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  • 特許-超硬合金 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】超硬合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 29/08 20060101AFI20250611BHJP
   C22C 1/051 20230101ALI20250611BHJP
   C22C 29/02 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
C22C29/08
C22C1/051 G
C22C29/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024513342
(86)(22)【出願日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2023035011
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 保樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 好博
(72)【発明者】
【氏名】パサート アノンサック
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-037160(JP,A)
【文献】米国特許第06514456(US,B1)
【文献】国際公開第2011/002008(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178484(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0345589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/051,29/02,29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で89体積%以上含み、
前記超硬合金は、前記結合相を1.8体積%以上20.0体積%以下含み、
前記結合相は、コバルトを含み、
前記超硬合金は、コバルトを1.0質量%以上含み、
前記結合相のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である、超硬合金。
【請求項2】
前記百分率(H2/H1)×100は、50%以上である、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項3】
前記硬度H1は、7.0GPa以上である、請求項1または請求項2に記載の超硬合金。
【請求項4】
前記結合相は、第1元素を更に含み、
前記第1元素は、珪素、リン、ゲルマニウム、スズ、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群より選択される少なくとも1種の元素である、請求項1または請求項に記載の超硬合金。
【請求項5】
前記結合相において、前記第1元素の質量M1およびコバルトの質量M2の合計M1+M2に対する、前記第1元素の質量M1の百分率{M1/(M1+M2)}×100は、1%以上6%以下である、請求項4に記載の超硬合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超硬合金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金が、切削工具の素材に利用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-131769号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の超硬合金は、
複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
該超硬合金は、該炭化タングステン粒子および該結合相を合計で89体積%以上含み、
該超硬合金は、該結合相を1.8体積%以上20.0体積%以下含み、
該結合相は、コバルトを含み、
該超硬合金は、コバルトを1.0質量%以上含み、
該結合相のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の一実施形態の超硬合金の一断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
近年、切削加工において被削材の難削化が進み、切削工具の使用条件は過酷になっている。このため、切削工具の基材として用いられる超硬合金に対しても種々の特性の向上が求められている。特に高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金が求められている。
【0007】
そこで、本開示は、特に高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金を提供することを目的とする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、特に高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金を提供することが可能である。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の超硬合金は、
