(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】軸継手診断装置及び軸継手診断方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20250612BHJP
F16D 3/12 20060101ALI20250612BHJP
F16D 3/68 20060101ALI20250612BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
E02F9/00 D
F16D3/12 A
F16D3/68
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2022008787
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2024-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レ ティエンチエン
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 聡志
(72)【発明者】
【氏名】國岡 昭吾
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072032(JP,A)
【文献】特開2021-067614(JP,A)
【文献】特開2020-180605(JP,A)
【文献】特開平08-284967(JP,A)
【文献】特開2021-056880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0033171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F16D 3/12
F16D 3/68
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の動力を出力する駆動軸と、前記動力が前記駆動軸から伝達されることにより駆動される従動機の従動軸とを連結する軸継手の摩耗状況を診断する軸継手診断装置であって、
前記原動機の回転数を変化させた場合の前記原動機の稼働音を取得する稼働音取得部と、
前記稼働音取得部により取得された前記稼働音に含まれる異常音成分を特徴量として抽出する特徴量抽出部と、
前記異常音成分と前記摩耗状況との関係を示す摩耗モデルを取得する摩耗モデル取得部と、
前記特徴量抽出部により抽出された前記異常音成分と、前記摩耗モデル取得部により取得された前記摩耗モデルとに基づいて、前記摩耗状況を診断する摩耗状況診断部と、を備える
ことを特徴とする軸継手診断装置。
【請求項2】
前記軸継手は、建設機械に搭載された弾性体軸継手であり、
前記稼働音取得部は、前記原動機が最低回転数にて稼働中の前記建設機械をキーオフした場合の前記稼働音を取得し、
前記特徴量抽出部は、前記建設機械をキーオフしてから前記稼働音の振幅が収束するまでの期間において所定の閾値を超えた前記稼働音の振幅を前記異常音成分として抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手診断装置。
【請求項3】
前記摩耗モデル取得部は、前記軸継手に含まれる弾性体の摩耗量と前記異常音成分の発生間隔との関係を示す前記摩耗モデルを取得し、
前記摩耗状況診断部は、前記特徴量抽出部により抽出された前記異常音成分の発生間隔を、前記摩耗モデル取得部により取得された前記摩耗モデルに適用することによって、前記弾性体の前記摩耗量を推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の軸継手診断装置。
【請求項4】
前記稼働音取得部、前記特徴量抽出部、前記摩耗モデル取得部及び前記摩耗状況診断部は、携帯端末に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手診断装置。
【請求項5】
前記稼働音取得部は、携帯端末に設けられており、
前記特徴量抽出部、前記摩耗モデル取得部及び前記摩耗状況診断部は、前記携帯端末と通信可能なサーバ装置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手診断装置。
【請求項6】
前記軸継手は、建設機械に搭載されており、
前記稼働音取得部、前記特徴量抽出部、前記摩耗モデル取得部及び前記摩耗状況診断部は、前記建設機械に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手診断装置。
【請求項7】
前記軸継手は、建設機械に搭載されており、
前記稼働音取得部は、前記建設機械に設けられており、
前記特徴量抽出部、前記摩耗モデル取得部及び前記摩耗状況診断部は、前記建設機械と通信可能なサーバ装置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の軸継手診断装置。
【請求項8】
原動機の動力を出力する駆動軸と、前記動力が前記駆動軸から伝達されることにより駆動される従動機の従動軸とを連結する軸継手の摩耗状況を診断する軸継手診断方法であって、
