(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】需給管理装置、需給管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20250611BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20250611BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20250611BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20250611BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20250611BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
H02J3/46
G06Q50/06
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J13/00 311R
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2022009209
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩人
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174623(JP,A)
【文献】特開2015-080359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12,7/34-7/36
H02J 13/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続された管理対象電源から発電量実績値を取得し、前記電力系統に接続された蓄電池システムから充放電量実績値を取得する需給監視部と、
前記管理対象電源の発電量である第1の発電量から、前記電力系統における熱容量制約緩和のための需要である熱容量制約緩和需要を減算した結果である第2の発電量
について、需給計画時における値と、実需給時における値と、が一致するように、前記蓄電池システムに対する充放電指令値を出力する充放電量決定部と、を備える
ことを特徴とする需給管理装置。
【請求項2】
前記管理対象電源は、太陽光、風力、波力、潮力、流水、地熱、またはバイオマスによって発電する再生可能エネルギー電源である
ことを特徴とする請求項1に記載の需給管理装置。
【請求項3】
前記管理対象電源は複数設けられ、
前記蓄電池システムは、複数の前記管理対象電源の発電インバランスを熱容量制約緩和のために緩和する共通の需要として機能する
ことを特徴とする請求項1に記載の需給管理装置。
【請求項4】
電力系統に接続された管理対象電源から発電量実績値を取得し、前記電力系統に接続された蓄電池システムから充放電量実績値を取得する需給監視過程と、
前記管理対象電源の発電量である第1の発電量から、前記電力系統における熱容量制約緩和のための需要である熱容量制約緩和需要を減算した結果である第2の発電量
について、需給計画時における値と、実需給時における値と、が一致するように、前記蓄電池システムに対する充放電指令値を出力する充放電量決定過程と、を有する
ことを特徴とする需給管理方法。
【請求項5】
コンピュータを、
電力系統に接続された管理対象電源から発電量実績値を取得し、前記電力系統に接続された蓄電池システムから充放電量実績値を取得する需給監視手段、
前記管理対象電源の発電量である第1の発電量から、前記電力系統における熱容量制約緩和のための需要である熱容量制約緩和需要を減算した結果である第2の発電量
について、需給計画時における値と、実需給時における値と、が一致するように、前記蓄電池システムに対する充放電指令値を出力する充放電量決定手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需給管理装置、需給管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1の要約には、「本発明の実施形態は、複数の需要家からなる需要家群であって1または複数の需要家が蓄電設備を持つ需要家群の電力の需給状態を管理する際に、電子計算機によって、需要家群の各需要家が系統に対して売電中かまたは系統から買電中かを示す情報に応じて、各需要家を、売電中の需要家が属する第1需要家群または買電中の需要家が属する第2需要家群に分類し、第1需要家群の売電計画の電力計画値と売電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて第1需要家群に分類された各需要家がもつ各蓄電設備の充放電電力を制御するとともに、第2需要家群の買電計画の電力計画値と買電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて第2需要家群に分類された各需要家がもつ各蓄電設備の充放電電力を制御する蓄電池運用方法である。