(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
H04N 23/71 20230101AFI20250611BHJP
H04N 23/74 20230101ALI20250611BHJP
H04N 23/73 20230101ALI20250611BHJP
【FI】
H04N23/71
H04N23/74
H04N23/73
(21)【出願番号】P 2023550942
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036237
(87)【国際公開番号】W WO2023053383
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】塚田 正人
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-094133(JP,A)
【文献】特開2008-187318(JP,A)
【文献】特開2016-009998(JP,A)
【文献】特開2010-183459(JP,A)
【文献】特開2007-201980(JP,A)
【文献】特開2008-164731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/71
H04N 23/74
H04N 23/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域で撮像された画像から対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得する取得手段と、
前記肌色情報から前記肌の反射率を算出する反射率モデルを記憶する記憶手段と、
前記反射率モデルを用いて算出した前記肌の反射率に基づいて、
近赤外光領域での前記対象の肌の輝度情報を推定する推定手段と、
前記輝度情報に基づいて、
前記近赤外光領域で前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する制御手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記対象の肌の輝度情報が第1閾値と第2閾値との間となるように、前記カメラパラメータ及び前記照明の少なくとも一方を制御する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記対象の移動量を検出する検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記輝度情報と前記移動量とに基づいて、前記カメラパラメータ及び前記照明の少なくとも一方を制御する、
請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記対象を複数回撮像する場合に、撮像ごとに前記カメラパラメータ及び前記照明の少なくとも一方を制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記輝度情報に基づいて、撮像ごとに前記対象を撮像する際の露光時間を短くすると共に前記照明を明るくする第1制御、又は、撮像ごとに前記対象を撮像する際の前記露光時間を長くすると共に前記照明を暗くする第2制御を行う、請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
可視光領域で撮像された画像から対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得する取得手段と、
前記肌色情報から前記肌の反射率を算出する反射率モデルを記憶する記憶手段と、
前記反射率モデルを用いて算出した前記肌の反射率に基づいて、
近赤外光領域での前記対象の肌の輝度情報を推定する推定手段と、
前記輝度情報に基づいて、
前記近赤外光領域で前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する制御手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項7】
少なくとも1つのコンピュータが実行する情報処理方法であって、
可視光領域で撮像された画像から対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、
記憶された反射率モデルを用いて前記肌色情報から前記肌の反射率を算出し、
前記反射率モデルを用いて算出した前記肌の反射率に基づいて、
近赤外光領域での前記対象の肌の輝度情報を推定し、
前記輝度情報に基づいて、
前記近赤外光領域で前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する、
情報処理方法。
【請求項8】
少なくとも1つのコンピュータに、
可視光領域で撮像された画像から対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、
記憶された反射率モデルを用いて前記肌色情報から前記肌の反射率を算出し、
前記反射率モデルを用いて算出した前記肌の反射率に基づいて、
近赤外光領域での前記対象の肌の輝度情報を推定し、
前記輝度情報に基づいて、
前記近赤外光領域で前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する、
情報処理方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、生体の画像を撮像する際の露光や光環境を調整するものが知られている。例えば特許文献1では、照度と瞳孔サイズとの関係に基づいて照明の光量を決定する技術が開示されている。特許文献2では、虹彩画像を撮像する際の露光時間を設定する技術が開示されている。
【0003】
その他の関連する技術として、例えば特許文献3では、瞳孔領域を検出して、瞳孔領域の周囲にある肌領域の輝度情報を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2021/044540号
【文献】特表2017-537386号公報
【文献】国際公開第2014/073645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この開示は、先行技術文献に開示された技術を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の情報処理システムの一の態様は、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得する取得手段と、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定する推定手段と、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する制御手段と、を備える。
【0007】
この開示の情報処理装置の一の態様は、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得する取得手段と、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定する推定手段と、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する制御手段と、を備える。
【0008】
この開示の情報処理方法の一の態様は、少なくとも1つのコンピュータが実行する情報処理方法であって、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定し、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する。
