(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20250611BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250611BHJP
【FI】
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2024519152
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2022019508
(87)【国際公開番号】W WO2023214450
(87)【国際公開日】2023-11-09
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】中原 賢太
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-230351(JP,A)
【文献】特開平11-186331(JP,A)
【文献】特開2008-227336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の下面に設けられた第1の金属パターンと、前記絶縁層の上面に設けられた第2の金属パターンとを有する絶縁基板と、
前記第2の金属パターンに接合された半導体チップと、
前記絶縁基板の下に設けられ、上面に前記絶縁基板の外周に沿って溝が設けられた放熱板と、
前記溝に充填された第1のはんだ接合材と、
前記放熱板の前記上面及び前記第1のはんだ接合材の上に設けられ、前記放熱板の前記上面と前記第1の金属パターンを接合する第2のはんだ接合材とを備え、
前記第1のはんだ接合材と前記第2のはんだ接合材の種類が異なり、
前記第1のはんだ接合材の融点は前記第2のはんだ接合材の融点よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記放熱板の前記上面と前記第1の金属パターンの間隔をHとし、前記溝の底面と前記第1の金属パターンの間隔をLとして、L>2Hを満足することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップはワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
放熱板の上面に設けられた溝に第1のはんだ接合材を配置する工程と、
前記放熱板の前記上面及び前記第1のはんだ接合材の上に第2のはんだ接合材を配置する工程と、
絶縁層と、前記絶縁層の下面に設けられた第1の金属パターンと、前記絶縁層の上面に設けられた第2の金属パターンとを有する絶縁基板の外周に沿って前記溝が配置されるように前記絶縁基板を前記第2のはんだ接合材の上に載せ、前記第1のはんだ接合材と前記第2のはんだ接合材をリフローして前記放熱板の前記上面と前記第1の金属パターンを接合する工程と、
前記第2の金属パターンに半導体チップを接合する工程とを備え、
前記第1のはんだ接合材と前記第2のはんだ接合材の種類が異なり、
前記第1のはんだ接合材の融点は前記第2のはんだ接合材の融点よりも低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のはんだ接合材としてカットはんだを前記溝に沿って載せることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1のはんだ接合材としてペーストはんだを前記溝に沿って塗布することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パワーモジュールにおいて、放熱板の上に絶縁基板を接合する際にはんだ接合材が用いられる。はんだ接合材の熱疲労耐量向上を目的として、絶縁基板の外周部に沿って放熱板に溝を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溝にはんだ接合材を充填することで絶縁基板の外周部においてはんだ接合材を厚くすることができる。このため、半導体装置動作時に発生する熱ストレスと、絶縁基板及び半導体チップの応力によるはんだ接合材のクラック発生を抑制することができる。しかし、溝にはんだボイドが発生して半導体装置の信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は信頼性を向上することができる半導体装置及びその製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、絶縁層と、前記絶縁層の下面に設けられた第1の金属パターンと、前記絶縁層の上面に設けられた第2の金属パターンとを有する絶縁基板と、前記第2の金属パターンに接合された半導体チップと、前記絶縁基板の下に設けられ、上面に前記絶縁基板の外周に沿って溝が設けられた放熱板と、前記溝に充填された第1のはんだ接合材と、前記放熱板の前記上面及び前記第1のはんだ接合材の上に設けられ、前記放熱板の前記上面と前記第1の金属パターンを接合する第2のはんだ接合材とを備え、前記第1のはんだ接合材と前記第2のはんだ接合材の種類が異なり、前記第1のはんだ接合材の融点は前記第2のはんだ接合材の融点よりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、第1のはんだ接合材と第2のはんだ接合材として互いに種類が異なるものを用い、溝に充填される第1のはんだ接合材の融点が、第2のはんだ接合材の融点よりも低くなるようにする。従って、リフロー時に第1のはんだ接合材から溶け出すため、上方からの圧力によって第1のはんだ接合材内の気泡が溝から上方へ移動する。この結果、溝の内部のはんだボイドが減少するため、信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】実施の形態に係る放熱板と絶縁基板を示す平面図である。
