IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ViXion株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-拡大鏡装置 図1
  • 特許-拡大鏡装置 図2
  • 特許-拡大鏡装置 図3
  • 特許-拡大鏡装置 図4
  • 特許-拡大鏡装置 図5
  • 特許-拡大鏡装置 図6
  • 特許-拡大鏡装置 図7
  • 特許-拡大鏡装置 図8
  • 特許-拡大鏡装置 図9
  • 特許-拡大鏡装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】拡大鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 25/00 20060101AFI20250612BHJP
   G02B 23/18 20060101ALI20250612BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20250612BHJP
   G02C 9/00 20060101ALI20250612BHJP
   A61B 90/20 20160101ALI20250612BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
G02B25/00
G02B23/18
G02C7/08
G02C9/00
A61B90/20
G02B3/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024170655
(22)【出願日】2024-09-30
【審査請求日】2024-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521079488
【氏名又は名称】ViXion株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】守屋 翔平
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105974(JP,A)
【文献】特開2009-048195(JP,A)
【文献】特表2013-537648(JP,A)
【文献】特表2014-506335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 25/00 - 25/04
G02B 23/00 - 23/22
G02C 1/00 - 13/00
G02B 1/00 - 3/14
A61B 34/00 - 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が視認する視認対象物の拡大像を出力する拡大光学部と、
視認対象物までの距離を検出する距離検出部と、
視認対象物までの距離を検出する距離検出部の検出結果に基づいて、前記拡大光学部から出力される拡大像の焦点を調整する焦点調整部と、を備えた拡大鏡装置であって、
前記焦点調整部は、
拡大光学部を通る光路上に配置され、焦点距離を変更可能な可変焦点レンズと、
前記距離検出部の検出結果に基づいて、前記可変焦点レンズの焦点距離を前記使用者の眼に適合する適合焦点距離に制御する制御部と、を有し、
前記拡大光学部は、対物レンズと接眼レンズとを含む拡大光学系であり、
前記可変焦点レンズは、前記拡大光学部とは別個に、前記拡大光学部よりも視認対象物から使用者の眼までの光路の下流側に配置されていることを特徴とする拡大鏡装置。
【請求項2】
請求項1に記載の拡大鏡装置において、
前記焦点調整部は、視認対象物までの距離に応じた前記可変焦点レンズの焦点距離を特定するための焦点距離特定情報を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記距離検出部の検出結果及び前記記憶部内の焦点距離特定情報に基づいて、前記可変焦点レンズの焦点距離を前記適合焦点距離に制御することを特徴とする拡大鏡装置
【請求項3】
求項1又は2に記載の拡大鏡装置において、
前記可変焦点レンズは、前記制御部によって制御される電気信号により屈折面の形状が変化して焦点距離が変化する形状可変レンズであることを特徴とする拡大鏡装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の拡大鏡装置において、
前記拡大光学部及び前記可変焦点レンズを備える左右一対の自動合焦拡大鏡部と、
前記左右一対の自動合焦拡大鏡部を保持する保持部と、を有することを特徴とする拡大鏡装置。
【請求項5】
請求項4に記載の拡大鏡装置において、
前記左右一対の自動合焦拡大鏡部間の距離を使用者の瞳孔間距離に合うように調節する距離調節部を有することを特徴とする拡大鏡装置。
【請求項6】
請求項4に記載の拡大鏡装置において、
前記保持部は、眼鏡フレームを含むことを特徴とする拡大鏡装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の拡大鏡装置において、
