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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】評価システム及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20250612BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022076478
(22)【出願日】2022-05-06
(65)【公開番号】P2023165463
(43)【公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 慧
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 保幸
(72)【発明者】
【氏名】戸邉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】福島 大介
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196661(JP,A)
【文献】特開2019-190062(JP,A)
【文献】特開2021-107650(JP,A)
【文献】特開2022-052963(JP,A)
【文献】特開2017-117147(JP,A)
【文献】特開平06-003145(JP,A)
【文献】特開2021-095716(JP,A)
【文献】特開2019-203328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0240268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの切羽におけるリスクを評価する評価システムであって、
トンネルの切羽に関する切羽評価指標であって、割れ目の状態を表す割れ目評価指標、風化の度合いを表す風化度評価指標、岩盤の強度を表す岩強度評価指標、及び、湧水量を表す湧水量評価指標のうちの少なくとも2つの切羽評価指標を取得する切羽評価指標取得部と、
前記切羽に吹き付けたコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標を取得する吹き付けコンクリート指標取得部と、
前記切羽におけるリスクに関する事象の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報を取得するリスク事象情報取得部と、
前記切羽評価指標と、前記吹き付けコンクリート指標と、前記リスク事象情報との関係を表す評価モデルを所定の統計的分析手法により算出する評価モデル生成部と、
を備える評価システム。
【請求項2】
前記評価モデル生成部は、前記切羽評価指標及び前記吹き付けコンクリート指標を入力とし、前記リスク事象情報を出力とする前記評価モデルを算出し、
前記評価システムは、
前記評価モデルを用いて、前記切羽評価指標及び前記吹き付けコンクリート指標に基づいて、前記リスク発生確率を算出する評価部、をさらに備える、
請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記吹き付けコンクリート指標取得部は、所定の基準位置からコンクリートの吹き付け前の切羽面までの距離と、前記基準位置からコンクリートの吹き付け後の切羽面までの距離とに基づいて算出されたコンクリートの厚さを指標値とする前記吹き付けコンクリート指標を取得する、

請求項2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記評価モデル生成部は、前記切羽評価指標及び前記リスク事象情報を入力とし、前記吹き付けコンクリート指標を出力とする前記評価モデルを算出し、
前記評価システムは、
前記評価モデルを用いて、前記切羽評価指標及び前記リスク発生確率に基づいて、前記吹き付けコンクリート指標を算出する評価部、をさらに備える、
請求項1に記載の評価システム。
【請求項5】
前記統計的分析手法は、ロジスティック回帰分析であり、
前記評価モデル生成部は、前記ロジスティック回帰のアルゴリズムに基づき、前記切羽評価指標及び前記吹き付けコンクリート指標に基づいて前記リスク事象情報を算出する前記評価モデルを生成する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項6】
トンネルの切羽におけるリスクを評価する評価システムにおける評価方法であって、
トンネルの切羽に関する切羽評価指標であって、割れ目の状態を表す割れ目評価指標、風化の度合いを表す風化度評価指標、岩盤の強度を表す岩強度評価指標、及び、湧水量を表す湧水量評価指標のうちの少なくとも2つの切羽評価指標を取得する切羽評価指標取得ステップと、
前記切羽に吹き付けたコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標を取得する吹き付けコンクリート指標取得ステップと、
前記切羽におけるリスクに関する事象の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報を取得するリスク事象情報取得ステップと、
