(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】型枠構造、及びコンクリート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 7/16 20060101AFI20250611BHJP
B28B 7/34 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
B28B7/16 D
B28B7/34 J
(21)【出願番号】P 2022072459
(22)【出願日】2022-04-26
【審査請求日】2024-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】藤代 勝
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-090478(JP,A)
【文献】実公昭49-003630(JP,Y1)
【文献】実開平02-101704(JP,U)
【文献】特開2000-185308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/16
B28B 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材の製造に用いられる型枠構造であって、
板状を呈しており、板厚方向に貫通する貫通孔を有する内型枠と、
前記内型枠から見てコンクリートが打設される打設空間とは反対側に位置する外型枠と、
前記外型枠に固定されており、前記貫通孔に通されて前記打設空間に突出する凸部材と、
前記凸部材が前記打設空間に突出する状態において、前記内型枠と前記外型枠との間隔を保持する間隔保持部材と、
を備える、
型枠構造。
【請求項2】
前記凸部材は、前記内型枠に沿って延在する平面に沿って切断したときの前記凸部材の断面積が前記外型枠から離隔するに従って小さくなるテーパ部を有する、
請求項1に記載の型枠構造。
【請求項3】
前記凸部材は弾性材料によって構成されている、
請求項1又は2に記載の型枠構造。
【請求項4】
前記凸部材は、前記コンクリート部材の妻部の凹部を形成し、
前記内型枠は、前記妻部の凸部を形成する、
請求項1又は2に記載の型枠構造。
【請求項5】
板状を呈しており、板厚方向に貫通する貫通孔を有する内型枠を設置してコンクリートが打設される打設空間を画成する工程と、
前記内型枠の前記貫通孔に、外型枠に固定された凸部材を通して前記打設空間に前記凸部材を突出させる工程と、
前記凸部材が前記打設空間に突出する状態において、前記内型枠と前記外型枠との間に前記内型枠と前記外型枠との間隔を保持する間隔保持部材を設置する工程と、
前記打設空間にコンクリートを打設する工程と、
を備える、
コンクリート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリート部材の製造に用いられる型枠構造、及びコンクリート部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第2948158号公報には、プレキャストコンクリート床版作製用の型枠が記載されている。型枠は、底枠と、その長手方向に延びる一対の側枠と、底枠の長手方向の両端に位置する端板とを有する。底枠の面板は、支持桁上部の版厚が厚く、支間部及び片持ち部の版厚が薄くなる凹凸が形成されている。
【0003】
特開2020-60059号公報には、プレキャストコンクリート部材の製造方法及び型枠が記載されている。型枠は、鋼製であり剛性を有する面型枠と、四角錐台状の弾性を有する部材からなる突起型枠とを有する。面型枠は、上面、下面、及び側面によって箱型に構成され、内部に空間を有する。面型枠の上面には孔が設けられる。面型枠内の空間は当該孔を介して外部と連通する。孔はそれぞれの室ごとに設けられる。
【0004】