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、一層適切に蓄電池システム等を管理したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、蓄電池システム等を適切に管理できる需給管理装置、需給管理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の需給管理装置は、電力系統に接続された管理対象電源から発電量実績値を取得し、前記電力系統に接続された蓄電池システムから充放電量実績値を取得する需給監視部と、前記管理対象電源の発電量である第1の発電量から、前記電力系統における熱容量制約緩和のための需要である熱容量制約緩和需要を減算した結果である第2の発電量について、需給計画時における値と、実需給時における値と、が一致するように、前記蓄電池システムに対する充放電指令値を出力する充放電量決定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蓄電池システム等を適切に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による電力システムの設備構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態による需給管理装置の機能を示すブロック図である。
【
図4】比較例による需給管理方式の、計画時における電力需給関係の一例を示す図である。
【
図5】比較例による需給管理方式の、実需給時における電力需給関係の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態による需給管理方式の、計画時における電力需給関係の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態による需給管理方式の、実需給時における電力需給関係の一例を示す図である。
【
図8】データベースに記録されるテーブルの例を示す図である。
【
図9】需給管理装置が実行する取引処理のフローチャートである。
【
図10】実需給時における制御プログラムのフローチャートである。
【
図11】第2実施形態による電力システムの設備構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
近年の電力システム改革において、再生可能エネルギー(Renewable Energy)電源(以下、RE電源と称することがある)を所有または運用する事業者である発電事業者が、RE電源で発電した電力を電力卸市場で小売事業者等に売電可能な制度、すなわちFIP制度が施行されている。FIP制度において、取引したRE電源の発電計画値と、実際の発電量である発電量実績値との差分を発電インバランスと呼ぶ。発電インバランスは、発電事業者が管理し、実需給の後日、発電事業者が清算する。すなわち、発電事業者はインバランスリスクを負うことになる。
【0009】
一方、RE電源の普及にともない、従来型の電力系統への接続(または連系)方法では、新規RE電源の連系が難しい電力系統が増大している。その一つの解決方法として、系統の熱容量制約が厳しくなる時間帯である系統混雑時間帯の出力抑制を前提にRE電源の新規連系を認める方式、すなわちノンファーム型連系の適用が進んでいる。しかし、ノンファーム型連系に基づいて出力抑制された場合であっても、出力抑制分のインバランスリスクは補償されず、発電事業者が負担する必要がある。そこで、後述する実施形態は、新規RE電源の連系に起因する電力系統の熱容量制約の緩和と、RE電源の発電インバランス低減を両立させようとするものである。
【0010】
上述した特許文献1の内容を応用すると、蓄電池システムを用いてインバランスを低減することは可能であると考えられる。しかし、特許文献1には、熱容量制約を考慮することは記載されていない。従って、特許文献1を応用した技術によれば、ノンファーム型連系で出力抑制される場合には、蓄電池システムの放電量を増やすことができず、結果的に、インバランスが発生してしまう。出力抑制を回避するためには、例えば系統用蓄電池を用いて、系統混雑時間帯の発電量を吸収するために需要を創出すればよい。しかしながら、この方式では新たに蓄電池システムが必要となり、係る費用(以下、蓄電池コスト)が増大してしまう。
【0011】
そこで、後述する実施形態は、RE電源の発電インバランスを低減する蓄電池システムであって、RE発電量から熱容量制約緩和のための需要である熱容量制約緩和需要を差し引いた仮想発電量を用いて充放電量を決定するようにした。これにより、後述する実施形態によれば、RE発電量に起因する熱容量制約を緩和しつつ、管理対象のRE電源の発電インバランスを低減できるため、RE電源の新規連系および発電インバランス低減に必要な蓄電池コストを低減することができる。
【0012】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、第1実施形態による電力システム1の設備構成例を示すブロック図である。
図1において、電力システム1は、電力系統20と、RE電源31(管理対象電源)と、蓄電池システム32と、取引メータ34-1,34-2と、需給管理装置100と、を備えている。ここで、RE電源31は、需給管理装置100が主として管理する電源であるため、以下、「管理対象電源」と呼ぶことがある。RE電源31および蓄電池システム32は、一つのバランシンググループ30を構成している。すなわち、発電事業者は、バランシンググループ30が入出力する電力量の合計を、電力卸市場で取引する。
