(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】学習装置、学習方法、学習プログラム、推論装置、推論方法、推論プログラム、高画質化システムおよび高画質化方法
(51)【国際特許分類】
G06T 5/00 20240101AFI20250612BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20250612BHJP
G06T 5/60 20240101ALI20250612BHJP
【FI】
G06T5/00 700
G06T1/00 285
G06T5/60
(21)【出願番号】P 2022059093
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 康平
(72)【発明者】
【氏名】豊田 善隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真梨子
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208813(JP,A)
【文献】Xiang Zhu 他,Super-Resolving Commercial Satellite Imagery Using Realistic Training Data,2020 IEEE International Conference on Image Processing (ICIP),米国,IEEE,2020年09月30日,pp498-502,https://ieeexplore.ieee.org/document/9190746
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 5/00- 5/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する学習装置であって、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組を学習用データとして受け付けるデータ受付部と、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備え、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
学習装置。
【請求項2】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する学習方法であって、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組を学習用データとして受け付け、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成し、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
学習方法。
【請求項3】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成するための学習プログラムであって、
前記学習プログラムは、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組を学習用データとして受け付けるデータ受付部と、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成するモデル生成部として、
コンピュータを機能させ、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
学習プログラム。
【請求項4】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備え、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
推論装置。
【請求項5】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付け、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論方法であって、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
推論方法。
【請求項6】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部として
コンピュータを機能させる推論プログラムであって、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
推論プログラム。
【請求項7】
ターゲット衛星によって実施されるリモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報と、前記リモートセンシングによって得られるターゲット画像よりも画質が高い参照画像と、を受け付ける情報受付部と、
前記ターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって、画質を低めた前記参照画像である劣化画像を生成する劣化処理部と、
前記劣化画像と前記参照画像の組を学習することによって、学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記ターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
前記学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備え
、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
高画質化システム。
【請求項8】
前記参照画像が、飛翔体からの撮影によって得られた画像であり、
前記飛翔体が、ヘリコプターとアンマンドエアリアルビークルと航空機のいずれか又は前記ターゲット画像よりも画質が高い画像が得られる人工衛星である
請求項7に記載の高画質化システム。
【請求項9】
前記劣化処理は
、解像度処理とグラウンドサンプリングディスタンス処理とノイズ処理
のいずれかを含み、
前記解像度処理は、
前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するポイントスプレッドファンクションに基づき、バンド間で前記ポイントスプレッドファンクションの差がある場合、前記参照画像に対してエイリアシングを再現し、
前記グラウンドサンプリングディスタンス処理は、
前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像のグラウンドサンプリングディスタンスに基づき、前記参照画像に対して前記グラウンドサンプリングディスタンスを模擬し
、
前記ノイズ処理は、
前記ターゲット衛星情報が示す、前記リモートセンシングのノイズ特性に基づき、ノイズを前記参照画像に付加
する
請求項
7に記載の高画質化システム。
【請求項10】
ターゲット衛星によって実施されるリモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報と、前記リモートセンシングによって得られるターゲット画像よりも画質が高い参照画像と、を受け付ける情報受付部と、
前記ターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって、画質を低めた前記参照画像である劣化画像を生成する劣化処理部と、
前記劣化画像と前記参照画像の組
と、前記ターゲット画像と対応画像の組と、を学習することによって、学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記ターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
前記学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備え
、
前記対応画像が、前記リモートセンシングにおいて前記ターゲット画像が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、前記ターゲット画像よりも画質が高い
高画質化システム。
【請求項11】
ターゲット衛星によって実施されるリモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報と、前記リモートセンシングによって得られるターゲット画像よりも画質が高い参照画像と、を受け付ける情報受付部と、
前記ターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって、画質を低めた前記参照画像である劣化画像を生成する劣化処理部と、
前記劣化画像と前記参照画像の組を学習することによって、学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記ターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
前記学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備え
、
前記ターゲット衛星情報が、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、
前記劣化処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づいてバンド毎に異なるオフセットを使って、前記参照画像のダウンサンプリングを行う
高画質化システム。
【請求項12】
前記ターゲット画像が、可視光帯域の波長の光線を露光して得られる画像である
請求項7に記載の高画質化システム。
【請求項13】
前記ターゲット画像が、赤外光帯域の波長の光線を露光して得られる画像である
請求項7に記載の高画質化システム。
【請求項14】
ターゲット衛星によって実施されるリモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報と、前記リモートセンシングによって得られるターゲット画像よりも画質が高い参照画像と、を受け付け、
前記ターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって、画質を低めた前記参照画像である劣化画像を生成し、
前記劣化画像と前記参照画像の組を学習することによって、学習済みモデルを生成し、
前記ターゲット画像を受け付け、
前記学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する
高画質化方法であって、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する
高画質化方法。
【請求項15】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する学習装置であって、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組と、前記ターゲット画像と対応画像の組と、を学習用データとして受け付けるデータ受付部と、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備え、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、
前記対応画像が、前記リモートセンシングにおいて前記ターゲット画像が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、前記ターゲット画像よりも画質が高い