突起型枠は、面型枠に対し着脱可能である。突起型枠の面型枠への固定、及び固定の解除(着脱)は、バルブ等の空気圧調整手段を用いて面型枠内の空間の各室の空気圧を調整することによって行われる。室内が大気圧よりも減圧されている場合には、上記の孔を介して突起型枠が面型枠側に吸着され、面型枠の上面に固定される。一方、室が常圧(大気圧)又は大気よりも加圧されている場合には、突起型枠は面型枠に固定されない。突起型枠は、EPS(Expanded PolyStyrene)等の発泡スチロール又はゴム等を用いて製作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2948158号公報
【文献】特開2020-60059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した型枠は、鋼製の面型枠と、孔が設けられた上面に着脱可能な突起型枠とを備え、突起型枠はゴム等を用いて製作される。この型枠では、突起型枠側に形成された空間にコンクリートが打設される。従って、コンクリートを打設するときに突起型枠と面型枠との間にモルタル又は繊維が入り込むことがあるので、後仕上げが必要となりうる。また、コンクリートを製造する度に面型枠への突起型枠の着脱が必要となることがある。よって、型枠の準備及び設置の作業性の点において改善の余地がある。
【0007】
本開示は、準備及び設置の作業性を向上させることができる型枠構造、及びコンクリート部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の要旨は以下のとおりである。
[1]
コンクリート部材の製造に用いられる型枠構造であって、
板状を呈しており、板厚方向に貫通する貫通孔を有する内型枠と、
前記内型枠から見てコンクリートが打設される打設空間とは反対側に位置する外型枠と、
前記外型枠に固定されており、前記貫通孔に通されて前記打設空間に突出する凸部材と、
前記凸部材が前記打設空間に突出する状態において、前記内型枠と前記外型枠との間隔を保持する間隔保持部材と、
を備える、
型枠構造。
[2]
前記凸部材は、前記内型枠に沿って延在する平面に沿って切断したときの前記凸部材の断面積が前記外型枠から離隔するに従って小さくなるテーパ部を有する、
[1]に記載の型枠構造。
[3]
前記凸部材は弾性材料によって構成されている、
[1]又は[2]に記載の型枠構造。
[4]
前記凸部材は、前記コンクリート部材の妻部の凹部を形成し、
前記内型枠は、前記妻部の凸部を形成する、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の型枠構造。
[5]
板状を呈しており、板厚方向に貫通する貫通孔を有する内型枠を設置してコンクリートが打設される打設空間を画成する工程と、
前記内型枠の前記貫通孔に、外型枠に固定された凸部材を通して前記打設空間に前記凸部材を突出させる工程と、
前記凸部材が前記打設空間に突出する状態において、前記内型枠と前記外型枠との間に前記内型枠と前記外型枠との間隔を保持する間隔保持部材を設置する工程と、
前記打設空間にコンクリートを打設する工程と、
を備える、
コンクリート部材の製造方法。
【0009】
本開示に係る型枠構造は、コンクリート部材の製造に用いられる型枠構造である。型枠構造は、板状を呈しており、板厚方向に貫通する貫通孔を有する内型枠と、内型枠から見てコンクリートが打設される打設空間とは反対側に位置する外型枠と、外型枠に固定されており、貫通孔に通されて打設空間に突出する凸部材と、凸部材が打設空間に突出する状態において、内型枠と外型枠との間隔を保持する間隔保持部材と、を備える。
【0010】
この型枠構造は、板状を呈する内型枠と外型枠とを有し、内型枠と外型枠との間隔は間隔保持部材によって保持される。内型枠は、その板厚方向に貫通する貫通孔を有する。外型枠は、内型枠から見てコンクリートが打設される打設空間とは反対側に位置する。この型枠構造は外型枠に固定されている凸部材を有し、凸部材は当該貫通孔から打設空間に突出する。内型枠の貫通孔から凸部材が打設空間に突出した状態で、凸部材が内型枠に押し付けられて凸部材と内型枠の隙間が密閉される。当該打設空間にコンクリートが打設されるとき、凸部材と内型枠の隙間にモルタル等が侵入することはない。また、凸部材が固定された外型枠にモルタル等が漏れ出ることはない。従って、前述した後仕上げの手間を軽減することができる。更に、外型枠、及び凸部材の外型枠に固定された部分にはコンクリートは打設されないので、外型枠への凸部材の着脱を不要とすることができる。従って、型枠構造の準備及び設置を容易に行うことができるので、準備及び設置の作業性を向上させることができる。