【0013】
電力系統20には、RE電源31および蓄電池システム32が、取引メータ34-1,34-2を介して接続されている。なお、以下の説明において、同一または同様の機能、意義を有する構成要素や情報等が複数ある場合には、同一の符号に「-」と数値を付して例えば「取引メータ34-1,34-2」のように表記することがある。但し、これら複数の構成要素等を区別する必要がない場合には、「-」と数値を省略して、例えば「取引メータ34」のように表記することがある。
【0014】
図1の例において、RE電源31は、太陽光から直流電力を発電する太陽光発電部31aと、該直流電力を交流電力に変換して電力系統20に出力する電力変換器31bと、を備えている。また、蓄電池システム32は、直流電力を入出力する蓄電池32aと、該直流電力と電力系統20の交流電力とを双方向に変換する電力変換器32bと、を備えている。
【0015】
取引メータ34-1は、RE電源31が出力した発電量実績値PSを需給管理装置100に供給する。ここで、「発電量」とは、所定時間内における「電力量」を意味する。また、取引メータ34-2は、蓄電池システム32が出力した電力量である充放電量実績値PBを需給管理装置100に供給する。ここで、充放電量実績値PBは、蓄電池32aを放電する場合に正値になり、充電する場合に負値になる値である。需給管理装置100は、発電量実績値PSおよび充放電量実績値PBに基づいて、これらの予測値等を計算し、その結果に基づいてバランシンググループ30に対し、発電上限指令値PSAおよび充放電指令値PBAを出力する。ここで、発電上限指令値PSAは、発電量実績値PSの上限を指令する指令値であり、充放電指令値PBAは充放電量実績値PBの指令値である。
【0016】
図2は、コンピュータ900のブロック図である。
図1に示した需給管理装置100は、
図2に示すコンピュータ900を、1台または複数台備えている。
図2において、コンピュータ900は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907と、を備える。通信I/F905は、通信回路915に接続される。入出力I/F906は、入出力装置916に接続される。メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。ROM903には、CPUによって実行される制御プログラム、各種データ等が格納されている。CPU901は、RAM902に読み込んだアプリケーションプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。
【0017】
図3は、第1実施形態による需給管理装置100の機能を示すブロック図である。
図3における各ブロックは、アプリケーションプログラム等によって実現される機能を示している。すなわち、需給管理装置100は、連系契約管理部101と、データベース102と、需給監視部103(需給監視手段)と、発電量予測部104と、DER計画部105と、市場取引部106と、DER制御部107(充放電量決定部、充放電量決定手段)と、を備えている。ここで、連系契約管理部101は、系統連系協議において合意されたRE連系に関する契約内容を記憶する。契約内容は、特に、ノンファーム型連系の有無、系統混雑時間帯、遵守する熱容量制約への影響度を含む。
【0018】
データベース102は、上記契約内容等を保存する。需給監視部103は、発電量実績値PSおよび充放電量実績値PB等を、通信回路915および通信I/F905(
図2参照)を介して収集し、データベース102に保存する。発電量予測部104はデータベース102に保存された発電量実績値PSおよび充放電量実績値PBに基づいて、発電量予測値PS1と、充放電量予測値PB1と、これらの合計である仮想発電量予測値PG1と、を計算し、その結果をデータベース102に保存する。
【0019】
DER計画部105は、仮想発電量予測値PG1および遵守すべき熱容量制約への影響度等に基づいて、RE電源31(
図1参照)の取引前発電計画値PS2と、蓄電池システム32(
図1参照)の取引前充放電計画値PB2と、を立案し、その結果をデータベース102に保存する。市場取引部106は、取引前発電計画値PS2および取引前充放電計画値PB2に従って電力卸市場で取引し、取引結果に基づいて発電計画値PS3および充放電計画値PB3を作成する。
【0020】
また、市場取引部106は、発電計画値PS3および充放電計画値PB3の合計値である仮想発電量計画値PG3を算出する。そして、市場取引部106は、発電計画値PS3、充放電計画値PB3および仮想発電量計画値PG3を、データベース102に保存する。DER制御部107は、発電計画値PS3、充放電計画値PB3および仮想発電量計画値PG3に基づいて、発電上限指令値PSAおよび充放電指令値PBAを出力する。
【0021】
ここで、本実施形態の特徴を明確にするため、比較例について説明する。
図4は、比較例による需給管理方式の、計画時における電力需給関係の一例を示す図である。
