(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】クレーンを監視するためのシステム及び方法、並びにそれらを有するクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/90 20060101AFI20250612BHJP
【FI】
B66C23/90 P
(21)【出願番号】P 2022536785
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 US2020065438
(87)【国際公開番号】W WO2021127058
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-18
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510051082
【氏名又は名称】マニタウォック クレイン カンパニーズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MANITOWOC CRANE COMPANIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】スクーンメイカー, スティーヴン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベントン, ジョン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ステイク, マイケル
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017202009(DE,A1)
【文献】米国特許第08272521(US,B1)
【文献】特開平04-101996(JP,A)
【文献】特開平10-017273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0112728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/90
B66B 7/00- 7/12
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンであって、
シャーシ、前記シャーシに接続されたタイヤ、キャリアデッキ、及びアウトリガーを有するキャリアユニットであって、前記アウトリガーが、前記アウトリガーが下部支持表面に係合して前記タイヤを前記支持表面から浮かせ、前記アウトリガーが前記キャリアユニットを支持するようになる配備状態、及び前記アウトリガーが前記支持表面から離れて前記タイヤが前記支持表面と係合し、前記タイヤが前記キャリアユニットを支持するようになる引込状態へと動くことができる、キャリアユニットと、
前記キャリアユニット上に取り付けられ、伸縮ブームを有する上部構造体と、
前記キャリアユニットに動作可能に接続され、吊り上げ作業中に前記キャリアユニットのピッチ及び/又はロールを検知するようにされた傾斜センサと、
前記伸縮ブームによって吊り上げられた荷重を監視するためのシステムと、を備え、
前記システムが、
前記伸縮ブームによって吊り上げられている現在の荷重を求め、
前記キャリアユニットの
検知されたピッチ及び/又はロールを含む、ピッチ及び/又はロールの情報を前記傾斜センサから受信し、
前記ピッチ及び/又はロールの情報に基づいて座標系内での前記クレーンの座標を調整し、
前記調整された座標を使用して、変換された作業半径を求め、
前記吊り上げられた
現在の荷重を前記変換された作業半径での定格荷重と比較する、
ようにされ
、
前記システムが、前記アウトリガーが前記引込状態にある状態で前記吊り上げられた現在の荷重を監視するようにされた、クレーン。
【請求項2】
前記システムが、前記吊り上げられた
現在の荷重と前記変換された作業半径での前記定格荷重との前記比較に基づいて、前記伸縮ブームの1つ又は複数の動作を制御するようにされた、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記システムが、ブーム長さセンサからブーム長さ情報を受信し、吊り上げ角度センサから吊り上げ角度情報を受信するようにされた、請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記システムが1つ又は複数の荷重チャートを記憶しており、前記変換された作業半径での前記定格荷重が前記1つ又は複数の荷重チャートのうちの1つの荷重チャートから求められる、請求項1に記載のクレーン。
【請求項5】
クレーンによって吊り上げられた荷重を監視するためのシステムであって、前記クレーンはキャリアユニット
、前記キャリアユニットに配置されて前記キャリアユニットのピッチ及びロールを検知するようにされた傾斜センサ、及び前記キャリアユニット上に取り付けられた上部構造体を備え、前記上部構造体は伸縮ブームを備えており、
当該システムは、
プロセッサ、及びプログラム命令を記憶するようにされた持続性コンピュータ可読記憶媒体を有し、前記プロセッサは前記プログラム命令を解釈し実行して、
前記伸縮ブームによって吊り上げられた荷重を求め、
前記キャリアユニットの検知されたピッチ及びロールを含む前記キャリアユニットの
傾斜情報を
、前記傾斜センサから受信し、
前記傾斜情報を使用して前記キャリアユニットの傾斜角度を求め、