複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、
前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で89体積%以上含み、
前記超硬合金は、前記結合相を1.8体積%以上20.0体積%以下含み、
前記結合相は、コバルトを含み、
前記超硬合金は、コバルトを1.0質量%以上含み、
前記結合相のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である。
【0010】
本開示によれば、特に高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金を提供することができる。
【0011】
(2)上記(1)において、前記百分率(H2/H1)×100は、50%以上であってもよい。これによって、特に高硬度材の高速加工においても、切削工具の工具寿命をより延長することを可能とする超硬合金を提供することができる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、前記硬度H1は、7.0GPa以上であってもよい。これによって、特に高硬度材の高速加工においても、切削工具の工具寿命をより延長することを可能とする超硬合金を提供することができる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記結合相は、第1元素を更に含み、
前記第1元素は、珪素、リン、ゲルマニウム、スズ、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群より選択される少なくとも1種の元素であってもよい。これによって、特に高硬度材の高速加工においても、切削工具の工具寿命をより延長することを可能とする超硬合金を提供することができる。
【0014】
(5)上記(4)において、前記結合相において、前記第1元素の質量M1およびコバルトの質量M2の合計M1+M2に対する、前記第1元素の質量M1の百分率{M1/(M1+M2)}×100は、1%以上6%以下であってもよい。これによって、特に高硬度材の高速加工においても、切削工具の工具寿命をより延長することを可能とする超硬合金を提供することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)の切削工具の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0016】
本開示において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0017】
本開示において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるべきではない。
【0018】
[実施形態1:超硬合金]
本開示の一実施形態に係る超硬合金について、図1を用いて説明する。
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)は、
複数の炭化タングステン粒子1と、結合相2と、を備える超硬合金3であって、
該超硬合金3は、該炭化タングステン粒子1および該結合相2を合計で89体積%以上含み、
該超硬合金3は、該結合相2を1.8体積%以上20.0体積%以下含み、
該結合相2は、コバルトを含み、
該超硬合金3は、コバルトを1.0質量%以上含み、
該結合相2のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である。
【0019】
本開示によれば、特に高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とする超硬合金3を提供することができる。その理由は、以下の通りと推察される。
【0020】
本実施形態の超硬合金3は、複数の炭化タングステン粒子1(以下、「WC粒子1」とも記す。)と、結合相2と、を備え、超硬合金3のWC粒子1および結合相2の合計含有率は89体積%以上である。これによると、超硬合金3は高い硬度および強度を有し、該超硬合金3を用いた切削工具は、優れた耐摩耗性および耐欠損性を有することができる。
【0021】
実施形態1の超硬合金3は、結合相2を1.8体積%以上20.0体積%以下含み、結合相2は、コバルトを含み、該超硬合金3は、コバルトを1.0質量%以上含む。さらに、結合相2のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上であり、25℃の条件下(言い換えれば、室温条件下)から600℃の条件下(言い換えれば、高温条件下)に変化することに伴う「超硬合金3の硬度の低下」を抑制することができる。これによると、該「超硬合金3の硬度の低下」が抑制され、該超硬合金3を用いた切削工具は、特に高硬度材の高速加工においても、優れた耐摩耗性を有することができる。
【0022】
≪超硬合金の組成≫
