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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】流体性状検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20250611BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20250611BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
G01N27/22 B
G01N27/00 L
G01N27/06 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022121000
(22)【出願日】2022-07-28
(65)【公開番号】P2024017985
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2025-02-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
(72)【発明者】
【氏名】出口 幹雄
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-306172(JP,A)
【文献】特開平10-163898(JP,A)
【文献】特開平06-066860(JP,A)
【文献】国際公開第2009/050813(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0036487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01R 27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に浸漬される接地電極と、前記流体に浸漬されるとともに前記接地電極に対向するように配置された検出電極と、前記検出電極に接続されたインダクタ部と、を含み、前記接地電極と前記検出電極により形成されたキャパシタと前記インダクタ部が電気的に互いに結合した共振回路と、
所定の発振周波数の励起信号で前記共振回路を励起する励起信号発振部と、
前記励起信号と、前記共振回路の出力信号と、の位相差を検出する位相差検出部と、
前記位相差が所定の位相差を維持するように前記発振周波数を制御する制御部と、を備え、前記発振周波数の経時変化により前記流体の劣化を検出することを特徴とする流体性状検出装置。
【請求項2】
前記励起信号発振部に接続されるとともに前記検出電極から離間した状態で前記検出電極に近接して配置された励起電極をさらに備え、
前記励起信号発振部は、前記励起電極と前記検出電極との間に形成される寄生容量を介して前記励起信号を前記共振回路に出力することで前記共振回路を励起することを特徴とする請求項1に記載の流体性状検出装置。
【請求項3】
前記インダクタ部は、インダクタを含まない複数のインピーダンス素子を含む等価インダクタであることを特徴とする請求項1に記載の流体性状検出装置。
【請求項4】
前記インピーダンス素子は、前記検出電極に接続された第1抵抗と、第2抵抗と、第3抵抗と、第2キャパシタと、前記接地電極に接続された第4抵抗と、を含むとともに前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記第3抵抗、前記第2キャパシタ、及び前記第4抵抗の順に直列に接続された直列回路を形成していることを特徴とする請求項3に記載の流体性状検出装置。
【請求項5】
前記第4抵抗は、前記第2キャパシタに接続された第5抵抗と、前記接地電極に接続されるとともに前記第5抵抗に接続された第6抵抗と、を含み、
前記第6抵抗は前記第5抵抗よりも抵抗値が低く設定され、
前記共振回路の出力端子は、前記第5抵抗と前記第6抵抗との間から延出していることを特徴とする請求項4に記載の流体性状検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記発振周波数を前記共振回路の共振周波数、又は前記共振周波数の近傍の周波数に設定することを特徴とする請求項1に記載の流体性状検出装置。
【請求項7】
前記出力信号の振幅を検出する振幅検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記発振周波数を変化させて前記振幅が所定の閾値以上となる周波数領域を探索して検出し、前記周波数領域において前記発振周波数を変化させつつ前記励起信号と前記出力信号の前記位相差を検出することで前記発振周波数と前記位相差との相関関係を算出し、前記相関関係に基づいて前記位相差が前記所定の位相差となるモニタ周波数を算出することを特徴とする請求項1に記載の流体性状検出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記周波数領域を探索する場合において前記周波数領域よりも高周波となる周波数から前記発振周波数を減少させることで前記周波数領域を探索することを特徴とする請求項7に記載の流体性状検出装置。
【請求項9】
前記インダクタ部の温度又は前記流体の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記温度センサが検知する温度に基づいて前記共振回路の共振周波数の補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の流体性状検出装置。
【請求項10】
前記出力信号の振幅を検出する振幅検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記振幅が所定の閾値よりも低くなった場合に、前記発振周波数を変化させて前記振幅が前記閾値以上となる周波数領域を探索して検出し、当該周波数領域において前記発振周波数を制御することを特徴とする請求項1に記載の流体性状検出装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記位相差が一つの所定の位相差を維持するように一つの前記発振周波数を制御する請求項1に記載の流体性状検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体性状検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体に浸漬された接地電極及び検出電極より形成されたキャパシタと、インダクタとからなる共振回路に当該共振回路の共振周波数に近接した周波数の励起信号を出力し、当該励起信号と共振回路の出力信号の位相差に基づいて流体の性状をモニタリングする技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-170064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術では、位相差が変化するほど位相差を検知する感度が低下してしまい以後の計測において流体の性状を敏感にモニタリングすることが困難であった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体の性状の変化を敏感に検出するモニタリングが可能な流体性状検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流体性状検出装置は、流体に浸漬される接地電極と、流体に浸漬されるとともに接地電極に対向するように配置された検出電極と、検出電極に接続されたインダクタ部と、を含み、接地電極と検出電極により形成されたキャパシタとインダクタ部が電気的に互いに結合した共振回路と、所定の発振周波数の励起信号で共振回路を励起する励起信号発振部と、励起信号と、共振回路の出力信号と、の位相差を検出する位相差検出部と、位相差が所定の位相差を維持するように発振周波数を制御する制御部と、を備え、発振周波数の経年変化により流体の劣化を検出することを特徴とする。
【0007】
この発明では、発振周波数を常に共振回路において位相変化の最も急峻な周波数となるように制御できるので、キャパシタの静電容量、すなわち流体の比誘電率が変化しても発振周波数を当該周波数に追従でき、常に位相変化に対して最大感度の状態を維持できる。したがて、励起信号と共振回路の出力信号との間の位相差の検出感度を向上させることで流体の性状の変化(経時劣化)を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0008】