前記傾斜角度を使用して、前記キャリアユニットの前記ピッチ及びロール
を考慮に入れて座標系内での前記クレーンの座標を
変換し、
前記
変換された座標を使用して、変換された作業半径を求め、
前記吊り上げられた荷重を前記変換された作業半径での定格荷重と比較する、ようにされた、
システム。
【請求項6】
前記吊り上げられた荷重と前記変換された作業半径での前記定格荷重との前記比較に基づいて、前記伸縮ブームの動作を制御するようにされた、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
クレーンによって吊り上げられた荷重を監視する方法であって、前記クレーンは、シャーシ、前記シャーシに接続されたタイヤ、キャリアデッキ、及び
引込状態と配備状態との間で動作可能とされたアウトリガーを有するキャリアユニットと、前記キャリアユニット上に取り付けられ、伸縮ブームを有する上部構造体と、前記キャリアユニットに動作可能に接続されて吊り上げ作業中に前記キャリアユニットのピッチ及び/又はロールを検知するようにされた傾斜センサとを備えており、当該方法は、
前記伸縮ブームによって吊り上げられた荷重を求めるステップと、
前記アウトリガーが前記引込状態にあり前記キャリアユニットが前記タイヤで支持されている状態での吊り上げ作業中に前記キャリアユニットのピッチ及び/又はロールの情報を受け取るステップ
であって、前記ピッチ及び/又はロールの情報が前記キャリアユニットの検知されたピッチ及び/又はロールを含む、ステップと、
前記ピッチ及び/又はロールの情報に基づいて座標系内での前記クレーンの座標を調整するステップと、
前記調整された座標を使用して、変換された作業半径を求めるステップと、
前記吊り上げられた荷重を前記変換された作業半径での定格荷重と比較するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
以下の開示は、概して、クレーン並びにクレーンを監視するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
クレーンの定格荷重は最大合計荷重のことをいい、そのクレーンは特定の形態でその荷重を吊り上げられるように設計されている。特定の形態には、カウンターウェイトの重さやアウトリガーの伸長長さのような吊り上げ作業中に実質的に一定のままであるパラメータ、及び作業半径(すなわち、ブームから吊り下げられた荷重のモーメントアーム)やスイング角度(すなわち、水平面上でのクレーンのキャリアユニットの参照点に対するブームの回転位置)のような吊り上げ作業中に変化しうるパラメータが含まれる。作業半径は、(例えば、伸縮ブームの伸長又は引込に応じた)ブーム長さや、吊り上げ角度(すなわち、ブームと水平面との間の角度)の変化にともなって変わる。通常、作業半径が増加すると、荷重モーメントが増加して定格荷重が減少する。逆に、作業半径が減少すると、荷重モーメントが減少して定格荷重が増加する。そのため、様々な作業半径及び/又は吊り上げ角度での定格荷重を示す荷重チャートが与えられている。
【0003】
従来のクレーンの定格荷重制限装置(RCL)システムは、クレーンによって吊り上げられた現在の荷重と現在の作業半径とを、例えば1つ又は複数のクレーンセンサから受信した情報及び/又は操作者の入力に基づいて、監視するようにされている。例えば、従来のクレーンRCLシステムは、ブームを支持しているリフトシリンダ内の流体圧力を検知する圧力センサから受信した情報に少なくとも部分的に基づいて、現在の荷重を求めることができる。現在の作業半径は、ブームの長さを検知するセンサ及びブームの吊り上げ角度を検知するセンサから受信した情報に少なくとも部分的に基づいて、求められるようにできる。
【0004】
従来のクレーンRCLシステムはさらに、クレーンの動作状態を判断するようにされており、クレーンの動作を動作状態に基づいて制御することができる。例えば、従来のクレーンRCLシステムは、現在の荷重が定格荷重を超えることになる作業半径にまで動くことを防止するように、ブームを制御することができる。
【0005】
移動式のクレーンは、通常、クレーンが道路上又は作業現場での移動のために自走できるように、支持表面と転がり接触する複数のタイヤを有する。移動式のクレーンはまた、地面に係合し、タイヤを地面から浮かせて、移動式のクレーンを吊り上げ作業中に支持するように展開することができるアウトリガーを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
比較的に軽い荷重に対しては、アウトリガーを展開せず、吊り上げ作業中にクレーンがそのタイヤで支持されるようにして、吊り上げ作業を行なうことが望ましいことがある。しかしながら、クレーンは、タイヤの圧縮により、荷重の方向への偏位の影響を受けやすい。そのような偏位は、吊り上げ角度又はブーム長さが変わっていないにも関わらず、作業半径を増加させる結果をもたらす。よって、従来のRCLシステムは、作業半径の変化を検知していない。結果として、従来のRCLシステムは、現在の荷重を現在の作業半径よりも小さい作業半径での荷重チャートの定格荷重と比較している可能性があり、それは比較の正確性に影響を与え得る。
【0007】