前記使用者の装用具に装着するための装着部を有することを特徴とする拡大鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が視認対象物の拡大像を視認するために用いる拡大鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手術を行う際に術者が視認対象物を拡大して視認するために用いる手術用ルーペ(拡大鏡装置)が開示されている。この手術用ルーペは、眼鏡又は眼鏡フレームと一体化され、術者(使用者)の顔に装着されて使用される。この手術用ルーペは、視認対象物までの距離(視認距離)を測距センサ部(距離検出部)で測定し、測定した距離に基づいて自動的に焦点調整(視度調整)を行う焦点調整部が備わっている。この焦点調整部では、合焦用レンズの位置を移動させる焦点調整用駆動部(移動機構)を制御部により制御することで、合焦用レンズの位置を移動させ、焦点調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-105974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の拡大鏡装置は、近視や遠視などの様々な屈折異常の眼をもつ各ユーザーが視認対象物の拡大像にピントを合わせるためには、合焦用レンズの位置を移動させる移動機構が必要であったため、小型化や軽量化が困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、使用者が視認する視認対象物の拡大像を出力する拡大光学部と、視認対象物までの距離を検出する距離検出部と、視認対象物までの距離を検出する距離検出部の検出結果に基づいて、前記拡大光学部から出力される拡大像の焦点を調整する焦点調整部と、を備えた拡大鏡装置であって、前記焦点調整部は、拡大光学部を通る光路上に配置され、焦点距離を変更可能な可変焦点レンズと、前記距離検出部の検出結果に基づいて、前記可変焦点レンズの焦点距離を前記使用者の眼に適合する適合焦点距離に制御する制御部と、を有する。
本拡大鏡装置では、焦点調整部により、視認対象物までの距離を検出する距離検出部の検出結果に基づいて、拡大光学部から出力される拡大像の焦点が調整される。本拡大鏡装置における焦点調整部は、可変焦点レンズを有し、距離検出部による視認対象物までの距離の検出結果に基づいて、可変焦点レンズの焦点距離が使用者の眼に適合する適合焦点距離に制御される。これにより、距離の異なるいずれの視認対象物の拡大像に対しても、自動的に使用者のピントを合わせることが可能である。しかも、可変焦点レンズは、レンズの位置を移動させる移動機構を必要とせずに焦点距離を変更可能であり、小型化、軽量化を図ることが容易である。よって、小型で軽量な可変焦点レンズを用いた小型で軽量な拡大鏡装置を実現することが容易となる。拡大鏡装置の小型化、軽量化は、特に拡大鏡装置が使用者の顔などに装着されて使用される場合には、使用者の利便性向上に直結する大きなメリットとなる。
【0006】
前記拡大鏡装置において、前記焦点調整部は、視認対象物までの距離に応じた前記可変焦点レンズの焦点距離を特定するための焦点距離特定情報を記憶する記憶部を有してもよく、前記制御部は、前記距離検出部の検出結果及び前記記憶部内の焦点距離特定情報に基づいて、前記可変焦点レンズの焦点距離を前記適合焦点距離に制御する制御してもよい。
本拡大鏡装置においては、視認対象物までの距離に応じて使用者に適合する可変焦点レンズの焦点距離(適合焦点距離)を特定するための焦点距離特定情報を予め記憶部に記憶しておく。そして、使用者が本拡大鏡装置を通じて視認する視認対象物までの距離が距離検出部により検出され、制御部により、その検出結果と記憶部内の焦点距離特定情報とに基づいて可変焦点レンズの焦点距離が適合焦点距離となるように制御される。これにより、使用者ごとに異なる適合焦点距離を特定するための焦点距離特定情報を予め記憶部に記憶しておくことで、距離の異なるいずれの視認対象物の拡大像に対しても、それぞれの使用者のピントを自動的に合わせることが可能となる。
【0007】
前記拡大鏡装置において、前記拡大光学部は、対物レンズと接眼レンズとを含む拡大光学系であってもよい。
これによれば、拡大光学部の構成を簡易なものとすることができ、小型で軽量な拡大光学部を得ることができる。よって、拡大鏡装置の構成を簡素化し、拡大鏡装置の小型化及び軽量化に更に有利となる。
【0008】
前記拡大鏡装置において、前記可変焦点レンズは、前記制御部によって制御される電気信号により屈折面の形状が変化して焦点距離が変化する形状可変レンズであってもよい。
このような形状可変レンズは、小型で軽量であるため、小型で軽量な拡大鏡装置を実現するのに更に有利となる。
【0009】
前記拡大鏡装置において、前記拡大光学部及び前記可変焦点レンズを備える左右一対の自動合焦拡大鏡部と、前記左右一対の自動合焦拡大鏡部を保持する保持部と、を有してもよい。
これによれば、双眼の拡大鏡装置を提供することができる。
【0010】
前記拡大鏡装置において、前記左右一対の自動合焦拡大鏡部間の距離を使用者の瞳孔間距離に合うように調節する距離調節部を有してもよい。
これによれば、使用者ごとの瞳孔間距離に合わせて、左右一対の自動合焦拡大鏡部間の距離(使用者の眼に拡大像を出力する出力部間の距離)を調整できるので、双眼の拡大鏡装置を個別に設計、製造する必要がなく、左右一対の自動合焦拡大鏡部の距離を使用者の瞳孔間距離に合わせて調整可能な汎用の双眼拡大鏡装置を提供することができる。
【0011】
前記拡大鏡装置において、前記保持部は、眼鏡フレームを含んでもよい。
これによれば、眼鏡と同じ装用感で、本拡大鏡装置を使用者が装着して使用することができる。なお、眼鏡フレームは、例えば、メガネのつる、鼻あてなどで構成される。
【0012】
前記拡大鏡装置において、前記使用者の装用具に装着するための装着部を有してもよい。
これによれば、本拡大鏡装置とは別体で構成される使用者の装用具(眼鏡、ゴーグル、ヘッドバンド、ヘルメットなど)に本拡大鏡装置を装着することで、本拡大鏡装置を使用者が装着して使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、距離の異なるいずれの視認対象物の拡大像に対しても使用者のピントを自動で合わせることが可能な拡大鏡装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る双眼ルーペの外観を示す斜視図。