本発明に係る流体性状検出装置において、励起信号発振部に接続されるとともに検出電極から離間した状態で検出電極に近接して配置された励起電極をさらに備え、励起信号発振部は、励起電極と検出電極との間に形成される寄生容量を介して励起信号を共振回路に出力することで共振回路を励起することを特徴とする。
【0009】
この発明では、励起信号が印加される励起電極と、検出電極とが空間的に分離されるので励起電極と検出電極との間に直流の抵抗成分はなく、寄生容量を介して両者が電気的に結合されるので、共振回路のQ値を向上させることができる。これにより励起信号と共振回路の出力信号との間の位相差の検出感度を向上させることで流体の性状の変化(経時劣化)を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0010】
本発明に係る流体性状検出装置において、インダクタ部は、インダクタを含まない複数のインピーダンス素子を含む等価インダクタであることを特徴とする。
【0011】
この発明では、インダクタンスを通常のインダクタ素子よりも十分に大きく設定することができるので、共振回路の共振周波数を低い値に設定でき、これにより発振周波数を低い値に設定できる。従って、インダクタ部のほか、励起信号発振部、及び位相差検出部を汎用の電子部品(半導体デバイス)を組み合わせて構築可能となり、低コストで小さなサイズで構成可能となる。
【0012】
本発明に係る流体性状検出装置において、インピーダンス素子は、検出電極に接続された第1抵抗と、第2抵抗と、第3抵抗と、第2キャパシタと、接地電極に接続された第4抵抗と、を含むとともに第1抵抗、第2抵抗、第3抵抗、第2キャパシタ、及び第4抵抗の順に直列に接続された直列回路を形成していることを特徴とする。
【0013】
この発明では、等価インダクタが所謂GIC(General Impedance Converter)回路により構築されるので、大きなインダクタンス値が得られる。
【0014】
本発明に係る流体性状検出装置において、第4抵抗は、第2キャパシタに接続された第5抵抗と、接地電極に接続されるとともに第5抵抗に接続された第6抵抗と、を含み、第6抵抗は第5抵抗よりも抵抗値が低く設定され、共振回路の出力端子は、第5抵抗と第6抵抗との間から延出していることを特徴とする。
【0015】
この発明では、共振回路(インダクタ部)の出力電圧を小さくできるので、当該出力電圧による共振回路(インダクタ部)の発振を抑制できる。
【0016】
本発明の流体性状検出装置において、制御部は、発振周波数を共振回路の共振周波数、又は共振周波数の近傍の周波数に設定することを特徴とする。
【0017】
この発明では、発振周波数を少なくとも共振周波数に近傍に設定することで、励起信号(電圧)と共振回路の出力信号(電圧)との位相差が流体の状態の変化に対応して敏感に変化するので、位相差の検出感度を向上させることができる。
【0018】
本発明の流体性状検出装置において、出力信号の振幅を検出する振幅検出部をさらに備え、制御部は、発振周波数を変化させて振幅が所定の閾値以上となる周波数領域を探索して検出し、周波数領域において発振周波数を変化させつつ励起信号と出力信号の位相差を検出することで発振周波数と位相差との相関関係を算出し、相関関係に基づいて位相差が所定の位相差となるモニタ周波数を算出することを特徴とする。
【0019】
この発明では、励起信号と出力信号の位相差に関して共振回路において位相変化の最も急峻な周波数に対応する位相差の範囲内でモニタ周波数(発振周波数)を高精度に算出できるので、キャパシタの静電容量、すなわち流体の比誘電率が変化してもモニタ周波数(発振周波数)を当該周波数に高精度に追従でき、常に位相変化に対して最大感度の状態を維持できる。
【0020】
本発明の流体性状検出装置において、制御部は、当該周波数領域を探索する場合において周波数領域よりも高周波となる周波数から発振周波数を減少させることで当該周波数領域を探索することを特徴とする。
【0021】
励起信号が高調波成分を含む場合であって当該高調波成分が共振回路の共振周波数に近接する場合、共振回路が当該高調波成分に応答して当該周波数領域の探索に不具合が生じるおそれがある。しかし、この発明では、当該周波数領域よりも高周波となる周波数から発振周波数を減少させることで当該周波数領域を探索するので、高調波成分に対して共振回路が応答することはなく、当該周波数領域の探索を確実に行うことができる。
【0022】
本発明の流体性状検出装置において、インダクタ部の温度又は流体の温度を測定する温度センサをさらに備え、制御部は、温度センサが検知する温度に基づいて共振回路の共振周波数の補正量を算出することを特徴とする。
【0023】
この発明では、算出した補正量に基づいて発振周波数の情報、又はモニタ周波数の情報を補正することで、流体の温度変化に関わらず補正後の発振周波数の情報、又は補正後のモニタ周波数の情報を介して流体の性状を高精度且つ短時間で検出することができる。
【0024】
本発明の流体性状検出装置において、出力信号の振幅を検出する振幅検出部をさらに備え、制御部は、振幅が所定の閾値よりも低くなった場合に、発振周波数を変化させて振幅が閾値以上となる周波数領域を探索して検出し、当該周波数領域において発振周波数を制御することを特徴とする。
【0025】
この発明では、例えば短時間に流体の性状、又は電極の性状が変化して共振周波数が急激に変化した場合に出力信号が変化し、励起信号と共振回路の出力信号との位相差が所定の位相差を維持できなくなる場合が発生する。よって、出力信号が所定の振幅以上となる周波数領域を検出して当該周波数領域で発振周波数を制御させることで、励起信号と共振回路の出力信号との位相差が所定の位相差となるように発振周波数を再び共振周波数に追従させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、位相差の検出感度を常に最大感度の状態に維持できるので、流体の性状の変化を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る流体性状検出装置の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る流体性状検出装置の断面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】第1実施形態に係る流体性状検出装置の回路図である。
図5】第1実施形態に係る流体性状検出装置を構成するインダクタ部の回路図である。
図6】第1実施形態に係る流体性状検出装置が検出するゲインと位相差を説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る流体性状検出装置の制御フローである。
図8】第2実施形態に係る流体性状検出装置の回路図である。
図9】第3実施形態に係る流体性状検出装置を構成する内側電極、検出電極、及びカバー電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本実施形態について説明する。
【0029】
[第1実施形態の流体性状検出装置の基本構成]
図1は、本実施形態に係る流体性状検出装置1の斜視図である。図2は、本実施形態の流体性状検出装置1の断面図である。図3は、図2のA-A線断面図である。
【0030】
図1及び図2に示すように、流体性状検出装置1は、検出ユニット2と、検出ユニット2に取り付けられる基板ユニット3と、検出ユニット2に取り付けられ基板ユニット3を覆う円筒状の円筒カバー4と、円筒カバー4の開口を塞ぐ端部カバー5と、を有する。
【0031】
図2に示すように、流体性状検出装置1(検出ユニット2、基板ユニット3、円筒カバー4、端部カバー5)は、中心軸CLを中心とした円筒形状(同心形状)を有している。
【0032】
流体性状検出装置1は、例えば、油圧シリンダ等の液圧装置(不図示)に収容された作動流体としての作動油の性状を検出するものである。流体性状検出装置1は、液圧装置に設けられ作動油を収容する容器、すなわち配管7、タンク等の所定部位に取り付けられる。尚、流体性状検出装置1の検査対象は、作動油に限定されず、潤滑油、切削油、鉱物油、燃料、溶媒、化学薬品等、種々の液体や気体であってもよく、また流体の粘度に限定されず適用できる。以下では、流体性状検出装置1が検出対象流体として配管7(図2)内の作動油の性状を検出する場合について説明する。
【0033】
以下では、中心軸CLに平行な方向を流体性状検出装置1の軸方向と称し、この軸方向に直交する方向を流体性状検出装置1の径方向と称する。また、端部カバー5が配置される側を流体性状検出装置1の基端側と称し、検出ユニット2側を流体性状検出装置1の先端側と称する。
【0034】
