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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】補助付きブームアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B64D 39/00 20060101AFI20250612BHJP
【FI】
B64D39/00
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021007059
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2021160706
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】16/835,962
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー エー.ヒンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ソン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ブレイン エー.ローソン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム.ジェイコブス
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/059155(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0218097(US,A1)
【文献】特開2014-019441(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008038178(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機であって、
給油ブーム及びコントローラを備え、
前記給油ブームは、
給油ブーム構造と、
ケーブルを有するホイストと、
ブーム空力操縦翼面と、を含み、
前記コントローラは、
前記ホイストが前記ケーブルに上方への引き上げ力を作用させる巻き上げモードにあり、前記ブーム空力操縦翼面が停止状態にある第2アクチュエータ状態モードから開始して、前記給油ブーム構造を前記ホイストで、前記ブーム空力操縦翼面が停止状態にある間に下降させ、
第1遷移条件が満たされたことを判定
前記給油ブームを前記第2アクチュエータ状態モードからゼロアクチュエータ状態モードに遷移させ、その際、前記ゼロアクチュエータ状態モードにおいては、前記ブーム空力操縦翼面が作動状態にあり、前記ホイストが前記巻き上げモードにおける前記上方への引き上げ力よりも小さい基準張力を前記ケーブルに維持させる引張モードにあり、前記第2アクチュエータ状態モードから前記ゼロアクチュエータ状態モードに遷移させるに際して、
前記給油ブームを前記第2アクチュエータ状態モードから、前記ホイストが前記引張モードにあり、前記ブーム空力操縦翼面が前記停止状態にある第1アクチュエータ状態モードに切り替え、
前記給油ブームを前記第1アクチュエータ状態モードから前記ゼロアクチュエータ状態モードに切り替える、処理を前記給油ブームに実行させるよう構成されている、航空機。
【請求項2】
前記処理は、さらに、前記ゼロアクチュエータ状態モードにおいて、前記ブーム空力操縦翼面を構成する昇降舵及び又は方向舵を操作することにより、前記給油ブームを飛ばすことを含む、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記ホイストは、クラッチを含んでおり、前記給油ブームを前記第2アクチュエータ状態モードから前記第1アクチュエータ状態モードに切り替えることは、前記クラッチを操作して、前記第2アクチュエータ状態モードから前記ゼロアクチュエータ状態モードへの遷移を許容することを含む、請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記第1遷移条件は、
ブームピッチ角が所定の閾値角度よりも大きいことを含む、請求項1~3のうちのいずれか1つに記載の航空機。
【請求項5】
前記航空機における動圧を測定する動圧センサをさらに備えており、
前記第1遷移条件は、さらに、測定された動圧が、所定の閾値動圧よりも大きいことを含む、請求項4に記載の航空機。
【請求項6】
前記処理は、さらに、前記給油ブーム構造を前記ホイストで格納位置から引き上げることをさらに含む、請求項1~5のうちのいずれか1つに記載の航空機。
【請求項7】
前記処理は、前記航空機の飛行中に実行される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の航空機。
【請求項8】
前記処理は、さらに、
前記ホイストが前記ゼロアクチュエータ状態モードにある間に、前記航空機の胴体に近づけるように前記給油ブームを飛ばすことと、
第2遷移条件が満たされたことを判定することと、
前記給油ブームを前記ゼロアクチュエータ状態モードから前記第1アクチュエータ状態モードに切り替えることと、
前記給油ブーム構造を前記ホイストで引き上げることと、を含む、請求項に記載の航空機。
【請求項9】
前記給油ブーム構造を引き上げることは、前記ホイストを前記第1アクチュエータ状態モードから前記第2アクチュエータ状態モードに切り替えることを含む、請求項8に記載の航空機。
【請求項10】
前記第2遷移条件は、ブームピッチ角が所定の閾値角度より小さいことを含む、請求項8又は9に記載の航空機。
【請求項11】
前記航空機における動圧を測定する動圧センサをさらに備えており、
前記第1遷移条件は、さらに、測定された動圧が、所定の閾値動圧よりも小さいことを含む、請求項10に記載の航空機。
【請求項12】
前記処理は、さらに、前記ブーム空力操縦翼面を停止状態にした後に、前記給油ブームを格納することを含む、請求項8~11のうちのいずれか1つに記載の航空機。
【請求項13】
給油ブーム構造と、ケーブルを有するホイストと、ブーム空力操縦翼面と、を含む航空機の給油ブームの操作方法であって、
前記ホイストが前記ケーブルに上方への引き上げ力を作用させる巻き上げモードにあり、前記ブーム空力操縦翼面が停止状態にある第2アクチュエータ状態モードから開始して、前記給油ブーム構造を前記ホイストで、前記ブーム空力操縦翼面が停止状態にある間に下降させ、
第1遷移条件が満たされていることを判定
前記給油ブームを前記第2アクチュエータ状態モードからゼロアクチュエータ状態モードに遷移させ、その際に、前記ゼロアクチュエータ状態モードにおいては、前記ブーム空力操縦翼面が作動状態にあり、前記ホイストが前記巻き上げモードにおける前記上方への引き上げ力よりも小さい基準張力を前記ケーブルに維持させる引張モードにあり、前記第2アクチュエータ状態モードから前記ゼロアクチュエータ状態モードに遷移させるに際して、
前記給油ブームを前記第2アクチュエータ状態モードから、前記ホイストが前記引張モードにあり、前記ブーム空力操縦翼面が前記停止状態にある第1アクチュエータ状態モードに切り替え、
前記給油ブームを前記第1アクチュエータ状態モードから前記ゼロアクチュエータ状態モードに切り替える、方法。
