(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】人格評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/00 20240101AFI20250611BHJP
【FI】
G06Q50/00 300
(21)【出願番号】P 2024082665
(22)【出願日】2024-05-21
【審査請求日】2024-12-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524192339
【氏名又は名称】株式会社onTrust
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 亮介
(72)【発明者】
【氏名】熊木 景
【審査官】北元 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-168653(JP,A)
【文献】特開2008-226268(JP,A)
【文献】特開2000-207406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末に対する会話サービスの提供および管理を行うサービス管理装置と、前記ユーザ端末を用いるユーザに対応した仮想的な模倣人格を生成する模倣人格生成装置とを備えており、
前記模倣人格生成装置は、前記ユーザの会話情報に基づき前記ユーザの人格を反映させた模倣人格を生成する模倣人格生成部と、前記ユーザの持つスキルに対応して前記模倣人格に補正をかけるスキル補正部と、前記ユーザの会話情報から得られた前記ユーザの価値観の閾値に対応して前記模倣人格に補正をかける価値観補正部とを有しており、
前記模倣人格生成装置は、前記ユーザと前記模倣人格とのそれぞれに対して自由会話形式の性格診断を実行し、
前記サービス管理装置は、前記ユーザの性格診断情報と前記模倣人格の性格診断情報とを比較して、その類似度から前記模倣人格の模倣精度を判断する、
人格評価システム。
【請求項2】
前記サービス管理装置は、前記模倣人格をユーザごとに多数有しており、
任意ユーザの会話情報から得られる前記任意ユーザの言動を前記多数の模倣人格に評価させ、当該評価結果を前記任意ユーザの特性波形として設定する、
請求項
1に記載した人格評価システム。
【請求項3】
前記サービス管理装置は、前記任意ユーザの特性波形と別の任意ユーザの特性波形とを比較して、その類似度から前記両ユーザがマッチングするか否かを判断する、
請求項
2に記載した人格評価システム。
【請求項4】
前記サービス管理装置は、複数の任意ユーザの特性波形の集合体を特定コミュニティの特性波形として設定し、
前記任意ユーザの特性波形と前記特定コミュニティの特性波形とを比較して、その類似度から前記任意ユーザが前記特定コミュニティにマッチングするか否かを判断する、
請求項
2に記載した人格評価システム。
【請求項5】
前記サービス管理装置は、複数の任意ユーザの特性波形の集合体を特定コミュニティの特性波形として設定し、
前記特定コミュニティの特性波形と別の前記特定コミュニティの特性波形とを比較して、その類似度から前記両特定コミュニティがマッチングするか否かを判断する、
請求項
2に記載した人格評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ユーザの人格を評価する人格評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスマートフォン、タブレットまたはコンピュータ等の情報処理端末を用いてリアルタイムの文字等通信を行う、いわゆるチャットサービスが提供されている。チャットの態様としては、ユーザが1対1で行うユーザ間チャット、特定コミュニティに属する複数ユーザ間で行うコミュニティ内チャット、あるいはコミュニティ間チャットが挙げられる。この種のチャットサービス技術は、例えば特許文献1等に開示されている。
【0003】
チャットサービスでは、チャットを始めるにあたり友だち登録やコミュニティ登録といった所定の承認プロセスを経てユーザに参加してもらい、そうしてユーザ数を増加させていくのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の場合、サービス事業者が関与しないところでユーザが増加するため、不特定多数のユーザによって、意識的か無意識かに拘らず、例えば他人を非難、誹謗または中傷する行為が発生したり、この種の行為を嫌気するユーザがチャットサービスを止める等してチャットサービス自体が過疎化したりするという懸念があった。
【0006】
この場合考えられる対策としては、上記の問題が起こらないように、サービス事業者がチャットへの書き込み内容を常時チェックし監視することが挙げられるが、工数が多くて手間がかかりコストが嵩むだけでなく、すべてを防ぎきれるものではない。
【0007】
もし仮に、チャットサービスを利用するすべてのユーザの性格や気質といった人格を把握していれば、例えばトラブルを引き起こす可能性の高いユーザに注意を促す等して、ユーザ間のトラブルを未然に防止することが可能になると解される。また、過疎化しつつあるコミュニティに、場を盛り上げるのが上手いユーザの参加を促して、当該コミュニティの活性化を図ることも可能になると解される。すなわち、チャットサービスを利用するすべてのユーザの人格に通じていれば、サービス事業者がチャットへの書き込み内容を常時チェックし監視しなくても、チャットサービスの運営円滑化と普及拡大との両立を図れると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、ユーザの人格を適切に評価する人格評価システムを提供することを技術的課題とするものである。
【0009】
本願発明に係る人格評価システムは、ユーザ端末に対する会話サービスの提供および管理を行うサービス管理装置と、前記ユーザ端末を用いるユーザに対応した仮想的な模倣人格を生成する模倣人格生成装置とを備えており、前記模倣人格生成装置は、前記ユーザの会話情報に基づき前記ユーザの人格を反映させた模倣人格を生成する模倣人格生成部と、前記ユーザの持つスキルに対応して前記模倣人格に補正をかけるスキル補正部と、前記ユーザの会話情報から得られた前記ユーザの価値観の閾値に対応して前記模倣人格に補正をかける価値観補正部とを有しており、前記模倣人格生成装置は、前記ユーザと前記模倣人格とのそれぞれに対して自由会話形式の性格診断を実行し、前記サービス管理装置は、前記ユーザの性格診断情報と前記模倣人格の性格診断情報とを比較して、その類似度から前記模倣人格の模倣精度を判断するというものである。
