(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】制御装置、光源装置、光送信モジュール、光トランシーバ、および制御方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20250611BHJP
H01S 5/0687 20060101ALI20250611BHJP
H01S 5/14 20060101ALN20250611BHJP
H01S 5/50 20060101ALN20250611BHJP
H01S 5/024 20060101ALN20250611BHJP
【FI】
G02F1/01 B
H01S5/0687
H01S5/14
H01S5/50 610
H01S5/024
(21)【出願番号】P 2023559226
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2021041171
(87)【国際公開番号】W WO2023084594
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】水谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】大江 将己
(72)【発明者】
【氏名】三枝 慈
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0280173(US,A1)
【文献】特開2020-167359(JP,A)
【文献】特開2018-064099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329681(US,A1)
【文献】特開2007-193230(JP,A)
【文献】特開2008-193003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0208756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長可変フィルタを含む光源の制御装置であって、
前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する温度受信手段と、
前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する制御手段と
を備え
、
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタが、前記光源に含まれる波長可変フィルタとは別にさらに設けられ、
前記制御手段は、さらに、前記周波数検出で検出される周波数が正しくなるように、前記筐体温度に基づいて、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する
制御装置。
【請求項2】
前記基板には、前記周波数検出用波長可変フィルタの温度を制御する周波数検出用フィルタ加熱手段がさらに設けられ、
前記制御手段は、前記周波数検出用フィルタ加熱手段を制御することによって、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタがさらに設けられ、
前記制御手段は、さらに、前記筐体温度と前記周波数検出で検出された周波数とから正しい周波数を計算して出力する
請求項1または請求項2のいずれかに記載の制御装置。
【請求項4】
波長可変フィルタを含む光源の制御装置であって、
前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する温度受信手段と、
前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する制御手段と
を備え、
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタが、前記光源に含まれる波長可変フィルタとは別にさらに設けられ、
前記制御手段は、さらに、前記筐体温度と前記周波数検出で検出された周波数とから正しい周波数を計算して出力する
制御装置。
【請求項5】
前記周波数検出は、前記周波数検出用波長可変フィルタに入力される光の強度に対する前記周波数検出用波長可変フィルタから出力される光の強度の割合である入出力比と、前記周波数検出用波長可変フィルタにおける前記送信光の周波数と前記入出力比との関係の特性である透過特性とに基づいて行われる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記光源に含まれている二以上の複数の前記波長可変フィルタのうち、いずれか一つの前記波長可変フィルタの屈折率を制御する、
請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記基板には、前記基板温度を変化させる基板温度制御手段と、前記波長可変フィルタの温度を変化させるフィルタ加熱手段とが設けられ、
前記制御手段は、前記基板温度制御手段を制御することによって前記基板温度を制御し、前記フィルタ加熱手段を制御することによって前記波長可変フィルタの屈折率を制御する、
請求項1
から請求項6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれかに記載の制御装置と、
前記光源と
を備える光源装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の光源装置と、
前記送信光を変調する変調器と
を備える光送信モジュール。
【請求項10】
請求項
9に記載の光送信モジュールと、
光信号を受信する光受信器と
を備える光トランシーバ。
【請求項11】
波長可変フィルタを含む光源の制御方法であって、
前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信し、
前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御
し、
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタが、前記光源に含まれる波長可変フィルタとは別にさらに設けられ、
前記周波数検出で検出される周波数が正しくなるように、前記筐体温度に基づいて、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する、
制御方法。
【請求項12】
波長可変フィルタを含む光源の制御方法であって、
前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信し、
前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御し、