【請求項14】
前記ゼロアクチュエータ状態モードにおいて、前記ブーム空力操縦翼面を構成する昇降舵及び又は方向舵を操作することにより、前記給油ブームを飛ばすことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1遷移条件は、
ブームピッチ角が所定の閾値角度よりも大きいこと、を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記給油ブーム構造を前記ホイストで格納位置から引き上げることをさらに含む、請求項13~15のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
給油ブーム構造と、ケーブルを有するホイストと、ブーム空力操縦翼面と、を含む航空機の給油ブームの操作方法であって、
給油ブームのホイストがゼロアクチュエータ状態モードにある間に、航空機の胴体に近づけるように、前記ブーム空力操縦翼面を構成する昇降舵及び又は方向舵を操作することにより、前記給油ブームを飛ばし、前記ゼロアクチュエータ状態モードにおいては、前記ブーム空力操縦翼面が作動状態にあり、前記ホイストが基準張力を前記ケーブルに維持させる引張モードにあり、
第2遷移条件が満たされていることを判定
前記給油ブームを前記ゼロアクチュエータ状態モードから第2アクチュエータ状態モードに遷移させ、その際に、前記第2アクチュエータ状態モードにおいては、前記ホイストが前記基準張力よりも大きな上方への引き上げ力を前記ケーブルに作用させる巻き上げモードにあり、前記ブーム空力操縦翼面が停止状態にあり、前記ゼロアクチュエータ状態モードから前記第2アクチュエータ状態モードに遷移させるに際して、
前記給油ブームを前記ゼロアクチュエータ状態モードから、前記ホイストが前記引張モードにあり、前記ブーム空力操縦翼面が前記停止状態にある第1アクチュエータ状態モードに切り替え、
前記給油ブームを前記第1アクチュエータ状態モードから前記第2アクチュエータ状態モードに切り替え、
前記第2アクチュエータ状態モードにおいて、前記給油ブームの給油ブーム構造を前記ホイストで引き上げる、方法。
【請求項18】
前記給油ブームを前記第1アクチュエータ状態モードから第2アクチュエータ状態モードに切り替えることは、クラッチを操作して、前記ゼロアクチュエータ状態モードから前記第2アクチュエータ状態モードへの遷移を許容することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2遷移条件は、ブームピッチ角が所定の閾値角度より小さいことを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記給油ブームを格納することをさらに含む、請求項17~19のうちのいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、給油ブームを備える航空機に関し、より具体的には、そのような航空機に用いられる補助付きブームアクチュエータ(assisted boom actuator)に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の空中給油機は、空中給油ブームを用いて給油を行う。給油ブームは、格納位置にあるときは、航空機の胴体にラッチ止めされている。典型的には、給油ブームの展張が命令されれば、給油ブームのブーム空力操縦翼面(boom aerodynamic control surface)が揚力を発生させて、給油ブームをラッチから押し上げる。給油ブームが押し上げられたら、ラッチを開放し、給油ブームを再び下降させる。次いで、ブーム空力操縦翼面による空力制御を行って、給油ブームを胴体から離して飛行させる。逆に、給油ブームの格納が命令されれば、ブーム空力操縦翼面によって給油ブームを胴体の高さまで上昇させ、ラッチを閉じて給油ブームを胴体に掛止する。
【発明の概要】
【0003】
給油ブームを展張及び格納するための方法及びシステムが開示されている。特定の実施例において、本技術は、給油ブームのホイストが第2アクチュエータ状態モードにある間に、前記給油ブームの給油ブーム構造を前記ホイストで、前記給油ブームのブーム空力操縦翼面が停止状態にある間に下降させることと、第1遷移条件が満たされていることを判定することと、前記ホイストを前記第2アクチュエータ状態モードから第1アクチュエータ状態モードに切り替えることと、前記ブーム空力操縦翼面を作動状態にすることと、を含む。
【0004】
別の実施例において、本技術は、給油ブームのホイストがゼロアクチュエータ状態モードにある間に、前記給油ブームを航空機の胴体に近づけるように飛ばすことと、第2遷移条件が満たされていることを判定することと、前記ホイストを前記ゼロアクチュエータ状態モードから第1アクチュエータ状態モードに切り替えることと、前記給油ブームの給油ブーム構造を前記ホイストで引き上げることと、を含む。
【0005】
この記載は、本開示の発明の特徴の例示的且つ非限定的な実施例の説明である。以下に、添付図面を参照して、これらの実施例及び他の実施例についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示は、様々な実施例を示す添付図面を参照して以下の説明を読むことで、もっともよく理解されよう。
【0007】
図1A】いくつかの実施例における給油ブームを備えるビークルを示す図である。
図1B】いくつかの実施例における給油ブームを備えるビークルの尾部を示す側面図である。
図2A】いくつかの実施例における給油ブームの様々な状態を示す図である。
図2B】いくつかの実施例における給油ブームの状態を決定する技術を示すフローチャートである。
図3】いくつかの実施例における給油ブームを使用する技術を示すフローチャートである。
図4】いくつかの実施例における給油ブームを使用する他の技術を示すフローチャートである。
図5】いくつかの実施例における飛行区分と非飛行区分の間の遷移を示す図である。
図6A】いくつかの実施例における航空機の製造及び使用方法の実施例を示すフローチャートである。
図6B】いくつかの実施例におけるビークルを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、本開示の概念が十分に理解されるように多くの具体的な詳細事項を提示しているが、本開示の概念は、これら具体的な詳細のいくつか又はすべてが無くても実施可能である。また、本開示が不必要に煩雑になるのを避けるため、周知の処理動作については詳細を省いている場合もある。いくつかの概念は、特定の実施例に関連させて説明しているが、これらの実施例は、本開示の限定を意図するものでないことは理解されよう。
<はじめに>
【0009】
ここでは、給油ブームの制御技術について説明する。特定の実施例において、給油ブーム構造はブーム空力操縦翼面を含み、当該操縦翼面は、ホイストが第2アクチュエータ状態モードにある間は、停止状態に置かれる。給油ブームの制御技術は、ホイストが第2アクチュエータ状態モードにある間に、当該ホイストで給油ブーム構造を下降させることと、第1遷移条件が満たされているかを判定することと、ホイストを第2アクチュエータ状態モードから第1アクチュエータ状態モードに切り替えることと、ホイストを第1アクチュエータ状態モードに切り替えた後に、ブーム空力操縦翼面を作動状態にすることと、を含む。
