(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】螺旋形溶接部が形成された円筒型電池セル及びこれを含む電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/566 20210101AFI20250611BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20250611BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20250611BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20250611BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20250611BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20250611BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20250611BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20250611BHJP
【FI】
H01M50/566
B23K26/04
B23K26/21 P
H01M50/213
H01M50/516
H01M50/545
H01M50/55 201
H01M50/56
(21)【出願番号】P 2023554368
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 KR2022016306
(87)【国際公開番号】W WO2023075342
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0142324
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ス・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウ・キム
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-070950(JP,A)
【文献】特開2012-125829(JP,A)
【文献】特開2022-191139(JP,A)
【文献】特表2020-515004(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068353(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0183257(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0025848(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体を収納した電池ケースの上端にキャップアセンブリーが搭載されており、
前記電池ケースの上端は、前記キャップアセンブリーの外周辺を取り囲んで中心方向に折り曲げられたクリンピング部を形成しており、
前記クリンピング部は負極端子であり、前記キャップアセンブリーの中心部のトップキャップは正極端子であり、
前記負極端子及び前記正極端子のうちの少なくとも一方には不連続的螺旋形の溶接部が形成されて
おり、
前記不連続的螺旋形の溶接部は、ナノ秒パルスレーザーを、前記溶接部となる全体形状に沿って移動しつつ、重なり合うループ状の軌跡を描くように円運動させ、生成される溶接ラインのループ状の部分については、先溶接ラインと後溶接ラインとが重畳しないように、前記後溶接ラインが前記先溶接ラインと重なり合う予定の部分で不連続的なものとして形成された溶接部である、円筒型電池セル。
【請求項2】
前記不連続的螺旋形の溶接部で、
前記溶接ラインは重畳しないように形成されている、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項3】
前記不連続的螺旋形の溶接部は、熱影響部が重畳しないように形成されている、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項4】
前記不連続的螺旋形の溶接部は、
前記ナノ秒パルスレーザーによって形成されている、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項5】
前記負極端子に形成された不連続的螺旋形の溶接部は、
前記ナノ秒パルスレーザーを直線形に移動するとともに螺旋形に回転しながら溶接することによって形成されている、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項6】
前記正極端子に形成された不連続的螺旋形の溶接部は、