超硬合金3は、炭化タングステン粒子1および結合相2を合計で89体積%以上含む。これによって、超硬合金3の硬度を高めることができる。超硬合金3は、炭化タングステン粒子1および結合相2を合計で90体積%以上含んでもよく、91体積%以上含んでもよく、92体積%以上含んでもよい。超硬合金3において、炭化タングステン粒子1および結合相2の合計含有率の上限は、例えば100体積%以下であってもよく、99体積%以下であってもよく、98体積%以下であってもよい。超硬合金3は、炭化タングステン粒子1および結合相2を合計で90体積%以上100体積%以下含んでもよく、91体積%以上100体積%以下含んでもよく、92体積%以上100体積%以下含んでもよい。
【0023】
超硬合金3は、結合相2を1.8体積%以上20.0体積%以下含む。これによって、超硬合金3において、硬度および靱性を高めることができる。超硬合金3における結合相2の含有率の下限は、2.0体積%以上であってもよく、3.0体積%以上であってもよく、4.0体積%以上であってもよい。超硬合金3における結合相2の含有率の上限は、19.0体積%以下であってもよく、18.0体積%以下であってもよく、17.0体積%以下であってもよい。超硬合金3は、結合相2を2.0体積%以上19.0体積%以下含んでもよく、結合相2を3.0体積%以上18.0体積%以下含んでもよく、結合相2を4.0体積%以上17.0体積%以下含んでもよい。
【0024】
実施形態1の超硬合金3は、複数の炭化タングステン粒子1と、結合相2とからなることができる。本実施形態の超硬合金3は、炭化タングステン粒子1および結合相2に加えて、他の相(図示なし)を含むことができる。他の相としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびモリブデン(Mo)からなる群より選択される少なくとも1つの第2元素を含む炭化物、窒化物または炭窒化物が挙げられる。他の相の組成は、例えば、TiCN、TaC、NbC、ZrC、HfC、MoCである。
【0025】
実施形態1の超硬合金3は、炭化タングステン粒子1と、結合相2と、他の相とからなることができる。超硬合金3の他の相の含有率は、本開示の効果を損なわない範囲において許容される。例えば、超硬合金3の他の相の含有率は、0体積%超20体積%以下であってもよく、0体積%超18体積%以下であってもよく、0体積%超16体積%以下であってもよい。この場合、超硬合金3の炭化タングステン粒子1および結合相2の合計含有率は、80体積%以上100体積%未満であってもよく、82体積%以上100体積%未満であってもよく、84体積%以上100体積%未満であってもよい。
【0026】
実施形態1の超硬合金3は、不純物を含むことができる。該不純物としては、例えば、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、酸素(O)、硫黄(S)が挙げられる。超硬合金3の不純物の含有率は、本開示の効果を損なわない範囲において許容される。例えば、超硬合金3の不純物の含有率は、0質量%以上0.1質量%未満であってもよい。超硬合金3の不純物の含有率は、ICP発光分析(Inductively Coupled Plasma Emission Spectroscopy(測定装置:島津製作所「ICPS-8100」(商標))により測定される。
【0027】
超硬合金3における炭化タングステン粒子1の含有率[体積%]および超硬合金3における結合相2の含有率[体積%]の測定方法は以下の通りである。
【0028】
(A1)超硬合金3の任意の位置を切り出して断面を露出させる。該断面をクロスセクションポリッシャ(日本電子社製)により鏡面加工する。
【0029】
(B1)超硬合金3の鏡面加工面に対して、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)によって分析を行い(装置:Carl Zeiss社製の「Gemini450」(商標))、超硬合金3に含まれる元素を特定する。
【0030】
(C1)超硬合金3の鏡面加工面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して反射電子像を得る。撮影画像の撮影領域は、超硬合金3の断面の中央部、すなわち、超硬合金3の表面近傍などバルク部分とは明らかに性状が異なる部分を含まない位置(撮像領域がすべて超硬合金3のバルク部分となる位置)に設定する。観察倍率は5000倍である。測定条件は、加速電圧3kV、電流値2nA、ワーキングディスタンス(WD)5mmである。
【0031】
(D1)上記(C1)の撮影領域に対して、SEM付帯のエネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用いて分析を行い、該撮影領域における上記(B1)で特定された元素の分布を特定し、元素マッピング像を得る。
【0032】
(E1)上記(C1)で得られた反射電子像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウェア(OpenCV、SciPy)を用いて二値化処理を行う。二値化処理後の画像において、炭化タングステン粒子1は白色で示され、結合相2は灰色~黒色で示される。なお、二値化の閾値はコントラストにより変化するため、画像ごとに設定する。
【0033】
(F1)上記(D1)で得られた元素マッピング像と上記(E1)で得られた二値化処理後の画像とを重ねることにより、該二値化処理後の画像上で炭化タングステン粒子1および結合相2のそれぞれの存在領域を特定する。具体的には、二値化処理後の画像において白色で示され、元素マッピング像においてタングステン(W)および炭素(C)の存在する領域が、炭化タングステン粒子1の存在領域に該当する。二値化処理後の画像において灰色~黒色で示され、元素マッピング像においてコバルト(Co)の存在する領域が、結合相2の存在領域に該当する。