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタが、前記光源に含まれる波長可変フィルタとは別にさらに設けられ、
前記筐体温度と前記周波数検出で検出された周波数とから正しい周波数を計算して出力する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信サービスの高度化、多様化に伴って、光通信システムには大容量化が求められている。そのため、光通信システムでは、ファイバ一本当りの伝送容量を増大させることができる波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)方式が採用されている。そして波長分割多重(WDM)通信においては、使用する波長帯の中から任意の波長で発振できる複数の波長可変フィルタを用いた波長可変レーザを備えた光トランシーバが用いられている。このような光トランシーバの一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
また、関連技術としては、特許文献2-3に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-040099号公報
【文献】特開2021-125587号公報
【文献】特開2020-167359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、シリコンフォトニクス技術は、高い屈折率による光の高密度配線によって波長可変フィルタに代表される光機能素子を小型化できる。シリコンフォトニクス技術を用いた波長可変フィルタには、リングフィルタやグレーティングフィルタなどの光の共振効果を用いた導波路型のフィルタがある。このシリコンフォトニクス技術を光トランシーバに用いると、複数の波長可変フィルタを用いる光トランシーバを小型化することができる。そのため、シリコンフォトニクス技術による光トランシーバを通信用の光波長可変光源モジュールへ適用することが検討されている。通常、通信用の光波長可変光源モジュールは、ITU(International Telecommunication Union)で規格化された特定の周波数で動作し、かつ、周波数のずれは数GHzの範囲内である必要がある。しかし、シリコンフォトニクス技術による光波長光源モジュールでは、温度の影響で発振周波数が変化しやすい。そのため、光波長光源モジュールは、封止されたパッケージ内の温度コントローラ上に配置される。そして、この温度コントローラにより、基板の温度が一定になるように制御されることによって、光波長光源モジュールの発振周波数が高精度に制御される。
【0006】
しかし、基板の温度が一定になるように制御を行ったとしても、環境温度が想定温度から変わると、基板上にはわずかではあるが一定の温度むらが発生する。なお、環境温度は、光波長光源モジュールが使用されている環境の温度である。想定温度は、環境温度として想定されている温度である。シリコンフォトニクスの波長可変フィルタでは、小さな温度変化であっても、温度変化が発振周波数の特性に大きく影響する。また、基板上の搭載位置の温度によって、各々の波長可変フィルタの透過波長の特性が、異なる変化をする。その結果、送信光が目的の周波数範囲の外で発振してしまう場合がある。
【0007】
本発明の目的は、環境温度が想定温度から大きく異なる環境でも、任意の発振周波数で送信光を発振させることを可能にする制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、波長可変フィルタを含む光源の制御装置は、前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する温度受信手段と、前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する制御手段とを備える。
【0009】
また、本発明の他の態様において、波長可変フィルタを含む光源の制御方法は、前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信し、前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境温度が想定温度から大きく異なる環境でも、任意の発振周波数で送信光を発振させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一の実施形態の制御装置の構成例を示す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態の制御装置の動作フローの例を示す図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態の光トランシーバの構成例を示す図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態の光送信モジュールの構成例を示す図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態の光源装置の構成例を示す図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態の光源の構成例を示す図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態の制御装置の構成例を示す図である。
【
図8】基板温度の制御に関する位相波長特性の例を示す図である。
【
図9】フィルタ温度の制御に関する位相波長特性の例を示す図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態の光トランシーバの構成例を示す図である。
【
図11】本発明の第三の実施形態の光送信モジュールの構成例を示す図である。
【
図12】本発明の第三の実施形態の光源装置の構成例を示す図である。
【
図13】本発明の第三の実施形態の制御装置の構成例を示す図である。
【
図14】周波数検出用波長可変フィルタの透過特性の例を示す図である。
【
図15】周波数検出用波長可変フィルタの透過特性の例を示す図である。
【
図16】周波数検出用波長可変フィルタの透過特性の例を示す図である。
【
図17】本発明の第三の実施形態の光源の制御装置の動作フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施の形態について説明する。第一の実施の形態における制御装置10の具体的な一例が、後述する第二の実施の形態における制御装置20および第三の実施の形態における制御装置30である。
【0013】
図1に本実施形態の制御装置10の構成例を示す。本実施形態の制御装置10は、温度受信部11(温度受信手段)と制御部12(制御手段)とを含む。
【0014】