前記原動機の回転数を変化させた場合の前記原動機の稼働音を取得することと、
取得された前記稼働音に含まれる異常音成分を特徴量として抽出することと、
前記異常音成分と前記摩耗状況との関係を示す摩耗モデルと、前記特徴量として抽出された前記異常音成分とに基づいて、前記摩耗状況を診断することと、を含む
ことを特徴とする軸継手診断方法。
【請求項9】
前記軸継手は、建設機械に搭載された弾性体軸継手であり、
前記稼働音を取得することは、前記原動機が最低回転数にて稼働中の前記建設機械をキーオフした場合の前記稼働音を取得することであり、
前記異常音成分を抽出することは、前記建設機械をキーオフしてから前記稼働音の振幅が収束するまでの期間において所定の閾値を超えた前記稼働音の振幅を前記異常音成分として抽出することである、
ことを特徴とする請求項8に記載の軸継手診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸継手診断装置及び軸継手診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械には、原動機(例えばエンジン)の動力を出力する駆動軸(例えばエンジンの出力軸)と、当該動力が原動機の駆動軸から伝達されることにより駆動される従動機(例えば油圧ポンプ)の従動軸(例えば油圧ポンプの回転軸)とを連結する軸継手が搭載されている。
【0003】
建設機械に搭載される軸継手としては、原動機の駆動軸から出力された動力を、弾性体を介して従動機の従動軸に伝達する軸継手(「弾性体軸継手」とも称する)が多い。この種の軸継手は、駆動軸の中心軸線と従動軸の中心軸線とのずれや、原動機のトルク変動等を、弾性体の弾性変形によって吸収することができるので、原動機と従動機との間で円滑なトルクの伝達が可能となる。
【0004】
軸継手では、経年劣化、疲労による変形等に伴って、弾性体が摩耗する。弾性体が摩耗すると、原動機と従動機との間で円滑なトルクの伝達が難しくなったり、場合によっては軸折損等の故障が発生したりする可能性がある。よって、軸継手の摩耗状況を診断して、適切なタイミングで弾性体を交換することが望ましい。
【0005】
軸継手の摩耗状況の診断方法として、原動機と従動機との連結を解除して軸継手を分解し弾性体を診断する方法が考えられる。しかし、この診断方法は、原動機と従動機との連結を解除することに伴い、例えば、従動機に取り付けられた油圧配管等を取り外す作業、診断後に当該配管を取り付ける作業、及び、作動油の処理作業等の、煩雑な作業を行う必要がある。加えて、この診断方法は、従動機を吊り上げるクレーン設備を準備する必要があると共に、作業場所も制限される。よって、この診断方法は、軸継手の摩耗状況を精確に診断できるとしても、作業性及びコスト等の観点から改善の余地がある。
【0006】
これに対し、特許文献1には、軸継手の弾性体の外周面に対して診断用の突起を設けて、弾性体の寿命を診断する方法が開示されている。特許文献1に開示の方法では、弾性体が摩耗すると、弾性体に係合された駆動軸側ブロックと従動軸側ブロックとが接近し当該突起を押圧することを利用して、当該突起が破断しているかを視認することによって、弾性体の交換が必要か否かを判定する。
【0007】
また、特許文献2には、設定温度以上になると所定形状に変形するように設計・製作された形状記憶合金製の回転片を軸継手に設けて、回転片の変形程度を測定することによって、軸継手の劣化を診断する方法が開示されている。特許文献2に開示の方法では、軸継手内の摺動部がシール等の劣化や給油不足により潤滑不良となり発熱する現象を利用することによって、当該摺動部が異常に温度上昇したかを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-72032号公報
【文献】特開平8-284967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの特許文献に開示の方法では、何れも、軸継手の摩耗状況が深刻な段階に至った場合に限って、例えば、弾性体に係合された駆動軸側ブロックと従動軸側ブロックとが接近する程に深刻な段階に至った場合に限って、軸継手の摩耗状況を診断することができる。これらの特許文献に開示の方法では、軸継手の摩耗に対する対策を講じる前に、軸折損等の故障が発生する可能性がある。よって、軸継手の摩耗状況を容易且つ精細に診断する技術が求められている。
【0010】