【0034】
(G1)上記二値化処理後の画像中に、24.9μm×18.8μmの矩形の1つの測定視野を設定する。上記画像解析ソフトウェアを用いて、該測定視野全体の面積を分母として炭化タングステン粒子1及び結合相2のそれぞれの面積百分率を測定する。
【0035】
(H1)上記(G1)の測定を、5つの互いに重複しない異なる測定視野において行う。本明細書において、5つの測定視野における炭化タングステン粒子1の面積百分率の平均が、超硬合金の炭化タングステン粒子1の含有率[体積%]に相当し、5つの測定視野における結合相2の面積百分率の平均が、超硬合金3の結合相2の含有率[体積%]に相当する。
【0036】
超硬合金3が炭化タングステン粒子1および結合相2に加えて、他の相を含む場合は、超硬合金3の他の相の含有率は、超硬合金3全体(100体積%)から、上記の手順で測定された炭化タングステン粒子1の含有率[体積%]および結合相2の含有率[体積%]を減ずることにより得ることができる。
【0037】
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金3の断面の切り出し箇所を任意に設定して、該断面上に上記(C1)に記載される撮影領域を任意に設定して、上記の手順に従い、超硬合金3の炭化タングステン粒子1の含有率および結合相2の含有率の測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、恣意的にはならないことが確認された。
【0038】
≪結合相≫
結合相2は、コバルトを含み、超硬合金3は、コバルトを1.0質量%以上含む。これによって、超硬合金3に優れた靱性を付与することができる。なお、結合相2は、コバルトを50質量%以上含んでもよく、60質量%以上含んでもよく、70質量%以上含んでもよく、80質量%以上含んでもよく、90質量%以上含んでもよく、95質量%以上含んでもよい。結合相2は、コバルトからなってもよい。また、結合相2は、コバルトおよび後述する第1元素からなってもよい。また、超硬合金3におけるコバルトは、結合相2にのみ存在してもよい。超硬合金3におけるコバルトの含有率の下限は、2.0質量%以上であってもよく、3.0質量%以上であってもよく、4.0質量%以上であってもよい。超硬合金3におけるコバルトの含有率の上限は、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、12質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。超硬合金3は、コバルトを1.0質量%以上20質量%以下含んでもよく、コバルトを2.0質量%以上15質量%以下含んでもよく、コバルトを3.0質量%以上12質量%以下含んでもよい。
【0039】
超硬合金3におけるコバルトの含有率の測定方法は、以下の通りである。先ず、上記の超硬合金3における炭化タングステン粒子1の含有率および結合相2の含有率の測定方法の(A1)~(C1)と同様の方法で、撮影領域を設定する。次に、該撮影領域に対して、SEM-EDXを用いて分析を行い、該撮影領域における上記(B1)で特定された元素の分布を特定し、元素マッピング像を得ると同時に、超硬合金3におけるコバルトの含有率を特定する。なお、「結合相2におけるコバルト含有率」の測定方法は、以下の通りである。先ず、上記の超硬合金3における炭化タングステン粒子1の含有率および結合相2の含有率の測定方法の(A1)~(F1)と同様の方法で、二値化処理後の画像上で結合相2の存在領域を特定する。次に、結合相2の存在領域に対して、SEM-EDXを用いて分析を行い、「結合相2におけるコバルト含有率」を測定する。また、「超硬合金3におけるコバルトは、結合相2にのみ存在すること」を特定する方法は、以下の通りである。先ず、上記の超硬合金3における炭化タングステン粒子1の含有率および結合相2の含有率の測定方法の(A1)~(F1)と同様の方法で、二値化処理後の画像上で、炭化タングステン粒子1の存在領域および結合相2の存在領域を特定する。次に、元素マッピング像と、炭化タングステン粒子1の存在領域および結合相2の存在領域とに基づいて、「超硬合金3におけるコバルトは、結合相2にのみ存在すること」を特定する。
【0040】
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金3の断面の切り出し箇所、上記(C1)に記載される撮影領域を任意に設定して、上記の手順に従い、上記測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、恣意的にはならないことが確認された。
【0041】
結合相2は、第1元素を更に含み、該第1元素は、珪素、リン、ゲルマニウム、スズ、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、および白金からなる群より選択される少なくとも1種の元素であってもよい。これによって、特に高硬度材の高速加工においても、切削工具の工具寿命をより延長することを可能とする超硬合金3を提供することができる。
【0042】