前記切羽評価指標と、前記吹き付けコンクリート指標と、前記リスク事象情報との関係を表す評価モデルを所定の統計的分析手法により算出する評価モデル生成ステップと、
を有する評価方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの切羽の状態を評価する技術が知られている。例えば特許文献1には、切羽を撮像した切羽画像をメッシュ状に分割し、分割した各領域から亀裂が交差する領域を抽出し、抽出された領域に基づいて切羽の状態を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-196961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、剥落等の切羽におけるリスクとなる事象の発生を防ぐために、切羽の状態の評価結果に基づいて切羽に吹き付ける吹き付けコンクリートの厚さが決定されていた。しかしながら、従来においては、切羽の状態のみに応じて吹き付けコンクリートの厚さが決定されていたので、吹き付けコンクリートの厚さに応じたリスクの発生確率が考慮されておらず、評価の精度が十分ではなかった。
【0005】
そこで本発明は、切羽におけるリスクの高精度な評価を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る評価システムは、トンネルの切羽におけるリスクを評価する評価システムであって、トンネルの切羽に関する切羽評価指標であって、割れ目の状態を表す割れ目評価指標、風化の度合いを表す風化度評価指標、岩盤の強度を表す岩強度評価指標、及び、湧水量を表す湧水量評価指標のうちの少なくとも2つの切羽評価指標を取得する切羽評価指標取得部と、切羽に吹き付けたコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標を取得する吹き付けコンクリート指標取得部と、切羽におけるリスクに関する事象の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報を取得するリスク事象情報取得部と、切羽評価指標と、吹き付けコンクリート指標と、リスク事象情報との関係を表す評価モデルを所定の統計的分析手法により算出する評価モデル生成部と、を備える。
【0007】
本発明の一形態に係る評価方法は、トンネルの切羽におけるリスクを評価する評価システムにおける評価方法であって、トンネルの切羽に関する切羽評価指標であって、割れ目の状態を表す割れ目評価指標、風化の度合いを表す風化度評価指標、岩盤の強度を表す岩強度評価指標、及び、湧水量を表す湧水量評価指標のうちの少なくとも2つの切羽評価指標を取得する切羽評価指標取得ステップと、切羽に吹き付けたコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標を取得する吹き付けコンクリート指標取得ステップと、切羽におけるリスクに関する事象の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報を取得するリスク事象情報取得ステップと、切羽評価指標と、吹き付けコンクリート指標と、リスク事象情報との関係を表す評価モデルを所定の統計的分析手法により算出する評価モデル生成ステップと、を有する。
【0008】
上記の形態によれば、切羽の状態を示す切羽評価指標及びリスク事象の発生確率を表すリスク事象情報に加えて、吹き付けコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標の関係を表す評価モデルが算出される。算出された評価モデルにより、吹き付けコンクリートの厚さとリスク事象の発生確率との関係に関する知見が得られるので、吹き付けコンクリートの厚さに応じた切羽におけるリスクを高精度に評価することが可能となる。
【0009】
別の形態に係る評価システムでは、評価モデル生成部は、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標を入力とし、リスク事象情報を出力とする評価モデルを算出し、評価システムは、評価モデルを用いて、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標に基づいて、リスク発生確率を算出する評価部、をさらに備えることとしてもよい。
【0010】
上記の形態によれば、吹き付けコンクリートの厚さに応じたトンネルの切羽におけるリスクの発生確率を高精度に算出することが可能となる。
【0011】
別の形態に係る評価システムでは、吹き付けコンクリート指標取得部は、所定の基準位置からコンクリートの吹き付け前の切羽面までの距離と、基準位置からコンクリートの吹き付け後の切羽面までの距離とに基づいて算出されたコンクリートの厚さを指標値とする吹き付けコンクリート指標を取得することとしてもよい。
【0012】
上記の形態によれば、基準位置から切羽面までの距離が例えばレーザ光の反射を用いて測定されることにより、精度が高い吹き付けコンクリートの厚さを容易に取得できる。
【0013】
別の形態に係る評価システムでは、評価モデル生成部は、切羽評価指標及びリスク事象情報を入力とし、吹き付けコンクリート指標を出力とする評価モデルを算出し、評価システムは、評価モデルを用いて、切羽評価指標及びリスク発生確率に基づいて、吹き付けコンクリート指標を算出する評価部、をさらに備えることとしてもよい。
