(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20250611BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20250611BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20250611BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20250611BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250611BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/22
C09J153/02
C09J11/08
B32B27/00 M
B32B27/30 B
(21)【出願番号】P 2021091669
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020095599
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
(72)【発明者】
【氏名】新井 祥人
(72)【発明者】
【氏名】炭井 佑一
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087815(WO,A1)
【文献】特開2018-100322(JP,A)
【文献】特開2008-208265(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188190(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230575(WO,A1)
【文献】特開2017-057382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを有する粘着テープであって、
前記基材は、前記粘着剤層が積層されている面とは反対側の面の最表面に金属層を有し、
前記粘着剤層は、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含有し、
前記ベースポリマーは、少なくとも芳香族ビニルモノマーに由来するブロックと共役ジエンモノマーに由来するブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体、又は、少なくとも芳香族ビニルモノマーに由来するブロックとオレフィンモノマーに由来するブロックとを有するブロック共重合体であり、
前記粘着付与樹脂は、水酸基価が50~140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂(T1)を含有し、
前記粘着剤層において、水酸基価が140mgKOH/gを超えるテルペンフェノール樹脂(T2)と、ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計が、前記ベースポリマー100重量部に対して5重量部以下である
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記水酸基価が50~140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂(T1)の含有量が、前記ベースポリマー100重量部に対して3~80重量部であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記水酸基価が50~140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂(T1)は、水酸基価が50~80mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記水酸基価が50~80mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂の含有量が、前記ベースポリマー100重量部に対して3~80重量部であることを特徴とする請求項3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記水酸基価が50~140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂(T1)は、軟化点が145℃以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記ベースポリマーは、水添スチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記水添スチレン系ブロック共重合体は、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項6記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体は、スチレン含有量が25重量%以下であることを特徴とする請求項7記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体は、エチレンブチレン比率が1.0以上であることを特徴とする請求項7又は8記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記水添スチレン系ブロック共重合体は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項6記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体は、スチレン含有量が15重量%以下であることを特徴とする請求項10記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記ベースポリマーは、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロック共重合体は、スチレン含有量が25重量%以下であることを特徴とする請求項12記載の粘着テープ。