超硬合金3における第1元素の含有率は、0.01質量%以上1.0質量%以下であってもよい。これによって、結合相2は、より優れた硬度とより優れた靱性とを兼備することができる。なお、結合相2における第1元素の含有率は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。超硬合金3における第1元素は、結合相2にのみ存在してもよい。超硬合金3における第1元素の含有率の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.04質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。超硬合金3における第1元素の含有率の上限は、1.0質量%以下であってもよく、0.8質量%以下であってもよく、0.6質量%以下であってもよい。超硬合金3における第1元素の含有率は、0.04質量%以上0.8質量%以下であってもよく、0.1質量%以上0.6質量%以下であってもよい。
【0043】
超硬合金3における第1元素の含有率の測定方法は、以下の通りである。「コバルト」が「第1元素」に読み替えられる点を除いては、超硬合金3におけるコバルトの含有率の測定方法と同様の方法で実行される。なお、「結合相2における第1元素の含有率」の測定方法は、以下の通りである。「次に、・・・「結合相2における「コバルト」含有率」を測定する。」が「次に、・・・「結合相2における「第1元素」含有率」を測定する。」に読み替えられる点を除いては、「結合相2におけるコバルト含有率」の測定方法と同様の方法で実行される。また、「超硬合金3における第1元素は、結合相2にのみ存在すること」を特定する方法は、以下の通りである。「次に、・・・「超硬合金3における「コバルト」は、結合相2にのみ存在すること」を特定する。」が「次に、・・・「超硬合金3における「第1元素」は、結合相2にのみ存在すること」を特定する。」に読み替えられる点を除いては、「超硬合金3におけるコバルトは、結合相2にのみ存在すること」を特定する方法と同様の方法で実行される。
【0044】
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金3の断面の切り出し箇所、上記(C1)に記載される撮影領域を任意に設定して、上記の手順に従い、上記測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、恣意的にはならないことが確認された。
【0045】
結合相2において、第1元素の質量M1およびコバルトの質量M2の合計M1+M2に対する、該第1元素の質量M1の百分率{M1/(M1+M2)}×100は、1%以上6%以下であってもよい。これによって、結合相2は、より優れた硬度とより優れた靱性とを兼備することができる為、特に高硬度材の高速加工においても、切削工具の工具寿命をより延長することを可能とする超硬合金3を提供することができる。ここで、第1元素の質量M1は、結合相が2種類以上の第1元素を含む場合は、全ての種類の第1元素の合計質量を意味する。該百分率{M1/(M1+M2)}×100の下限は、1%以上であってもよく、2%以上であってもよく、3%以上であってもよい。該百分率{M1/(M1+M2)}×100の上限は、6%以下であってもよく、5%以下であってもよく、4%以下であってもよい。該百分率{M1/(M1+M2)}×100は、2%以上5%以下であってもよく、3%以上4%以下であってもよい。
【0046】
上記百分率{M1/(M1+M2)}×100の測定方法は、以下の通りである。上記の超硬合金3における炭化タングステン粒子1の含有率および結合相2の含有率の測定方法の(A1)~(F1)と同様の方法で、二値化処理後の画像上で結合相2の存在領域を特定する。結合相2の存在領域に対して、SEM-EDXを用いて分析を行い、結合相2におけるコバルト含有率および第1元素含有率を測定し、これらに基づき、百分率{M1/(M1+M2)}×100を算出する。上記の測定を、5つの互いに重複しない異なる測定視野において行う。本明細書において、5つの測定視野における百分率{M1/(M1+M2)}×100の平均が、結合相2における「百分率{M1/(M1+M2)}×100」に相当する。
【0047】
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、超硬合金3の断面の切り出し箇所、上記(C1)に記載される撮影領域を任意に設定して、上記の手順に従い、百分率{M1/(M1+M2)}×100の測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、恣意的にはならないことが確認された。
【0048】
<結合相の硬度>
結合相2のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である。これによって、25℃の条件下(言い換えれば、室温条件下)から600℃の条件下(言い換えれば、高温条件下)に変化することに伴う「超硬合金3の硬度の低下」を抑制することができる。該百分率(H2/H1)×100の下限は、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。該百分率(H2/H1)×100の上限は、85%以下であってもよく、80%以下であってもよく、75%以下であってもよく、61%以下であってもよい。該百分率(H2/H1)×100は、25%以上85%以下であってもよく、50%以上80%以下であってもよく、60%以上75%以下であってもよい。
【0049】