検出ユニット2は、筒状の検出電極21と、検出電極21の内側であって中心軸CL上に配置され棒状の内側電極22(接地電極)と、液圧装置(不図示)の配管7に取り付けられる筐体23と、内側電極22を保持するとともに筐体23にネジ等により固定される固定部材として金属製の取付板24と、を有する。
【0035】
検出ユニット2は、筐体23と検出電極21との間に設けられ筐体23と検出電極21とを絶縁し、且つ筐体23に対する検出電極21の位置を規定する外側スペーサ25と、検出電極21と内側電極22との間に設けられ検出電極21と内側電極22とを絶縁し、且つ筐体23に対する検出電極21の位置及び内側電極22の位置を規定する内側スペーサ26と、を備える。
【0036】
図3図2のA-A線断面図)に示すように、中心軸CLを中心として径が小さい方から順に、内側電極22、内側スペーサ26、検出電極21、外側スペーサ25、筐体23が配置されている。そして、内側スペーサ26、検出電極21、外側スペーサ25、筐体23はリング形状を有している。尚、内側スペーサ26及び外側スペーサ25は一体のモールド成形により構築してもよい。
【0037】
検出ユニット2は、筐体23の先端側であって検出電極21と径方向で対向する位置に励起電極28を有する。励起電極28は図2図3に示すように棒状であり、検出電極21から所定の距離だけ径方向に離れた位置に配置されており、検出電極21との間で直流電流に関して互いに絶縁している。また、励起電極28の側面、及び軸方向の面であって筐体23の先端側の面は、外側スペーサ25により支持されている。また、励起電極28の基端側の面は、内側スペーサ26に支持されている。
【0038】
検出ユニット2は、筐体23の開口部に取り付けられ検出電極21及び内側電極22の先端部を覆う金属製のカバー電極27(接地電極)を有する。
【0039】
筐体23は、導電性を有する金属材料から形成され、先端側から順に、取付部231、フランジ部232、ナット部233、カバー受け部234、カバー挿入部235を有する。
【0040】
取付部231は雄ネジ構造を有し、配管7に形成された取付孔71(雌ネジ)に螺合する。配管7の取付孔71の筐体23(フランジ部232)に接触する部分には環状の凹部72が配置され、凹部72にはOリング6が配置される。取付部231の根元の部分にはフランジ部232が形成され、フランジ部232は凹部72(Oリング6)に対向する面となっている。
【0041】
よって、取付部231を取付孔71に捻じ込むとOリング6がフランジ部232と凹部72の底面との間で圧縮されることで配管7と筐体23の間がシールされる。
【0042】
ナット部233は、図1図3に示すように六角柱形状に形成される。このため、ナット部233をスパナ等の工具により回転させることで、取付部231を取付孔71に容易に取り付けることができる。
【0043】
カバー挿入部235は、円筒状であり、円筒カバー4の内側に挿入される部分である。カバー受け部234は、ナット部233の基端から径方向外方に突出する鍔部であり、円筒カバー4の先端面が当接される。
【0044】
カバー挿入部235が円筒カバー4に挿入され、円筒カバー4の先端面がカバー受け部234に当接した状態で、ネジ等により円筒カバー4がカバー挿入部235に固定される。
【0045】
端部カバー5は、円筒カバー4の基端側の開口を塞いだ状態で、円筒カバー4にネジ等により固定される。基板ユニット3は、端部カバー5、円筒カバー4及び検出ユニット2(筐体23)により画成される収容空間に収容される。
【0046】
筐体23の基端側であってカバー挿入部235の内側となる部分は、取付板収容部236となっており、取付板収容部236に取付板24が取り付けられる。
【0047】
基板ユニット3は、回路基板31と、回路基板31を保持する基板保持部材32と、を備える。基板保持部材32は、検出ユニット2の取付板24にネジ等により固定される。
【0048】
回路基板31は、筐体23、検出電極21、励起電極28と個別に接続する配線(不図示)を有している。
【0049】
ここで、筐体23は、配管7と直接接触している。また、金属製のカバー電極27は、筐体23に接続されている。内側電極22は取付板24を介して筐体23と電気的に接続されている。よって、配管7が接地されることで、筐体23、カバー電極27及び内側電極22は接地される。
【0050】
また、円筒カバー4及び端部カバー5が金属製であれば、円筒カバー4及び端部カバー5も接地される。これにより、前記の収容空間は静電遮蔽され、回路基板31は電気的外乱から保護される。
【0051】
図2に示すように、カバー電極27は、少なくともその一部が作動油に浸漬される。そして、カバー電極27の作動油に浸漬する部分(底面、側面)には流通孔271が形成され、これにより検出電極21の少なくとも一部が作動油に浸漬される。また、検出電極21の作動油に浸漬する部分(底面、側面)にも流通孔211が形成され、これにより内側電極22の少なくとも一部が作動油に浸漬される。
【0052】
カバー電極27、検出電極21、内側電極22は所定の間隔で互いに離間しているが、その隙間に作動油が流通する。これにより、カバー電極27、検出電極21、内側電極22が作動油を誘電材料として挟み込んだキャパシタC図4、静電容量は例えば数pF~10pF)が形成される。そして、カバー電極27、検出電極21、内側電極22は、後述のインダクタ部3101と電気的に結合することで、後述の共振回路8を形成する共振タンクを構築する。
【0053】
また、検出電極21と励起電極28とは外側スペーサ25を挟んで互いに離間している。これにより検出電極21と励起電極28が外側スペーサ25を誘電材料として挟み込んだキャパシタC(寄生容量)(図3)が形成される。
【0054】
尚、基板ユニット3は、後述のインダクタ部3101(図4)以外の回路部分については筐体23に取り付ける必要はなく、配管7から離間して配置し、配線を介して検出電極21、内側電極22、カバー電極27、励起電極28と電気的に接続する構成としてもよい。これにより基板ユニット3の防水性を確保し、短絡を防止できる。
【0055】
[回路図]
図4は、本実施形態に係る流体性状検出装置1の回路図である。流体性状検出装置1の回路基板31(図2)には、インダクタ部3101、励起信号発振部3102、第1コンパレータ3103、第2コンパレータ3104、位相比較器3105、第1電圧センサ3107、第2電圧センサ3108、温度センサ3110、制御部3112が配置されている。
【0056】
また、流体性状検出装置1を構成する回路では、励起信号発振部3102を起点として、励起信号が第1コンパレータ3103に至る第1回路Aと、励起信号発振部3102を起点として励起信号が、キャパシタC(励起電極28、検出電極21)を経由して第2コンパレータ3104に至る第2回路Bと、を有し、第2回路Bには、後述の共振回路8が接続されている。
【0057】
キャパシタCは、前記のように、検出電極21と、内側電極22及びカバー電極27(接地電極)により形成され作動油を挟み込む構造を有している。そして、キャパシタCは、検出電極21側が第2コンパレータ3104の非反転入力端子(+)、及び後述のインダクタ部3101の入出力端子I/Oに接続され、内側電極22及びカバー電極27(接地電極)側が接地されている。ここで、接地電極とは、交流信号成分に対して実質的にゼロ電位(接地電位)となる回路領域全体を指す。
【0058】
キャパシタCは、励起電極28及び検出電極21により形成されている。尚、第1実施形態において励起信号発振部3102は正弦波の励起信号を出力するが、当該励起信号に高調波成分を含む場合は励起信号発振部3102と励起電極28との間にローパスフィルタ(図8に示す第1ローパスフィルタ3115)を配置する。
【0059】
インダクタ部3101の一端は後述の入出力端子I/O(図5)となっており、キャパシタC及び第2コンパレータ3104の非反転入力端子(+)に接続されている。一方、インダクタ部3101の他端は接地されている。よってインダクタ部3101はキャパシタCとともに並列の共振回路8を形成している。このとき、共振回路8の共振周波数fは、以下の式(1)のようになる。
【数1】
【0060】
また、この共振回路8に励起される信号の強度の周波数特性を特徴付ける、もう一つの共振周波数fは、キャパシタCと電気的に結合した共振回路8の共振周波数fとして現れるものであり、以下の式(2)のようになる。
【数2】
【0061】
共振回路8に励起される出力信号の強度は、この2つの共振周波数の間で最大値を取る。キャパシタCは。励起電極28と検出電極21の間に形成される寄生容量であるので、キャパシタCに比べて大きさが十分に小さい。このため2つの共振周波数f、fは非常に近い値となる。
【0062】