【0009】
この開示の記録媒体の一の態様は、少なくとも1つのコンピュータに、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定し、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する、情報処理方法を実行させるコンピュータプログラムが記録されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第3実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第4実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図7】第4実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第5実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図9】第5実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第6実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図11】第6実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第6実施形態に係る情報処理システムによって算出される肌の反射率の一例を示すグラフである。
【
図13】第7実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図14】第7実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図15】第8実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【
図16】第9実施形態に係る情報処理システムによる制御動作の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及び記録媒体の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る情報処理システムについて、
図1から
図3を参照して説明する。
【0013】
(ハードウェア構成)
まず、
図1を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、第1実施形態に係る情報処理システム10は、プロセッサ11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。情報処理システム10は更に、入力装置15と、出力装置16と、を備えていてもよい。また、情報処理システム10は、カメラ18と、照明19と、を備えていてもよい。上述したプロセッサ11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16と、カメラ18と、照明19とは、データバス17を介して接続されている。
【0015】
プロセッサ11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、プロセッサ11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込むように構成されている。或いは、プロセッサ11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。プロセッサ11は、ネットワークインタフェースを介して、情報処理システム10の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。プロセッサ11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、プロセッサ11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、プロセッサ11内には、対象を撮像する際の制御を実行する機能ブロックが実現される。即ち、プロセッサ11は、情報処理システム10における各制御を実行するコントローラとして機能してよい。
【0016】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてよい。プロセッサ11は、これらのうち一つで構成されてもよいし、複数を並列で用いるように構成されてもよい。
【0017】
RAM12は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、プロセッサ11がコンピュータプログラムを実行している際にプロセッサ11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0018】
ROM13は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0019】
記憶装置14は、情報処理システム10が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、プロセッサ11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0020】
入力装置15は、情報処理システム10のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。入力装置15は、スマートフォンやタブレット等の携帯端末として構成されていてもよい。
【0021】
出力装置16は、情報処理システム10に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、情報処理システム10に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。また、出力装置16は、情報処理システム10に関する情報を音声出力可能なスピーカ等であってもよい。出力装置16は、スマートフォンやタブレット等の携帯端末として構成されていてもよい。
【0022】
カメラ18は、対象の画像(例えば、対象の顔を含む画像や対象の虹彩を含む画像を)を撮像可能な箇所に設置されたカメラである。なお、ここでの対象は、人間だけに限られず、犬や蛇等の動物、ロボット等を含むものであってよい。カメラ18は、対象が有する端末(例えば、スマートフォン)に搭載されたカメラであってもよい。カメラ18は、静止画を撮像するカメラであってもよいし、動画を撮像するカメラであってもよい。カメラ18は、可視光カメラとして構成されてもよいし、近赤外線カメラとして構成されてよい。カメラ18は複数台設けられていてもよい。カメラ18が複数台設けられる場合、それらは異なる種類のカメラ18として設けられていてもよい。例えば、対象の顔を撮像する可視光カメラと、対象の虹彩を撮像する近赤外線カメラとが設けられてもよい。また、カメラ18は、深度カメラやサーマルカメラとして設けられてもよい。
【0023】
照明19は、カメラ18で画像を撮像する際に照明光を対象に照射可能に構成されている。例えば、カメラ18として可視光カメラが設けられている場合、照明19は可視光を照射するものとして構成されてよい。また、カメラ18として近赤外線カメラが設けられている場合、照明19は近赤外光を照射するものとして構成されてよい。照明19は複数台設けられていてもよい。照明19が複数台設けられる場合、それらは異なる種類の照明19として設けられていてもよい。