【0010】
特定の実施例において、空中給油機は、空中給油ブームを含む。特定の実施例において、空中給油ブームは、航空機の胴体に沿って配置されており、航空機の胴体に掛止された状態で格納される。そのような構成において、給油ブームの展張が命令されると、給油ブームのブーム空力操縦翼面(例えば、ブーム昇降舵:boom elevator)が揚力を発生させて、給油ブームをラッチから押し上げる。給油ブームが押し上げられたら、ラッチを開放し、給油ブームを再び下降させる。次いで、ブーム空力操縦翼面によって空力制御を行って、給油ブームを胴体から離して飛行させる。逆に、給油ブームの格納が命令されると、ブーム空力操縦翼面によって給油ブームを胴体の高さまで上昇させ、ラッチを閉じて給油ブームを胴体に掛止する。
【0011】
特定の実施例では、空中給油エンベロープ(aerial refueling envelope)の全領域を通じて、単一のコマンドによって格納及び展張が実行され、これにより有用性を高めるとともに、特定の用途においては、そのような構成が必須である。しかしながら、対気速度が遅い場合は、ブーム空力操縦翼が発生させる揚力は、ブームをラッチ上方まで持ち上げるのに十分でない。本開示の実施例においては、飛行エンベロープにおけるこのような領域では、ブームは、ホイストを代わりに用いてラッチから持ち上げられる。
【0012】
そのような実施例において、本開示の技術は、既存のシステムを改装又は更新するものとして適用することができる。既存のシステムの中には、給油ブームを展張するために使用することを本来の目的としないホイストを含むものがある。そのようなシステムにおいては、システムの様々なコンポーネントの損傷を防止すべく、ホイストアクチュエータ(ホイストの動作を制御する)と、空力アクチュエータ(ブーム空力操縦翼面の動作を制御する)を、両方同時に作動させないことが必要とされる。本開示の技術によれば、これら2つの異種のアクチュエータ(例えば、ホイストアクチュエータと昇降舵アクチュエータ)を連携及び協働して動作させて、空中給油エンベロープの全体を通じて、単一のボタンで格納及び展張を行うことが可能になる。
【0013】
給油ブームを備えるビークルの実施例が、図1に示されている。図1Aは、いくつかの実施例における給油ブームを備えるビークルを示す図である。なお、図1Aでは、ビークル100として固定翼機を示しているが、他の実施例は、他の構造(例えば、ヘリコプター、可変翼機、短距離離着陸航空機、宇宙船、ドローン、及びその他のビークル)を含む。
【0014】
ビークル100は、胴体120、翼140、及び航空機プロパルサ(aircraft propulsor)130を含む。航空機プロパルサ130は、各翼140に取り付けられている。翼140は、胴体120に連結されている。ビークル100は、さらに、胴体120の一部(例えば、胴体120の尾部)に連結された給油ブーム110を含む。給油ブーム110の詳細は、図1Bに図示及び説明されている。
【0015】
給油ブーム110は、コントローラ150によって制御される。コントローラ150は、様々な実施例において、メモリ、プロセッサ、及びその他の論理デバイスを含む。コントローラ150は、データを受け取り、演算を行い、ビークル100の他の部分に出力(例えば、制御命令)を与える。コントローラ150は、通信ネットワーク154を介して給油ブーム110に通信可能に接続されている。特定の実施例において、通信ネットワーク154は、任意の種類の有線及び/又は無線のネットワークであって、コントローラ150との間でデータ及び/又は電力の授受を行う。コントローラ150は、通信ネットワーク154を介してセンサ152にも接続されている。センサ152は、対気速度、気圧(例えば、動圧:dynamic pressure)、高度ほか、ビークル100の運航に関連する読み取り値を測定するセンサを含む。特定の実施例において、センサ152は、ホイスト114(図1Bに記載)のケーブルの損傷の有無を判定するよう構成されたケーブル損傷モニタをさらに含む。コントローラ150は、様々な実施例において、パラメータを決定し、及び/又は、本明細書に記載の処理を様々なシステムに実行させるよう構成されている。
<給油ブームの実施例>
【0016】
図1Bは、いくつかの実施例における給油ブームを備えるビークルの尾部を示す側面図である。図1Bは、胴体120に連結された給油ブーム110を示している。様々な実施例において、給油ブーム110は、胴体120に連結されており、格納位置にあるときは、胴体120に掛止されている。給油ブーム110は、特定の実施例において、「フライング・ブーム」方式の空中給油システムである。
【0017】
給油ブーム110は、給油ブーム構造116、給油ブーム構造116に連結されたホイスト114、及び、給油ブーム構造116に連結されたブーム空力操縦翼面112を含む。給油ブーム構造116は、ブーム先端部118を有する。ブーム先端部118は、受油側の航空機の受油レセプタクルに差し込まれて、燃料を送り込むよう構成されている。
【0018】
特定の実施例において、ホイスト114は、航空機100が地上にあるとき(例えば、着陸後)に、給油ブーム構造116を動かすよう構成されている。ホイスト114は、給油ブーム構造116の動きを制御するよう構成されたケーブルを含む。本明細書に記載の特定の実施例において、ホイスト114は、給油ブーム構造116の上昇及び/又は制御に十分な揚力をブーム空力操縦翼面112が生成できない状況において動作するよう構成されている。よって、本明細書に記載の技術によれば、ブーム空力操縦翼面112が給油ブーム110を展張又は格納するために十分な揚力を生成できない、又は適切な制御を行えないような運航条件においては、ホイスト114を用いて給油ブーム110を展張及び格納することができる。特定の実施例において、ホイスト114は、ホイスト114のケーブルの損傷の有無を判定するケーブル損傷モニタを含む。
【0019】
ホイスト114の動作は、部分的又は全面的にホイストアクチュエータによって制御される。ホイストアクチュエータは、複数の異なるモードのうちの1つで動作する。これらのモードには、例えば、引張モード(tension mode)、巻き上げモード、及びブロックモードが含まれる。ホイストアクチュエータは、引張モードでは、ホイスト114のケーブルにかかる張力を基準張力(baseline amount of tension)に維持するよう構成されている。巻き上げモードでは、ホイスト114のケーブルは、給油ブーム構造116を胴体120側に巻き上げる(例えば、上方に引き上げる)ように操作される。巻き上げモードでは、ホイスト114のケーブルにかかる張力が、状況によっては、引張モードにおける張力よりも著しく大きくなる。ブロックモードでは、給油ブーム110は、格納位置(例えば、胴体120の下側近傍)に収容される。ブロックモードにおいては、ホイスト114のケーブルは、ロックされる。様々な実施例において、ホイストアクチュエータは、クラッチの操作によって異なるモードに遷移する。
【0020】
ブーム空力操縦翼面112は、給油ブーム構造116の一部に連結されている。ブーム空力操縦翼面112は、航空機100が所与の速度で飛行する場合に揚力を発生させるよう構成された1つ又は複数の翼構造、及び/又は、他の空力的構造を含む。特定の実施例において、ブーム空力操縦翼面112の様々な部分は、給油ブーム構造116の飛行特性を制御するように操作(例えば、枢動)可能に構成されている。