上記事情に鑑みて、本発明は、軸継手の摩耗状況を容易且つ精細に診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る軸継手診断装置は、原動機の動力を出力する駆動軸と、前記動力が前記駆動軸から伝達されることにより駆動される従動機の従動軸とを連結する軸継手の摩耗状況を診断する軸継手診断装置であって、前記原動機の回転数を変化させた場合の前記原動機の稼働音を取得する稼働音取得部と、前記稼働音取得部により取得された前記稼働音に含まれる異常音成分を特徴量として抽出する特徴量抽出部と、前記異常音成分と前記摩耗状況との関係を示す摩耗モデルを取得する摩耗モデル取得部と、前記特徴量抽出部により抽出された前記異常音成分と、前記摩耗モデル取得部により取得された前記摩耗モデルとに基づいて、前記摩耗状況を診断する摩耗状況診断部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る軸継手診断方法は、原動機の動力を出力する駆動軸と、前記動力が前記駆動軸から伝達されることにより駆動される従動機の従動軸とを連結する軸継手の摩耗状況を診断する軸継手診断方法であって、前記原動機の回転数を変化させた場合の前記原動機の稼働音を取得することと、取得された前記稼働音に含まれる異常音成分を特徴量として抽出することと、前記異常音成分と前記摩耗状況との関係を示す摩耗モデルと、前記特徴量として抽出された前記異常音成分とに基づいて、前記摩耗状況を診断することと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸継手の摩耗状況を容易且つ精細に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施形態1の軸継手診断装置の機能的構成を示すブロック図。
【
図3】
図3(a)は軸継手の摩耗が進行前である場合の原動機の稼働音を示す図、
図3(b)は軸継手の摩耗がある程度進行した場合の原動機の稼働音を示す図。
【
図5】
図2に示す軸継手診断装置を用いた軸継手診断方法を示すフローチャート。
【
図6】実施形態2の軸継手診断装置の機能的構成を示すブロック図。
【
図7】実施形態3の軸継手診断装置の機能的構成を示すブロック図。
【
図8】実施形態4の軸継手診断装置の機能的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0016】
[実施形態1]
図1~
図5を用いて実施形態1の軸継手診断装置1について説明する。
【0017】
図1は、軸継手80の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【0018】
軸継手80は、原動機60(例えばエンジン)の動力を出力する駆動軸61(例えばエンジンの出力軸)と、当該動力が駆動軸61から伝達されることにより駆動される従動機70(例えば油圧ポンプ)の従動軸71(例えば油圧ポンプの回転軸)とを連結する軸継手である。
【0019】
図1に示す軸継手80は、原動機60の駆動軸61から出力された動力を、弾性体85を介して従動機70の従動軸71に伝達する弾性体軸継手である。軸継手80は、駆動軸61の中心軸線と従動軸71の中心軸線とのずれや、原動機60のトルク変動等を、弾性体85の弾性変形によって吸収する。軸継手80は、油圧ショベル等の建設機械に搭載された弾性体軸継手である。
【0020】
軸継手80は、駆動軸側ブロック81と、ハブ部材82と、従動軸側ブロック83と、弾性体85とを含む。
【0021】
駆動軸側ブロック81は、略扇形のブロック体として形成される。複数の駆動軸側ブロック81は、駆動軸61に設けられたフライホイール62に対して周方向に間隔をあけてねじ等により固定されている。駆動軸側ブロック81の外径側の周方向両側には、それぞれ周方向に延びる鍔部81aが設けられている。鍔部81aは、弾性体85の径方向の変位を規制する。
【0022】
ハブ部材82は、厚肉の円筒体として形成される。ハブ部材82は、従動軸71の外周面に対してスプライン結合により固定されている。
【0023】
従動軸側ブロック83は、略扇形のブロック体として形成される。複数の従動軸側ブロック83は、ハブ部材82の外周面に対して、周方向に間隔をあけてねじ等により固定されている。従動軸側ブロック83は、ハブ部材82の外周面から径方向外側に突出するように設けられている。従動軸側ブロック83の外径側の周方向両側には、それぞれ周方向に延びる鍔部83aが設けられている。鍔部83aは、弾性体85の径方向の変位を規制する。
【0024】
弾性体85は、ゴム等により厚肉の円筒体として形成される。弾性体85の内周面は、ハブ部材82を収容する収容部86を画定する。弾性体85の外周面には、駆動軸側ブロック81と係合する駆動軸側係合部87と、従動軸側ブロック83と係合する従動軸側係合部88とが、周方向に間隔をあけて交互に形成されている。駆動軸側係合部87及び従動軸側係合部88は、弾性体85の外周面から径方向内側に向かって窪む溝状に形成されている。駆動軸側係合部87と従動軸側係合部88との間の部分は、駆動軸側ブロック81と従動軸側ブロック83とによって周方向に圧縮される圧縮部89である。
【0025】
弾性体85の圧縮部89は、経年劣化、疲労による変形等に伴って摩耗し、周方向の厚さが減少する。すると、駆動軸側ブロック81の鍔部81aと従動軸側ブロック83の鍔部83aとが接近する。弾性体85の圧縮部89は、更に摩耗し、周方向の厚さが減少する。このように弾性体85の摩耗が進行していくと、やがて鍔部81aと鍔部83aとが接触してしまい、軸折損等の故障が発生してしまう。よって、軸継手80の摩耗状況を診断することは重要であり、適切なタイミングで弾性体85を交換することが望ましい。
【0026】
図2は、実施形態1の軸継手診断装置1の機能的構成を示すブロック図である。
【0027】