【0011】
凸部材は、内型枠に沿って延在する平面に沿って切断したときの凸部材の断面積が外型枠から離隔するに従って小さくなるテーパ部を有してもよい。この場合、凸部材によって形成されるコンクリート部材の凹状部分にテーパ部を形成することができる。
【0012】
凸部材は弾性材料によって構成されていてもよい。この場合、打設空間に突出する凸部材が弾性材料によって構成されていることにより、打設されたコンクリートの材料収縮による拘束が弾性材料からなる凸部材の変形によって解放される。従って、凸部材が拘束体となって生じるコンクリートの材料収縮に伴うひび割れを抑制できるので、コンクリート部材の品質を良好にできる。
【0013】
凸部材は、コンクリート部材の妻部の凹部を形成し、内型枠は、妻部の凸部を形成してもよい。この場合、凹部と凸部とが形成された妻部を有するコンクリート部材を型枠構造によって製造することができる。
【0014】
本開示に係るコンクリート部材の製造方法は、板状を呈しており、板厚方向に貫通する貫通孔を有する内型枠を設置してコンクリートが打設される打設空間を画成する工程と、内型枠の貫通孔に、外型枠に固定された凸部材を通して打設空間に凸部材を突出させる工程と、凸部材が打設空間に突出する状態において、内型枠と外型枠との間に内型枠と外型枠との間隔を保持する間隔保持部材を設置する工程と、打設空間にコンクリートを打設する工程と、を備える。
【0015】
このコンクリート部材の製造方法では、板状を呈する内型枠を設置してコンクリートが打設される打設空間を画成し、外型枠に固定された凸部材を内型枠の貫通孔に通して打設空間に突出させる。内型枠の貫通孔から凸部材を打設空間に突出させ、間隔保持部材を設置して内型枠と外型枠との間隔を保持した状態で当該打設空間にコンクリートが打設される。このとき、凸部材が内型枠に押し付けられて凸部材と内型枠の隙間が密閉された打設空間にコンクリートが打設されるので、凸部材と内型枠の隙間にモルタル等が侵入しない。また、凸部材が固定された外型枠にモルタル等が漏れ出ることはない。従って、前述した後仕上げの手間を軽減することができる。更に、外型枠、及び凸部材の外型枠に固定された部分にはコンクリートは打設されないので、外型枠への凸部材の着脱を不要とすることができる。従って、内型枠及び外型枠の準備及び設置を容易に行うことができるので、準備及び設置の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、準備及び設置の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るコンクリート部材を示す平面図である。
【
図2】
図1のコンクリート部材の妻部を示す側面図である。
【
図4】実施形態に係る型枠構造を示す断面図である。
【
図5】(a)は、
図4の型枠構造の内型枠を示す図である。(b)は、
図5(a)のA-A線断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、従来の比較例に係る型枠構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る型枠構造、及びコンクリート部材の製造方法の実施形態について説明する。図面の説明について同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
本実施形態に係る型枠構造1(
図4参照)は、コンクリート部材Cを製造するときに用いられる。
図1は、コンクリート部材Cを示す平面図である。
図1に示されるように、コンクリート部材Cは、プレキャストコンクリートであり、例えば、工場において製造される。
【0020】
図2は、短手方向D2に沿って見たコンクリート部材Cの側面図である。
図1及び
図2に示されるように、例えば、コンクリート部材Cは、プレキャストコンクリート床版である。平面視において、コンクリート部材Cは、長手方向D1に延びる一対の長辺C1と、短手方向D2に延びる一対の短辺C2とを有する長方形状を呈する。コンクリート部材Cは、コンクリート部材Cの板厚方向D3に貫通する複数の貫通孔C3を有する。