制御装置10は、光源の制御装置である。光源は、波長可変フィルタを含む。
【0015】
温度受信部11は、基板温度を示す情報である基板温度情報と、筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する。基板温度は、光源が設けられている基板の温度である。筐体温度は、基板を収容する筐体の温度である。筐体温度は、たとえば、筐体の内側の温度や筐体内面の表面温度である。制御部12は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する。
【0016】
次に、
図2に本実施形態の制御装置10の動作フローの例を示す。
【0017】
温度受信部11は、基板温度情報と、筐体温度情報とを受信する(ステップS101)。制御部12は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する(ステップS102)。
【0018】
以上で説明したように、本発明の第一の実施形態では、制御装置10は、温度受信部11および制御部12を含む。温度受信部11は、光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する。制御部12は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する。基板温度と波長可変フィルタの屈折率とを制御することで、導波路や波長可変フィルタの屈折率が変化するので、送信光の周波数を調整することができる。そのため、環境温度が想定温度から大きく異なる環境でも、任意の発振周波数で送信光を発振させることが可能になる。
【0019】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。
【0020】
まず、
図3に、本実施形態による光トランシーバ60の構成例を示す。光トランシーバ60は、光受信器61と光送信モジュール62とを含む。光受信器61は、光信号を光トランシーバ60の外部から受信する。光送信モジュール62は、後述する変調器63で変調された後の送信光を出力する。光受信器61と光送信モジュール62とは独立で動作する。
【0021】
次に、
図4に、本実施形態の光送信モジュール62の構成例を示す。光送信モジュール62は、変調器63と光源装置40とを含む。光源装置40は、送信光を出力する。変調器63は、光源装置40から出力された送信光を変調して出力する。
【0022】
次に、
図5に、本実施形態の光源装置40の構成例を示す。光源装置40は、制御装置20と光源41と基板温度測定部42(基板温度測定手段)と筐体温度測定部43(筐体温度測定手段)と基板温度制御部44(基板温度制御手段)とフィルタ加熱部45(フィルタ加熱手段)とを含む。光源41は、送信光を出力する。制御装置20、基板温度測定部42、筐体温度測定部43、基板温度制御部44およびフィルタ加熱部45の機能については、後述する。
【0023】
次に、
図6に、光源41の構成例を示す。光源41は、SОA(Semiconductor Optical Amplifier:半導体光増幅器)411、第一の波長可変フィルタ412、第二の波長可変フィルタ413、位相調整器414および部分反射ミラー415を含む。光源41は、基板100上に設けられている。
【0024】
SОA411は、化合物半導体である。SOA411には電流が入力される。そして、SOA411では、電気が光に変換される。SOA411の強反射面と部分反射ミラー415とで外部共振器が構成される。この外部共振器による周期的な複数の透過ピークが外部共振器モードである。SOA411で生成された光は、第一の波長可変フィルタ412、第二の波長可変フィルタ413および位相調整器414を経由して、部分反射ミラー415に到達する。部分反射ミラー415で反射された光は、位相調整器414、第二の波長可変フィルタ413および第一の波長可変フィルタ412を経由してSОA411に戻り、SОA411の強反射面で反射される。反射が繰り返されることで、複数の外部共振器モードのうち、設定された周波数の光が第一の波長可変フィルタ412および第二の波長可変フィルタ413で選択され、光源41は、選択されたモードでレーザ発振する。なお、ここで設定される発振周波数は、たとえば、191から196THzの範囲である。
【0025】
部分反射ミラー415では、光の一部が、送信光として変調器63へ出力される。位相調整器414は、位相調整器414の部分の導波路の屈折率を変えることで、SОA411の強反射面と部分反射ミラー415とで構成される外部共振器内の実効共振器長を変える。これによって、外部共振器のモード間隔(FSR(Free Spectral Range))が変わり、それに伴い、光源41(部分反射ミラー415)から出力される送信光の周波数も変わる。
【0026】
なお、第一の波長可変フィルタ412および第二の波長可変フィルタ413は、温度が変わることによって、屈折率が変化し、共振による透過ピーク波長の間隔が変化する。これにより、第一の波長可変フィルタ412および第二の波長可変フィルタ413を透過するピーク波長も変化する。
【0027】
次に、
図5および
図6を参照して、光源装置40の基板温度測定部42、筐体温度測定部43、基板温度制御部44およびフィルタ加熱部45について説明する。
【0028】
基板温度測定部42は、基板の温度を測定する。基板には光源41が設けられている。以降、光源41が設けられている基板の温度を、基板温度とよぶ。より具体的には、基板温度測定部42は基板上に設けられている。基板温度は、基板温度測定部42が設置されている基板上の位置における温度である。
【0029】
また、筐体温度測定部43は、基板を収容する筐体の温度を測定する。筐体温度は、たとえば、筐体の内側の温度や筐体の内面の表面温度である。以降、光トランシーバ60の筐体の温度を、筐体温度とよぶ。より具体的には、筐体温度測定部43は筐体内に設けられている。筐体温度は、筐体温度測定部43が設置されている筐体内の位置における温度である。また、基板上に光源41が設けられているので、基板を収容する筐体は、光源41の筐体でもある。基板温度測定部42および筐体温度測定部43は、たとえば、サーミスタである。
【0030】
基板温度制御部44とフィルタ加熱部45は、光源41が設けられている基板に設けられている。
【0031】
基板温度制御部44は、基板を加熱または冷却することによって基板温度を制御する。また、フィルタ加熱部45は、光源41に含まれている波長可変フィルタの温度を制御する。フィルタ加熱部45は、第一の波長可変フィルタ412と第二の波長可変フィルタ413の両方の温度または一方の温度を制御してもよい。本実施形態では、制御の簡単化のために、フィルタ加熱部45は、第一の波長可変フィルタ412の温度を制御するものとする。基板温度制御部44およびフィルタ加熱部45は、たとえば、発熱体である。なお、以降、波長可変フィルタの温度をフィルタ温度とよぶ。本実施形態の場合、フィルタ温度は、第一の波長可変フィルタ412の温度である。