【0024】
なお、
図1では、複数の装置を含んで構成される情報処理システム10の例を挙げたが、これらの全部又は一部の機能を、1つの装置(情報処理装置)で実現してもよい。この情報処理装置は、例えば、上述したプロセッサ11、RAM12、ROM13のみを備えて構成され、その他の構成要素(即ち、記憶装置14、入力装置15、出力装置16、カメラ18)については、例えば情報処理装置に接続される外部の装置が備えるようにしてもよい。また、情報処理装置は、一部の演算機能を外部の装置(例えば、外部サーバやクラウド等)によって実現するものであってもよい。
【0025】
(機能的構成)
次に、
図2を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。
図2は、第1実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、第1実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための構成要素として、肌色情報取得部110と、輝度情報推定部120と、制御部130と、を備えて構成されている。肌色情報取得部110、輝度情報推定部120、及び制御部130の各々は、例えば上述したプロセッサ11(
図1参照)によって実現される処理ブロックであってよい。
【0027】
肌色情報取得部110は、対象(即ち、カメラ18による撮像対象)の肌の色に関する肌色情報を取得可能に構成されている。肌色情報取得部110は、対象の画像から肌色情報を取得してよい。例えば、肌色情報取得部110は、可視光画像に含まれる対象の顔から肌色情報を取得してよい。この場合、肌色情報取得部110は、対象の顔が存在する領域(即ち、顔領域)を検出する機能を有していてもよい。更に、肌色情報取得部110は、対象の顔の一部の領域を検出して、その領域の肌色情報を取得してもよい。例えば、肌色情報取得部110は、対象の頬領域や額領域を検出して肌色情報を取得してもよい。このようにすれば、対象の髪部分や口部分の色を誤検出してしまうことを防止できる。また、肌色情報取得部110は目を検出して、目の周りの皮膚領域から肌色情報を取得してもよい。肌色情報は、例えばRGB値として取得されてよい。肌色情報は、対象の所定領域(例えば、顔領域)の平均RGB値として取得されてよい。肌色情報取得部110で取得された肌色情報は、輝度情報推定部120に出力される構成となっている。
【0028】
輝度情報推定部120は、肌色情報取得部110で取得された肌色情報から、対象の肌の輝度情報(例えば、対象を撮像した場合の肌の輝度情報)を推定可能に構成されている。即ち、輝度情報推定部120は、実際の対象を撮像することなく、これから撮像を実行すると仮定した場合の輝度情報を推定可能に構成されている。輝度情報は、例えば画素値や、輝度値を含む情報であってよい。輝度情報は、例えば可視光カメラで撮像した場合の輝度情報であってもよいし、近赤外線カメラで撮像した場合の輝度情報であってよい。肌色情報から輝度情報を推定する具体的な手法については、後述する他の実施形態において詳しく説明する。輝度情報推定部120で推定された輝度情報は、制御部130に出力される構成となっている。
【0029】
制御部130は、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータを制御可能に構成されている。カメラパラメータは、例えばレンズの絞り、露光時間、及びゲインの少なくとも1つを含んでいてよい。制御部130は、1種類のカメラパラメータを制御してもよいし、複数種類のカメラパラメータを制御してもよい。制御部130は、推定された輝度情報に基づいて、カメラ18で撮像した場合の対象の輝度情報が適切な値となるようにカメラパラメータを制御すればよい。例えば、制御部130は、推定された輝度情報が大きすぎる場合(即ち、明るすぎる場合)、輝度情報が小さくなるようにカメラパラメータを制御してよい。例えば、制御部130は、絞り値を小さくしたり、露光時間を短くしたり、ゲインを小さくしたりしてよい。或いは、制御部130は、推定された輝度情報が小さすぎる場合(即ち、暗すぎる場合)、輝度情報が大きくなるようにカメラパラメータを制御してよい。例えば、制御部130は、絞り値を大きくしたり、露光時間を長くしたり、ゲインを大きくしたりしてよい。
【0030】
(動作の流れ)
次に、
図3を参照しながら、第1実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図3は、第1実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図3に示すように、第1実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。なお、肌色情報取得部110が対象の画像から肌色情報を取得する場合、このステップの前に対象の画像を撮像する処理(例えば、対象の顔画像を撮像する処理)が実行されてよい。
【0032】
続いて、輝度情報推定部120が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS102)。そして、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータを制御する(ステップS103)。
【0033】
なお、制御部130によるカメラパラメータの制御後には、実際に対象の撮像が実行されてよい。即ち、カメラパラメータが制御されたカメラ18によって対象が撮像されてよい。この場合、制御部130は、カメラパラメータの制御後に、カメラに撮像指示を出力する機能を有していてもよい。カメラ18によって撮像された画像は、例えば生体認証に用いられてよい。この場合、生体認証は複数の部位で認証を行うマルチモーダル認証であってもよい。例えば、肌色情報を取得する際に撮像した顔画像を用いた顔認証と、制御後に撮像される虹彩画像を用いた虹彩認証と、が実行されてよい。
【0034】
(技術的効果)
次に、第1実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0035】
図1から
図3で説明したように、第1実施形態に係る情報処理システム10では、対象の肌色情報から推定した輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータが制御される。このようにすれば、対象を適切な条件で撮像することが可能となる。よって、例えば画素値の飽和に起因する白飛び等を防止することができる。また、本実施形態では特に、実際に対象を撮像することなく(即ち、輝度情報を推定して)カメラパラメータが制御されるため、撮像の遅延を回避しつつ、適切な画像を撮像することができる。
【0036】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る情報処理システム10について、
図4を参照して説明する。なお、第2実施形態は、上述した第1実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0037】
(制御部の構成)