【0011】
本願発明の人格評価システムにおいて、前記サービス管理装置は、前記模倣人格をユーザごとに多数有しており、任意ユーザの会話情報から得られる前記任意ユーザの言動を前記多数の模倣人格に評価させ、当該評価結果を前記任意ユーザの特性波形として設定するようにしてもよい。
【0012】
本願発明の人格評価システムにおいて、前記サービス管理装置は、前記任意ユーザの特性波形と別の任意ユーザの特性波形とを比較して、その類似度から前記両ユーザがマッチングするか否かを判断するようにしてもよい。
【0013】
本願発明の人格評価システムにおいて、前記サービス管理装置は、複数の任意ユーザの特性波形の集合体を特定コミュニティの特性波形として設定し、前記任意ユーザの特性波形と前記特定コミュニティの特性波形とを比較して、その類似度から前記任意ユーザが前記特定コミュニティにマッチングするか否かを判断するようにしてもよい。
【0014】
本願発明の人格評価システムにおいて、前記サービス管理装置は、複数の任意ユーザの特性波形の集合体を特定コミュニティの特性波形として設定し、前記特定コミュニティの特性波形と別の前記特定コミュニティの特性波形とを比較して、その類似度から前記両特定コミュニティがマッチングするか否かを判断するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、会話サービスを利用する各ユーザの人格を、対応する模倣人格から簡単に把握できる。このため、例えばトラブルを引き起こす可能性の高いユーザに対して会話サービスの使用に制限をかけたりして、ユーザ間のトラブルを未然に防止できる。また、過疎化しつつあるコミュニティに、場を盛り上げるのが上手いユーザの参加を促して、当該コミュニティの活性化も図れる。要するに、サービス事業者が会話内容を常時チェックし監視しなくても、会話サービスの運営円滑化と普及拡大とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態における人格評価システムの構成を示す概念図である。
【
図2】サービス管理装置のハードウェア構成を示す概念図である。
【
図3】ユーザ端末のハードウェア構成を示す概念図である。
【
図4】模倣人格を生成する一例を示すシーケンス図である。
【
図5】模倣人格を高精度化させる一例を示すシーケンス図である。
【
図6】ユーザの人格評価を高精度化させる一例を示すフローチャートである。
【
図7】模倣人格に評価されたユーザの価値観波形を示す図である。
【
図8】特定コミュニティにユーザを参加させるか否かの承認プロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図面には好ましい実施形態を示しているが、多くの異なる形態で実施することが可能であり、本願明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0018】
はじめに、
図1等を参照しながら、実施形態に係る人格評価システムS(以下単に「システムS」という。)の概要について説明する。システムSは、会話サービスの一例であるチャットサービスでのユーザUの会話内容等に基づき、模倣人格生成装置としての生成系AI2(生成系人工知能)を用いてユーザUの人格を評価するものである。
【0019】
図1に示すように、システムSは、当該システムSのサービス事業者が運用するサービス管理装置1、生成系AI2、および複数のユーザ端末3等を備えている。
【0020】
サービス管理装置1は、一または複数のコンピュータで構成されていて、通信ネットワーク4上において例えばウェブサーバとして機能している。実施形態のサービス管理装置1は、各ユーザ端末3に対してチャットサービスの提供および管理を行うように構成されている。サービス管理装置1は、通信ネットワーク4を介して各ユーザ端末3と通信接続可能に構成されていて、各ユーザ端末3との間で各種情報をやり取りすることが可能である。
【0021】
生成系AI2は、機械学習やディープラーニングに代表される公知のAIプログラム、AIライブラリまたはAIプラットフォームを含む方法を活用したものである。テキストデータ、音声データまたは映像データに対応するAI技術としては、例えば隠れマルコフモデル、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、もしくはLSTM(Long Short-Term Memory)等の公知モデルや方法が用いられる。
【0022】
実施形態の生成系AI2は、例えばChatGPT等のような大規模言語モデル(LLM)をベースにした学習モデルが用いられる。生成系AI2は、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介して、サービス管理装置1に通信接続可能に構成されている。
【0023】
生成系AI2は、各ユーザUのユーザ言動情報7に基づき、喜怒哀楽等の感情、感謝称賛等の肯定的行為および誹謗中傷等の否定的行為を抽出する。そして、生成系AI2は、当該抽出した結果を指標として、ユーザUに対する人格評価を実行可能になっている。例えばチャットアプリ5の使用回数が少ない、他のユーザUに誹謗中傷等の否定的行為をするといったユーザUには、低めの評価がなされる。場を盛り上げる、感謝称賛等の肯定的行為をする、他のユーザUに好感を持たれる言葉遣いをするといったユーザUには、高めの評価がなされる。なお、ユーザ言動情報7には、例えばチャット等の各種テキスト、イメージおよびファイル等が含まれ、文字だけでなく、音声、画像または映像も含んでよい。
【0024】
生成系AI2は、ユーザUのユーザ言動情報7に基づきユーザUの人格を反映させた模倣人格Cを生成する模倣人格生成部21、ユーザUの持つスキルに対応して模倣人格Cに補正をかけるスキル補正部22、およびユーザUのユーザ言動情報7から得られたユーザUの価値観の閾値に対応して模倣人格Cに補正をかける価値観補正部23等を有している。
【0025】
模倣人格生成部21は、後述する記憶部13のユーザ言動情報DB19に収集し蓄積された各ユーザUのユーザ言動情報7を解析することによって、各模倣人格C(これを構成するプログラム)を生成する。各模倣人格Cは、コンピュータプログラムにて構築されていて、あたかも実際の人間と同じような仮想の人間として振る舞い、対応するユーザUを真似た性格および感情を有する。各模倣人格Cの感情は、対応するユーザUの感情と同様の変化をするように設定される。言い換えると、各模倣人格Cは、対応するユーザUの感情をシミュレート(またはエミュレート)するように設定される。
【0026】
