(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】ホイールローダ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20250612BHJP
【FI】
E02F9/20 M
(21)【出願番号】P 2021209314
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 庸子
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】堤 芳明
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066310(JP,A)
【文献】特開2021-143498(JP,A)
【文献】特開2021-042523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して回動可能に連結されたリフトアームと、
前記リフトアームを上方に回動させるリフト上げ動作と前記リフトアームを下方に回動させるリフト下げ動作とを行うリフトシリンダと、
前記リフトアームに対して回動可能に連結されたバケットと、
前記バケットを上方に回動させるチルト動作と前記バケットを下方に回動させるダンプ動作とを行うバケットシリンダと、
前記リフトシリンダの圧力を計測するリフト圧力センサと、
前記バケットシリンダの圧力を計測するバケット圧力センサと、
前記リフト圧力センサ及び前記バケット圧力センサの各計測値から前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ演算し、演算された前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力に基づいて前記バケットの積載荷重を演算する荷重演算装置と、を備え、
前記荷重演算装置は、前記バケット
に積荷を積載した積載状態として
、前記バケットの開口部を上向きにしたフルチルトの姿勢を保ち、予め定められた積込開始高さに位置する前記バケットに対して前記ダンプ動作及び前記リフト上げ動作を行
っている最中である積込作業中の前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力から、前記バケットを空荷状態として
、前記フルチルトの姿勢を保ち、前記積込開始高さに位置する前記バケットに対して前記ダンプ動作及び前記リフト上げ動作を行った場合の前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ差し引いた差分値に基づいて、前記積込作業中における前記積載荷重を演算する
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
前記バケットと前記バケットシリンダとを連結し、前記バケットシリンダの推力を前記バケットに伝達するベルクランクと、
前記車体に対して前記リフトアームが成すリフト角を計測するリフト角センサと、
前記リフトアームに対して前記ベルクランクが成すベルクランク角を計測するベルクランク角センサと、を更に備え、
前記荷重演算装置は、
前記バケットを前記空荷状態として
、前記フルチルトの姿勢を保ち、前記積込開始高さに位置する前記バケットに対して前記ダンプ動作及び前記リフト上げ動作を行った場合に変化する前記リフト角及び前記ベルクランク角に応じて前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ演算し、記憶する空荷時シリンダ推力演算部と
、
前記積込作業中に変化する前記リフト角及び前記ベルクランク角に応じて前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ演算し、演算された前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力から、前記空荷時シリンダ推力演算部に記憶された前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ差し引くことによって前記差分値を演算し、演算された前記差分値に基づいて、前記積込作業中における前記積載荷重を演算する積込中荷重演算部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のホイールローダ。
【請求項3】
前記荷重演算装置は、
前記バケットを前記積載状態として、前記フルチルトの姿勢を保ち、前記積込開始高さで静止させた状態である前記積込作業の開始前の状態において前記リフトシリンダの推力を演算し、演算された前記リフトシリンダの推力から、前記空荷時シリンダ推力演算部に記憶された前記リフトシリンダの推力を差し引いた差分値に基づいて、前記積込作業の開始前の状態における前記積載荷重を演算する積込前荷重演算部と、
前記積込作業の開始前の状態における前記積載荷重に基づいて、前記積込作業中における前記積載荷重を補正する荷重補正部と、を更に有する
ことを特徴とする請求項2に記載のホイールローダ。
【請求項4】
前記積込中荷重演算部は、
前記積載状態であり、前記フルチルトの姿勢を保ち、前記積込開始高さに位置する前記バケットに対して前記ダンプ動作及び前記リフト上げ動作を
開始後の状態であって前記バケットから
前記積荷が放出される前の状態である前記積込作業の開始直後の状態において前記積載荷重を演算し、
前記荷重補正部は、前記積込作業の開始前の状態における前記積載荷重と、前記積込作業の開始直後の状態における前記積載荷重との比に基づいて、前記積込作業中における前記積載荷重を補正する
ことを特徴とする請求項3に記載のホイールローダ。
【請求項5】
前記空荷時シリンダ推力演算部は、前記空荷状態の前記バケットに対する前記ダンプ動作中に、前記リフト圧力センサ及び前記バケット圧力センサの前記各計測値を取得し、取得された前記各計測値から前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力を演算し、記憶する
ことを特徴とする請求項