第2実施形態に係る制御部130は、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の照明19を制御可能に構成されている。具体的には、制御部130は、照明19の光量や向き、或いは光らせるタイミングを制御可能に構成されてよい。なお、照明19が複数設けられている場合、制御部130は、複数の照明19の各々を制御可能に構成されてよい。制御部130は、推定された輝度情報に基づいて、カメラ18で撮像した場合の対象の輝度情報が適切な値となるように照明19を制御すればよい。例えば、制御部130は、推定された輝度情報が大きすぎる場合(即ち、明るすぎる場合)、輝度情報が小さくなるように照明19を制御してよい。例えば、制御部130は、照明19の光量を弱くしたり、照明19の向きを対象から逸らしたり、光らせるタイミングを撮像タイミングから外すように制御したりしてよい。或いは、制御部130は、推定された輝度情報が小さすぎる場合(即ち、暗すぎる場合)、輝度情報が大きくなるように照明19を制御してよい。例えば、制御部130は、照明19の光量を強くしたり、照明19を対象側に向けたり、光らせるタイミングを撮像タイミングに近づけるようにしてよい。
【0038】
(動作の流れ)
まず、
図4を参照しながら、第2実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図4は、第2実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図4では、
図3で説明した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0039】
図4に示すように、第2実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。
【0040】
続いて、輝度情報推定部120が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS102)。そして、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の照明19を制御する(ステップS201)。
【0041】
(技術的効果)
次に、第2実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0042】
図4で説明したように、第2実施形態に係る情報処理システム10では、対象の肌色情報から推定した輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の照明19が制御される。このようにすれば、対象を適切な条件で撮像することが可能となる。よって、例えば画素値の飽和に起因する白飛び等を防止することができる。また、本実施形態では特に、実際に対象を撮像することなく(即ち、輝度情報を推定して)照明19が制御されるため、撮像の遅延を回避しつつ、適切な画像を撮像することができる。
【0043】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る情報処理システム10について、
図5を参照して説明する。なお、第3実施形態は、上述した第1及び第2実施形態と一部の構成及び動作が異なるものであり、その他の部分については第1及び第2実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0044】
(制御部の構成)
第3実施形態に係る制御部130は、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明19を制御可能に構成されている。即ち、第3実施形態に係る制御部130は、第1実施形態で説明したカメラパラメータの制御と、第2実施形態で説明した照明19の制御と、の両方を実行可能に構成されている。なお、制御部130は、カメラパラメータ及び照明19の協調制御を実行可能に構成されてよい。具体的には、制御部130は、カメラパラメータ及び照明19の一方の制御による不足分を、他方の制御で補うような制御を実行してもよい。例えば、制御部130は、輝度情報が小さくなるようにカメラパラメータを制御すると共に、更に輝度情報が小さくなるように照明19を制御するようにしてもよい。或いは、制御部130は、カメラパラメータ及び照明19の一方の制御による超過分を、他方の制御で相殺するような制御を実行してもよい。例えば、制御部130は、輝度情報が小さくなるようにカメラパラメータを制御する一方で、輝度情報が少しだけ大きくなるように照明19を制御するようにしてもよい。
【0045】
(動作の流れ)
まず、
図5を参照しながら、第3実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図5は、第3実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図5では、
図3に示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0046】
図5に示すように、第3実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。
【0047】
続いて、輝度情報推定部120が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS102)。そして、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19を制御する(ステップS301)。
【0048】
(技術的効果)
次に、第3実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0049】
図5で説明したように、第3実施形態に係る情報処理システム10では、対象の肌色情報から推定した輝度情報に基づいて、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19が制御される。このようにすれば、対象を適切な条件で撮像することが可能となる。よって、例えば画素値の飽和に起因する白飛び等を防止することができる。また、本実施形態では特に、実際に対象を撮像することなく(即ち、輝度情報を推定して)カメラパラメータ及び照明19が制御されるため、撮像の遅延を回避しつつ、適切な画像を撮像することができる。そして、カメラパラメータ及び照明19の両方を制御するため、いずれか一方のみを制御する場合と比べて、より自由度の高い制御が行える。
【0050】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る情報処理システム10について、
図6及び
図7を参照して説明する。なお、第4実施形態は、上述した第1から第3実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第3実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0051】
(機能的構成)
まず、
図6を参照しながら、第4実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。
図6は、第4実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、
図6では、
図2で示した構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0052】
図6に示すように、第4実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための構成要素として、肌色情報取得部110と、輝度情報推定部120と、制御部130と、を備えて構成されている。そして特に、第4実施形態に係る制御部130は、閾値記憶部131を備えている。
【0053】
