(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】アーム機構
(51)【国際特許分類】
B60T 7/06 20060101AFI20250611BHJP
B60T 7/00 20060101ALI20250611BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20250611BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20250611BHJP
【FI】
B60T7/06 B
B60T7/00 A
B60T7/02 D
G05G1/30 E
(21)【出願番号】P 2022018874
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2024-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃靖
(72)【発明者】
【氏名】笹井 伸一
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-295211(JP,A)
【文献】実開平02-063112(JP,U)
【文献】特開2020-006717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0168519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00- 7/10
G05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回動軸(101)を中心に第1方向と前記第1方向とは逆向きの第2方向とに揺動可能な第1アーム(110)と、
前記第1アーム(110)に設けられ、少なくとも一部が前記第1アーム(110)に対して前記第1方向と前記第2方向とに相対的に移動可能な第2アーム(120)と、
前記第1アーム(110)に固定され、前記第2アーム(120)が前記第1アーム(110)に対して相対的に前記第2方向に移動したときに前記第2アーム(120)によって押圧されるスイッチ(130)と、
前記第2アーム(120)が前記第1方向に付勢されるように前記第1アーム(110)と前記第2アーム(120)とを接続する弾性体(140)と、
一端が前記第2アーム(120)に接続され、他端が動作装置(180)に接続され、前記第1アーム(110)の揺動に伴って前記第2アーム(120)が前記第1方向に移動したときに前記動作装置(180)に引張力を付与する構造体(150)と、を備え、
前記動作装置(180)は、前記引張力の付与に基づいて所定の動作を行い、
前記第2アーム(120)は、前記構造体(150)が前記動作装置(180)に前記引張力を付与したときに、前記第1アーム(110)に対して相対的に前記第2方向に移動して前記スイッチ(130)を押圧する、アーム機構。
【請求項2】
前記第1アーム(110)は、前記弾性体(140)によって前記第1方向に付勢される前記第2アーム(120)に当接することにより前記第2アーム(120)の移動を規制する当接面(164a)を有する、請求項1に記載のアーム機構。
【請求項3】
前記第2アーム(120)は、前記第1アーム(110)に設けられた第2回動軸(110a)に支持されており、前記第2回動軸(110a)を中心に前記第1方向と前記第2方向とに揺動することにより、少なくとも前記一部が前記第1アーム(110)に対して前記第1方向と前記第2方向とに相対的に移動する、請求項1又は2に記載のアーム機構。
【請求項4】
前記動作装置(180)は、ブレーキ装置であり、
前記構造体(150)は、ワイヤであり、
前記第1アーム(110)は、前記第1方向に揺動することにより、前記ワイヤを引っ張り、前記ブレーキ装置を動作させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のアーム機構。
【請求項5】
前記スイッチ(130)は、ブレーキランプスイッチとしての機能を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアーム機構。
【請求項6】