【0014】
上記の形態によれば、リスクに関する事象の発生確率が考慮された、適切な吹き付けコンクリートの厚さを算出することが可能となる。
【0015】
別の形態に係る評価システムでは、統計的分析手法は、ロジスティック回帰分析であり、評価モデル生成部は、ロジスティック回帰のアルゴリズムに基づき、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標に基づいてリスク事象情報を算出する評価モデルを生成することとしてもよい。
【0016】
上記の形態によれば、切羽評価指標と、吹き付けコンクリート指標と、リスク事象情報との関係が精度よく表された評価モデルを容易に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、切羽におけるリスクの高精度な評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る評価システム及び評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】評価装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】切羽面に設定されたメッシュを示す図である。
図4】評価モデルの生成に供される学習データであって、切羽のメッシュごとに取得されたリスク事象情報、吹き付けコンクリート指標及び切羽評価指標を含む学習用データの例を示す図である。
図5】切羽評価指標のうちの割れ目評価指標の一例である割れ目間隔の取得の例を示す図である。
図6】切羽評価指標のうちの割れ目評価指標の一例である割れ目交差密度の取得の例を示す図である。
図7図7(a)は、生成された評価モデルを表すグラフ、及び、剥落無しの学習データの地山条件を評価モデルの式に入力して得られた剥落発生確率のプロットの例である。図7(b)は、生成された評価モデルを表すグラフ、及び、剥落有りの学習データの地山条件を評価モデルの式に入力して得られた剥落発生確率のプロットの例である。
図8】生成された評価モデルの利用の例を説明するための図である。図8(a)は、学習データ群を用いた機械学習により生成された評価モデルに、その学習データ群に含まれ剥落が発生しなかった、ある地点の切羽評価指標を代入することにより得られた、吹き付け厚に対する剥落発生確率の関係を示すグラフである。図8(b)は、学習データ群を用いた機械学習により生成された評価モデルに、その学習データ群に含まれ剥落が発生した、ある地点の切羽評価指標を代入することにより得られた、吹き付け厚に対する剥落発生確率の関係を示すグラフである。
図9】評価システムにおいて実施される評価モデルの生成の局面における評価方法の処理内容を示すフローチャートである。
図10】評価システムにおいて実施されるリスク発生確率の算出の局面における評価方法の処理内容を示すフローチャートである。
図11】評価システムにおいて実施される吹き付けコンクリート指標の算出の局面における評価方法の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る評価システム及び評価装置の機能的構成を示すブロック図である。評価システム1は、トンネルの切羽におけるリスクを評価するシステムである。図1に示される評価システム1は、評価装置10を含んで構成されている。
【0021】
評価装置10は、例えば、サーバ等のコンピュータにより構成される。本実施形態の評価装置10は、機能的には、切羽評価指標取得部11、吹き付けコンクリート指標取得部12、リスク事象情報取得部13、評価モデル生成部14、評価部15及び出力部16を備える。これらの機能部については、後に詳述する。
【0022】
また、評価装置10の各機能部は、切羽評価指標記憶部20、吹き付けコンクリート指標記憶部30、リスク事象情報記憶部40及び評価モデル記憶部50といった記憶手段にアクセス可能に構成されている。これらの記憶部は、評価装置10に備えられることとしてもよいし、図1に示されるように評価装置10からのアクセスが可能に設けられた外部の記憶手段として構成されてもよい。
【0023】
図2は、評価装置10のハードウェア構成図である。評価装置10は、物理的には、図2に示すように、プロセッサ101、RAM及びROMといったメモリにより構成される主記憶装置102、ハードディスク等で構成される補助記憶装置103、通信制御装置104などを含むコンピュータシステムとして構成されている。評価装置10は、入力デバイスであるキーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置105及びディスプレイ等の出力装置106をさらに含むこととしてもよい。
【0024】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサの例としてCPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)が挙げられるが、プロセッサ101の種類はこれらに限定されない。例えば、プロセッサ101はセンサおよび専用回路の組合せでもよい。専用回路はFPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラム可能な回路でもよいし、他の種類の回路でもよい。