図4において、電力系統20は、下位系統21と、上位系統22と、両者を接続するトランス24と、を備えている。下位系統21は、バランシンググループ30と、蓄電池システム50と、需要エリア60と、に接続されている。
【0022】
蓄電池システム50は、蓄電池システム32(
図1参照)と同様に構成されている。すなわち、蓄電池システム50は、蓄電池52と、電力変換器(図示せず)と、取引メータ54と、を備えている。需要エリア60は、バランシンググループ30において発電された電力を消費する複数の需者者を含んでいる。
【0023】
発電事業者はRE電源31と蓄電池システム32とを電力系統20の下位系統21に接続している。電力系統20の上位系統22では、発電量から需要を差し引いた潮流28が生じている。この潮流28が系統混雑時間帯に過大になることにより、系統混雑時間帯には、送電できる電力量の制限、すなわち熱容量制約26が発生することが予定されている。
【0024】
図4に示すように、充放電計画値PB3が0[kWh]であり、発電計画値PS3が400[kWh]であったする。すると、その合計値である仮想発電量計画値PG3(図示略)は400[kWh]になる。この電力系統20を運用する送配電事業者は、ノンファーム型連系における出力抑制を回避するため、例えば地域調整力市場で調整力を購入している。図示の例では、熱容量制約26の発生時には、蓄電池システム50を充電して、系統混雑時間帯に熱容量制約を緩和するため、-400[kWh]の需要PN3を創出することを計画している。
【0025】
図5は、比較例による需給管理方式の、実需給時における電力需給関係の一例を示す図である。
図4に示したように、RE電源31の発電計画値PS3は400[kWh]であった。しかし、例えば急な天候変動によって、
図5に示すように実需給時の発電量実績値PSが100[kWh]になったとする。すると、発電事業者は、充放電量実績値PBと発電量実績値PSとの合計値を計画時の仮想発電量計画値PG3=400[kWh]に合わせるため、図示のように、充放電量実績値PBを300[kWh]にすることが一般的である。
【0026】
一方、送配電事業者は、計画時の需要PN3と同値である、400[kWh]の需要PNを発生させている。結果的に、
図5に示した状態では、蓄電池システム32,52の双方で充放電が行われることになる。そのため、必要とされる蓄電池システム32,52を合わせた規模が大きくなり、充放電による電力損失も大きくなるという問題が発生していた。
【0027】
図6は、第1実施形態による需給管理方式の、計画時における電力需給関係の一例を示す図である。
本実施形態において、発電事業者は、RE電源31および蓄電池システム32を電力系統20の下位系統21に連系している。電力系統20の上位系統22においては、
図4に示した例と同様に、系統混雑時間帯に熱容量制約26が発生することが予定されている。また、系統混雑時間帯に対する発電計画値PS3は400[kWh]であったとする。
【0028】
本実施形態において、発電事業者は、ノンファーム型連系における出力抑制を回避するため、系統混雑時間帯に蓄電池システム32によって、400[kWh]の需要を創出することを、連系協議で送配電事業者と契約している。従って、充放電計画値PB3は、図示のように-400[kWh]になる。そして、需給計画時の仮想発電量計画値PG3は、発電計画値PS3と充放電計画値PB3の合計値、すなわち0[kWh]になる。
【0029】
図7は、第1実施形態による需給管理方式の、実需給時における電力需給関係の一例を示す図である。
図6に示したように、RE電源31の発電計画値PS3は400[kWh]であった。しかし、例えば急な天候変動によって、
図7に示すように実需給時の発電量実績値PSが100[kWh]になったとする。すると、発電事業者は、充放電量実績値PBと発電量実績値PSとの合計値を計画時の仮想発電量計画値PG3=0[kWh]に合わせるため、充放電量実績値PBを-100[kWh]にする。これにより、仮想発電量PGを、仮想発電量計画値PG3と一致させることができる。
【0030】
図8は、データベース102に記録されるテーブルTB1,TB2,TB3の例を示す図である。
これらテーブルTB1,TB2,TB3は、各種制御パターンを示すものである。これらのテーブルは、横方向に需給計画時欄71と、実需給時欄72と、融通欄73と、インバランス欄74と、を有している。ここで、融通欄73は、融通される発電量を示し、インバランス欄74は発電量のインバランスを示す。また、これらのテーブルは、縦方向にRE発電量欄75(第1の発電量)と、熱容量制約緩和需要欄76(熱容量制約緩和需要)と、仮想発電量欄77(第2の発電量)と、を有している。これら各欄の名称は、単に「欄」と表記することがある。
【0031】
テーブルTB1は、
図6および
図7に対応する制御パターンを示すものである。まず、需給計画時(欄71)において、RE発電量(欄75)は、発電計画値PS3=400[kWh]である。そして、熱容量制約緩和需要(欄76)は、発電計画値PS3に等しい400[kWh]である。従って、RE発電量から熱容量制約緩和需要を差し引いた、発電量、すなわち上位系統22(
図6参照)の熱容量制約26に対する影響度PEは0[kWh]であると見做せる。
【0032】
