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  • 特許-天板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】天板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 21/00 20060101AFI20250612BHJP
   B32B 21/04 20060101ALI20250612BHJP
   A47B 96/18 20060101ALI20250612BHJP
   B27M 1/08 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
B32B21/00
B32B21/04
A47B96/18 E
A47B96/18 D
A47B96/18 H
B27M1/08 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022046429
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140539
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】紺野 良文
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 仁詞
(72)【発明者】
【氏名】北浦 英人
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-054804(JP,A)
【文献】特開2008-132000(JP,A)
【文献】特開2006-075582(JP,A)
【文献】実開平02-132453(JP,U)
【文献】実開平04-022226(JP,U)
【文献】特開昭63-160612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0075923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 21/00-04
A47B
B27M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材が接着された基材と、当該基材の端部下面側に接合された木質系の前垂れとを備えた天板であって、
前記基材の前端面と、前記前垂れの前端面に塗膜が形成されていることを特徴とする天板。
【請求項2】
前記基材と前垂れとの接合面に前記バッカ―材が介在しないことを特徴とする請求項1記載の天板。
【請求項3】
木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材が接着された基材と、当該基材の端部下面側に接合された木質系前垂れとを備えた天板であって、
前記基材の前端面と前垂れの前端面にバッカ―材が接着されていることを特徴とする天板。
【請求項4】
板状の基材と、当該基材の端部下面側に接合された前垂れとを備えた天板の製造方法であって、
木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材を接着して基材を形成する工程と、
前記基材の端部下面側であって、少なくとも前垂れを形成する木質系の角材の上面が接合される箇所のバッカー材を除去する工程と、
前記角材の上面を、前記バッカー材を除去した面に接合する工程と、
少なくとも前記基材の前端面と前垂れの前端面に塗装を施す工程と、
を含むことを特徴とする天板の製造方法。
【請求項5】
板状の基材と、当該基材の端部下面側に接合された前垂れとを備えた天板の製造方法であって、
木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材を接着して基材を形成する工程と、
前垂れを形成する木質系の角材の上面を前記基材の端部下面側に接合する工程と、
前記基材の前端面と前垂れの前端面にバッカ―材を接着する工程と、
を含むことを特徴とする天板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状の基材の前端側に前垂れを備えた天板及びその製造方法に係り、更に詳しくは、前垂れを基材に接合した際の前面側に表れる境界線を隠蔽し、基材と前垂れとの一体感を付与することができ、キッチンや洗面化粧台等のカウンターや、家具等に利用することに適合する天板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンや洗面化粧台のカウンター、或いは家具等に用いられる天板のうち、前端側に前垂れを設けることによって正面からの見え掛かりを厚くするタイプのものが存在する。
このような前垂れを備えた天板としては、天板を構成する基材の前端側を相対的に厚く形成した一体物の他、前垂れを形成する角柱状の部材を基材の前端側の下面に接合したものが存在する。また、基材の前端に、当該基材よりも上下幅寸法の大きな押し出し形材を取り付けて前垂れを形成したものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006―167270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した基材と前垂れとの一体物の場合は、それらの境界が天板の前端面に存在しないという利点があるが、樹脂による成形品として提供する場合には型による成形が必要になるという制約がある。しかも、木質系材料による一体物の天板を形成する場合には、前垂れ領域の加工に手間を要し、製造に際して熟練度を必要とするだけでなく、製造コストも高騰するという不都合がある。
【0005】
また、基材と前垂れとを別部材とし、これらを接合する構成では、一体物に比べてコスト削減が図れる反面、接合に伴う境界が、天板の前端面に線状に表出してしまい、基材と前垂れとの一体感が得られない、という不都合をもたらすこととなる。
【0006】
更に、特許文献1に記載された構成は、押し出し形材を交換することが可能となる一方、基材と前垂れとが異種の材料であることにより一体感を得ることができない。しかも、押し出し形材を用いる構成のため、前垂れを木質系とすることもできない。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、基材と前垂れとを接合した際の境界線が前端面に表出しない木質系の天板及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、基材に前垂れを接合する構造としても、一体感を付与することができる天板及びその製造方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、例えば、木質系の基材を材料に用いても一定の強度を有し、且つ、変形等のリスクの少ない天板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものである。具体的には、木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材が接着された基材と、当該基材の端部下面側に接合された木質系の前垂れとを備えた天板であって、