模倣人格Cは、ユーザUの性格、感情および感情の変化を真似た人工知能(AI)であり、具体的には、アルゴリズムを実行するプログラムや当該プログラムで処理されるデータを含んでいる。模倣人格Cは、ユーザ言動情報7に基づきユーザUに関する学習を行う学習機能、ユーザUの感情を推定(検出)する感情検出機能、ユーザUとの間で会話を行う会話実行機能等に対応するアルゴリズムを有する。各模倣人格Cは、サービス管理装置1における情報処理部12の模倣人格実行部17(詳細は後述する)にて実行処理される。
【0027】
スキル補正部22は、各ユーザUのスキル(例えば職業等)に基づき、当該ユーザUに対する模倣人格Cの傾向性に補正をかける処理を実行するものである。ユーザUのスキルとは、訓練や学習によって培われた高度な能力を意味する。実施形態ではユーザUの職業からそのスキルを推察しているが、ユーザUの他の能力からスキルを認定してもよい。
【0028】
価値観補正部23は、各ユーザUのユーザ言動情報7に基づき、当該ユーザUの有する善悪、好き嫌い、損得、利害、苦楽、難易、可否、快不快および正誤といった各判断(価値観)の閾値を分析し、当該分析結果を、対応する模倣人格Cにおける各判断の閾値とする処理を実行するものである。
【0029】
各ユーザ端末3は、これを所有するユーザUがチャットサービスの提供を受ける情報処理端末である。ユーザ端末3としては、例えばスマートフォン、タブレットまたはコンピュータ等が挙げられる。各ユーザ端末3は、通信ネットワーク4を介してサービス管理装置1と通信接続可能に構成されていて、サービス管理装置1との間で各種情報をやり取りすることが可能である。
【0030】
各ユーザ端末3は、サービス管理装置1を経て、異なる端末3と相互に通信ネットワーク4経由の通信を実行することが可能である。チャットサービスを初めて使う場合は、ユーザ端末3を用いてサービス管理装置1にアクセスし、チャットアプリ5をダウンロードしてユーザ端末3にインストールする。
【0031】
各ユーザ端末3には、ユーザUの個人データ等を含むユーザ情報が記憶されている。ユーザ情報としては、例えば氏名、性別、生年月日(年齢)、職業、携帯電話番号、並びにチャットサービスのユーザID6(
図2参照)やコミュニティID等が挙げられる。なお、通信ネットワーク4は、例えばインターネット、移動体通信ネットワークおよび基地局等によって構成されるが、通信プロトコルの種類に制限はないし、ネットワークの種類や規模にも制限はない。
【0032】
図2は、サービス管理装置1のハードウェア構成を示す概念図である。
図2に示すように、サービス管理装置1は、通信部11、情報処理部12および記憶部13等を備えている。通信部11、情報処理部12および記憶部13等は、それぞれ相互にシステムバス14を介して接続されている。
【0033】
通信部11は、例えばイーサネット用のNIC、または有線LANや無線LANといった通信用の各種モジュールであり、通信ネットワーク4に通信接続する機能を有している。
【0034】
情報処理部12は、RAM、ROMおよびCPU(図示省略)等を備えている。情報処理部12は、記憶部13に記憶されたチャット管理プログラム等に従って、例えば各ユーザ端末3から会話情報であるチャット情報を取得して記憶部13に記録する処理や、コミュニティ等に属する他のユーザ端末3に送信する処理を実行する。
【0035】
情報処理部12には、性格類似度演算部15、波形類似度演算部16、模倣人格実行部17および価値観波形生成部24等を有している。性格類似度演算部15は、生成系AI2との会話から求められるユーザUと模倣人格Cの性格診断情報を比較してどの程度の一致具合かを示す性格類似度を求める処理を実行するものである。詳細は後述するが、価値観波形生成部24は、各ユーザUや特定コミュニティSC等に関して、模倣人格Cごとの徳および地雷の累積結果を示す特性波形としての価値観波形G+(UまたはSC),G-(UまたはSC)を求める処理を実行するものである。また、波形類似度演算部16は、各ユーザUの価値観波形G+(U),G-(U)や特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)を比較してどの程度の一致具合かを判断する処理を実行するものである。模倣人格実行部17は、人工知能のアルゴリズムを含むプログラムである模倣人格Cの実行処理を担うものである。
【0036】
ここで、性格類似度とは、ユーザUと模倣人格Cの性格診断情報同士の類似度合いを示す指標である。性格類似度としては、例えば模倣人格Cの性格診断情報の特徴量ベクトルと、ユーザUの性格診断情報の特徴量ベクトルとのコサイン類似度を用いればよい。コサイン類似度は、情報と情報のベクトルの向きの近さ(角度)によって、情報同士の類似度合いを評価するものである。
【0037】
より詳細に説明すると、例えば性格類似度演算部15はまず、特徴量ベクトルの全要素のうち両方の性格診断情報の値が1である数aを算出する。それから、性格類似度演算部15は、特徴量ベクトルの全要素のうちいずれか一方の性格診断情報の値が1である数bを算出する。そして、性格類似度演算部15は、算出した数aを数bで割って、模倣人格Cの性格診断情報の特徴量ベクトルと、ユーザUの性格診断情報の特徴量ベクトルとのコサイン類似度(a/b)を算出する。この場合、性格類似度の最大値は「1」となり、最小値は「0」となる。
【0038】
また、波形類似度とは、ユーザU間の価値観波形G+(U),G-(U)の類似度合いや、ユーザUの価値観波形G+(U),G-(U)と特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)との類似度合い、もしくはある特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)と別の特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)との類似度合いを示す指標である。波形類似度としても、価値観波形の特徴量ベクトル間のコサイン類似度を用いればよい。
【0039】
なお、性格類似度や波形類似度を算出する手法は、コサイン類似度に限定されるものではなく、別の算出関数を用いたり、テンプレートマッチングやパターンマッチングといった他の手法を用いたりしてもよい。すなわち、性格類似度や波形類似度を算出する手法は、任意の手法を適用してよい。
【0040】
記憶部13は、例えばHDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリ(SSD:Solid State Drive)、その他の固体メモリといった不揮発性メモリであり、オペレーティングシステムやチャット管理プログラム等が記憶されている。記憶部13には、チャットサービスを利用するユーザUのユーザID6やチャットコミュニティのコミュニティID等が記憶され管理されるとともに、各ユーザ端末3から取得した会話情報としてのユーザ言動情報7が対応するユーザID6に関連付けて記録される。