図2】同双眼ルーペの自動合焦拡大鏡部を模式的に示す断面図。
図3】同自動合焦拡大鏡部における可変焦点レンズの概略構成を示す断面図。
図4】同可変焦点レンズの概略構成を示す平面図。
図5】同双眼ルーペの制御装置の構成を示すブロック図。
図6】同制御装置の記憶部に記憶される焦点距離特定情報であるテーブルデータの一例を示す説明図。
図7】実施形態における焦点距離制御の設定モードの一例を示すフローチャート。
図8】実施形態における焦点距離制御の使用モードの一例を示すフローチャート。
図9】同テーブルデータから算出される近似式を説明するためのグラフ。
図10】実施形態に係る双眼ルーペの他の構成を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、拡大鏡装置としての双眼拡大鏡に適用した一実施形態について説明する。
なお、本実施形態の拡大鏡装置は、使用者(以下「ユーザー」という。)の顔に装着されて使用される眼鏡型の双眼拡大鏡を例に挙げて説明するが、これに限られない。
【0016】
例えば、眼鏡フレームのテンプル部をユーザーの耳に掛けてユーザーの顔に装着される眼鏡型ではなく、ユーザーの後頭部に回したバンドの張力を用いてユーザーの顔に装着されるゴーグル型、ユーザーの頭部にかぶって装着されるヘルメット型など、ユーザーに装用される装用具の形態をもつ拡大鏡装置が好適である。また、装用具に限らず、作業場などに置かれて使用される据え置き型の拡大鏡装置であってもよいし、ユーザーの手で把持されて使用されるハンディ型の拡大鏡装置であってもよい。拡大鏡装置の型は、その拡大鏡装置の用途などに応じて適宜選択される。
【0017】
図1は、本実施形態に係る眼鏡型の双眼拡大鏡である双眼ルーペ1の外観を示す斜視図である。
本実施形態における双眼ルーペ1は、主に、眼鏡フレーム2と、左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5と、ルーペ本体部6と、を備えている。
【0018】
眼鏡フレーム2は、ブリッジ部2aと、左右一対のテンプル部2b,2bと、左右一対のヨロイ部2c,2cと、左右一対の透明プレート部2d,2dと、を備えている。
【0019】
ブリッジ部2aは、装用時に装用者であるユーザーの視界から上方へ外れる位置に配置され、左右のテンプル部2b,2b間にわたって左右方向に延在する。ブリッジ部2aの左右方向両端部にはヨロイ部2c,2cが設けられ、左右のテンプル部2b,2bはヨロイ部2c,2cを介してブリッジ部2aの両端部に連結されている。
【0020】
テンプル部2b,2bは、ユーザーが双眼ルーペ1を装着する際にユーザーの耳に掛けられる部材である。本実施形態における左右のテンプル部2b,2bは、ヨロイ部2c,2cが備えるヒンジ部により双眼ルーペ1の左右方向中央側に向かってそれぞれ折りたたむことができるように構成されている。
【0021】
左右一対の透明プレート部2d,2dは、ブリッジ部2aに保持され、ユーザーが双眼ルーペ1を装着した際にユーザーの左右の眼の前に配置される部材である。透明プレート部2d,2dは、主に、ユーザーの眼を保護するためのものである。例えば、透明プレート部2d,2dは、ユーザーの左右の眼の前に配置される左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5が何らかの原因でユーザーの眼に接触することがないように保護する機能を果たす。なお、透明プレート部2d,2dは、度数入りレンズまたは乱視補正レンズであってもよい。
【0022】
図2は、本実施形態における双眼ルーペ1の自動合焦拡大鏡部5を模式的に示す断面図である。
本実施形態の双眼ルーペ1には、ユーザーの各眼に対応して左右一対となる2つの自動合焦拡大鏡部5,5が設けられている。2つの自動合焦拡大鏡部5,5は、実質的に同じ構成であり、それぞれの自動合焦拡大鏡部5,5には可変焦点レンズ3と拡大光学部4とが備わっている。
【0023】
本実施形態の拡大光学部4は、対物レンズ4aと接眼レンズ4bとを含む拡大光学系によって構成されている。対物レンズ4a及び接眼レンズ4bは、鏡筒4cの内壁に保持され、固定配置される。拡大光学部4には、例えば、対物レンズ4aに凸レンズを使用し、接眼レンズ4bに凹レンズを使用したシンプルなガリレオ式の拡大光学系を用いることができる。この場合、構成が簡易であるため、より簡易で軽量な拡大光学部4を実現しやすい。
【0024】
また、拡大光学部4としては、例えば、対物レンズ4aと接眼レンズ4bとの間の光路上にプリズムが配置されたプリズム方式(ポロプリズム式、ダハプリズム式など)の拡大光学系を用いることもできる。なお、拡大光学部4は、使用者が視認する視認対象物の拡大像を出力可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態の自動合焦拡大鏡部5は、図2に示すように、拡大光学部4における対物レンズ4aと接眼レンズ4bとを保持している鏡筒4cの接眼レンズ側の部分に、可変焦点レンズ3を保持しているレンズ保持部5aが取り付けられている。これにより、可変焦点レンズ3は、拡大光学部4の接眼レンズ4bの光路下流側近傍において、お互いの光軸LOが一致するように配置される。本実施形態において、自動合焦拡大鏡部5に備わっているレンズ(拡大光学部4の対物レンズ4a及び接眼レンズ4b、並びに、可変焦点レンズ3)は、いずれも固定配置されており、これらのレンズの位置を移動させる移動機構が備わっていない。そのため、自動合焦拡大鏡部5は、小型で軽量なものとすることができる。
【0026】