【
図3】実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4】実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施の形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図2は、実施の形態に係る放熱板と絶縁基板を示す平面図である。絶縁基板1は、絶縁層1aと、絶縁層1aの下面に設けられた第1の金属パターン1bと、絶縁層1aの上面に設けられた第2の金属パターン1cとを有する。半導体チップ3が絶縁基板1の第2の金属パターン1cにはんだ接合材4により接合されている。放熱板5が絶縁基板1の下に設けられている。放熱板5の材質は例えば銅である。
【0010】
放熱板5の上面に絶縁基板1の外周に沿って溝6が設けられている。平面視で絶縁基板1は四角形であり、溝6は四角い枠状である。溝6の内周は平面視で絶縁基板1の外周よりも内側であり、溝6の外周は絶縁基板1の外周と一致するか又はそれよりも外側である。
【0011】
第1のはんだ接合材7が溝6に充填されている。第2のはんだ接合材8が放熱板5の上面及び第1のはんだ接合材7の上に設けられ、放熱板5の上面と第1の金属パターン1bを接合する。
【0012】
溝6に第1のはんだ接合材7を充填することで絶縁基板1の外周部においてはんだ接合材を厚くすることができる。このため、半導体装置動作時に発生する熱ストレスと、絶縁基板1及び半導体チップ3の応力によるはんだ接合材のクラック発生を抑制することができる。
【0013】
放熱板5の上面と第1の金属パターン1bの間隔をHとし、溝6の底面と第1の金属パターン1bの間隔をLとして、L>2Hを満足する。これにより、絶縁基板1の外周のはんだ接合材の厚みが従来の2倍となるため、応力を緩和してクラック発生を抑制することができる。また、半導体チップ3の下方のはんだ接合材の厚みは従来と変わらないため、放熱性能は低下しない。
【0014】
続いて、実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
図3,4は、実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3に示すように、第1のはんだ接合材7としてカットはんだを放熱板5の上面に設けられた溝6に沿って載せる。次に、
図4に示すように、第2のはんだ接合材8としてカットはんだを放熱板5の上面及び第1のはんだ接合材7に載せる。次に、絶縁基板1の外周に沿って溝6が配置されるように絶縁基板1を第2のはんだ接合材8の上に載せ、第1のはんだ接合材7と第2のはんだ接合材8をリフローして放熱板5の上面と第1の金属パターン1bを接合する。次に、第2の金属パターン1cに半導体チップ3を接合する。以上の工程により実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【0015】
図5,6は、実施の形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図である。
図5に示すように、第1のはんだ接合材7としてペーストはんだを溝6に沿って塗布する。次に、
図6に示すように、第2のはんだ接合材8としてカットはんだを放熱板5の上面及び第1のはんだ接合材7に載せる。その後の工程は上記と同様である。このように溝6に第1のはんだ接合材7を先に配置した後に第2のはんだ接合材8を載せることで、異なる材料のはんだ接合材を搭載することができる。
【0016】
本実施の形態では、第1のはんだ接合材7と第2のはんだ接合材8として互いに種類が異なるものを用い、溝6に充填される第1のはんだ接合材7の融点が、第2のはんだ接合材8の融点よりも低くなるようにする。従って、リフロー時に第1のはんだ接合材7から溶け出すため、上方からの圧力によって第1のはんだ接合材7内の気泡が溝6から上方へ移動する。この結果、溝6の内部のはんだボイドが減少するため、信頼性を向上することができる。なお、放熱板5の上の第2のはんだ接合材8のボイドは、リフロー後でも表面で確認できるため、外部からの手直しによって修正できる。
【0017】
なお、半導体チップ3は、珪素によって形成されたものに限らず、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成されたものでもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドである。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成された半導体チップは、耐電圧性及び許容電流密度が高いため、小型化できる。この小型化された半導体チップを用いることで、この半導体チップを組み込んだ半導体装置も小型化・高集積化できる。また、半導体チップの耐熱性が高いため、ヒートシンクの放熱フィンを小型化でき、水冷部を空冷化できるので、半導体装置を更に小型化できる。また、半導体チップの電力損失が低く高効率であるため、半導体装置を高効率化できる。
【符号の説明】
【0018】
1 絶縁基板、1a 絶縁層、1b 第1の金属パターン、1c 第2の金属パターン、3 半導体チップ、5 放熱板、6 溝、7 第1のはんだ接合材、8 第2のはんだ接合材