【0021】
貫通孔C3には、コンクリート部材Cが載せられる主桁から上方に突出するずれ止め(例えば頭付きスタッド)が通される。コンクリート部材Cは、一例として、道路の路面を構成する床版であり、短手方向D2が橋軸方向に一致し、長手方向D1が橋軸直角方向(幅員方向)に一致するように設置される。
【0022】
例えば、コンクリート部材Cは、繊維補強コンクリートによって構成されている。一例として、コンクリート部材Cは、超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra-High Strength Fiber Reinforced Concrete)によって構成されている。例えば、コンクリート部材CはUFC床版である。この場合、強度が高いコンクリート部材Cとすることができるので、普通コンクリートで構成されているコンクリート部材と比較して、コンクリート部材Cの厚さを抑えることができる。
【0023】
コンクリート部材Cは妻部C4を有する。例えば、妻部C4は、コンクリート部材Cの短手方向D2の端部において長手方向D1及び板厚方向D3の双方に延在する。例えば、複数のコンクリート部材Cが短手方向D2(橋軸方向)に沿って並ぶように主桁上に設置され、妻部C4は目地部として機能する。この場合、短手方向D2に沿って並ぶ一対の妻部C4の間に間詰材が充填される。妻部C4は、コンクリート部材Cの端面を形成する凸部C5と、凸部C5から短手方向D2に窪む凹部C6を有する。凹部C6は、目地部のせん断キーとして機能する。
【0024】
コンクリート部材Cは複数の凹部C6を有し、複数の凹部C6は妻部C4において長手方向D1に沿って並んでいる。
図3は、妻部C4を拡大した図である。
図2及び
図3に示されるように、凹部C6は、長手方向D1及び板厚方向D3に延在する底面C7と、凸部C5から底面C7まで延びる傾斜面C8とによって画成されている。
【0025】
短手方向D2に沿って見たときに、凹部C6、及び凹部C6の底面C7は、例えば、矩形状を呈する。凹部C6は、底面C7の四隅のそれぞれから凸部C5まで延びる4本の稜線と、長手方向D1又は板厚方向D3に沿って互いに隣り合う一対の当該稜線の間に位置する4つの傾斜面C8とを有する。各傾斜面C8は、凸部C5及び底面C7の双方に対して傾斜している。
【0026】
例えば、コンクリート部材Cは、短手方向D2にコンクリート部材Cを貫通する貫通孔C11を有し、貫通孔C11の内面はシース管C12で形成されている。コンクリート部材Cは、複数の貫通孔C11を有する。複数の貫通孔C11は長手方向D1に沿って並んでいる。更に、コンクリート部材Cは、目地部で相対する2枚のプレキャスト床版のシース管の間に複数のリングスポンジC13を有する。
【0027】
以上、コンクリート部材Cの構成について説明した。しかしながら、コンクリート部材の構成は、前述したコンクリート部材Cに限られず適宜変更可能である。次に、コンクリート部材Cを製造するときに用いられる型枠構造1について説明する。
図4は、型枠構造1を示す断面図である。
図4に示されるように、型枠構造1は、内型枠2と、外型枠3と、凸部材4と、間隔保持部材5とを備える。
【0028】
図5(a)は、内型枠2を示す平面図である。
図5(b)は、
図5(a)のA-A線断面図である。
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、内型枠2は、板状を呈する。一例として、内型枠2は長方形状を呈する。内型枠2は、例えば、金属製である。一例として、内型枠2は鉄製である。しかしながら、内型枠2の材料は特に限定されない。
【0029】
内型枠2は、内型枠2の長手方向A1に延びる長辺2bと、内型枠2の短手方向A2に延びる短辺とを有する矩形板状であって、板厚方向A3に厚みを有する。長手方向A1はコンクリート部材Cの長手方向D1に一致し、短手方向A2はコンクリート部材Cの板厚方向D3に一致する。一例として、短手方向A2は鉛直方向である。板厚方向A3はコンクリート部材Cの短手方向D2に一致する。
【0030】