【0032】
次に、
図7を用いて、本実施形態の制御装置20の構成例について説明する。制御装置20は、温度受信部21と制御部22とを含む。
【0033】
温度受信部21は、基板温度を示す情報である基板温度情報を、基板温度測定部42から受信する。また、温度受信部21は、筐体温度を示す情報である筐体温度情報を、筐体温度測定部43から受信する。たとえば、温度受信部21は、基板に接しているサーミスタの抵抗値に基づいて、基板温度情報を把握する。また、温度受信部21は、筐体内に設置されたサーミスタの抵抗値に基づいて、筐体温度情報を把握する。
【0034】
制御部22は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、筐体温度の変化に伴う基板上の温度むらに対し、光源41が出力する送信光の周波数が、筐体温度が変わっても所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する。
【0035】
光源41は、出荷前に、基準の筐体温度において、第一の波長可変フィルタ412や第二の波長可変フィルタ413の屈折率や、位相調整器414の部分の導波路の屈折率が多少変動しても、所望の周波数で発振できるように調整されている。また、制御部22は、基板温度が一定になるように基板温度を制御する。
【0036】
しかし、前述のように、基板温度が一定になるように制御をしても、環境温度の変化によって筐体温度が変化すると、送信光が、所望の周波数範囲の外で発振してしまう場合がある。本実施形態の制御部22は、筐体温度が基準の温度から変化した場合に、光源41が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度や波長可変フィルタの屈折率を制御する。なお、光源41が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように基板温度や波長可変フィルタの屈折率を制御することを、以降、周波数補正とよぶことがある。
【0037】
本実施形態の制御部22は、光源装置40の基板温度制御部44を制御することによって、基板温度を制御する。また、制御部22は、光源装置40のフィルタ加熱部45を制御することによって、光源41に含まれている波長可変フィルタの屈折率を制御する。なお、本実施形態の制御装置20は、フィルタ加熱部45を制御することによって波長可変フィルタの屈折率を制御するが、温度制御ではない方法を使用して波長可変フィルタの屈折率を制御してもよい。また、制御部22は、光源41に含まれている二以上の複数の波長可変フィルタのうち、いずれか一つの波長可変フィルタの屈折率を制御する。制御部22は、光源41に含まれている二以上の複数の波長可変フィルタのうち、いずれか二以上の複数の波長可変フィルタの屈折率を制御してもよい。
【0038】
図8に、基板温度による周波数補正に関して、光源41における位相波長特性の例を示す。グラフの横軸は、位相調整器414に与えられる電力(位相電力とよぶ)である。グラフの縦軸は、光源41から出力される送信光の波長である。光源41は、位相調整器414に与える位相電力を変更することによって、送信光の波長を変更することができる。位相電力と送信光の波長との関係を、位相波長特性とよぶ。「Tcase」は、筐体温度を示す。
【0039】
破線は、筐体温度が35.6度の場合の位相波長特性であり、また、所望の位相波長特性である。また、この例の場合、所望の位相波長特性が得られる筐体温度として想定されている基準温度(または想定温度という)は35.6度である。実線は、制御部22が基板温度による周波数補正を行う前の位相波長特性である。また、このときの筐体温度は52度である。筐体温度の変化によって、位相波長特性が所望の位相波長特性から左下にずれている。太線は、制御部22が基板温度による周波数補正を行った後で、フィルタ温度による周波数補正を行う前の位相波長特性である。制御部22が基板温度による周波数補正を行うことによって、位相波長特性が所望の波長特性に近づいている。
【0040】
図9に、フィルタ温度による周波数補正に関して、光源41における位相波長特性の例を示す。グラフの横軸と縦軸は
図8と同様である。「Tcase」は、筐体温度を示す。破線は、筐体温度が35.6度の場合の位相波長特性であり、また、所望の位相波長特性である。実線は、制御部22が基板温度による周波数補正を行った後で、フィルタ温度による周波数補正を行う前の位相波長特性である。太線は、制御部22がフィルタ温度による周波数補正を行った後の位相波長特性である。
【0041】
制御部22がフィルタ温度を制御することで、位相波長特性がグラフの右上にシフトし、位相波長特性がより所望の特性に近づいている。このように、基板温度に加えてフィルタ温度を制御することで、位相波長特性を所望の位相波長特性に近づけることができる。これにより、制御装置20は、光源41が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるようにすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、制御装置20は、周波数のずれ(
図8や
図9のグラフにおける縦方向のずれ)を基板温度により補正し、さらにフィルタ温度を制御する。基板温度の補正によって周波数のずれを補正することで、フィルタ温度の変化量を最小化することができる。フィルタ温度のみで周波数のずれも補正すると、内部の反射による影響が変わってしまい、場合によっては発振周波数が不安定化してしまう。しかし、本実施形態では、フィルタ温度の変化量を小さくすることができるので、発振周波数の不安定化を抑制することができる。また、温度を制御する波長可変フィルタを一つとすることで、温度制御を簡単化することができる。
【0043】
また、制御部22は、基板温度と筐体温度に対する電力値との関係から、送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度制御部44とフィルタ加熱部45とを制御してもよい。この電力値は、基板温度制御部44が消費する電力値およびフィルタ加熱部45が消費する電力値である。
【0044】
光源装置40は、基板温度と筐体温度とに対する電力値の関係を保存したルックアップテーブル(Lookup table:LUT)を格納した記憶部(メモリ)(不図示)を備えていてもよい。なお、ルックアップテーブル(LUT)には、出力電圧を基板温度と筐体温度とに対応させて保存することとしてもよい。出力電圧は、基板温度制御部44への出力電圧と、フィルタ加熱部45への出力電圧である。ここで、制御部22は、典型的にはマイクロコントローラ(Micro Controller Unit:MCU)である。