前記スイッチ(130)は、アンロードバルブスイッチとしての機能を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアーム機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アーム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アーム機構を備えるブレーキペダル装置を開示する。このブレーキペダル装置は、ブレーキペダルの踏み込み量に応じ、走行動力の伝達と遮断とを切り換える走行動力切換スイッチを備えており、ブレーキペダルが踏み込まれたタイミングに合わせて、走行動力切換スイッチにより走行動力を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ブレーキペダル装置のように、アームの揺動に応じてアームに接続された動作装置を動作させるアーム機構では、経年変化の影響によって、動作装置の動作のタイミングが変化することが考えられる。例えば、アームと動作装置とがワイヤのような構造体で接続されている場合、ワイヤが伸びてしまうことにより、動作装置の動作するタイミングがずれ得る。そのため、上記ブレーキ装置の例では、ブレーキペダルの踏み込みによるブレーキ動作のタイミングと走行動力切換スイッチによる走行動力の遮断のタイミングとが、初期の設定からずれる可能性がある。
【0005】
本開示は、動作装置の動作のタイミングとスイッチの押圧のタイミングとを合わせることができ、部品等の経年変化を受け難い、アーム機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例のアーム機構は、第1回動軸(101)を中心に第1方向と第1方向とは逆向きの第2方向とに揺動可能な第1アーム(110)と、第1アーム(110)に設けられ、少なくとも一部が第1アーム(110)に対して第1方向と第2方向とに相対的に移動可能な第2アーム(120)と、第1アーム(110)に固定され、第2アーム(120)が第1アーム(110)に対して相対的に第2方向に移動したときに第2アーム(120)によって押圧されるスイッチ(130)と、第2アーム(120)が第1方向に付勢されるように第1アーム(110)と第2アーム(120)とを接続する弾性体(140)と、一端が第2アーム(120)に接続され、他端が動作装置(180)に接続され、第1アーム(110)の揺動に伴って第2アーム(120)が第1方向に移動したときに動作装置(180)に引張力を付与する構造体(150)と、を備え、動作装置(180)は、引張力の付与に基づいて所定の動作を行い、第2アーム(120)は、構造体(150)が動作装置(180)に引張力を付与したときに、第1アーム(110)に対して相対的に第2方向に移動してスイッチ(130)を押圧する。
【0007】
上記のアーム機構では、弾性体(140)によって第2アーム(120)が第1方向に付勢されている。そのため、自然状態(無負荷状態)において、第2アーム(120)はスイッチ(130)を押圧していない。一方で、第1アーム(110)の揺動によって、第2アーム(120)が第1方向に移動すると、第2アーム(120)に接続された構造体(150)によって動作装置(180)に引張力が付与される。これにより、動作装置(180)が所定の動作を行うとともに、第2アーム(120)が第1アーム(110)に対して相対的に第2方向に移動することで第2アーム(120)によってスイッチ(130)が押圧される。したがって、動作装置(180)の動作のタイミングとスイッチ(130)の押圧のタイミングとを連動させることが可能となる。このような構成では、経年変化によって例えば構造体(150)の長さが変わったとしても、動作装置(180)の動作とスイッチ(130)の押圧との互いのタイミングが変化しにくい。
【0008】
一例の第1アーム(110)は、弾性体(140)によって第1方向に付勢される第2アーム(120)に当接することにより第2アーム(120)の移動を規制する当接面(164a)を有してもよい。この構成では、自然状態における第1アーム(110)に対する第2アーム(120)の相対的な位置を一定にすることができる。
【0009】
一例の第2アーム(120)は、第1アーム(110)に設けられた第2回動軸(110a)に支持されており、第2回動軸(110a)を中心に第1方向と第2方向とに揺動することにより、少なくとも一部が第1アーム(110)に対して第1方向と第2方向とに相対的に移動してもよい。この構成では、第1アーム(110)に対して相対的に移動する第2アーム(120)の構成をシンプルな構造で実現できる。
【0010】
一例の動作装置180は、ブレーキ装置であり、構造体(150)は、ワイヤであり、第1アーム(110)は、第1方向に揺動することにより、ワイヤを引っ張り、ブレーキ装置を動作させてもよい。この構成では、実際にブレーキ装置が動作するタイミングで所望のスイッチ(130)を押圧できる。