【0041】
この種のデータを含むデータベースとして、実施形態の記憶部13には、ユーザ情報データベース18(以下「ユーザ情報DB18」という。)、ユーザ言動情報データベース19(以下「ユーザ言動情報DB19」という。)および模倣人格データベース20(以下「模倣人格DB20」という。)等が構築されている。なお、各DB18~20は、サービス管理装置1とは別個にある通信ネットワーク4上のネットワークサーバ(図示省略)に設けられてもよいし、サービス管理装置1に別途接続したローカルサーバ(図示省略)に設けられていてもよい。
【0042】
記憶部13に記憶および管理される各種情報は、ブロックチェーン8(
図1参照)上に保管(格納)するのが望ましい。記憶部13のうち少なくともユーザ情報DB18に記憶された各種情報は、ブロックチェーン8上に保管するのが好適である。ブロックチェーン8(分散型台帳)は、通信ネットワーク4に接続された複数のコンピュータ関連機器(ノード)にて構成されるP2Pネットワークをベースとして、例えばイーサリアムやポリゴン等にて提供される分散型アプリケーションおよびスマートコントラクトにて構築される。
【0043】
ブロックチェーン8上に各種情報を保管する場合、各ユーザ端末3にてブロックチェーン8へのトランザクションを生成し、当該トランザクションがブロックチェーン8上で承認されると、ブロックチェーン8上で保管された各種情報が更新されるように構成するのが好ましい。サービス管理装置1は、ブロックチェーン8を構成するノードとして機能するようにしてもよい。なお、ブロックチェーン8としては、イーサリアムやポリゴンといったパブリックブロックチェーンを適用してもよいし、それ以外のプライベートブロックチェーンを適用してもよい。
【0044】
ユーザ情報DB18は、システムSの利用者アカウントが発行されたユーザUの各種情報を登録するデータベースである。ユーザ情報DB18には、先に説明したユーザ情報の一部、すなわち、ユーザ識別用のユーザID6、パスワード、ユーザUの職業、ユーザUが属するチャットコミュニティを示すコミュニティID等が各ユーザ端末3に対応付けて登録される。
【0045】
ユーザ言動情報DB19は、各ユーザ端末3から取得したチャットサービス利用時のメッセージ(会話)の各種テキスト、イメージおよびファイルといった多数のユーザ言動情報7を、ユーザID6毎に対応付けて収集し蓄積するデータベースである。ユーザ言動情報DB19には、個々のユーザUを特定するユーザID6を主キーとして、各ユーザ端末3から取得したユーザ言動情報7を適宜時間毎(例えば24時間(1日)毎や1時間毎等)に履歴としてまとめたテーブルが含まれている。模倣人格DB20は、生成系AI2によって生成される模倣人格Cの複数個を、ユーザID6毎に対応付けて記憶し格納するデータベースである。
【0046】
実施形態において、各模倣人格C(これを構成するプログラム)は、記憶部13のユーザ言動情報DB19に収集し蓄積された各ユーザUのユーザ言動情報7を生成系AI2の模倣人格生成部21(
図1参照)が解析することによって生成される。
【0047】
この場合、生成系AI2の模倣人格生成部21は、例えば心理学のビッグ・ファイブ理論等を参照して、各ユーザUのユーザ言動情報7に基づき喜怒哀楽等の感情、感謝称賛等の肯定的行為および誹謗中傷等の否定的行為を抽出し、当該ユーザUの性格および感情(いわゆる人格)を分析する。ビッグ・ファイブ理論では、ユーザUの人格を五つの特性に分類する。生成系AI2(模倣人格生成部21)が評価する五つの特性としては、協調性、誠実性、外向性、神経症的傾向および開放性が挙げられる。
【0048】
例えば協調性は、社会的調和と個人を調整しようとする特性を意味する。協調性が高評価のユーザUは、一般的に思慮深く親切かつ寛大で信頼でき、他人の関心と本人の関心を妥協しようとする性格であると解される。誠実性は、自制力を意味し、誠実性が高評価のユーザUは、誠実に行動し外部の期待に対して成就を追求する特性を有すると解される。外向性は、多様な活動または外部環境からエネルギーを得られる特性である。外向性が高評価のユーザUは、他のユーザUと交流するのを好み、情熱的で行動的であると解される。
【0049】
神経症的傾向は、怒り、不安またはうつ病等の否定的な感情を容易に感じる傾向を意味する。神経症的傾向が高評価のユーザUは、感情的に反応しやすくストレスに弱く、感情を表現する方法によって変化しやすい傾向があると解される。開放性は、芸術、感情、冒険、想像力、好奇心および多様な経験等に対する評価である。開放性が高評価のユーザUは、知的好奇心に富み、美しさに敏感であり、新しいことを喜んで試みる性格を有すると解される。
【0050】
生成系AI2の模倣人格生成部21は、五つの特性に対して0%~100%までの傾向性を付与して、このような傾向性に基づくユーザUの各特性を指標化(例えば点数化等)し、対応する模倣人格Cの各特性として転換する。
【0051】
そして、生成系AI2のスキル補正部22が、各ユーザUのスキル(実施形態では職業)に基づき各特性の傾向性に補正をかけて、補正された各特性の傾向性をユーザUの各特性の指標(例えば点数等)として反映させ、対応する模倣人格Cの補正された各特性として転換する。
【0052】
生成系AI2のスキル補正部22で求めた指標(例えば点数等)の分布が近いユーザU(模倣人格C)同士は、性格が似ている(近い)と評価される。指標(例えば点数等)の分布が全く異なるユーザU(模倣人格C)同士は、性格が異なる(遠い)と評価される。
【0053】
なお、性格等の分析手法としては、ビッグ・ファイブ理論に限らず、後述のMBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インジケータ)、ストレングスファインダー(登録商標)、その他の分析手法であってもよい。
【0054】
さらに、生成系AI2の価値観補正部23は、各ユーザUのユーザ言動情報7に基づき、当該ユーザUの有する善悪、好き嫌い、損得、利害、苦楽、難易、可否、快不快および正誤といった各判断(価値観)の閾値を分析して指標化(例えば点数化等)し、対応する模倣人格Cにおける各判断の閾値として転換する。
【0055】
この場合も、生成系AI2の価値観補正部23で求めた指標(例えば点数等)の分布が近いユーザU(模倣人格C)同士は、判断の感覚(価値観)が似ている(近い)と評価される。指標(例えば点数等)の分布が全く異なるユーザU(模倣人格C)同士は、判断の感覚(価値観)が異なる(遠い)と評価される。