【0021】
ブーム空力操縦翼面112の動作は、部分的又は全面的に1つ又は複数の空力アクチュエータによって制御される。特定の実施例において、ブーム空力操縦翼面112は、昇降舵と、1つ以上の方向舵と、の両方を含む。そのような構成においては、空力アクチュエータは、昇降舵を制御する昇降アクチュエータと、1つ以上の方向舵を制御する1つ以上の方向舵アクチュエータと、の両方を含む。
【0022】
様々な実施例において、給油ブーム110(例えば、給油ブーム構造116)は、所与の角度範囲で回動可能に構成されている。これらの角度を、本明細書では、ブームピッチ角166という。本明細書に記載のブームピッチ角166は、ニュートラル角160からの角度である。特定の実施例において、ニュートラル角160は、胴体120の中心線と平行であるか、或いは、他の配向に設定されている。図1Bに示すように、給油ブーム構造116は、上限角162と下限角164の間で回動可能に構成されている。様々な実施例において、給油ブーム構造116をニュートラル角160より上側に(例えば、格納位置にあるときのように、上限角162に近づけるように)回動させることを負の角度の回動とし、一方、給油ブーム構造116をニュートラル角160より下側に(例えば、展張位置にあるときのように下限角164に近づけるように)回動させることを、正の角度の回動とする。図1Bに示すように、ブームピッチ角166は、給油ブーム構造116をニュートラル角160より下側に回動させると、正になる角度である。
<給油ブームの動作段階>
【0023】
図2Aは、いくつかの実施例における給油ブームの状態を示す図である。給油ブーム110は、様々な実施例において、複数の異なる動作状態モードで動作するよう構成されている。様々な動作状態モードには、給油ブーム110における様々なアクチュエータの動作状態が含まれる。そのような動作状態には、例えば、図2Aに示す様に、ゼロから第4までのアクチュエータ状態モード206~214が含まれる。コントローラ150は、ここに記載するような動作状態モードを判定するよう構成されている。
【0024】
ゼロから第2のアクチュエータ状態モード206~210は、アクティブモード群202に含まれる。第3及び第4のアクチュエータ状態モード212及び214は、パッシブモード群204に含まれる。給油ブーム110は、記載するような他の状態に依存して、様々なアクチュエータ状態モードに遷移する。特定の実施例において、そのような動作条件によって、給油ブーム110が飛行区分(fly zone)と非飛行区分(no fly zone)のいずれにおいて動作することが許容される状態であるかを判定することができる。飛行区分又は非飛行区分については、図5にさらに説明する。
【0025】
図5は、いくつかの実施例における飛行区分と非飛行区分の間の遷移を示す図である。図5は、飛行区分502、非飛行区分504、並びに遷移条件506及び508を示す。飛行区分502は、ブーム空力操縦翼面112によって給油ブーム110を飛行させるために適切な状態を表す。非飛行区分504は、ブーム空力操縦翼面112によって給油ブーム110を飛行させるために適切でない状態を示す。したがって、例えば、非飛行区分504は、ブーム空力操縦翼面112が給油ブーム110を(例えば、胴体120に向けて)飛ばすのに十分な上昇制御(elevator authority)を実現できないような状態に関連付けられている。
【0026】
飛行区分502から非飛行区分504への遷移、また、その逆の遷移は、遷移条件506及び508が満たされている場合にそれぞれ許容される。様々な実施形態は、異なる条件を含む。コントローラ150は、航空機100の状態が、飛行区分502にあるか、非飛行区分504にあるか、又は、2つの区分の間の過渡状態にあるかを判定する。
【0027】
遷移条件506は、給油ブーム110が飛行区分502から非飛行区分504に遷移することを許容するものである。特定の実施例において、遷移条件506には、動圧及び/又は対気速度の測定値に関連する条件、ブームピッチ角166に関連する条件、及び/又は、ユーザによって発行されたコマンドに関連する条件が含まれる。遷移条件508は、給油ブーム110が非飛行区分504から飛行区分502に遷移することを許容するものである。特定の実施例において、遷移条件506には、動圧及び/又は対気速度の測定値に関連する条件、ブームピッチ角166に関連する条件、ホイスト114のケーブル速度(例えば、ホイスト114のケーブルの移動速度)に関連する条件、及び/又は、ユーザによって発行されたコマンドに関連する条件が含まれる。
【0028】
よって、例えば、遷移条件506は、動圧が閾値動圧より小さいこと、及び、ブームピッチ角166が閾値ピッチ角より小さいことを要件とする。一方、遷移条件508は、動圧が閾値動圧より大きいこと、ブームピッチ角166が閾値ピッチ角より大きいこと、及び、ケーブル速度が閾値ケーブル速度より遅いこと(これは、例えば、ケーブルに掛かる張力が閾値張力より小さいことを示す)を要件とする。そのような閾値動圧及び閾値ピッチ角は、用途に特有の(例えば、給油ブーム及び/又は航空機など、使用されるプラットフォームに基づいて異なる)値であり、特定の状況では、遷移条件506と遷移条件508との間で異なる値である。
【0029】
動圧は、航空機100における1つ又は複数の圧力センサによって特定される。給油ブーム110は、ブームピッチ角166及び/又はケーブル速度を特定する1つ又は複数のセンサを含む。他の実施例の航空機100は、飛行区分及び非飛行区分に関連付けられた他のパラメータを特定するための他のセンサを含む。
【0030】
特定の実施例において、遷移条件506及び508に関し、閾値動圧は、特定の実施例においては、飛行エンベロープにおける低速又は最低速度の範囲であり、閾値ピッチ角は、特定の実施例においては、空中給油エンベロープよりも上の角度である。遷移条件506に関連するユーザコマンドとしては、給油ブーム110の格納を命じるコマンドがある。様々な実施例において、遷移条件506及び508は、異なる絶対範囲又は異なる範囲を含む。特定の実施例において、ユーザコマンドには、給油ブーム110の展張を命令するコマンドが含まれる。
【0031】
再び、図2Aを参照すると、ゼロアクチュエータ状態モード206は、給油ブーム110を飛行させるための状態である。よって、ゼロアクチュエータ状態モード206では、ブーム空力操縦翼面112は作動状態にあって、揚力を発生させて給油ブーム110を制御している。給油ブーム110のピッチ軸は、昇降舵アクチュエータによって制御され、給油ブーム110のロール軸は、1つ又は複数の方向舵アクチュエータによって制御される。ゼロアクチュエータ状態モード206では、ホイストアクチュエータは、引張モードにある。
【0032】
給油ブーム110は、以下の条件が満たされていると判定された場合に、(例えば、第1アクチュエータ状態モード208から)ゼロアクチュエータ状態モード206に入ることを許容される。即ち、1)給油ブーム110が飛行区分502にあり、2)ホイストアクチュエータが引張モードにあり、3)ケーブル損傷モニタが、ホイストケーブルに損傷がないことを示しており、及び/又は、4)給油ブーム110の飛行を命令するコマンドが発行されている場合に、ゼロアクチュエータ状態モードに入ることを許容される。
