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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20250612BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20250612BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20250612BHJP
   C04B 35/195 20060101ALI20250612BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20250612BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20250612BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20250612BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20250612BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20250612BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D39/20 D ZAB
B01D46/00 302
B01D53/94 241
C04B35/195
C04B38/00 303Z
C04B41/85 D
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019075617
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020001032
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2018116614
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】春日 錬
(72)【発明者】
【氏名】武野 省吾
(72)【発明者】
【氏名】氏原 浩佑
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓哉
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】深草 祐一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-245054号公報(JP,A)
【文献】特開2011-206679号公報(JP,A)
【文献】特開2009-085010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有するハニカム構造体であって、アルミナ、タルク、カオリン、シリカを原料として含む坏土を押出成形して焼成することで得られるハニカム構造体と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部を封止するように配置された目封止部と、を備え、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流入端面側が開口した前記セルを、流入セルとし、
前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流出端面側が開口した前記セルを、流出セルとし、
前記ハニカム構造体は、前記流入セルを取り囲む前記隔壁の内表面側に、排ガス中の粒子状物質を捕集するための捕集層を更に有し、
前記捕集層は、前記捕集層の少なくとも表層にCeO 粒子の焼結体によって構成された部位を含み、
前記捕集層を構成している前記CeO 粒子の平均粒子径が0.7~1.1μmであり、
前記捕集層全体が、前記CeO 粒子の焼結体を含み、前記捕集層に含まれるCeO の含有量が70質量%を超えており、
前記捕集層の平均細孔径が、前記隔壁の平均細孔径よりも小さく、
前記隔壁の気孔率が、45~66%である、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記隔壁は、コージェライトによって構成されたものである、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記隔壁の平均細孔径が、6~24μmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁の厚さが、0.10~0.35mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記捕集層の厚さが、20~50μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、排ガス中の粒子状物質を捕集層によって捕集し、捕集した粒子状物質をより低温で酸化燃焼させることが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンから排出される排ガス中に含まれる粒子状物質の除去に関する規制は世界的に厳しくなっており、粒子状物質を除去するためのフィルタとして、ハニカム構造を有するハニカムフィルタが用いられている。以下、粒子状物質を、「PM」ということがある。PMは、「Particulate Matter」の略である。
【0003】
例えば、ハニカムフィルタとしては、複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、セルのいずれか一方の端部を目封止する目封止部と、を備えたものを挙げることができる。このようなハニカムフィルタは、多孔質の隔壁がPMを除去するフィルタの役目を果たす構造となっている。具体的には、PMを含有する排ガスを、ハニカムフィルタの流入端面から流入させ、多孔質の隔壁でPMを捕集することによって濾過した後に、浄化された排ガスを、ハニカムフィルタの流出端面から排出する。このようにして排ガス中のPMを除去することができる。