3に記載のホイールローダ。
【請求項6】
前記リフトシリンダ及び前記バケットシリンダの各動作を制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記積込作業中における前記積載荷重が
、前記積込作業の終了時に前記バケット内に残るべき前記積荷の荷重を示す目標積載荷重に到達した場合、
前記ダンプ動作を停止して前記チルト動作を行い、当該チルト動作が行われた後に、当該チルト動作において前記バケットが回動した角度の大きさよりも小さ
く前記バケット内の前記積荷が放出されない程度の角度で前記バケットを回動させる前記ダンプ動作
を行い、当該ダンプ動作及び前記リフト上げ動作を停止することによって前記積込作業を終了し、
前記積込中荷重演算部は、前記積込作業の終了直前
に行われる前記積荷が放出されない程度の前記角度で前記バケットを回動させる前記ダンプ動作中、又は、
当該ダンプ動作及び前記リフト上げ動作が停止した時の状態である前記積込作業の終了時の状態において
、前記積載荷重を演算する
ことを特徴とする請求項5に記載のホイールローダ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記積込作業中における前記リフト上げ動作の速度を、
前記積込作業の開始時における前記リフトシリンダのストロークが前記積込作業の終了時において前記リフトシリンダの最大ストローク以下のストロークまで単調増加するような一定速
度に制御する
ことを特徴とする請求項6に記載のホイールローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダからダンプトラック等の被積込機械への積込作業の際、被積込機械の積載制限を守るために、適切な積込重量での積込が必要となる。ホイールローダには、バケット内の積載荷重を演算する装置が設けられることがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のホイールローダは、バケットの空荷状態においてリフトアームと車体とを連結するヒンジピン周りのモーメントである空荷モーメントを演算し、バケットの積載状態において当該ヒンジピン周りのモーメントである積荷モーメントを演算する。特許文献1に記載のホイールローダは、空荷モーメントと積荷モーメントとの差を、バケットの重心位置と当該ヒンジピンとの水平距離で除算して、バケットの積載荷重を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールローダでは、積込作業中のようにバケットが回動して重心位置が変化する場合には、積載荷重の演算誤差が大きくなる。特許文献1に記載のホイールローダを、積込作業中におけるバケットの積載荷重を演算する場合に適用することは難しい。ホイールローダには、被積込機械の積載制限を守るために、バケット内の積荷の一部だけを正確な積込重量で被積込機械に積み込まなければならない場合がある。バケット内の積荷の一部だけを正確な積込重量で被積込機械に積み込むには、オペレータの熟練した技量が求められる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、積込作業中におけるバケットの積載荷重を正確に演算することによって、任意の積込重量での積込作業を正確且つ容易に行うことが可能なホイールローダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のホイールローダは、車体に対して回動可能に連結されたリフトアームと、前記リフトアームを上方に回動させるリフト上げ動作と前記リフトアームを下方に回動させるリフト下げ動作とを行うリフトシリンダと、前記リフトアームに対して回動可能に連結されたバケットと、前記バケットを上方に回動させるチルト動作と前記バケットを下方に回動させるダンプ動作とを行うバケットシリンダと、前記リフトシリンダの圧力を計測するリフト圧力センサと、前記バケットシリンダの圧力を計測するバケット圧力センサと、前記リフト圧力センサ及び前記バケット圧力センサの各計測値から前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ演算し、演算された前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力に基づいて前記バケットの積載荷重を演算する荷重演算装置と、を備え、前記荷重演算装置は、前記バケットを積載状態として前記ダンプ動作及び前記リフト上げ動作を行う積込作業中の前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力から、前記バケットを空荷状態として前記積込作業中と同じ動作を行った場合の前記リフトシリンダの推力及び前記バケットシリンダの推力をそれぞれ差し引いた差分値に基づいて、前記積込作業中における前記積載荷重を演算する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積込作業中におけるバケットの積載荷重を正確に演算することによって、任意の積込重量での積込作業を正確且つ容易に行うことが可能なホイールローダを提供することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のホイールローダの構成を示す図。
【
図3】
図1に示すホイールローダの機能的構成を示すブロック図。
【
図4】
図3に示す空荷時シリンダ推力演算部によって演算されるリフトシリンダの推力を説明する図。
【
図5】
図3に示す空荷時シリンダ推力演算部によって演算されるバケットシリンダの推力を説明する図。
【
図7】積込作業中におけるリフトシリンダ及びバケットシリンダの各ストロークの推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態のホイールローダ1の構成を示す図である。
図2は、リフト角及びベルクランク角を説明する図である。
【0012】