硬度H1は、7.0GPa以上であってもよい。これによって、超硬合金3は、より優れた耐摩耗性を有することができる。硬度H1の下限は、7.0GPa以上であってもよく、7.1GPa以上であってもよく、7.2GPa以上であってもよい。硬度H1の上限は、8.2GPa以下であってもよく、8.0GPa以下であってもよく、7.8GPa以下であってもよい。硬度H1は、7.0GPa以上8.2GPa以下であってもよく、7.1GPa以上8.0GPa以下であってもよく、7.2GPa以上7.8GPa以下であってもよい。
【0050】
硬度H2は、1.8GPa以上であってもよい。これによって、超硬合金3は、より優れた耐摩耗性を有することができる。硬度H2の下限は、1.8GPa以上であってもよく、1.9GPa以上であってもよく、2.0GPa以上であってもよい。硬度H2の上限は、4.0GPa以下であってもよく、3.9GPa以下であってもよく、3.7GPa以下であってもよい。硬度H2は、1.8GPa以上4.0GPa以下であってもよく、1.9GPa以上3.9GPa以下であってもよく、2.0GPa以上3.7GPa以下であってもよい。
【0051】
上記硬度H1GPaおよび上記硬度H2GPaは、ナノインデンター法(Bruker社製の「Hysitron TI 980 トライボインデンター」)により測定される。該ナノインデンター法は、ISO14577に準拠した方法で、測定荷重は0.5mNであり、負荷時間は0.1秒であり、荷重保持時間は0.1秒であり、除荷時間は0.1秒である条件下で実行される。測定対象は、クロスセッションポリッシャ(CP)加工装置(日本電子株式会社製の「IB-19500CP 断面試料作製装置」(商標))を用いて、超硬合金3の表面を研磨することにより露出させた任意の計10個の結合相2のそれぞれである。25℃の条件下で測定された、計10個の結合相2のそれぞれの硬度の平均値を、上記硬度H1GPaとする。また、600℃の条件下で測定された、計10個の結合相2のそれぞれの硬度の平均値を、上記硬度H2GPaとする。
【0052】
出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、10個の結合相2を任意に設定して、結合相2の硬度の測定を複数回行っても、測定結果のばらつきは少なく、恣意的にはならないことが確認された。
【0053】
≪炭化タングステン粒子≫
実施形態1において、炭化タングステン粒子1は、「純粋なWC粒子(不純物元素が一切含有されないWC、不純物元素の含有量が検出限界未満であるWCも含む。)」および「本開示の効果を損なわない限りにおいて、その内部に不純物元素が意図的あるいは不可避的に含有されるWC粒子」の少なくともいずれかを含む。炭化タングステン粒子の不純物の含有率(不純物を構成する元素が2種類以上の場合は、それらの合計含有率)は、0.1質量%未満である。炭化タングステン粒子の不純物元素の含有率は、ICP発光分析(Inductively Coupled Plasma Emission Spectroscopy、測定装置:株式会社島津製作所製の「ICPS-8100」(商標))により測定される。
【0054】
実施形態1において、炭化タングステン粒子1の平均粒径は特に制限されない。炭化タングステン粒子1の平均粒径は、例えば、0.5μm以上3μm以下とすることができる。実施形態1の超硬合金3は、炭化タングステン粒子1の平均粒径によらず、長い工具寿命を有することができることが確認されている。
【0055】
≪超硬合金の用途≫
本実施形態の超硬合金3は、切削工具に用いられ得る。該切削工具としては、例えば、汎用加工用の切削工具が挙げられる。より具体的には、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ等の切削工具が挙げられる。
【0056】
[実施形態2:超硬合金の製造方法]
本実施形態の超硬合金は、原料粉末の準備工程、混合工程、成型工程、焼結工程、第1冷却工程、加熱工程、HIP(Hot Isostatic Pressing:熱間等方圧加圧法)工程、および第2冷却工程を前記の順で行うことにより製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0057】
<準備工程>
準備工程は、超硬合金を構成する材料の原料粉末を準備する工程である。原料粉末としては、炭化タングステン粉末(以下、「WC粉末」とも記す)およびコバルト(Co)粉末が挙げられる。これらの原料粉末に加えて、第1元素粉末、炭化ニオブ(NbC)粉末、炭化タンタル(TaC)粉末、炭窒化チタン(TiCN)粉末、および炭化ジルコニウム(ZrC)粉末などを準備することができる。これらの原料粉末は、市販のものを用いることができる。これらの原料粉末の平均粒径は特に制限されず、例えば、0.5~2μmとすることができる。原料粉末の平均粒径とは、FSSS(Fisher Sub-Sieve Sizer)法により測定される平均粒径を意味する。該平均粒径は、Fisher Scientific社製の「Sub-Sieve Sizer モデル95」(商標)を用いて測定される。
【0058】
<混合工程>
混合工程は、準備工程で準備した各原料粉末を所定の割合で混合する工程である。混合工程により、各原料粉末が混合された混合粉末が得られる。各原料粉末の混合割合は、狙いとする超硬合金の組成に応じて適宜調整する。原料粉末として第1元素粉末を用いてもよい。これによって、第1元素が結合相中に十分に固溶される関係で、超硬合金に対し、所望の「結合相のナノインデンター法で測定される25℃での硬度」をより備えさせ易くなる。炭化タングステン粒子の含有率と結合相の含有率との合計を所望の範囲内とする観点で、混合粉末において、WC粉末、Co粉末、および第1元素粉末以外の粉末の合計含有率は、5質量%未満であってもよい。各原料粉末の仕込量を適宜調整することにより、結合相の含有率とWC粒子の含有率とのそれぞれを所望の範囲内とすることができる。