【請求項14】
前記基材と前記粘着剤層との間に更に樹脂層を有し、前記樹脂層は、極性官能基を有する樹脂を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の粘着テープ。
【請求項15】
前記極性官能基を有する樹脂は、極性官能基がニトリル基、カルボニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項14記載の粘着テープ。
【請求項16】
前記金属層は、銅からなることを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15記載の粘着テープ。
【請求項17】
前記基材は、銅箔であることを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の粘着テープ。
【請求項18】
基板の製造工程におけるエッチング処理又はデスミア処理において、金属層を有する基板を保護するために用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16
又は17記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強アルカリ性溶液への耐性に優れ、かつ、被着体から容易に剥離できる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器において部品を固定する際に、粘着剤や粘着テープが広く用いられている。また、粘着テープは、電子機器の製造工程における工程材としても用いられており、例えば、電子機器の製造工程において薄い部材を加工する際、取扱いを容易にし、破損を防止するために粘着テープが用いられている。これらの粘着剤や粘着テープには、高い粘着性に加え、使用される部位の環境に応じて、耐熱性、熱伝導性、耐衝撃性等の機能が要求されている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-052050号公報
【文献】特開2015-021067号公報
【文献】特開2015-120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プリント配線板等の基板は薄化が進んでおり、銅張積層板から基板を製造する工程においては、製造工程中に銅張積層板の端部が破損する問題が生じている。これに対して、銅張積層板の端部に粘着テープを貼り付けて保護した状態で処理を行うことで問題の解決が図られている。このような粘着テープには、処理中は銅張積層板を充分に保護できるとともに、処理終了後には銅張積層板を破損することなく銅張積層板から容易に剥離できることが求められる。
しかしながら、基板の製造工程で行われるエッチング処理、デスミア処理等においては、処理液として強アルカリ性の溶液が使用されている。従来の粘着テープでは、このような強アルカリ性溶液に晒されると剥がれが生じやすく、銅張積層板の端部を充分に保護できなかったり、銅張積層板の表面の銅が腐食されたりする問題が生じている。
【0005】
本発明は、強アルカリ性溶液への耐性に優れ、かつ、被着体から容易に剥離できる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを有する粘着テープであって、上記粘着剤層は、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含有し、上記ベースポリマーは、少なくとも芳香族ビニルモノマーに由来するブロックと共役ジエンモノマーに由来するブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体、又は、少なくとも芳香族ビニルモノマーに由来するブロックとオレフィンモノマーに由来するブロックとを有するブロック共重合体であり、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が50~140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂(T1)を含有し、上記粘着剤層において、水酸基価が140mgKOH/gを超えるテルペンフェノール樹脂(T2)と、ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計が、上記ベースポリマー100重量部に対して5重量部以下である粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、基材と、該基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを有する粘着テープにおいて、粘着剤層に特定のブロック共重合体を用いることで、粘着テープの再剥離性が向上し、処理中は粘着テープにより被着体を充分に保護できるとともに、処理終了後には被着体を破損することなく粘着テープを容易に剥離できることを見出した。更に、本発明者らは、粘着剤層に配合する粘着付与樹脂について検討した。本発明者らは、粘着付与樹脂のなかでも特に、特定範囲の水酸基価を有するテルペンフェノール樹脂(T1)を選択して用い、かつ、T1よりも水酸基価の高いテルペンフェノール樹脂(T2)と、ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計を一定値以下に抑えることにより、強アルカリ性溶液への耐性を著しく向上できることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の粘着テープは、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを有する。