そして、需給管理装置100(
図3参照)は、需給計画時(欄71)と実需給時(欄72)において仮想発電量(欄77)が一致するように(すなわち0[kWh]になるように)蓄電池システム32(
図6参照)を制御する。このため、RE発電量(欄75)の変動502に合わせて、熱容量制約緩和需要(欄76)に、同様の変動503が生じる。
【0033】
これにより、実需給時(欄72)も、上位系統22の熱容量制約26への影響度PEは0[kWh]になり、熱容量制約26を需給計画時と同程度に緩和できる。また、熱容量制約緩和需要(欄76)の変動503により生じた発電分(-300[kWh])は、RE発電量(欄75)に対する融通504の電力量(300[kWh])になる。これにより、バランシンググループ30(
図6,
図7参照)で生じる発電インバランスを低減できる。
【0034】
このような制御を行うことにより、
図6,
図7に示したように、単独の蓄電池システム32を用いて、RE発電量(欄75)に起因する熱容量制約26を緩和しつつ、RE電源31の発電インバランスを低減できる。これにより、RE電源31の新規連系およびインバランス低減に必要な蓄電池コストを低減することができる。
【0035】
テーブルTB1に示した制御パターンにおいては、上位系統22の熱容量制約26への影響度PEは0[kWh]であった。しかし、例えば、発電事業者が連系協議の契約に従って、RE発電量(欄75)に起因する熱容量制約26への影響をある水準まで緩和できる場合もある。その具体例をテーブルTB2,TB3に示す。テーブルTB2およびTB3は、熱容量制約26への影響度PEを、それぞれ100[kWh]および-100[kWh]に緩和した制御パターンの例を示すものである。
【0036】
テーブルTB2,TB3の需給計画時欄71および実需給時欄72において、熱容量制約緩和需要(欄76)は、RE発電量(欄75)から当該影響度PEを差し引いた大きさになる。具体的には、テーブルTB2の場合は、熱容量制約緩和需要(欄76)は、300[kWh](=400-100[kWh])となり、テーブルTB3の場合は、熱容量制約緩和需要(欄76)は、500[kWh](=400+100[kWh])となる。
【0037】
この熱容量制約緩和需要(欄76)を用いて、仮想発電量(欄77)が変化しないように蓄電池システム32(
図6,7参照)を制御するとよい。テーブルTB2のように、影響度PEを0[kWh]よりも大きく設定した場合には、RE電源31に起因する熱容量制約26への影響を部分的に緩和できる。また、テーブルTB3のように、影響度PEを0[kWh]よりも小さく設定した場合には、同一の上位系統22(
図6,
図7参照)に連系した管理対象外のRE電源(図示せず)に起因する熱容量制約26への影響まで緩和することが可能となる。
【0038】
図9は、需給管理装置100が実行する取引処理のフローチャートである。すなわち、
図9は、発電事業者が複数の取引メータ34(
図1参照)の計測値の合計を電力卸市場で取引する際の計画/再計画フローになる。同一の需給時刻の発電量について、電力卸市場で発電事業者は複数回取引するため、2回目以降の計画を再計画と呼ぶ。
図9において処理がステップS12に進むと、発電量予測部104(
図3参照)は、データベース102に保存された過去の発電量実績値PSと、数値計算上の発電予測モデルD32と、日射量等の気象予報値D33と、を用いて、管理対象電源であるRE電源31(
図1参照)の発電量を予測する。そして、この予測結果を、発電量予測値PS1としてデータベース102に保存する。
【0039】
次に、処理がステップS14に進むと、DER計画部105は、発電量予測値PS1と、遵守すべき熱容量制約への影響度PE(熱容量制約影響度)と、蓄電池残量や蓄電池余寿命等の蓄電池状態D42と、を用いて、取引前発電計画値PS2と、取引前充放電計画値PB2と、を立案し、データベース102に保存する。
【0040】
次に、処理がステップS16に進むと、市場取引部106は、取引前発電計画値PS2と、取引前充放電計画値PB2と、に従って電力卸市場で取引し、取引結果に基づいて、発電計画値PS3と、充放電計画値PB3と、を作成し、仮想発電量計画値PG3を計算する。そして、市場取引部106は、これら発電計画値PS3、充放電計画値PB3および仮想発電量計画値PG3をデータベース102に保存する。
【0041】
図10は、実需給時における制御プログラムのフローチャートである。なお、この制御プログラムは、DER制御部107において、例えば1分~15分程度の所定の制御周期TC毎に実行される。
図10において処理がステップS21(需給監視過程)に進むと、需給監視部103は、制御周期TC毎の発電量実績値PSおよび充放電量実績値PBと、を取得する。次に、処理がステップS22(充放電量決定過程)に進むと、DER制御部107は、仮想発電量計画値PG3と、制御周期TC毎の発電量実績値PSおよび充放電量実績値PBと、に基づいてインバランス低減計画を立案する。
【0042】
ここで、「インバランス低減計画」とは、実需給時刻の例えば30分程度の取引精算単位期間TPに関する制御周期毎の充放電指令値PBAおよび発電上限指令値PSAを計画するものである。ここで、発電上限指令値PSAは、RE電源31の出力をその値以下に制限するための制御指令値である。例えば、蓄電池システム32における蓄電池残量の制約により、蓄電池システム32が系統制約緩和需要を十分に確保できない場合、この発電上限指令値PSAによって発電量実績値PSを抑制することができる。