学習装置。
【請求項16】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する学習装置であって、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組を学習用データとして受け付けるデータ受付部と、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備え、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、
前記ターゲット衛星情報が、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、
前記劣化処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づいてバンド毎に異なるオフセットを使って、前記参照画像のダウンサンプリングを行う
学習装置。
【請求項17】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する学習方法であって、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組と、前記ターゲット画像と対応画像の組と、を学習用データとして受け付け、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成し、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、
前記対応画像が、前記リモートセンシングにおいて前記ターゲット画像が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、前記ターゲット画像よりも画質が高い
学習方法。
【請求項18】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する学習方法であって、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化画像の組を学習用データとして受け付け、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成し、
前記劣化画像が、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、
前記ターゲット衛星情報が、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、
前記劣化処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づいてバンド毎に異なるオフセットを使って、前記参照画像のダウンサンプリングを行う
学習方法。
【請求項19】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備え、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組と、前記ターゲット画像と対応画像の組と、を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記対応画像が、前記リモートセンシングにおいて前記ターゲット画像が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成される
推論装置。
【請求項20】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備え、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、 前記ターゲット衛星情報が、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、
前記劣化処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づいてバンド毎に異なるオフセットを使って、前記参照画像のダウンサンプリングを行う
推論装置。
【請求項21】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付け、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論方法であって、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組と、前記ターゲット画像と対応画像の組と、を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記対応画像が、前記リモートセンシングにおいて前記ターゲット画像が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成される
推論方法。
【請求項22】
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像を受け付け、
学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論方法であって、
前記学習済みモデルが、劣化画像と参照画像の組を学習することによって生成され、
前記参照画像が、前記ターゲット画像よりも画質が高い画像であり、
前記劣化画像は、画質を低めた前記参照画像であり、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、
前記ターゲット衛星情報が、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、
前記劣化処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づいてバンド毎に異なるオフセットを使って、前記参照画像のダウンサンプリングを行う
推論方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像の高画質化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洪水、大雨、地震などの災害が発生したときの被害を把握するために、地上センサが使用されていた。地上センサを用いた手法は、家屋、発電所などのスポットの被害状況を把握することに有用である。
一方で、地上センサを用いた手法では、被害が広域で発生する状況において、より被害が大きい地域を把握するための面的な情報を取得することが困難である。
【0003】
近年、広域災害の被害状況を把握するために、リモートセンシングデータを活用した解析手法が提案されている。
リモートセンシングの例として、航空機、UAV、光学衛星、SAR衛星などの飛翔体からのセンシングが挙げられる。
UAVは、Unmanned Aerial Vehicleの略称であり、ドローンとも呼ばれる。
SARは合成開口レーダの略称である。
【0004】
光学衛星によって得られる画像は、地表の様々な対象に対する監視手段として用いられている。
また、画像の地表分解能を向上させるために高解像度化モデルを用いて画像を高解像度化する技術がある。高解像度化モデルは、超解像モデルとも呼ばれ、機械学習によって生成される。
【0005】
特許文献1は、高解像度化モデルを用いて画像を高解像度化する技術を開示している。
高解像度化モデルは次のように生成される。まず、高解像度画像が用意される。次に、高解像度画像を元に低解像度画像が生成される。そして、高解像度画像と低解像度画像の組が教師画像と入力画像の組として学習されて高解像度化モデルが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の高解像度化技術(特許文献1の技術を含む)において、高解像度画像と低解像度画像の組が学習用データとして使用される機械学習によって高解像度化モデルが生成される。
低解像度画像は、ダウンサンプリング等の劣化処理を高解像度画像に施すことよって生成される。
ターゲット衛星によって得られる画像が学習用データとして使用される場合、ターゲット衛星の最高分解能を超える分解能を有する画像を教師画像とすることができない。
そのため、高解像度化モデルを用いても、ターゲット衛星の最高分解能を超える分解能を有する画像を生成することはできない。
なお、ターゲット衛星と他のリモートセンシングでは画像ドメインの差異があるため、他のリモートセンシングの画像を学習用データとして使用しても、ターゲット衛星の画像を高精度に高解像度化することはできない。
【0008】
本開示は、ターゲット衛星の最高分解能を超える分解能を有する画像を教師画像にして高解像度化モデルを生成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の学習装置は、
ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られるターゲット画像から画質を高め
た前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論するための学習済みモデルを生成する。
前記学習装置は、
前記ターゲット画像よりも画質が高い参照画像と画質を低めた前記参照画像である劣化
画像の組を学習用データとして受け付けるデータ受付部と、
前記学習用データを学習することによって前記学習済みモデルを生成するモデル生成部
と、を備える。
前記劣化画像は、前記リモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって生成され、
前記劣化処理は、色ずれ処理と圧縮処理のいずれかを含み、
前記色ずれ処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記圧縮処理は、前記ターゲット衛星情報が示す、前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を前記参照画像に適用する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ターゲット衛星の最高分解能を超える分解能を有する画像を教師画像にして高解像度化モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における高画質化システム100の構成図。
【
図2】実施の形態1における劣化処理装置200の構成図。
【
図3】実施の形態1における学習装置300の構成図。
【
図4】実施の形態1における推論装置400の構成図。
【
図5】実施の形態1における高画質化方法のフローチャート。
【
図6】実施の形態1におけるステップS110の概要図。
【
図7】実施の形態1におけるステップS120の概要図。
【
図8】実施の形態1におけるステップS130の概要図。
【
図9】実施の形態1におけるステップS110のフローチャート。
【
図10】実施の形態1におけるステップS112の概要図。
【
図11】実施の形態1におけるステップS120のフローチャート。
【
図12】実施の形態1におけるニューラルネットワークモデルの例を示す図。
【
図13】実施の形態1におけるステップS130のフローチャート。
【
図14】実施の形態1における学習装置300の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態および図面において、同じ要素または対応する要素には同じ符号を付している。説明した要素と同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。
【0013】
実施の形態1.