閾値記憶部131は、カメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御する際に用いる第1閾値及び第2閾値を記憶可能に構成されている。第1閾値及び第2閾値は、輝度情報の目標値の上限及び下限を示す閾値であり、第4実施形態に係る制御部130は、輝度情報が第1閾値と第2閾値との間になるように、カメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御可能に構成されている。第1閾値及び第2閾値は、事前のシミュレーション等により算出された値であってよい。例えば、第1閾値及び第2閾値は、対象の画像の画素値が飽和しないような値として設定されてよい。なお、第1閾値及び第2閾値は、複数セット用意されていてもよい。この場合、実際に用いられる第1閾値及び第2閾値は、対象の肌色情報や輝度情報に応じて変更(選択)されてよい。例えば、対象の輝度情報が所定の第1範囲内であれば、第1閾値A及び第2閾値Aのペアを選択し、対象の輝度情報が所定の第2範囲内であれば、第2閾値B及び第2閾値Bのペアを選択するようにしてよい。或いは、第1閾値及び第2閾値は、ユーザが適宜設定可能な値(例えば、ユーザの操作によって入力される値)であってもよい。或いは、第1閾値及び第2閾値は、撮像環境に関する情報や対象に関する情報等に基づいて、適宜算出される値であってもよい。この場合、閾値記憶部131は、第1閾値及び第2閾値を算出する機能を有するように構成されてよい。
【0054】
(動作の流れ)
次に、
図7を参照しながら、第4実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図7は、第4実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図7では、
図3で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0055】
図7に示すように、第4実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。そして、輝度情報推定部120が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS102)。
【0056】
続いて、制御部130が、閾値記憶部131から第1閾値及び第2閾値を読み出す(ステップS401)。そして、制御部130は、制御部130が、対象の肌の輝度情報が第1閾値と第2閾値との間となるように、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御する(ステップS402)。
【0057】
(技術的効果)
次に、第4実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0058】
図6及び
図7で説明したように、第4実施形態に係る情報処理システム10では、対象の肌の輝度情報が第1閾値と第2閾値との間になるように、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方が制御される。このようにすれば、より容易且つ的確にカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御することが可能となる。
【0059】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る情報処理システム10について、
図8及び
図9を参照して説明する。なお、第5実施形態は、上述した第1から第4実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第4実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0060】
(機能的構成)
まず、
図8を参照しながら、第5実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。
図8は、第5実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、
図8では、
図2で示した構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0061】
図8に示すように、第5実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための構成要素として、肌色情報取得部110と、輝度情報推定部120と、制御部130と、を備えて構成されている。そして特に、第5実施形態に係る輝度情報推定部120は、反射率取得部121を備えている。
【0062】
反射率取得部121は、肌色情報取得部110で取得した肌色情報に応じた肌の反射率を取得可能に構成されている。ここでの「肌の反射率」は、肌に照射された光と、肌から反射された光の比を示すものである。肌の反射率は、例えば照射される光の波長ごとに取得されるものであってよい。具体的には、可視光領域の肌の反射率の他、近赤外線領域の肌の反射率が取得されてよい。肌の反射率のより具体的な取得方法については、後述する他の実施形態において詳しく説明する。なお、第5実施形態に係る輝度情報推定部120は、反射率取得部121で取得した肌の反射率に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定可能に構成されている。
【0063】
(動作の流れ)
次に、
図9を参照しながら、第5実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図9は、第5実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図9では、
図3で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0064】
図9に示すように、第5実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。そして、反射率取得部121が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の反射率を取得する(ステップS501)。
【0065】
続いて、輝度情報推定部120が、反射率取得部121で取得された肌の反射率に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS502)。そして、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御する(ステップS503)。
【0066】
(技術的効果)
次に、第5実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0067】
図8及び
図9で説明したように、第5実施形態に係る情報処理システム10では、肌の反射率に基づいて、対象の肌の輝度情報が推定される。このようにすれば、対象の肌の輝度情報を精度よく推定することができる。よって、より適切にカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御することが可能となる。
【0068】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る情報処理システム10について、
図10から
図12を参照して説明する。なお、第6実施形態は、上述した第5実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第5実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0069】