ただし、拡大光学部4については、レンズの位置を移動させる移動機構を備える構成であってもよい。すなわち、使用者のピントを合わせる構成(すなわち、本実施形態の可変焦点レンズ3)がレンズの位置を移動させる移動機構を備えていないものであればよい。
【0027】
本実施形態の自動合焦拡大鏡部5は、上述したように、拡大光学部4を通る光路(視認対象物からユーザーの眼までの光路)において、拡大光学部4が上流側に配置され、可変焦点レンズ3が下流側に配置される。したがって、ユーザーが双眼ルーペ1を通じて視認する視認対象物の像を拡大光学部4によって拡大像とし、拡大光学部4から出力される拡大像を、可変焦点レンズ3を通じてユーザーの眼へ出力する。
【0028】
なお、拡大光学部4に対する可変焦点レンズ3の配置は、本実施形態の配置に限らず、例えば、可変焦点レンズ3が上流側で、拡大光学部4が下流側に配置する構成とすることも可能である。また、拡大光学部4の内部、例えば対物レンズ4aと接眼レンズ4bとの間の光路上に可変焦点レンズ3を配置する構成とすることも可能である。
【0029】
本実施形態における可変焦点レンズ3は、レンズの位置を移動させる移動機構を必要とすることなく、レンズの焦点距離を電気的に制御可能なものであれば、その構成に限定されない。ただし、可変焦点レンズ3は、屈折面の形状が変化することにより焦点距離が変化する形状可変レンズであるのが好ましい。形状可変レンズの中でも、2種類の液体の界面を屈折面とし、液体の濡れ性を電気的に制御して当該界面の形状を変更することで焦点距離を変更可能な液体レンズ(エレクトロウェッティングデバイスなどとも言う。)が好ましい。液体レンズであれば、焦点距離について高速で自由度の高い制御が可能である。
【0030】
図3は、本実施形態における可変焦点レンズ3の概略構成を示す断面図である。
図4は、本実施形態における可変焦点レンズ3の概略構成を示す平面図である。
本実施形態の可変焦点レンズ3は、図3に示すように、界面Iにおいて非混合状態で接触している絶縁液311と導電液312とが、環状の第一電極301と、第一電極301の上端と下端を閉じる2つの透明な窓部材303,304とによって封入された構成を有する。絶縁液311は例えば油性液体であり、導電液312は例えば比較的導電率の低い水性液体である。第一電極301には電圧V0が印加されるが、本実施形態では環状の第一電極301を接地しているため、V0=0Vである。また、第一電極301は、封入されている絶縁液311及び導電液312に対し、絶縁層301aによって絶縁されている。
【0031】
また、本実施形態の可変焦点レンズ3は、第一電極301の軸Oに対する対称位置に複数対の第二電極302A,302B,・・・が配置されている。本実施形態では、図4に示すように、4対の第二電極302A~302Hが軸Oを中心とした円周上に配置されており、合計8つの第二電極302A~302Hを備えている。
【0032】
第二電極302A~302Hは、図3に示すように、導電液312に接触する位置に配置されている。各第二電極302A~302Hに電圧VA~VHを印加すると、各第二電極302A~302Hと第一電極301との間に電位差が生じ、エレクトロウェッティング効果によって絶縁液311の端部Ia(界面Iの端部Ia)を第一電極301上の絶縁層部分301bに沿って変位させることができる。このように絶縁液311の端部Iaが変位することにより、絶縁液311の形状が変化して界面Iの曲率が変更される。したがって、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、界面Iを屈折面とする可変焦点レンズ3の焦点距離を変化させることができる。
【0033】
特に、本実施形態の可変焦点レンズ3は、第二電極302A~302Hに印加する電圧VA~VHを制御することにより、屈折面である界面Iを、拡散レンズ(凹レンズ)、平面レンズ、集光レンズ(凸レンズ)に変形させることができる。
【0034】
本実施形態の可変焦点レンズ3は、ジオプター換算(焦点距離の逆数)で-15D以上+15D以下の範囲で、焦点距離を変化させることができる。このように焦点距離の変化範囲が広い可変焦点レンズ3を用いることで、例えば、弱視のような低視力のユーザーに対応することも可能である。
【0035】
本実施形態において、第一電極301の軸Oの対称位置に配置されるすべての第二電極302A~302Hに同じ電圧を印加することで、可変焦点レンズ3の光軸を第一電極301の軸Oに一致させたまま、焦点距離を変化させることができる。一方で、各第二電極302A~302Hに対して異なる電圧を印加すれば、焦点距離を変化させるだけでなく、可変焦点レンズ3の光軸をずらしたり傾けたりすることも可能である。すなわち、本実施形態の可変焦点レンズ3は、印加電圧VA~VHを制御することによって、光軸の位置と方向のいずれか一方及び両方を変化させることができる。
【0036】
本実施形態のルーペ本体部6は、図1に示すように、眼鏡フレーム2のブリッジ部2aの左右方向中央部に支持された保持アーム2eに取り付けられている。ルーペ本体部6の本体ケース6aには、左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5間の距離(使用者の眼に拡大像を出力する出力部間の距離)を調整する距離調節部6bが設けられている。具体的には、本実施形態における距離調節部6bは、左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5にそれぞれ備わっている可変焦点レンズ3,3間のレンズ間距離を調整する。なお、レンズ間距離は、例えば、可変焦点レンズ3,3上の基準位置(例えば可変焦点レンズ3,3の中心位置)間の距離によって規定することができる。ここで、可変焦点レンズ3,3の基準位置は、例えば可変焦点レンズ3,3の光学中心位置と等しく、レンズ間距離は各可変焦点レンズ3,3の光学中心がなす距離と等しくなる。