前記ナノ秒パルスレーザーを円形に移動するとともに螺旋形に回転しながら溶接することによって形成されている、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項7】
螺旋形に回転しながら
前記先溶接ラインと
前記後溶接ラインとが重畳しないように、
前記後溶接ラインが不連続的に形成されている、請求項5または6に記載の円筒型電池セル。
【請求項8】
前記不連続的螺旋形の溶接部で単位螺旋の間の間隔は、前記負極端子では単位螺旋の横幅と同じか又は前記単位螺旋の横幅よりも大きく、前記正極端子では前記単位螺旋の横幅よりも小さい、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項9】
前記不連続的螺旋形の溶接部には、バスバー、ワイヤ、または金属プレートが結合されている、請求項1に記載の円筒型電池セル。
【請求項10】
請求項1に記載の円筒型電池セルを含む電池モジュールであって、
複数の円筒型電池セルは、バスバー、ワイヤ、または金属プレートの結合によって直列及び並列に連結されている、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年10月25日付の韓国特許出願第2021-0142324号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は螺旋形溶接部が形成された円筒型電池セル及びこれを含む電池モジュールに関するものである。具体的には、円筒型電池セルをナノ秒パルスレーザーで溶接するとき、過溶接を防止するために螺旋形溶接部が形成された円筒型電池セル及びこれを含む電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0003】
充放電の可能なリチウム二次電池の安全性向上及び容量増加が早くなされるのに伴い、前記リチウム二次電池をエネルギー源として使用するデバイスの種類が増加している。
【0004】
例えば、前記リチウム二次電池は、多機能小型製品であるワイヤレスモバイル機器(wireless mobile device)または身体に着用するウェアラブル機器(wearable device)のエネルギー源として広範囲に使われているだけでなく、大気汚染を引き起こす既存のガソリン車両及びディーゼル車両に対する代案として提示される電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのエネルギー源や電力貯蔵装置(ESS)として使うための中大型電池パックとしても用いられている。
【0005】
前記リチウム二次電池は、電池ケースの形状によって、円筒形または角形の金属缶に電極組立体を内蔵している円筒型二次電池及び角型二次電池と、アルミニウムラミネートシートのパウチ形ケースに電極組立体を内蔵しているパウチ型二次電池とに分類される。そのうち、円筒型二次電池は相対的に容量が大きく構造的に安全であるという利点がある。
【0006】
前記中大型電池パックを製造するために、複数の円筒型電池セルを電気的に連結する過程が必要である。例えば、前記円筒型電池セルの正極端子及び負極端子にバスバーまたは金属プレートを結合するかワイヤボンディングを行うことで、複数の円筒型電池セルを電気的に連結することができる。
【0007】
このように、複数の円筒型電池セルの正極端子及び負極端子の間の電気的な連結のために、レーザー溶接法を使うことができる。前記レーザー溶接としては、CW(Continuous Wave)レーザー溶接、ミリ秒パルスレーザー溶接、マイクロ秒パルスレーザー溶接、及びナノ秒パルスレーザー溶接を使うことができる。
【0008】
一般的に、円筒型電池セルは、クリンピング部が負極端子として機能し、トップキャップが正極端子として機能する。この際、負極端子を介しての電気的連結のために、前記クリンピング部に直線形パターンまたは円形パターンに溶接を遂行している。ここで、CW(Continuous Wave)レーザー溶接、ミリ秒パルスレーザー溶接、またはマイクロ秒パルスレーザー溶接を主に使っているが、このような溶接方法は、溶接部に対する投入熱量が過度になることがあり、局部的に急激に熱伝導されることによってガスケットが損傷してしまうことがある。
【0009】
このように、ガスケットが損傷して変形すれば、元の機能である電解液の漏出防止が難しくなって円筒型電池セルの密封性能に深刻な影響を及ぼすことがあるだけでなく、安全性を確保するのにも問題になることがある。
【0010】
したがって、溶接部に対する投入熱量が相対的に低いナノ秒パルスレーザーを使うことが適切である。
【0011】
しかし、ナノ秒パルスレーザーはスポットのサイズが小さいので、他の溶接方式で使われた直線形パターンまたは円形パターンを使えば溶接性が低下し、溶接にかかる時間(タックタイム(Tack time))が長くて作業性が低下する問題がある。
【0012】