(機能的構成)
まず、
図10を参照しながら、第6実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。
図10は、第6実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、
図10では、
図8で示した構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0070】
図10に示すように、第6実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための構成要素として、肌色情報取得部110と、輝度情報推定部120と、制御部130と、反射率モデル記憶部140と、を備えて構成されている。即ち、第6実施形態に係る情報処理システム10は、第5実施形態の構成(
図8参照)に加えて、反射率モデル記憶部140を更に備えている。反射率モデル記憶部140は、例えば上述した記憶装置14(
図1参照)によって実現されるものであってよい。
【0071】
反射率モデル記憶部140は、肌色情報取得部110で取得した肌色情報から肌の反射率を算出する反射率モデルを記憶可能に構成されている。反射率モデルは、例えば複数の生体から取得したデータに基づいて予め生成されるものであってよい。また、反射率モデルは、機械学習によって生成されたモデルであってよい。反射率モデルの具体例については、後に詳しく説明する。なお、第6実施形態に係る反射率取得部121は、反射率モデル記憶部140から読み出した反射率モデルを用いて、肌の反射率を算出可能に構成されている。
【0072】
(動作の流れ)
次に、
図11を参照しながら、第6実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図11は、第6実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図11では、
図9で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0073】
図11に示すように、第6実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。そして、反射率取得部121が、反射率モデル記憶部140に記憶された反射率モデルを用いて、対象の肌の反射率を算出する(ステップS601)。即ち、反射率取得部121は、肌色情報と反射率モデルとに基づいて、対象の肌の反射率を算出する。
【0074】
続いて、輝度情報推定部120が、反射率取得部121で算出された肌の反射率に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS502)。そして、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御する(ステップS503)。
【0075】
(反射率の算出例)
次に、
図12を参照しながら、第6実施形態に係る情報処理システム10による肌の反射率の算出例(即ち、反射率モデルを用いた算出例)について具体的に説明する。
図12は、第6実施形態に係る情報処理システムによって算出される肌の反射率の一例を示すグラフである。なお、
図12に示すグラフの縦軸は「肌の反射率」、横軸は「(光の)波長」である。
【0076】
まず、肌色情報取得部110が、肌色情報として対象の顔画像(可視光画像)から、平均RGB値を取得しているとする。なお、RGB値にガンマ補正がかかっている場合は、デガンマ処理によってγ=1.0の場合のRGB値を算出するようにしてもよい。
【0077】
反射率取得部121は、上述したRGB値から三刺激値XYZを計算する。三刺激値XYZは、例えば下記式(1)を用いて算出できる。
【0078】
【数1】
なお、変換行列aijは、標準RGB空間sRGBで定義されている行列を利用してよい。
【0079】
続いて、反射率取得部121は、計算した三刺激値XYZから、肌の反射率S(λ)を推定する。具体的には、下記式(2)を用いて、特性パラメータ(a、b、c)を計算する。
【0080】
【数2】
なお、上記式(2)におけるsi(λ)は基底ベクトル(i=1~3)、s0(λ)は平均ベクトル、x(λ)、y(λ)、z(λ)は等色関数、d65(λ)は、標準白色D65の分光分布であり、それぞれ既知の情報である。
【0081】
続いて、反射率取得部121は、計算した特性パラメータ(a、b、c)を反射率モデルに代入することで肌の反射率を求める。具体的には、特性パラメータ(a、b、c)を下記式(3)に代入することで、反射率S(λ)が求められる。肌の反射率S(λ)は、
図12に示すように、可視光領域から近赤外光領域まで求められてよい。
【0082】
(技術的効果)
次に、第6実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0083】
図10から
図12で説明したように、第6実施形態に係る情報処理システム10では、反射率モデルを用いて対象の肌の反射率が算出される。このようにすれば、肌の反射率を容易かつ的確に算出できる。よって、肌の輝度情報を精度よく推定することができ、より適切にカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御することが可能となる。特に、第6実施形態に係る情報処理システム10では、顔と虹彩によるマルチモーダル認証において、顔を撮影するカメラが可視光で撮影し、虹彩を撮影するカメラが近赤外光で撮影する場合、可視光領域で撮像された顔画像より取得する肌色情報から、近赤外光領域での肌の輝度情報を得ることができ、この近赤外光領域での輝度情報に基づくことで、虹彩を撮像するカメラのカメラパラメータおよび照明の少なくとも一方を適切に制御することができる。
【0084】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る情報処理システム10について、
図13及び
図14を参照して説明する。なお、第7実施形態は、上述した第1から第6実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第6実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0085】
(機能的構成)
まず、
図13を参照しながら、第7実施形態に係る情報処理システム10の機能的構成について説明する。
図13は、第7実施形態に係る情報処理システムの機能的構成を示すブロック図である。なお、
図13では、
図2で示した構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0086】
図13に示すように、第7実施形態に係る情報処理システム10は、その機能を実現するための構成要素として、肌色情報取得部110と、輝度情報推定部120と、制御部130と、移動量検出部150と、を備えて構成されている。即ち、第7実施形態に係る情報処理システム10は、第1実施形態の構成(
図2参照)に加えて、移動量検出部150を更に備えている。
【0087】
移動量検出部150は、対象の移動量を検出可能に構成されている。より具体的には、移動量検出部150は、対象の単位時間あたりの移動量(言い換えれば、移動速度)を検出可能に構成されてよい。移動量検出部150は、各種センサを用いて対象の移動量を検出するように構成されてよい。或いは、移動量検出部150は、対象の画像を複数枚撮像し、それらの画像の差分(具体的には、画像における対象の位置の変化)に基づいて、対象の移動量を検出してもよい。移動量検出部150で検出された対象の移動量は、制御部130に出力される構成となっている。