【0037】
このような距離調節部6bを設けることで、ユーザーごとの瞳孔間距離PDに合わせて双眼ルーペ1を個別に設計、製造する必要がなく、左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5の距離をユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて調整可能な汎用の双眼ルーペ1を提供することができる。特に、本実施形態のように可変焦点レンズ3,3が小型である場合、ユーザーの瞳孔間距離PDに合わせて可変焦点レンズ3,3のレンズ間距離をユーザーごとに調整できるようにすることは有益である。
【0038】
本実施形態における距離調節部6bは、左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5に対してそれぞれ設けられ、ルーペ本体部6の本体ケース6aの下面に形成されている溝によって構成される。各溝は、本体ケース6aの下面に沿って左右方向に延びている。これらの溝には、それぞれ、各自動合焦拡大鏡部5,5のレンズ保持部5aの上部に備わっている取付部5b(図2参照)が嵌め込まれて摺動可能に取り付けられる。
【0039】
本実施形態では、例えばユーザーが各自動合焦拡大鏡部5,5を把持して左右に動かすことで、各自動合焦拡大鏡部5,5をルーペ本体部6の本体ケース6aの溝に沿って左右方向にそれぞれ移動させることができる。また、例えばユーザーが各自動合焦拡大鏡部5,5から手を離せば、各自動合焦拡大鏡部5,5の取付部5bと本体ケース6aの溝との間の静止摩擦力によって、各自動合焦拡大鏡部5,5の位置が固定される。本実施形態では、このようにして自動合焦拡大鏡部5,5間の距離を調整することができる。
【0040】
また、本実施形態において、各自動合焦拡大鏡部5,5の取付部5bは、本体ケース6aの下面に垂直に延びる軸ROの回りで回転可能に、本体ケース6aの溝に取り付けられる。そのため、例えばユーザーが自動合焦拡大鏡部5,5を把持して当該軸ROの回りを回転させることで、各自動合焦拡大鏡部5,5の光軸LOの向きを変えることができる。これにより、左右一対の自動合焦拡大鏡部5,5における輻輳角を調整することが可能となる。なお、例えばユーザーが自動合焦拡大鏡部5,5から手を離せば、自動合焦拡大鏡部5,5の取付部5bと本体ケース6aの溝との間の静止摩擦力によって、各自動合焦拡大鏡部5,5の回転位置が固定される。
【0041】
また、ルーペ本体部6には、制御装置10と、バッテリー20と、距離検出部21と、が備わっている。
【0042】
制御装置10は、図1に示すように、バッテリー20とともに、ルーペ本体部6の本体ケース6aの内部に設けられている。制御装置10は、バッテリー20から可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧(電気信号)を制御することにより、可変焦点レンズ3の焦点距離を制御することができる。
【0043】
図5は、本実施形態における制御装置10の構成を示すブロック図である。
本実施形態における制御装置10は、主制御部11と、電圧変更部12と、操作部13と、記憶部14と、を備えている。制御装置10は、2つの可変焦点レンズ3,3の第二電極302A~302Hと、電圧を供給する電源としてのバッテリー20と、ユーザーが自動合焦拡大鏡部5,5を通じて視認する視認対象物までの距離を検出する距離検出部21と、が接続されている。
【0044】
主制御部11は、例えば、CPU、RAM、ROMなどが実装された制御基板(コンピュータ)によって構成され、ROMに記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、双眼ルーペ1の全体的な制御を行う。特に、本実施形態では、主制御部11は、距離検出部21によって検出される視認対象物までの視認距離(検出結果)に基づいて、可変焦点レンズ3,3の焦点距離が変化するように、可変焦点レンズ3,3を制御する制御部(制御手段)として機能する。
【0045】
電圧変更部12は、主制御部11の制御の下、バッテリー20から可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を変更する。電圧変更部12は、各第二電極302A~302Hへ印加する電圧を、第二電極302A~302Hごとに個別に変更することができる。ただし、電圧変更部12は、第二電極302A~302Hの一部だけ(例えば1対の第二電極だけ)を部分的に変更可能なものであってもよい。
【0046】
操作部13は、ユーザーによって操作されることで、ユーザーの操作内容を示す操作信号を主制御部11に出力する。操作部13が受け付けるユーザー操作としては、例えば、電源のオンオフ操作、主制御部11の実行指示、主制御部11の制御内容の変更などが挙げられる。特に、本実施形態における操作部13は、2つの可変焦点レンズ3,3の焦点距離を変更するためのユーザー操作を受け付ける。
【0047】
操作部13は、受け付けるユーザー操作の内容に適した種類の操作器(機械式や静電タッチ式などのボタン、ダイヤルなどの回転型操作部など)によって構成される。本実施形態の操作部13は、図1に示すように、回転操作(ダイヤル操作)と押し操作(ボタン操作)が可能な2つのダイヤル部13a,13aから構成される。
【0048】