【0004】
従来、ハニカムフィルタの捕集性能を向上させるための技術として、ハニカム構造体の隔壁を厚くしたり、隔壁に形成された細孔の大きさを小さくしたりするという技術が提案されている。しかしながら、上述したような技術により捕集性能を向上させた場合には、隔壁に形成された細孔内にPM(例えば、煤)が詰まり易くなってしまい、ハニカムフィルタの圧力損失が上昇してしまうという問題があった。即ち、上述したような技術は、捕集性能の向上効果と圧力損失の上昇抑制効果とが二律背反の関係にあるため、有効な解決手段とは言い難かった。
【0005】
このようなことから、ハニカム構造体の隔壁の表面に、PMを捕集するための捕集層を配設したハニカムフィルタが提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。例えば、捕集層は、隔壁の平均細孔径よりも平均細孔径の小さい多孔質膜によって構成されている。このようなハニカムフィルタによれば、捕集層の表面上にPMを堆積させることができるため、隔壁の細孔内のPMの詰まりによる圧力損失の急上昇を抑制しつつ、PMを捕集する際の捕集効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4426381号
【文献】特許第5524178号
【文献】特許第5524179号
【文献】特許第5726414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、隔壁の表面上に捕集層を設けたハニカムフィルタは、隔壁の細孔内にPMが詰まり難くなり、圧力損失の急上昇を抑制することができるものの、以下のような別の問題が発生するため、その対策が必要になるという問題があった。即ち、捕集層を設けたハニカムフィルタは、捕集層上に、PMとしての煤が多く堆積するため、このような煤の堆積層によって生じる圧力損失の上昇を抑制する必要がある。特に、寒冷地などの煤が燃焼し難い使用環境下では、逆洗や煤の強制加熱等によってフィルタの再生作業を頻繁に行う必要がある。また、再生作業を頻繁に行う代わりに、捕集層に酸化触媒を担持させて、捕集層上に堆積した煤の堆積層を触媒反応によって燃焼除去する技術も検討されている。捕集層上に堆積した煤の堆積層を触媒反応によって燃焼除去する技術については、煤の酸化燃焼開始温度の低減が、圧力損失の上昇抑制効果に大きく寄与するため、より低温で煤を酸化燃焼させることが可能な技術の開発について強い要望がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、排ガス中の粒子状物質を捕集層によって捕集し、捕集した粒子状物質をより低温で酸化燃焼させることが可能なハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0010】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有するハニカム構造体と、
前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部を封止するように配置された目封止部と、を備え、
前記流出端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流入端面側が開口した前記セルを、流入セルとし、
前記流入端面側の端部に前記目封止部が配設され、前記流出端面側が開口した前記セルを、流出セルとし、
前記ハニカム構造体は、前記流入セルを取り囲む前記隔壁の内表面側に、排ガス中の粒子状物質を捕集するための捕集層を更に有し、
前記捕集層は、前記捕集層の少なくとも表層にCeO粒子の焼結体によって構成された部位を含み、
前記捕集層を構成している前記CeO粒子の平均粒子径が0.7~1.1μmである、ハニカムフィルタであって、
前記捕集層全体が、前記CeO粒子の焼結体を含み、前記捕集層に含まれるCeOの含有量が70質量%を超える、ハニカムフィルタ。
【0011】
[2] 前記捕集層の平均細孔径が、前記隔壁の平均細孔径よりも小さい、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0012】
[3] 前記隔壁は、コージェライトによって構成されたものである、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0013】
[4] 前記隔壁の平均細孔径が、6~24μmである、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0014】
[5] 前記隔壁の気孔率が、45~66%である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0015】
[6] 前記隔壁の厚さが、0.10~0.35mmである、前記[1]~[5]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0016】
[7] 前記捕集層の厚さが、20~50μmである、前記[1]~[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカムフィルタは、排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集層によって捕集し、捕集したPMをより低温で酸化燃焼させることができる。即ち、捕集層の少なくとも表層にCeO粒子の焼結体によって構成された部位を含み、且つ、この捕集層を構成しているCeO粒子の平均粒子径が0.7~1.1μmであることにより、CeO粒子が、より低い温度にて酸化触媒としての触媒活性を示す。このため、捕集層によって捕集されたPMを、より低温で酸化燃焼させることができる。本発明のハニカムフィルタは、例えば、寒冷地などのPM(特に、煤)が燃焼し難い使用環境下においても、頻繁にフィルタの再生作業を行う必要がない。また、本発明のハニカムフィルタは、捕集層に対して更に酸化触媒を担持させなくとも、捕集層によって捕集されたPMを良好に酸化燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの流入端面側の平面図である。