上記粘着剤層は、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含有する。上記粘着剤層が上記ベースポリマーに加えて上記粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープの粘着力が向上し、被着体を充分に保護することができる。
【0009】
上記ベースポリマーは、少なくとも芳香族ビニルモノマーに由来するブロックと共役ジエンモノマーに由来するブロックとを有するブロック共重合体の水素添加体、又は、少なくとも芳香族ビニルモノマーに由来するブロックとオレフィンモノマーに由来するブロックとを有するブロック共重合体である。(以下、両者を合わせて単に「ブロック共重合体」ともいう。)
上記ベースポリマーが上記ブロック共重合体であることにより、上記粘着剤層の粘着力が適度な範囲となり、粘着テープの再剥離性が向上する。また、上記ブロック共重合体は比較的極性が低いことから、上記ベースポリマーが上記ブロック共重合であることにより、例えばアクリル系ポリマーである場合と比べて上記粘着剤層の内部に強アルカリ性溶液が浸入しにくく、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性が向上する。
【0010】
上記芳香族ビニルモノマーは特に限定されず、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、t-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレン等が挙げられる。上記3級アミノ基含有ジフェニルエチレンは特に限定されず、例えば、1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン等が挙げられる。これらの芳香族ビニルモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記共役ジエンモノマーは特に限定されず、例えば、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン等が挙げられる。これらの共役ジエンモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記オレフィンモノマーは特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、cis-2-ペンテン、trans-2-ペンテン、1-ヘキセン、cis-2-ヘキセン、trans-2-ヘキセン、cis-3-ヘキセン、trans-3-ヘキセン、シクロヘキセン等が挙げられる。これらのオレフィンモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記ブロック共重合体は特に限定されず、室温でゴム弾性(rubber elasticity)を有し、ハードセグメント部分とソフトセグメント部分とを有するブロック共重合体又はその水素添加体であればよい。なお、上記芳香族ビニルモノマーに由来するブロックがハードセグメント部分であり、上記共役ジエンモノマーに由来するブロック又は上記オレフィンモノマーに由来するブロックがソフトセグメント部分である。
上記ブロック共重合体として、より具体的には、水添スチレン系ブロック共重合体が好ましい。該水添スチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)等が挙げられる。また、上記ブロック共重合体として、例えば、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロック共重合体等も挙げられる。
なかでも、粘着力を低く調整できることから、SEBSブロック共重合体、SEPS共重合体及びSIBSブロック共重合体が好ましく、SEBSブロック共重合体がより好ましい。これらのブロック共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体のスチレン含有量は特に限定されないが、好ましい上限は30重量%、より好ましい上限は25重量%、更に好ましい上限は20重量%である。上記スチレン含有量が上記範囲内であれば、上記粘着剤層が硬くなりすぎず、被着体への密着性が高くなることから、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する。このため、より表面粗さの大きい被着体に粘着テープを貼り合わせて強アルカリ性溶液に晒した場合であっても剥がれが生じにくくなる。上記スチレン含有量の下限は特に限定されないが、上記粘着剤層の凝集力を維持する観点から、好ましい下限は8重量%である。
なお、スチレン含有量は、1H-NMRにより測定される各ブロックのピーク面積比から算出することができる。
【0014】
上記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体のエチレンとブチレンとのモル比率(エチレンのモル%/ブチレンのモル%)(以下、「エチレンブチレン比率」ともいう)は特に限定されないが、好ましい下限は1.0、より好ましい下限は1.2である。上記エチレンブチレン比率が上記範囲内であることで、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する。このため、より表面粗さの大きい被着体に粘着テープを貼り合わせて強アルカリ性溶液に晒した場合であっても剥がれが生じにくくなる。粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する理由については、この理論に束縛されるものではないが、ブチレンに比べエチレンの比率が高いために、分子内で部分的にエチレン部位同士のパッキングが生じ、強アルカリ性溶液が浸入しにくくなるためではないかと考えられる。上記エチレンブチレン比率の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層が硬くなりすぎず、被着体への密着性が優れる観点から、好ましい上限は2である。