【0045】
より具体的には、調整者は、たとえば、光トランシーバ60の出荷前などに以下の作業を行い、ルックアップテーブルを光源装置40に記憶させておく。
【0046】
たとえば、調整者は、テスト用の端末を使用して制御装置20を制御する。制御装置20は、テストモードでは、テスト用端末からの指示に応じて、基板温度制御部44やフィルタ加熱部45を制御する。また、制御装置20は、テストモードでは、基板温度情報と筐体温度情報とをテスト用端末へ出力する。また、調整者は、測定器を使用して光トランシーバ60の送信光の位相波長特性を測定する。
【0047】
調整者は、まず、環境温度を変えることによって、光トランシーバ60の筐体温度を基準温度から変える。そして、調整者は、位相波長特性を所望の位相波長特性に近づけることができるように、テスト用端末から基板温度制御部44を制御する。また、調整者は、位相波長特性を所望の位相波長特性に近づけることができるように、また、光出力が最大となるように、さらに、テスト用端末からフィルタ加熱部45を制御する。そして、調整者は、基板温度制御部44およびフィルタ加熱部45の電力値(または出力電圧)として、位相波長特性を所望の位相波長特性に近づけることができた値を、基板温度と筐体温度と対応付けて、ルックアップテーブルとして光源装置40の記憶部に記憶させる。
【0048】
次に、
図2を用いて、本実施形態の制御装置20の動作フローの例について説明する。
【0049】
温度受信部21は、基板温度情報を基板温度測定部42から受信する。また、温度受信部21は、筐体温度情報を筐体温度測定部43から受信する(ステップS101)。
【0050】
制御部22は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源41が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、フィルタ温度とを制御する(ステップS102)。なお、制御部22は、基板温度とフィルタ温度のいずれかを先に制御してもよいし、基板温度とフィルタ温度とを同時に制御してもよい。
【0051】
以上で説明したように、本発明の第二の実施形態では、制御装置20は、温度受信部21および制御部22を含む。温度受信部21は、光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する。制御部22は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する。基板温度と波長可変フィルタの屈折率とを制御することで、導波路や波長可変フィルタの屈折率が変化するので、送信光の周波数を調整することができる。そのため、環境温度が想定温度から大きく異なる環境でも、任意の発振周波数で送信光を発振させることが可能になる。
【0052】
また、本実施形態の制御装置20の制御部22は、光源41に含まれている二以上の複数の波長可変フィルタのうち、いずれか一つの波長可変フィルタの屈折率を制御する。これにより、波長可変フィルタの屈折率の制御を簡単化することができる。
【0053】
また、基板には、基板温度を変化させる基板温度制御部44と、波長可変フィルタの温度を変化させるフィルタ加熱部45とが設けられる。また、制御部22は、基板温度制御部44を制御することによって基板温度を制御し、フィルタ加熱部45を制御することによって波長可変フィルタの屈折率を制御する。これにより、基板温度の制御と、波長可変フィルタの屈折率の制御とを、容易に実現することができる。
【0054】
また、制御部22は、基板温度と筐体温度とに対する、基板温度制御部44およびフィルタ加熱部45が消費する電力値との関係から、周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する。これにより、基板温度の制御と、波長可変フィルタの屈折率の制御とを、容易に実現することができる。
【0055】
[第三の実施形態]
次に、本発明の第三の実施の形態について説明する。本実施形態では、光トランシーバがさらに周波数検出機能を備える場合について説明する。
【0056】
まず、
図10に、本実施形態による光トランシーバ70の構成例を示す。光トランシーバ70は、光受信器61と光送信モジュール72とを含む。光受信器61は、光を受信する。光送信モジュール72は、変調された送信光を出力する。
【0057】
次に、
図11に、本実施形態の光送信モジュール72の構成例を示す。光送信モジュール72は、変調器63と光源装置50とを含む。光源装置50は、送信光を出力する。変調器63は、光源装置50から出力された送信光を変調して出力する。
【0058】
次に、
図12に、本実施形態の光源装置50の構成例を示す。光源装置50は、制御装置30と光源41と基板温度測定部42と筐体温度測定部43と基板温度制御部44とフィルタ加熱部45とを含む。また、光源装置50は、さらに、周波数検出部56(周波数検出手段)および周波数検出用フィルタ加熱部58(周波数検出用フィルタ加熱手段)を含む。光源41、基板温度測定部42、筐体温度測定部43、基板温度制御部44およびフィルタ加熱部45については、第二の実施形態と同様のため、説明を省略する。制御装置30については、後述する。
【0059】
周波数検出部56は、部分反射ミラー415から出力される送信光の周波数を検出する。そして、周波数検出部56は、検出された周波数の情報を制御装置30へ出力する。本実施形態では、周波数検出部56は、周波数検出用波長可変フィルタ57を用いて送信光の周波数を検出する。周波数検出用波長可変フィルタ57は、光源41が設けられている基板に設けられる。
【0060】
たとえば、周波数検出部56は、周波数検出用波長可変フィルタ57に入力される光の強度(PD1)に対する周波数検出用波長可変フィルタ57から出力される光の強度(PD2)の割合と、周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性とに基づいて、送信光の周波数を検出することができる。以降、PD1に対するPD2の割合を、入出力比とよぶ。透過特性は、送信光の周波数と入出力比との関係の特性である。具体的には、周波数検出部56は、PD1とPD2とを測定し、入出力比を算出する。そして、周波数検出部56は、基準温度における周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性の情報を参照して、入出力比に対応する周波数を送信光の周波数として検出する。このようにして、周波数検出部56は送信光の周波数を検出することができる。なお、筐体温度が基準温度である場合における周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性の情報は、記憶部(不図示)に記憶されている。