図3図1に示すハニカムフィルタの流出端面側の平面図である。
図4図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図5】隔壁の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
(1)ハニカムフィルタ:
本発明のハニカムフィルタの実施形態は、図1図4に示すようなハニカムフィルタ100である。ここで、図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面側の平面図である。図3は、図1に示すハニカムフィルタの流出端面側の平面図である。図4は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0021】
図1図4に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ100は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えたものである。ハニカム構造体4は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配設された多孔質の隔壁1を有するものである。図1図4に示すハニカム構造体4は、流入端面11及び流出端面12を両端面とする円柱形状に構成され、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。
【0022】
目封止部5は、セル2の流入端面11側又は流出端面12側のいずれか一方の端部を封止するように配置されたものである。以下、複数のセル2のうち、流出端面12側の端部に目封止部5が配設され、流入端面11側が開口したセル2を、「流入セル2a」とする。また、複数のセル2のうち、流入端面11側の端部に目封止部5が配設され、流出端面12側が開口したセル2を、「流出セル2b」とする。本実施形態のハニカムフィルタ100において、流入セル2aと流出セル2bは、隔壁1を挟んで交互に配置されていることが好ましい。
【0023】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム構造体4が、以下のように構成されている点に特徴を有する。即ち、ハニカム構造体4は、図5に示すように、流入セル2aを取り囲む隔壁1の内表面側に、排ガス中の粒子状物質(以下、「PM」ともいう)を捕集するための捕集層14を更に有する。そして、捕集層14は、この捕集層14の少なくとも表層にCeO粒子の焼結体によって構成された部位を含んでいる。即ち、捕集層14は、CeO粒子の焼結体によって構成された部位を含む多孔質膜である。そして、捕集層14を構成しているCeO粒子の平均粒子径が0.7~1.1μmである。ここで、図5は、隔壁の断面を模式的に示す断面図である。図5において、符号7は、隔壁1に形成された細孔を示す。
【0024】
捕集層14の表層とは、捕集層14の表面側から厚さ方向に10μmの範囲を含む部位を意味する。したがって、本実施形態のハニカムフィルタ100は、捕集層14の表面側から少なくとも厚さ方向に10μmの範囲において、CeO粒子の焼結体によって構成された部位を含んでいる。なお、本実施形態のハニカムフィルタ100は、捕集層14全体が、CeO粒子の焼結体を含むように構成されてい。そして、捕集層14全体が、CeO粒子の焼結体を含む場合には、捕集層14に含まれるCeOの含有量が70質量%を超える。捕集層14全体がCeO粒子の焼結体を含み、捕集層14に含まれるCeOの含有量が70質量%となる捕集層14のことを、以下、「CeO粒子によって構成された捕集層14」ということがある。
【0025】
捕集層14を構成しているCeO粒子の平均粒子径が0.7~1.1μmであることにより、CeO粒子が、より低い温度にて酸化触媒としての触媒活性を示す。このため、捕集層14によって捕集されたPMを、より低温で酸化燃焼させることができる。本実施形態のハニカムフィルタ100は、例えば、寒冷地などのPM(特に、煤)が燃焼し難い使用環境下においても、頻繁にフィルタの再生作業を行う必要がない。また、本実施形態のハニカムフィルタは、捕集層14に対して更に酸化触媒を担持させなくとも、捕集層14によって捕集されたPMを良好に酸化燃焼させることができる。なお、捕集層14を構成しているCeO粒子の平均粒子径が1.1μmを超えると、CeO粒子が触媒活性を示す温度が高くなり、PMを低温で酸化燃焼させることが困難になる。
【0026】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、捕集層14を構成しているCeO粒子の平均粒子径は、以下のようにして測定することができる。まず、ハニカムフィルタ100を構成するハニカム構造体4から、隔壁1及び捕集層14の一部を、試験片として切り出し、切り出した試験片を、樹脂に埋設する。次に、セル2の延びる方向に直交する方向において、樹脂埋めされた試験片を切断し、切断面を研磨する。次に、研磨した切断面を、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)を用いて撮像し、倍率200倍のSEM画像を得る。「SEM」とは、「Scanning Electron Microscope」の略である。SEM画像は、1ピクセルが、縦0.261μm×横0.261μmの画像とする。走査型電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「型番:S3400-N」を用いることができる。なお、CeO粒子の平均粒子径の測定においては、ハニカムフィルタ100のセル2の延びる方向の中央位置、且つ、ハニカムフィルタ100の外周壁3から最も遠い中心部を含む20mm×20mm×20mmの範囲から、試験片を1個作製する。作製する試験片の大きさは6mm×6mm×6mmとする。このようにして作製した試験片についてSEM画像を得る。