したがって、現在の荷重及び現在の作業半径を監視しているときにキャリアユニットの偏位が考慮に入れられる、クレーン並びにクレーン制御のためのシステム及び方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一形態では、クレーンは、シャーシ、シャーシに接続されたタイヤ、キャリアデッキ、及びアウトリガーを有するキャリアユニットであって、アウトリガーが、下部支持表面に係合してタイヤを支持表面から浮かせ、アウトリガーがキャリアユニットを支持するようになる配備状態、及びアウトリガーが支持表面から離れてタイヤが支持表面と係合し、タイヤがキャリアユニットを支持するようになる引込状態へと動くことができる、キャリアユニットを備える。クレーンはさらに、キャリアユニット上に取り付けられ、伸縮ブームを有する上部構造体と、キャリアユニットに動作可能に接続され、吊り上げ作業中にキャリアユニットのピッチ及び/又はロールを検知するようにされた傾斜センサと、を備える。クレーンはまた、伸縮ブームによって吊り上げられた荷重を監視するためのシステムを備える。このシステムは、伸縮ブームによって吊り上げられている現在の荷重を求め、キャリアユニットのピッチ及び/又はロールの情報を傾斜センサから受信し、ピッチ及び/又はロールの情報に基づいて座標系内でのクレーンの座標を調整し、調整された座標を使用して、変換された作業半径を求め、吊り上げられた荷重を変換された作業半径での定格荷重と比較する、ようにされる。
【0009】
別の形態では、システムは、クレーンによって吊り上げられた荷重を監視するために提供され、クレーンは、キャリアユニット及びキャリアユニット上に取り付けられた上部構造体を備え、上部構造体は伸縮ブームを備える。システムは、プロセッサ、及びプログラム命令を記憶するようにされた持続性コンピュータ可読記憶媒体を有し、プロセッサは、前記プログラム命令を解釈し実行して、伸縮ブームによって吊り上げられた荷重を求め、キャリアユニットのピッチ及び/又はロールの情報をキャリアユニットに配置された傾斜センサから受信し、ピッチ及び/又はロールの情報に基づいて座標系内でのクレーンの座標を調整し、調整された座標を使用して、変換された作業半径を求め、吊り上げられた荷重を変換された作業半径での定格荷重と比較する、ようにされる。
【0010】
別の形態では、クレーンによって吊り上げられた荷重を監視する方法が提供される。クレーンは、シャーシ、シャーシに接続されたタイヤ、キャリアデッキ、及びアウトリガーを有するキャリアユニットと、キャリアユニット上に取り付けられ、伸縮ブームを有する上部構造体とを備える。クレーンはまた、キャリアユニットに動作可能に接続されて吊り上げ作業中にキャリアユニットのピッチ及び/又はロールを検知するようにされた傾斜センサを備える。この方法は、伸縮ブームによって吊り上げられた荷重を求めるステップと、キャリアユニットのピッチ及び/又はロールの情報を受け取るステップと、ピッチ及び/又はロールの情報に基づいて座標系内でのクレーンの座標を調整するステップと、調整された座標を使用して変換された作業半径を求めるステップと、吊り上げられた荷重を変換された作業半径での定格荷重と比較するステップと、を含む。
【0011】
本開示の他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて以下の記載から明らかになるであろう。ここで、同様な部品、要素、構成要素、ステップ、及びプロセスは、同様な符号によって参照される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態にかかるクレーンの側面図である。
【0013】
【
図2】一実施形態にかかる
図1のクレーンの部分的なシステムの概略図である。
【0014】
【
図3】一実施形態にかかるクレーンのキャリアユニットの斜視図である。
【0015】
【
図4】一実施形態にかかる伸縮ブームの幾何学的配置を示す概略図である。
【0016】
【
図5】一実施形態にかかるクレーンのキャリアユニットの別の斜視図である。
【0017】
【
図6】一実施形態にかかる伸縮ブーム及びクレーンキャリアユニットの一部の幾何学的配置を示す概略図である。
【0018】
【
図7】一実施形態にかかるクレーンブーム及びクレーンキャリアの幾何学的配置を示す別の概略図である。
【0019】
【
図8】一実施形態にかかるクレーンを監視するための方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここでの開示は様々な形態での実施形態を可能とするが、本開示は単に説明のためのものであり、説明され例示されている特定の実施形態に限定されることを意図していないという理解の下に、1つ又は複数の実施形態が図面に示され以下で説明されている。
【0021】
図1を参照して、ここでの実施形態にかかるクレーン10は、概して、キャリアユニット20と、キャリアユニット20上に回転可能に取り付けられてキャリアユニット20に対して回転するようにされた上部構造体30とを備える。キャリアユニット20は、シャーシ22、シャーシ22に接続された1つ又は複数のタイヤ24、キャリアデッキ26、及びアウトリガー28、のような様々なクレーン構成要素を備える。シャーシ22は、1つ又は複数のタイヤ24、キャリアデッキ26、及びアウトリガー28を支持するとともに、パワートレイン(図示しない)のような他の構成要素も支持する。1つ又は複数のタイヤ24は、地面、道路、又は同様な支持表面に転がり係合してクレーン10の転がり移動を容易にするようにされている。例えば、パワートレインは、1つ又は複数のタイヤ24にトルクを与えて、クレーン10を支持表面に沿って動くように進ませることができる。キャリアデッキ26は、概して、キャリアユニット20の上方に面した上面を画定する。