【0061】
周波数検出用フィルタ加熱部58は、周波数検出用波長可変フィルタ57の温度を制御する。周波数検出用フィルタ加熱部58は、たとえば、発熱体である。周波数検出用フィルタ加熱部58は、光源41が設けられている基板に設けられる。なお、以降、周波数検出用フィルタ加熱部58の温度を周波数検出用フィルタ温度とよぶ。
【0062】
次に、
図13に、本実施形態の制御装置30の構成例を示す。制御装置30は、温度受信部21と制御部32とを含む。
【0063】
温度受信部21は、基板温度を示す情報である基板温度情報を、基板温度測定部42から受信する。また、温度受信部21は、筐体温度を示す情報である筐体温度情報を、筐体温度測定部43から受信する。
【0064】
制御部32は、第二の実施形態と同様に、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源41が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御(周波数補正)する。
【0065】
また、制御部32は、周波数検出部56が検出した周波数の情報を、外部モニタ(不図示)などへ出力する。
【0066】
また、制御部32は、さらに、筐体温度に基づいて、周波数検出部56で検出される周波数が正しくなるように、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する。
【0067】
基板温度制御部44やフィルタ加熱部45の位置や筐体の形状によって、基板には温度むらがある。さらに、制御部32によって基板温度による周波数補正が行われると、周波数補正による温度変化量にもむらが発生する。この温度変化量のむらによって、第一の波長可変フィルタ412の温度と周波数検出用波長可変フィルタ57の温度は、互いに異なる変化量で変化する。そのため、光源41から出力される送信光の周波数と、周波数検出部56によって検出される周波数との間に差が発生する。そこで、本実施形態の制御部32は、周波数検出部56で検出される周波数が正しくなるように、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する。
【0068】
周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率の具体的な制御方法について説明する。
【0069】
図14から
図16に、周波数検出用フィルタ温度の制御に関して、周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性の例を示す。グラフの横軸は、送信光の周波数と基準の周波数との差を示す。基準の周波数は、任意の周波数であってもよいし、所望の周波数であってもよい。ここでは、基準の周波数が任意の周波数であるとして説明する。また、グラフの縦軸は、PD1に対するPD2の割合(入出力比)を示す。
【0070】
図14は、筐体温度が基準温度である場合の周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性の例である。周波数検出部56は、この透過特性の情報に基づいて、送信光の周波数を検出する。
【0071】
図15は、筐体温度が基準温度から変化した場合の周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性の例である。これは、第二の実施形態で説明した周波数補正が行われる前の透過特性である。
図15では、実線矢印で示されるように、透過特性が右にシフトしている。また、破線矢印は、この場合の第一の波長可変フィルタ412の透過特性のシフト量を示す。このように、透過特性のシフト量は、周波数検出用波長可変フィルタ57と第一の波長可変フィルタ412とで異なる。
【0072】
図16は、周波数補正が行われた後の周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性の例である。第一の波長可変フィルタ412の透過特性は、周波数補正によって、筐体温度が基準温度である場合の透過特性の位置に戻る。しかし、周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性は、周波数補正によって筐体温度が変化したことによって、
図14の状態より左にシフトした状態になる。この状態では、周波数検出部56は送信光の周波数を正しく検出することができない。そのため、本実施形態の制御部32は、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御することによって、周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性を
図14の状態に戻す。
【0073】
制御部32は、たとえば、周波数検出用フィルタ加熱部58を制御して周波数検出用フィルタ温度を制御することによって、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する。なお、制御部32は、温度制御以外の方法で周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御してもよい。
【0074】
光源装置50は、たとえば、筐体温度と周波数検出用フィルタ加熱部58が消費する電力値との関係を示すルックアップテーブルを記憶する記憶部(不図示)を備えていてもよい。または、ルックアップテーブルは、筐体温度と周波数検出用フィルタ加熱部58への出力電圧との関係を示していてもよい。そして、制御部32は、ルックアップテーブルを参照して、筐体温度に基づいて、周波数検出用フィルタ加熱部58を制御する。
【0075】
より具体的には、調整者は、たとえば、光トランシーバ60の出荷前などに以下の作業を行い、ルックアップテーブルを光源装置50の記憶部に記憶させておく。
【0076】
たとえば、調整者は、テスト用の端末を使用して制御装置30を制御する。制御装置30は、テストモードでは、テスト用端末からの指示に応じて、周波数検出用フィルタ加熱部58を制御する。また、制御装置30は、第二の実施形態で説明した周波数補正を行う。周波数補正によって、送信光の周波数は、筐体温度が変化しても変わらない状態となる。また、制御装置30は、テストモードでは、筐体温度情報とPD1に対するPD2の割合(入出力比)を示す情報とをテスト用端末へ出力する。
【0077】
調整者は、まず、環境温度を変えることによって、筐体温度を基準温度から変える。そして、調整者は、周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性が、筐体温度が基準温度である場合の透過特性と同じになるように、テスト用端末から周波数検出用フィルタ加熱部58を制御する。そして、調整者は、透過特性が、基準温度における透過特性と同じになった場合の周波数検出用フィルタ加熱部58への電力値(または出力電圧)を、筐体温度と対応付けて、ルックアップテーブルとして光源装置50の記憶部に記憶させる。