ダイヤル部13a,13aは、図1に示すように、ルーペ本体部6の左右両端部にそれぞれ設けられ、略鉛直方向に延びる回転軸の回りで回転可能に構成されている。左側に設けられるダイヤル部13aが正転方向に回されると、左眼用の自動合焦拡大鏡部5における可変焦点レンズ3の焦点距離を短くする指示操作を受け付け、逆転方向に回されると、左眼用の自動合焦拡大鏡部5における可変焦点レンズ3の焦点距離を長くする指示操作を受け付ける。また、右側に設けられるダイヤル部13aは、正転方向に回されると、右眼用の自動合焦拡大鏡部5における可変焦点レンズ3の焦点距離を短くする指示操作を受け付け、逆転方向に回されると、右眼用の自動合焦拡大鏡部5における可変焦点レンズ3の焦点距離を長くする指示操作を受け付ける。
【0049】
また、ダイヤル部13a,13aは、その回転軸を左右方向内側に向けて押圧するように押し操作されることでも、ユーザーの指示操作を受け付ける。本実施形態において、ダイヤル部13a,13aに対する押し操作は、例えば、主制御部11の動作モードを切り替えるための切り替え操作や、ユーザー決定の指示操作などに用いられる。
【0050】
ダイヤル部13a,13aに対する押し操作による切り替え操作は、設定モードと、使用モードとを切り替える操作である。設定モードとは、使用モード時に使用される焦点距離特定情報を設定するための動作モードであり、距離検出部21によって検出される視認距離に応じたユーザーの適合焦点距離を設定する。使用モードとは、距離検出部21によって検出される視認距離に応じて可変焦点レンズ3,3の焦点距離を自動的に適合焦点距離となるように制御する動作モードである。
【0051】
ダイヤル部13a,13aに対する押し操作によるユーザー決定の指示操作は、例えば、ダイヤル部13a,13aへの回転操作により各可変焦点レンズ3,3の焦点距離を変更しながらユーザーに適合する焦点距離を探して(測定して)、適合する焦点距離を決めたときに決定の指示操作を行う。
【0052】
記憶部14は、制御装置10で使用されるプログラムやデータを記憶する。特に、本実施形態では、使用モードにおける可変焦点レンズ3,3の焦点距離制御に使用されるデータとして、視認対象物までの距離に応じた可変焦点レンズ3,3の焦点距離を特定するための焦点距離特定情報を記憶する。
【0053】
焦点距離特定情報は、例えば、視認対象物までの視認距離(距離検出部21の検出結果)と、各視認距離に対応する2つの可変焦点レンズ3,3の各焦点距離(各視認距離に対応するユーザーに適合した焦点距離)との関係を示す情報である。このような情報は、例えば、図6に示すように、視認距離と2つの可変焦点レンズ3,3の焦点距離との対応関係を記述したテーブルデータとして、記憶部14に記憶しておくことができる。
【0054】
特に、本実施形態において、焦点距離特定情報は、視認対象物までの視認距離に応じたユーザーに適合する2つの可変焦点レンズ3,3の焦点距離(適合焦点距離)をそれぞれ測定した測定情報を含む。これによれば、使用モードにおいて、2つの可変焦点レンズ3,3の焦点距離を、ユーザーごとに適切な焦点距離に調整することができる。
【0055】
バッテリー20は、制御装置10の電源として機能し、可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hに供給する電圧を出力する。バッテリー20は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。また、太陽光パネルなどの発電機能を備えたものであってもよい。
【0056】
距離検出部21は、本双眼ルーペ1の前方のエリア(視認エリア)に存在する視認対象物までの距離を検出できるものであれば、その構成は限定されない。本実施形態の距離検出部21は、図1に示すように、ルーペ本体部6の本体ケース6aにおける左右方向中央部に配置されているが、本体ケース6aの左右方向端部や、本体ケース6aから離れた場所(例えば、眼鏡フレーム2上の箇所)などに配置してもよい。ただし、ユーザーが双眼ルーペ1を装着したときに頭髪(前髪)によって距離検出部21が覆われることが少ない位置であるのが好ましい。
【0057】
距離検出部21における測距方式は、特に限定されることはなく、レーザー方式、音波方式など、既存の測距方式を広く採用することができる。なお、距離検出部21によって検出したい視認距離の範囲(近距離から遠距離までの範囲)を1つの距離検出部でカバーすることが難しい場合には、有効検出距離の範囲(高い精度の検出が可能な距離範囲)が互いに異なる複数の距離検出部を配置するようにしてもよい。
【0058】
次に、本実施形態における各自動合焦拡大鏡部5,5の可変焦点レンズ3,3の焦点距離制御の一例について説明する。
図7及び図8は、本実施形態における焦点距離制御の流れを示すフローチャートである。ただし、図7は、設定モード時の制御内容を示すものであり、図8は、使用モード時の制御内容を示すものである。
本実施形態における焦点距離制御では、使用モードでは、所定の制御プログラムを実行する主制御部11が電圧変更部12を制御することにより、距離検出部21によって検出される視認対象物までの視認距離(検出結果)及び記憶部14内の焦点距離特定情報に基づいて可変焦点レンズ3,3の焦点距離を制御する。
【0059】
本実施形態では、操作部13がユーザーによる電源オンの操作を受け付けると(S1)、まず、主制御部11の動作モードとして、設定モード又は使用モードに切り替える切り替え操作を受け付ける(S2)。具体的には、電源オンの操作後、所定時間内にダイヤル部13a,13aに対する押し操作が行われることで設定モードに移行し(S2のYes)、所定時間内に押し操作が行われないときには使用モードに移行する(S2のNo)。なお、ここでは、電源オンの操作がなされることで焦点距離制御が開始される例であるが、これに限らず、例えば、双眼ルーペ1がユーザーに装着されたことを検知する装着検知部を設け、ユーザーが双眼ルーペ1を装着したことを検知することで焦点距離制御が開始されるように構成してもよい。