【0011】
一例のスイッチ(130)は、ブレーキランプスイッチとしての機能を有する。この構成では、ブレーキ装置が動作するタイミングでブレーキランプを点灯させることができる。また、一例のスイッチ(130)は、アンロードバルブスイッチとしての機能を有する。この構成では、ブレーキ装置が動作するタイミングでアンロードバルブスイッチを動作させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、動作装置の動作のタイミングとスイッチの押圧のタイミングとを連動させることができ、部品等の経年変化を受け難い、アーム機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一例のアーム機構を備えたスピードスプレーヤを示す斜視図である。
【
図2】一例のアーム機構を備えたブレーキペダル装置を示す斜視図である。
【
図3】ブレーキペダル装置を構成する第1アームの一例を示す斜視図である。
【
図4】ブレーキペダル装置を構成する第2アームの一例を示す斜視図である。
【
図5】ブレーキペダル装置の動作説明をするための図である。
【
図6】ブレーキペダル装置の動作説明をするための図である。
【
図7】ブレーキペダル装置の動作説明をするための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係るアーム機構の具体例として、自走式スピードスプレーヤに設けられたブレーキペダル装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、一例のブレーキペダル装置を備えたスピードスプレーヤを斜め後方から見た斜視図である。以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」は、スピードスプレーヤを基準とした方向である。各図面には、理解の容易のためにXYZ直交座標系が表示されている。X軸方向は前後方向に沿い、Y軸方向は左右方向に沿っている。また、Z軸は、上下方向(鉛直方向)に沿っている。
【0016】
図1に示すように、スピードスプレーヤ1は、走行車体の左右に前輪3及び後輪4をそれぞれ回転可能に備えている。走行車体上には、前側から後側へ向けて順に、運転席10、薬液タンク13、エンジンルーム15、噴頭部16及び送風機部17が配設されている。運転席10は、運転者が乗り込んで走行、停止等の運転操作をするとともに薬剤散布を操作する部分である。薬液タンク13は、噴霧のための薬液を貯留するためのタンクである。エンジンルーム15は、エンジン及び噴霧用ポンプを収容しする。噴頭部16は、噴霧用ポンプの駆動により薬液タンク13から圧送される薬液を周囲に噴霧する。送風機部17は、後方から吸引した空気を噴頭部16へ送るための部分であり、回転駆動される送風ファン18を備える。送風機部17より前側の噴頭部16には、薬液が上方及び側方へ向かって噴霧されるように複数の噴霧ノズル19が離間配置されている。
【0017】
スピードスプレーヤ1では、エンジンの動力を車輪(前輪3、後輪4)の走行軸に伝達する静油圧式無段変速機(HST)が装備されている。静油圧式無段変速機は、エンジンの駆動により作動する油圧ポンプと、作動油の流れにより駆動する油圧モータとを備える。静油圧式無段変速機では、油圧ポンプの可変斜板の角度を無段階で調節することにより、油圧モータに流す作動油の方向、流量等を変化させ、前進と後進との切り替え及び無段変速を操作している。
【0018】
運転席10内の足元には、スピードスプレーヤ1を減速・停止するためのブレーキペダル装置(アーム機構)100が設けられている。
図2は、一例のブレーキペダル装置100を示す斜視図である。アーム機構としてのブレーキペダル装置100は、第1アーム110と、第2アーム120と、スイッチ130と、弾性体140と、構造体150と、を含む。第1アーム110は、第1回動軸を中心に第1方向と第1方向とは逆向きの第2方向とに揺動可能に構成されている。図示例の第1アーム110は、車体フレームに設けられた第1回動軸101に回動可能に支持されたアーム本体111を有する。第1回動軸101側を基端として、第1アーム110の先端には、ペダル112が設けられている。第1回動軸101は、Y軸方向、すなわち左右方向に沿って延在している。第1アーム110は、前側に向かって傾斜した状態となるように設置されている。第1アーム110は、第1回動軸101を中心として、前方向(第1方向)に倒れ込むように回動することができる。また、第1アーム110は、第1回動軸101を中心として、後方向(第2方向)に起き上がるように回動することができる。