【0033】
第1アクチュエータ状態モード208は、給油ブーム110がゼロアクチュエータ状態モード206と第2アクチュエータ状態モード210を遷移するための過渡状態である。様々な実施例において、第1アクチュエータ状態モード208は、(例えば、ゼロアクチュエータ状態モード206と第2アクチュエータ状態モード210の間の遷移において)ホイストアクチュエータと空力アクチュエータとの間でピッチ制御を移行するためのハンドシェイク状態である。よって、特定の実施例において、第1アクチュエータ状態モード208において、ホイスト114のクラッチが操作され、第2アクチュエータ状態モード210からゼロアクチュエータ状態モード206への遷移、或いはその逆の遷移が可能になる。クラッチの操作によって、ホイスト114のモード遷移(例えば、引張モード、巻き上げモード、及び/又はブロックモードの間の遷移)が可能になる。特定の実施例において、これらのモードでは、異なるケーブル張力及び/又はケーブル速度の動作が行われ、また、クラッチの操作は、これらのモードにおける動作に適切なギヤ連結及び/又はトルクを提供するために必要である。
【0034】
第1アクチュエータ状態モード208において、ブーム空力操縦翼面112は、停止状態にあり、ホイスト114は、引張モードにある。給油ブーム110のピッチ軸及びロール軸は、減衰したトレイルの挙動(damped trail behavior)によって制御され、昇降舵アクチュエータのうちの1つ以上、方向舵アクチュエータのうちの1つ以上、又はホイストアクチュエータによっては制御されない。
【0035】
給油ブーム110は、以下の条件が満たされていると判定された場合に、ゼロアクチュエータ状態モード206から第1アクチュエータ状態モード208に入ることを許容される。即ち、1)給油ブーム110が非飛行区分504にあり、2)ブーム空力操縦翼面112を作動状態にするコマンド(例えば、給油ブーム110の飛行させるコマンド)が発行されておらず、及び/又は、3)ケーブル損傷モニタがホイストケーブルに損傷がないことを示している場合に、第1アクチュエータ状態モードに入ることを許容される。さらに、給油ブーム110は、以下の条件が満たされていると判定された場合に、第2アクチュエータ状態モード210から第1アクチュエータ状態モード208に入ることを許容される。即ち、1)給油ブーム110が飛行区分502にあり、2)給油ブーム110の格納を命令するコマンド、又は、ラッチを閉じて給油ブーム110を格納するコマンドが発行されておらず、及び/又は、3)ケーブル損傷モニタがホイストケーブルに損傷がないことを示している場合に、許容される。給油ブーム110は、パッシブモード群204からアクティブモード群202への遷移を命令するコマンドが発行されている場合に、パッシブモード群204から第1アクチュエータ状態モード208に入ることを許容される。
【0036】
第2アクチュエータ状態モード210において、ブーム空力操縦翼面112は、停止状態にあり、ホイスト114は巻き上げモードにある。給油ブーム110のピッチ軸は、ホイストアクチュエータによって制御され、給油ブーム110のロール軸は、給油ブーム110の減衰したトレイルの挙動によって制御される(例えば、能動的には制御されない)。
【0037】
給油ブーム110は、以下の条件が満たされていると判定された場合に、第1アクチュエータ状態モード208から第2アクチュエータ状態モード210に入ることを許容される。即ち、1)給油ブーム110が飛行区分502にあり、2)昇降機アクチュエータが作動状態にないことを示しており、及び/又は、3)ホイスト114を巻き上げモードにするコマンド、又は、給油ブーム110をパッシブモード群204からアクティブモード群202に遷移させるコマンドが発行されていない場合に、第2アクチュエータ状態モードに入ることを許容される。
【0038】
第3及び第4のアクチュエータ状態モード212及び214は、パッシブモード群204のアクチュエータ状態である。パッシブモード群204は、給油ブーム110の不使用時に用いられるアクチュエータ状態である。ここに記載するように、給油ブーム110は、当該給油ブーム110が使用中であるか否かに依存して、アクティブモード群202とパッシブモード群204との間を遷移する。よって、給油ブーム110を使用するために作動状態にするコマンドが発行されると、給油ブーム110は、パッシブモード群204からアクティブモード群202に遷移する。
【0039】
第3アクチュエータ状態モード212において、ブーム空力操縦翼面112は、停止状態にあり、ホイスト114は引張モードにある。給油ブーム110のピッチ軸及びロール軸は、減衰したトレイルの挙動によって制御され、よって、能動的には制御されない。給油ブーム110は、パッシブモード群204にあるときに、以下の条件が満たされた場合に、第3アクチュエータ状態モード212に入る。即ち、1)給油ブーム110を収容状態(faired state)にするコマンドが発行されており、及び/又は、2)給油ブーム110をアクティブモード群202からパッシブモード群204に遷移させる命令が発行されている場合に、第3アクチュエータ状態モードに入る。
【0040】
第4アクチュエータ状態モード214において、ブーム空力操縦翼面112は、停止状態にあり、ホイスト114は、ブロックモードにある。給油ブーム110は、パッシブモード群204にあるときに、以下の条件が満たされた場合に、第4アクチュエータ状態モード214に入る。即ち、1)給油ブーム110が第3アクチュエータ状態モード212に入ってから、閾値時間(例えば20秒以下)の間継続して給油ブーム110が収容状態にあり、2)給油ブーム110をブロックモードにするコマンドが発行されており、及び/又は、3)給油ブーム110をアクティブモード群202からパッシブモード群204に遷移させるコマンドが発行されている場合に、第4アクチュエータ状態モードに入る。
【0041】
ここで、適切なアクチュエータ状態モードを判定するための様々な技術を説明する。図2Bは、いくつかの実施例における給油ブームの状態を決定する技術を示すフローチャートである。図2Bに示す技術は、給油ブーム110の動作中において、給油ブーム110の適切なアクチュエータ状態を検知するために用いられる。
【0042】
様々な実施例において、図2Bに記載の技術では、先ず、ブロック230において現在のアクチュエータ状態が定められる。ブロック230において、給油ブーム110の初期状態が決定される。よって、例えば、ブロック230において、アクチュエータ状態のリセット(例えば、コントローラ150のリセットに起因する)が検出されれば、これに応答して初期化プロセスが実行されて、適切なモード及び/又はアクチュエータ状態が選択される。また、ブロック230においてアクティブモード群202からパッシブモード群204への遷移、又はその逆の遷移が検出されれば、図2Bに詳細を示すように、適切なアクチュエータ状態が選択される。
【0043】
ブロック230における初期状態の決定後、ブロック232において、給油ブーム110が、当該給油ブームが格納又は収容状態にあることを示しているかが判定される。給油ブーム110が格納又は収容状態にある場合は、本技術は、ブロック234に進み、パッシブモード群204が選択される。その他の場合は、本技術はブロック238に進み、アクティブモード群202が選択される。