【0078】
なお、ここまで、周波数検出部56で検出される周波数が正しくなるように、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する方法について説明した。しかし、制御部32は、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御するのではなく、正しい周波数を計算して、正しい周波数の情報を外部モニタ等へ出力してもよい。以降、正しい周波数を計算する方法について説明する。
【0079】
制御部32は、周波数検出部56から、周波数検出部56によって検出された周波数の情報を受信する。そして、筐体温度と、周波数検出部56によって検出された周波数とに基づいて、正しい周波数を計算する。
【0080】
なお、この方法の場合、光源装置50は、周波数検出用フィルタ加熱部58を含まなくてもよい。
【0081】
光源装置50は、たとえば、筐体温度と加算値の関係を示すルックアップテーブルを記憶する記憶部(不図示)を備えていてもよい。加算値は、周波数検出部56によって検出された周波数に対する加算値である。加算値は負の値であってもよい。そして、制御部32は、ルックアップテーブルを参照して、筐体温度に対応付けられている加算値を、周波数検出部56によって検出された周波数に加算することによって、正しい周波数を計算する。
【0082】
より具体的には、調整者は、たとえば、光トランシーバ60の出荷前などに以下の作業を行い、ルックアップテーブルを光源装置50の記憶部に記憶させておく。
【0083】
たとえば、調整者は、テスト用の端末を使用する。制御装置30は、テストモードでは、第二の実施形態で説明した周波数補正を行う。周波数補正によって、送信光の周波数は、筐体温度が変化しても変わらない状態となる。また、制御装置30は、テストモードでは、筐体温度情報と周波数検出部56で検出された周波数(または周波数)を示す情報とをテスト用端末へ出力する。
【0084】
調整者は、まず、環境温度を変えることによって、筐体温度を基準温度から変える。そして、調整者は、周波数検出部56で検出された周波数を、正しい周波数から減算した値を、筐体温度と対応付けて、ルックアップテーブルとして光源装置50の記憶部に記憶させる。
【0085】
また、制御部32は、周波数検出部56によって検出された周波数が所望の周波数(設定周波数)と異なっている場合に、第二の実施形態で説明した周波数補正に加えて、さらに、検出される周波数が所望の周波数となるように、基板温度を上下させる制御を行ってもよい。
【0086】
次に、
図17を用いて、本実施形態の制御装置30の動作フローの例を示す。
【0087】
温度受信部21は、基板温度を示す情報である基板温度情報を、基板温度測定部42から受信する。また、温度受信部21は、筐体温度を示す情報である筐体温度情報を、筐体温度測定部43から受信する(ステップS201)。
【0088】
制御部32は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源41が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する(ステップS202)。
【0089】
また、制御部32は、さらに、筐体温度情報に基づいて、周波数検出部56で検出される周波数が正しくなるように、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する(ステップS203)。または、制御部32は、筐体温度情報に基づいて、正しい周波数を計算する。
【0090】
以上で説明したように、本発明の第三の実施形態では、制御装置30は、温度受信部21および制御部32を含む。温度受信部21は、光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する。制御部32は、基板温度情報と筐体温度情報とに基づいて、光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、基板温度と、波長可変フィルタの屈折率とを制御する。基板温度と波長可変フィルタの屈折率とを制御することで、導波路や波長可変フィルタの屈折率が変化するので、送信光の周波数を調整することができる。そのため、環境温度が想定温度から大きく異なる環境でも、任意の発振周波数で送信光を発振させることが可能になる。
【0091】
また、本実施形態では、基板には、送信光の周波数検出のための波長可変フィルタである周波数検出用波長可変フィルタ57がさらに設けられる。また、制御部32は、周波数検出で検出される周波数が正しくなるように、筐体温度に基づいて、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する。周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御することによって、周波数検出用波長可変フィルタ57の透過特性を、筐体温度が基準温度である場合の透過特性(周波数検出に使用される透過特性)に合わせることができる。そのため、周波数検出で検出される周波数を正しくすることができる。
【0092】
また、本実施形態では、基板には、周波数検出用波長可変フィルタ57の温度を制御する周波数検出用フィルタ加熱部58がさらに設けられる。また、制御部32は、周波数検出用フィルタ加熱部58を制御することによって、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率を制御する。そのため、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率の制御を容易に実現することができる。
【0093】
また、本実施形態の制御部32は、筐体温度と周波数検出用フィルタ加熱部58が消費する電力値との関係から、周波数検出用フィルタ加熱部58を制御する。そのため、周波数検出用波長可変フィルタ57の屈折率の制御を容易に実現することができる。
【0094】
また、本実施形態では、基板には、送信光の周波数検出のための波長可変フィルタである周波数検出用波長可変フィルタ57がさらに設けられる。また。制御部32は、筐体温度と周波数検出で検出された周波数とから正しい周波数を計算して出力する。そのため、周波数検出の結果として、正しい周波数を出力することができる。
【0095】
また、本実施形態の制御部32は、筐体温度と、周波数検出で検出された周波数への加算値との関係から、正しい周波数を計算する。そのため、正しい周波数の計算を、容易に実現することができる。