【0056】
各模倣人格Cはそれぞれ、相互に異なる価値観の閾値(判断尺度、判断基準とも言える。)を有している。すなわち、各模倣人格Cの思考や判断基準を一般人と同じように個々に異ならせている。これは、人間の思考や判断基準を単一基準で数値化する手法が信頼性に乏しいことに鑑みて採用されたものである。
【0057】
例えば「時間にルーズ」や「タメ口」等に対する寛容さ加減の違いで、ある模倣人格Cではゼロ評価(問題視しない)なのに対して、別の模倣人格Cではマイナス評価または複数のマイナス評価をしたりする。つまり、各ユーザUの言動項目に対して、プラス評価か、マイナス評価か、またはゼロ評価かは、各模倣人格Cに委ねられる。おおまかに言って、プラス評価は、感謝称賛等の肯定的行為のように模倣人格Cが好意的な判断をした場合、マイナス評価は、誹謗中傷等の否定的行為のように模倣人格Cが非好意的な判断をした場合等が考えられる。
【0058】
なお、各ユーザUを評価する言動項目は、各ユーザUのユーザ言動情報7に基づき、生成系AI2または任意の模倣人格Cにて想起され、当該想起された言動項目を、すべての模倣人格Cが共通の事項として評価、判断するように設定されている。実施形態では、プラス評価のことを「徳」、プラス評価の累積を「徳を積む」と表現し、マイナス評価を「地雷」、マイナス評価の累積を「地雷を踏み続ける」と表現する場合がある。
【0059】
実施形態のシステムSでは、生成系AI2にて生成された各模倣人格C(これを構成するプログラム)がサービス管理装置1における記録部13の模倣人格DB20に格納される。そして、詳細は後述するが、サービス管理装置1(模倣人格実行部17)が各模倣人格Cを構成するプログラムを実行する。すなわち、各模倣人格Cを構成するプログラムをサービス管理装置1(模倣人格実行部17)が実行することによって、各模倣人格Cが動作する。
【0060】
この場合、サービス管理装置1は、所定のタイミングで各ユーザUのユーザ言動情報7を検出し収集する。追加または更新された各ユーザUのユーザ言動情報7も、ユーザID6毎に対応付けてユーザ言動情報DB19に格納される。生成系AI2(模倣人格生成部21)が、追加または更新された各ユーザUのユーザ言動情報7を解析して、対応する模倣人格Cに学習させたり、サービス管理装置1の模倣人格実行部17が、追加または更新された各ユーザUのユーザ言動情報7を解析して、対応する模倣人格Cに学習させたりする。
【0061】
このような学習によって、各模倣人格Cは、対応するユーザUの性格や感情、判断基準(閾値)をより高精度に模倣でき、当該ユーザUに特化して性格や感情、判断基準(閾値)を高精度に再現するアルゴリズムを獲得できる。各模倣人格Cのアルゴリズムは、学習の積み重ねによって、そのつど改良および改変される。サービス管理装置1は、各模倣人格Cの学習が進むごとに、当該模倣人格Cを更新して模倣人格DB20に格納する。
【0062】
図3は、ユーザ端末3のハードウェア構成を示す概念図である。
図3に示すように、ユーザ端末3は、CPU31、メモリ32、ストレージ33、通信IF34、入力装置35、表示部36および入出力IF37等を有している。これらはそれぞれ、相互にシステムバス38を介して接続されている。CPU31は、プログラムに従って各種演算を行い、ユーザ端末3の機能を実現する処理を行う。なお、CPU31の数は単一でもよいし、複数でもよい。複数のCPU31を用いる場合、これらCPU31は、同時に処理を実行してもよいし、逐次処理を実行してもよい。
【0063】
メモリ32は、CPU31が処理を実行する際のワークエリアとして機能する。メモリ32には、例えばRAMおよびROMが含まれる。ストレージ33は、各種プログラムおよびデータを記憶するものであり、例えばSSDおよび/またはHDDを含む。ストレージ33には、ユーザ端末3の機能を実現するためのプログラム、例えばサービス管理装置1が提供するチャットアプリ5等が記憶される。
【0064】
通信IF34は、所定の通信規格(例えばイーサネット)に従って他の装置と通信する。通信IF34には、例えばNICが含まれる。入力装置35は、ユーザUの操作に応じた情報を入力する。入力装置35には、例えばタッチセンサ、キーボード、キーパッド、マウス、およびマイクロフォンのうち少なくとも1つが含まれる。
【0065】
表示部36は、各種の情報を表示する。表示部36には、例えばLCDが含まれる。表示部36は、タッチセンサと一体になってタッチスクリーンとして構成されてもよい。入出力IF37は、入力装置35やカメラ等を接続するためのインターフェースである。
【0066】
次に、実施形態に係る人格評価システムSの動作のうち任意ユーザUnに対応した模倣人格Cn(添字nは1以上の整数)を生成する一例について、
図4を参照しながら説明する。
【0067】
図4に示すように、ユーザUnが自身のユーザ端末3でチャットアプリ5を起動させ、他のユーザUとのチャット等の言動(情報を取得可能な言動)を開始すると(ステップS01:YES)、サービス管理装置1は、ユーザUnのユーザ端末3nから、メッセージ等のユーザ言動情報7nをユーザID6nに対応付けてユーザ言動情報DB19に収集し蓄積する(ステップS02)。
【0068】
次いで、ユーザ言動情報7nが所定量収集されると(ステップS03:YES)、サービス管理装置1は、APIを介して生成系AI2に対し、ユーザID6nおよびユーザ言動情報7nを含む模倣人格Cnの生成要求を送信する(ステップS04)。
【0069】
サービス管理装置1からの模倣人格Cnの生成要求を受信した生成系AI2は、当該模倣人格Cn生成要求に応じて、模倣人格生成部21にユーザ言動情報7nに基づく解析にてユーザUnの各特性を指標化(例えば点数化等)させ、模倣人格Cn(プログラム)を生成する(ステップS05)。次いで、生成系AI2のスキル補正部22が、ユーザUnの職業に基づく補正を模倣人格Cnに反映させる(ステップS06)。それから、生成系AI2は、ユーザ言動情報7nに基づき、価値観補正部23にユーザUnの各判断の閾値を分析させて指標化(例えば点数化等)し、模倣人格Cnに反映させる(ステップS07)。
【0070】
生成系AI2による模倣人格Cn生成が完了すると、模倣人格Cn(プログラム)を含む模倣人格Cn生成完了通知が、生成系AI2からAPIを介してサービス管理装置1に送信される(ステップS08)。次いで、生成系AI2からの模倣人格Cn生成完了通知を受信したサービス管理装置1は、模倣人格CnをユーザID6nに紐付けして、記憶部13の模倣人格DB20に登録し格納する(ステップS09)。
【0071】
