように形成されることで、使用者からの目線において、ボウル面の上端部から延長部の下端部までが滑らかに連続するように見え、意匠性を向上させることができる。また、ボウル面の上端部から延長部の下端部までが滑らかに連続することで、ボウル面の上端部と延長部の下端部との境界付近の清掃性を向上させることができる。
【0013】
また、前記ボウル面の上端部と前記延長部の下端部との境界線は、正面視において直線状であることを特徴とする。
【0014】
このように、ボウル面の上端部と延長部の下端部との境界線が正面視において直線状であることで、境界線付近の正面視における意匠性を向上させることができる。また、境界線が正面視において直線状であるため、境界線付近の清掃性を向上させることができる。
【0015】
前記ボウル面の左右側の端部、前記延長部の左右側の端部、前記延長部の上端部、および、前記延長部の下端部の各端部のうち、少なくとも2つ以上の端部は、同一のR形状となるように形成されることを特徴とする。
【0016】
このように、小便器の外観を形成するような端部が、同一のR形状となるように形成されることで、小便器の意匠性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
実施形態の一態様によれば、意匠性を崩さずに、収納部において機能部の収納空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る小便器の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る小便器の正面図である。
図3図3は、実施形態に係る小便器の側面図である。
図4図4は、実施形態に係る小便器の上面図である。
図5図5は、図4のV-V線断面図である。
図6図6は、図2のVI-VI線端面図である。
図7図7は、図2のVII-VII線端面図である。
図8図8は、図5の一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する小便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施形態)
実施形態に係る小便器1について図1図5を参照して説明する。図1は、実施形態に係る小便器1の斜視図である。図2は、実施形態に係る小便器1の正面図、図3は、実施形態に係る小便器1の側面図、図4は、実施形態に係る小便器1の上面図である。また、図5は、図4のV-V線断面図である。なお、図1図5および図6以降は、いずれも模式図である。
【0021】
また、図1等では、説明の便宜のために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。また、以下の説明では、X軸正方向を「右方」、X軸負方向を「左方」、Y軸正方向を「前方」、Y軸負方向を「後方」と記載する場合がある。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向(鉛直方向)という場合がある。
【0022】
図1図5に示すように、実施形態に係る小便器1は、トイレ室に設置される。小便器1は、壁面に設置される壁掛け式であっても、床面に設置される床置き式であってもよい。小便器1は、小便器本体2を有し、小便器本体2は、例えば陶器製である。
【0023】
小便器本体2は、ボウル部3と、排水部5と、収納部6と、機能部10と、吐水部11とを備える。
【0024】
ボウル部3は、小便器本体2における前面である使用者と対向する面(正面)に形成される。ボウル部3には、使用者の尿を受けるボウル面4が形成される。ボウル面4には、吐水部11から洗浄水が吐水され、ボウル面4が洗浄される。なお、ボウル部3のボウル面4の詳細な形状については、後述する。
【0025】
排水部5は、図5に示すように、排水口5aと、排水トラップ部5bとを備える。排水口5aは、ボウル部3のボウル面4の下部に形成され、ボウル面4を洗浄した洗浄水が排水される。排水トラップ部5bは、排水口5aの下流側に接続される。排水トラップ部5bは、洗浄水を貯留して封水を形成し、排水管からの臭気等がボウル部3側へ逆流することを防止する。排水トラップ部5bの下流側には、排水ソケット100が接続され、洗浄水は、排水トラップ部5bから排水ソケット100を介して外部の排水配管(図示せず)へ排水される。
【0026】
収納部6は、ボウル部3の上部後側に形成され、機能部10(図2、4、5参照)を収納する。なお、図5等では、図示の簡略化のため、機能部10をブロックで示している。
【0027】
収納部6は、底部6aと、前壁部6bと、左右の側壁部6cとを有する。そして、底部6a、前壁部6bおよび左右の側壁部6cによって囲まれた空間が、機能部10を収納する収納空間Sとなる。収納部6の上部には、上蓋6dが収納部6に対して上方から着脱自在に取り付けられる。従って、収納空間Sの上部は上蓋6dによって閉塞される。
【0028】
具体的には、底部6aは、機能部10の下方に位置している。底部6aは、機能部10を下方から支持する。なお、底部6aは、機能部10を直接支持する場合もあるが、支持部材を介して機能部10を間接的に支持する場合もある。また、機能部10の一部または全部が、底部6a以外の部位に固定されて支持される場合もある。