なお、エチレンブチレン比率は、1H-NMRにより測定される各成分のピーク面積比から算出することができる。
【0015】
上記スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体のスチレン含有量は特に限定されないが、上記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体の場合と同様の観点から、好ましい下限は8重量%、好ましい上限は30重量%である。上記スチレン含有量のより好ましい上限は15重量%、更に好ましい上限は13重量%である。
上記スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロック共重合体のスチレン含有量は特に限定されないが、上記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体の場合と同様の観点から、好ましい下限は8重量%、好ましい上限は30重量%であり、より好ましい上限は25重量%、更に好ましい上限は20重量%である。
【0016】
上記ブロック共重合体は、上記芳香族ビニルモノマーに由来するブロックと、上記共役ジエンモノマーに由来するブロック又は上記オレフィンモノマーに由来するブロックとのトリブロック共重合体に加えて、上記芳香族ビニルモノマーに由来するブロックと、上記共役ジエンモノマーに由来するブロック又は上記オレフィンモノマーに由来するブロックとのジブロック共重合体を含有していてもよい。
上記ブロック共重合体における上記ジブロック共重合体の含有量(以下、「ジブロック比率」ともいう)は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は30重量%である。上記ジブロック比率が上記範囲内であれば、上記粘着剤層の被着体への密着性が高くなることから、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する。このため、より表面粗さの大きい被着体に粘着テープを貼り合わせて強アルカリ性溶液に晒した場合であっても剥がれが生じにくくなる。上記ジブロック比率の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層の凝集力を維持する観点から、好ましい上限は90重量%である。
なお、ジブロック比率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定される各共重合体のピーク面積比から算出することができる。
【0017】
上記ブロック共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は5万、好ましい上限は60万である。上記重量平均分子量が5万以上であれば、粘着テープの耐熱性がより高くなる。上記重量平均分子量が60万以下であれば、上記ブロック共重合体と他の成分との相溶性が低下しすぎることを防ぐことができる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は10万、より好ましい上限は50万である。
なお、ブロック共重合体の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される重量平均分子量を意味する。GPC法による重量平均分子量の測定は、カラムとして、例えばカラムLF-804(昭和電工社製)を用いることができる。
【0018】
上記粘着付与樹脂は、水酸基価が50~140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂(T1)を含有する。
上記粘着付与樹脂が、種々の粘着付与樹脂のなかでも特に、上記範囲の水酸基価を有するテルペンフェノール樹脂(T1)を含有することにより、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性が向上する。
なお、テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基及びフェノール残基を含むポリマーを意味する。また、テルペンフェノール樹脂とは、テルペンとフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペンの単独重合体又は共重合体(テルペン樹脂、典型的には未変性テルペン樹脂)をフェノール変性したフェノール変性テルペン樹脂と、更にはこれらの樹脂におけるテルペン部位を水素添加した樹脂とを包含する概念である。
【0019】
上記テルペンフェノール樹脂(T1)を構成するテルペンは特に限定されないが、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、カンフェン等のモノテルペンが好ましい。なお、リモネンには、d体、l体及びd/l体(ジペンテン)が含まれる。
【0020】
上記テルペンフェノール樹脂(T1)の水酸基価は、下限が50mgKOH/g、上限が140mgKOH/gである。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の水酸基価が上記範囲内であれば、上記テルペンフェノール樹脂(T1)の極性が適度な範囲となることで、上記粘着剤層の内部に強アルカリ性溶液が浸入しにくくなり、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性が向上する。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の水酸基価の好ましい下限は55mgKOH/g、好ましい上限は100mgKOH/gであり、より好ましい下限は60mgKOH/g、より好ましい上限は80mgKOH/gである。即ち、上記テルペンフェノール樹脂(T1)は、水酸基価が60~80mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂を含有することがより好ましい。