軸継手診断装置1は、軸継手80の摩耗状況を診断する装置である。具体的には、軸継手診断装置1は、軸継手80に連結された原動機60の稼働音から、軸継手80に含まれる弾性体85の摩耗状況を診断する装置である。
【0028】
軸継手診断装置1は、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、PDA(Personal Data Assistant)等の携帯端末10に設けられている。携帯端末10は、演算処理を行うCPU(Central processing unit)と、演算処理手順を記述したプログラムを記憶する二次記憶装置としてのROM(Read only memory)と、演算経過や一時的な制御変数を記憶する一次記憶装置としてのRAM(Random access memory)とを備える。軸継手診断装置1は、携帯端末10に備えられた上記のCPU等によって構成され、CPUがプログラムを実行することによって、軸継手診断装置1の各種機能を実現する。
【0029】
軸継手診断装置1は、機械情報取得部11と、稼働音取得部12と、特徴量抽出部13と、摩耗モデル取得部14と、摩耗状況診断部15と、診断結果出力部16とを備える。
【0030】
機械情報取得部11は、診断対象の軸継手80の情報を取得する。具体的には、機械情報取得部11は、軸継手80の構造に応じて定められた軸継手80の機種を特定する情報を取得する。機械情報取得部11は、携帯端末10の画面からユーザが軸継手80又は建設機械の機種を入力することによって、軸継手80の機種を特定する情報を取得することができる。
【0031】
稼働音取得部12は、携帯端末10に内蔵されたマイクによって構成される。稼働音取得部12は、原動機60の稼働音を取得(録音)する。稼働音取得部12は、取得された稼働音を特徴量抽出部13に出力する。原動機60の稼働音を取得する位置は、特に限定されないが、軸継手80が搭載された建設機械の近い位置であることが好ましい。
【0032】
稼働音取得部12は、原動機60の回転数を変化させた場合の原動機60の稼働音を取得する。具体的には、稼働音取得部12は、原動機60が最低回転数にて稼働中(ローアイドル中)の建設機械をキーオフした場合の稼働音を取得する。原動機60が最低回転数にて稼働中の建設機械をキーオフした場合には、原動機60の回転数は最低回転数から0に変化する。この場合、原動機60の稼働音の振幅は、軸継手80の摩耗状況に応じて異なる波形を示す。原動機60の稼働音の詳細については、
図3(a)及び
図3(b)を用いて後述する。
【0033】
特徴量抽出部13は、稼働音取得部12により取得された稼働音に含まれる異常音成分を、軸継手80の摩耗状況を特定するための特徴量として抽出する。異常音成分は、軸継手80が摩耗している状況において原動機60の回転数を変化させたことによって発生し得る。具体的には、特徴量抽出部13は、建設機械をキーオフしてから原動機60の稼働音の振幅が収束するまでの期間において所定の閾値を超えた稼働音の振幅を、異常音成分として抽出する。異常音成分を含む稼働音は、建設機械をキーオフしてから原動機60の稼働音の振幅が収束するまでの期間において「カタカタ」と聞こえる音である。特徴量抽出部13は、抽出された異常音成分を摩耗状況診断部15に出力する。異常音成分の詳細については、
図3(a)及び
図3(b)を用いて後述する。
【0034】
摩耗モデル取得部14は、原動機60の稼働音の異常音成分と軸継手80の摩耗状況との関係を示す摩耗モデルを取得する。具体的には、摩耗モデル取得部14は、軸継手80に含まれる弾性体85の摩耗量と当該異常音成分の発生間隔(時間間隔)との関係を示す摩耗モデルを取得する。摩耗モデルは、弾性体85の摩耗量と異常音成分の発生間隔との関係を記述する数理モデルであってもよい。摩耗モデル取得部14は、機械情報取得部11により取得された軸継手80の情報に基づいて、当該情報によって特定される軸継手80の機種に応じた摩耗モデルを取得する。摩耗モデル取得部14は、予めデータベース等に登録された摩耗モデルを読み込むことによって摩耗モデルを取得してもよい。摩耗モデル取得部14は、予め記憶された実験データ等から摩耗モデルを生成することによって摩耗モデルを取得してもよい。摩耗モデル取得部14は、取得された摩耗モデルを摩耗状況診断部15に出力する。摩耗モデルの詳細については、
図4を用いて後述する。
【0035】
摩耗状況診断部15は、特徴量抽出部13により抽出された異常音成分と、摩耗モデル取得部14により取得された摩耗モデルとに基づいて、軸継手80の摩耗状況を診断する。具体的には、摩耗状況診断部15は、特徴量抽出部13により抽出された異常音成分の発生間隔を、摩耗モデル取得部14により取得された摩耗モデルに適用することによって、弾性体85の摩耗量を推定する。摩耗状況診断部15は、推定された摩耗量に応じて、軸継手80の危険度を判定してもよい。摩耗状況診断部15は、摩耗量の推定結果や危険度の判定結果を含む摩耗状況の診断結果を、診断結果出力部16に出力する。摩耗状況の診断結果の出力方式は、摩耗量の値を示す数字を出力する方式であってもよいし、横軸(X軸)に時間を表し縦軸(Y軸)に摩耗量の指標を表すグラフを出力する方式であってもよい。グラフを出力する方式の場合、グラフの表示形式は、特に限定されず、例えば折れ線グラフや棒グラフ等の形式であってもよい。グラフを出力する方式の場合、時間の経過に応じた摩耗の進行を予測し易くすることができる。通常は時間の経過に伴い摩耗に起因する故障リスクが高まるので、例えば、経過時間の近い順から「交換推奨時期」、「交換必須」、「要点検」といったテキストメッセージの通知をすることが考えられる。あるいはテキストメッセージに限られず、故障リスクの進行に応じて行燈表示(青・黄・赤)のアイコンでの通知であってもよい。通知のタイミングは任意に設定され得る。