例えば、内型枠2は、コンクリート部材Cの妻部C4を形成する妻型枠である。内型枠2は、板厚方向A3に貫通する貫通孔2dを有する。貫通孔2dは、凸部材4が板厚方向A3に通される孔である。内型枠2は複数の貫通孔2dを有し、複数の貫通孔2dは長手方向A1に沿って並んでいる。
【0031】
板厚方向A3に沿って見た場合において貫通孔2dは、例えば、四角形状(一例として長方形状)を呈する。内型枠2を短手方向A2及び板厚方向A3に延びる平面で切断したときの断面形状は、例えば、矩形状を呈する。貫通孔2dは、内型枠2の複数(4つ)の内面2fによって画成されている。長手方向A1及び板厚方向A3に延びる平面で内型枠2を切断した断面において、内面2fは板厚方向A3に対して傾斜している。
【0032】
板厚方向A3の一方側から見た貫通孔2dの面積は、板厚方向A3の他方側から見た貫通孔2dの面積よりも小さい。内型枠2は、貫通孔2dの面積が小さい第1面2gと、第1面2gとは反対側を向く面であって貫通孔2dの面積が第1面2gにおける第1面2gの面積よりも大きい第2面2hとを有する。内型枠2の第1面2g側の面にコンクリートの打設空間Sが形成される。
【0033】
外型枠3は、内型枠2から見て打設空間Sとは反対側に設けられる。外型枠3は、打設空間Sを画成するものではなく、打設空間Sから離隔している。外型枠3は、例えば、板状を呈する。一例として、外型枠3は長方形状を呈する。例えば、外型枠3は、金属製であり、一例として鉄で構成されている。しかしながら、外型枠3の材料は特に限定されない。例えば、外型枠3は、熱硬化する樹脂材料によって構成されていてもよい。また、外型枠3の形状は、板状以外の形状であってもよく、特に限定されない。
【0034】
外型枠3は、板厚方向A3に貫通する孔部3bを有する。孔部3bは、間隔保持部材5が板厚方向A3に通される孔である。外型枠3は、例えば、複数の孔部3bを有し、複数の孔部3bは長手方向A1に沿って並んでいる。外型枠3は、内型枠2側に向けられる第1面3cと、第1面3cとは反対側を向く第2面3dとを有する。
【0035】
凸部材4は、例えば、外型枠3の第1面3cに固定される。、凸部材4は外型枠3に対して着脱可能であってもよい。一例として、凸部材4は外型枠3に接着剤によって固定される。凸部材4は弾性材料によって構成されている。例えば、凸部材4の材料はゴムである。凸部材4はウレタンを含む材料によって構成されていてもよい。例えば、凸部材4は、外型枠3に固定される基部4bと、基部4bから見て外型枠3とは反対側に位置するテーパ部4cとを有する。
【0036】
基部4bは、例えば、直方体状を呈する。基部4bは外型枠3から突出するように配置され、テーパ部4cは基部4bの突出端に設けられる。長手方向A1及び短手方向A2に延びる平面でテーパ部4cを切断したときの断面積は、基部4bから離隔するに従って小さくなる。すなわち、テーパ部4cは先細りするように傾斜している。
【0037】
例えば、板厚方向A3に沿って見た場合において、基部4bの形状、及びテーパ部4cの形状は、内型枠2の貫通孔2dの形状と相似である。テーパ部4cは、例えば、載頭角錐状(一例として載頭四角錐状)を呈する。テーパ部4cは、複数(一例として4つ)のテーパ面4dと、頂面4fとを有する。
【0038】
テーパ面4dは、外型枠3から基部4bが突出する方向に対して傾斜している。例えば、テーパ面4dの傾斜角度は、内型枠2の板厚方向A3に対する内面2fの傾斜角度と同一である。この場合、内面2fに凸部材4をスムーズに挿入できると共に、凸部材4を内面2fに挿入した状態において凸部材4と内型枠2との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0039】
例えば、頂面4fの形状は、内型枠2の貫通孔2dの形状と相似である。板厚方向A3に沿って見た場合において、貫通孔2dの面積は、頂面4fの面積より大きく、且つ基部4bの面積より小さい。従って、内型枠2の第2面2hから貫通孔2dにテーパ部4cを挿入したときに、貫通孔2dの内面2fにテーパ面4dが接触すると共に、テーパ部4cの一部が打設空間S側に突出する。
【0040】