上記の制御によると、ユーザ端末3に対する会話サービスの提供および管理を行うサービス管理装置1と、ユーザ端末3を用いるユーザUに対応した仮想的な模倣人格Cを生成する模倣人格生成装置2(生成系AI)とを備えており、模倣人格生成装置2は、ユーザUの会話情報に基づきユーザUの人格を反映させた模倣人格Cを生成する模倣人格生成部21と、ユーザUの持つスキルに対応して模倣人格Cに補正をかけるスキル補正部22と、ユーザUの会話情報から得られたユーザUの価値観の閾値に対応して模倣人格Cに補正をかける価値観補正部23とを有しているから、会話サービスを利用する各ユーザUの人格を、対応する模倣人格Cから簡単に把握できる。このため、例えばトラブルを引き起こす可能性の高いユーザUに対して会話サービスの使用に制限をかけたりして、ユーザU間のトラブルを未然に防止できる。また、過疎化しつつあるコミュニティに、場を盛り上げるのが上手いユーザUの参加を促して、当該コミュニティの活性化も図れる。要するに、サービス事業者が会話内容を常時チェックし監視しなくても、会話サービスの運営円滑化と普及拡大とを両立できる。
【0072】
次に、実施形態に係る人格評価システムSの動作のうち任意ユーザUnに対応した模倣人格Cnを高精度化させる一例について、
図5を参照しながら説明する。この場合、ユーザUnに対応した模倣人格Cnがサービス管理装置1の記憶部13(模倣人格DB20)にすでに格納されているものとする。
【0073】
図5に示すように、ユーザUnが他のユーザUとのチャット等の言動(情報を取得可能な言動)を実行している途次において(ステップT01:YES)、サービス管理装置1は、ユーザUnの性格診断を高精度に模倣した結果になるまで実行済か否かを判別する(ステップT02)。ユーザUnの性格診断を未実行であれば(ステップT02:NO)、サービス管理装置1は、APIを介して生成系AI2に、ユーザUnに対する自由会話形式の性格診断の実行要求を送信する(ステップT03)。
【0074】
サービス管理装置1からの性格診断実行要求を受信した生成系AI2は、当該性格診断実行要求に応じて、自由会話形式での多数の質問を生成し、ユーザUnとの間で質問を含んだ会話を実行する(ステップT04)。
【0075】
生成系AI2による性格診断は、従来のような「いくつかの選択肢の中からユーザUnが選ぶ」形式(静的な性格診断)ではなく、ユーザUnと生成系AI2との間でチャット(会話)をすることによって、ユーザUnのスムーズな判断を促す形式で行われる。なぜなら、静的な性格診断では、「いくつかの選択肢の中からユーザUnが選ぶ」というように質問が予め設定されるため、ユーザUnの回答にブレが生じたり精度に欠けたりするという点で、検討の余地があったからである。
【0076】
これに対して、例えば生成系AI2は、チャットを途切らず継続させユーザUnの応答に合わせながら、内容や流れに即して質問を生成する。つまり、生成系AI2は、ユーザUnの応答に合わせて動的に振る舞って、ユーザUnに対する性格診断(動的な性格診断)を実行する。このような動的な性格診断を生成系AI2が実行すれば、生成系AI2は、自然な会話の流れから、ユーザUnに対する性格診断に際して必要な情報をすべて取得できるし、取得した情報もユーザUnの性格を高精度に反映したものが得られる。
【0077】
実施形態で用いる性格診断は、例えばMBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インジケータ)である。MBTIの診断手法はすでに公知なので、その詳細な説明は割愛する。なお、ここで用いられる性格診断の手法は、MBTIに限らず、前述のビッグ・ファイブ理論、ストレングスファインダー(登録商標)、その他の性格診断手法であってもよい。
【0078】
生成系AI2によるユーザUnの性格診断が完了すると、ユーザUnの性格診断情報を含む性格診断完了通知が、生成系AI2からAPIを介してサービス管理装置1に送信される(ステップT05)。次いで、生成系AI2からの性格診断完了通知を受信したサービス管理装置1は、ユーザUnの性格診断情報をユーザID6nに紐付けして、記憶部13に登録し格納する(ステップT06)。
【0079】
次いで、サービス管理装置1は、ユーザUnに対応した模倣人格Cnを起動させ、APIを介して生成系AI2に、模倣人格Cnに対する自由会話形式での性格診断の実行要求を送信する(ステップT07)。この場合、模倣人格Cnの実行処理は模倣人格実行部17が担う。サービス管理装置1からの性格診断実行要求を受信した生成系AI2は、当該性格診断実行要求に応じて自由会話形式での多数の質問を生成し、模倣人格Cnとの間で質問を含んだ会話を実行する(ステップT08)。ステップT08において生成系AI2は、ステップT04のときと同様に、模倣人格Cnに対して動的な性格診断を実行する。
【0080】
生成系AI2による模倣人格Cnの性格診断が完了すると、模倣人格Cnの性格診断情報を含む性格診断完了通知が、生成系AI2からAPIを介してサービス管理装置1に送信される(ステップT09)。次いで、生成系AI2からの性格診断完了通知を受信したサービス管理装置1(性格類似度演算部15)は、模倣人格Cnの性格診断情報をユーザID6nに紐付けして、記憶部13に登録し格納する(ステップT10)。
【0081】
次いで、サービス管理装置1(性格類似度演算部15)は、ユーザUnの性格診断情報と模倣人格Cnの性格診断情報を記憶部13から読み出して比較しユーザUに対する模倣人格Cの性格類似度を算出する(ステップT11)。ユーザUに対する模倣人格Cの性格類似度が所定閾値を上回れば(ステップT11:YES)、模倣人格Cnは、ユーザUnの性格や感情、判断基準(閾値)を高精度に模倣していて、当該ユーザUnに特化して性格や感情、判断基準(閾値)を高精度に再現するアルゴリズムを獲得しているといえる。そこで、模倣人格Cnが完成したとして、模倣人格Cnの高精度化処理を終了する。
【0082】
ユーザUに対する模倣人格Cの性格類似度が所定閾値を下回れば(ステップT11:NO)、サービス管理装置1は、APIを介して生成系AI2に対し、追加または更新されたユーザUnのユーザ言動情報7nおよびユーザID6nを含む模倣人格Cnの更新要求を送信する(ステップT12)。
【0083】
サービス管理装置1からの模倣人格Cn更新要求を受信した生成系AI2(模倣人格生成部21)は、当該模倣人格Cn更新要求に応じて、ユーザ言動情報7nに基づく解析にてユーザUnの各特性を指標化(例えば点数化等)し、模倣人格Cn(これを構成するプログラム)を更新する(ステップT13)。そして、生成系AI2のスキル補正部22が、ユーザUnのスキル(例えば職業等)に基づく補正を模倣人格Cnに反映させ(ステップT14)、さらに、生成系AI2の価値観補正部23が、追加または更新されたユーザ言動情報7nに基づきユーザUnの各判断の閾値を分析して指標化(例えば点数化等)し、模倣人格Cnに反映させる(ステップT15)。