【0043】
次に、処理がステップS24に進むと、DER制御部107は、需給制御を行う。すなわち、DER制御部107は、充放電指令値PBAおよび発電上限指令値PSAに基づいて、RE電源31および蓄電池システム32を遠隔制御する。次に、処理がステップS26に進むと、需給監視部103は、現在時刻すなわち実需給時刻が属する取引精算単位期間TPについて、発電量実績値PSと、充放電量実績値PBと、をデータベース102に保存する。以上により、今回の制御周期TCにおける本制御プログラムの処理が終了する。
【0044】
発電事業者は、保存された発電量実績値PSおよび充放電量実績値PBに基づいて、バランシンググループ30(
図1参照)の全体における仮想発電量PGを計算し、この仮想発電量PGに基づいて、後日、発電インバランスを清算する。以上のような制御を行うことにより、DER制御部107は、フィードフォワード制御が可能となり、効率的に発電インバランスを低減することができる。
【0045】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態による電力システム2の設備構成例を示すブロック図である。
図11において、電力システム2は、電力系統20と、複数の(n個の)RE電源31-1~31-nと、蓄電池システム32と、複数の(n+1個の)取引メータ34-1~34-(n+1)と、需給管理装置100と、を備えている。
【0046】
本実施形態においては、複数のRE電源31-1~31-nが管理対象電源になり、これら複数のRE電源31-1~31-nと、蓄電池システム32と、が一つのバランシンググループ30を構成している。上述した以外の電力システム2の構成は、第1実施形態の電力システム1のもの(
図1参照)と同様である。従って、本実施形態においても、需給管理装置100は、第1実施形態のものと同様に仮想発電量計画値PG3を計算することができる。
【0047】
[実施形態の効果]
以上のように上述した実施形態によれば、需給管理装置100は、電力系統20に接続された管理対象電源(31)から発電量実績値PSを取得し、電力系統20に接続された蓄電池システム32から充放電量実績値PBを取得する需給監視部103と、管理対象電源(31)の発電量である第1の発電量(75)から、電力系統20における熱容量制約緩和のための需要である熱容量制約緩和需要(76)を減算した結果である第2の発電量(77)を用いて蓄電池システム32に対する充放電指令値PBAを出力する充放電量決定部(107)と、を備える。これにより、本実施形態によれば、熱容量制約緩和需要(76)に対応して蓄電池システム32等を適切に管理できる。
【0048】
また、管理対象電源(31)は、太陽光、風力、波力、潮力、流水、地熱、またはバイオマスによって発電する再生可能エネルギー電源であると一層好ましい。これにより、再生可能エネルギーを有効利用できる。
【0049】
また、第2実施形態のように複数の管理対象電源(31)が設けられる場合には、蓄電池システム32は、複数の管理対象電源(31)の発電インバランスを熱容量制約緩和のために緩和する共通の需要として機能すると一層好ましい。これにより、複数の管理対象電源(31)に対応して、熱容量制約緩和需要(76)に対応して蓄電池システム32等を適切に管理できる。
【0050】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0051】
(1)上各記実施形態において、RE電源31は太陽光によって電力を発電するものであった。しかし、RE電源31は、風力、波力、潮力、流水、地熱、またはバイオマス等、太陽光以外の再生可能エネルギーによって発電する電源であってもよい。
【0052】
(2)また、上記各実施形態においては、管理対象電源としてRE電源31を適用した例を説明した。しかし、管理対象電源は、RE電源に以外の電源であってもよい。
【0053】
(3)上記実施形態における需給管理装置100のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、
図9および
図10に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0054】
(4)
図9,
図10に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0055】
(5)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
20 電力系統
31 RE電源(管理対象電源)
32 蓄電池システム
75 RE発電量欄(第1の発電量)
76 熱容量制約緩和需要欄(熱容量制約緩和需要)
77 仮想発電量欄(第2の発電量)
100 需給管理装置
103 需給監視部(需給監視手段)
107 DER制御部(充放電量決定部、充放電量決定手段)
900 コンピュータ
PB 充放電量実績値
PS 発電量実績値
PBA 充放電指令値
S21 ステップ(需給監視過程)
S22 ステップ(充放電量決定過程)