間隔保持部材5は、凸部材4が打設空間Sに突出する状態において、内型枠2と外型枠3との間隔を保持する。型枠構造1は、例えば、複数の間隔保持部材5を備え、複数の間隔保持部材5は長手方向A1に沿って並ぶように配置される。更に、複数の間隔保持部材5は短手方向A2に沿って並ぶように配置される。間隔保持部材5は、一例として、金属製である。例えば、間隔保持部材5は、内部に雌螺子が形成された筒部5bと、筒部5bにねじ込まれるボルト5cとを有する。
【0041】
筒部5bは、内型枠2の第2面2hに当接する部位である。ボルト5cは、外型枠3の孔部3bに挿通されるネジ部5dと、外型枠3に当接する頭部5fとを有する。ネジ部5dは孔部3bに第2面3d側から挿通されて筒部5bの雌螺子にねじ込まれ、頭部5fは第2面3dに当接する。これにより、内型枠2と外型枠3との間隔が間隔保持部材5によって保持される。
【0042】
次に、本実施形態に係るコンクリート部材の製造方法について説明する。以下では、型枠構造1を用いてコンクリート部材Cを製造する方法について説明する。まず、内型枠2、外型枠3、凸部材4及び間隔保持部材5を用意する(用意する工程)。このとき、外型枠3に凸部材4の基部4bを貼り付けることによって、外型枠3に凸部材4を固定する(凸部材を固定する工程)。具体的には、外型枠3の第1面3cに長手方向A1に並ぶように複数の凸部材4が固定される。
【0043】
また、内型枠2を設置してコンクリートが打設される打設空間Sを画成する(打設空間を画成する工程)。このとき、第1面2gが打設空間S側を向くと共に、第2面2hが打設空間Sとは反対側を向くように内型枠2を設置する。そして、凸部材4のテーパ部4cを内型枠2の貫通孔2dに挿入し、凸部材4を貫通孔2dに押しつけて凸部材4の一部が打設空間Sに突出した状態とする(凸部材を突出させる工程)。具体的には、打設空間Sとは反対側から凸部材4のテーパ部4cを内型枠2の貫通孔2dに挿入し、貫通孔2dの内面2fにテーパ部4cのテーパ面4dを当接させる。
【0044】
続いて、間隔保持部材5を設置して内型枠2と外型枠3との間隔を保持させる(間隔保持部材を設置する工程)。例えば、長手方向A1に沿って並ぶ複数の間隔保持部材5を設置する。このとき、例えば、間隔保持部材5の筒部5bを内型枠2の第2面2hに引張に抵抗できるように固定して外型枠3の孔部3bにボルト5cを挿通し、孔部3bに挿通したボルト5cを筒部5bの雌螺子に締め付けることによって間隔保持部材5の設置を行う。
【0045】
間隔保持部材5を設置した後には打設空間Sにコンクリートを打設する(コンクリートを打設する工程)。コンクリートを打設するとコンクリート材料収縮が生じることがあるが、当該材料収縮による拘束は弾性部材によって構成されている凸部材4の変形によって解放される。
【0046】
打設したコンクリートが硬化した後には、型枠構造1を外す(型枠構造を外す工程)。具体的には、間隔保持部材5のボルト5cを緩めて筒部5bから抜くことにより間隔保持部材5を外す。そして、内型枠2の貫通孔2dから凸部材4を抜いて内型枠2から凸部材4及び外型枠3を外す。なお、凸部材4は、外型枠3から外されてもよいし、外されなくてもよい。また、内型枠2、外型枠3、凸部材4及び間隔保持部材5が一体化された状態で硬化したコンクリートから外されてもよい。
【0047】
以上のように型枠構造1が外されると、貫通孔2dから凸部材4が突出していた部分が凹部C6、内型枠2の第1面2gの部分が凸部C5となる妻部C4が形成されたコンクリート部材Cが完成し、コンクリート部材Cの製造方法の一連の工程が完了する。なお、外された内型枠2、外型枠3及び凸部材4は、他のコンクリート部材の製造のために転用することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る型枠構造1、及びコンクリート部材Cの製造方法から得られる作用効果についてより詳細に説明する。本実施形態に係る型枠構造1及びコンクリート部材Cの製造方法は、板状を呈する内型枠2と外型枠3とを有し、内型枠2と外型枠3との間隔は間隔保持部材5によって保持される。内型枠2は、その板厚方向A3に貫通する貫通孔2dを有する。外型枠3は、内型枠2から見てコンクリートが打設される打設空間Sとは反対側に位置する。