【0022】
アウトリガー28は、シャーシ22に対して水平方向外側に1つ又は複数の伸長位置にまで伸長し、下部支持表面に係合するように垂直方向に伸長した配備状態で配置することができる。アウトリガー28の引き続いての垂直方向への伸長により、アウトリガー28がタイヤ24を支持表面から浮かせて、クレーン10がアウトリガー28に支持されるようにできる。アウトリガー28はまた、シャーシ22に向かって水平方向内側に引込まれ、支持表面から離れるように垂直方向に引込まれた引込状態で配置することができる。したがって、引込状態においては、タイヤ24が支持表面に係合し、クレーン10はタイヤ24によって支持される。一実施形態においては、アウトリガーの水平方向での伸長及び引込は伸縮ボックス及びアームアセンブリ(図示しない)によってもたらされ、垂直方向での伸長及び引込は伸縮ボックス及びアームアセンブリに例えばアームの遠位端部で又はその近くで動作可能に接続されたジャッキ(図示しない)によってもたらされるようにできる。
【0023】
上部構造体30はまた、キャリアユニット20に回転可能に取り付けられた回転床32、操縦室34、カウンターウェイトアセンブリ36、及び伸縮ブーム38のような、様々なクレーン構成要素を備える。回転床32は、ベアリング構造によってキャリアユニット20に回転可能に取り付けられ、第1の回転方向、又は第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に、概して垂直な軸線の周りで駆動されるようにされている。回転床32は、操縦室34、カウンターウェイトアセンブリ36、及び伸縮ブーム38を直接的又は間接的に支持するとともに、1つ又は複数のホイスト(図示しない)のような他のクレーン構成要素も支持して、これらの構成要素が第1及び第2の回転方向に回転床32とともに回転可能となるようにされている。操縦室34は、例えば1つ又は複数のクレーン構成要素の動作を制御するためにクレーンの操縦者がクレーン10の制御システムと後述するようにやりとりすることができるようにするためのユーザインターフェースを備えることができる。カウンターウェイトアセンブリ36は、フレーム上に支持された1つ又は複数のウェイトユニットを備える。ウェイトユニットは、所望の方式でフレームに取り付けられたりフレームから取り外されたりして、選択されたカウンターウェイトを提供するようにできる。
【0024】
伸縮ブーム38は、吊り上げ角度の垂直方向の範囲に亘って動くように回転床32に枢動可能に取り付けられたベース部40と、ブーム長さLGを変えるようにベース部40の外に及びベース部40の中に概してブーム軸線に沿って動くようにされた1つ又は複数の伸縮部42とを備える。1つ又は複数のホイスト(図示しない)は、ロープ又はケーブルのような可撓性部材44を巻き上げたり送り出したりするようにされている。フックブロックのような吊り上げ器具46が、可撓性部材44の自由端に接続されて、伸縮ブーム38の自由端から吊り下げられている。リフトシリンダ48は、ベース部40と回転床32との間に直接的又は間接的に枢動可能に接続されている。リフトシリンダ48は、吊り上げ角度の範囲に亘って伸縮ブーム38を上げたり下げたりするように動作可能である。回転床32は、第1及び第2の回転方向に回転して、伸縮ブーム38を水平方向のスイング角度の範囲に亘って回転させることができる。
【0025】
図1及び
図2を参照して、クレーン10はさらに、制御システム50を備え、これはときにクレーン制御システム(CCS)と呼ばれる。制御システム50は、クレーン10に配置されているか、クレーン10から遠く離れて通信接続されているか、又はそれらの組合せによる、1つ又は複数のコンピュータ装置として実装することができる。制御システム50は、キャリアユニット20及び上部構造体30の(クレーン構成要素のアクチュエータを含む)様々なクレーン構成要素に動作可能に接続されて、クレーン構成要素の1つ又は複数の動作を制御することができる。例えば、制御システム50は、クレーン構成要素の動作の開始、停止、防止、及び許可、並びに/又はクレーン構成要素の速度、加速度及び/若しくは減速の制御を含む、1つ又は複数のクレーン構成要素の動きを制御することができる。
【0026】
一実施形態では、制御システム50は、クレーン制御装置52、定格荷重制限装置(RCL)54、及び作業領域制限装置(WRL)56を備える。クレーン制御装置52は、制御信号を様々なクレーン構成要素に送信及び/又はそれらから受信して、クレーン構成要素の動作を制御することができる。
【0027】
RCL54は、作業半径(すなわち、フック半径)でのクレーン10の定格荷重に対する、クレーン10の伸縮ブーム38によって吊り上げられた現在の荷重(すなわち、フック荷重)を監視するように概して動作するシステムである。例えば、RCL54は、1つ又は複数のクレーンセンサ、ユーザ入力、保存されたデータ、及び/又はそれらの組合せから受け取った情報に基づいて、吊り上げられた現在の荷重及び作業半径を求めることができる。RCL54は、例えば、様々な作業半径での又は吊り上げ角度とブーム長さの組合せでの定格荷重を含む保存された荷重チャートから、作業半径での定格荷重を特定する。RCL54は、クレーンによって吊り上げられた現在の荷重をその作業半径での定格荷重と比較し、1つ又は複数のクレーン構成要素の動作をその比較に基づいて制御することができる。例えば、RCL54は、伸縮ブーム38の動作(すなわち、ブーム上昇、ブーム下降、左スイング、右スイング、中に伸縮、及び/又は外に伸縮の動作)を吊り上げられた現在の荷重とその作業半径での定格荷重との比較に基づいて制御することができる。ある実施形態では、RCL54は、クレーン構成要素の動作を制御するための制御信号をそのクレーン構成要素に直接提供することができる。他の実施形態では、RCL54は、制御装置52を介して制御信号を提供して、クレーン構成要素の動作を制御するようにできる。