図5に示すように、例えば、インダクタ部3101は、抵抗R、抵抗R、抵抗R、キャパシタC、抵抗Rの順に並んで接続された直列回路にオペアンプU及びオペアンプUが接続されたGIC回路である。すなわちインダクタ部3101は、インダクタを含まないインピーダンス素子により構成された等価インダクタ(仮想的インダクタ)である。直列回路の一端(抵抗R側)は、インダクタ部3101の入出力端子I/Oとなっており、他端(抵抗R側)は接地されている。ここで、接地とは交流信号成分に対して実質的にゼロ電位(接地電位)に接続することを意味する。
【0063】
オペアンプUにおいて、非反転入力端子(+)は、キャパシタCと抵抗Rとの接続中点に接続され、反転入力端子(-)は、抵抗Rと抵抗Rとの接続中点に接続され、出力端子は、抵抗Rと抵抗Rとの接続中点に接続されている。
【0064】
オペアンプUにおいて、非反転入力端子(+)は、入出力端子I/Oに接続され、反転入力端子(-)は、抵抗Rと抵抗Rとの接続中点に接続され、出力端子は、抵抗RとキャパシタCとの接続中点に接続されている。
【0065】
上記構成において、入出力端子I/Oから見たインダクタ部3101のインピーダンスZはZ=jω(R)/(R)となり、インダクタンスLは、(R)/(R)となる。ここで、RとRを同じ抵抗値に設定すれば、C、R、Rを大きな値に設定することでインダクタンスLを大きな値に設定することができ、これにより共振周波数f及びfを低い値(例えば数kHz)に設定できる。
【0066】
尚、インダクタ部3101のインダクタンスLは、例えば100[H]程度となることが好適であり、このとき、例えばCを0.01[μF]、Rを1[MΩ]、Rを10[kΩ]、Rを1[kΩ]に設定することが好適である。
【0067】
図4に示すように、励起信号発振部3102は、所定の発振周波数fの励起信号を励起電極28(キャパシタC)及び第1コンパレータ3103に出力するものである。また励起信号発振部3102は、制御部3112から入力される制御信号に基づいて発振周波数fを変化させることができる。励起信号発振部3102としては、CR発振回路等、比較的低周波(数kHz程度)の正弦波を発振可能な発振回路が適用される。尚、後述の第2実施形態では励起信号として方形波を適用する。
【0068】
第1コンパレータ3103(第1方形波生成部)は、非反転入力端子(+)に励起信号が入力され、反転入力端子(-)が接地されている。第1コンパレータ3103は、励起信号の電圧と基準電圧との大小関係を比較し、例えば励起信号の電圧が基準電圧以上の場合に1(High)となり、励起信号の電圧が基準電圧未満の場合に0(Low)となる第1方形波を出力する。
【0069】
第2コンパレータ3104(第2方形波生成部)は、非反転入力端子(+)に共振回路8の出力信号(電圧)が入力され、反転入力端子(-)が接地されている。第2コンパレータ3104は、共振回路8の出力信号(電圧)と基準電圧との大小関係を比較し、例えば出力信号(電圧)が基準電圧以上の場合に1(High)となり、励起信号の電圧が基準電圧未満の場合に0(Low)となる第2方形波を出力する。
【0070】
位相比較器3105は、第1方形波と第2方形波の論理積となる第3方形波を制御部3112に出力する。すなわち、第3方形波は、第1方形波が1(High)且つ第2方形波が1(High)の場合に1(High)となり、それ以外の場合は0(Low)となる。よって、第3方形波のパルス幅は、第1方形波と第2方形波の時間差(位相差)がない場合は、第1方形波及び第2方形波の幅と一致するが、当該時間差(位相差)がある場合は、当該時間差の増加に従って当該パルス幅が減少する。
【0071】
尚、位相比較器3105が生成する第3方形波は、第1方形波と第2方形波の論理和、或いは排他的論理和であっても、位相差の増減と生成されるパルス幅の増減の関係は異なるが、機能的には同等の効果を有する、又は、エッジトリガ型のフリップフロップを用いて、第1方形波と第2方形波の立ち上がり、又は立ち下がりの時間差に応じた第3方形波を生成する回路を用いても同等の効果を奏する。
【0072】
第1電圧センサ3107は、励起信号(電圧)(V1)を検出して制御部3112に出力する。
【0073】
第2電圧センサ3108は、共振回路8の出力信号(電圧)(V2)を検出して制御部3112に出力する。
【0074】
温度センサ3110は、作動油(検出電極21、内側電極22、カバー電極27)の温度を検出して制御部3112に出力する。また検出電極21とインダクタ部3101が隣接して配置され両者の温度差が低い場合、温度センサ3110はインダクタ部3101の温度を作動油の温度として検出して制御部3112に出力する。
【0075】
制御部3112は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、所定のプログラムに従って本実施形態に係る流体性状検出装置1(流体性状検出方法)を駆動させるものである。
【0076】
制御部3112には、第1電圧センサ3107から励起信号の電圧(V1)が入力され、第2電圧センサ3108から共振回路8の出力信号の電圧(V2)が入力される。
【0077】
制御部3112には、位相比較器3105から第3方形波が入力される。制御部3112は、位相比較器3105から入力された第3方形波の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を検出することで、励起信号と共振回路8の出力信号との位相差を検出し、当該位相差が所定の位相差(θ(例えばπ/2))となるように励起信号発振部3102(発振周波数f)を制御する。ここで、第3方形波の立ち上がりの時間と立ち下がりの時間との時間差が短くなるほど励起信号と共振回路8の出力信号との位相差は大きくなり、逆に長くなるほど位相差が小さくなる。
【0078】
尚、位相比較器3105から出力された第3方形波をローパスフィルタ(不図示)で平滑化する構成を適用し、制御部3112が当該平滑化して得られる直流電圧の大きさにより励起信号と共振回路8の出力信号との位相差を算出してもよい。この場合直流電圧の大きさが大きいほど位相差が小さく、逆に直流電圧の大きさが小さいほど位相差が大きくなる。
【0079】
制御部3112は、後述のように励起信号発振部3102(発振周波数f)を制御する。また、制御部3112には、温度センサ3110から温度の情報が入力される。
【0080】
[ボード線図]
図6は、本実施形態に係る流体性状検出装置1が検出するゲインと位相差θを説明するための図である。図6は、共振回路8とキャパシタCを含む回路のボード線図であって、上図がゲインを表し、下図が位相差θを表している。本実施形態では、図4に示す第1電圧センサ3107が検出する電圧V1、第2電圧センサ3108が検出する電圧V2を用いて(V2/V1)を算出することでゲインが得られる。また位相差は、arg(V2/V1)となる。
【0081】
ところで、励起信号の電圧V1(振幅、位相)は既知であるので、ゲイン及び位相差θをV2のみから算出してもよい。よって、図6ではゲインとして電圧(V2)を適用し、位相差θとしてarg(V2)を適用している。
【0082】
図6に示すように、共振回路8とキャパシタCを含む回路では、キャパシタCと等価のインダクタンスLとで形成される共振周波数f、及びキャパシタC及びキャパシタCの合成容量とインダクタンスLとで形成される共振周波数fの前後で位相差θが大きく変化する特性を示す。キャパシタCは、キャパシタC1に比べて十分に小さいので前記のように共振周波数fと共振周波数fの差はわずかである(図6では視認性を確保するため共振周波数fと共振周波数fをやや離間させた状態で図示している)。
【0083】
共振周波数fと共振周波数fの近傍の狭い周波数範囲に限れば、励起電極28に印加される電圧の振幅と位相は一定とみなすことができる。よって、図6に示すように、高周波側からみると位相差θは共振周波数fまで0であるが、それより低周波側に移動する急激に立ち上がり、共振周波数fでθ(例えばπ/2)となり、それよりも低周波となるとπとなる。
【0084】
ゲイン(電圧V2)のピークとなる周波数fは、共振周波数fと共振周波数fの間であって共振周波数fに隣接した位置となる。
【0085】
本願発明では、後述のように、作動油(流体)の性状が正常な状態下で、図6に示す位相差θを示す曲線の傾きが最も大きくなる周波数において、励起信号と共振回路8の出力信号との位相差θを検出している。
【0086】
検出電極21と内側電極22及びカバー電極27の間に充満する作動油の性状が変化し、作動油の電気的パラメータ(比誘電率)が変化するとキャパシタCの大きさが変化し、共振周波数f及び共振周波数fが変化する。一般に、オイル等が劣化するとその比誘電率が大きくなるため、共振周波数f及び共振周波数fが低周波側にシフトする。このシフト量はわずかであっても、図6の位相差θを示す曲線の傾きが非常に急峻であるので、励起信号の発振周波数fが一定のもと比誘電率がわずかに変化してもこれを位相差θとして敏感に検知することができる。