ホイールローダ1は、バケット3により掘削した土砂等の積荷を、ダンプトラック等の被積込機械に積み込む積込作業を行う建設機械である。ホイールローダ1のフロントボディ11及びリアボディ12の下部には、不整地や傾斜地を走行可能な車輪4が設けられる。ホイールローダ1のリアボディ12の上部には、運転室5が設けられる。運転室5内には、オペレータにより操作される操作装置が設けられる。操作装置は、例えば、車輪4の操舵角を操作するステアリングホイール、リフトアーム2及びバケット3の回動を操作する操作レバー、積込作業をホイールローダ1に半自動で実行させるためのスイッチである半自動積込ボタン28(
図3)、被積込機械への積込重量の目標値(以下「目標積込重量」とも称する)を入力するための目標積込重量入力部27(
図3)等である。リアボディ12の運転室5より後部には、エンジン室6が設けられる。エンジン室6には、エンジン21や油圧駆動のメインポンプ22等が設けられる。
【0013】
ホイールローダ1のフロントボディ11には、フロントボディ11の前部から前方向に延びる左右一対のリフトアーム2が上下方向に回動可能に連結されている。リフトアーム2の中間部とフロントボディ11とは、リフトシリンダ7によって連結されている。リフトシリンダ7のキャップ室(ボトム室)に圧油が供給されると、ロッド7aのストロークが伸長してリフトアーム2が上方向に回動する(以下「リフト上げ動作」とも称する)。リフトシリンダ7のロッド室に圧油(作動油)が供給されると、ロッド7aのストロークが縮退してリフトアーム2が下方向に回動する(以下「リフト下げ動作」とも称する)。
【0014】
リフトアーム2の先端部には、バケット3が回動可能に連結されている。バケット3には、バケットリンク10を介してベルクランク9が連結されている。ベルクランク9は、フロントボディ11の前部から前方向に延びるバケットシリンダ8に連結されている。ベルクランク9は、バケットリンク10を介して、バケット3とバケットシリンダ8とを連結し、バケットシリンダ8の推力をバケット3に伝達する。バケットシリンダ8のキャップ室(ボトム室)に圧油が供給されると、ロッド8aのストロークが伸長してバケット3が上方向に回動する(以下「チルト動作」とも称する)。バケットシリンダ8のロッド室に圧油が供給されると、ロッド8aのストロークが縮退してバケット3が下方向に回動する(以下「ダンプ動作」とも称する)。リフトアーム2及びバケット3は、ホイールローダ1の作業装置を構成する。
【0015】
リフトアーム2とフロントボディ11との間には、リフト角センサ13が設けられる。リフト角センサ13は、フロントボディ11に対してリフトアーム2が成すリフト角(θl)を計測する。リフト角は、リフトアーム2の基端部とフロントボディ11とを連結するヒンジピン2aとリフトアーム2の先端部とバケット3とを連結するヒンジピン2bとを結ぶ線分が、ヒンジピン2aの周りに回動した角度として定義され得る。リフト角は、
図2に示すようなロッド7aが縮退したリフトアーム2の回動前の状態をゼロ度とし、リフトアーム2が上方向に回動する方向を正として定義され得る。
【0016】
リフトアーム2とベルクランク9との間には、ベルクランク角センサ14が設けられる。ベルクランク角センサ14は、リフトアーム2に対してベルクランク9が成すベルクランク角(θb)を計測する。ベルクランク角は、バケットシリンダ8のロッド8aとベルクランク9の基端部とを連結するヒンジピン8bと、リフトアーム2の中間部とベルクランク9の中間部とを連結するヒンジピン2cを結ぶ線分が、ヒンジピン2cの周りに回動した角度として定義され得る。ベルクランク角は、
図2に示すようなベルクランク9が直立する状態をゼロ度とし、ベルクランク9が反時計回りに回動する方向を正として定義され得る。
【0017】
図3は、
図1に示すホイールローダ1の機能的構成を示すブロック図である。
図3において、細い実線は電気信号ライン、太い実線は圧油ライン、破線はパイロットラインを示している。
図4は、
図3に示す空荷時シリンダ推力演算部35によって演算されるリフトシリンダ7の推力を説明する図である。
図5は、
図3に示す空荷時シリンダ推力演算部35によって演算されるバケットシリンダ8の推力を説明する図である。
図6は、チルト角αt及びダンプ角αdを説明する図である。
【0018】
ホイールローダ1は、リフトシリンダ7の圧力を計測するリフト圧力センサ25と、バケットシリンダ8の圧力を計測するバケット圧力センサ26とを備える。リフト圧力センサ25は、リフトシリンダ7のキャップ室の圧力を計測するキャップ側センサ25aと、リフトシリンダ7のロッド室の圧力を計測するロッド側センサ25bとによって構成されてもよい。リフト圧力センサ25の計測値は、キャップ側センサ25a及びロッド側センサ25bの各計測値であってもよい。バケット圧力センサ26は、バケットシリンダ8のキャップ室の圧力を計測するキャップ側センサ26aと、バケットシリンダ8のロッド室の圧力を計測するロッド側センサ26bとによって構成されてもよい。バケット圧力センサ26の計測値は、キャップ側センサ26a及びロッド側センサ26bの各計測値であってもよい。
【0019】
ホイールローダ1は、プロセッサ及びメモリを含んで構成され、ホイールローダ1の各種機能を実現する演算制御装置30を備える。演算制御装置30は、オペレータによる半自動積込ボタン28の押下を契機として、作業装置に積込作業を半自動で行わせる処理(以下「半自動積込処理」とも称する)を実行する。具体的には、演算制御装置30は、半自動積込ボタン28が1回目に押下されると積込作業を開始する前の準備を自動的に行い、半自動積込ボタン28が2回目に押下されると積込作業を自動的に開始し、被積込機械への積荷の積込重量が目標積込重量に到達すると、積込作業を自動的に終了する。ホイールローダ1は、積込作業を開始する前の準備として、掘削された積荷をバケット3に積載した状態でバケットシリンダ8を伸長させてバケット3の開口部を上向きにしたフルチルトの姿勢から、被積込機械の高さに応じて予め定められた積込作業を開始する高さ(以下「積込開始高さ」)にバケット3を上昇させて静止させる。そして、ホイールローダ1は、積込作業を開始すると、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3に対して、ダンプ動作及びリフト上げ動作を行う。