なお、粘着付与樹脂の水酸基価とは、粘着付与樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法に基づいて測定された値として定義される。
【0021】
上記テルペンフェノール樹脂(T1)の軟化点は特に限定されないが、好ましい下限は145℃である。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の軟化点が145℃以上であれば、上記テルペンフェノール樹脂の分子量が大きくなり、強アルカリ性溶液への溶解性が低くなることで、上記粘着剤層の内部に強アルカリ性溶液が浸入しにくくなることから、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する。このため、より表面粗さの大きい被着体に粘着テープを貼り合わせて強アルカリ性溶液に晒した場合であっても剥がれが生じにくくなる。また、上記テルペンフェノール樹脂(T1)の軟化点が145℃以上であれば、粘着テープの耐熱性がより高くなる。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の軟化点のより好ましい下限は150℃である。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の軟化点の上限は特に限定されないが、実質的な上限は180℃程度である。
なお、粘着付与樹脂の軟化点とは、固体状の樹脂が軟化して変形し始める温度であり、JIS K 5902及びJIS K 2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。
【0022】
上記テルペンフェノール樹脂(T1)の含有量は特に限定されないが、上記ベースポリマー100重量部に対する好ましい下限が3重量部、好ましい上限が80重量部である。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の含有量が3重量部以上であれば、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の含有量が80重量部以下であれば、上記粘着剤層の接着昂進が抑えられ、糊残りが抑えられて、粘着テープの再剥離性がより向上する。上記テルペンフェノール樹脂(T1)の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は60重量部である。
また、上記粘テルペンフェノール樹脂(T1)のうち、上記水酸基価が50~80mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂の含有量も特に限定されず、上記ベースポリマー100重量部に対する好ましい下限が3重量部、好ましい上限が80重量部であり、より好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0023】
上記粘着付与樹脂は、上記テルペンフェノール樹脂(T1)以外の粘着付与樹脂を含有していてもよい。上記テルペンフェノール樹脂(T1)以外の粘着付与樹脂は特に限定されず、例えば、クマロン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油樹脂、アルキルフェノール樹脂これらの水素化物等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記ロジン樹脂として、より具体的には例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン)、これら未変性ロジンを変性した変性ロジン等が挙げられる。上記変性ロジンにおける変性としては、例えば、水添化、不均化、重合等が挙げられる。上記変性ロジンとして、より具体的には例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等が挙げられる。
【0025】
上記ロジン誘導体樹脂として、より具体的には例えば、上記ロジン樹脂をアルコール類によりエステル化したロジンエステル樹脂、上記ロジン樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン樹脂、上記ロジンエステル樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル樹脂等が挙げられる。
また、上記ロジン誘導体樹脂としては、例えば、上記不飽和脂肪酸変性ロジン樹脂又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール樹脂等も挙げられる。
更に、上記ロジン誘導体樹脂としては、上記ロジン樹脂又はロジン誘導体樹脂(特に、ロジンエステル樹脂)の金属塩又はロジンフェノール樹脂等も挙げられる。なお、ロジンフェノール樹脂は、上記ロジン樹脂又はロジン誘導体樹脂に酸触媒下でフェノールを付加させ熱重合することにより得られる。
【0026】
上記石油樹脂として、より具体的には例えば、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂等が挙げられる。
【0027】
ただし、上記粘着剤層において、水酸基価が140mgKOH/gを超えるテルペンフェノール樹脂(T2)と、ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計は、上記ベースポリマー100重量部に対して5重量部以下である。
上記テルペンフェノール樹脂(T2)と、上記ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計が5重量部以下であることにより、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性が向上する。