【0087】
また、本願発明では、後述のように、位相差θを敏感に検知できる共振周波数f近傍の周波数領域で発振周波数fを探索し、位相差θが所定の位相差(θ)となるモニタ周波数fを算出する。そして、位相差θが所定の位相差(θ)を維持するようにモニタ周波数fをフィードバック制御(図7)により設定している。従って、本願発明では作動油の性状をモニタ周波数fの変化により敏感に検知することができる。このとき、発振周波数fは、共振周波数fの前後を往復する態様で常に変化している。
【0088】
尚、本願発明では、例えば発振周波数fを探索して位相差θがπ/2となるときの発振周波数f(共振周波数f)と、キャパシタC及びキャパシタC(既知とする)を用いて作動油の電気的パラメータ(比誘電率)の絶対値を推定することも可能である。同様に、発振周波数fを探索して位相差θがゼロとなるときの発振周波数f(共振周波数f)と、キャパシタC(既知とする)を用いて作動油の電気的パラメータ(比誘電率)の絶対値を推定することも可能である。
【0089】
従来技術(特許文献1参照)では、本実施形態に例えると励起信号が印加される励起電極28が検出電極21に直接接続される形となり、図4に示すキャパシタCがなく、励起信号を出力する素子の内部抵抗成分(出力インピーダンス)が共振回路8に直接接続される形となる。この場合、共振回路8を含む回路の抵抗成分の大きさに対するインダクタンス成分の大きさの割合で定まるQ値に当該内部抵抗成分が含まれることになり、このためQ値を大きくすることが困難となる。よって、図6に示すゲインのピークを急峻にすることはできず、また位相差θの変化も緩やかになる。従って位相差θの検出感度が低下し、作動油の性状の変化を敏感に検出するモニタリングが困難である。
【0090】
一方、本実施形態では、励起信号発振部3102の内部抵抗成分(出力インピーダンス)と共振回路8の間にキャパシタC(寄生容量)が介装されており、励起信号発振部3102の内部抵抗成分が共振回路8から分離されている。また、インダクタ部3101は、前記のように、C、R、Rを大きな抵抗値に設定することで、インダクタンスLを大きな値に設定することができる。共振回路8におけるQ値はインダクタ部3101内に等価的に存在する抵抗成分に対するインダクタンスLのインピーダンスの割合で定まるので、Q値を非常に大きな値に設定することができる。よって、図6に示すゲインのピークを急峻にすることができ、また位相差θの変化も急峻になる。従って位相差θの検出感度が向上し、作動油の性状の変化を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0091】
[第1実施形態における制御]
図7は、第1実施形態に係る流体性状検出装置1の制御フローである。
【0092】
ステップS701において、制御部3112は、装置の電源がON状態となると、励起信号の発振周波数fを初期的に共振周波数fよりも周波数の高い周波数fmaxに設定する(第1制御)。
【0093】
ステップS702において、制御部3112は、共振回路8の出力信号の振幅(電圧V2)が所定の閾値電圧(Vr)以上となる(共振周波数f、fの近傍に位置する)発振周波数fを探索する(第1制御)。
【0094】
第1制御において、制御部3112は、図6に示すように、励起信号の発振周波数fを初期的には共振周波数fよりも周波数の高い周波数fmaxに設定し、発振周波数fを減少させ、電圧V2がVrに到達(発振周波数fは図6のf)したところで第1制御としての発振周波数fの探索(スキャン)を停止する。このように、高周波側から電圧V2がピーク近傍となる周波数領域を探索するので、仮に励起信号に高周波成分があったとしても当該高周波成分に共振回路8が反応して電圧V2がVrを超えてしまい、探索不全となることを回避できる。尚、高周波成分の影響がない場合は、共振周波数f及び共振周波数fよりも低い周波数fminから周波数を上昇させ電圧V2がVrに到達するまで周波数を上昇させる制御を行ってもよい。
【0095】
ステップS703において、制御部3112は、第1制御よりも探索速度を低下させ電圧V2がピーク電圧に達して減少し始めるところまで発振周波数fを低下させる(第2制御)。すなわち、発振周波数fを電圧V2のピークとなる周波数fの近傍であって周波数fよりも低い周波数となるまで低下させる(図6)。この場合、例えば電圧V2の現在データと前データの差分を算出し、差分の正負が反転した時点でステップS703の工程を終了させる。
【0096】
ステップS704において、制御部3112は、位相差θがθ-θからθ+θとなる周波数領域で発振周波数fを低速で探索しつつ位相差θの指標値θを算出することで、発振周波数fと位相差θを座標軸とする座標空間において発振周波数fと指標値θの座標位置を示すドットデータ3117を多数取得する(第2制御)。尚、θは第1制御が機能し得る任意の値である。また制御部3112は、当該ドットデータ3117を記憶するためのメモリ(不図示)を有している。
【0097】
ステップS705において、制御部3112は、前記の座標空間を用いて、多数のドットデータ3117から発振周波数fと位相差θとの相関関係を一次関数3118として表す回帰式を算出する(第2制御)。ここで回帰式は、θ=A・f+Bであり、回帰式中のA及びBを算出する。また、制御部3112は、回帰式を算出した後、メモリ(不図示)に記憶されたドットデータ3117を消去する。
【0098】
ステップS706において、制御部3112は、回帰式を用いて位相差θがθ(例えばπ/2)となるモニタ周波数fを算出する(第2制御)。
【0099】
ステップS707において、制御部3112は、算出したモニタ周波数fが上限周波数f以下であるか否かを判断し、YESであればステップS708に移行し、NOであればステップS709に移行する。
【0100】
ステップS708において、制御部3112は、モニタ周波数fが下限周波数f以上であるか否かを判断し、YESであればステップS710に移行し、NOであればステップS709に移行する。
【0101】
ステップS709において、制御部3112は、警告信号を外部に出力する。ここで、制御部3112は、ステップ707からステップS709に移行した場合は、上限警告信号を外部に出力する。作動油に他の油種や気泡が混入するとキャパシタCが低下し、これにより共振周波数f、fが上昇し、作動油の電気的パラメータ(比誘電率)の変化を正確に測ることは困難となる。そこで、本願発明では、モニタ周波数f(発振周波数f)が上限周波数fを超えた場合には、作動油に他の油種や気泡が混入したと判断して外部に通報する。
【0102】
上限警告信号(及び後述の下限警告信号)は例えばスピーカーからの音声出力、警告灯の点灯表示、画像表示装置における警告表示等に変換して作業者に伝達する。これにより、作業者に作動油の交換を報知することができる。
【0103】
制御部3112は、ステップS708からステップS709に移行した場合は、下限警告信号を外部に出力する。作動油の比誘電率は、作動油の酸化、配管7が設けられる液圧装置(不図示)の摩耗により発生するコンタミ(金属片)の作動油への混入により増加する。作動油の比誘電率の増加によりキャパシタCの静電容量が増加し、これにより第1制御が機能している状態下で第2制御により算出されたモニタ周波数fが低下する。モニタ周波数fの変化は作動油の電気的パラメータ(比誘電率)の変化として現れる。
【0104】
そこで、本願発明では、算出したモニタ周波数f(発振周波数f)が下限周波数fよりも低くなった場合には、作動油の交換時期が来たと判断して外部に通報する。下限警告信号は前記の上限警告信号と同様のものであるが作業者が両者を識別できる態様のものが好適である。
【0105】
ステップS710において、制御部3112は、装置の電源がONであるか否かを判断し、YESであればステップS711に移行し、NOであれば制御を終了する。
【0106】
ステップS711において、制御部3112は、電圧V2がVr以上であるか否かを判断してYESであればステップS703に移行し、NOであればステップS701に移行する。ステップS711でNOとすることにより、第2制御を実行できない状態から回復させることができる。
【0107】
インダクタ部3101は、図5に示すように抵抗R,R,R,Rを有しているが、これらは温度変化により抵抗値が変化する。また、オペアンプU及びオペアンプUは半導体デバイスであるため、その動作特性が温度によって影響を受ける。よって、インダクタ部3101の温度変化によりインダクタンスLが変化する。また、作動油の比誘電率は温度により変化し、これによりキャパシタC(静電容量)が変化する。
【0108】