【0060】
設定モードに移行すると(S2のYes)、主制御部11は、設定モードで動作するためのプログラムを実行する。設定モードでは、ユーザーは、まず、基準となる視認距離にある視認対象物を視認しながら、左のダイヤル部13aに対して回転操作(ダイヤル操作)を行う(S3のYes)。これにより、その操作信号が操作部13から主制御部11へ送られ、主制御部11は、その操作信号に対応する電圧が左眼用の自動合焦拡大鏡部5の可変焦点レンズ3(調整対象レンズ)の第二電極302A~302Hに印加されるように、電圧変更部12を制御する。これにより、左眼用の可変焦点レンズ3における絶縁液311と導電液312との界面Iの形状変化により界面Iの曲率が変更され、左眼用の可変焦点レンズ3の焦点距離が、左のダイヤル部13aに対するユーザー操作に応じて変更される(S4)。そして、ユーザーは、左のダイヤル部13aに対する回転操作を行って基準距離の視認対象物にピントが合うように左眼用の可変焦点レンズ3の焦点距離を調整する。
【0061】
左眼用の自動合焦拡大鏡部5における可変焦点レンズ3の焦点距離を調整したら、次に、ユーザーは、同じ基準距離の視認対象物を視認しながら、右のダイヤル部13aに対して回転操作(ダイヤル操作)を行う(S5のYes)。これにより、その操作信号が操作部13から主制御部11へ送られ、主制御部11は、その操作信号に対応する電圧が右眼用の自動合焦拡大鏡部5の可変焦点レンズ3の第二電極302A~302Hに印加されるように、電圧変更部12を制御する。これにより、右眼用の可変焦点レンズ3における絶縁液311と導電液312との界面Iの形状変化により界面Iの曲率が変更され、右眼用の可変焦点レンズ3の焦点距離が、右のダイヤル部13aに対するユーザー操作に応じて変更される(S6)。そして、ユーザーは、右のダイヤル部13aに対して回転操作を行って基準距離の視認対象物にピントが合うように右眼用の可変焦点レンズ3の焦点距離を調整する。
【0062】
このようにして、左右のダイヤル部13a,13aに対する回転操作により基準距離の視認対象物にピントが合うように左右の可変焦点レンズ3,3の焦点距離を調整したら、ユーザーは、ダイヤル部13a,13aに対する押し操作(ボタン操作)を行う(S7のYes)。この操作信号を受信した主制御部11は、上述した基準距離の視認対象物について距離検出部21によって検出した視認距離の検出結果を取得する(S8)。そして、主制御部11は、ダイヤル部13a,13aに対する押し操作が行われた時点における左右の可変焦点レンズ3,3の焦点距離と、取得した視認距離の検出結果とを、焦点距離特定情報として、記憶部14に記憶する(S9)。
【0063】
例えば、距離検出部21によって検出した視認距離の検出結果がd10であった場合、主制御部11は、図6に示したテーブルデータの視認距離データとしてd10を追加する。そして、主制御部11は、視認距離d10に対応する左右の可変焦点レンズ3,3の各焦点距離として、ユーザーが調整した焦点距離(適合焦点距離)であるfL10、fR10をそれぞれ記憶する。
【0064】
使用モードを実行するにあたっては、より多くの視認距離についてユーザーの適合焦点距離を設定することが望まれる。ユーザーは、視認対象物までの視認距離を変更して上述した設定モードを行うという作業を繰り返すことで、複数の視認距離(図6では、d1、d6、d10の3点)について、ユーザーの適合焦点距離(図6では、fL1、fL6、fL10、fR1、fR6、fR10)を設定することができる。
【0065】
次に、使用モードについて説明する。
電源オンの操作後の所定時間内にダイヤル部13a,13aに対する押し操作が行われない場合や、設定モードが終了した場合には、図8に示す使用モードに移行する(S10)。使用モードに移行すると、主制御部11は、まず、記憶部14に記憶されている焦点距離特定情報(例えば図6に示したテーブルデータ)から、図9に示すグラフで表されるような近似式を算出する(S11)。
【0066】
この近似式は、距離検出部21によって検出される視認距離と、その視認距離におけるユーザーの適合焦点距離との関係を示す式であり、図9に示すように、記憶部14に記憶されている焦点距離特定情報(テーブルデータ)をプロットしたときの近似線を表す式である。近似式の算出には、例えば最小二乗法やハフ変換などを用いることができる。なお、本実施形態では、近似式の算出に用いるテーブルデータを焦点距離特定情報として記憶部14に記憶する例であるが、この近似式を焦点距離特定情報として記憶部14に記憶してもよい。
【0067】
このようにして近似式を算出したら、主制御部11は、距離検出部21から視認対象物までの視認距離の検出結果を取得する(S12)。その後、主制御部11は、取得した視認距離(検出結果)に対応する適合焦点距離を、処理ステップS11で算出した近似式により導出する(S13)。そして、主制御部11は、左右の可変焦点レンズ3,3の焦点距離が、導出した適合焦点距離となるように、電圧変更部12を制御して、左右の可変焦点レンズ3,3の第二電極302A~302Hに印加する電圧を変更する。これにより、左右の各自動合焦拡大鏡部5,5における可変焦点レンズ3,3の焦点距離がユーザーに適合する焦点距離に変更され(S14)、視認対象物のピントが自動で合うようになる。
【0068】
本実施形態において、操作部13がユーザーによる電源オフの操作を受け付けると(S15のYes)、主制御部11は、焦点距離制御を終了する。このとき、可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオフにしてもよいし、オンにしてもよい。可変焦点レンズ3の各第二電極302A~302Hへの電圧供給はオフにすれば、バッテリー20の電力消費を節約することができる。