【0029】
前壁部6bは、底部6aの前端部(前端縁)から上方へ立ち上がるように形成された壁である。左右の側壁部6cは、底部6aの左右方向の側端部(側端縁)から上方へ立ち上がるように形成された壁である。底部6a、前壁部6bおよび左右の側壁部6cは、一体的に形成され、これら底部6a、前壁部6bおよび左右の側壁部6cに囲まれることで、後方が開放された収納空間Sが形成される。
【0030】
このように、収納部6は、ボウル部3のさらに上方に配置されるのではなく、ボウル部3内に機能部10が隠れるようにボウル部3の上部後側に配置される。このため、小便器1は、コンパクトな外観となる。
【0031】
機能部10は、吐水部11へ洗浄水を供給する機能などを有する。機能部10としては、例えばボウル面4を自動洗浄する自動洗浄ユニットを用いることができる。
【0032】
一例として、機能部10は、給水路、止水栓、バルブユニット(いずれも図示せず)などを備える。給水路は、水道などの給水源(図示せず)から洗浄水が供給される流路である。止水栓は、給水路に接続され、バルブユニット等に対して洗浄水を給水および止水する。バルブユニットは、給水路において止水栓の下流側に接続され、電気的に開閉可能な電磁弁、流入した洗浄水を所定の流量範囲に絞る定流量弁等を有する。バルブユニットは、人体検知センサ(図示せず)による使用者の有無を示す検知信号に基づいて、電磁弁を開弁して給水路の洗浄水を流す。機能部10(バルブユニット)の下流側には、接続部12(図5参照)を介して吐水部11が接続され、給水路を流れる洗浄水は接続部12を介して吐水部11に供給されてボウル面4に吐水される。
【0033】
機能部10は、上記したバルブユニットなどの機器を備えるが、小便器1の仕様等によっては、その他の機器が含まれることがある。例えば、給水路における洗浄水の流れを用いて発電する発電機などが機能部10に含まれることがある。また、小便器1が設置される国や場所によっては、かかる国等で定められた規定を満たすため、汚水が給水路を逆流することを防止するバキュームブレーカが機能部10に含まれることがある。
【0034】
このように、機能部10は、その有する機能に応じて大きさが異なる。そのため、機能部10を収納する収納部6にあっては、収納空間Sを十分に確保することが好ましい。ただ、小便器1の意匠性を考慮する必要があるため、小便器1にあっては、意匠性を崩さずに、収納部6における収納空間Sを確保することが求められていた。
【0035】
そこで、本実施形態に係る小便器1にあっては、意匠性を崩さずに、収納部6における収納空間Sを確保することができるように構成した。
【0036】
具体的には、小便器1は、延長部8を備える。延長部8は、ボウル面4の上端部4bから上方へ向けて延長するように形成される。延長部8の説明を続ける前に、ボウル面4について詳説する。
【0037】
ボウル面4は、上端部4bから下方へ向かうほど内側(ボウル部3の左右方向の中心側)、かつ、奥側(後側)へ向けて凹んだ面となるように形成される。また、ボウル面4は、上下方向の中央部付近から下部にかけて後側へ向けて緩やかに湾曲する面となるように形成される。また、ボウル面4の下部には、上記した排水部5が設けられる。ボウル面4の上部には、上記した吐水部11が設けられる。
【0038】
ここで、ボウル面4について図6および図7も参照しつつ説明する。図6は、図2のVI-VI線端面図であり、図7は、図2のVII-VII線端面図である。なお、図6および図7では、理解の便宜のため、ボウル面4の後方に存在する空間(例えば収納空間S等)にも斜線を付した。なお、図7は、ボウル面4と延長部8との境界部分の端面図でもある。
【0039】
図2、6、7などに示すように、ボウル面4は、使用者と対向する正面部4eを有する。正面部4eは、後方に向けて凹む凹曲面状(円弧形状)に形成される。また、正面部4eは、左右方向において連続して凹曲面状に形成される。かかる正面部4eは、上部側と下部側とにおいて凹曲面状が異なるように形成される。
【0040】
具体的には、正面部4eの下部側は、図6等に示すように、複数の曲率半径Rを有する円弧の組み合わせ、あるいは、複数の曲率半径Rを有する円弧と直線の組み合わせによる複合的な形状部分であり、複合R領域4fを形成している。
【0041】
複合R領域4fにおけるボウル面4(正面部4e)は、上部からボウル面4の下端部4a(図5参照)に向かうにつれて、奥側(後側)へ向けてより凹むように、円弧の曲率半径Rが連続的に(徐々に)変化するように形成される。また、複合R領域4fにおけるボウル面4の左右側の端部4cは、前方に向けて突出するように形成され、これにより左右側に側壁部が形成される。
【0042】
正面部4eの上部側は、図7等に示すように、1つの曲率半径Rを有する円弧による形状部分であり、シングルR領域4gを形成している。言い換えると、シングルR領域4gにおけるボウル面4(正面部4e)は、曲面が略単一の曲率半径Rを有する単一の円弧形状により形成される。なお、上記した「1つの曲率半径Rを有する円弧」は、厳密に1つの曲率半径Rであることを要さず、曲率半径Rが左右方向において概ね変化していない円弧であればよい。
【0043】