【0020】
演算制御装置30には、リフト圧力センサ25及びバケット圧力センサ26の各計測値と、リフト角センサ13及びベルクランク角センサ14の各計測値と、目標積込重量入力部27に入力された目標積込重量と、半自動積込ボタン28の押下を示す信号とが入力される。
【0021】
演算制御装置30は、上記の各計測値と半自動積込ボタン28からの信号とに基づいてバケット3の積載荷重を演算する荷重演算装置32と、バケット3の積載荷重と目標積込重量と半自動積込ボタン28からの信号とに基づいてリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各動作を制御する制御装置31とを備える。
【0022】
制御装置31は、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各目標パイロット圧を演算し、当該目標パイロット圧を達成する制御信号をパイロットバルブ24に出力することによって、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各動作を制御する。パイロットバルブ24は、目標パイロット圧に応じて、パイロットポンプの吐出流量を調整してパイロット圧を調整し、コントロールバルブ23を作動させる。コントロールバルブ23は、パイロット圧に応じた開度で開き、エンジン21により駆動するメインポンプ22から吐出された圧油を、リフトシリンダ7のキャップ室及びロッド室、並びに、バケットシリンダ8のキャップ室及びロッド室に供給する。これにより、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各ストロークが変化し、ホイールローダ1の作業装置を構成するリフトアーム2及びバケット3の各動作が制御される。
【0023】
荷重演算装置32は、リフト圧力センサ25及びバケット圧力センサ26の各計測値からリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力を演算し、演算された各推力に基づいて、バケット3の積載荷重を演算する。特に、荷重演算装置32は、バケット3が積載状態である積込作業中の当該各推力から、バケット3を空荷状態として積込作業中と同じ動作を行った場合の当該各推力を差し引いた差分値に基づいて、積込作業中のバケット3の積載荷重を演算する。なお、リフトシリンダ7の推力は、リフト圧力センサ25のキャップ側センサ25aの計測値とキャップ室の受圧面積との積と、ロッド側センサ25bの計測値とロッド室の受圧面積との積との差から演算され得る。バケットシリンダ8の推力も、リフトシリンダ7の推力と同様に演算され得る。
【0024】
荷重演算装置32は、積込前荷重演算部33と、積込中荷重演算部34と、空荷時シリンダ推力演算部35と、荷重補正部36と、荷重出力部37とを備える。
【0025】
積込前荷重演算部33は、半自動積込ボタン28が1回目に押下されると、ホイールローダ1の積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重を演算する。積込作業の開始前の状態とは、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3に対して、ダンプ動作及びリフト上げ動作を行う前の状態である。すなわち、積込作業の開始前の状態とは、例えば、バケット3に積荷を積載した状態としてフルチルトの姿勢を保ったバケット3を、積込開始高さまで上昇させて静止させた状態である。この静止させた状態のバケット3では、一定ストロークのバケットシリンダ8によってフルチルトの姿勢を保ったまま積込開始高さに位置しており、バケット3の重心位置が変化せず、バケット3の積載荷重が一定である。
【0026】
積込前荷重演算部33は、積込作業の開始前の状態において、リフトシリンダ7の推力を演算する。そして、積込前荷重演算部33は、演算された推力から、バケット3を空荷状態として積込作業の開始前の状態と同じ状態にした場合に演算される推力を差し引いた差分値を演算する。そして、積込前荷重演算部33は、演算された差分値からリフトアーム2に作用するモーメントを演算し、演算されたモーメントをリフトアーム2の水平距離で除算する。これにより、積込前荷重演算部33は、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重を演算することができる。バケット3を空荷状態として積込作業の開始前の状態と同じ状態にした場合に演算されるリフトシリンダ7の推力は、空荷時シリンダ推力演算部35によって予め演算され記憶されている。
【0027】
なお、積込前荷重演算部33は、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重を、次のような手法を用いて演算することができる。すなわち、積込前荷重演算部33は、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ったバケット3を積込開始高さまで上昇している最中にバケット3の積載荷重を複数回演算し、その平均値を、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重とする。これにより、積込前荷重演算部33は、リフトシリンダ7の静止摩擦力の影響を低減することができるので、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重をより正確に演算することができる。
【0028】
積込中荷重演算部34は、半自動積込ボタン28が2回目に押下されると、ホイールローダ1の積込作業中におけるバケット3の積載荷重を演算する。積込作業中とは、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3に対して、ダンプ動作及びリフト上げ動作が行われている最中のことである。積込作業中では、バケット3は回動し、バケット3の重心位置は変化し、バケット3から積荷が放出されるので、バケット3の積載荷重は変化する。積込作業中では、リフト角センサ13により計測されたリフト角や、ベルクランク角センサ14により計測されたベルクランク角は変化する。