【0027】
次に、得られたSEM画像中の捕集層14についての画像処理を行い、捕集層14を構成するCeO粒子の粒子径を測定する。具体的には、まず、捕集層14のSEM画像から、CeOの質量割合が70質量%以上である任意の位置で、捕集層14の厚み方向1μm×水平方向100μmの領域を囲う。この時、SEM画像において、隔壁1に対して捕集層14が水平になるように位置しており、その水平線に平行になるように上記領域を指定する。このようにしてSEM画像中に指定した領域を、以下、「指定領域」という。このSEM画像中の指定領域を、株式会社日本ローパーの「Image-Pro 9.3.2(商品名)」を用いて二値化処理する。この二値化処理により、SEM画像中の指定領域中の捕集層14が、CeO粒子の焼結体としての実体部分と、各CeO粒子相互間の空隙とに分離される。二値化処理は、上述した1ピクセルを最小単位として行われる。次に、CeO粒子の焼結体としての実体部分と認識された部分の各面積を幅1μmで割ることにより、指定領域内の全CeO粒子の粒子径を測定する。測定したCeO粒子の粒子径の平均値を算出し、これを2つの領域で行い、算出した平均値を、捕集層14を構成しているCeO粒子の平均粒子径とする。
【0028】
また、捕集層14を構成する粒子が、CeO粒子であることについては、以下のような定性分析によって確認することができる。SEM撮影の際にEDS測定も行い、Ce元素とO元素の合計の質量割合を計測する。上記質量割合が90質量%以上であればCeO粒子とみなす。なお、EDSとは、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)の略である。
【0029】
捕集層14は、流入セル2aを取り囲む隔壁1の内表面のみに配設されていることが好ましい。捕集層14を、流入セル2aを取り囲む隔壁1の内表面以外にも配設すると、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。
【0030】
捕集層14の平均細孔径が、隔壁1の平均細孔径よりも小さいことが好ましい。このように構成することによって、流入セル2aを取り囲む隔壁1の内表面側に配設された捕集層14によって、排ガス中に含まれるPMを良好に捕集することができる。
【0031】
捕集層14の平均細孔径は、0.5~15μmであることが好ましく、0.5~8μmであることが更に好ましく、0.5~1μmであることが特に好ましい。
【0032】
捕集層14の気孔率が、50~90%であることが好ましく、70~90%であることが更に好ましく、80~90%であることが特に好ましい。捕集層14の気孔率が50%未満であると、圧力損失が上昇することがある。一方、捕集層14の気孔率が90%を超えると、捕集効率が悪化することがある。
【0033】
捕集層14の気孔率及び平均細孔径は、以下の方法で測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡によって、捕集層14の断面部分を観察して、そのSEM画像を取得する。なお、SEM画像は200倍に拡大して観測するものとする。次に、取得したSEM画像を画像解析することにより、捕集層14の実体部分と、捕集層14中の空隙部分とを二値化する。そして、捕集層14の実体部分と空隙部分との合計面積に対する、捕集層14中の空隙部分の比の百分率を算出し、その値を、捕集層14の気孔率とする。また、別途、SEM画像中の各粒子間の空隙を二値化して、その大きさを、直接、スケール(scale)にて測定し、測定した値から、捕集層14中の細孔径を算出する。算出した細孔径の平均値を、捕集層14の平均細孔径とする。
【0034】
捕集層14の厚さが、20~50μmであることが好ましく、20~40μmであることが更に好ましく、20~30μmであることが特に好ましい。捕集層14の厚さが20μm未満であると、捕集効率の向上代が低くなることがある点で好ましくない。一方、捕集層14の厚さが50μmを超えると、捕集効率の向上が高止まりする点と圧力損失が上昇することがある点で好ましくない。
【0035】
捕集層14の厚さは、以下の方法で測定することができる。まず、ハニカムフィルタ100のセル2の延びる方向の中心軸を通り隔壁1に平行な断面から、以下のような6つの交点を決定する。6つの交点は、上記断面をセル2の延びる方向に4等分する3本の直線と、上記断面をセル2の延びる方向に直交する向きに3等分する2本の直線とが交差する6つの交点である。そして、それぞれの交点を中心として、上記断面に平行に、20mm(縦)×20mm(横)の領域を含む試験片を切り出す。試験片の厚さ(即ち、上記断面に平行な奥行)は任意で決めることができる。上記試験片から隣り合う流入セル2aと流出セル2bの任意の1組を選び、3D形状測定機によって、セル2の延びる方向に約8mmの範囲で、各セル2の表面高さ(具体的には、各セル2の隔壁1に垂直な方向の表面高さ)の平均値を計測する。続いて、流入セル2aと流出セル2bの表面高さの差を算出し、これを捕集層14の厚さとする。
【0036】
排ガス中に含まれる煤は、捕集層14の表面で捕集されるため、捕集層14の少なくとも最表面に酸化触媒機能を有していることが好ましい。なお、捕集層14は、上述したように、CeO粒子によって構成された捕集層14であってもよい。