高画質化システム100について、
図1から
図14に基づいて説明する。
【0014】
***構成の説明***
図1に基づいて、高画質化システム100の構成を説明する。
高画質化システム100は、劣化処理装置200と、学習装置300と、推論装置400と、を備える。
【0015】
図2に基づいて、劣化処理装置200の構成を説明する。
劣化処理装置200は、プロセッサ201とメモリ202と補助記憶装置203と通信装置204と入出力インタフェース205といったハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
【0016】
プロセッサ201は、演算処理を行うICであり、他のハードウェアを制御する。例えば、プロセッサ201は、CPUである。
ICは、Integrated Circuitの略称である。
CPUは、Central Processing Unitの略称である。
【0017】
メモリ202は揮発性または不揮発性の記憶装置である。メモリ202は、主記憶装置またはメインメモリとも呼ばれる。例えば、メモリ202はRAMである。メモリ202に記憶されたデータは必要に応じて補助記憶装置203に保存される。
RAMは、Random Access Memoryの略称である。
【0018】
補助記憶装置203は不揮発性の記憶装置である。例えば、補助記憶装置203は、ROM、HDD、フラッシュメモリまたはこれらの組み合わせである。補助記憶装置203に記憶されたデータは必要に応じてメモリ202にロードされる。
ROMは、Read Only Memoryの略称である。
HDDは、Hard Disk Driveの略称である。
【0019】
通信装置204はレシーバ及びトランスミッタである。例えば、通信装置204は通信チップまたはNICである。劣化処理装置200の通信は通信装置204を用いて行われる。
NICは、Network Interface Cardの略称である。
【0020】
入出力インタフェース205は、入力装置および出力装置が接続されるポートである。例えば、入出力インタフェース205はUSB端子であり、入力装置はキーボードおよびマウスであり、出力装置はディスプレイである。劣化処理装置200の入出力は入出力インタフェース205を用いて行われる。
USBは、Universal Serial Busの略称である。
【0021】
劣化処理装置200は、情報受付部210と劣化処理部220と画像出力部230といった要素を備える。これらの要素はソフトウェアで実現される。
【0022】
補助記憶装置203には、情報受付部210と劣化処理部220と画像出力部230としてコンピュータを機能させるための劣化処理プログラムが記憶されている。劣化処理プログラムは、メモリ202にロードされて、プロセッサ201によって実行される。
補助記憶装置203には、さらに、OSが記憶されている。OSの少なくとも一部は、メモリ202にロードされて、プロセッサ201によって実行される。
プロセッサ201は、OSを実行しながら、劣化処理プログラムを実行する。
OSは、Operating Systemの略称である。
【0023】
劣化処理プログラムの入出力データは記憶部290に記憶される。
メモリ202は記憶部290として機能する。但し、補助記憶装置203、プロセッサ201内のレジスタおよびプロセッサ201内のキャッシュメモリなどの記憶装置が、メモリ202の代わりに、又は、メモリ202と共に、記憶部290として機能してもよい。
【0024】
劣化処理装置200は、プロセッサ201を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。
【0025】
劣化処理プログラムは、光ディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録(格納)することができる。
【0026】
図3に基づいて、学習装置300の構成を説明する。
学習装置300は、プロセッサ301とメモリ302と補助記憶装置303と通信装置304と入出力インタフェース305といったハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
【0027】
プロセッサ301は、演算処理を行うICであり、他のハードウェアを制御する。例えば、プロセッサ301はCPUである。
メモリ302は揮発性または不揮発性の記憶装置である。メモリ302は、主記憶装置またはメインメモリとも呼ばれる。例えば、メモリ302はRAMである。メモリ302に記憶されたデータは必要に応じて補助記憶装置303に保存される。
補助記憶装置303は不揮発性の記憶装置である。例えば、補助記憶装置303は、ROM、HDD、フラッシュメモリまたはこれらの組み合わせである。補助記憶装置303に記憶されたデータは必要に応じてメモリ302にロードされる。
通信装置304はレシーバ及びトランスミッタである。例えば、通信装置304は通信チップまたはNICである。学習装置300の通信は通信装置304を用いて行われる。
入出力インタフェース305は、入力装置および出力装置が接続されるポートである。例えば、入出力インタフェース305はUSB端子であり、入力装置はキーボードおよびマウスであり、出力装置はディスプレイである。学習装置300の入出力は入出力インタフェース305を用いて行われる。
【0028】