【0029】
積込中荷重演算部34は、積込作業中に変化するリフト角及びベルクランク角に応じてリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力を演算する。そして、積込中荷重演算部34は、演算された各推力から、バケット3を空荷状態として積込作業中と同じ動作を行った場合に演算される各推力を差し引いた各差分値を演算する。そして、積込中荷重演算部34は、演算された各差分値からリフトアーム2に作用するモーメントを演算し、演算されたモーメントをリフトアーム2の水平距離で除算する。これにより、積込中荷重演算部34は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重を演算することができる。バケット3を空荷状態として積込作業中と同じ動作を行った場合に演算されるリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力は、空荷時シリンダ推力演算部35によって予め演算され記憶されている。
【0030】
空荷時シリンダ推力演算部35は、バケット3を空荷状態として積込作業中と同じ動作を行った場合に変化するリフト角及びベルクランク角に応じてリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力を演算し、記憶する。また、空荷時シリンダ推力演算部35は、バケット3を空荷状態として積込作業の開始前の状態と同じ状態にした場合のリフトシリンダ7の推力を演算し、記憶する。空荷時シリンダ推力演算部35に記憶された各推力の一例が、
図4及び
図5に示されている。
図4及び
図5の各横軸は、ベルクランク角度を示す。
図4の縦軸は、空荷状態でのリフトシリンダ7の推力を示す。
図5の縦軸は、空荷状態でのバケットシリンダ8の推力を示す。
図4及び
図5の各推力は、リフト角に応じて複数のグラフとして描かれている。これにより、リフト角及びベルクランク角が決まると、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力が一義的に決まる。よって、空荷時シリンダ推力演算部35は、空荷状態で積込作業中と同じ動作を行った場合や、空荷状態で積込作業の開始前の状態と同じ状態にした場合において、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力を特定することができる。
【0031】
なお、空荷時シリンダ推力演算部35は、空荷状態での積込作業中と同じ動作を行った場合におけるリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力を、次のような手法を用いて演算することが好ましい。すなわち、空荷時シリンダ推力演算部35は、空荷状態でありフルチルトの姿勢を保ったバケット3を積込開始高さまで上昇させた後、ダンプ動作を行いながら、リフト圧力センサ25及びバケット圧力センサ26の各計測値を取得し、取得された各計測値から当該各推力を演算し、記憶する。次いで、空荷時シリンダ推力演算部35は、所定のリフト角だけリフト上げ動作を行い、ダンプ動作を行いながら、リフト圧力センサ25及びバケット圧力センサ26の各計測値を取得し、取得された各計測値から当該各推力を演算し、記憶する。これらを繰り返し行う。すなわち、空荷時シリンダ推力演算部35は、空荷状態のバケット3に対するダンプ動作中に、リフト圧力センサ25及びバケット圧力センサ26の各計測値を取得し、取得された各計測値から当該各推力を演算し、記憶する。
【0032】
リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8では、伸長後に停止した場合と縮退後に停止した場合において同じ位置で停止し、同じ負荷が与えられていたとしても、静止摩擦力の向きの影響により、キャップ室の圧力とロッド室の圧力とが異なることがある。空荷時シリンダ推力演算部35は、上記の手法を用いることにより、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の静止摩擦力の影響を、積込作業中と同様にすることができる。これにより、空荷時シリンダ推力演算部35は、空荷状態での積込作業中と同じ動作を行った場合におけるリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力をより正確に演算することができる。バケット3を空荷状態として積込作業の開始前の状態と同じ状態にした場合のリフトシリンダ7の推力を演算する場合も、上記の手法を用いることにより、リフトシリンダ7の推力をより正確に演算することができる。
【0033】
但し、積込中荷重演算部34による演算は、バケット3の重心位置が変化しながら行われるので、バケット3の重心位置が変化しない状態で行われる積込前荷重演算部33による演算よりも、その正確さに改善の余地がある。
【0034】
そこで、荷重補正部36は、積込前荷重演算部33により演算された積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重に基づいて、積込中荷重演算部34により演算された積込作業中におけるバケット3の積載荷重を補正する。これにより、荷重演算装置32は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重をより正確に演算することができる。
【0035】