【0059】
各原料粉末の混合は、アトライター、ボールミル、およびビーズミル等の従来公知の混合方法を用いることができる。混合条件も従来公知の条件を用いることができる。混合時間は、例えば、2時間以上20時間以下とすることができる。
【0060】
混合工程の後、必要に応じて混合粉末を造粒してもよい。混合粉末を造粒することで、後述する成形工程の際にダイまたは金型へ混合粉末を充填し易い。造粒には、公知の造粒方法が適用でき、例えば、スプレードライヤー等の市販の造粒機を用いることができる。
【0061】
<成形工程>
成形工程は、混合工程で得られた混合粉末を切削工具用の形状に成形して、成形体を得る工程である。成形工程における成形方法および成形条件は、一般的な方法および条件を採用すればよく、特に制限されない。
【0062】
<焼結工程>
焼結工程は、成形工程で得られた成形体を焼結して、超硬合金中間体を得る工程である。本実施形態における焼結条件は、以下の通りである。成形体を1360℃まで加熱して、1360℃で1時間保持する。
【0063】
<第1冷却工程>
第1冷却工程は、超硬合金中間体を冷却する工程である。より具体的には、超硬合金中間体を1000℃まで冷却する。冷却速度は、特に制限されないが、例えば20℃/分であり得る。
【0064】
<加熱工程>
加熱工程は、超硬合金中間体を加熱する工程である。より具体的には、加熱の温度は、1200℃であり、該温度の保持時間は、0.25時間である。
【0065】
<HIP工程>
HIP工程は、超硬合金中間体に対して、HIP処理を行う工程である。本実施形態におけるHIP工程の条件は、以下の通りである。超硬合金中間体を、圧力が100MPaである条件下で、2時間保持する。
【0066】
<第2冷却工程>
第2冷却工程は、超硬合金中間体を冷却する工程である。より具体的には、超硬合金中間体を800℃まで冷却する。冷却速度は、20℃/分である。これによって、実施形態1の超硬合金を得ることができる。
【0067】
<本実施形態の超硬合金の製造方法の特徴>
本実施形態において焼結工程は、成形体を1360℃まで加熱して、1360℃で1時間保持することにより実行される。さらに、第1冷却工程は、超硬合金中間体を1000℃まで冷却することにより実行される。さらに、加熱工程は、温度が1200℃であり、且つ保持時間が0.25時間である条件下で実行される。さらに、HIP工程は、圧力が100MPaであり、且つ時間が2時間である条件下で実行される。さらに、第2冷却工程は、800℃までの冷却速度を20℃/分とすることにより実行される。これらの工程によって、結合相のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である、超硬合金を製造することができる。このような焼結条件、第1冷却工程、加熱工程、HIP工程、および第2冷却工程によって、本開示の超硬合金を実現できることは、本発明者らが鋭意検討の結果、新たに見いだしたものである。
【0068】
[付記1]
実施形態1の超硬合金において、ナノインデンター法は、ISO14577に準拠した方法で、測定荷重は0.5mNであり、負荷時間は0.1秒であり、荷重保持時間は0.1秒であり、除荷時間は0.1秒である条件下で実行され得る。
【実施例
【0069】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0070】
≪超硬合金の作製≫
以下の工程を以下の順で実行することにより、試料1~20、101~114に係る超硬合金を作製した。
【0071】
<準備工程>
原料粉末として、WC粉末(平均粒径:1μm)、Co粉末(平均粒径:1μm)、第1元素粉末、およびTiCN粉末(平均粒径:1μm)を準備した。第1元素粉末としては、Si粉末(平均粒径:1μm)、Ge粉末(平均粒径:1μm)、Sn粉末(平均粒径:1μm)、Os粉末(平均粒径:1μm)、Ir粉末(平均粒径:1μm)、Pt粉末(平均粒径:1μm)、P粉末(平均粒径:1μm)、Re粉末(平均粒径:1μm)、およびRu粉末(平均粒径:1μm)を準備した。
【0072】
<混合工程>
各原料粉末を表1および表2に記載の割合で、アトライターを用いて10時間混合することにより、混合粉末を得た。
【0073】
<成形工程>
混合粉末をプレス成形あるいは押出成形することにより、丸棒形状の成形体を得た。
【0074】
<焼結工程>
成形体を、表1および表2に記載の温度まで加熱して、該温度の状態で表1および表2に記載の保持時間の間保持することにより、超硬合金中間体を得た。
【0075】
<第1冷却工程>
超硬合金中間体を、表3および表4に記載の温度まで冷却した。なお、「第1冷却工程」欄の「温度[℃]」欄において「-」と記載されている場合、「第1冷却工程」が実行されなかったことを意味する。
【0076】
<加熱工程>
超硬合金中間体に対し、表3および表4に記載の条件で加熱工程を実行した。なお、「加熱工程」欄における「温度[℃]」欄および「保持時間[時間]」欄のそれぞれにおいて「-」と記載されている場合、「加熱工程」が実行されなかったことを意味する。
【0077】
<HIP工程>