【0025】
主記憶装置102は、評価装置10を実現させるためのプログラム、プロセッサ101から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶装置102は例えばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)のうちの少なくとも一つにより構成される。
【0026】
補助記憶装置103は、一般に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶装置103は例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶装置103は、コンピュータを評価装置10として機能させるためのプログラムP1と各種のデータとを記憶する。また、各記憶部20,30,40,50が評価装置10に含まれる場合には、各記憶部20,30,40,50は、主記憶装置102、補助記憶装置103及びその他の記憶素子のいずれかに構成されてもよい。
【0027】
通信制御装置104は、通信ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータ通信を実行する装置である。通信制御装置104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0028】
図1に示した各機能は、図2に示すプロセッサ101、主記憶装置102等のハードウェア上にプログラムP1を読み込ませてプロセッサ101にそのプログラムP1を実行させることにより実現される。プログラムP1は、評価装置10の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ101は、プログラムP1に従って通信制御装置104等を動作させるとともに、主記憶装置102及び補助記憶装置103におけるデータの読み出し及び書き込みを実行する。処理に必要なデータ及びデータベースは主記憶装置102及び補助記憶装置103内に格納される。なお、本実施形態では、各機能部11~16が、評価装置10に構成されることとしているが、複数のコンピュータに分散して構成されることとしてもよい。
【0029】
プログラムP1は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0030】
ここで、一般的なトンネル施工について簡単に説明する。トンネルの施工に主に用いられる工法では、いわゆる発破工程、ずり出し工程、一次コンクリート吹き付け工程、支保工設置工程、二次コンクリート吹き付け工程及びロックボルト設置工程を所定距離ごとに繰返すことにより、トンネルを軸方向に構築していく。
【0031】
ずり出し工程及び一次コンクリート吹き付け工程の後の支保工設置工程等の作業では、トンネルの切羽近傍に作業者が進入して作業することがある。切羽は剥落するおそれがあるので、切羽近傍での作業の安全性を高めるために、ずり出し工程の後の一次コンクリート吹き付け工程では、切羽にコンクリート材料を吹き付けることにより切羽を安定させている。この際、切羽の状態(切羽の剥落のリスク)を評価し、評価結果に基づいて、コンクリート材料の吹き付け厚さ等を決定している。また、切羽は、コンクリートを吹き付けた後でも剥落することがある。本実施形態の評価システム1は、切羽の状態を表す評価指標と、吹き付けコンクリートの厚さを示す吹き付けコンクリート指標と、剥落等のリスク事象の発生の確率との関係性を適切に評価するためのものである。
【0032】
再び図1を参照して、評価装置10の機能部を説明する。切羽評価指標取得部11は、トンネルの切羽の状態に関する切羽評価指標を取得する。本実施形態では、切羽評価指標取得部11は、切羽評価指標記憶部20から切羽評価指標を取得する。切羽評価指標記憶部20は、切羽評価指標を記憶している記憶手段である。
【0033】
吹き付けコンクリート指標取得部12は、切羽に吹き付けたコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標を取得する。本実施形態では、吹き付けコンクリート指標取得部12は、吹き付けコンクリート指標記憶部30から吹き付けコンクリート指標を取得する。吹き付けコンクリート指標記憶部30は、吹き付けコンクリート指標を記憶している記憶手段である。
【0034】
リスク事象情報取得部13は、切羽におけるリスクに関する事象の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報を取得する。本実施形態では、リスク事象情報取得部13は、リスク事象情報記憶部40からリスク事象情報を取得する。リスク事象情報記憶部40は、リスク事象情報を記憶している記憶手段である。
【0035】
図3は、トンネルの切羽面に設定されたメッシュを示す図である。図3に示されるように、本実施形態の評価システム1では、トンネルの切羽面Fにメッシュ群Mが設定される。なお、以下において、各メッシュをメッシュmと表記する。
【0036】