したがって、円筒型電池セルの正極端子及び負極端子に電気的連結のためのレーザー溶接を遂行するとき、過溶接を防止することで、ガスケットが損傷されることを最小化することができるとともに、溶接性を確保することができ、溶接時間を短縮することができる技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、円筒型電池セルの電極端子に対する溶接部で過溶接が発生することを防止することができるように、不連続的螺旋形溶接部が形成された円筒型電池セル及びこれを含む電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明による円筒型電池セルは、電極組立体を収納した電池ケースの上端にキャップアセンブリーが搭載され、前記電池ケースの上端は、前記キャップアセンブリーの外周辺を取り囲んで中心方向に折り曲げられたクリンピング部を形成し、前記クリンピング部は負極端子であり、前記キャップアセンブリーの中心部のトップキャップは正極端子であり、前記負極端子及び正極端子のうちの少なくとも一方には不連続的螺旋形の溶接部を形成することができる。
【0015】
前記螺旋形の溶接部において、溶接ラインは重畳しないように形成される。
【0016】
前記螺旋形溶接部は、熱影響部が重畳しないように形成することができる。
【0017】
前記溶接部は、ナノ秒パルスレーザーによって形成することができる。
【0018】
前記負極端子に形成される螺旋形の溶接部は、ナノ秒パルスレーザーを直線形に移動するとともに螺旋形に回転しながら溶接することによって形成することができる。
【0019】
前記正極端子に形成される螺旋形の溶接部は、ナノ秒パルスレーザーを円形に移動するとともに螺旋形に回転しながら溶接することによって形成することができる。
【0020】
このように、螺旋形に回転しながら先溶接ラインと後溶接ラインとが重畳しないように、後溶接ラインを不連続的に形成することができる。
【0021】
前記螺旋形溶接部で単位螺旋の間の間隔は、負極端子では単位螺旋の横幅と同じか、又は単位螺旋の横幅よりも大きく、正極端子では単位螺旋の横幅よりも小さくてもよい。
【0022】
前記螺旋形の溶接部には、バスバー、ワイヤまたは金属プレートを結合することができる。
【0023】
本発明は、前記円筒型電池セルを含む電池モジュールを提供し、複数の円筒型電池セルを、バスバー、ワイヤ、または金属プレートの結合によって直列及び並列に連結することができる。
【0024】
また、本発明は、前記課題の解決手段を多様に組み合わせた形態としても提供することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明による円筒型電池セルは、不連続的に形成される螺旋形溶接部によって熱重畳を最小化することができるので、溶接部で過溶接が発生することを防止することができる。
【0026】
また、前記螺旋形溶接部は熱影響部が重畳しないように形成されることで、素材の軟化領域が形成されることを防止することができるので、引張力が低下することを防止することができる。
【0027】
また、溶接部の面積を広く確保することができるので、溶接強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による円筒型電池セルの斜視図である。
【
図4】本発明による負極溶接部の熱影響部の写真である。
【
図5】スポット溶接を実施した溶接部の熱影響部の写真である。
【
図6】実施例1及び比較例2で製造された円筒型電池セルの溶接部の断面の写真である。
【
図7】実施例1で製造された円筒型電池セルの下部で空気を注入しながら観察した写真である。
【
図8】比較例2で製造された円筒型電池セルの空気注入前と空気注入後の状態を示す写真である。
【
図9】空気漏出実験用装置の模式図及び写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0030】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0031】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0032】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0033】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、またはA及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0034】
本発明を図面に基づいて詳細な実施例と一緒に説明する。
【0035】
【0036】
図1を参照すると、本発明による円筒型電池セル100は、電池ケース110の内部に電極組立体が収納され、電池ケース110の上端にキャップアセンブリーが搭載されている。電池ケース110の上端はキャップアセンブリーの外周辺を取り囲んで中心方向に折り曲げられたクリンピング部120を形成する。
【0037】
クリンピング部120は負極端子になり、キャップアセンブリーの中心部のトップキャップ130は正極端子になり、前記負極端子及び前記正極端子に不連続的螺旋形の負極溶接部141及び連続的螺旋形の正極溶接部142が形成される。