超硬合金中間体に対して、表3および表4に記載の条件でHIP処理を実行した。
【0078】
<第2冷却工程>
HIP工程後の超硬合金中間体に対し、表3および表4に記載の冷却速度で800℃まで冷却することにより、超硬合金を得た。
【0079】
以上の手順によって、試料1~20、101~114に係る超硬合金を作製した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
≪超硬合金の特性評価≫
<炭化タングステン粒子の含有率>
各試料に係る超硬合金について、炭化タングステン粒子の含有率を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「WC粒子の含有率[体積%]」の欄に記す。なお、表5および表6の「WC粒子の含有率[体積%]」の欄に「残」と記載されていることは、炭化タングステン粒子の含有率が、表5および表6の「合計[体積%]」の欄に記載された数値から、表5および表6の「結合相の含有率[体積%]」の欄に記載された数値を減ずることによって求められる数値と等しい数値であることを意味する。
【0087】
<結合相の含有率>
各試料に係る超硬合金について、結合相の含有率を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「結合相の含有率[体積%]」の欄に記す。
【0088】
<結合相の硬度>
各試料に係る超硬合金について、結合相の硬度H1を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「結合相の硬度H1[GPa]」の欄に記す。また、各試料に係る超硬合金について、結合相の硬度H2を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「結合相の硬度H2[GPa]」の欄に記す。
【0089】
<超硬合金におけるコバルトの含有率>
各試料に係る超硬合金について、超硬合金におけるコバルトの含有率を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「Co含有率[質量%]」の欄に記す。なお、各試料に係る超硬合金について、「超硬合金3におけるコバルトは、結合相2にのみ存在すること」が、実施形態1に記載の方法により確認された。
【0090】
<超硬合金における第1元素の含有率>
各試料に係る超硬合金について、超硬合金における第1元素の含有率を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「第1元素含有率[質量%]」の欄に記す。なお、各試料に係る超硬合金について、「第1元素含有率[質量%]」が0質量%でない場合において、「超硬合金3における第1元素は、結合相2にのみ存在すること」が、実施形態1に記載の方法により確認された。
【0091】
<{M1/(M1+M2)}×100>
各試料に係る超硬合金について、{M1/(M1+M2)}×100を実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果を、表5および表6の「{M1/(M1+M2)}×100[%]」の欄に記す。
【0092】
≪切削試験≫
先ず、各試料に係る超硬合金からなる丸棒を加工することによって、各試料に係る切削工具として、刃径φ8mmのエンドミル(GSXB20000型)を3つずつ作製した。次に、各試料のエンドミルを用いて、以下の切削条件にて切削を行い、該エンドミルに0.05mmの摩耗が生じるまでの切削距離を測定した。各試料に関し、3つのエンドミルのそれぞれの切削距離の平均値を算出することによって、切削長を得た。得られた結果をそれぞれ表5および表6の「切削長[m]」の欄に記す。なお、切削長が長いもの程、工具寿命が長いことを示す。
<切削条件>
被削材:SKD11(高硬度材)
切削速度Vc:250m/分
1刃当たりの送りFz:0.15mm/t
切込み深さAp:0.5mm
切削液:なし(Dry)
上記の切削条件は、高硬度材の高速加工に該当する。
【0093】
試料1~20に係る超硬合金は実施例に該当する。試料101~114に係る超硬合金は比較例に該当する。表5および表6の結果から、試料1~20に係る超硬合金は、試料101~114に係る超硬合金に比して、高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とすることが分かった。
【0094】
以上により、試料1~20に係る超硬合金は、高硬度材の高速加工用の切削工具の材料として用いられた場合においても、工具の長寿命化を可能とすることが分かった。
【0095】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
【0096】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 炭化タングステン粒子、2 結合相、3 超硬合金
【要約】
超硬合金は、複数の炭化タングステン粒子と、結合相と、を備える超硬合金であって、前記超硬合金は、前記炭化タングステン粒子および前記結合相を合計で89体積%以上含み、前記超硬合金は、前記結合相を1.8体積%以上20.0体積%以下含み、前記結合相は、コバルトを含み、前記超硬合金は、コバルトを1.0質量%以上含み、前記結合相のナノインデンター法で測定される25℃での硬度H1GPaに対する、600℃での硬度H2GPaの百分率(H2/H1)×100は、25%以上である、超硬合金。
図1