上記テルペンフェノール樹脂(T2)は上記テルペンフェノール樹脂(T1)よりも水酸基価が高く極性が高いことから、上記テルペンフェノール樹脂(T2)の含有量が多すぎると、上記粘着剤層の内部に強アルカリ性溶液が浸入しやすくなり、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性が低下する。また、上記ロジンエステル樹脂(T3)はエステル基、水酸基、カルボキシル基等の官能基を有することから、上記ロジンエステル樹脂(T3)の含有量が多すぎると、上記粘着剤層の内部に強アルカリ性溶液が浸入しやすくなり、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性が低下する。上記テルペンフェノール樹脂(T2)と、上記ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計は2重量部以下であることが好ましく、0重量部であることがより好ましい。
また、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性をより向上させる観点から、上記テルペンフェノール樹脂(T2)と、上記ロジンエステル樹脂(T3)との含有量の合計は、上記テルペンフェノール樹脂(T1)の含有量以下であることが好ましい。
【0028】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0029】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であれば、粘着テープの粘着力がより高くなる。上記粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、粘着テープの加工性が向上する。
【0030】
本発明の粘着テープにおいては、上記粘着剤層が、基材の少なくとも一方の面に積層されている。上記粘着剤層は、基材の片面に積層されていてもよいし、基材の両面に積層されていてもよい。
上記基材は特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、金属箔等が挙げられる。上記樹脂フィルムは特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルムが挙げられる。また、上記基材として、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等のポリオレフィン発泡体シート、ポリウレタン発泡体シート等も挙げられる。なかでも、PETフィルムが好ましい。
【0031】
上記基材は、上記粘着剤層が積層されている面とは反対側の面の最表面に金属層を有することが好ましい。
上記基材が上記金属層を有することにより、粘着テープを折り返して(折り曲げて)被着体に貼り付けた場合であっても、上記金属層が形状を保持することから、上記基材を折り返したことによる復元力を抑制し、被着体と上記粘着剤層との間に隙間が生じにくくなり、剥がれが生じにくくなる。(以下、このような性能を「折り返し貼り付け性」ともいう。)上記基材が上記金属層を有さず、例えば上記樹脂フィルムのみからなる場合には、上記樹脂フィルムの復元力により被着体と上記粘着剤層との間に隙間が生じやすく、剥がれが生じやすい。
なお、粘着テープを折り返して被着体に貼り付ける用途としては、例えば、基板の製造工程において、銅張積層板の破損を防ぐために銅張積層板の端部に粘着テープを貼り付けて保護した状態で処理を行う用途が挙げられる。このような場合には、銅張積層板の端部に沿って、例えばコの字型、>型、}型等の形状となるように粘着テープを折り返して貼り付けることが行われる。
【0032】
上記金属層を構成する金属は特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等が挙げられる。また、上記金属層を構成する金属としては、ステンレス、モネル等の合金も挙げられる。なかでも、折り返した後の復元力が小さいため粘着テープの折り返し貼り付け性がより向上し、かつ、破れにくいため粘着テープの取り扱い性がより良好となることから、銅が好ましい。
【0033】
上記金属層の厚みは特に限定されないが、上記基材の厚み全体に占める上記金属層の厚みの割合(上記金属層の厚み/上記基材の厚み全体)の好ましい下限は15%である。上記金属層の厚みの割合が15%以上であれば、粘着テープの折り返し貼り付け性がより向上する。上記金属層の厚みの割合のより好ましい下限は25%である。
上記金属層の厚みの割合の上限は特に限定されず、100%であってもよい。即ち、上記基材は、金属基材であってもよい。上記基材が金属基材であることにより、粘着テープの折り返し貼り付け性がより向上するとともに、後述するような樹脂層を介さなくても上記基材と上記粘着剤層との間のアンカー性が増すことから、上記粘着剤層の糊残りが抑えられ、粘着テープの再剥離性がより向上する。上記金属基材を構成する金属は特に限定されず、上記金属層を構成する金属と同様の金属であってよい。なかでも、折り返した後の復元力が小さいため粘着テープの折り返し貼り付け性がより向上し、かつ、破れにくいため粘着テープの取り扱い性がより良好となることから、上記基材が銅箔であることが好ましい。
【0034】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は30μmである。上記基材の厚みが上記範囲内であれば、粘着テープの折り返し貼り付け性がより向上する。上記基材の厚みのより好ましい下限は8μm、より好ましい上限は20μmである。
【0035】
本発明の粘着テープは、上記基材と上記粘着剤層との間に更に樹脂層を有することが好ましく、上記樹脂層は、極性官能基を有する樹脂を含有することが好ましい。
本発明の粘着テープが上記樹脂層を有することにより、上記基材と上記粘着剤層との間のアンカー性が増すことから、上記粘着剤層の内部に強アルカリ性溶液がより浸入しにくくなり、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上する。また、上記基材と上記粘着剤層との間のアンカー性が増すことで、上記粘着剤層の糊残りが抑えられ、粘着テープの再剥離性がより向上する。