学習装置300は、データ受付部310とモデル生成部320とモデル出力部330といった要素を備える。これらの要素はソフトウェアで実現される。
【0029】
補助記憶装置303には、データ受付部310とモデル生成部320とモデル出力部330としてコンピュータを機能させるための学習プログラムが記憶されている。学習プログラムは、メモリ302にロードされて、プロセッサ301によって実行される。
補助記憶装置303には、さらに、OSが記憶されている。OSの少なくとも一部は、メモリ302にロードされて、プロセッサ301によって実行される。
プロセッサ301は、OSを実行しながら、学習プログラムを実行する。
【0030】
学習プログラムの入出力データは記憶部390に記憶される。
メモリ302は記憶部390として機能する。但し、補助記憶装置303、プロセッサ301内のレジスタおよびプロセッサ301内のキャッシュメモリなどの記憶装置が、メモリ302の代わりに、又は、メモリ302と共に、記憶部390として機能してもよい。
【0031】
学習装置300は、プロセッサ301を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。
【0032】
学習プログラムは、光ディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録(格納)することができる。
【0033】
図4に基づいて、推論装置400の構成を説明する。
推論装置400は、プロセッサ401とメモリ402と補助記憶装置403と通信装置404と入出力インタフェース405といったハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
【0034】
プロセッサ401は、演算処理を行うICであり、他のハードウェアを制御する。例えば、プロセッサ401はCPUである。
メモリ402は揮発性または不揮発性の記憶装置である。メモリ402は、主記憶装置またはメインメモリとも呼ばれる。例えば、メモリ402はRAMである。メモリ402に記憶されたデータは必要に応じて補助記憶装置403に保存される。
補助記憶装置403は不揮発性の記憶装置である。例えば、補助記憶装置403は、ROM、HDD、フラッシュメモリまたはこれらの組み合わせである。補助記憶装置403に記憶されたデータは必要に応じてメモリ402にロードされる。
通信装置404はレシーバ及びトランスミッタである。例えば、通信装置404は通信チップまたはNICである。推論装置400の通信は通信装置404を用いて行われる。
入出力インタフェース405は、入力装置および出力装置が接続されるポートである。例えば、入出力インタフェース405はUSB端子であり、入力装置はキーボードおよびマウスであり、出力装置はディスプレイである。推論装置400の入出力は入出力インタフェース405を用いて行われる。
【0035】
推論装置400は、画像受付部410と推論部420と画像出力部430といった要素を備える。これらの要素はソフトウェアで実現される。
【0036】
補助記憶装置403には、画像受付部410と推論部420と画像出力部430としてコンピュータを機能させるための推論プログラムが記憶されている。推論プログラムは、メモリ402にロードされて、プロセッサ401によって実行される。
補助記憶装置403には、さらに、OSが記憶されている。OSの少なくとも一部は、メモリ402にロードされて、プロセッサ401によって実行される。
プロセッサ401は、OSを実行しながら、推論プログラムを実行する。
【0037】
推論プログラムの入出力データは記憶部490に記憶される。
メモリ402は記憶部490として機能する。但し、補助記憶装置403、プロセッサ401内のレジスタおよびプロセッサ401内のキャッシュメモリなどの記憶装置が、メモリ402の代わりに、又は、メモリ402と共に、記憶部490として機能してもよい。
【0038】
推論装置400は、プロセッサ401を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。
【0039】
推論プログラムは、光ディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録(格納)することができる。
【0040】
***動作の説明***
高画質化システム100の動作の手順は高画質化方法に相当する。
【0041】
図5から
図8に基づいて、高画質化方法の概要を説明する。
ステップS110において、劣化処理装置200は、ターゲット衛星情報111に基づいて参照画像112を劣化させる。
【0042】
図6に、ステップS110の概要を示す。
ターゲット衛星情報111は、ターゲット衛星によって実施されるリモートセンシングの情報である。
ターゲット衛星は、高画質化のターゲットになる画像(後述するターゲット画像131)をリモートセンシングによって得る人工衛星である。
参照画像112は、ターゲット画像131よりも画質が高い画像である。例えば、参照画像112は、ターゲット画像131よりも解像度が高い画像であり、高解像度なリモートセンシングによって得られる。リモートセンシングの一例は、飛翔体からの撮影である。飛翔体の具体例は、ヘリコプター、UAV、航空機および人工衛星である。UAVはUnmanned Aerial Vehicleの略称である。また、リモートセンシングはヘリサットによって実施されてもよい。ヘリサットとは、ヘリコプター衛星通信システムである。