【0088】
第7実施形態に係る制御部130は、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に加えて、移動量検出部150で検出された移動量に基づいて、カメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御可能に構成されている。制御部130は、例えば検出された対象の移動量に応じて制御量を変更するようにしてもよい。即ち、対象の移動量の大小に応じて、カメラパラメータや照明19の制御量を大きくしたり、小さくしたりしてよい。また、制御部130は、検出された対象の移動量に応じて、制御するパラメータの種類を変更するようにしてもよい。例えば、対象の移動量が大きい場合には、シャッタースピード(露光時間)を長くするのは好ましくない(ブレが生じるおそれがある)ため、その他のパラメータを制御するようにしてもよい。また、対象の移動量が大きい場合には、シャッタースピードを短くしつつ、照明19の光量を強くするように制御してもよい。また、対象の移動量が小さい場合には、シャッタースピードを長くしつつ、照明19の光量を弱くするように制御してもよい。
【0089】
(動作の流れ)
次に、
図14を参照しながら、第7実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図14は、第7実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図14では、
図3で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0090】
図14に示すように、第7実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。そして、輝度情報推定部120が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS102)。
【0091】
続いて、移動量検出部150が、対象の移動量を検出する(ステップS701)。なお、移動量の検出は、上述したステップS101及びS102と相前後して実行されてもよいし、同時に並行して実行されてもよい。
【0092】
その後、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報と、移動量検出部で検出された移動量と、に基づいて対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御する(ステップS2702)。
【0093】
(技術的効果)
次に、第7実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0094】
図13及び
図14で説明したように、第7実施形態に係る情報処理システム10では、対象の移動量を考慮して、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方が制御される。このようにすれば、対象の移動量を考慮しない場合と比較して、より適切にカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御することができる。
【0095】
<第8実施形態>
第8実施形態に係る情報処理システム10について、
図15を参照して説明する。なお、第8実施形態は、上述した第1から第7実施形態と一部の動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第7実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0096】
(動作の流れ)
まず、
図15を参照しながら、第8実施形態に係る情報処理システム10による動作の流れについて説明する。
図15は、第8実施形態に係る情報処理システムによる動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図15では、
図3で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0097】
図15に示すように、第8実施形態に係る情報処理システム10が動作する際には、まず肌色情報取得部110が、対象の肌色情報を取得する(ステップS101)。そして、輝度情報推定部120が、肌色情報取得部110で取得された肌色情報に基づいて、対象の肌の輝度情報を推定する(ステップS102)。
【0098】
続いて、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、対象を撮像する際のカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方を制御する(ステップS801)。そして、本実施形態に係る情報処理システム10では特に、制御後に実行する撮像ですべての撮像が終了するか否かを判定する(ステップS802)。即ち、現在の対象の撮像を終了するのか、それとも更に現在の対象の画像を撮像し続けるのかが判定される。対象の撮像を終了するか否かは、これまでに撮像した画像の枚数(例えば、撮像枚数が所定枚数に達しているか否か)や、対象の位置(例えば、対象が撮像範囲外に移動したか否か)によって判定してもよい。
【0099】
対象の撮像を終了すると判定した場合(ステップS802:YES)、そのまま一連の動作が終了することになる。一方で、対象の撮像を終了しないと判定した場合(ステップS802:NO)、再びステップS101から処理が開始される。これにより、対象の画像を複数枚撮像する場合には、撮像するごとにカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方が制御されることになる。例えば、対象がカメラ18に対して近づくように移動してくる場合、対象が近づくにつれて、シャッタースピードを短くするように制御してもよい。また、そのような場合には、シャッタースピードが短くなることによる影響を小さくするために、照明19を徐々に明るくするように制御してもよい。
【0100】
(技術的効果)
次に、第8実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0101】
図15で説明したように、第8実施形態に係る情報処理システム10では、撮像ごとにカメラパラメータ及び照明19の少なくとも一方が制御される。このようにすれば、状況に応じて随時制御が行われるため、より適切な条件で対象を撮像することが可能となる。
【0102】
<第9実施形態>
第9実施形態に係る情報処理システム10について、
図16を参照して説明する。なお、第9実施形態は、上述した第8実施形態の制御動作の具体例を説明するものであり、その他の部分については第1から第7実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0103】
(制御動作例)
まず、
図16を参照しながら、第9実施形態に係る情報処理システム10による制御動作(即ち、カメラパラメータ及び照明の制御)の具体例について説明する。
図16は、第9実施形態に係る情報処理システムによる制御動作の一例を示す表である。
【0104】