【0036】
上記極性官能基は特に限定されないが、PETフィルム等の樹脂基材及び上記金属基材への密着性に優れることから、ニトリル基、カルボニル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。なかでも、ニトリル基、カルボニル基がより好ましい。
【0037】
上記極性官能基を有する樹脂として、具体的には例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(無水マレイン酸変性SEBS)、アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(アミン変性SEBS)等が挙げられる。なかでもPETフィルム等の樹脂基材との密着性に優れ、かつ、上記粘着剤層との密着性にも優れることから、NBR、無水マレイン酸変性SEBSが好ましい。
【0038】
上記樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は3μmである。上記樹脂層の厚みが上記範囲内であれば、粘着テープの強アルカリ性溶液への耐性がより向上し、再剥離性もより向上する。上記樹脂層の厚みのより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は2μmである。
【0039】
上記樹脂層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0040】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、上記ベースポリマーと上記粘着付与樹脂とを含む粘着剤溶液を調製する。次いで、一面が離型処理された離型フィルムの離型処理面に上記で得られた粘着剤溶液を塗布して乾燥させて、離型フィルムの離型処理面に粘着剤層を有する積層シートを作製する。次いで、積層シートの粘着剤層を、必要に応じて上記樹脂層を介して上記基材に転写及び積層一体化させて、粘着テープを得る。
【0041】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、強アルカリ性溶液に晒される用途に好適に用いることができる。
上記強アルカリ性溶液に晒される用途としては、例えば、基板の製造工程において、銅張積層板の破損を防ぐために銅張積層板の端部に粘着テープを貼り付けて保護した状態で処理を行う用途が挙げられる。このような場合には、例えば、エッチング処理、デスミア処理等が行われ、処理液として強アルカリ性の溶液が使用される。即ち、本発明の粘着テープは、基板の製造工程におけるエッチング処理又はデスミア処理において、銅張積層板等の金属層を有する基板を保護するために用いられることが好ましい。
【0042】
また、本発明の粘着テープは、折り返し貼り付け性にも優れることから、粘着テープを折り返して(折り曲げて)被着体に貼り付ける用途にも好適に用いることができる。
上記粘着テープを折り返して被着体に貼り付ける用途としても、例えば、基板の製造工程において、銅張積層板の破損を防ぐために銅張積層板の端部に粘着テープを貼り付けて保護した状態で処理を行う用途が挙げられる。このような場合には、銅張積層板の端部に沿って、例えばコの字型、>型、}型等の形状となるように粘着テープを折り返して貼り付けることが行われる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、強アルカリ性溶液への耐性に優れ、かつ、被着体から容易に剥離できる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0045】
ベースポリマーとして、表1~4に示すポリマーを用いた。
なお、DYNARON 8300P及びDYNARON 8600PはJSR社製、クレイトン G1643及びクレイトン G1657はクレイトンポリマー社製、タフテック H1052、タフテック H1053及びタフテック H1041は旭化成社製のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体であった。セプトン 2063、セプトン 2004F及びセプトン 2002はクラレ社製のスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体であった。SIBSTAR 102T及びSIBSTAR 103Tはカネカ社製のスチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)ブロック共重合体であった。Quintac 3520は日本ゼオン社製のSIS(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体)であった。
【0046】
粘着付与樹脂として、表1~4に示す粘着付与樹脂を用いた。
なお、U-115、T-80、T-130、T-145、T-160、S-145、G-125、G-150、及び、K-125はヤスハラケミカル社製のテルペンフェノール樹脂(YSポリスター)であった。P-125は荒川化学工業社製の水添石油樹脂(アルコン)であった。PX-1250はヤスハラケミカル社製のポリテルペン樹脂(YSレジン)であった。A-125は荒川化学工業社製のロジンエステル樹脂(不均化ロジンエステル)(スーパーエステル)であった。
【0047】
(実施例1~32、比較例1~9)
表1~4に示す種類及び量のベースポリマーと粘着付与樹脂とを溶媒(トルエン)に溶液濃度が30重量%となるように加えて攪拌し、粘着剤溶液を調製した。一面が離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に上記で得られた粘着剤溶液を乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布して110℃で5分間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に粘着剤層を有する積層シートを作製した。