【0019】
図3は、ブレーキペダル装置を構成する第1アームの一例を示す斜視図である。一例の第1アーム110おいて、アーム本体111は、左右方向を厚さ方向とする板状体であってよい。アーム本体111の一方の側面(例えば左側面)111aには、例えばボルト等によってブラケット160が固定されている。ブラケット160は、アーム本体111の側面111aに当接される第1板状部161を有する。図示例の第1板状部161は、Y軸方向から見て直角三角形状をなしている。ペダル112が踏み込まれていない自然状態において、第1板状部161の斜辺以外の一方の辺は水平方向に沿い、斜辺以外の他方の辺は鉛直方向に沿うように配置されている。
【0020】
第1板状部161の一方の辺にはアーム本体111と逆側(すなわち左側)に突出する第2板状部162が形成されている。第2板状部162の前端には、上向きに突出する第3板状部163が形成されている。第3板状部163には、貫通孔163aが形成されている。また、第1板状部161の他方の辺には左側に突出する第4板状部164が形成されている。第4板状部164のアーム本体111と逆側の端部には、後向きに突出する第5板状部165が形成されている。第5板状部165には、貫通孔165aが形成されている。第5板状部165の貫通孔165aには、引張コイルバネ166の一端が接続されている(
図2参照)。この引張コイルバネ166の他端は、ブレーキペダルよりも後方の位置において、車体のフレーム(不図示)に接続されている。すなわち、引張コイルバネ166は、ブラケット160を介して第1アーム110を後方向に引っ張っている。引張コイルバネ166に引っ張られることにより、自然状態での第1アーム110は、所定の回動位置で静止している。例えば、後方向に引っ張れた第1アーム110は、車両フレームに設けられた規制部材等に当接することで、静止してもよい。
【0021】
アーム本体111におけるペダル112が設けられた端部と逆側の端部には、左側に向かって突出する第1突出片113が形成されている。第1突出片113は、第1回動軸101の近傍から径方向にほぼ沿うように形成されている。第1突出片113の上側部分には、厚さ方向に第1突出片113を貫通する貫通孔113aが形成されている。第1突出片113のうち貫通孔113aが形成された周辺は、ブラケット160の第4板状部164に対面している。
【0022】
図4は、ブレーキペダル装置を構成する第2アームの一例を示す斜視図である。
図5は、ブレーキペダル装置をY軸方向から見た図である。第2アーム120は、第1アーム110に支持されており、第1アーム110の揺動に伴って第1アーム110と共に揺動し得る。また、第2アーム120の少なくとも一部は、第1アーム110に対して前方向(第1方向)と後方向(第2方向)とに相対的に移動可能となるように構成されている。図示例の第2アーム120は、第1アーム110に設けられた第2回動軸110aに支持されている。第2回動軸110aは、Y軸方向に沿っている。第2アーム120は、第2回動軸110aを中心に前方向と後方向とに揺動することにより、少なくとも一部が第1アーム110に対して前方向と後方向とに相対的に移動する。
【0023】
一例の第2回動軸110aは、ボルト状部材によって構成されている。この第2回動軸110aは、第1アーム110のアーム本体111に形成された貫通孔111bに挿通されている。貫通孔111bは、第1回動軸101よりも上側に設けられている。また、貫通孔111bは、第1回動軸101を中心とする周方向において、ブラケット160の第4板状部164とアーム本体111の第1突出片113との間に位置している。これにより、第2アーム120は、第4板状部164と第1突出片113との間に配置される。
【0024】
第2アーム120は、第1アーム110のアーム本体111における側面111aに当接する略矩形板状の本体部121と、本体部121の後側の縁部から左側に突出する第2突出片123とを含む。本体部121の下側には第2回動軸110aが挿通される貫通孔121aが形成されている。第2突出片123は、板状をなしており、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に揺動した際に、第1突出片113の貫通孔113aを塞ぐように第1突出片113に当接し得る。なお、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に前方向に揺動した際には、第2アーム120の本体部121の前側の縁部121cが第4板状部164に当接し得る。すなわち、第2アーム120は、第2回動軸110aを中心とする周方向において、第4板状部164の後面(当接面)164aと第1突出片113の前面との間で前後方向に沿って揺動するように構成されている。