【0036】
診断結果出力部16は、摩耗状況診断部15により出力された診断結果を出力する。例えば、診断結果出力部16は、当該診断結果を携帯端末10の画面に出力し、当該診断結果を携帯端末10の画面に表示することにより、当該診断結果をユーザに報知する。また、診断結果出力部16は、携帯端末10と通信可能に接続されたサーバ装置30に送信してもよい。
【0037】
図3(a)は、軸継手80の摩耗が進行前である場合の原動機60の稼働音を示す図である。
図3(b)は、軸継手80の摩耗がある程度進行した場合の原動機60の稼働音を示す図である。
図3(a)及び
図3(b)の各縦軸は、原動機60の稼働音の振幅を示す。
図3(a)及び
図3(b)の各横軸は、時間を示す。
【0038】
軸継手80の摩耗が進行前である場合、
図3(a)に示すように、建設機械のキーオフの時点T1よりも前の期間において、原動機60の稼働音の振幅は、ノイズ等による変動を除けば概ね一定である。キーオフの時点T1以降、原動機60の稼働音の振幅は、徐々に低下していき、時点T2において収束する。時点T2以降、原動機60の稼働音の振幅は、収束したままで概ね一定である。原動機60の稼働音の振幅が収束した時点T2は、当該稼働音が消音した時点を示している。
【0039】
稼働音取得部12は、建設機械をキーオフした時点T1から、原動機60の稼働音の振幅が収束する時点T2以後に所定時間経過した時点T3までの期間Teを含む期間に亘って、原動機60の稼働音を取得する。
【0040】
軸継手80の摩耗がある程度進行した場合、
図3(b)に示すように、建設機械のキーオフの時点T1よりも前の期間において、原動機60の稼働音の振幅は、
図3(a)の場合と同様に概ね一定である。時点T2以降、原動機60の稼働音の振幅は、
図3(a)の場合と同様に、概ね一定である。一方、キーオフの時点T1から稼働音の振幅が収束する時点T2までの期間Tcにおいて、原動機60の稼働音の振幅は、異常音成分を示すピークP1~P6が発生する。ピークP1~P6は、所定の閾値を超えた稼働音の振幅である。この閾値は、実験等によって予め算出することが可能である。
【0041】
特徴量抽出部13は、建設機械をキーオフした時点T1から、原動機60の稼働音の振幅が収束する時点T2以後に所定時間経過した時点T3までの期間Teにおける当該稼働音を、稼働音取得部12により取得された当該稼働音から切り取る。そして、特徴量抽出部13は、建設機械をキーオフした時点T1から、原動機60の稼働音の振幅が収束するまでの期間Tcにおいて所定の閾値を超えた当該稼働音の振幅(ピークP1~P6)を、異常音成分として抽出する。なお、特徴量抽出部13は、期間Tcにおいて所定の閾値以下の当該稼働音の振幅を、正常音成分として抽出し、摩耗状況診断部15に出力してもよい。
【0042】
図4は、摩耗モデルを説明する図である。
図4の縦軸は、異常音成分の発生間隔の平均値を示す。
図4の横軸は、軸継手80に含まれる弾性体85の摩耗量を示す。
【0043】
図4に示すように、弾性体85の摩耗量が増加すると、異常音成分の発生間隔(時間間隔)が大きくなることが分かる。摩耗モデルは、弾性体85の摩耗量と異常音成分の発生間隔との関係を示す
図4に示すようなグラフの近似式として記述され得る。摩耗モデル取得部14は、軸継手80の機種に応じて、
図4に示すような摩耗モデルを取得する。摩耗状況診断部15は、特徴量抽出部13により抽出された異常音成分の発生間隔を、
図4に示すようなグラフの近似式に代入することによって、軸継手80に含まれる弾性体85の摩耗量を推定することができる。
【0044】
図5は、
図2に示す軸継手診断装置1を用いた軸継手診断方法を示すフローチャートである。
【0045】
まず、ユーザは、携帯端末10にインストールされた軸継手診断装置1のアプリケーションソフトを起動する。軸継手診断装置1は、原動機60が最低回転数にて稼働するよう建設機械の準備を促す診断手順を、携帯端末10の画面に表示させる。軸継手診断装置1は、診断対象の軸継手80又は建設機械の機種を入力するフォームを、携帯端末10の画面に表示させる。ユーザは、建設機械の準備を行うと共に、携帯端末10の画面から軸継手80又は建設機械の機種を入力する。
【0046】
ステップS101において、軸継手診断装置1は、携帯端末10の画面からユーザが軸継手80又は建設機械の機種を入力することによって、軸継手80の機種を特定する情報を取得する。軸継手診断装置1は、原動機60の稼働音を取得するのに最適な位置において当該稼働音を取得することを促す診断手順を、携帯端末10の画面に表示させる。ユーザは、携帯端末10の画面に表示された診断手順に従って、携帯端末10を移動させる。