【0037】
隔壁1の平均細孔径は、6~24μmであることが好ましく、9~24μmであることが更に好ましく、16~24μmであることが特に好ましい。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の平均細孔径は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定することができる。隔壁1の平均細孔径が、6μm未満であると、隔壁1の透過抵抗が上昇し、圧力損失が上昇することがある点で好ましくない。隔壁1の平均細孔径が、24μmを超えると、捕集層14の製膜時の成形性の点で好ましくない。
【0038】
ハニカム構造体4の隔壁1の気孔率は、45~66%であることが好ましく、52~66%であることが更に好ましく、60~66%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定した値である。隔壁1の気孔率は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定することができる。隔壁1の気孔率が、45%未満であると、隔壁1の透過抵抗が上昇し、圧力損失が上昇する点で好ましくない。隔壁1の気孔率が、66%を超えると、強度が著しく低下することがある点で好ましくない。
【0039】
ハニカム構造体4は、隔壁1の厚さが、0.10~0.35mmであることが好ましく、0.10~0.24mmであることが更に好ましく、0.10~0.18mmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、プロファイルプロジェクター(Profile Projector)を用いて測定することができる。隔壁1の厚さが0.10mm未満であると、十分な強度が得られない場合がある。一方、隔壁1の厚さが0.35mmを超えると、隔壁1の表面に捕集層14を配設した際に、圧力損失が増大することがある。
【0040】
ハニカム構造体4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルとが混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0041】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度が、30~60個/cmであることが好ましく、30~50個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、自動車等のエンジンから排出される排ガス中のPMを捕集するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0042】
ハニカム構造体4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1を囲繞するように外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0043】
ハニカム構造体4の形状については特に制限はない。ハニカム構造体4の形状としては、流入端面11及び流出端面12の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0044】
ハニカム構造体4の大きさ、例えば、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向の長さ(以下、「全長」ともいう)や、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさ(以下、「断面積」ともいう)については、特に制限はない。ハニカムフィルタ100の使用時に最適な浄化性能が得るように、各大きさを適宜選択すればよい。ハニカム構造体4の全長は、90~160mmであることが好ましく、120~140mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体4の断面積は、8000~16000mmであることが好ましく、10000~14000mmであることが更に好ましい。
【0045】
隔壁1の材料が、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素-コージェライト系複合材料から構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。隔壁1を構成する材料は、上記群に列挙された材料を、30質量%以上含む材料であることが好ましく、40質量%以上含む材料であることが更に好ましく、50質量%以上含む材料であることが特に好ましい。本実施形態のハニカムフィルタ100において、隔壁1を構成する材料は、特に、コージェライトが好ましい。
【0046】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
本発明のハニカムフィルタを製造する方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0047】
まず、ハニカム構造体の隔壁を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造体の隔壁を作製するための坏土は、前述の隔壁の好適な材料を作製するための原料粉末に、適宜、バインダ等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。原料粉末としては、例えば、アルミナ、タルク、カオリン、シリカの粉末を用いることができる。バインダとしては、例えば、メチルセルロース(Methylcellulose)や、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose)等を挙げることができる。また、添加剤としては、界面活性剤等を挙げることができる。