そこで、制御部3112は、内側電極22の温度(作動油の温度)(又はインダクタ部3101の温度)と、第1制御が機能している状態下での励起信号のモニタ周波数f(発振周波数f)の変化量(補正量)とを対応付けたマップを有している。そして、制御部3112は、温度センサ3110から入力されたインダクタ部3101の温度の情報に基づいてマップから共振周波数f(又は共振周波数f)の変化量(補正量)を抽出し、当該変化量(補正量)により、第1制御が機能している状態下での励起信号の発振周波数fの情報を補正(温度補正)する(第3制御)。これにより、算出されるモニタ周波数f(発振周波数f)の情報の温度誤差を補正することができる。
【0109】
制御部3112は、モニタ周波数f(発振周波数f)の情報、又はモニタ周波数f(発振周波数f)と下限周波数fとの差分の情報を外部に出力する制御を実行してもよい。これにより、作業者が作動油の油種や機器の使用状況などに応じて閾値を設定できるため、機器で使用される作動油の交換時期を最適化することができる。
【0110】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る流体性状検出装置1の回路図である。第2実施形態の流体性状検出装置1は、励起信号が方形波となっている。また制御部3112はマイクロコンピュータで構成されているが、励起信号を出力可能となっている。励起信号はデューティー比が50%のデジタル方形波(矩形波)でその発振周波数fがマイクロコンピュータにより制御される。
【0111】
制御部3112は、マイクロコンピュータのカウンタや内臓発振モジュールを用いて、励起信号を位相比較器3105と励起電極28に出力する。制御部3112と励起電極28の間には第1ローパスフィルタ3115が配置され、第1ローパスフィルタ3115を通過した励起信号が励起電極28に出力される。
【0112】
第1ローパスフィルタ3115はカットオフ周波数が共振周波数f程度に設定されたローパスフィルタである。
【0113】
インダクタ部3101は、第1実施形態と同様の構成であるが、出力端子がキャパシタCと抵抗Rの間から延出している。
【0114】
インダクタ部3101の出力はバッファUを介して第3コンパレータ3113及び整流回路3114に出力される。
【0115】
第3コンパレータ3113はインダクタ部3101からの出力(共振回路8の出力信号)をデジタル方形波に成形し位相比較器3105に出力する。第3コンパレータ3113の出力信号は共振回路8の出力信号の位相を反映した信号となる。
【0116】
整流回路3114はインダクタ部3101からの出力(共振回路8の出力信号)を直流電流に整流し、第2ローパスフィルタ3116に出力する。
【0117】
第2ローパスフィルタ3116は、整流回路3114の出力を平滑化して制御部3112に出力する。第2ローパスフィルタ3116の出力は、共振回路8の出力信号の振幅(第1実施形態の電圧V2に相当する)の指標となる。
【0118】
位相比較器3105は、制御部3112が出力する励起信号の立ち上がり(又は立ち下り)のタイミング、第3コンパレータ3113の出力信号(共振回路8の出力信号)の立ち上がり(又は立ち下り)のタイミングを計測して、その時間差から励起信号と共振回路8の出力信号との位相差θを表す方形波(第1実施形態の第3方形波)を制御部3112に出力する。
【0119】
位相比較器3105としては、排他的論理和回路(XORゲート)により構成してもよい。この場合、一方の入力を励起信号とし、他方の入力を第3コンパレータ3113の出力信号とし、その出力が一方の入力と他方の入力の立ち上がりの時間差と、一方と入力と他方の入力の立ち下がりの時間差と、に応じた方形波となる。
【0120】
また、位相比較器3105としては、Dフリップフロップにより構成してもよい。この場合、例えば、74LS74相当のDフリップフロップを用いるとすれば、CK端子に励起信号を入力し、D端子に第3コンパレータ3113の出力信号(電圧を反転させた信号)を入力し、CLR端子に第3コンパレータ3113の出力信号を入力することで、励起信号に対する第3コンパレータ3113の出力信号の遅れ位相に対応した方形波をQ端子から出力することができる。ただし、検出可能な位相差θの最大値は180°(π)である。
【0121】
さらに、位相比較器3105としては、2つのDフリップフロップにより構成してもよい。この場合、例えば第1のDフリップフロップのCK端子に励起信号を入力し、第1のDフリップフロップのD端子の入力をH(高電位)とし、第2のDフリップフロップのCK端子に第3コンパレータ3113の出力信号を入力し、第2のDフリップフロップのD端子を第1のDフリップフロップのQ端子に接続し、第1フリップフロップのQ端子の出力と第2フリップフロップのQ端子の出力を入力とするNANDゲートの出力を第1フリップフロップのCLR端子及び第2フリップフロップのCLR端子に入力することで、第1のDフリップフロップのQ端子から360°(2π)の位相差θに亘って励起信号に対する第3コンパレータ3113の出力信号の遅れ位相に対応した方形波を出力することができる。
【0122】
尚、マイクロコンピュータによっては、2つの信号の時間差(位相差θ)を測定する機能を内蔵しているものもある。よって、制御部3112に用いられるマイクロコンピュータがその機能を有する場合は、位相比較器3105を省略してもよい。
【0123】
制御部3112が実行する制御フローは第1実施形態と同様である。
【0124】
前記のステップS702において、制御部3112は、第2ローパスフィルタ3116の出力電圧が所定の閾値電圧(第1実施形態の閾値電圧(Vr)に対応する電圧)以上となる(共振周波数f、fの近傍に位置する)発振周波数fを探索する(第1制御)。
【0125】
前記のステップS703において、制御部3112は、第1制御よりも探索速度を低下させ第2ローパスフィルタ3116の出力電圧がピーク電圧に達して減少し始めるところまで発振周波数fを低下させる(第2制御)。
【0126】
ところで、インダクタ部3101(GIC回路)は、キャパシタCを介して励起される回路であるため、全体的に電気信号が小さくノイズが乗りやすい。特に、インダクタ部3101に限らず回路各部に流れる信号そのものが励起信号と同じ周波数の信号となるので、これらが回路各部に存在する寄生容量を介して共振回路8を共振させ回路動作が不安定に陥るおそれがある。
【0127】
そこで、図8の矩形の一点鎖線で囲んだ領域に示すように、抵抗RをRとRとに分け、RとRの間から出力端子が延出するように構成することが好適である。このとき、例えばR=R+Rであり、RはRの10分の1程度の抵抗値に設定することが好適である。これにより、インダクタ部3101の出力電圧を10分の1以下の電圧に分圧するので、不要な共振、すなわちインダクタ部3101が出力する出力信号により共振回路8が共振することを抑制できる。
【0128】
図示は省略しているが、抵抗R7は、実際には、抵抗R7の2倍の抵抗値を持つ2つの抵抗素子が抵抗R6に対して並列に接続され、一方の抵抗素子が接地され、他方の抵抗素子が正の電源ライン(例えば5V)(不図示)に接続されている。よって他方の抵抗素子は、インダクタ部3101の外部から入力される交流信号(励起信号)に対して接地され、且つ電源電圧の半分の直流バイアスが印加される状態となる。これにより、例えば5Vの直流電源での動作を可能としている。
【0129】
尚、第2実施形態の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0130】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係る流体性状検出装置1を構成する内側電極22、検出電極21、及びカバー電極27の断面図である。図9に示すように、変形例の内側電極22、検出電極21、カバー電極27は、径方向の断面形状が星形(ヘキサグラム)形状となっている。カバー電極27には、例えば星形形状の鞍の部分に流通孔271が形成され、同様に検出電極21にも流通孔211が形成されている。上記構成により、検出電極21と内側電極22との対向面積、及び検出電極21とカバー電極27との対向面積が増えるので、その分、キャパシタCを大容量化させることができ、式(1)に示す共振周波数f、及び式(2)に示す共振周波数fを低く設定できる。
【0131】
[本実施形態の構成、作用、及び効果]
以下、本実施形態(第1実施形態-第3実施形態)の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0132】