【0028】
WRL56は、制限空間の位置に対するクレーン構成要素の位置を監視するように概して動作するシステムである。例えば、WRL56は、1つ又は複数のクレーンセンサから受信した情報、ユーザ入力、保存されたデータ、及び/又はそれらの組合せに基づいて、クレーン構成要素の位置を求めることができる。WRL56は、例えば、保存された位置情報、作業現場モデルに含まれる位置情報、1つ又は複数のセンサ(クレーンセンサ及び/又はWRL56に通信接続された外部のセンサを含む)から受信した情報、ユーザ入力を介して受信した情報、及び/又はそれらの組合せに基づいて、制限空間を特定することができる。制限空間は、作業現場での建物のような障害物を表わし、その中では1つ又は複数のクレーン構成要素の動作が避けられるべきである空間を画定することができる。したがって、WRL56は、クレーン構成要素の位置情報を制限空間の位置情報と比較して、クレーン構成要素の動作をその比較に基づいて制御することができる。例えば、WRL56は、伸縮ブーム38の動作(すなわち、ブーム上昇、ブーム下降、左スイング、右スイング、中に伸縮、及び/又は外に伸縮の動作)を伸縮ブームの位置情報と制限空間の位置情報との比較に基づいて制御することができる。ある実施形態では、WRL56は、クレーン構成要素の動作を制御するための制御信号をクレーン構成要素に直接提供することができる。他の実施形態では、WRL56は、制御装置52を介して制御信号を提供して、クレーン構成要素の動作を制御するようにできる。
【0029】
制御システム50はさらに、例えばバス(図示しない)上で相互に接続されている、プロセッサ58、メモリ装置60、記憶装置62、通信装置64、入力装置66、及び/又は出力装置68のような、コンピュータ構成要素100を備えるようにできる。一実施形態においては、コンピュータ構成要素100は、制御装置52、RCL54、及びWRL56に動作可能に接続されているようにできる。しかしながら、コンピュータ構成要素100は、制御装置52、RCL54、及びWRL56のそれぞれに実装されているか、又は制御装置52、RCL54、及びWRL56の間に分散されているようにできることが理解されるであろう。さらには、制御装置52、RCL54、及びWRL56のいくつかは、独立して示されてはいるが、別の1つ又は複数の制御装置52、RCL54、及びWRL56に統合されて、上述の個々の構成要素の動作を実行するようにされた単一ユニットとして提供されるようにできることも理解されるであろう。
【0030】
一実施形態においては、プロセッサ58は、プログラム命令を解釈し実行するようにされた、マイクロプロセッサのようなコンピュータプロセッサとすることができる。プロセッサ58はさらに、プログラム命令を実行することに応じて、1つ又は複数のクレーン構成要素の様々な動作(動きを含む)をもたらすようにされている。例えば、プロセッサ58は、制御装置52が伸縮ブーム38の動作を制御するための制御信号を提供するようにさせることができる。ここで説明されている制御装置52、RCL54、及びWRL56の動作は、プログラム命令の実行に応じてプロセッサ58によって実行されるか又は達成されるようにできることが理解されるであろう。
【0031】
メモリ装置60は、プロセッサ58によって実行されるプログラム命令のような情報を保存するようにされた持続性コンピュータ可読記憶媒体とすることができる。メモリ装置60は、例えば、情報及び/又は実行可能なプログラム命令を保存するための、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、又は他のタイプの適当なメモリ装置とすることができる。記憶装置62は、例えば、プロセッサ58によってアクセスされ又は参照され得る、例えば情報、ソフトウェア、実行可能なプログラム命令などを保存するようにされている。記憶装置62はまた、制御システム50によって1つ又は複数のセンサ又はユーザ入力から受信した情報のような、クレーン10の動作中に収集された情報を保存することもできる。ある実施形態においては、1つ又は複数の荷重チャートが、記憶装置62及び/又はメモリ装置60に保存されて、例えば、RCL54によってアクセスされ又は参照される。記憶装置62は、持続性コンピュータ可読記憶媒体とすることができ、例えば、ハードディスク、関連づけられたドライブ及び/又は他の同様で適当な記憶装置及び関連付けられたドライブを備えることができる。
【0032】
通信装置64は、情報を/制御システム50に送信及び/若しくは制御システム50から受信、並びに/又は制御システム50の構成要素の間で送受信するようにされている。例えば、通信装置64は、他の通信可能な装置、構成要素、センサなどのような1つ又は複数の他の装置に情報を送る及び/又はそれから情報を受け取るためのトランシーバ又はトランシーバのような構成要素を有する通信インターフェースとして提供されてもよい。