【0069】
本実施形態によれば、ユーザーが本双眼ルーペ1を使って比較的近くの視認対象物を視認するときには、この近くの視認対象物にピントが合うように左右の各自動合焦拡大鏡部5,5の可変焦点レンズ3,3の焦点距離が自動で変更される。また、例えば、ユーザーが本双眼ルーペ1を使って比較的遠くの視認対象物を視認するときには、この遠くの視認対象物にピントが合うように左右の可変焦点レンズ3,3の焦点距離が自動で変更される。
【0070】
具体例として、本双眼ルーペ1を、医師などの術者が手術を行う際に用いる手術用ルーペとして使用する態様を例に挙げる。この態様において、本双眼ルーペ1を装着している術者は、本双眼ルーペ1を介して、術者の手元や被術者の患部などの視認対象物の拡大像を観察(視認)しながら手術を行う。また、術者は、その手術中に、被術者の情報を表示するモニター、手術の補助者、手術道具など、互いに異なる距離にある視認対象物を視認することも必要になる。本実施形態の双眼ルーペ1によれば、術者が、互いに異なる距離にある視認対象物に視線を変えても、それぞれの視認対象物にその術者のピントを自動で合わせることができる。よって、術者は、互いに異なる距離にある視認対象物のいずれの拡大像も、ピントの合った状態で視認することができる。
【0071】
本双眼ルーペ1は、手術用ルーペに限らず、あらゆる用途に使用することができる。例えば、微小な部材や機器を取り扱う作業を行う技術者や職人、細かい作業を行う検査技師、ネイリストなど、拡大鏡を使用する作業を行う者に有益に使用される。
【0072】
特に、本実施形態の双眼ルーペ1のように、ユーザーに装着されて使用される装用具の型であるのが好適である。従来の双眼ルーペは、焦点距離が変更できないか、又は、ユーザーのピントが合う焦点距離の範囲が狭いため、その焦点距離に位置する目的の視認対象物とは距離の異なる別の視認対象物を視認するときにはピントが合わない。そのため、ユーザーに装着される装用具の型であると、当該別の視認対象物を視認しようとする際に、その都度、双眼ルーペを取り外し、再び目的の視認対象物を視認する際に双眼ルーペを装着し直すという煩雑な作業を強いられる。しかしながら、本実施形態の双眼ルーペ1は、互いに異なる距離にある視認対象物のいずれの拡大像にもピントが自動で合うので、本双眼ルーペ1のようにユーザーに装着される装用具の型であっても、双眼ルーペの取り外しや装着し直しといった煩雑な作業が強いられることがない。
【0073】
なお、本実施形態の双眼ルーペ1は、眼鏡フレーム2と一体型である装用具の型であるが、これに限らず、ユーザーの装用具に装着されるアタッチメント型であってもよい。例えば、図10に示すように、ユーザーの装用具である眼鏡200に装着するための装着部8を有するアタッチメント型の双眼ルーペ1'であってもよい。この双眼ルーペ1'は、ユーザーの眼鏡200のブリッジ部の左右方向中央部に装着部8が装着されることで、眼鏡200に取り付けられる。これによれば、それぞれのユーザーが所有する自分にあった眼鏡200を利用して、双眼ルーペ1'をユーザーに装着して使用することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、本発明に係る拡大鏡装置を双眼拡大鏡の例で説明したが、単眼の拡大鏡にも適用することもできる。特に、本発明に係る拡大鏡装置を、非常に近い距離の視認対象物を視認する用途に使用する場合には、単眼拡大鏡の方がユーザーにとって利便性の高い場合がある。
【0075】
また、本明細書で説明された処理工程並びに制御装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0076】
ハードウェア実装については、上述した工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0077】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0078】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,1' :双眼ルーペ
2 :眼鏡フレーム
2a :ブリッジ部
2b :テンプル部
2c :ヨロイ部
2d :透明プレート部
2e :保持アーム
3 :可変焦点レンズ
4 :拡大光学部
4a :対物レンズ
4b :接眼レンズ
4c :鏡筒
5 :自動合焦拡大鏡部
5a :レンズ保持部
5b :取付部
6 :ルーペ本体部
6a :本体ケース
6b :距離調節部
8 :装着部
10 :制御装置
11 :主制御部
12 :電圧変更部
13 :操作部
13a :ダイヤル部
14 :記憶部
20 :バッテリー
21 :距離検出部
200 :眼鏡
【要約】
【課題】距離の異なるいずれの視認対象物の拡大像に対しても使用者のピントを自動で合わせることが可能な拡大鏡装置の小型化、軽量化を図る。
【解決手段】使用者が視認する視認対象物の拡大像を出力する拡大光学部4と、視認対象物までの距離を検出する距離検出部21と、視認対象物までの距離を検出する距離検出部21の検出結果に基づいて、拡大光学部から出力される拡大像の焦点を調整する焦点調整部と、を備えた拡大鏡装置であって、前記焦点調整部は、拡大光学部4を通る光路上に配置され、焦点距離を変更可能な可変焦点レンズ3と、距離検出部21の検出結果に基づいて、可変焦点レンズ3の焦点距離を使用者の眼に適合する適合焦点距離に制御する制御部10と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10