【0044】
ブロック234において、給油ブーム110がリセットされたか判定される。リセットされている場合は、特定の実施例においては、給油ブーム110は、第4アクチュエータ状態モード214を選択する。その他の場合は、ブロック236において選択されるホイストアクチュエータの状態が、適切なアクチュエータ状態を選択するために用いられる。よって、例えば、ホイスト114が停止状態(例えば、ブロックモードにある)場合は、給油ブーム110は、第4アクチュエータ状態モード214において初期化される。その他の場合、特定の実施例では、給油ブーム110は、第3アクチュエータ状態モード212において初期化される。
【0045】
ブロック232においてアクティブモード群202が選択された場合は、次いで、ブロック238において、飛行状態(flight conditions)が決定される。特定の実施例において、そのような飛行状態として、飛行区分の状況、ホイストアクチュエータの状況、昇降舵アクチュエータの状況、ケーブル損傷モニタの読み取り値、及び/又は、アクチュエータ状態を決定するために用いられる他のセンサ読み取り値及び要素が含まれる。このような様々な読み取り値に基づいて、適切なアクチュエータ状態が選択される。したがって、条件242(例えば、ホイスト114が引張モードにあるとの条件、及び/又は、ケーブル損傷モニタがケーブルに損傷がないことを示しているとの条件)が成立している場合は、ゼロアクチュエータ状態モード206が選択される。
【0046】
その他の場合は、条件244(例えば、ホイスト114が引張モードにないとの条件、或いは、ケーブル損傷モニタがホイスト114のケーブルの損傷を示しているとの条件)が成立していると判定された場合は、本技術はブロック240に進む。ブロック240において、ホイストアクチュエータが作動状態にあるかが判定される。ホイストアクチュエータが作動状態にある場合は、第2アクチュエータ状態モード210が選択される。その他の場合は、第1アクチュエータ状態モード208が選択される。
<給油ブームの操作技術>
【0047】
図3は、いくつかの実施例における給油ブームを使用する技術を示すフローチャートである。図3は、初期状態として格納状態にある給油ブームを展張する技術を示している。図3のブロック302において、給油ブームが格納位置にある状態から開始する。格納位置にある間は、特定の実施例においては、ホイストは、ブロックモードにあり、ブームは、航空機の胴体に掛止されている。よって、ホイストアクチュエータは、第4アクチュエータ状態モードにある。ブロック302において、ブロックモードにある間に、給油ブームを展張するコマンドが受け取られる。
【0048】
当該コマンドが受け取られると、ブロック304において、ホイストでブームをラッチから引き上げる。このとき、ホイストアクチュエータは、第2アクチュエータ状態モードにある。次いで、ブロック306において、ホイストは、引き続き第2アクチュエータ状態モードにあって、給油ブームを下降させる。ブロック304及び306において、ブーム空力操縦翼面は作動状態になく、給油ブームは、飛行している状態にない。
【0049】
ホイストで給油ブームを下降させる間に、ブロック308において、ホイストの状態モードを遷移させる条件が満たされているかが判定される。特定の実施例において、この条件には、閾値動圧より大きい動圧(対気速度が閾値対気速度より速いことを示す)が測定されること、ブーム給油ブームが十分に下降されており、ピッチ角が閾値ピッチ角を超えていると判定されること、及び、ケーブル速度が閾値ケーブル速度より遅いと判定されること、が含まれる。これらの遷移条件は、給油ブームの状態が、非飛行区分から、給油ブームを飛ばすのに適した飛行区分に遷移したかを判定するために用いられる。
【0050】
これらの条件が満たされていないと判定された場合は、本技術はブロック306に戻り、ホイストは、引き続き給油ブームを下降させる。条件が満たされたと判定された場合は、本技術は、ブロック310に進む。ブロック310において、ホイストアクチュエータの状態モードが変更される。特定の実施例において、ホイストアクチュエータは、第1アクチュエータ状態モードに変更され、ホイストアクチュエータは、引張モードに設定される。次いで、クラッチを動作させて、給油ブームを飛行させることが許容されるように、ホイストの動作を変更する(例えば、特定の実施例において、給油ブームを飛行させる前に、ホイストアクチュエータを引張モードに設定する必要がある)。
【0051】
ホイストが引張モードに設定されれば、ブロック312において、ブーム空力操縦翼面が作動状態される。ブーム空力操縦翼面を作動状態にすることは、例えば、給油ブームにおける1つ又は複数の翼及び他の空力操縦翼面を係合させることを含む。空力操縦翼面が作動状態にあれば、これらの翼面は、飛行する給油ブームを押し上げる揚力を発生させる。ブーム空力操縦翼面を作動状態にする際に、ホイストアクチュエータは、適切な状態が検出されたときに、第1アクチュエータ状態モードからゼロアクチュエータ状態モードに切り替えられる。次いで、ブロック314において、給油ブームが飛ばされ、給油ブームは、ホイストではなく、ブーム空力操縦翼面を制御することによって制御される。
【0052】
図4は、いくつかの実施例における給油ブームを使用する他の技術を示すフローチャートである。図4は、初期状態として展張状態にある給油ブームを格納する技術を示している。ブロック402において、給油ブームは、展張状態にある。特定の実施例において、給油ブームは、展張されて、他機に燃料を供給する。給油ブームが展張されている場合、ブーム空力操縦翼面は、作動状態にあって、給油ブームを制御し、飛行させるための揚力を発生させる。給油ブームがこの状態にあるときは、ホイストは、給油ブームの制御には用いられない。
【0053】
ブロック404において、例えばブーム空力操縦翼面によって生成された揚力によって、給油ブームを自機の胴体に近づけるように飛ばす。特定の実施例においては、給油ブームを胴体に近づけるように飛ばすことは、不使用時の給油ブームを格納するために行われる。給油ブームを飛ばす場合、ホイストアクチュエータは、ゼロアクチュエータ状態モードにある。
【0054】
給油ブームを胴体に近づけるように飛ばす場合、ブロック406において、給油ブームの制御をホイストによる制御に移行させる(例えば、給油ブームを胴体に向けて飛ばす代わりに、ホイストで給油ブームを引き上げる状態に遷移させる)ための条件が満たされているか判定される。特定の実施例において、この条件には、閾値動圧より小さい動圧(対気速度が閾値対気速度より遅いことを示す)が測定されること、及び/又は、給油ブームが胴体に十分に近い高さまで飛んできており、ブームピッチ角が閾値ピッチ角より小さくなっていると判定されること、が含まれる。よって、これらの遷移条件は、給油ブームの状態が飛行区分から、ホイストで給油ブームを引き上げる必要がある非飛行区分に遷移したか判定するために用いられる。
【0055】
これらの条件が満たされていないと判定された場合、本技術はブロック404に戻り、引き続きブーム空力操縦翼面によって給油ブームを胴体に近づけるように飛ばす。条件が満たされていると判定された場合、本技術は、ブロック408及び410に進む。
【0056】