【0038】
このように、負極溶接部を螺旋形に形成することで溶接部の面積を増やすことができるので、溶接強度を確保することができる。また、螺旋形が会う所で重畳しないように不連続的形態の螺旋形溶接部が形成されるので、螺旋形が会う所で過溶接が発生する問題を防止することができる。したがって、過溶接によってガスケットが損傷されるかまたは電解液が漏出する問題を防止することができる。
【0039】
また、本発明は、負極溶接部141及び正極溶接部142に熱が集中することを防止するために、投入熱量が相対的に低いナノ秒パルスレーザーを用いて負極溶接部及び正極溶接部を形成する。
【0040】
【0041】
図2を参照すると、
図2は負極端子として機能するクリンピング部に形成された負極溶接部の写真であり、不連続的螺旋形の溶接部が形成される。具体的には、クリンピング部は電池ケースの上部の円形端に沿って細長い形態に形成されるので、ナノ秒パルスレーザーが直線形に移動するとともに螺旋形に回転しながら溶接ライン210を形成する。
【0042】
このように、溶接ライン210が螺旋形に形成されることによって重畳を生じることがあるが、本発明では、重畳を防止するために、不連続的形態の螺旋形が形成される。
【0043】
詳細には、螺旋形に回転しながら先溶接ライン211と後溶接ライン212とが重畳しないように、後溶接ライン212が不連続的に形成される。
【0044】
ナノ秒パルスレーザーを使う場合、溶接部を狭く形成するようになる。本発明は、溶接部を広く確保するために、螺旋形の溶接部を形成している。螺旋形溶接部において、一つの螺旋を単位螺旋と言うとき、前記単位螺旋の間の間隔は、単位螺旋の横幅を考慮して、熱影響部が最大限重畳しないように形成されることができる。
【0045】
このように、熱影響部が重畳しないようにすることで、溶接部の下部のガスケットが熱によって損傷されることを防止することができる。
【0046】
例えば、前記単位螺旋の間の間隔Bは、溶接部が概して直線形に形成される負極端子では、単位螺旋の横幅Dと同じか又は単位螺旋の横幅Dよりも大きく形成することができる。
【0047】
【0048】
図3を参照すると、正極溶接部として、連続的形態の螺旋形溶接部が形成される。具体的には、ナノ秒パルスレーザーを円形に移動するとともに螺旋形に回転しながら溶接ライン210を形成する。
【0049】
したがって、点形または線形にのみ溶接する場合と比較すると、溶接部の面積を広く形成することができるので、正極溶接部の溶接強度を向上させることができる。
【0050】
正極溶接部になる母材はアルミニウム系合金素材から構成することができ、一般的に厚さは3.0T以上と厚いので、ナノ秒パルスレーザー溶接の際に貫通される危険が低い。また、負極溶接部とは違い、母材の下部には溶接熱によって損傷されるおそれがある部品がない。よって、正極溶接部の溶接ラインは、溶接強度の向上のために、不連続的区間なしに、連続的形態で形成することができる。
【0051】
正極端子において、単位螺旋の間の間隔Bは、溶接ラインが負極溶接部よりも密に配置されるしかないので、単位螺旋の横幅Dよりも小さく形成することができる。
【0052】
また、正極溶接部は、負極溶接部と比較すると、母材の厚さが一般的に3.0T以上と厚いので、溶接ラインが密に配置されても、熱影響部が重畳しないようにすることができる。
【0053】
本発明の円筒型電池セルは、正極端子及び負極端子にバスバー、ワイヤ、または金属プレートが結合されることで、他の円筒型電池セルと直列および/または並列に連結されるか、またはデバイスと電気的に連結することができる。
【0054】
このような連結構造によって、高容量及び高出力を要するデバイスのエネルギー源として使うことができる。
【0055】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
【0057】
円筒型電池セルのクリンピング部にアルミニウム素材のメタルプレートを付着するために、ナノ秒パルスレーザー溶接を遂行し、
図2に示したように、不連続的螺旋形の溶接部を形成した。ここで、先溶接ラインと後溶接ラインとが重畳しないように、後溶接ラインを不連続的に形成した。
【0058】
図4は本発明による負極溶接部の熱影響部の写真である。
【0059】
前記熱影響部は溶接熱源によって直接的に溶融しないが、溶接熱によって温度が上昇して母材の物性が変化した部分を意味する。前記熱影響部が重畳する場合、母材の軟化領域が形成されるので、溶接強度が低下し、引張力が低下することがある。
【0060】
図4を参照すると、溶接ライン210の周辺に熱影響部230が形成されたことが分かる。先溶接ラインと後溶接ラインとが隣接して形成される部分で熱影響部が部分的に重畳することがあるが、
図4のように構成することで、熱影響部の重畳区域を最小化することができる。
【0061】
このように、熱影響部の重畳を最小化し、溶接強度を確保するための螺旋形溶接部において、
図2及び