【0025】
第2アーム120の本体部121の上側には、弾性体140と構造体150とを接続する中間部材170が接続される貫通孔121bが形成されている。中間部材170は、貫通孔121bに挿通される軸部171と、軸部171に支持される接続部173と、を有する。軸部171は、例えばリベット状をなしている。接続部173は、例えばコの字状を呈する金具である。接続部173における対面する一対の側壁部には、それぞれ貫通孔173aが形成されている。リベット状の軸部171は、第2アーム120の貫通孔121bと、接続部173の貫通孔173aとに挿通されている。第2アーム120は、接続部173の一対の側壁部間に配置されている。これにより、中間部材170の接続部173は、第2アーム120の貫通孔121bに挿通された軸部171を回動中心として、第2アーム120に対して揺動可能に支持される。
【0026】
弾性体140(付勢部材)は、第2アーム120が前方向(第1方向)に付勢されるように、第1アーム110と第2アーム120とを接続する。図示例の弾性体140は、引張コイルバネである。弾性体140の一端は、第1アーム110に取り付けられたブラケット160における第3板状部163の貫通孔163aに支持されている。弾性体140の他端は、第2アーム120に接続された中間部材170の軸部171に支持されている。すなわち、弾性体140は、第1アーム110に対して第2アーム120が相対的に前方向に揺動するように、実質的に第1アーム110と第2アーム120とに接続されている。
【0027】
構造体150は、第1アーム110の揺動に伴って第2アーム120が前方向に移動したときに動作装置180に引張力を付与する。動作装置180は、引張力の付与に基づいて所定の動作を行う。一例において、動作装置180は車両の制動を行うブレーキ装置であり、構造体150はブレーキ装置にブレーキペダルの動作を伝えるためのワイヤである。ブレーキ装置は、例えばディスクブレーキであってよい。構造体150としてのワイヤの一端は、中間部材170を介して第2アーム120に接続されている。例えば、ワイヤの一端は、中間部材170を構成する接続部173に取り付けられていてよい。また、ワイヤの他端は、動作装置180としてのブレーキ装置に接続されている。
【0028】
スイッチ130は、第1アーム110に固定されており、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に移動したときに、第2アーム120によって押圧される。一例のスイッチ130は、スイッチ本体131と、スイッチ本体131から突出した押圧部133とを含む。スイッチ130の押圧部133がスイッチ本体131側に押圧されると、押圧部133が押圧されたことを検出する信号がスイッチ本体131部に接続された制御装置190に出力される。
【0029】
図示例において、スイッチ本体131は、第1アーム110における第1突出片113の貫通孔113aを塞ぐように、第1突出片113の後面に固定されている。また、押圧部133は、第1突出片113の貫通孔113aに挿通されている。押圧部133の先端は、貫通孔113aを通過しており、第1突出片113の前面よりも前方に位置している。例えば、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に揺動して、第2アーム120の第2突出片123が第1突出片113に当接した場合、スイッチ130の押圧部133は第2突出片123に押圧される。これにより、スイッチ130から制御装置190に対して信号が出力される。
【0030】
例えば、スイッチ130は、ブレーキランプスイッチとしての機能を有していてもよい。この場合、スイッチ130に接続される制御装置190は、ブレーキランプを動作させる制御装置であってよい。また、スイッチ130は、アンロードバルブスイッチとしての機能を有していてもよい。この場合、スイッチ130に接続される制御装置190は、静油圧式無段変速機の油圧回路内に設けられたアンロードバルブを動作させる制御装置であってよい。スイッチ130の押圧部133が押された場合、アンロードバルブは、静油圧式無段変速機の油圧ポンプをアンロードさせることにより、走行軸に対する静油圧式無段変速機からの出力を切断する。なお、本例におけるスイッチ130は、ブレーキランプスイッチとしての機能、及び、アンロードバルブスイッチとしての機能の両方を有しているものとする。