ブロック408において、ブーム空力操縦翼面は停止状態にされる。ブーム空力操縦翼面を停止状態にすることは、いくつかの実施例において、ブーム空力操縦翼面を停止状態にすること、或いは、ブーム空力操縦翼面の構成を変えて、発生させる揚力を小さくする又はゼロにすることを含む。
【0057】
ブロック410において、ホイストアクチュエータのアクチュエータ状態モードが変更される。様々な実施例において、アクチュエータ状態モードは、先ず、第1アクチュエータ状態モードに変更され、ホイストアクチュエータは、引張モードに設定される。特定の追加の実施例では、第1アクチュエータ状態モードは、本明細書に説明したようにハンドシェークモードである。アクチュエータ状態モードが第1アクチュエータ状態モードに変更され、ホイストアクチュエータのクラッチの操作が許容された後、アクチュエータ状態モードを第2アクチュエータ状態モードに変更し、ホイストアクチュエータを巻き上げモードに設定する。他の実施例では、ホイストアクチュエータは、ブロック412において、第2アクチュエータ状態モードに変更され、よって、巻き上げモードに設定される。
【0058】
ブロック412において、ホイストアクチュエータが第2アクチュエータ状態モード且つ巻き上げモードにある間に、給油ブームをホイストで引き上げる。次いで、給油ブームは、胴体の高さまで引き上げられ、胴体近傍に格納される。給油ブームが格納されたことが示されれば、ホイストを、第3アクチュエータ状態モードに設定し、よって、引張モードに設定する。閾値時間が経過したら、ブロック414において、給油ブームは格納済みであると判定し、ホイストを第4アクチュエータ状態モードに設定し、よってブロックモードに設定する。
【0059】
図3及び図4に示す技術によれば、特定の条件(例えば、特定の対気速度)においては、給油ブームの展張及び格納を、給油ブームのホイストによって実行することが可能である。本明細書に記載するように、給油ブームの展張及び格納の特定の段階をホイストで補助することができる。給油ブームが完全に展張され、動作している状態では、給油ブームは、ブーム空力操縦翼面を用いて制御される。
<ビークルの実施例>
【0060】
上述のシステム、装置、及び方法は、航空機及び航空宇宙産業を参照して説明されたが、本開示の実施例は、例えば、自動車、鉄道、他の機械及びビークルなどに関連にも適用可能であることは理解されよう。したがって、図6Aに示す航空機の製造及び使用方法600、及び、図6Bに示すビークル100に関連して本開示の実施例を説明するが、これら実施例は、そのような他の関連にも適用可能である。
【0061】
図6Aは、いくつかの実施例における航空機の製造及び使用方法の実施例を示すフローチャートである。いくつかの実施例において、方法600は、生産開始前の工程として、ビークル100(例えば、図1に示す航空機)の仕様決定及び設計604、及び材料調達606を含む。生産中は、ビークル100の部品及び小組立品(subassembly)の製造608及びシステム統合610が行われる。その後、ビークル100は、認証及び納品612を経て、就航614に入る。就航の期間中は、ビークル100は、定例の整備及び保守616のスケジュールに組み込まれる(この工程は、変更、再構成、改装なども含みうる)。
【0062】
特定の実施例において、方法600の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレータは、航空機メーカ及び主要システム(majority-system)下請業者をいくつ含んでいてもよい。第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレータは、特定の実施例においては、航空会社、リース会社、軍事団体(military entity)、サービス組織(service organization)などであってもよい。
【0063】
図6Bは、いくつかの実施例における給油ブームを備えるビークルを示すブロック図である。図6Bに示す様に、方法600によって製造されるビークル100(例えば、航空機)は、複数のシステム620及び内装622を備える機体618を含む。ハイレベルシステム620は、例えば、駆動系624、電気系626、油圧系628及び環境系630のうちの1つ又は複数を含む。様々な実施例において、ビークル100は、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。航空宇宙産業の例を説明したが、本発明の原理は、例えば自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
<その他の実施例>
【0064】
本開示は、さらに、以下の付記による実施例も包含する。
【0065】
付記1.航空機100であって、
給油ブーム110及びコントローラ150を備え、
前記給油ブームは、
給油ブーム構造116と、
ホイスト114と、
ブーム空力操縦翼面112と、を含み、
前記コントローラは、
前記ホイスト114が第2アクチュエータ状態モード210にある間に、前記給油ブーム構造116を前記ホイスト114で、前記ブーム空力操縦翼面112が停止状態にある間に下降させること306と、
第1遷移条件が満たされたことを判定すること308と、
前記ホイスト114を前記第2アクチュエータ状態モード210から第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること310と、
前記ブーム空力操縦翼面112を作動状態にすること312と、を含む処理を前記給油ブーム110に実行させるよう構成されている、航空機。
【0066】
付記2.前記処理は、さらに、前記ブーム空力操縦翼面112を作動状態にすること312の後に、前記給油ブーム110を飛ばすこと314を含む、付記1に記載の航空機100。
【0067】
付記3.前記給油ブーム110を飛ばすこと314は、前記ホイスト114をゼロアクチュエータ状態モード206に切り替えることを含む、付記2に記載の航空機100。
【0068】
付記4.前記給油ブーム110を飛ばすこと314は、受け取ったユーザ命令に基づくものである、付記2~3に記載の航空機100。
【0069】
付記5.前記第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること310は、前記第2アクチュエータ状態モード210から前記ゼロアクチュエータ状態モード206への遷移が可能になるように、前記ホイスト114のクラッチを操作することを含む、付記3に記載の航空機100。
【0070】
付記6.前記第1遷移条件は、
ブームピッチ角166が第1閾値角度よりも大きいこと、及び、
ホイストケーブル速度が第1閾値速度よりも遅いこと、を含む、付記1~5に記載の航空機100。
【0071】
付記7.前記ブームピッチ角166は、ニュートラル角160を基準にして決定される、付記6に記載の航空機100。
【0072】
付記8.前記第1遷移条件は、さらに、航空機動圧が、第1閾値動圧よりも大きいことを含む、付記6~7に記載の航空機100。
【0073】
付記9.前記航空機動圧を測定するよう構成された動圧センサ152をさらに含む、付記8に記載の航空機100。
【0074】
付記10.前記処理は、さらに、前記給油ブーム構造116を前記ホイスト114で格納位置から、引き上げること304をさらに含む、付記1~9に記載の航空機100。
【0075】