また、シングルR領域4gにおけるボウル面4(正面部4e)においては、ボウル面4の左右側の端部4cから前方へ向けて突出するような側壁部が形成されない。言い換えると、ボウル面4の上部は、正面部4eのみから形成され、側壁部が形成されない。
【0044】
シングルR領域4gにおけるボウル面4(正面部4e)は、ボウル面4の上端部4bから下方に向かうにつれて、奥側(後側)へ向けてより凹むように、円弧の曲率半径Rが徐々に減少する(曲率が徐々に増大する)ように形成される。
【0045】
また、ボウル面4において、シングルR領域4gと複合R領域4fとの境界部分において、円弧の曲率半径Rが徐々に変化するように形成される、言い換えると、曲率半径Rが連続的に変化するように形成される。
【0046】
このように、本実施形態に係るボウル面4は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部4aから上方に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成される。
【0047】
また、本実施形態に係るボウル面4は、上部側に側壁部が形成されないことから、小便器1における意匠性を向上させることができる。
【0048】
延長部8は、図1図5に示すように、上記のように形成されたボウル面4の上端部4bから上方に向けて延長するように形成される。ここで、図8も参照して延長部8について説明する。図8は、図5の一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す拡大断面図である。
【0049】
図5および図8などに示すように、延長部8は、収納部6の前面側に位置するように形成される。言い換えると、延長部8は、収納部6の前壁部6bの一部を形成する。なお、本実施形態では、延長部8は、収納部6の前壁部6bの一部を形成するが、これに限定されるものではなく、前壁部6bの全部を形成してもよい。すなわち、延長部8は、収納部6の前壁部6bの少なくとも一部を形成していればよい。また、延長部8は、ボウル面4を上方から覆うような位置に形成されることから、延長部8は庇部であるともいえる。
【0050】
延長部8は、図8に矢印Aで示すように、下端部8aから上方に向けて後方に傾斜するように形成される。言い換えると、延長部8は、側面視において上端部8bが後方側、下端部8aが前方側に位置するとともに、下端部8aから上端部8bに向けて上り傾斜となるように形成される。
【0051】
このように、本実施形態に係る延長部8は、ボウル面4の上端部4bから上方へ向けて延長するように形成され、かつ、収納部6の前壁部6bの一部を形成するように構成されることから、収納部6の収納空間Sを延長部8の分だけ広くすることができる。これにより、本実施形態に係る収納部6にあっては、機能部10の収納空間Sを十分に確保することができる、言い換えると、機能部10の大きさに応じた収納空間Sを確保することが可能になる。
【0052】
また、延長部8は、下端部8aから上方に向けて後方に傾斜するように形成されるため、ボウル面4を含む小便器1の意匠性を崩してしまうことを抑制することができる。また、延長部8が後方に傾斜することで、例えば使用者は排泄された尿の方向を確認しながら排尿しやくなる、すなわち排尿時の視認性を向上させることができる。
【0053】
図3に示すように、延長部8は、側面視においてボウル面4の左右側の端部4cと滑らかに連続するように形成される。具体的には、延長部8の左右側の端部8cとボウル面4の左右側の端部4cとは、側面視においてボウル面4の端部4cから延長部8の端部8cに向けて連続的に曲率半径Rが変化するように形成される。
【0054】
例えば、ボウル面4の左右側の端部4cおよび延長部8の左右側の端部8cは、側面視において後方に向けて凹む凹曲面状に形成される。ボウル面4の左右側の端部4cは、側面視において上方へ向かうにつれて円弧の曲率半径Rが徐々に大きくなるように形成される。延長部8の左右側の端部8cは、ボウル面4の端部4cから上方へ向けて延長するように形成されるとともに、側面視においてボウル面4の端部4cから連続的に曲率半径Rが変化する(例えば徐々に大きくなる)ように形成される(図3の矢印B参照)。
【0055】
これにより、本実施形態にあっては、延長部8によって収納部6の収納空間Sを確保しつつ、小便器1の側面ラインの意匠性を向上させることができる。
【0056】
延長部8は、ボウル面4と延長部8との境界部分の端面図である図7に示すように、延長部8は、使用者と対向する正面部8eを有する。正面部8eは、後方に向けて凹む凹曲面状(円弧形状)に形成される。また、正面部8eは、左右方向において連続して凹曲面状に形成される。
【0057】
そして、延長部8は、下端部8a(図5参照)の曲率半径Rがボウル面4の上端部4b(図5参照)の曲率半径Rと連続するように形成される。また、延長部8において、下端部8aと上端部8b(図5参照)との曲率半径Rは、略同一の曲率半径Rであるが、これに限られず、同心円として曲率半径Rを変化させるなどしてもよい。
【0058】
このように、延長部8の下端部8aの曲率半径Rがボウル面4の上端部4bの曲率半径Rと連続するように形成されることで、使用者からの目線において、ボウル面4の上端部4bから延長部8の下端部8aまでが滑らかに連続するように見え、意匠性を向上させることができる。また、ボウル面4の上端部4bから延長部8の下端部8aまでが滑らかに連続することで、ボウル面4の上端部4bと延長部8の下端部8aとの境界付近の清掃性を向上させることができる。