【0048】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。
【0049】
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成する。目封止部を形成する方法については、従来公知のハニカムフィルタの製造方法に準じて行うことができる。例えば、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施す。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部に目封止スラリーを刷り込み、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填する。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止スラリーを充填する。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥する。
【0050】
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を焼成することにより、捕集層が配設される前のハニカムフィルタ前駆体を作製する。なお、ハニカム成形体を焼成する際の、焼成温度及び焼成雰囲気については、ハニカム成形体を作製する原料によって異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0051】
次に、捕集層を作製するためのCeO粒子を用意する。CeO粒子としては、例えば、平均粒子径が0.2~1.1μmのCeO粒子を好適に用いることができる。そして、用意したCeO粒子を、水、分散剤、造孔剤、凝集剤、粘度調整剤を加えたスラリーとし、CeOを含む凝集粒子がハニカムフィルタ前駆体の気孔に入らないサイズにする。このようなスラリーを、成膜装置の治具にセットしたハニカムフィルタ前駆体の天地方向の下側から供給し、上側から透過液を流す。所定の量のスラリーを流し終えた後、治具と一緒にハニカムフィルタ前駆体をひっくり返し、ハニカムフィルタ前駆体から治具を外す。その後、スラリー中の凝集粒子が隔壁の表面に配された状態のハニカムフィルタ前駆体を乾燥し、焼成する。
【0052】
このようにして、ハニカムフィルタ前駆体の流入セルを取り囲む隔壁の内表面側に、CeO粒子によって構成された捕集層を形成する。以上のようにして、本発明のハニカムフィルタを製造することができる。
【実施例
【0053】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
まず、ハニカム構造体の隔壁を作製するためのアルミナ、タルク、カオリン、シリカ原料を用意した。用意したアルミナ、タルク、カオリン、シリカ原料に、分散媒を2質量部、有機バインダを7質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒としては、水を使用した。有機バインダとしては、メチルセルロースを使用した。分散剤としては、界面活性剤を使用した。
【0055】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体のセルの形状は、四角形とした。
【0056】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0057】
次に、乾燥したハニカム成形体に、目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施した。その後、マスクの施されたハニカム成形体の端部に目封止スラリーを刷り込み、マスクが施されていない流出セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止スラリーを充填した。その後、目封止部を形成したハニカム成形体を、更に、熱風乾燥機で乾燥した。
【0058】
次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、捕集層が配設される前のハニカムフィルタ前駆体を製造した。
【0059】
次に、以下の方法で、ハニカムフィルタ前駆体の流入セルを取り囲む隔壁の内表面側に、捕集層を作製した。具体的には、まず、平均粒子径が1.3μmのCeO粒子を用意した。CeO粒子は、トライバッハ製の酸化セリウムパウダーを用いた。次に、用意したCeO粒子を凝集させて、捕集層形成用スラリーを調製した。次に、成膜装置の治具にセットしたハニカムフィルタ前駆体の天地方向の下側から捕集層形成用スラリーを供給し、上側から透過液を流した。所定の量の捕集層形成用スラリーを流し終えたら、治具と一緒にハニカムフィルタ前駆体をひっくり返し、ハニカムフィルタ前駆体から治具を外した。その後、ハニカムフィルタ前駆体を、室温で22時間乾燥した後、80℃で24時間乾燥させ、更に、200℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で2時間焼成して、捕集層を作製した。
【0060】
実施例1のハニカムフィルタは、流入端面及び流出端面の形状が円形の円柱形状のものであった。ハニカムフィルタのセルの延びる方向の長さは、127.1mmであった。ハニカムフィルタの端面の直径は、118.5mmであった。ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体は、隔壁の厚さが、0.158mmであり、セル密度が、33.3個/cmであった。ハニカム構造体の隔壁は、気孔率が48.6%であった。
【0061】