前記基材の前端面と、前記前垂れの前端面に塗膜が形成される、という構成を採っている。
【0009】
本発明において、前記基材と前垂れとの接合面に前記バッカ―材が介在しない構成を採用することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材が接着された基材と、当該基材の端部下面側に接合された木質系前垂れとを備えた天板であって、
前記基材の前端面と前垂れの前端面にバッカ―材が接着される、という構成を採用することもできる。
【0011】
更に、本発明は、板状の基材と、当該基材の端部下面側に接合された前垂れとを備えた天板の製造方法であって、
木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材を接着して基材を形成する工程と、
前記基材の端部下面側であって、少なくとも前垂れを形成する木質系の角材の上面が接合される箇所のバッカー材を除去する工程と、
前記角材の上面を、前記バッカー材を除去した面に接合する工程と、
少なくとも前記基材の前端面と前垂れの前端面に塗装を施す工程と、を含む、という手法を採っている。
【0012】
また、本発明は、板状の基材と、当該基材の端部下面側に接合された前垂れとを備えた天板の製造方法であって、
木質系の板状芯材の表裏各面にバッカ―材を接着して基材を形成する工程と、
前垂れを形成する木質系の角材の上面を前記基材の端部下面側に接合する工程と、
前記基材の前端面と前垂れの前端面にバッカ―材を接着する工程と、を含む手法を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前端面に塗膜を形成することで、基材と前垂れとの一体感を有する天板を提供することができる。
特に、基材の端部下面側のバッカ―材を除去して前垂れを接合する構成によれば、前垂れ領域の層構造を最小化できるとともに、基材と前垂れとの接合面における密着性を高めることで、天板の前端面に表出し得る境界を塗膜によって良好に隠蔽することが期待できる。
また、本発明は、MDF等の木質系芯材の表裏各面にバッカ―材を接着した基材や前垂れを採用することで、一定の強度を確保できるとともに、製造コストを削減することが可能となる。
更に、基材と前垂れの前端面にバッカ―材を接着する構成によれば、基材と前垂れとの境界が前端面に表出することがないばかりでなく、接合面のバッカ―材を除去する必要性もない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】天板が適用されたキャビネットの要部概略斜視図。
図2】(A)は図1の横断面図、(B)は図2(A)の拡大図。
図3】(A)は変形例を示す横断面図、(B)は図3(A)の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1において、天板10は箱状をなすキャビネット11の上端に配置されている。この天板10は、図2に示されるように、基材12と、この基材12の前端部(図2中左端部)下面側に接合された前垂れ14とを含む。基材12は平面視矩形をなし、本実施形態ではMDFを芯材13として用い、その表裏(上下)各面にバッカ―材15を接着することによって形成され、これにより、基材12の反り防止や強度向上が図られるようになっている。基材12の材料としては、板厚12mmのMDFからなる芯材13と、クラフト紙にフェノール樹脂を含浸させた厚み1mmのバッカ―材15が例示できる。
なお、バッカ―材15は、前記以外に、クラフト紙又はチタン紙に、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を含浸、積層したものから選択することができる。
【0016】
前記前垂れ14は、本実施形態では基材12と同一材料からなり、図2中下面側にバッカ―材15を接着したものが用いられている。この前垂れ14は、その前後幅が、例えば、23~25mm、厚み19mmの角柱材が用いられている。
前垂れ14が接合面13Aとなる基材12(芯材13)の下面側部分は、前記バッカ―材15を除去して研磨された平滑面とされており、この接合面13Aに、前垂れ14の上面が図示しない適宜な接着剤を介して接着されている。
【0017】
基材12と前垂れ14は、それら境界の前端にスプレー塗布による目止め処理が施された後、例えば、粗さ#240のサンドペーパーで端面研磨処理を行った上で、スプレー塗布により塗膜20が、少なくとも基材12の前端面と、前垂れ14の前端面に形成され、これにより、基材12と前垂れ14との境界線が隠蔽されて前面に表出するがないようになっている。
【0018】
従って、このような実施形態によれば、基材12と前垂れ14との間の境界が目立つことなく隠蔽された状態を得ることで、両者が一体となった外観を表出させることのできる天板の提供が可能となる。
しかも、基材12、前垂れ14の材料としてMDFを芯材13に用い、これにバッカ―材15を接着した構成としたことで、加工が容易で廉価に提供できるとともに、強度も十分に確保することができる。
【0019】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0020】
例えば、前記実施形態では前垂れ14の接合面となる基材12の端部下面、すなわち芯材13の下面からバッカ―材15を除去して研磨した面としたが、図3に示されるように、バッカ―材15を残したまま前垂れ14の上面をバッカ―材15の下面に接合する構成としてもよい。そして、この構成では、前記塗膜20に代えて、基材12と前垂れ14の前端面に、バッカ―材15を接着する構成とすることができる。
このような構成とすれば、基材12、前垂れ14の間にバッカ―材15が介在してそれらの境界線が複数存在しても、上面及び前端面がバッカ―材15で一様に覆われた一体感のある天板を提供することができる。
さらに、バッカー材15の表面にスプレー塗布により塗膜20を形成させてもよい。
【0021】
また、本発明における基材12、前垂れ14の材質、形状、寸法や、バッカ―材15の素材、厚み等は任意に決定できるものである。
【符号の説明】
【0022】
10…天板、12…基材、13…芯材、14…前垂れ、15…バッカ―材、20…塗膜
図1
図2
図3