【0096】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0097】
(付記1)
波長可変フィルタを含む光源の制御装置であって、
前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信する温度受信手段と、
前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する制御手段と
を備える制御装置。
【0098】
(付記2)
前記制御手段は、前記光源に含まれている二以上の複数の前記波長可変フィルタのうち、いずれか一つの前記波長可変フィルタの屈折率を制御する、
付記1に記載の制御装置。
【0099】
(付記3)
前記基板には、前記基板温度を変化させる基板温度制御手段と、前記波長可変フィルタの温度を変化させるフィルタ加熱手段とが設けられ、
前記制御手段は、前記基板温度制御手段を制御することによって前記基板温度を制御し、前記フィルタ加熱手段を制御することによって前記波長可変フィルタの屈折率を制御する、
付記1または付記2に記載の制御装置。
【0100】
(付記4)
前記制御手段は、前記基板温度と前記筐体温度とに対する、前記基板温度制御手段および前記フィルタ加熱手段が消費する電力値との関係から、前記送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する、
付記3に記載の制御装置。
【0101】
(付記5)
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタがさらに設けられ、
前記制御手段は、さらに、前記周波数検出で検出される周波数が正しくなるように、前記筐体温度に基づいて、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する
付記1から付記4のいずれかに記載の制御装置。
【0102】
(付記6)
前記基板には、前記周波数検出用波長可変フィルタの温度を制御する周波数検出用フィルタ加熱手段がさらに設けられ、
前記制御手段は、前記周波数検出用フィルタ加熱手段を制御することによって、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する
付記5に記載の制御装置。
【0103】
(付記7)
前記制御手段は、前記筐体温度と前記周波数検出用フィルタ加熱手段が消費する電力値との関係から、前記周波数検出用フィルタ加熱手段を制御する
付記6に記載の制御装置。
【0104】
(付記8)
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタがさらに設けられ、
前記制御手段は、さらに、前記筐体温度と前記周波数検出で検出された周波数とから正しい周波数を計算して出力する
付記1から付記4のいずれかに記載の制御装置。
【0105】
(付記9)
前記制御手段は、前記筐体温度と、前記周波数検出で検出された周波数への加算値との関係から、正しい周波数を計算する
付記8に記載の制御装置。
【0106】
(付記10)
付記1から付記9のいずれかに記載の制御装置と、
前記光源と
を備える光源装置。
【0107】
(付記11)
付記10に記載の光源装置と、
前記送信光を変調する変調器と
を備える光送信モジュール。
【0108】
(付記12)
付記11に記載の光送信モジュールと、
光信号を受信する光受信器と
を備える光トランシーバ。
【0109】
(付記13)
波長可変フィルタを含む光源の制御方法であって、
前記光源が設けられている基板の温度である基板温度を示す情報である基板温度情報と、前記基板を収容する筐体の温度である筐体温度を示す情報である筐体温度情報とを受信し、
前記基板温度情報と前記筐体温度情報とに基づいて、前記光源が出力する送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する、
制御方法。
【0110】
(付記14)
前記光源に含まれている二以上の複数の前記波長可変フィルタのうち、いずれか一つの前記波長可変フィルタの屈折率を制御する、
付記13に記載の制御方法。
【0111】
(付記15)
前記基板には、前記基板温度を変化させる基板温度制御手段と、前記波長可変フィルタの温度を変化させるフィルタ加熱手段とが設けられ、
前記基板温度制御手段を制御することによって前記基板温度を制御し、前記フィルタ加熱手段を制御することによって前記波長可変フィルタの屈折率を制御する、
付記13または付記14に記載の制御方法。
【0112】
(付記16)
前記基板温度と前記筐体温度とに対する、前記基板温度制御手段および前記フィルタ加熱手段が消費する電力値との関係から、前記送信光の周波数が所望の周波数となるように、前記基板温度と、前記波長可変フィルタの屈折率とを制御する、
付記15に記載の制御方法。
【0113】
(付記17)
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタがさらに設けられ、
さらに、前記周波数検出で検出される周波数が正しくなるように、前記筐体温度に基づいて、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する
付記13から付記16のいずれかに記載の制御方法。
【0114】
(付記18)
前記基板には、前記周波数検出用波長可変フィルタの温度を制御する周波数検出用フィルタ加熱手段がさらに設けられ、
前記周波数検出用フィルタ加熱手段を制御することによって、前記周波数検出用波長可変フィルタの屈折率を制御する
付記17に記載の制御方法。
【0115】
(付記19)
前記筐体温度と前記周波数検出用フィルタ加熱手段が消費する電力値との関係から、前記周波数検出用フィルタ加熱手段を制御する
付記18に記載の制御方法。
【0116】
(付記20)
前記基板には、前記送信光の周波数検出のための周波数検出用波長可変フィルタがさらに設けられ、
さらに、前記筐体温度と前記周波数検出で検出された周波数とから正しい周波数を計算して出力する
付記13から付記16のいずれかに記載の制御方法。
【0117】
(付記21)
前記筐体温度と、前記周波数検出で検出された周波数への加算値との関係から、正しい周波数を計算する
付記20に記載の制御方法。
【0118】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0119】
10、20、30 制御装置
11、21 温度受信部
12、22、32 制御部
40、50 光源装置
41 光源
42 基板温度測定部
43 筐体温度測定部
44 基板温度制御部
45 フィルタ加熱部
56 周波数検出部
57 周波数検出用波長可変フィルタ
60、70 光トランシーバ