切羽評価指標記憶部20、吹き付けコンクリート指標記憶部30及びリスク事象情報記憶部40はそれぞれ、メッシュmごとに関連付けられた切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報を記憶している。切羽評価指標取得部11、吹き付けコンクリート指標取得部12及びリスク事象情報取得部13はそれぞれ、メッシュmごとの切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報を取得する。
【0037】
なお、本実施形態では、切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報のそれぞれを記憶している3つの記憶部20,30,40が例示されているが、それらの指標及び情報は一つの記憶部に記憶されていてもよい。また、本実施形態では、切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報のそれぞれを取得するための3つの機能部11,12,13が例示されているが、それら3つの機能部が1つの機能部として構成されることとしてもよい。
【0038】
再び図1を参照して、評価モデル生成部14は、切羽評価指標と、吹き付けコンクリート指標と、リスク事象情報との関係を表す評価モデルを所定の統計的分析手法により算出する。具体的には、評価モデル生成部14は、トンネルの掘削工事の各段階の切羽に基づいてメッシュmごとに取得された、切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報からなる学習データを用いて評価モデルを生成する。
【0039】
図4は、評価モデルの生成に供される学習データであって、切羽のメッシュごとに取得されたリスク事象情報、吹き付けコンクリート指標及び切羽評価指標を含む学習用データの例を示す図である。
【0040】
学習データは、切羽評価指標取得部11、吹き付けコンクリート指標取得部12及びリスク事象情報取得部13により取得された切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報を含む。具体的には、学習データは、地点ID及びメッシュIDにより特定される一のメッシュmごとの、切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報からなる。
【0041】
評価モデル生成部14は、切羽評価指標取得部11、吹き付けコンクリート指標取得部12及びリスク事象情報取得部13のそれぞれにより取得された切羽評価指標、吹き付けコンクリート指標及びリスク事象情報に基づいて、図4に1つのテーブルとして例示される学習データを構成してもよい。また、切羽評価指標記憶部20、吹き付けコンクリート指標記憶部30及びリスク事象情報記憶部40が一つの記憶部として構成されている場合には、評価モデル生成部14は、図4に1つのテーブルとして例示される学習データを、切羽評価指標取得部11、吹き付けコンクリート指標取得部12及びリスク事象情報取得部13を介して取得してもよい。
【0042】
図4に示される学習データにおける地点IDは、例えば、トンネルを掘り進む過程のいずれかの段階における切羽を特定する識別情報である。地点IDは、基準位置(例えば、トンネル入り口)からの距離を示す情報であってもよい。メッシュIDは、図3を参照して説明した一のメッシュmを特定する識別情報である。
【0043】
剥落有無は、切羽の、例えばメッシュmにおける剥落の有無を示す情報であり、切羽におけるリスク事象である剥落の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報の一例を構成する。学習データにおける剥落有無は、実績を示すので、当該メッシュmにおいて剥落が発生した場合には1(100%)であり、剥落が発生しなかった場合には0(0%)である。剥落の有無は、例えば、切羽観察により判定される。また、剥落の有無は、切羽の撮影画像及び撮影動画等に基づいて自動的に判定されてもよい。切羽におけるリスク事象は、剥落の有無のみに限定されず、リスク事象情報は、剥落の大小、落石の大小、設置された支保工の変形及び破損などに基づいて判定された確率(0%~100%)であってもよい。
【0044】
吹き付け厚は、切羽の、例えばメッシュmにおける吹き付けコンクリートの厚さを示す情報であり、吹き付けコンクリート指標の一例を構成する。吹き付け厚は、所定の基準位置からコンクリートの吹き付け前の切羽面までの距離と、基準位置からコンクリートの吹き付け後の切羽面までの距離とに基づいて算出されてもよい。基準位置から切羽面までの距離は、周知の距離センサにより測定可能であり、例えば、レーザ光の反射により対象物までの距離を測定するレーザ距離計により測定されてもよい。また、吹き付け厚は、既知の切羽の面積と吹き付けられるコンクリート量に基づいて算出できるので、吹き付け厚の計画値を用いてもよい。なお、吹き付けコンクリート指標は、吹き付けコンクリートの厚さに限らず、吹き付けコンクリートの強度や配合等の仕様であってもよい。
【0045】
切羽評価指標は、切羽の性状を示す情報であって、切羽の、例えばメッシュmごとの各種情報が適宜集約される、割れ目評価指標、風化度評価指標、岩強度評価指標及び湧水量評価指標のうちの少なくとも二つを含む。図4に示される例では、切羽評価指標は、割れ目評価指標、風化度評価指標及び岩強度評価指標を含む。
【0046】
割れ目評価指標は、切羽面に生じた割れ目の性状を定量的に示す情報であって、例えば、割れ目間隔及び割れ目交差密度の少なくともいずれか一つであってもよい。図4に示される例では、割れ目評価指標は、割れ目間隔及び割れ目交差密度を含む。