【0084】
生成系AI2による模倣人格Cn更新が完了すると、模倣人格Cn(プログラム)を含む模倣人格Cn更新完了通知が、生成系AI2からAPIを介してサービス管理装置1に送信される(ステップT16)。次いで、生成系AI2からの模倣人格Cn更新完了通知を受信したサービス管理装置1が、模倣人格CnをユーザID6nに紐付けして、記憶部13の模倣人格DB20に登録し格納する(ステップT17)。
【0085】
その後、サービス管理装置1は、ステップT07に戻り、APIを介して生成系AI2に、更新された模倣人格Cnに対する自由会話形式での性格診断の実行要求を送信し、以下、更新された模倣人格CnのユーザUnに対する性格類似度が所定閾値を上回るまで、ステップT08~T16の処理がループして実行されるのである。
【0086】
上記の制御によると、模倣人格生成装置2(生成系AI)は、ユーザUと模倣人格Cとのそれぞれに対して自由会話形式の性格診断を実行し、サービス管理装置1は、ユーザUの性格診断情報と模倣人格Cの性格診断情報とを比較して、その性格類似度から模倣人格Cの模倣精度を判断するので、ユーザUの人格をより高精度に模倣した模倣人格Cを生成でき、ユーザUに特化してその人格を高精度に再現できるという効果を奏するのである。
【0087】
次に、実施形態に係る人格評価システムSの動作のうち、任意ユーザUnの人格評価を高精度化させる一例について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
【0088】
図6に示すように、ユーザUnが他のユーザUとのチャットを実行している途次において(ステップE01:YES)、サービス管理装置1(模倣人格実行部17)は、模倣人格DB20に記憶されたすべての模倣人格C1~C(n-1)を起動させ、ユーザUnのユーザ言動情報7nを全模倣人格C1~C(n-1)に監視させる(ステップE02)。それから、サービス管理装置1(模倣人格実行部17)は、これらユーザ言動情報7nから想起された多数の言動項目について、「徳」か「地雷」かまたは「問題なし」かを全模倣人格C1~C(n-1)に評価させ、これら評価を模倣人格C1~C(n-1)ごとに累積させる(ステップE03)。
【0089】
前述のとおり、各模倣人格C1~C(n-1)の思考や判断基準は、人間と同じように個々に異ならせている。このため、各ユーザUの言動項目に対して、プラス評価かマイナス評価かまたはゼロ評価かをするかは、各模倣人格Cによって分かれる(各模倣人格C1~C(n-1)によって異なる判断がなされる)。
【0090】
想起された全言動項目について各模倣人格C1~C(n-1)による評価が完了すると(ステップE04:YES)、サービス管理装置1の価値観波形生成部24は、ユーザUnに関して、模倣人格C1~C(n-1)ごとの徳および地雷の累積結果を示す特性波形としての価値観波形(価値観グラフとも言える。)を算出する(ステップE05)。実施形態の価値観波形は、徳波形G+(Un)と地雷波形G-(Un)との組合せによって表される。
図7には、模倣人格C1~C(n-1)に評価されたユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)の一例を示している。価値観波形G+(Un),G-(Un)における縦軸のプラス側は徳の累積値であり、マイナス側は地雷の累積値である。
【0091】
このように価値観波形G+(U),G-(U)を作成すると、ユーザUが各模倣人格C1~Cn-1からどのような評価を受けたかを価値観波形G+(U),G-(U)上に投影でき、各ユーザUの表面上および内面的な人格をより高精度に把握できる。各ユーザUの表面上および内面的な人格を高い信頼性を持って可視化できる。価値観波形G+(U),G-(U)の形状が似ているユーザU同士は、価値観が似ている(近い)と評価できる。価値観波形G+(U),G-(U)の形状が似ているユーザU同士は、同期率(類似率とも言える。)が高いと表現してもよい。価値観波形G+(U),G-(U)の形状が全く異なるユーザU同士は、価値観が相違していると評価できる。価値観波形G+(U),G-(U)の形状が全く異なるユーザU同士は、同期率が低いと表現してもよい。
【0092】
なお、ユーザUに関して模倣人格Cごとに判断した徳および地雷の累積結果を示すものは、前述の価値観波形G+(U),G-(U)に限定されるものではない。価値観波形に代えて、例えば勝利、情熱、愛情等を連想する「赤」、明朗快活、若さ、喜び等を連想する「黄」、自然、調和、平和等を連想する「緑」、静寂、知性、冷たい等を連想する「青」といった各色彩を用いて、ユーザUに関して模倣人格Cごとに判断した徳および地雷の累積結果をグラデーション状に表現するような価値観カラーチャートを採用したりしてもよい。
【0093】
次に、実施形態に係る人格評価システムSの動作のうち、ユーザU1~U(n-1)が属する特定コミュニティSCに任意ユーザUnを参加させるか否かを判別する承認プロセスの一例について、
図8を参照しながら説明する。なお、特定コミュニティSCとしては、例えば企業コミュニティ、ファンコミュニティ、オンラインサロン、ナレッジコミュニティ、趣味コミュニティまたは地域コミュニティといった各種コミュニティを採用してよい。
【0094】
ここで、ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)としては、
図7に示すグラフが予め求められている。また、特定コミュニティSCがどのような価値観を持つユーザU1~U(n-1)たちの集合体であるかを表すのに、各ユーザUの価値観波形G+(U),G-(U)を総合して求められる特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)が使用される。価値観波形G+(SC),G-(SC)は、特定コミュニティSCの特性波形に相当するものである。
【0095】
特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)は、各ユーザUの価値観波形G+(U),G-(U)に基づき、サービス管理装置1(価値観波形生成部24)によって算出され記憶部13に記憶される。特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)算出の一例として、例えば各ユーザUの徳波形G+(U)のうち模倣人格Cごとの累積値について、最頻値、中央値または平均値を取って徳波形G+(SC)を算出し、各ユーザUの地雷波形G-(U)のうち模倣人格Cごとの累積値について、最頻値、中央値または平均値を取って地雷波形G-(SC)を算出すれば、特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)が得られる。