本実施形態に係る流体性状検出装置1は、流体に浸漬される接地電極(内側電極22、カバー電極27)と、流体に浸漬されるとともに接地電極(内側電極22、カバー電極27)に対向するように配置された検出電極21と、検出電極21に接続されたインダクタ部3101と、を含み、接地電極(内側電極22、カバー電極27)と検出電極21により形成されたキャパシタCとインダクタ部3101が電気的に互いに結合した共振回路8と、所定の発振周波数fの励起信号で共振回路8を励起する励起信号発振部3102と、励起信号と、共振回路8の出力信号と、の位相差θを検出する位相差検出部(第1コンパレータ3103、第2コンパレータ3104、位相比較器3105)と、位相差θが所定の位相差(θ)を維持するように発振周波数fを制御する制御部3112と、を備え、発振周波数fの変化により流体の性状を検出することを特徴とする。
【0133】
上記構成により、発振周波数fを常に共振回路8において位相変化の最も急峻な周波数となるように制御できるので、キャパシタCの静電容量、すなわち流体の比誘電率が変化しても発振周波数fを当該周波数に追従でき、常に位相変化に対して最大感度の状態を維持できる。したがて、励起信号と共振回路8の出力信号との間の位相差θの検出感度を向上させることで流体の性状の変化(経時劣化)を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0134】
本実施形態の流体性状検出装置1において、励起信号発振部3102に接続されるとともに検出電極21から離間した状態で検出電極21に近接して配置された励起電極28をさらに備え、励起信号発振部3102は、励起電極28と検出電極21との間に形成される寄生容量(キャパシタC)を介して励起信号を共振回路8に出力することで共振回路8を励起することを特徴とする。
【0135】
上記構成により、励起信号が印加される励起電極28と、検出電極21とが空間的に分離されるので励起電極28と検出電極21との間に直流の抵抗成分はなく、寄生容量(キャパシタC)を介して両者が電気的に結合されるので、共振回路8のQ値を向上させることができる。これにより励起信号と共振回路8の出力信号との間の位相差θの検出感度を向上させることで流体の性状の変化(経時劣化)を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0136】
本実施形態の流体性状検出装置1において、インダクタ部3101は、インダクタを含まない複数のインピーダンス素子を含む等価インダクタであることを特徴とする。
【0137】
上記構成により、インダクタンスLを通常のインダクタ素子よりも十分に大きく設定することができるので、共振周波数f及び共振周波数fを低い値に設定でき、これにより発振周波数fを低い値に設定できる。従って、インダクタ部3101のほか、励起信号発振部3102、及び位相差検出部(第1コンパレータ3103、第2コンパレータ3104、位相比較器3105)を汎用の電子部品(半導体デバイス)を組み合わせて構築可能となり、低コストで小さなサイズで構成可能となる。
【0138】
本実施形態の流体性状検出装置1において、インピーダンス素子は、検出電極21に接続された第1抵抗(R)と、第2抵抗(R)と、第3抵抗(R)と、第2キャパシタ(C)と、接地電極(内側電極22、カバー電極27)に接続された第4抵抗(R)と、を含むとともに第1抵抗(R)、第2抵抗(R)、第3抵抗(R)、第2キャパシタ(C)、及び第4抵抗(R)の順に直列に接続された直列回路を形成していることを特徴とする。
【0139】
上記構成により、等価インダクタが所謂GIC回路により構築されるので、大きなインダクタンス値が得られる。
【0140】
本実施形態の流体性状検出装置1において、第4抵抗(R)は、第2キャパシタ(C)に接続された第5抵抗(R)と、接地電極(内側電極22、カバー電極27)に接続されるとともに第5抵抗(R)に接続された第6抵抗(R)と、を含み、第6抵抗(R)は第5抵抗(R)よりも抵抗値が低く設定され、共振回路8の出力端子は、第5抵抗(R)と第6抵抗(R)との間から延出していることを特徴とする。
【0141】
上記構成により、共振回路8(インダクタ部3101)の出力電圧を小さくできるので、当該出力電圧による共振回路8(インダクタ部3101)の発振を抑制できる。
【0142】
本実施形態の流体性状検出装置1において、制御部3112は、発振周波数fを共振回路8の共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)、又は共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)の近傍の周波数に設定することを特徴とする。
【0143】
上記構成により、発振周波数fを少なくとも共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)に近傍に設定することで、励起信号(電圧)と共振回路8の出力信号(電圧)との位相差θが流体の状態の変化に対応して敏感に変化するので、位相差θの検出感度を向上させることができる。
【0144】
本実施形態の流体性状検出装置1において、出力信号の振幅を検出する振幅検出部(第2電圧センサ3108、第2ローパスフィルタ3116、制御部3112)をさらに備え、制御部3112は、発振周波数fを変化させて振幅(電圧V2)が所定の閾値(Vr)以上となる周波数領域を探索して検出し、周波数領域において発振周波数fを変化させつつ励起信号と出力信号の位相差θを検出することで発振周波数fと位相差θとの相関関係(ドットデータ3117、一次関数3118)を算出し、相関関係(ドットデータ3117、一次関数3118)に基づいて位相差θが所定の位相差(θ)となるモニタ周波数fを算出することを特徴とする。
【0145】
上記構成により、励起信号と出力信号の位相差θに関して共振回路8において位相変化の最も急峻な周波数に対応する位相差θの範囲内でモニタ周波数f(発振周波数f)を高精度に算出できるので、キャパシタCの静電容量、すなわち流体の比誘電率が変化してもモニタ周波数f(発振周波数f)を当該周波数に高精度に追従でき、常に位相変化に対して最大感度の状態を維持できる。
【0146】
本実施形態の流体性状検出装置1において、制御部3112は、当該周波数領域を探索する場合において周波数領域よりも高周波となる周波数から発振周波数fを減少させることで当該周波数領域を探索することを特徴とする。
【0147】
励起信号が高調波成分を含む場合であって当該高調波成分が共振回路8の共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)に近接する場合、共振回路8が当該高調波成分に応答して周波数領域の探索に不具合が生じるおそれがある。しかし、上記構成により、当該周波数領域よりも高周波となる周波数から当該発振周波数を減少させることで当該周波数領域を探索するので、高調波成分に対して共振回路8が応答することはなく、当該周波数領域の探索を確実に行うことができる。
【0148】
本実施形態の流体性状検出装置1において、インダクタ部3101の温度又は流体の温度を測定する温度センサ3110をさらに備え、制御部3112は、温度センサ3110が検知する温度に基づいて共振回路8の共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)の補正量を算出することを特徴とする。
【0149】
上記構成により、算出した補正量に基づいて発振周波数fの情報、又はモニタ周波数fの情報を補正することで、流体(作動油)の温度変化に関わらず補正後の発振周波数fの情報、又は補正後のモニタ周波数fの情報を介して流体(作動油)の性状を高精度且つ短時間で検出することができる。
【0150】
本実施形態の流体性状検出装置1において、制御部3112は、発振周波数fの情報、又はモニタ周波数fの情報が所定の下限周波数fよりも低くなった場合、又は所定の上限周波数fよりも高くなった場合に警告信号を外部に出力することを特徴とする。
【0151】
上記構成により、発振周波数fの情報、又はモニタ周波数fの情報が所定の上限周波数fよりも高くなった場合に警告信号を出力することで作業者に流体に異常が発生した旨を周知させ、発振周波数fの情報、又はモニタ周波数fの情報が所定の下限周波数fよりも低くなった場合に警告信号を出力することで作業者に流体を交換すべき旨周知させることができる。
【0152】
本実施形態の流体性状検出装置1において、制御部3112は、発振周波数fの情報、発振周波数fと所定の下限周波数fとの差分の情報、モニタ周波数fの情報、モニタ周波数fと下限周波数fとの差分の情報のうちの少なくとも一つを外部に出力することを特徴とする。
【0153】