【0047】
ステップS102において、軸継手診断装置1は、取得された軸継手80の機種を特定する情報に基づいて、当該情報によって特定される軸継手80の機種に応じた摩耗モデルを取得する。
【0048】
ステップS103において、軸継手診断装置1は、原動機60が最低回転数にて稼働中の建設機械をキーオフした場合の稼働音を取得する。軸継手診断装置1は、期間Teを含む期間に亘って原動機60の稼働音を取得することを促す診断手順を、携帯端末10の画面に表示させる。ユーザは、携帯端末10の画面に表示された診断手順に従って、建設機械をキーオフすると共に、稼働音を取得する。
【0049】
ステップS104において、軸継手診断装置1は、取得された稼働音から、期間Teにおける稼働音を切り取る。そして、軸継手診断装置1は、切り取られた稼働音のうち、期間Tcにおいて所定の閾値を超えた当該稼働音の振幅を、異常音成分として抽出する。
【0050】
ステップS105において、軸継手診断装置1は、抽出された異常音成分と、取得された摩耗モデルとに基づいて、軸継手80の摩耗状況を診断する。具体的には、軸継手診断装置1は、抽出された異常音成分の発生間隔を演算する。軸継手診断装置1は、演算された異常音成分の発生間隔を、取得された摩耗モデルに適用することによって、軸継手80に含まれる弾性体85の摩耗量を推定する。
【0051】
ステップS106において、軸継手診断装置1は、診断結果を携帯端末10の画面に出力して、ユーザに報知する。
図5に示す軸継手診断方法が終了する。
【0052】
なお、軸継手診断装置1は、ステップS101とステップS105との間であれば、ステップS102を行う順番を変更してもよい。
【0053】
以上のように、実施形態1の軸継手診断装置1は、原動機60の動力を出力する駆動軸61と、動力が駆動軸61から伝達されることにより駆動される従動機70の従動軸71とを連結する軸継手80の摩耗状況を診断する装置である。軸継手診断装置1は、原動機60の回転数を変化させた場合の原動機60の稼働音を取得する稼働音取得部12を備える。軸継手診断装置1は、稼働音取得部12により取得された稼働音に含まれる異常音成分を特徴量として抽出する特徴量抽出部13を備える。軸継手診断装置1は、異常音成分と摩耗状況との関係を示す摩耗モデルを取得する摩耗モデル取得部14を備える。軸継手診断装置1は、特徴量抽出部13により抽出された異常音成分と、摩耗モデル取得部14により取得された摩耗モデルとに基づいて、軸継手80の摩耗状況を診断する摩耗状況診断部15を備える。
【0054】
この構成により、軸継手診断装置1は、原動機60と従動機70との連結を解除し軸継手80を分解しなくても、軸継手80の摩耗状況を診断することができる。更に、軸継手診断装置1は、軸継手80の摩耗状況が深刻な段階に至る前であっても、原動機60の稼働音に異常音成分が発生することを利用して、軸継手80の摩耗が軽微な段階から摩耗状況を診断することができる。よって、軸継手診断装置1は、軸継手の摩耗状況を容易且つ精細に診断することができる。
【0055】
更に、軸継手診断装置1では、軸継手80が建設機械に搭載された弾性体軸継手であってもよい。稼働音取得部12は、原動機60が最低回転数にて稼働中の建設機械をキーオフした場合の稼働音を取得する。特徴量抽出部13は、建設機械をキーオフしてから稼働音の振幅が収束するまでの期間Tcにおいて所定の閾値を超えた稼働音の振幅を異常音成分として抽出する。
【0056】
これにより、軸継手診断装置1は、軸継手80を診断する際の原動機60、従動機70及び軸継手80の状態を常に同じ条件として、原動機60の稼働音を安定的に取得することができる。加えて、軸継手診断装置1は、原動機60の稼働音に、軸継手80の摩耗に起因する異常音成分が含まれているか否かを明確に区別することができ、当該異常音成分だけを正確に抽出することができる。よって、軸継手診断装置1は、軸継手80の摩耗状況を容易且つ精細に診断することができるだけでなく、正確且つ安定的に診断することができる。
【0057】
更に、摩耗モデル取得部14は、軸継手80に含まれる弾性体85の摩耗量と異常音成分の発生間隔との関係を示す摩耗モデルを取得する。摩耗状況診断部15は、特徴量抽出部13により抽出された異常音成分の発生間隔を、摩耗モデル取得部14により取得された摩耗モデルに適用することによって、弾性体85の摩耗量を推定する。
【0058】
これにより、軸継手診断装置1は、比較的簡単な手法によって、弾性体85の摩耗がどの程度進行しているかを定量的に表すことができるので、軸継手80に異常が発生する予兆を検知することができる。よって、軸継手診断装置1は、軸継手80の摩耗状況を更に精細に診断することができるだけでなく、弾性体85の交換タイミング等の軸継手80の保守計画の最適化を図ることができる。軸継手診断装置1は、建設機械のダウンタイムを大幅に短縮することができ、建設機械の生産性を向上させることができる。
【0059】