【0047】
図5は、割れ目評価指標の一例である割れ目間隔の取得の例を示す図である。割れ目間隔は、切羽面を撮像した画像に基づいて抽出される。切羽における割れ目の凹部と凸部では照明の反射に差が生じるため、画像から輝度が(所定の程度以上に)大きく変化する部分の画素が、割れ目部分の画素として抽出される。図5に示されるように、メッシュmの画像において、割れ目部分c1~c6が抽出される。そして、メッシュm内の走査線scと交差する割れ目部分の数(4)が計測される。図5に示される例では、メッシュmの一辺の長さが100cmであると仮定すると、割れ目間隔は、25cm(=100cm/4)と算出される。このような割れ目間隔の算出をメッシュ内の全走査線で行うことにより、メッシュmごとの割れ目間隔の最大値(メッシュ内の最大値、以後「メッシュ最大値」)、最小値(メッシュ最小値)、平均値(メッシュ平均値)等の統計値を算出できる。学習データには、メッシュ最大値、メッシュ最小値及びメッシュ平均値等の統計値のうちのいずれか一つ以上が用いられることとしてもよい。
【0048】
図6は、割れ目評価指標の一例である割れ目交差密度の取得の例を示す図である。割れ目交差密度の取得は、割れ目間隔と同様に、切羽面を撮像した画像に基づいて、所定の程度以上の輝度の変化が生じている画素を割れ目部分の画素として抽出することにより行われる。図6に示されるように、メッシュmの画像において、割れ目部分crが抽出される。そして、割れ目部分crの主要な卓越方向の例えば上位2成分が、卓越方向md1,md2(md)として検出される。そして、隣接するメッシュmの間における卓越方向mdの比較により割れ目交差密度という割れ目の交差の程度を示す指標が算出される。割れ目交差密度の単位は例えばパーセント(%)であり、隣接するメッシュmの間における割れ目の卓越方向mdが異なるほど割れ目交差密度は大きくなる。
【0049】
風化面積率は、切羽の風化の度合いを表す指標である風化度評価指標の一例を構成する。風化面積率は、切羽の、例えば各メッシュmにおいて、メッシュm全体の面積に対する風化が生じている領域の面積の割合である。切羽に風化が生じると、粘土鉱物の生成、金属イオンの溶脱及び酸化物の生成等に起因して色調が変化するので、所与の風化の程度と画素値との関連付けを参照することにより、メッシュmの各画素の部分の風化の有無及び程度が取得される。なお、図4に示される例では、風化の有無を示す風化面積率が風化度評価指標として用いられているが、風化の程度が反映されたその他の指標が風化度指標として用いられてもよい。
【0050】
破壊エネルギー係数は、切羽における岩盤の強度を表す岩強度評価指標の一例を構成する。破壊エネルギー係数は、切羽面の、例えば各メッシュmにおける地山の硬軟を示す指標値である。破壊エネルギー係数は、トンネルの掘削に用いられるコンピュータジャンボにより取得されてもよい。コンピュータジャンボは、事前に計画した穿孔パターンに応じて正確な位置、角度及び深さで発破孔を穿孔するための大型機械である。コンピュータジャンボは、穿孔作業中に取得される種々のデータに基づいて、破壊エネルギー係数を取得できる。なお、図4に示される例では、破壊エネルギー係数が岩強度評価指標として用いられているが、メッシュmごとの切羽の強度が反映されたその他の指標値が岩強度評価指標として用いられてもよい。また、岩強度評価指標には、切羽のサンプルの一軸圧縮強度、三軸圧縮強度が用いられてもよいし、切羽の打撃試験の反発係数等が用いられてもよい。
【0051】
また、図4に例示されない切羽評価指標の一例である湧水量評価指標は、メッシュmごとの湧水量を示す指標値であって、例えば、(l/m)といった単位を有する。
【0052】
評価モデル生成部14は、図4に例示したような学習データを用いた所定の統計的分析手法により評価モデルを算出する。具体的には、評価モデル生成部14は、ロジスティック回帰分析を所定の統計的分析手法として、ロジスティック回帰のアルゴリズムに基づき、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標に基づいてリスク事象情報を算出する評価モデルを生成する。
【0053】
評価モデル生成部14は、以下の式(1)及び式(2)により表される評価モデルを機械学習により算出する。
p=1/(1+exp(-z)) ・・・(1)
z=w+w+・・・+w+b ・・・(2)
【0054】
式(1)におけるpは、リスク事象情報としての剥落発生確率pであって、図4を参照して説明したとおり、学習時には0または1となる。式(1)及び式(2)におけるzは、切羽のメッシュmにおける地山条件である。式(2)におけるx、x、・・・、xはそれぞれ、吹き付け厚及び各種の切羽評価指標であって、図4に例示されたそれぞれの値が入力されてもよいし、それらの値が必要に応じて正規化された値であってもよい。式(2)におけるw,w,・・・wは係数であり、bは定数である。即ち、評価モデル生成部14は、機械学習により係数w,w,・・・w及び定数bを算出することにより評価モデルを生成する。そして、評価モデル生成部14は、生成した評価モデルを評価モデル記憶部50に出力及び記憶させる。
【0055】