【0059】
図2等に示すように、ボウル面4の上端部4bと延長部8の下端部8aとの境界線9は、正面視において直線状である。言い換えると、ボウル面4の上端部4bと延長部8の下端部8aとの境界線9は、左右方向に延在する直線状である。また、かかる直線状の境界線9は、ボウル面4の左右側の端部4c(または延長部8の左右側の端部8c)まで連続するように延在する。
【0060】
このように、ボウル面4の上端部4bと延長部8の下端部8aとの境界線9が正面視において直線状であることで、境界線9付近の正面視における意匠性を向上させることができる。また、境界線9が正面視において直線状であるため、境界線9付近の清掃性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る小便器1にあっては、外観を形成するような端部が、同一のR形状となるように形成される。
【0062】
例えば、ボウル面4の左右側の端部4c、延長部8の左右側の端部8c、延長部8の上端部8b、および、延長部8の下端部8aは、同一のR形状となるように形成される。言い換えると、ボウル面4の左右側の端部4cなどの各端部の折り返し部分における形状が、同一のR形状となるように形成される。なお、同一のR形状とは、例えば同じ曲率半径Rの円弧を含む形状で形成されることであるが、これに限定されるものではない。
【0063】
また、収納部6においても、上蓋6dの左右側の端部6eが、上記したボウル面4の左右側の端部4cなどの各端部と同一のR形状となるように形成される(図2、4参照)。詳しくは、上蓋6dの上面視における左右側の端部6eが、ボウル面4の左右側の端部4cなどの各端部と同一のR形状となるように形成される。
【0064】
このように、小便器1の外観を形成するような端部が、同一のR形状となるように形成されることで、小便器1の意匠性をより一層向上させることができる。
【0065】
なお、上記では、延長部8の左右側の端部8c、延長部8の上端部8b、および、延長部8の下端部8a、上蓋6dの左右側の端部6eの全ての端部が、同一のR形状となるように形成されるが、これに限定されるものではない。すなわち、上記した各端部のうち、少なくとも2つ以上の端部が、同一のR形状となるように形成されていればよい。なお、より詳しくは、端部のR形状について曲率半径を約6mm程度に設定すると、陶器の製造性や外観意匠面でのシャープさが顕著に表れる。
【0066】
上述してきたように、実施形態に係る小便器1は、ボウル部3と、収納部6と、延長部8とを備える。ボウル部3は、ボウル面4で尿を受ける。収納部6は、ボウル部3の上部後側に形成され、機能部10を収納する。延長部8は、ボウル面4の上端部4bから上方へ向けて延長するように形成されるとともに、収納部6の前壁部6bの少なくとも一部を形成する。また、延長部8は、下端部8aから上方に向けて後方に傾斜するように形成される。これにより、小便器1の意匠性を崩さずに、収納部において機能部の収納空間を確保することができる。
【0067】
<付記>
(1)
ボウル面で尿を受けるボウル部と、
前記ボウル部の上部後側に形成され、機能部を収納する収納部と、
前記ボウル面の上端部から上方へ向けて延長するように形成されるとともに、前記収納部の前壁部の少なくとも一部を形成する延長部と
を備え、
前記延長部は、下端部から上方に向けて後方に傾斜するように形成される
ことを特徴とする小便器。
(2)
前記延長部の左右側の端部と前記ボウル面の左右側の端部とは、側面視において前記ボウル面の端部から前記延長部の端部に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成される
ことを特徴とする(1)に記載の小便器。
(3)
前記ボウル面は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部から上方に向けて連続的に曲率半径が変化するように形成され、
前記延長部は、後方に向けて凹む凹曲面状に形成されるとともに、下端部の曲率半径が前記ボウル面の上端部の曲率半径と連続するように形成される
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の小便器。
(4)
前記ボウル面の上端部と前記延長部の下端部との境界線は、正面視において直線状である、
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の小便器。
(5)
前記ボウル面の左右側の端部、前記延長部の左右側の端部、前記延長部の上端部、および、前記延長部の下端部の各端部のうち、少なくとも2つ以上の端部は、同一のR形状となるように形成される
ことを特徴とする(1)~(4)のいずれか一つに記載の小便器。
【0068】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 小便器
3 ボウル部
4 ボウル面
6 収納部
8 延長部
10 機能部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8