上記構成により、発振周波数fの情報、発振周波数fと所定の下限周波数fとの差分の情報、モニタ周波数fの情報、モニタ周波数fと下限周波数fとの差分の情報のうちの少なくとも一つを外部に出力することにより、作業者が流体の種類や機器の使用状況などに応じて閾値を設定できるため、機器で使用される流体の交換時期を最適化することができる。
【0154】
本実施形態の流体性状検出装置1において、出力信号の振幅を検出する振幅検出部(第2電圧センサ3108、第2ローパスフィルタ3116、制御部3112)をさらに備え、制御部3112は、振幅(電圧V2)が所定の閾値(Vr)よりも低くなった場合に、発振周波数fを変化させて振幅(電圧V2)が閾値(Vr)以上となる周波数領域を探索して検出し、当該周波数領域において発振周波数fを制御することを特徴とする。
【0155】
上記構成により、例えば短時間に流体の性状、又は電極の性状が変化して共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)が急激に変化した場合に出力信号が変化し、励起信号と共振回路8の出力信号との位相差θが所定の位相差(θ)を維持できなくなる場合が発生する。よって、出力信号が所定の振幅(Vr)以上となる周波数領域を探索しつつ検出して当該周波数領域で発振周波数fを制御させることで、励起信号と共振回路8の出力信号との位相差θが所定の位相差(θ)となるように発振周波数fを再び共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)に追従させることができる。
【0156】
本実施形態(第2実施形態)の流体性状検出装置1において、励起信号発振部3102と励起電極28の間に配置されたローパスフィルタ(第1ローパスフィルタ3115)をさらに含むことを特徴とする。
【0157】
励起信号が高調波成分を含む場合であって当該高調波成分が共振回路8の共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)に近接する場合、共振回路8が当該高調波成分に応答して当該周波数領域の探索に不具合が生じるおそれがある。しかし、上記構成により、共振回路8に励起信号の高調波成分の共振回路8への入力が制限されるので、共振回路8の高調波成分に対する応答が抑制され、当該周波数領域の探索を確実に行うことができる。
【0158】
本実施形態(第1実施形態)の流体性状検出装置1において、励起信号発振部3102が出力する励起信号が正弦波の場合において、位相差検出部(第1コンパレータ3103、第2コンパレータ3104、位相比較器3105)は、励起信号の正負の符号の一方に基づいて第1方形波を出力する第1方形波生成部(第1コンパレータ3103)と、出力信号の正負の符号のうち当該一方となる符号に基づいて第2方形波を出力する第2方形波生成部(第2コンパレータ3104)と、第1方形波及び第2方形波の立ち上がり又は立ち下がりの時間差の情報を取得することで位相差θを検出する位相比較器3105と、を含むことを特徴とする。
【0159】
上記構成により、簡易な構成で、励起信号と共振回路8の出力信号との位相差θを検出することができる。
【0160】
本実施形態(第2実施形態)の流体性状検出装置1において、励起信号発振部3102が発振する励起信号が方形波の場合において、位相差検出部(位相比較器3105)は、励起信号及び出力信号の立ち上がり又は立ち下がりの時間差の情報を取得することで位相差θを検出することを特徴とする。
【0161】
上記構成により、簡易な構成で、励起信号と共振回路8の出力信号との位相差θを検出することができる。
【0162】
本実施形態(第3実施形態)の流体性状検出装置1において、接地電極(内側電極22、カバー電極27)の検出電極21に対向する面、及び検出電極21の接地電極(内側電極22、カバー電極27)に対向する面は、それぞれ波型形状を有することを特徴とする。
【0163】
上記構成により、接地電極(内側電極22、カバー電極27)及び検出電極21の対向面積を増やすことで接地電極(内側電極22、カバー電極27)及び検出電極21により形成されるキャパシタCのうち有効な静電容量の割合を大きくすることができ、検出の感度を改善することができる。
【0164】
本実施形態に係る流体性状検出方法は、流体に少なくとも一部が浸漬された接地電極(内側電極22、カバー電極27)と、流体に少なくとも一部が浸漬されるとともに接地電極(内側電極22、カバー電極27)に対向するように配置された検出電極21と、検出電極21に接続されたインダクタ部3101と、を含むことで、接地電極(内側電極22、カバー電極27)と検出電極21により形成されたキャパシタCとインダクタ部3101が電気的に互いに結合した共振回路8を所定の発振周波数fの励起信号で励起し、励起信号と、共振回路8の出力信号と、の位相差θを検出し、位相差θが所定の位相差(θ)を維持するように発振周波数fを制御することで、発振周波数fの変化により流体の性状を検出することを特徴とする。
【0165】
上記方法により、発振周波数fを常に共振回路8において位相変化の最も急峻な周波数となるように制御できるので、キャパシタCの静電容量、すなわち流体の比誘電率が変化しても発振周波数fを当該周波数に追従でき、常に位相変化に対して最大感度の状態を維持できる。したがて、励起信号と共振回路8の出力信号との間の位相差θの検出感度を向上させることで流体の性状の変化(経時劣化)を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0166】
本実施形態の流体性状検出方法において、検出電極21から離間した状態で検出電極21に近接した位置に配置された励起電極28に励起信号を印加し、励起電極28と検出電極21との間に形成される寄生容量(キャパシタC)を介して励起信号を共振回路8に出力することで共振回路8を励起することを特徴とする。
【0167】
上記方法により、励起信号が印加される励起電極28と、検出電極21とが空間的に分離されるので励起電極28と検出電極21との間に抵抗成分はなく、寄生容量(キャパシタC)を介して両者が電気的に結合されるので、共振回路8のQ値を向上させることができ、これにより励起信号と共振回路8の出力信号との間の位相差θの検出感度を向上させることで流体の性状の変化を敏感に検出するモニタリングが可能となる。
【0168】
本実施形態の流体性状検出方法において、出力信号の振幅(電圧V2)が所定の閾値(Vr)を超える周波数領域を探索して検知し、当該周波数領域において発振周波数fを変化させつつ励起信号と出力信号の位相差θを検出することで発振周波数fと位相差θとの相関関係(ドットデータ3117、一次関数3118)を算出し、相関関係(ドットデータ3117、一次関数3118)に基づいて位相差θが所定の位相差(θ)となるモニタ周波数fを算出することを特徴とする。
【0169】
上記方法により、モニタ周波数f(発振周波数f)を常に共振回路8において位相変化の最も急峻な周波数となるように高精度に制御できるので、キャパシタCの静電容量、すなわち流体の比誘電率が変化してもモニタ周波数f(発振周波数f)を当該周波数に高精度に追従でき、常に位相変化に対して最大感度の状態を維持できる。
【0170】
本実施形態の流体性状検出方法において、当該周波数領域を探索する場合において周波数領域よりも高周波となる周波数から発振周波数fを減少させることで当該周波数領域を探索することを特徴とする。
【0171】
励起信号が高調波成分を含む場合であって当該高調波成分が共振回路8の共振周波数(共振周波数f、共振周波数f)に近接する場合、共振回路8が当該高調波成分に応答して当該周波数領域の探索に不具合が生じるおそれがある。しかし、上記方法により、当該周波数領域よりも高周波となる周波数から発振周波数fを減少させることで当該周波数領域を探索するので、高調波成分に対して共振回路8が応答することはなく、当該周波数領域の探索を確実に行うことができる。
【0172】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0173】
1・・・流体性状検出装置、21・・・検出電極、22・・・内側電極、27・・・カバー電極、28・・・励起電極、3101・・・インダクタ部、3102・・・励起信号発振部、3103・・・第1コンパレータ、3104・・・第2コンパレータ、3105・・・位相比較器、3107・・・第1電圧センサ、3108・・・第2電圧センサ、3110・・・温度センサ、3112・・・制御部、3113・・・第3コンパレータ、3114・・・整流回路、3115・・・第1ローパスフィルタ、3116・・・第2ローパスフィルタ、3117・・・ドットデータ、3118・・・・一次関数、8・・・共振回路、C・・・キャパシタ、C・・・キャパシタ(寄生容量)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9