劣化画像113は、劣化された参照画像112である。言い換えると、劣化画像113は、ターゲット画像131の画質レベルまで画質を低めた参照画像112である。
【0043】
図5に戻り、説明を続ける。
ステップS110は、複数の参照画像112のそれぞれに対して実行される。
ステップS110により、劣化画像113と参照画像112の複数の組が生成される。
【0044】
ステップS120において、学習装置300は、劣化画像113と参照画像112の複数の組を学習して学習済みモデル122を生成する。
【0045】
図7に、ステップS120の概要を示す。
学習用データ121は、劣化画像113と参照画像112の組である。
【0046】
図5に戻り、説明を続ける。
ステップS130において、推論装置400は、学習済みモデル122を用いてターゲット画像131を高画質化する。
【0047】
図8に、ステップS130の概要を示す。
ターゲット画像131は、高画質化のターゲットになる画像であり、ターゲット衛星のリモートセンシングによって得られる。ターゲット画像131の種類は光学画像である。
推定画像132は、高画質化されたターゲット画像131に相当する。つまり、推定画像132は、画質を高めたターゲット画像131に相当する。
【0048】
図9に基づいて、ステップS110の手順を説明する。
ステップS111からステップS113は、参照画像112ごとに実行される。
【0049】
ステップS111において、情報受付部210は、ターゲット衛星情報111と参照画像112を受け付ける。
例えば、利用者がターゲット衛星情報111と参照画像112のそれぞれを劣化処理装置200に入力する。そして、情報受付部210は、入力されたターゲット衛星情報111と入力された参照画像112を受け付ける。
【0050】
ステップS112において、劣化処理部220は、ターゲット衛星情報111に基づく劣化処理を参照画像112に施す。これにより、劣化画像113が生成される。劣化画像113と参照画像112の組は、記憶部290に記憶される。
劣化処理は、画像の画質を劣化させるための処理である。劣化処理について後述する。
【0051】
ステップS113において、画像出力部230は、劣化画像113と参照画像112の組を出力する。
例えば、画像出力部230は、劣化画像113と参照画像112の組を利用者に指定された記憶媒体に保存する。または、画像出力部230は、劣化画像113と参照画像112の組を学習装置300へ送信する。
【0052】
図10に基づいて、ステップS112における劣化処理を説明する。
劣化処理の具体例は、色ずれ処理、解像度処理、GSD処理、ノイズ処理、圧縮処理またはこれらの組み合わせである。
【0053】
色ずれ処理は、色ずれを再現する処理である。
光学衛星には、複数の光学センサが搭載される。複数の光学センサは、互いに受光の波長帯域(バンド)が異なり、マルチバンドの画像を得る。そして、マルチバンドの画像が合成されることによって、合成画像が生成される。この際、光学センサ間の物理的な位置のずれの影響により、合成画像に色ずれが生じる場合がある。また、色ずれは、サブピクセルで発生する場合がある。
ターゲット衛星情報111は、ターゲット衛星に搭載された複数の光学センサの配置を示す。
色ずれ処理は、複数の光学センサの配置に基づいてバンド毎にダウンサンプリングのオフセットをずらして、参照画像112のダウンサンプリングを行う。ダウンサンプリングのオフセットは、ビニング開始位置を意味する。
これにより、参照画像112に対してサブピクセルの色ずれが再現され、劣化画像113が生成される。
【0054】
解像度処理は、解像度を劣化させる処理である。
光学衛星によって得られる光学画像に対して、解像力の指標であるPSFが決定される。PSFはPoint Spread Functionの略称である。解像力は、光学センサの光学性能、光学センサの開口形状、擾乱および像流れなどの影響を考慮した複数の劣化モデルを組み合わせて得られる。
ターゲット衛星情報111は、ターゲット画像131に対するPSFを示す。
解像度処理は、参照画像112にPSFを適用する。例えば、周波数空間でPSFが乗算される。または、参照画像112に対してPSFが畳み込み積分される。
これにより、参照画像112の解像力がターゲット画像131の解像力相当に変換され、劣化画像113が生成される。
解像度処理において、参照画像112のPSFが用いられてもよい。参照画像112のPSFを示す参照情報は、参照画像112と共に受け付けられる。
さらに、バンド間のPSFの差異が解像度処理に取り込まれてもよい。これにより、参照画像112に対するエイリアシングを再現することが可能になる。PSFの差異について説明する。PSFがバンド毎に異なる場合がある。例えば、マルチスペクトルバンドのMTFは、パンクロマティックバンドのPSFに比べて高い。そのため、マルチスペクトルの画像にエイリアシングが発生している場合がある。MTFはModulation Transfer Functionの略称である。
【0055】
GSD処理は、GSDを使用する劣化処理である。GSDはGround Sampling Distanceの略称である。
ターゲット衛星情報111は、ターゲット画像131のGSDを示す。
GSD処理は、ターゲット画像131のGSDを参照画像112のGSDと比較し、比較結果に基づいて参照画像112のダウンサンプリングを行う。ダウンサンプリングの具体例は、バイリニア補間またはバイキュービック補間などである。参照画像112のGSDを示す参照情報は、参照画像112と共に受け付けられる。