【0049】
型枠構造1は外型枠3に固定されている凸部材4を有し、凸部材4は貫通孔2dから打設空間Sに突出する。内型枠2の貫通孔2dに凸部材4が密着し、凸部材4が打設空間Sに突出した状態で打設空間Sにコンクリートが打設されるので、凸部材4と内型枠2の隙間にモルタル等が侵入することが無い。さらに外型枠3側にモルタル等が漏れ出ることはない。従って、モルタル等の異物を除去する後仕上げの手間を軽減することができる。すなわち、内型枠2の貫通孔2dと凸部材4との隙間に繊維等が入り込まない限り、上記の後仕上げを不要にすることができる。更に、外型枠3、及び凸部材4の外型枠3に固定された部分(例えば基部4b)にはコンクリートは打設されないので、外型枠3への凸部材4の着脱を不要とすることができる。従って、型枠構造1の準備及び設置を容易に行うことができるので、準備及び設置の作業性を向上させることができる。
【0050】
本実施形態において、凸部材4は、内型枠2に沿って延在する平面に沿って切断したときの凸部材4の断面積が外型枠3から離隔するに従って小さくなるテーパ部4cを有する。従って、凸部材4によって形成されるコンクリート部材Cの凹状部分(例えば、凹部C6)にテーパ部(例えば、傾斜面C8及び稜線)を形成することができる。
【0051】
本実施形態において、凸部材4は弾性材料によって構成されている。従って、打設空間Sに突出する凸部材4が弾性材料によって構成されていることにより、打設されたコンクリートの材料収縮による拘束が弾性材料からなる凸部材4の変形によって解放される。よって、凸部材4が拘束体となって生じるコンクリートの材料収縮に伴うひび割れを抑制できるので、コンクリート部材の品質を良好にできる。
【0052】
上記の作用効果についてより具体的に説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、従来の比較例に係る型枠構造101,201を示す断面図である。
図6(a)に示されるように、型枠構造101は、鋼製型枠であり、平坦部102と、平坦部102に設けられた複数の凸部103とを有する。平坦部102及び凸部103は鋼製である。型枠構造101では、複数の凸部103が形成された面にコンクリートKが打設される。
【0053】
鋼製型枠である型枠構造101にコンクリートKが打設されると、コンクリートKの収縮ひずみによって凸部103が拘束体となりコンクリートKの凹部の角部にひび割れXが生じうる。特に、コンクリートKが、UFC等、材料収縮が大きい材料によって構成されている場合にひび割れXが生じうる。
【0054】
図6(b)に示されるように、型枠構造201は、平坦部202と、平坦部202に固定される複数の凸部203とを有し、凸部203はゴム製(シリコーン製)である。凸部203は、両面テープ又はボルト等によって平坦部202に固定される。この型枠構造201の場合、凸部203が高い弾性を有することにより、凸部203が拘束体とならないので、上記のひび割れXは抑制される。
【0055】
しかしながら、型枠構造201では、平坦部202と各凸部203との間にモルタル、又は繊維等の異物が入り込むので、当該異物を取り除く後仕上げが必要となりうる。更に、両面テープで各凸部203が平坦部202に固定される場合、凸部203がコンクリート部材に貼り付いて撤去に手間がかかることがある。そして、コンクリート部材を製造する度に平坦部202への凸部203の固定が必要となる。
【0056】
以上の型枠構造101及び型枠構造201と比較して、型枠構造1は、
図4に示されるように、内型枠2の貫通孔2dに凸部材4が挿入される構成を備え、凸部材4が内型枠2に押し付けられて凸部材4と内型枠2の隙間が密閉されるので、内型枠2と凸部材4との間からのモルタル等の漏れを抑制できる。従って、後仕上げの手間を軽減できる。更に、凸部材4が固定された外型枠3が打設空間Sから離隔した位置に設けられ、例えば、外型枠3に凸部材4が両面テープで固定されても、両面テープはコンクリート部材Cから離れた位置に設けられるので、コンクリート部材Cからの型枠構造1の撤去を容易に行うことができる。更に、コンクリート部材Cの製造が完了しても外型枠3から凸部材4を外す必要がないので、新たなコンクリート部材を製造するときにおける型枠構造1の設置を容易に行うことができる。