【0096】
図8に示すように、ユーザUnが自身のユーザ端末3でチャットアプリ5を起動させ、特定コミュニティSCへの参加申請をすると(ステップP01:YES)、サービス管理装置1(波形類似度演算部16)は、ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)と特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)とを記憶部13から読み出す(ステップP02)。次いで、サービス管理装置1(波形類似度演算部16)は、ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)と特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)と比較して、特定コミュニティSCに対するユーザUnの波形類似度を算出する(ステップP03)。
【0097】
次いで、特定コミュニティSCに対するユーザUnの波形類似度が所定閾値を上回れば(ステップP04:YES)、ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)は、特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)に似ていて(同期率が高くて)、価値観が合う(マッチングする)と評価される。そこで、サービス管理装置1(波形類似度演算部16)は、ユーザUnのユーザ端末3(チャットアプリ5)に、特定コミュニティSCへの参加を許可する指令を発し(ステップP05)、他のユーザUとチャット可能な状態にする。
【0098】
特定コミュニティSCに対するユーザUnの波形類似度が所定閾値を下回れば(ステップP04:NO)、ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)は、特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)に相違していて(同期率が低くて)、価値観が合わない(マッチングしない)と評価される。そこで、サービス管理装置1(波形類似度演算部16)は、ユーザUnのユーザ端末3(チャットアプリ5)に、特定コミュニティSCへの参加を拒否する指令を発し(ステップP06)、ユーザUnを特定コミュニティSCに参加不能な状態にする。ステップP06では、ユーザUnの特定コミュニティの参加を拒否する例を示したが、これに限るものではなく、価値観が合わない(マッチングしない)という評価を指標とした対処(例えば特定コミュニティSCでの各種制限を設ける等)をサービス事業者が設定してよい。
【0099】
上記の制御によると、例えば価値観が合わなくてトラブルを引き起こす可能性の高いユーザUを招待したような場合でも、当該ユーザUが特定コミュニティSCに参加拒否するのを無理なくスムーズに実行できる。このため、ユーザU間のトラブルを確実に防止できる。また、価値観が合い性格もよいと解される優秀なユーザUたちが集まることになるので、特定コミュニティSCの活性化も容易であるし、安全安心な特定コミュニティSCとして発展できる。特定コミュニティSCの信頼性も向上するのである。
【0100】
なお、特定コミュニティSCへの参加を一度拒否されたユーザUnは、永久に特定コミュニティSCに参加できないわけではない。ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)は、参加拒否後の言動の蓄積に応じて当然に変化していく。その結果、ユーザUnの価値観波形G+(Un),G-(Un)が特定コミュニティSCの価値観波形G+(SC),G-(SC)に似てきて、価値観が合う(似ている、近い)と評価されれば、特定コミュニティSCに参加可能になる。
【0101】
図8に示す実施形態では、ユーザUと特定コミュニティSCとの関係における類似度合いの比較(承認プロセス)の一例を示したが、これに限らず、ユーザUと別のユーザUとの関係における類似度合いの比較でも、
図8に示す実施形態と同様に実現可能であるし、特定コミュニティSCと別の特定コミュニティSCとの関係における類似度合いの比較においても、
図8に示す実施形態と同様に実現可能である。
【0102】
例えば特定コミュニティSCと別の特定コミュニティSCとの関係における類似度合いの比較において、互いの価値観が合う(類似度合いが高い)場合は、例えば検索した際に相手の特定コミュニティSCをレコメンドして相互提携することが可能である。逆に、互いの価値観が合わない(類似度合いが低い)場合は、例えば検索した際であっても相手の特定コミュニティSCを紹介されなくすることが可能である。
【0103】
本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0104】
C,C(n-1),Cn 模倣人格
G+(U),G+(Un) 徳波形
G-(U),G-(Un) 地雷波形
S 人格評価システム
SC 特定コミュニティ
U,U(n-1),Un ユーザ
1 サービス管理装置
2 生成系AI
3,3n ユーザ端末
4 通信ネットワーク
5 チャットアプリ
6,6n ユーザID
7,7n ユーザ言動情報
11 通信部
12 情報処理部
13 記憶部
14,38 システムバス
15 性格類似度演算部
16 波形類似度演算部
17 模倣人格実行部
18 ユーザ情報DB
19 ユーザ言動情報DB
20 模倣人格DB
21 模倣人格生成部
22 スキル補正部
23 価値観補正部
24 価値観波形生成部
31 CPU
32 メモリ
33 ストレージ
34 通信IF
35 入力装置
36 表示部
37 入出力IF
【要約】
【課題】ユーザUの人格を適切に評価することが可能な人格評価システムSを提供する。
【解決手段】本発明の人格評価システムSは、ユーザ端末3に対する会話サービスの提供および管理を行うサービス管理装置1と、ユーザ端末3を用いるユーザUに対応した仮想的な模倣人格Cを生成する生成系AI2とを備える。生成系AI2は、ユーザUの会話情報に基づきユーザUの人格を反映させた模倣人格Cを生成する模倣人格生成部21と、ユーザUの持つスキルに対応して模倣人格Cに補正をかけるスキル補正部22と、ユーザUの会話情報から得られたユーザUの価値観の閾値に対応して模倣人格Cに補正をかける価値観補正部23とを有する。
【選択図】
図4