これにより、参照画像112に対してターゲット画像131のGSDが模擬され、劣化画像113が生成される。
GSD処理において、参照画像112のGSDとターゲット画像131のGSDの比率が高画質化システム100による高解像度化の倍率以上であることが望ましい。
【0056】
ノイズ処理は、ノイズを付加する劣化処理である。
ターゲット衛星情報111は、ターゲット衛星のリモートセンシングのノイズ特性を示す。具体的には、ターゲット衛星情報111は、ターゲット衛星のリモートセンシングの感度性能と、想定被写体からの光量と、を示す。
ノイズ処理は、ターゲット衛星の感度性能と想定被写体からの光量に基づいてターゲット画像131のSN比を見積もり、SN比に応じたノイズを参照画像112に付加する。ノイズが加算性白色ガウス雑音であると仮定した場合、SN比はガウス雑音の標準偏差に関係する。そのため、SN比に基づいてターゲット画像131のノイズ相当のノイズを適用する劣化処理が可能である。SNはSignal to Noise Ratioの略称である。
ノイズ処理において、加法性白色ガウス雑音以外のノイズが参照画像112に付加されてもよい。この場合、ターゲット衛星情報111は、加法性白色ガウス雑音以外のノイズの特性を示す。加法性白色ガウス雑音以外のノイズの具体例は、縞状ノイズおよびFPNである。FPNはFixed Pattern Noiseの略称である。
また、ターゲット画像131が熱赤外画像である場合、内部輻射によるショットノイズ、1/fノイズまたはシェーディングが参照画像112に付加されてもよい。
また、大気の影響によるノイズが参照画像112に付加されてもよい。参照画像112が大気圏内で撮影を行う高解像度リモートセンシングによって得られる場合、参照画像112には大気起因のノイズが含まれない。一方、ターゲット画像131には大気起因のノイズが含まれる。例えば、画像コントラスト低下、遮蔽、擾乱などのノイズがターゲット画像131に含まれる。そこで、ノイズ処理は、公開された大気モデルを使って、大気の影響によるノイズを参照画像112に付加する。これにより、衛星画像を模擬した画像を生成することが可能である。
【0057】
圧縮処理は、データ圧縮による劣化処理である。
ターゲット画像131が地上局にダウンリンクされる際、データ圧縮が行われる。データ圧縮が不可逆圧縮である場合、圧縮由来の画質劣化が生じる。
ターゲット衛星情報111は、ターゲット画像131に対するデータ圧縮手法を示す。
圧縮処理は、ターゲット画像131に対するデータ圧縮手法を参照画像112に適用する。
これにより、参照画像112においてターゲット画像131と同様の劣化を再現することができる。
【0058】
図11に基づいて、ステップS120の手順を説明する。
ステップS121において、データ受付部310は、劣化画像113と参照画像112の複数の組を受け付ける。
例えば、利用者が複数の組を学習装置300に入力し、データ受付部310は入力された複数の組を受け付ける。または、劣化処理装置200が複数の組を送信し、データ受付部310は複数の組を受信する。
そして、データ受付部310は、劣化画像113と参照画像112の複数の組を学習用データ121として記憶部390に記憶する。
【0059】
ステップS122において、モデル生成部320は、劣化画像113と参照画像112の複数の組を学習する。これにより、学習済みモデル122が生成される。学習済みモデル122は、記憶部390に記憶される。
学習済みモデル122は、入力画像に対応する高画質画像を推論するための学習済みモデルである。高画質画像は高画質化された入力画像に相当する画像である。
ステップS122の学習について後述する。
【0060】
ステップS123において、モデル出力部330は、学習済みモデル122を出力する。
例えば、モデル出力部330は、学習済みモデル122を利用者に指定された記憶媒体に保存する。または、モデル出力部330は、学習済みモデル122を推論装置400へ送信する。
【0061】
ステップS122の学習について説明する。
学習用データ121において、参照画像112は、劣化画像113から推論されるべき正解である。つまり、参照画像112は、劣化画像113に対応する教師データである。
モデル生成部320は、劣化画像113に対応する参照画像112を学習する。つまり、モデル生成部320は、劣化画像113と参照画像112の組み合わせを学習する。これにより、学習済みモデル122が生成される。
【0062】
モデル生成部320は、教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習または強化学習などの公知の学習アルゴリズムを用いることができる。
教師あり学習が適用される場合、参照画像112に映った被写体は、ターゲット画像131に映った被写体と同じである。
教師なし学習が適用される場合、参照画像112に映った被写体がターゲット画像131に映った被写体と同じである必要はない。
【0063】
例えば、モデル生成部320は、ニューラルネットワークモデルを用いた教師あり学習を以下のように行う。
教師あり学習は、入力データから結果データを推論する手法であり、入力データと結果データの組を学習用データにして学習用データにある特徴を学習する。