【0031】
続いて、
図5~
図7を参照してアーム機構の動作について説明する。なお、
図5~
図7では、分かり易さのために、引張コイルバネ166を描画していない。
図5に示すように、ペダル112の踏み込みが行われていない自然状態では、第1アーム110は、引張コイルバネ166(
図2参照)によって後方向に引っ張られて、所定の位置で静止している。この状態では、第2アーム120は、弾性体140によって前方向に付勢されている。第2アーム120における本体部121の前側の縁部は、ブラケット160の第4板状部164の後面164aに当接されている。
図5の状態では、第2アーム120の第2突出片123が第1アーム110の第1突出片113に当接していないため、スイッチ130の押圧部133は押圧されていない。
【0032】
図6に示すように、走行中に運転者によって、ペダル112が踏み込まれると、第1アーム110が第1回動軸101を回動中心として前方向に向かって揺動する。このとき、第1アーム110に固定されたブラケット160も第1アーム110と同様に第1回動軸101を回動中心として前方向に向かって揺動する。第2アーム120は、第4板状部164の後面164aに当接された状態のまま、第1アーム110に対する相対的な位置の変動を生じずに、第1回動軸101を回動中心として前方向に向かって揺動する。これにより、第2アーム120に中間部材170を介して接続された構造体150(ワイヤ)が前側に引っ張られ、動作装置180に対する引張力の付与が開始される。
【0033】
図7に示すように、運転者によって、ペダル112がさらに踏み込まれると、第1アーム110及びブラケット160は第1回動軸101を回動中心としてさらに前方向に向かって揺動する。これにより、第2アーム120に接続された中間部材170が弾性体140に前方向に引っ張れるため、構造体150がさらに前方向に引っ張られ、動作装置180に対する引張力の付与が増大し、動作装置180が所定の動作を実行する。本例では、動作装置180がブレーキ装置であるため、ブレーキ装置の動作によって車両の制動が開始される。ブレーキ装置が動作し始めた場合、中間部材170が構造体150をさらに前側に引っ張っても、構造体150は前側に殆ど移動しない。
【0034】
一方で、弾性体140によって前方向に引っ張られている第2アーム120は、動作装置180に対した構造体150が付与する引張力の反作用の力によって、第2回動軸110aを回動中心として、第1アーム110に対して後方向に揺動する。これにより、第2アーム120の第2突出片123は、第1アーム110の第1突出片113に近付く方向に移動する。そして、第2突出片123が第1突出片113に当接する位置まで移動すると、第1突出片113の貫通孔113aから前側に突出するスイッチ130の押圧部133が第2突出片123に押圧される。これにより、スイッチ130からの信号に基づいて、アンロードバルブが開状態になるとともにブレーキランプが点灯する。このように、上記の例では、第1アーム110が前方向に揺動することにより、構造体150としてのワイヤが前方向に引っ張られ、動作装置180としてのブレーキ装置が動作されるとともに、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に移動してスイッチ130が押圧される。
【0035】
以上説明のとおり、一例のアーム機構(ブレーキペダル装置100)は、第1回動軸101を中心に前方向(第1方向)と後方向(第2方向)とに揺動可能な第1アーム110と、第1アーム110に設けられ、少なくとも一部が第1アーム110に対して前方向と後方向とに相対的に移動可能な第2アーム120と、第1アーム110に固定され、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に移動したときに第2アーム120によって押圧されるスイッチ130と、第2アーム120が前方向に引っ張られるように第1アーム110と第2アーム120とを接続する弾性体140と、一端が第2アーム120に接続され、他端が動作装置180に接続され、第1アーム110の揺動に伴って第2アーム120が前方向に移動したときに動作装置180に引張力を付与する構造体150と、を備え、動作装置180は、引張力の付与に基づいて所定の動作を行い、第2アーム120は、構造体150が動作装置180に引張力を付与したときに、第1アーム110に対して相対的に後方向に移動してスイッチ130を押圧する。