【0033】
入力装置66は、クレーン操縦者などのユーザから情報を受け取るようにされたユーザインターフェースを備えるか、又はその一部を形成することができる。入力装置66は、それを操作することによってユーザが情報を入力装置66に提供することができる1つ又は複数の操縦者制御部を備えるか又はそれに動作可能に接続されているようにできる。1つ又は複数の操縦者制御部は、例えば、レバー、ジョイスティック、ノブ、ボタン、ダイアル、スイッチ、キーボード、キーパッド、ポインターデバイス、タッチスクリーンディスプレイ、及び生体認証センサ、音声センサ、光センサなどの1つ又は複数のセンサ、並びにそれらの様々な組合せを備えることができる。制御装置52は、入力装置66によって受信された情報に応じて、制御信号を送信してクレーン構成要素の動作を制御することができる。
【0034】
出力装置68はまた、クレーン操縦者などのユーザに情報を提供するようにされたユーザインターフェースを備えるか、又はその一部を形成するようにできる。出力情報は、例えば操縦者制御部において、例えばディスプレイスクリーン上で又は1つ又は複数のライト(例えば、LED)で視覚的に与えられるか、例えば1つ又は複数のオーディオスピーカーによって音声的に与えられるか、及び/又は触覚的な若しくは振動性のフィードバックで又は警告で与えられるようにできる。ある実施形態では、入力装置66及び出力装置68は、例えばディスプレイスクリーン又はタッチスクリーンディスプレイとして提供される単一の装置として提供されるか、又は単一の装置として与えられた構成要素を備えることができる。出力情報は警告又は警報として機能することができる。
【0035】
クレーン構成要素は、対応する構成要素のアクチュエータの動作を制御することによって様々な動作が行なわれるように操作される。そのために、制御システム50は、1つ又は複数の構成要素のアクチュエータに動作可能に接続されて、構成要素のアクチュエータの動作を制御するようにできる。例えば、制御システム50は、アウトリガー28の動作(例えば、水平方向への伸長及び引込、並びに垂直方向への伸長及び引込)を制御するためのアウトリガーアクチュエータ70;スイング角度の範囲に亘って伸縮ブーム38の左スイング及び右スイングの動作を生じさせる回転床32の動作(例えば、第1及び第2の回転方向での回転)を制御するための回転床アクチュエータ72;ブーム長さを増加又は減少させる伸縮ブーム38の伸縮部42の動作(例えば、外への伸縮及び中への伸縮)を制御するためのブームアクチュエータ74;並びに吊り上げ角度の範囲に亘って伸縮ブーム38のブーム上昇及びブーム下降の動作を生じさせるリフトシリンダ48の動作(例えば、伸長及び引込)を制御するためのリフトシリンダクチュエータ76;に動作可能に接続されるようにできる。
【0036】
また、制御システム50は、クレーン、クレーン構成要素、クレーンの周囲、環境、大気条件(例えば、温度、風速、など)、及び/又はクレーンの操作に影響を与える可能性がある他の情報について、制御システム50に情報を提供するようにされた1つ又は複数のクレーンセンサに動作可能に接続されているようにできる。情報は、パラメータ値又はそこからパラメータ値が生じる情報として提供されるようにできる。一実施形態においては、クレーンセンサは、1つ又は複数のタイヤ24のタイヤ圧の情報を提供するようにされた1つ又は複数のタイヤセンサ78;クレーン10の傾斜情報(例えば、ピッチ情報及び/又はロール情報)を提供するようにされた1つ又は複数の傾斜センサ80;アウトリガーの伸長及び/又はアウトリガー28の圧力/荷重情報を提供するようにされた1つ又は複数のアウトリガーセンサ82;回転床32及び/又は伸縮ブーム38のスイング角度情報を提供するようにされた1つ又は複数のスイング角度センサ84;伸縮ブーム38のブーム長さ情報を提供するようにされた1つ又は複数のブーム長さセンサ86;伸縮ブーム38の吊り上げ角度情報を提供するようにされた1つ又は複数の吊り上げ角度センサ88;並びにリフトシリンダ48のリフトシリンダ圧力情報を提供するようにされた1つ又は複数のリフトシリンダ圧力センサ90、を備えることができる。例えば、リフトシリンダ角度情報を制御システム50に提供するためのリフトシリンダ角度センサ、及び/又は追加の流れセンサ、圧力センサ、荷重センサ、近接センサなどの、他のセンサも実装されてもよい。
図2には特定のクレーン構成要素に関連付けられた様々なクレーンセンサが示されているが、クレーンセンサは、上述の意図する情報を提供するのに適した別のクレーン構成要素に取り付けられたり配置されたりしてもよい。
【0037】
ここで
図2及び
図3を参照すると、RCL54は、クレーン10によって吊り上げられた現在の荷重を求めることができる。一実施形態においては、RCL54は、クレーン10によって吊り上げられた荷重を、1つ又は複数のクレーンセンサから受信した情報に少なくとも部分的に基づいて求めることができる。例えば、RCLは、リフトシリンダ圧力情報を1つ又は複数のリフトシリンダ圧力センサ90から受信して、クレーン10によって吊り上げられた荷重をリフトシリンダ圧力情報に基づいて求めることができる。ある実施形態においては、RCL54は、吊り上げられた現在の荷重をリフトシリンダ圧力と吊り上げられた現在の荷重との間の公式的な関係に基づいて計算することができる。代替的に又は追加的に、RCL54は、様々なリフトシリンダ圧力に対応する既知の荷重値に基づいて、又は例えばその荷重が分かっているときのユーザ入力情報に基づいて、吊り上げられた現在の荷重をメモリ装置60又は記憶装置62から検索することができる。