更に、稼働音取得部12、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14及び摩耗状況診断部15は、携帯端末10に設けられていてもよい。
【0060】
これにより、軸継手診断装置1は、作業現場において誰でも気軽に、軸継手80の摩耗状況を診断することができる。よって、軸継手診断装置1は、軸継手80の摩耗状況を更に容易に診断することができる。
【0061】
また、実施形態1の軸継手診断方法は、原動機60の動力を出力する駆動軸61と、動力が駆動軸61から伝達されることにより駆動される従動機70の従動軸71とを連結する軸継手80の摩耗状況を診断する軸継手診断方法である。軸継手診断方法は、原動機60の回転数を変化させた場合の原動機60の稼働音を取得すること(ステップS103)を含む。軸継手診断方法は、取得された稼働音に含まれる異常音成分を特徴量として抽出すること(ステップS104)を含む。軸継手診断方法は、異常音成分と摩耗状況との関係を示す摩耗モデルと、特徴量として抽出された異常音成分とに基づいて、軸継手80の摩耗状況を診断すること(ステップS105)を含む。
【0062】
これにより、軸継手診断方法は、原動機60と従動機70との連結を解除し軸継手80を分解しなくても、軸継手80の摩耗状況を診断することができる。更に、軸継手診断方法は、軸継手80の摩耗状況が深刻な段階に至る前であっても、原動機60の稼働音に異常音成分が発生することを利用して、軸継手80の摩耗が軽微な段階から摩耗状況を診断することができる。よって、軸継手診断方法は、軸継手の摩耗状況を容易且つ精細に診断することができる。
【0063】
更に、軸継手80が建設機械に搭載された弾性体軸継手であってもよい。稼働音を取得することは、原動機60が最低回転数にて稼働中の建設機械をキーオフした場合の稼働音を取得することである。異常音成分を抽出することは、建設機械をキーオフしてから稼働音の振幅が収束するまでの期間Tcにおいて所定の閾値を超えた稼働音の振幅を異常音成分として抽出することである。
【0064】
これにより、軸継手診断方法は、軸継手80を診断する際の原動機60、従動機70及び軸継手80の状態を常に同じ条件として、原動機60の稼働音を安定的に取得することができる。加えて、軸継手診断方法は、原動機60の稼働音に、軸継手80の摩耗に起因する異常音成分が含まれているか否かを明確に区別することができ、当該異常音成分だけを正確に抽出することができる。よって、軸継手診断方法は、軸継手80の摩耗状況を容易且つ精細に診断することができるだけでなく、正確且つ安定的に診断することができる。
【0065】
[実施形態2]
図6を用いて実施形態2の軸継手診断装置1について説明する。実施形態2の軸継手診断装置1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0066】
図6は、実施形態2の軸継手診断装置1の機能的構成を示すブロック図である。
【0067】
実施形態2の軸継手診断装置1では、機械情報取得部11及び稼働音取得部12が、携帯端末10に設けられている。実施形態2の軸継手診断装置1では、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14、摩耗状況診断部15及び診断結果出力部16が、携帯端末10と通信可能なサーバ装置30に設けられている。
【0068】
サーバ装置30は、CPU、ROM及びRAMを備え、建設機械の管理センサ等に設置されている。実施形態3の軸継手診断装置1は、サーバ装置30に備えられた上記のCPU等によって構成され、CPUがプログラムを実行することによって、軸継手診断装置1の各種機能を実現する。
【0069】
実施形態2の機械情報取得部11は、取得された軸継手80の情報を、サーバ装置30に設けられた摩耗モデル取得部14に送信する。実施形態2の稼働音取得部12は、取得された原動機60の稼働音を、サーバ装置30に設けられた特徴量抽出部13に送信する。実施形態2の診断結果出力部16は、診断結果を携帯端末10に送信して携帯端末10の画面に表示させたり、診断結果を建設機械に送信して建設機械に設けられた表示装置に表示させたりする。この際、緊急の対応が必要な場合、携帯端末10には事象のみを上記行燈表示機能で簡易的に表示させる一方、診断結果等の詳細な情報は建設機械の表示装置に表示させる等、診断結果の通知先は異ならせてもよい。
【0070】
このように、実施形態2の軸継手診断装置1は、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14及び摩耗状況診断部15がサーバ装置30に設けられているので、実施形態1よりも、これらの機能に係る処理を高速化することができる。よって、実施形態2の軸継手診断装置1は、実施形態1よりも、軸継手80の摩耗状況を迅速に診断することができる。更に、軸継手診断装置1は、サーバ装置30を利用することにより、軸継手80の摩耗状況の推移や詳細な摩耗原因を分析したり、他の建設機械の軸継手80の診断結果等を収集して軸継手80の摩耗状況を一元管理したりすることが容易となる。
【0071】
[実施形態3]