付記11.前記給油ブーム構造116を引き上げること304は、前記ホイスト114が第4アクチュエータ状態モード214にあるときに行われる、付記10に記載の航空機100。
【0076】
付記12.前記処理は、前記航空機100の飛行中に実行される、付記1~11に記載の航空機100。
【0077】
付記13.前記処理は、さらに、
前記ホイスト114がゼロアクチュエータ状態モード206にある間に、前記航空機100の胴体120に近づけるように前記給油ブーム110を飛ばすこと404と、
第2遷移条件が満たされたことを判定すること406と、
前記ホイスト114を前記ゼロアクチュエータ状態モード206から第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること410と、
前記給油ブーム構造116を前記ホイスト114で引き上げること412と、を含む、付記1~12に記載の航空機100。
【0078】
付記14.前記給油ブーム構造116を引き上げること412は、前記ホイスト114を前記第1アクチュエータ状態モード208から第2アクチュエータ状態モード210に切り替えることを含む、付記13に記載の航空機100。
【0079】
付記15.前記第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること410は、前記ゼロアクチュエータ状態モード206から前記第2アクチュエータ状態モード210への遷移が可能になるように、前記ホイスト114のクラッチを操作することを含む、付記14に記載の航空機100。
【0080】
付記16.前記第2遷移条件は、ブームピッチ角166が第2閾値角度より小さいことを含む、付記13~15に記載の航空機100。
【0081】
付記17.前記第1遷移条件は、さらに、航空機動圧が、第2閾値動圧よりも小さいことを含む、付記16に記載の航空機100。
【0082】
付記18.前記処理は、さらに、前記ブーム空力操縦翼面112を停止状態にすること408を含む、付記13~17に記載の航空機100。
【0083】
付記19.前記処理は、さらに、前記給油ブーム110を格納すること414を含む、付記13~18に記載の航空機100。
【0084】
付記20.前記給油ブーム110を格納すること414は、前記ホイスト114が第4アクチュエータ状態モード214にあるときに行われる、付記19に記載の航空機100。
【0085】
付記21.給油ブーム110のホイスト114が第2アクチュエータ状態モード210にある間に、前記給油ブーム110の給油ブーム構造116を前記ホイスト114で、前記給油ブーム110のブーム空力操縦翼面112が停止状態にある間に下降させること306と、
第1遷移条件が満たされたことを判定すること308と、
前記ホイスト114を前記第2アクチュエータ状態モード210から第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること310と、
前記ブーム空力操縦翼面112を作動状態にすること312と、を含む方法。
【0086】
付記22.前記ブーム空力操縦翼面112を作動状態にすること312の後に、前記給油ブーム110を飛ばすこと314を含む、付記21に記載の方法。
【0087】
付記23.前記給油ブーム110を飛ばすこと314は、前記ホイスト114をゼロアクチュエータ状態モード206に切り替えることを含む、付記22に記載の方法。
【0088】
付記24.前記給油ブーム110を飛ばすこと314は、受け取ったユーザ命令に基づくものである、付記22~23に記載の方法。
【0089】
付記25.前記第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること310は、前記第2アクチュエータ状態モード210から前記ゼロアクチュエータ状態モード206への遷移が可能になるように、前記ホイスト114のクラッチを操作することを含む、付記23~24に記載の方法。
【0090】
付記26.前記第1遷移条件は、
ブームピッチ角166が第1閾値角度よりも大きいこと、及び、
ホイストケーブル速度が第1閾値速度よりも遅いこと、を含む、付記21~25に記載の方法。
【0091】
付記27.前記ブームピッチ角166は、ニュートラル角160を基準にして決定される、付記26に記載の方法。
【0092】
付記28.前記第1遷移条件は、さらに、
航空機動圧が、第1閾値動圧よりも大きいことを含む、付記26~27に記載の方法。
【0093】
付記29.前記航空機動圧は、動圧センサ152によって測定される、付記28に記載の方法。
【0094】
付記30.前記給油ブーム構造116を格納位置から、前記ホイスト114で引き上げること304をさらに含み、前記給油ブーム構造116を引き上げること304は、前記ホイスト114が第4アクチュエータ状態モード214にあるときに行われる、付記21~29に記載の方法。
【0095】
付記31.給油ブーム110のホイスト114がゼロアクチュエータ状態モード206にある間に、航空機100の胴体120に近づけるように前記給油ブーム110を飛ばすこと404と、
第2遷移条件が満たされたことを判定すること406と、
前記ホイスト114を前記ゼロアクチュエータ状態モード206から第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること410と、
前記給油ブーム110の給油ブーム構造116を前記ホイスト114で引き上げること412と、を含む方法。
【0096】
付記32.前記給油ブーム構造116を引き上げること412は、前記ホイスト114を前記第1アクチュエータ状態モード208から第2アクチュエータ状態モード210に切り替えることを含む、付記31に記載の方法。
【0097】
付記33.前記第1アクチュエータ状態モード208に切り替えること410は、前記ゼロアクチュエータ状態モード206から前記第2アクチュエータ状態モード210への遷移が可能になるように、前記ホイスト114のクラッチを操作することを含む、付記32に記載の方法。
【0098】
付記34.前記第2遷移条件は、ブームピッチ角166が第2閾値角度より小さいことを含む、付記31~33に記載の方法。
【0099】
付記35.前記第2遷移条件は、さらに、航空機動圧が第2閾値動圧よりも小さいことを含む、付記34に記載の方法。
【0100】
付記36.前記給油ブーム110のブーム空力操縦翼面112を停止状態にすること408をさらに含む、付記31~36に記載の方法。
【0101】
付記37.前記給油ブーム110を格納すること414をさらに含む、付記31~36に記載の方法。
【0102】
付記38.前記給油ブーム110を格納すること414は、前記ホイスト114が第4アクチュエータ状態モード214にあるときに行われる、
付記37に記載の方法。
<おわりに>
【0103】
上述の概念を詳細に説明したが、これは、理解を明確にすることを目的とするものであって、添付の請求の範囲から逸脱することなく、変更及び変形が可能であることは理解されよう。プロセス、システム、及び方法を実施するための代替的な方法は、他にも多数あることは理解されよう。したがって、本開示の実施例は、あくまでも例示であると理解されるべきであり、限定を意図するものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B