【0048】
基材として厚み12μm(t=12μm)のポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。Nipol 1042(日本ゼオン社製、アクリロニトリルブタジエンゴム)を溶媒(メチルエチルケトン)に溶液濃度が5重量%となるように加えて攪拌し、樹脂溶液を調製した。基材の一方の面に、得られた樹脂溶液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布して110℃で5分間乾燥することにより、樹脂層を形成した。
得られた樹脂層に、積層シートをその粘着剤層が樹脂層に対向した状態となるように積層して、樹脂層を介して粘着剤層を基材に転写及び積層一体化させ、樹脂層を介して基材の片面に厚みが30μmの粘着剤層を有する粘着テープを得た。
【0049】
<評価1>
実施例1~32、比較例1~9で得られた粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表1~4に示した。
【0050】
(1)強アルカリ性溶液の耐性への評価
低表面粗さの銅板及び高表面粗さの銅板として、それぞれ表面粗さRaが0.06μm又は0.26μmの銅板を用いた。銅板の表面粗さRaが0.06μm又は0.26μmの面に粘着テープを貼り付け、積層体を作製した。この積層体を5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に50℃の条件で30分間浸漬した後、積層体を取り出し、水酸化ナトリウム水溶液を除去し、30分間室温で放置した。30分間室温で放置した後、銅板から粘着テープを剥離した。
銅板の粘着テープを貼り付けていた部分における腐食していない部分と、銅板の粘着テープを貼り付けていた部分全体との面積比(腐食していない部分の面積/粘着テープを貼り付けていた部分全体の面積×100(%))を算出し、保護率とした。
保護率(腐食していない部分の面積/粘着テープを貼り付けていた部分全体の面積×100(%))が80%以上であった場合を◎、50%以上、80%未満であった場合を○、50%未満であった場合を×と示した。
【0051】
(2)粘着力(対銅180°peel粘着力)の評価
粘着テープを25mm幅に切断したものを試験片とし、表面粗さRaが0.06μmの銅板を被着体として評価した。23℃、50%RHの標準環境下にて、試験片の粘着面を被着体に、2kgのローラを1往復させて圧着した。このようにして被着体に圧着した試験片を上記標準環境下に20分間放置した後、JIS-Z0237に準じて、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で、180°peel粘着力を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を粘着力とした。
粘着力が2N/25mm以下であった場合を◎、2N/25mmを超えて、15N/25mm未満であった場合を〇、15N/25mm以上であった場合を×と示した。
【0052】
(実施例33)
基材と粘着剤層との間に樹脂層を設けなかったこと以外は実施例4と同様にして、粘着テープを得た。
【0053】
(実施例34~36)
樹脂層を形成する際、表5に示す種類の極性官能基を有する樹脂を用いたこと以外は実施例4と同様にして、粘着テープを得た。
なお、Nipol 1042は日本ゼオン社製のアクリロニトリルブタジエンゴムであり、タフテック M1943は旭化成社製の無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンであり、タフテック MP10は旭化成社製のアミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンであった。
【0054】
(実施例37)
基材として厚み12μm(t=12μm)のポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに厚み18μm(t=18μm)の銅箔を用い、基材と粘着剤層との間に樹脂層を設けなかったこと以外は実施例4と同様にして、粘着テープを得た。
【0055】
<評価2>
実施例33~37で得られた粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表5に示した。
【0056】
(1)高温処理後の糊残りの評価
粘着テープを25mm幅に切断したものを試験片とし、銅板を被着体として評価した。23℃、50%RHの標準環境下にて、試験片の粘着面を被着体に、2kgのローラを1往復させて圧着した。このようにして被着体に圧着した試験片を上記標準環境下に20分間放置した後、80℃の雰囲気下で24時間静置した。その後、被着体に圧着した試験片を23℃に戻し、JIS-Z0237に準じて、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で、試験片を引き剥がした。銅板上の糊残りの有無を確認した。
【0057】
(2)折り返し貼り付け性の評価
厚み50μmの銅箔の端部に沿って、粘着テープをコの字に折り返して(折り曲げて)貼り付け、0.5MPaで圧着し、24時間静置して積層体を作製した。折り返し部分では、粘着テープが5mmずつ被さるように粘着テープを折り返した。この積層体を水に50℃の条件で30分間浸漬した後、折り返した粘着テープの根元の部分に水の浸入があるか否かを確認した。
折り返した粘着テープの根元の部分に水の浸入がなかった場合を○、あった場合を×と示した。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、強アルカリ性溶液への耐性に優れ、かつ、被着体から容易に剥離できる粘着テープを提供することができる。