【0038】
RCL54はまた、クレーン10によって吊り上げられた荷重の作業半径を、1つ又は複数のクレーンセンサから受信した情報に少なくとも部分的に基づいて求めるようにできる。例えば、RCL54は、吊り上げ角度情報を1つ又は複数の吊り上げ角度センサ88から受信し、ブーム長さ情報を1つ又は複数のブーム長さセンサ86から受信して、作業半径を吊り上げ角度情報及びブーム長さ情報に基づいて求めるようにできる。ある実施形態においては、RCL54は、吊り上げ角度、ブーム長さ、及び作業半径の間の公式的な関係に基づいて作業半径を計算するようにできる。代替的に又は追加的に、RCL54は、様々な吊り上げ角度及びブーム長さに対応する既知の作業半径の値に基づいて、作業半径をメモリ装置60又は記憶装置62から検索するようにできる。
【0039】
クレーン10によって吊り上げられた荷重の作業半径はさらに、クレーン10のピッチ及び/又はロールに基づいて求めることができる。クレーン10のピッチは、概して、クレーン10を横断するように延びる軸線の周りでのキャリアユニット20(例えば、シャーシ22、キャリアデッキ26)及び/又は回転床32の回転をいう。よって、クレーン10のピッチは、キャリアデッキ26の前端又は後端の上方又は下方への偏位をもたらす。クレーン10のロールは、概して、クレーン10に沿って長手方向に延びる軸線の周りでのキャリアユニット20(例えば、シャーシ22、キャリアデッキ26)及び/又は回転床32の回転をいう。よって、クレーン10のロールは、キャリアデッキ26の左側面又は右側面の上方又は下方への偏位をもたらす。RCL54は、ピッチ情報及びロール情報(集合的に「傾斜情報」という)を1つ又は複数のクレーンセンサから受信するようにできる。例えば、RCL54は、様々な位置でのキャリアユニット20の偏位に関する情報を1つ又は複数のクレーンセンサから受信して、傾斜情報をキャリアユニット20の偏位に関する情報に基づいて計算するようにできる。
【0040】
制御システム50(RCL54を含む)は、傾斜情報を、キャリアユニット20、例えばシャーシ22又はキャリアデッキ26に取り付けられた、若しくは上部構造体30、例えば回転床32に取り付けられた、1つ又は複数の傾斜センサ80から受信するようにできる。タイヤ24が支持表面から浮いてクレーン10がアウトリガー28に支持されるようにアウトリガー28が配備状態へと動作している間、傾斜センサ80がピッチ情報及びロール情報を制御システム50に提供して、キャリアユニット20、例えばキャリアデッキ26を水平にすることを可能にする。例えば、制御システム50は、1つ又は複数のアウトリガー28の垂直方向への伸長を制御して、キャリアデッキ26が実質的に水平になるまでキャリアデッキ26のピッチ及び/又はロールに変化をもたらす。クレーン10は、アウトリガー28が展開された状態で吊り上げ作業を実行するようにできる。そのような吊り上げ作業の間、キャリアデッキ26のピッチ及び/又はロールは比較的に小さいことが予想され、作業半径に実質的に影響を与えないかもしれない。
【0041】
しかしながら、ある状況においては、クレーン10がタイヤ24に支持されようにアウトリガー28が引込状態にある状態で吊り上げ作業を行なうことが有利であるか又は可能である場合がある。そのような吊り上げ作業は、一般に「オンラバー(on-rubber)」吊り上げ作業と呼ばれる。概して、オンラバー吊り上げ作業の間、キャリアデッキ26は、タイヤ24の変形により、アウトリガー28が展開した状態で行なわれる吊り上げ作業の間よりも大きくピッチ及び/又はロールすることが予想される。オンラバー吊り上げ作業の間のクレーン10のピッチ及び/又はロールは、作業半径を増加させ、結果として、定格荷重(すなわち、作業半径での最大許容荷重)を減少させる可能性がある。
【0042】
ここでの実施形態によれば、RCL54は、さらに傾斜情報(すなわち、ピッチ情報及び/又はロール情報)に少なくとも部分的に基づいて作業半径を求めるようにされている。ある実施形態においては、傾斜情報は、RCL54によって傾斜センサ80から受信される。RCL54は、傾斜情報に少なくとも部分的に基づいて求めた作業半径での吊り上げられた現在の荷重を監視するようにできる。例えば、RCL54は、吊り上げられた現在の荷重を、傾斜情報に少なくとも部分的に基づいて求められた作業半径でのクレーン10の定格荷重と比較するようにできる。またさらに、RCL54は、吊り上げられた現在の荷重と傾斜情報に少なくとも部分的に基づいて求められた作業半径での定格荷重との比較に基づいて、伸縮ブーム38のような1つ又は複数のクレーン構成要素の動作を制御するようにできる。例えば、RCL54は、所定の閾値内で、速度を低下又は制限するようにでき、及び/又は定格荷重が吊り上げられた現在の荷重に近づくような方向での伸縮ブーム38の動きを防止又は制限するようにできる。
【0043】
図4及び
図5を参照して、RCL54は、キャリアユニット20に対して座標系XYZを提供するようにされている。RCL54は、座標系XYZ内の複数の点に対する座標を求めるようにできる。例えば、RCL54は、