具体的には、荷重補正部36は、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重と、積込作業の開始直後の状態におけるバケット3の積載荷重との比に基づいて、積込作業中におけるバケット3の積載荷重を補正する。積込作業の開始直後の状態とは、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3に対して、ダンプ動作及びリフト上げ動作を開始後の状態であって、バケット3から積荷が実際に放出される前の状態である。積込作業の開始直後の状態では、バケット3の重心位置は変化し得るが、積込作業の開始直後の状態におけるバケット3内の積荷の真の重量と、積込作業の開始前の状態におけるバケット3内の積荷の真の重量とが等しい。積込作業の開始直後の状態におけるバケット3の積載荷重は、積込中荷重演算部34によって演算される。荷重補正部36は、当該比を、積込作業中におけるバケット3の積載荷重に乗算することによって、積込作業中におけるバケット3の積載荷重を補正する。これにより、荷重演算装置32は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重をより正確且つ容易に演算することができる。
【0036】
荷重出力部37は、半自動積込ボタン28が1回目に押下されると、積込前荷重演算部33により演算された積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重を、制御装置31に出力する。荷重出力部37は、半自動積込ボタン28が2回目に押下されると、荷重補正部36により補正された積込作業中におけるバケット3の積載荷重を、制御装置31に出力する。
【0037】
制御装置31には、荷重出力部37から出力されたバケット3の積載荷重と、目標積込重量入力部27に入力された目標積込重量と、半自動積込ボタン28の押下を示す信号とが入力される。制御装置31は、これらの入力に基づいて、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の動作を制御する。
【0038】
制御装置31は、半自動積込ボタン28が1回目に押下されると、積込前荷重演算部33による演算が開始されるので、バケット3をフルチルトの姿勢にするチルト動作が行われるようバケットシリンダ8の動作を制御する。そして、制御装置31は、バケット3を積込開始高さまで上昇させるリフト上げ動作が行われるようリフトシリンダ7の動作を制御する。
【0039】
制御装置31は、半自動積込ボタン28が2回目に押下されると、積込作業の終了時にバケット3内に残るべき積荷の積載荷重(以下「目標積載荷重」とも称する)を演算する。積込作業の終了時のバケット3の目標積載荷重は、積込前荷重演算部33により演算された積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重から、目標積込重量入力部27に入力された目標積込重量を減算することによって演算され得る。そして、制御装置31は、積込作業を行うべく、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3を下方向に回動させるダンプ動作が行われるようバケットシリンダ8の動作を制御する。同時に、制御装置31は、リフトアーム2を上方向に回動させるリフト上げ動作が行われるようリフトシリンダ7の動作を制御する。この際、積込中荷重演算部34により積込作業中におけるバケット3の積載荷重が演算される。
【0040】
制御装置31は、リフト上げ動作が低速(又は微小速度)で行われるよう、目標パイロット圧を調整してリフト上げ動作の速度を調整する。これにより、リフトシリンダ7の摩擦力としては動摩擦力が一定で支配的となり、静止摩擦力が極力低減され得るので、積込中荷重演算部34は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重をより正確に演算することができる。
【0041】
制御装置31は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重が目標積載荷重に到達した場合、ダンプ動作が停止するようバケットシリンダ8の動作を制御する。そして、制御装置31は、積荷がバケット3から放出されるのを抑制するために大きくチルト動作が行われ、その後、積荷がバケット3から放出されない程度に再び小さくダンプ動作が行われるよう、バケットシリンダ8の動作を制御する。当該チルト動作においてバケット3が上方向に回動した角度の大きさであるチルト角αt(例えば15度)は、
図6に示すように、当該ダンプ動作においてバケット3が下方向に回動した角度の大きさであるダンプ角αd(例えば10度)よりも大きい。チルト角αt及びダンプ角αdは、バケット3の先端下部に配置された爪先3aが延びる方向を基準として定義され得る。その後、制御装置31は、ダンプ動作及びリフト上げ動作が停止するようバケットシリンダ8及びリフトシリンダ7の動作を制御する。これにより、積込作業が終了する。
【0042】
積込作業の終了直前にダンプ角αdだけダンプ動作が行われるのは、空荷時シリンダ推力演算部35がリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各推力を演算するのがダンプ動作中だからである。積込中荷重演算部34は、積込作業の終了直前の当該ダンプ動作中、又は、積込作業の終了時の状態において、バケット3の最終的な積載荷重を演算する。これにより、積込中荷重演算部34は、リフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の動作態様を空荷時シリンダ推力演算部35の演算時と同じにして、バケット3の最終的な積載荷重を演算することができる。したがって、積込中荷重演算部34は、バケット3の最終的な積載荷重をより正確に演算することができる。
【0043】
図7は、積込作業中におけるリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の各ストロークの推移を示す図である。
【0044】
リフトシリンダ7のストロークは、リフト上げ動作が行われると大きくなり、リフト下げ動作が行われると小さくなる。バケットシリンダ8のストロークは、チルト動作が行われると大きくなり、ダンプ動作が行われると小さくなる。
【0045】