【0036】
上記のアーム機構では、弾性体140によって第2アーム120が前方向に引っ張られている。そのため、自然状態(無負荷状態)において、第2アーム120はスイッチ130を押圧していない。一方で、第1アーム110の揺動によって、第2アーム120が前方向に移動すると、第2アーム120に接続された構造体150によって動作装置180に引張力が付与される。これにより、動作装置180が所定の動作を行うとともに、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に移動することで第2アーム120によってスイッチ130が押圧される。したがって、動作装置180の動作のタイミングとスイッチ130の押圧のタイミングとを連動させることが可能となる。
【0037】
このような構成では、経年変化によって例えば構造体150の長さが変わったとしても、動作装置180の動作とスイッチ130の押圧との互いのタイミングがズレにくい。例えば、構造体150が経年変化によって伸びた場合、動作装置180を動作させるために、運転者はペダル112をより深く踏み込む必要が生じる。この場合においても、第2アーム120が第1アーム110に対して相対的に後方向に揺動してスイッチ130を押圧するタイミングは、動作装置180に対して付与される引張力の反作用の力が弾性体140を伸張させたときである。したがって、経年変化が生じた場合、第1アーム110の踏み込みのストロークに変化が生じたとしても、動作装置180の動作タイミングとスイッチ130の押圧タイミングとの関係は変化し難い。
【0038】
一例の第1アーム110は、弾性体140によって前方向に引っ張られる第2アーム120に当接することにより第2アーム120の移動を規制する当接面(後面164a)を有している。この構成では、自然状態における第1アーム110に対する第2アーム120の相対的な位置を一定にすることができる。したがって、第2アーム120が後方向に回動し始めてから第2アーム120がスイッチ130を押圧するまでのタイミングを調整しやすい。
【0039】
一例の第2アーム120は、第1アーム110に設けられた第2回動軸110aに支持されており、第2回動軸110aを中心に前方向と後方向とに揺動することにより、少なくとも一部が第1アーム110に対して前方向と後方向とに相対的に移動してもよい。この構成では、第1アーム110に対して相対的に移動する第2アーム120の構成をシンプルな構造で実現できる。
【0040】
一例の動作装置180は、ブレーキ装置であり、構造体150は、ワイヤであり、第1アーム110は、前方向に揺動することにより、ワイヤを引っ張り、ブレーキ装置を動作させてもよい。この構成では、実際にブレーキ装置が動作するタイミングで所望のスイッチ130を押圧できる。
【0041】
一例のスイッチ130は、ブレーキランプスイッチとしての機能を有する。この構成では、ブレーキ装置が動作するタイミングでブレーキランプを点灯させることができる。また、一例のスイッチ130は、アンロードバルブスイッチとしての機能を有する。この構成では、ブレーキ装置が動作するタイミングでアンロードバルブスイッチを動作させることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本開示の具体的形態は上記の例に限定されない。
【0043】
例えば、アーム機構がスピードスプレーヤに対して適用された例を示したが、アーム機構は、ブームスプレーヤ等の他の農作業車に対しても適用でき、農作業車以外の車両に対しても適用可能である。
【0044】
また、アーム機構は、ブレーキ装置だけでなく、他の装置に適用されてもよい。すなわち、アーム機構は、アームの揺動に連動してワイヤ等の構造体に接続された所定の動作装置を動作させる装置において、動作装置の動作タイミングに合わせてスイッチを押圧する機構であればよい。なお、上記のアーム機構では、動作装置の動作とスイッチの押圧とのタイミングが同じとなる例を示したが、動作装置の動作とスイッチの押圧とのタイミングは厳密に同じである必要はない。例えば、ブレーキ装置の場合には、弾性体140の弾性力とブレーキ装置を動作させるのに必要なワイヤの引張力との関係を調整することにより、上記のタイミングを変化させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…スピードスプレーヤ、100…ブレーキペダル装置(アーム機構)、101…第1回動軸、110…第1アーム、120…第2アーム、130…スイッチ、140…弾性体、150…構造体、180…動作装置。