図7を用いて実施形態3の軸継手診断装置1について説明する。実施形態3の軸継手診断装置1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0072】
図7は、実施形態3の軸継手診断装置1の機能的構成を示すブロック図である。
【0073】
実施形態3の軸継手診断装置1では、機械情報取得部11、稼働音取得部12、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14、摩耗状況診断部15及び診断結果出力部16が、建設機械の制御装置20に設けられている。
【0074】
制御装置20は、CPU、ROM及びRAMを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されている。実施形態3の軸継手診断装置1は、制御装置20に備えられた上記のCPU等によって構成され、CPUがプログラムを実行することによって、原動機60の回転数を変化させたり、建設機械に設けられたマイクを用いて原動機60の稼働音を取得したりすることができる。
【0075】
実施形態3の機械情報取得部11は、診断開始時に、軸継手80の情報を制御装置20から直接的に取得する。実施形態3の稼働音取得部12は、制御装置20からの指令に基づいて、原動機60の稼働音の取得を開始する。例えば、制御装置20において建設機械のキーオフの発生を示すイベント情報が予め定義されており、制御装置20は、建設機械がキーオフされると、当該イベント情報を稼働音取得部12に出力する。稼働音取得部12は、当該イベント情報が入力されると、当該稼働音の取得を開始する。また、実施形態3の診断結果出力部16は、診断結果を、建設機械に設けられた表示装置に表示させたり、アラームとして出力したり、サーバ装置30に送信したりする。なお、診断結果の通知内容及び通知先は、任意に設定され得る。すなわち、緊急の対応が必要な場合、携帯端末10には事象のみを上記行燈表示機能で簡易的に表示させる一方、診断結果等の詳細な情報は建設機械の表示装置に表示させてもよい。また、故障リスクの進行に応じて診断結果の通知先は任意に設定してもよい。例えば、作業現場の点検員が早急に対応することで解決する可能性がある場合、点検員の保有する携帯端末10に通知した方が迅速に対応できることもある。このため、故障リスクの緊急度を判定して、緊急度が高い場合は携帯端末10とサーバ装置30の両者に送信するなどしてもよく、通知先は必ずしも1つに限られない。
【0076】
このように、実施形態3の軸継手診断装置1は、機械情報取得部11、稼働音取得部12、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14、摩耗状況診断部15及び診断結果出力部16が建設機械の制御装置20に設けられているので、作業現場に行かなくても建設機械側で軸継手80の摩耗状況を診断することができる。更に、建設機械の制御装置20が、診断結果を建設機械の稼働情報と併せてサーバ装置30等に送信することによって、サーバ装置30は、軸継手80の摩耗状況の推移や詳細な摩耗原因を分析したり、他の建設機械の軸継手80の診断結果を収集して軸継手80の摩耗状況を一元管理したりすることが容易となる。
【0077】
[実施形態4]
図8を用いて実施形態4の軸継手診断装置1について説明する。実施形態4の軸継手診断装置1において、実施形態3と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0078】
図8は、実施形態4の軸継手診断装置1の機能的構成を示すブロック図である。
【0079】
実施形態4の軸継手診断装置1では、機械情報取得部11及び稼働音取得部12が、建設機械の制御装置20に設けられている。実施形態4の軸継手診断装置1では、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14、摩耗状況診断部15及び診断結果出力部16が、建設機械と通信可能なサーバ装置30に設けられている。
【0080】
実施形態4の機械情報取得部11は、取得された軸継手80の情報を、サーバ装置30に送信する。実施形態4の稼働音取得部12は、取得された原動機60の稼働音を、サーバ装置30に送信する。実施形態4の診断結果出力部16は、診断結果を、建設機械に送信して建設機械に設けられた表示装置に表示させたり、携帯端末10に送信して携帯端末10の画面に表示させたりする。
【0081】
このように、実施形態4の軸継手診断装置1は、特徴量抽出部13、摩耗モデル取得部14及び摩耗状況診断部15がサーバ装置30に設けられているので、実施形態3よりも、これらの機能に係る処理を高速化することができる。よって、実施形態4の軸継手診断装置1は、実施形態3よりも、軸継手80の摩耗状況を迅速に診断することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…軸継手診断装置、10…携帯端末、11…機械情報取得部、12…稼働音取得部、13…特徴量抽出部、14…摩耗モデル取得部、15…摩耗状況診断部、20…制御装置、30…サーバ装置、60…原動機、61…駆動軸、70…従動機、71…従動軸、80…軸継手、85…弾性体