リフトシリンダ7のストロークは、積込作業の開始時刻t0において、バケット3が積込開始高さに位置する程度に伸長している。積込作業が開始すると、リフトシリンダ7は一定の低速でリフト上げ動作を行う。リフトシリンダ7のストロークは単調増加する。制御装置31は、リフト上げ動作の速度を、リフトシリンダ7のストロークが単調増加するために必要な最低速度以上の一定速度となるように制御する。更に、制御装置31は、リフト上げ動作の速度を、積込作業の終了時刻t3においてリフトシリンダ7のストロークを最大ストロークSmax以下とするために必要な一定速度となるように制御する。リフトシリンダ7のストロークが最大ストロークSmaxに到達することは、バケット3の高さが最高揚に到達することを意味する。これにより、制御装置31は、積込作業の開始から終了までの間においてリフトシリンダ7のストロークを単調増加させることができるので、積込作業中のリフトシリンダ7の動摩擦力を一定に保つことができる。積込中荷重演算部34は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重をより正確に演算することができる。なお、制御装置31は、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重と目標積込重量との差(すなわち積込作業の終了時のバケット3の目標積載荷重)に基づいて、リフト上げ動作の速度を制御してもよい。
【0046】
バケットシリンダ8のストロークは、積込作業の開始時刻t0において、バケット3がフルチルトの姿勢となるように大きく伸長している。積込作業が開始すると、バケットシリンダ8はダンプ動作を行う。バケットシリンダ8のストロークは単調減少する。積込作業中におけるバケット3の積載荷重が目標積載荷重に到達した時刻t1において、バケットシリンダ8はチルト動作を行う。バケットシリンダ8のストロークは単調増加する。チルト角αtだけチルト動作が行われた時刻t2において、バケットシリンダ8は再びダンプ動作を行う。バケットシリンダ8のストロークは単調減少する。ダンプ角αdだけダンプ動作が行われた時刻t3において、バケットシリンダ8はダンプ動作を停止する。
【0047】
ダンプ動作及びリフト上げ動作が停止されて積込作業が終了すると、制御装置31は、積込作業が終了したことを示す信号を半自動積込ボタン28に出力する。半自動積込ボタン28は、その押下回数をリセットする。ホイールローダ1は、再び積込作業を半自動で実行することができるようになる。
【0048】
【0049】
演算制御装置30は、オペレータによって半自動積込ボタン28がリセット後に1回目に押下されると、
図8に示す半自動積込処理を開始する。
【0050】
ステップS1において、演算制御装置30は、バケット3をフルチルトの姿勢するチルト動作が行われるよう、バケットシリンダ8の動作を制御する。
【0051】
ステップS2において、演算制御装置30は、バケット3を積込開始高さまで上昇させるリフト上げ動作が行われるよう、リフトシリンダ7の動作を制御する。
【0052】
ステップS3において、演算制御装置30は、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ったバケット3を積込開始高さまで上昇している最中のバケット3の積載荷重を複数回演算し、その平均値を演算する。そして、演算制御装置30は、演算された平均値を、積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重(Wi)とする。積込作業の開始前の状態におけるバケット3の積載荷重(Wi)は、上記のように、一定荷重であり、リフトシリンダ7の推力のみから演算される。
【0053】
ステップS4において、演算制御装置30は、バケット3が積込開始高さまで上昇すると、リフト上げ動作が停止するよう、リフトシリンダ7の動作を制御する。
【0054】
ステップS5において、演算制御装置30は、オペレータによって目標積込重量入力部27に入力された目標積込重量(Wt)が入力されたか否かを判定する。演算制御装置30は、目標積込重量(Wt)が入力されるまで待機し、入力されるとステップS6に移行する。
【0055】
ステップS6において、演算制御装置30は、オペレータによって半自動積込ボタン28がリセット後に2回目に押下されたか否かを判定する。演算制御装置30は、半自動積込ボタン28が押下されるまで待機し、押下されるとステップS7に移行する。
【0056】
ステップS7において、演算制御装置30は、積込作業の終了時のバケット3の目標積載荷重(Wf)を演算する。演算制御装置30は、次式(1)を用いて、目標積載荷重(Wf)を演算することができる。
Wf=Wi-Wt …(1)
【0057】
ステップS8において、演算制御装置30は、積込作業を開始するべく、ダンプ動作が開始するようバケットシリンダ8の動作を制御すると共に、リフト上げ動作が開始するようリフトシリンダ7の動作を制御する。
【0058】
ステップS9において、演算制御装置30は、積込作業の開始直後の状態におけるバケット3の積載荷重(Wd)を演算する。積込作業の開始直後の状態は、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3に対して、ダンプ動作及びリフト上げ動作を開始した直後の状態であって、バケット3の重心位置は変化し得るがバケット3から積荷が実際に放出される前の状態である。
【0059】
ステップS10において、演算制御装置30は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重(W)を演算する。積込作業中とは、積載状態でありフルチルトの姿勢を保ち積込開始高さに位置するバケット3に対して、ダンプ動作及びリフト上げ動作が行われている最中のことである。
【0060】
ステップS11において、演算制御装置30は、積込作業中におけるバケット3の積載荷重(W)を補正する。演算制御装置30は、次式(2)を用いて、積込作業中におけるバケット3の積載荷重(W)を補正することができる。補正後のバケット3の積載荷重をW’とする。
W’=W×(Wi/Wd) …(2)
【0061】