図3に示したA~D、タックタイム(Tack time)、総螺旋数、及び単位螺旋当たりのレーザーパルスの最適値として下記の表1のような数値を導出した。
【0062】
【0063】
<比較例1>
円筒型電池セルのクリンピング部及びトップキャップ上にマイクロパルスレーザーでスポット溶接を実施した。前記クリンピング部に形成される負極端子には複数の点が並んで形成された形態の溶接部を形成し、前記トップキャップに形成される正極端子には15個の点が3行5列に配列される溶接部を形成した。
【0064】
前記スポット溶接部の1個を構成する点は、中心を基準に回転しながら形成された螺旋形に構成することができ、このような形態の点15個で溶接部を形成するのに必要なタックタイム(Tack time)は、負極が0.3秒、正極が1.5秒である。
【0065】
したがって、スポット溶接を実施する場合、実施例1よりも正極のタックタイム(Tack time)が増加することが分かる。
【0066】
図5はスポット溶接を実施した溶接部の熱影響部の写真である。
【0067】
図5を参照すると、溶接ライン210の周辺に沿って熱影響部230が形成され、螺旋形の溶接ラインに沿って熱影響部の重畳区間が発生する。このように、熱影響部が重畳する場合、母材が軟化して溶接強度が低くなる結果、引張力が低下することがある。
【0068】
<比較例2>
【0069】
前記実施例1で、先溶接ラインと後溶接ラインとが重畳するように後溶接ラインを連続的に形成した点を除き、前記実施例1と同様にナノ秒パルスレーザー溶接を実施した。
【0070】
<溶接部のレーザー浸透深さ測定実験>
【0071】
実施例1及び比較例2のように製造された円筒型電池セルをそれぞれ110個ずつ準備した。
【0072】
図6は実施例1及び比較例2で製造された円筒型電池セルの溶接部の断面の写真である。
【0073】
図6(a)は実施例1の溶接部の断面を示し、
図6(b)は比較例2の溶接部の断面を示し、
図6(a)に表示した符号14、15、16及び
図6(b)に表示した符号47、48、49はレーザー溶接部の識別番号である。
【0074】
図6(a)に表示した溶接部14、15、16でクリンピング部のレーザー浸透深さはそれぞれ、0.042mm、0.104mm、0.190mmであり、
図6(b)に表示した溶接部47、48、49でクリンピング部のレーザー浸透深さはそれぞれ、0.307mm、0.399mm、0.311mmである。
【0075】
すなわち、溶接ラインが重畳するように形成された比較例2の溶接部でレーザー浸透深さがもっと深いことが測定されたことを確認することができる。よって、溶接ラインが重畳するように形成される場合には、溶接熱によってクリンピング部の下部にあるガスケットが損傷する可能性が高くなる。
【0076】
<空気漏出実験>
【0077】
【0078】
図9に示した空気漏出実験用装置を使って、実施例1及び比較例2で製造された円筒型電池セルの空気漏出有無を確認した。
【0079】
円筒型電池セル100をホルダーに挿入した状態で空気漏出試験ジグに装着した。
【0080】
前記ホルダーと円筒型電池セル100との間に空間が生じないようにガスケットを介在し、ホルダー内に水を満たした。
【0081】
円筒形缶の底に空気注入用孔を形成し、前記孔を通して空気を注入しながら、水に気泡が発生するかをカメラで確認した。
【0082】
前記空気注入圧力は、円筒型電池セルのベンティング圧力である20kgf/cm2~23kgf/cm2より低い圧力を維持しながら、圧力の大きさを4段階にかけて漸進的に増加する方法を使った。具体的には、1分間15kgf/cm2、1分間16kgf/cm2、1分間17kgf/cm2、及び2分間18kgf/cm2で空気を注入する過程で実施した。
【0083】
前記空気注入には、株式会社PDKのRTK18-0003モデルを使った。
【0084】
図7は実施例1で製造された円筒型電池セルの下部で空気を注入しながら観察した写真であり、
図8は比較例2で製造された円筒型電池セルの空気注入前及び空気注入後の状態を示す写真である。
【0085】
図7及び
図8を参照すると、実施例1で製造された円筒型電池セルは気泡の発生が観察されず、いずれも空気漏出が発生しなかった一方で、比較例2で製造された円筒型電池セルは110個のうちの86個で溶接部に気泡が発生したことを確認することができる。
【0086】
すなわち、螺旋形の溶接部で溶接ラインが重畳するように溶接部が形成された場合には、レーザー浸透深さが深くなる結果、ガスケットが損傷されて空気漏出実験で不良と判定された電池セルを生じたことが分かる。
【0087】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形をなすことが可能であろう。
【符号の説明】
【0088】
100 円筒型電池セル
110 電池ケース
120 クリンピング部
130 トップキャップ
141、142 溶接部
210 溶接ライン
211 先溶接ライン
212 後溶接ライン
230 熱影響部
A 溶接部の長さ
B 単位螺旋の間の間隔
C 単位螺旋の縦幅
D 単位螺旋の横幅