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層と、複数のニューロンからなる1つ以上の中間層と、複数のニューロンからなる出力層と、で構成される。中間層は隠れ層とも呼ばれる。
【0064】
図12は、ニューラルネットワークモデルの例を示す。
「X1」、「X2」、「X3」は、入力層を構成している。
「Y1」、「Y2」は、1つの中間層を構成している。
「Z1」、「Z2」、「Z3」は、出力層を構成している。
入力層(X1~X3)には、複数の入力値が入力される。複数の入力値が入力層(X1~X3)に入力されると、第一の重み(w11~w16)が複数の入力値に掛けられる。これによって得られる複数の値を複数の算出値と称する。
複数の算出値は中間層(Y1、Y2)に入力される。複数の算出値が中間層(Y1、Y2)に入力されると、第二の重み(w21~w26)が複数の算出値に掛けられる。これによって得られる複数の値を複数の出力値と称する。
複数の出力値は、出力層(Z1~Z3)に入力され、出力層(Z1~Z3)から出力される。複数の出力値は、第一の重み(w11~w16)と第二の重み(w21~W26)によって変わる。
【0065】
教師あり学習において、モデル生成部320は、劣化画像113を複数の入力値として入力層に入力し、出力層から出力された複数の出力値が参照画像112に近づくように第一の重み及び第二の重みを調整する。
【0066】
図13に基づいて、ステップS130の手順を説明する。
ステップS130において、学習済みモデル122は記憶部490に記憶されている。例えば、利用者が学習済みモデル122を学習装置300に入力し、推論部420が入力された学習済みモデル122を記憶部490に記憶する。または、学習装置300が学習済みモデル122を送信し、推論部420が学習済みモデル122を受信して記憶部490に記憶する。
【0067】
ステップS131において、画像受付部410は、ターゲット画像131を受け付ける。
例えば、利用者がターゲット画像131を推論装置400に入力し、画像受付部410は入力されたターゲット画像131を受け付ける。
【0068】
ステップS132において、推論部420は、学習済みモデル122を用いてターゲット画像131から推定画像132を推論する。
具体的には、推論部420は、ターゲット画像131を入力にして学習済みモデル122を演算する。これにより、推定画像132が学習済みモデル122から出力される。
【0069】
ステップS133において、画像出力部430は、推定画像132を出力する。
例えば、画像出力部430は、推定画像132をディスプレイに表示する。
【0070】
***実施の形態1の効果***
実施の形態1により、光学衛星画像向けの高画質化モデル(学習済みモデル122)を得ることが可能となる。そして、実際の衛星画像(ターゲット画像131)を高画質化モデルの入力にして高精度に高画質化画像(推定画像132)を得ることが可能となる。
【0071】
***実施の形態1の補足***
高画質化は、高解像度化、地上分解能の向上、SN比の改善、バンド間の色ずれの改善などを意味する。
【0072】
ターゲット画像131の種類は光学画像である。
光学画像は、光線を露光して得られる画像である。露光される光線は、可視光と近赤外光と遠赤外光のいずれの帯域の波長を有する光線であってもよい。
【0073】
学習装置300は、他の高画質化システムで生成される学習用データを用いて学習を行ってもよい。
複数の高画質化システムが複数のエリアで使用される場合、学習装置300は、高画質化システム100と同一のエリアで使用される高画質化システムから学習用データを取得してもよいし、高画質化システム100と異なるエリアで使用される高画質化システムから学習用データを取得してもよい。
学習装置300は、学習用データの取得元となるシステム群に各高画質化システムを随時に追加してもよいし、学習用データの取得元となるシステム群から各高画質化システムを随時に除去してもよい。
学習装置300は、他の高画質化システムで生成された学習済みモデルを使用してもよい。例えば、学習装置300は、学習用データ121を用いて学習を行って学習済みモデルを更新する。更新された学習済みモデルが学習済みモデル122となる。
【0074】
学習装置300の学習アルゴリズムは、特徴量そのものの抽出を学習する深層学習(Deep Learning)であってもよい。
または、学習アルゴリズムは、遺伝的プログラム、機能論理プログラムまたはサポートベクターマシンなどに従う機械学習であってもよい。
【0075】
図14は、学習装置300の実施例を示す。
ターゲット衛星のリモートセンシングによってターゲット画像131の他に対応画像123を得ることができる場合、ターゲット画像131と対応画像123の組が学習用データ121に加わってもよい。
対応画像123は、ターゲット画像131に対応する画像である。対応画像123は、ターゲット画像131が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、ターゲット画像131よりも画質が高い。
この実施例は、ターゲット画像131が最高分解能の観測モード以外の観測モードで得られた場合に可能である。
【0076】
劣化処理装置200は、学習用の入力画像を生成する入力画像生成装置として機能する。
学習装置300は、学習済みモデルを生成するモデル生成装置として機能する。
推論装置400は、学習済みモデルを活用する活用装置として機能する。