また、実施例1のハニカムフィルタは、流入セルを取り囲む隔壁の内表面側に、CeO粒子によって構成された捕集層を有していた。捕集層の厚さは26μmであった。捕集層を構成するCeO粒子の総質量は、33gであった。結果を、表1の「CeO粒子の質量(g)」の欄に示す。また、単位面積当たりの捕集層の質量は、24gであった。結果を、表1の「単位面積当たりの捕集層の質量(g/m)」の欄に示す。なお、単位面積当たりの捕集層の質量は、CeO粒子によって構成された層であって、捕集層として有効な多孔質層の1m当たりの質量のことを意味する。捕集層を構成するCeO粒子は、下記測定方法によって測定された平均粒子径が、1.1μmであった。結果を表1に示す。
【0062】
[捕集層を構成するCeO粒子の測定方法]
まず、ハニカムフィルタを構成するハニカム構造体から、測定用の試験片を切り出して作製した。なお、試験片は、ハニカムフィルタのセルの延びる方向の中央位置、且つ、ハニカムフィルタの外周壁から最も遠い中心部を含む20mm×20mm×20mmの範囲から、6mm×6mm×6mmの大きさで作製した。次に、切り出した試験片を、樹脂に埋設した。次に、セルの延びる方向に垂直な方向において、樹脂埋めされた試験片を切断し、切断面を研磨した。次に、研磨した切断面を、走査型電子顕微鏡を用いて撮像し、倍率200倍のSEM画像を得た。走査型電子顕微鏡は、日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「型番:S3400-N」を用いた。次に、得られたSEM画像中の捕集層についての画像処理を行い、捕集層を構成するCeO粒子の粒子径を測定した。具体的には、まず、捕集層のSEM画像から、任意の位置で、捕集層の厚み方向1μm×水平方向100μmの領域を囲った。この時、SEM画像では、ハニカム構造体の隔壁に対して捕集層が水平になっており、その水平線に平行になるように上記領域を指定した。この領域を、株式会社日本ローパーの「Image-Pro 9.3.2(商品名)」を用いて二値化処理した。次に、CeO粒子の焼結体としての実体部分と認識された部分の各面積を幅1μmで割ることにより、指定した領域内の全CeO粒子の粒子径を測定した。測定したCeO粒子の粒子径の平均値を算出し、これを2つの領域で行い、算出した平均値を、捕集層を構成しているCeO粒子の平均粒子径とした。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、「煤酸化開始温度(℃)」の測定を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[煤酸化開始温度(℃)]
まず、各実施例のハニカムフィルタに、煤を含む排ガスを通気して、ハニカムフィルタの捕集層によって、排ガス中の煤を捕集した。排ガスの通気は、捕集層によって捕集される煤の量が、ハニカムフィルタの体積1Lあたり1gとなるまで行った。次に、ハニカムフィルタの隔壁及び捕集層を、一辺の長さが0.5~1.5cmとなるよう切断して、煤酸化開始温度測定用の試料片を作製した。なお、捕集層の表面には煤が付着しているため、捕集層の表面から煤が剥離しないようにして試料片の作製を行った。次に、作製した試料片について、加熱発生ガス分析(Temperature Programmed Desorption-Mass Spectrometry:TPD-MS)を行った。具体的には、まず、作製した試料片を、加熱発生ガス分析用の測定セルに入れ、測定セル内に、流速が50mL/minとなるように調節したHe/O(20%)ガスを通気した。測定セル内の温度を300℃まで昇温した後、20℃/minの昇温速度で、測定セル内の温度を700℃まで更に昇温した。この際、測定セルから排出されるガス中のCO濃度を測定した。即ち、測定セル内の温度を上昇させることにより、捕集層によって捕集された煤が燃焼してCOが発生する。CO濃度の測定結果を元に、測定セル内の温度を横軸(200~700℃)とし、CO濃度を縦軸(任意単位(a.u.))としたグラフを作成し、CO濃度ピークの総面積をA100%として、CO濃度ピークの面積割合が20%となるA20%に到達した温度を求めた。「A20%に到達した温度」を「煤酸化開始温度(℃)」とした。
【0066】
(実施例2、比較例1~3)
捕集層を形成するためのCeO粒子の平均粒子径を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカムフィルタを作製した。実施例2、比較例1~3のハニカムフィルタの捕集層を構成するCeO粒子の平均粒子径を測定した所、実施例2は0.7μm、比較例1は2.1μm、比較例2は4.5μm、比較例3は5.5μmであった。実施例2、比較例1~3のハニカムフィルタにおける隔壁及び捕集層の構成を、表1に示す。
【0067】
実施例2、比較例1~3のハニカムフィルタについても、実施例1と同様の方法で、「煤酸化開始温度(℃)」の測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(結果)
実施例1のハニカムフィルタの煤酸化開始温度は、464℃であり、比較例1~3のハニカムフィルタの煤酸化開始温度よりも低いことが確認された。また、実施例2のハニカムフィルタの煤酸化開始温度は、455℃であり、更に、煤酸化開始温度が低くなることが確認された。以上の結果より、捕集層を構成するCeO粒子の平均粒子径を0.7~1.1μmとすることにより、捕集層によって捕集した煤などの可燃性のPMをより低温で酸化燃焼させることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のハニカムフィルタは、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周壁、4::ハニカム構造体、5:目封止部、7:細孔、11:流入端面、12:流出端面、14:捕集層、100:ハニカムフィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5