図16に示すように、第9実施形態に係る情報システム10では、制御部130が、輝度情報推定部120で推定された輝度情報に基づいて、カメラ18の露光時間(シャッタースピード)と照明19とを制御する。具体的には、第9実施形態に係る制御部130は、露光時間を短くすると共に照明19を明るくする第1制御と、露光時間を長くすると共に照明19を暗くする第2制御と、を実行可能とされている。第1制御では、露光時間を短くすることによる画像への影響を考慮して、画像が暗くなり過ぎように照明19の明るさが制御されてよい。第2制御では、露光時間を長くすることによる画像への影響を考慮して、画像が明るくなり過ぎないように照明19の明るさが制御されてよい。なお、照明19の明るさについては、上述した他の実施形態で説明したように、光量を調整する他、照明19の向きや光るタイミングを調整することによって制御されてよい。
【0105】
第1制御及び第2制御は、撮像ごとに実行される。このため、撮像ごとに第1制御が実行されると、撮像が進むにつれて露光時間が徐々に短くなっていく一方で、照明19が徐々に明るくなるように制御される。また、撮像ごとに第2制御が実行されると、撮像が進むにつれて露光時間が徐々に長くなっていく一方で、照明19が徐々に暗くなるように制御される。なお、第1制御及び第2制御のいずれを実行するかは、撮像の途中で変更されてよい。例えば、第1制御が実行された後に、第2制御が実行されてもよい。また、第2制御が実行された後に、第1制御が実行されてもよい。第1制御と第2制御とを切り替えるタイミングは、例えば情報推定部120で推定された輝度情報によって決定されてもよい。
【0106】
(技術的効果)
次に、第9実施形態に係る情報処理システム10によって得られる技術的効果について説明する。
【0107】
図16で説明したように、第9実施形態に係る情報処理システム10では、輝度情報に基づいて、カメラ18の露光時間及び照明19の明るさが制御される。このようにすれば、カメラパラメータ及び照明19に対する協調制御が行われることになるため、より適切な条件で対象を撮像することが可能となる。
【0108】
上述した各実施形態の機能を実現するように該実施形態の構成を動作させるプログラムを記録媒体に記録させ、該記録媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記録媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記録媒体はもちろん、そのプログラム自体も各実施形態に含まれる。
【0109】
記録媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。また該記録媒体に記録されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作して処理を実行するものも各実施形態の範疇に含まれる。更に、プログラム自体がサーバに記憶され、ユーザ端末にサーバからプログラムの一部または全てをダウンロード可能なようにしてもよい。
【0110】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0111】
(付記1)
付記1に記載の情報処理システムは、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得する取得手段と、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定する推定手段と、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する制御手段と、を備える情報処理システムである。
【0112】
(付記2)
付記2に記載の情報処理システムは、前記制御手段は、前記対象の肌の輝度情報が第1閾値と第2閾値との間となるように、前記カメラパラメータ及び前記照明の少なくとも一方を制御する、付記1に記載の情報処理システムである。
【0113】
(付記3)
付記3に記載の情報処理システムは、前記推定手段は、前記肌色情報に応じた前記対象の肌の反射率に基づいて、前記輝度情報を推定する、付記1又は2に記載の情報処理システムである。
【0114】
(付記4)
付記4に記載の情報処理システムは、前記肌色情報から前記肌の反射率を算出する反射率モデルを記憶する記憶手段を更に備え、前記推定手段は、前記反射率モデルを用いて算出した前記肌の反射率に基づいて、前記輝度情報を推定する付記3に記載の情報処理システムである。
【0115】
(付記5)
付記5に記載の情報処理システムは、前記対象の移動量を検出する検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記輝度情報と前記移動量とに基づいて、前記カメラパラメータ及び前記照明の少なくとも一方を制御する、付記1から4のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0116】
(付記6)
付記6に記載の情報処理システムは、前記制御手段は、前記対象を複数回撮像する場合に、撮像ごとに前記カメラパラメータ及び前記照明の少なくとも一方を制御する、付記1から5のいずれか一項に記載の情報処理システムである。
【0117】
(付記7)
付記7に記載の情報処理システムは、前記制御手段は、前記輝度情報に基づいて、撮像ごとに前記対象を撮像する際の露光時間を短くすると共に前記照明を明るくする第1制御、又は、撮像ごとに前記対象を撮像する際の前記露光時間を長くすると共に前記照明を暗くする第2制御を行う、付記6に記載の情報処理システム。
【0118】
(付記8)
付記8に記載の情報処理装置は、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得する取得手段と、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定する推定手段と、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する制御手段と、を備える情報処理装置である。
【0119】
(付記9)
付記9に記載の情報処理方法は、少なくとも1つのコンピュータが実行する情報処理方法であって、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定し、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する、情報処理方法である。
【0120】
(付記10)
付記10に記載の記録媒体は、少なくとも1つのコンピュータに、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定し、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する、情報処理方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体である。
【0121】
(付記11)
付記11に記載のコンピュータプログラムは、少なくとも1つのコンピュータに、対象の肌の色に関する情報である肌色情報を取得し、前記肌色情報に基づいて、前記対象の肌の輝度情報を推定し、前記輝度情報に基づいて、前記対象を撮像する際の露光に関するカメラパラメータ及び照明の少なくとも一方を制御する、情報処理方法を実行させるコンピュータプログラムである。
【0122】
この開示は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、及び記録媒体もまたこの開示の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10 情報処理システム
11 プロセッサ
18 カメラ
19 照明
110 肌色情報取得部
120 輝度情報推定部
121 反射率取得部
130 制御部
131 閾値記憶部
140 反射率モデル記憶部
150 移動量検出部