【0057】
本実施形態において、
図3及び
図4に示されるように、凸部材4は、コンクリート部材Cの妻部C4の凹部C6を形成し、内型枠2は、シース管C12が設けられる妻部C4の凸部C5を形成する。従って、凹部C6と、シース管C12が設けられる凸部C5とが形成された妻部C4を有するコンクリート部材Cを型枠構造1によって製造することができる。また、前述したように、異物の入り込みを抑制できるので、凸部C5及び凹部C6の仕上げをきれいにすることができる。
【0058】
以上、本開示に係る型枠構造、及びコンクリート部材の製造方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る型枠構造、及びコンクリート部材の製造方法は、前述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、型枠構造の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様、並びに、コンクリート部材の製造方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0059】
例えば、前述の実施形態では、コンクリート部材Cの凹部C6及び底面C7の形状が矩形状である例について説明した。しかしながら、コンクリート部材の凹部及び底面の形状は、矩形状以外の形状であってもよく、例えば、円形状又は長円形状であってもよく特に限定されない。また、前述の実施形態では、四角形状を呈する貫通孔2dを有する内型枠2について説明した。しかしながら、内型枠の貫通孔の形状は、四角形状以外の形状であってもよく、例えば、三角形状等の多角形状、円形状、又は長円形状であってもよい。
【0060】
例えば、前述の実施形態では、筒部5b及びボルト5cを備える間隔保持部材5について説明した。しかしながら、間隔保持部材の構成は、筒部5b及びボルト5cを備える構成以外のものであってもよい。このように、間隔保持部材の構成は適宜変更可能である。また、内型枠、外型枠及び凸部材の構成についても適宜変更可能である。
【0061】
例えば、前述の実施形態では、コンクリート部材Cの妻部C4の凹部C6を形成する凸部材4と、シース管C12が設けられる妻部C4の凸部C5を形成する内型枠2とを備えた型枠構造1について説明した。このように、型枠構造1では、内型枠2によってコンクリート部材Cの凸部C5を形成し、凸部材4によってコンクリート部材Cの凹部C6を形成することが可能である。しかしながら、内型枠2はシース管C12が設けられる妻部C4の凸部C5以外の凸部を形成してもよいし、凸部材4は妻部C4の凹部C6以外の凹部を形成してもよい。すなわち、本開示に係る型枠構造は、コンクリート部材Cの妻部C4に限られず、コンクリート部材Cの種々の凹凸の作製に用いることが可能である。
【0062】
例えば、前述の実施形態では、UFCによって構成されているコンクリート部材Cについて説明した。しかしながら、コンクリート部材は、UFC以外の材料によって構成されていてもよい。また、前述の実施形態では、型枠構造1が道路の路面を構成する床版であるコンクリート部材Cを製造する例について説明した。しかしながら、コンクリート部材は床版以外のコンクリート部材であってもよく、本開示に係る型枠構造及び製造方法は種々のコンクリート部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…型枠構造、2…内型枠、2b…長辺、2d…貫通孔、2f…内面、2g…第1面、2h…第2面、3…外型枠、3b…孔部、3c…第1面、3d…第2面、4…凸部材、4b…基部、4c…テーパ部、4d…テーパ面、4f…頂面、5…間隔保持部材、5b…筒部、5c…ボルト、5d…ネジ部、5f…頭部、A1…長手方向、A2…短手方向、A3…板厚方向、C…コンクリート部材、C1…長辺、C2…短辺、C3…貫通孔、C4…妻部、C5…凸部、C6…凹部、C7…底面、C8…傾斜面、C11…貫通孔、C12…シース管、C13…リングスポンジ、D1…長手方向、D2…短手方向,、D3…板厚方向、K…コンクリート、S…打設空間、X…ひび割れ。