ステップS12において、演算制御装置30は、補正後のバケット3の積載荷重(W’)が、目標積載荷重(Wf)に到達したか否かを判定する。演算制御装置30は、次式(3)を用いて判定することができる。式(3)を満たさない場合は、補正後のバケット3の積載荷重(W’)が目標積載荷重(Wf)に到達していないことを意味するので、演算制御装置30は、ステップS10に移行する。式(3)を満たす場合は、補正後のバケット3の積載荷重(W’)が目標積載荷重(Wf)に到達したことを意味するので、演算制御装置30は、ステップS13に移行する。
W’≦Wf …(3)
【0062】
ステップS13において、演算制御装置30は、チルト角αtだけチルト動作が行われるようバケットシリンダ8の動作を制御する。
【0063】
ステップS14において、演算制御装置30は、ダンプ角αdだけダンプ動作が行われるようバケットシリンダ8の動作を制御する。
【0064】
ステップS15において、演算制御装置30は、積込作業を終了するべく、ダンプ動作が停止するようバケットシリンダ8の動作を制御すると共に、リフト上げ動作が停止するようリフトシリンダ7の動作を制御する。
【0065】
ステップS16において、演算制御装置30は、バケット3の最終的な積載荷重を演算する。その後、演算制御装置30は、
図8に示す処理を終了する。なお、演算制御装置30は、ステップS16をステップS14とステップS15との間に行ってもよい。
【0066】
以上のように、本実施形態のホイールローダ1は、フロントボディ11に対して回動可能に連結されたリフトアーム2と、リフトアーム2を上方に回動させるリフト上げ動作とリフトアーム2を下方に回動させるリフト下げ動作とを行うリフトシリンダ7と、リフトアーム2に対して回動可能に連結されたバケット3と、バケット3を上方に回動させるチルト動作とバケット3を下方に回動させるダンプ動作とを行うバケットシリンダ8と、リフトシリンダ7の圧力を計測するリフト圧力センサ25と、バケットシリンダ8の圧力を計測するバケット圧力センサ26と、リフト圧力センサ25及びバケット圧力センサ26の各計測値からリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力をそれぞれ演算し、演算されたリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力に基づいてバケット3の積載荷重を演算する荷重演算装置32と、を備える。荷重演算装置32は、バケット3を積載状態としてダンプ動作及びリフト上げ動作を行う積込作業中のリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力から、バケット3を空荷状態として積込作業中と同じ動作を行った場合のリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力をそれぞれ差し引いた差分値に基づいて、積込作業中におけるバケット3の積載荷重を演算する。
【0067】
これにより、荷重演算装置32は、積込作業中のようにバケット3の重心位置が変化する場合であっても、バケット3の積載荷重を正確に演算することができる。ホイールローダ1は、バケット3内の積荷の一部だけを被積込機械に積み込む場合、オペレータの熟練した技量が無くても、正確な積込重量で積み込むことができる。よって、本実施形態のホイールローダ1は、任意の積込重量での積込作業を正確且つ容易に行うことができる。
【0068】
更に、本実施形態のホイールローダ1は、バケット3とバケットシリンダ8とを連結し、バケットシリンダ8の推力をバケット3に伝達するベルクランク9と、フロントボディ11に対してリフトアーム2が成すリフト角を計測するリフト角センサ13と、リフトアーム2に対してベルクランク9が成すベルクランク角を計測するベルクランク角センサ14と、を更に備える。荷重演算装置32は、バケット3を空荷状態として積込作業中と同じ動作を行った場合に変化するリフト角及びベルクランク角に応じてリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力を演算し、記憶する空荷時シリンダ推力演算部35を有する。荷重演算装置32は、バケット3を積載状態として積込作業中に変化するリフト角及びベルクランク角に応じてリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力を演算し、演算されたリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力から、空荷時シリンダ推力演算部35に記憶されたリフトシリンダ7の推力及びバケットシリンダ8の推力をそれぞれ差し引くことによって上記の差分値を演算し、演算された差分値に基づいて、積込作業中におけるバケット3の積載荷重を演算する積込中荷重演算部34を有する。
【0069】
これにより、バケット3が空荷状態での各推力を演算する際のリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の状態が、積込作業中の各推力を演算する際のリフトシリンダ7及びバケットシリンダ8の状態と同じになる。したがって、荷重演算装置32は、バケット3が空荷状態での各推力を適切に演算することができるので、積込作業中におけるバケット3の積載荷重を正確に演算することができる。よって、本実施形態のホイールローダ1は、任意の積込重量での積込作業をより正確且つ容易に行うことができる。
【0070】
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0071】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0072】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…ホイールローダ、2…リフトアーム、3…バケット、7…リフトシリンダ、8…バケットシリンダ、9…ベルクランク、11…フロントボディ(車体)、12…リアボディ、13…リフト角センサ、14…ベルクランク角センサ、25…リフト圧力センサ、26…バケット圧力センサ、31…制御装置、32…荷重演算装置、33…積込前荷重演算部、34…積込中荷重演算部、35…空荷時シリンダ推力演算部、36…荷重補正部