図7を参照して、生成された評価モデルの例を説明する。図7(a)及び図7(b)に示されるグラフlcは、地点及びメッシュごとの、剥落発生確率(剥落の有無)、吹き付け厚、及び各種の切羽評価指標からなる学習データ群を用いて生成された評価モデルの例を示す。グラフlcは、吹き付け厚及び各種切羽評価指標に基づいた算出される地山条件z(式(2)参照)に対する剥落発生確率pの関係(式(1)参照)を示す。
【0056】
図7(a)に示される点pl1は、学習データ群のうちの剥落無し(剥落発生確率p=0)の学習データの地山条件z(切羽評価指標)及び吹き付け厚を、生成された式(1)に入力して得られた、剥落発生確率pをプロットしたものである。図7(a)に示されるように、剥落が発生しなかった地山条件zに基づいて算出される剥落発生確率を示す点pl1が、グラフlc上のp<0.5の領域に多く分布している。即ち、このような点pl1の分布状況は、生成された評価モデルの妥当性が高いことを示している。
【0057】
図7(b)に示される点pl2は、学習データ群のうちの剥落有り(剥落発生確率p=1)の学習データの地山条件z(切羽評価指標)及び吹き付け厚を、生成された式(1)に入力して得られた、剥落発生確率pをプロットしたものである。図7(b)に示されるように、剥落が発生した地山条件zに基づいて算出される剥落発生確率を示す点pl2が、グラフlc上のp>0.5の領域に多く分布している。即ち、このような点pl2の分布状況は、生成された評価モデルの妥当性が高いことを示している。
【0058】
なお、評価モデル生成部14は、式(1)に示されるように、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標(吹き付け厚)を入力とし、リスク事象情報(剥落発生確率)を出力とする評価モデルを算出してもよい。
【0059】
また、評価モデル生成部14は、式(1)及び式(2)の変形により、切羽評価指標及びリスク事象情報を入力とし、吹き付けコンクリート指標(吹き付け厚)を出力とする評価モデルを算出してもよい。
【0060】
図8を参照して、生成された評価モデルの利用の例を説明する。図8(a)に示されるグラフfp1は、剥落発生確率p、吹き付け厚x、各種の切羽評価指標(x,...,x)からなる学習データ群を用いた機械学習により生成された評価モデルに、その学習データ群に含まれる剥落が発生しなかった、ある地点p1の切羽評価指標を代入することにより得られた、吹き付け厚xに対する剥落発生確率pの関係を示すグラフである。なお、地点p1では、吹き付け厚を100mmとした結果、剥落が発生しなかったこととする。
【0061】
グラフfp1の参照によれば、地点p1では、吹き付け厚を100mmとしていたが、その場合の剥落発生確率は0.1(10%)であり、吹き付け厚が過剰であったことが判断できる。そして、剥落発生確率pが30%であることを適切な工事条件とするならば、地点p1における地山条件においては、点pt1に示されるように、吹き付け厚を50mmとすることが適切であることが判断できる。
【0062】
図8(b)に示されるグラフfp2は、剥落発生確率p、吹き付け厚x、各種の切羽評価指標(x,...,x)からなる学習データ群を用いた機械学習により生成された評価モデルに、その学習データ群に含まれる剥落が発生した、ある地点p2の切羽評価指標を代入することにより得られた、吹き付け厚xに対する剥落発生確率pの関係を示すグラフである。なお、地点p2では、吹き付け厚を31mmとした結果、剥落が発生したとする。
【0063】
グラフfp2の参照によれば、地点p2では、吹き付け厚を31mmとしていたが、その場合の剥落発生確率は0.7(70%)を超えており、吹き付け厚が過少であったことが判断できる。そして、剥落発生確率pが30%であることを適切な工事条件とするならば、地点p2における地山条件においては、点pt2に示されるように、吹き付け厚を100mmとすることが適切であることが判断できる。
【0064】
なお、本実施形態では、評価モデル生成部14は、ロジスティック回帰分析を所定の統計的分析手法として、ロジスティック回帰のアルゴリズムに基づく評価モデルを生成することとしているが、アルゴリズムの種類は限定されず、評価モデル生成部14は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン及び決定木等のうちのいずれかのアルゴリズムに基づく評価モデルを生成することとしてもよい。
【0065】
再び図1を参照して、評価部15は、算出された評価モデルを用いて、トンネルの切羽におけるリスクを評価する。一例として、評価部15は、評価モデルを用いて、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標に基づいて、リスク発生確率を算出する。
【0066】
具体的には、評価部15は、評価対象の切羽のメッシュmごとの切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標を取得し、取得した切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標を、評価モデル記憶部50に記憶されている評価モデルに入力し、評価モデルから出力されるリスク発生確率としての剥落発生確率を取得する。そして、出力部16は、評価部15により取得された剥落発生確率を所定の態様で出力する。出力の態様は、所定の表示手段への表示、所定の装置への送信、及び、所定の記憶手段への記憶等であってもよい。