【0077】
実施の形態1は、好ましい形態の例示であり、本開示の技術的範囲を制限することを意図するものではない。実施の形態1は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。フローチャート等を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【0078】
高画質化システム100の各装置の各要素は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで実現されてもよい。
高画質化システム100の各装置の各要素の「部」は、「処理」、「工程」、「回路」または「サーキットリ」と読み替えてもよい。
【0079】
以下に、本開示の諸態様を付記として記載する。
【0080】
(付記1)
ターゲット衛星によって実施されるリモートセンシングの情報を示すターゲット衛星情報と、前記リモートセンシングによって得られるターゲット画像よりも画質が高い参照画像と、を受け付ける情報受付部と、
前記ターゲット衛星情報に基づく劣化処理を前記参照画像に施すことによって、画質を低めた前記参照画像である劣化画像を生成する劣化処理部と、
前記劣化画像と前記参照画像の組を学習することによって、学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記ターゲット画像を受け付ける画像受付部と、
前記学習済みモデルを用いて、前記ターゲット画像から、画質を高めた前記ターゲット画像に相当する推定画像を推論する推論部と、
を備える高画質化システム。
【0081】
(付記2)
前記参照画像が、飛翔体からの撮影によって得られた画像であり、
前記飛翔体が、ヘリコプターとアンマンドエアリアルビークルと航空機のいずれか又は前記ターゲット画像よりも画質が高い画像が得られる人工衛星である
付記1に記載の高画質化システム。
【0082】
(付記3)
前記劣化処理は、色ずれ処理と解像度処理とグラウンドサンプリングディスタンス処理とノイズ処理と圧縮処理のいずれか、又は、前記色ずれ処理と前記解像度処理と前記グラウンドサンプリングディスタンス処理と前記ノイズ処理と前期圧縮処理のいずれかの組み合わせであり、
前記ターゲット衛星情報が前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、前記色ずれ処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づく色ずれを前記参照画像に再現し、
前記ターゲット衛星情報が前記ターゲット画像に対するポイントスプレッドファンクションを示し、前記解像度処理は、前記参照画像に対して前記ポイントスプレッドファンクションを適用し、
前記ターゲット衛星情報が前記ターゲット画像のグラウンドサンプリングディスタンスを示し、前記グラウンドサンプリングディスタンス処理は、前記参照画像に対して前記グラウンドサンプリングディスタンスを模擬し、
前記ターゲット衛星情報が前記リモートセンシングのノイズ特性を示し、前記ノイズ処理は、前記ノイズ特性に基づくノイズを前記参照画像に付加し、
前記ターゲット衛星情報が前記ターゲット画像に対するデータ圧縮手法を示し、前記圧縮処理は前記データ圧縮手法を前記参照画像に適用する
付記1または付記2に記載の高画質化システム。
【0083】
(付記4)
前記モデル生成部は、前記劣化画像と前記参照画像の前記組と、前記ターゲット画像と対応画像の組と、を学習して前記学習済みモデルを生成し、
前記対応画像が、前記リモートセンシングにおいて前記ターゲット画像が得られる観測モードとは異なる観測モードで得られ、前記ターゲット画像よりも画質が高い
付記1から付記3のいずれか1つに記載の高画質化システム。
【0084】
(付記5)
前記ターゲット衛星情報が、前記ターゲット衛星に搭載される複数の光学センサの配置を示し、
前記劣化処理は、前記複数の光学センサの前記配置に基づいてバンド毎に異なるオフセットを使って、前記参照画像のダウンサンプリングを行う
付記1、付記2または付記4に記載の高画質化システム。
【0085】
前記ターゲット画像が、可視光帯域の波長の光線を露光して得られる画像である
付記1から付記5のいずれか1つに記載の高画質化システム。
【0086】
(付記6)
前記ターゲット画像が、赤外光帯域の波長の光線を露光して得られる画像である
付記1から付記5のいずれか1つに記載の高画質化システム。
【符号の説明】
【0087】
100 高画質化システム、111 ターゲット衛星情報、112 参照画像、113 劣化画像、121 学習用データ、122 学習済みモデル、123 対応画像、131 ターゲット画像、132 推定画像、200 劣化処理装置、201 プロセッサ、202 メモリ、203 補助記憶装置、204 通信装置、205 入出力インタフェース、210 情報受付部、220 劣化処理部、230 画像出力部、290 記憶部、300 学習装置、301 プロセッサ、302 メモリ、303 補助記憶装置、304 通信装置、305 入出力インタフェース、310 データ受付部、320 モデル生成部、330 モデル出力部、390 記憶部、400 推論装置、401 プロセッサ、402 メモリ、403 補助記憶装置、404 通信装置、405 入出力インタフェース、410 画像受付部、420 推論部、430 画像出力部、490 記憶部。