【0067】
このように評価モデルが構成されることにより、吹き付けコンクリートの厚さに応じたトンネルの切羽におけるリスクの発生確率を高精度に算出することが可能となる。従って、吹き付けコンクリート工程において切羽に(吹き付け)コンクリートを設置した後のリスクの発生確率を算出できるので、その後の作業の安全管理を適切に行うことができる。具体的には、許容されるリスクの発生確率を適宜設定することにより、許容される発生確率に基づいて吹き付けコンクリートの厚さを算出できるので、コンクリート量のムダ・ムラを無くすことができる。
【0068】
また、他の例として、評価部15は、評価モデルを用いて、切羽評価指標及びリスク発生確率に基づいて、吹き付けコンクリート指標を算出してもよい。具体的には、評価部15は、評価対象の切羽のメッシュmごとの切羽評価指標及び剥落発生確率を取得し、取得した切羽評価指標及び剥落発生確率を、評価モデル記憶部50に記憶されている評価モデルに入力し、評価モデルから出力される吹き付けコンクリート指標としてのコンクリートの吹き付け厚を取得する。そして、出力部16は、評価部15により取得されたコンクリートの吹き付け厚を所定の態様で出力する。
【0069】
このように評価モデルが構成されることにより、リスクに関する事象の発生確率が考慮された、適切な吹き付けコンクリートの厚さを算出することが可能となる。
【0070】
次に、図9図11を参照して、本実施形態の評価システム1の動作について説明する。図9は、評価システム1において実施される評価モデルの生成に関する評価方法の処理内容を示すフローチャートである。
【0071】
ステップS1において、切羽評価指標取得部11は、トンネルの切羽の状態に関する切羽評価指標を取得する。
【0072】
ステップS2において、吹き付けコンクリート指標取得部12は、切羽に吹き付けたコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標を取得する。
【0073】
ステップS3において、リスク事象情報取得部13は、切羽におけるリスクに関する事象の発生の確率であるリスク発生確率を表すリスク事象情報を取得する。なお、ステップS1~S3の処理は、順不同であり、また、同時に実施されてもよい。
【0074】
ステップS4において、評価モデル生成部14は、切羽評価指標と、吹き付けコンクリート指標と、リスク事象情報との関係を表す評価モデルを所定の統計的分析手法により算出する。そして、評価モデル生成部14は、算出した評価モデルを、例えば評価モデル記憶部50に記憶させるといった態様で出力する。
【0075】
図10は、評価システム1において実施されるリスク発生確率の算出に関する評価方法の処理内容を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS11において、切羽評価指標取得部11及び吹き付けコンクリート指標取得部12はそれぞれ、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標を取得する。
【0077】
ステップS12において、評価部15は、切羽評価指標及び吹き付けコンクリート指標を評価モデルに入力する。
【0078】
ステップS13において、評価部15は、評価モデルから出力されたリスク発生確率を取得する。そして、出力部16は、取得されたリスク発生確率を所定の態様で出力する。
【0079】
図11は、評価システム1において実施される吹き付けコンクリート厚の算出に関する評価方法の処理内容を示すフローチャートである。
【0080】
ステップS21において、切羽評価指標取得部11及びリスク事象情報取得部13はそれぞれ、切羽評価指標及びリスク事象情報を取得する。
【0081】
ステップS22において、評価部15は、切羽評価指標及びリスク事象情報を評価モデルに入力する。
【0082】
ステップS23において、評価部15は、評価モデルから出力された吹き付けコンクリート指標を取得する。そして、出力部16は、取得された吹き付けコンクリート指標を所定の態様で出力する。
【0083】
以上説明した本実施形態の評価システム1、評価方法及びプログラムP1によれば、切羽の状態を示す切羽評価指標及びリスク事象の発生確率を表すリスク事象情報に加えて、吹き付けコンクリートの厚さを表す吹き付けコンクリート指標の関係を表す評価モデルが算出される。算出された評価モデルにより、吹き付けコンクリートの厚さとリスク事象の発生確率との関係に関する知見が得られるので、吹き付けコンクリートの厚さに応じた切羽におけるリスクを高精度に評価することが可能となる。
【0084】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…評価システム、10…評価装置、11…切羽評価指標取得部、12…吹き付けコンクリート指標取得部、13…リスク事象情報取得部、14…評価モデル生成部、15…評価部、16…出力部、20…切羽評価指標記憶部、30…吹き付けコンクリート指標記憶部、40…リスク事象情報記憶部、50…評価モデル記憶部、P1…プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11