図4に示されたクレーン10の所定の点に対応する座標系XYZ内の点u、v、wに対するX座標及びZ座標を求めることができる。例えば、点「u」は、伸縮ブーム38のベース枢動軸線に対応し、また座標系XYZの原点として機能するようにできる。点「v」及び「w」はまた、伸縮ブーム38の幾何学的配置の点に対応するようにできる。例えば、点「v」はリフトシリンダ48とブーム38のベース部40との接続によって形成された枢動軸線に対応し、点「w」はリフトシリンダ48のベース枢動軸線に対応するようにできる。
【0044】
図4及び
図6を参照して、RCL54は、傾斜情報に基づいて座標を変換するようにできる。例えば、RCL54は、キャリアユニット20の傾斜角度のようなクレーン10の傾斜角度を、傾斜情報に基づいて求めるようにできる。一実施形態においては、傾斜角度は、傾斜情報に基づいて求められるピッチ角及びロール角に基づいて求められるようにできる。座標は、傾斜角度を使用して調整されるようにできる。伸縮ブーム38の実際の位置に対する傾斜角度もまた求められるようにできる。既知の傾斜角度を使用して、キャリアユニット20上の点の周りでのクレーン10のピッチ及びロールが座標変換に考慮されるようにすることができる。
【0045】
伸縮ブーム38又は関連した構成要素(例えば、リフトシリンダ48)上に位置する点の一般座標は、キャリアユニット20の回転点(すなわち、キャリアユニット20がその周りでピッチ及び/又はロールするキャリアユニット20上の点)を座標系の原点として有するように変換されるようにできる。座標は、傾斜角度を使用してY軸の周りで回転されるようにすることができる。そして、座標は、元の位置、すなわち伸縮ブーム38のベース枢動軸線(点「u」)に原点を有するように再変換されるようにできる。そのような操作はRCL54によって実行されるようにできる。
【0046】
代わりに、
図7を参照して、RCL54は、伸縮ブーム38のベース枢動軸線(点「u」)に対する回転座標系変換を使用して、点の座標を変換するようにできる。よって、伸縮ブーム38のベース枢動軸線は、座標系の原点に留まったままとなる。しかしながら、参照点「W」は移動して、リフトシリンダ角度は変わる。
【0047】
したがって、上述の実施形態においては、RCL54は、例えばオンラバー吊り上げ作業中のクレーン10のピッチ及び/又はロールが変換された作業半径に考慮されるように、調整された又は変換された作業半径を傾斜情報に基づいて求めることができる。
【0048】
RCL54は、追加的に、例えば、クレーンの幾何学的情報、クレーンの重量情報、又はその両方を保存するようにすることができ、またそのような情報を変換された作業半径を求めるために使用することができる。例えば、クレーンの幾何学的情報は、クレーン10又は伸縮ブーム38のようなクレーン構成要素の幾何学的モデルを生成するために、RCL54によって使用されてもよい。クレーンの幾何学的情報は、例えば、様々な寸法、構成要素間の距離、座標系情報、参照点及び/又はクレーン構成要素の座標情報などを含むことができる。クレーンの幾何学的情報は、例えば、センサ情報及び/又はユーザ入力に基づいて与えられるようにできる。重量情報には、例えば、クレーン10の重量分布、クレーンによって吊り上げられた荷重の重量、様々なクレーン構成要素の重量などが含まれ得る。
【0049】
再び
図4を参照して、XYZ座標系のXZ平面での伸縮ブーム38の幾何学的配置には、参照点「u」、「v」、及び「w」が含まれる。加えて、伸縮部42は、それぞれ、近位端部に第1の端部A
1、A
2、・・・A
iを有し、遠位端部に第2の端部B
2、B
3、・・・B
i+1を有するものとして示されている。各伸縮部42の長さL
1、L
2、・・・L
iは、それぞれの伸縮部42の第2の端部B
2、B
3、・・・B
i+1と第1の端部A
1、A
2、・・・A
iとの間の距離である。ベース部40は、遠位端部に第2の端部B
1を有し、また長さL
0を有するものとして示されている。加えて、参照点「v」にある枢動接続軸線までのベース部40の長さは、L
Zとして示されている。伸縮ブーム38の長さは、L
Gとして示されている。伸縮ブーム38の吊り上げ角度は、β
0として示されている。リフトシリンダ角度はα
Zとして示されている。
【0050】
したがって、
図4をさらに参照して、以下の座標が求められる。
【0051】
さらに
図4を参照して、以下の「Z」座標が求められる。
【0052】
一実施形態においては、リフトシリンダ角度α
Zは次のように求められる。
【0053】
図5は、一実施形態に係るキャリアユニット20の別の斜視図である。
図5において、キャリアユニット20は、第1の座標系XYZに向いている。一実施形態においては、ロール角は、キャリアのX軸方向の右側正方向に基づくものとすることができる。正のロール角は、クレーンの右側を下げ、クレーンの左側を上げる。正のピッチ角は、キャリアのY軸方向に対する右側正方向に基づくものとすることができる。正のピッチ角は、キャリアユニット20の前方を下げ、キャリアユニット20の後方を上げる。X座標及びZ座標は、伸縮ブーム38の中央平面に対応する。
【0054】
傾斜角度は、伸縮ブーム38の中央平面でのX、Z座標などの、第1の座標系XYZでの座標を調整するために求められる。X軸方向に近接する単位ベクトル(「X単位ベクトル」)は、ピッチ角の効果に基づいて求めることができる。Y軸方向に近接する単位ベクトル(「Y単位ベクトル」)もロール角の効果に基づいて求めることができる。最大傾斜角度は、X単位ベクトル及びY単位ベクトルに基づいてZ単位ベクトルから求めることができる。そして、最大傾斜角度は、Z単位ベクトルに基づいて求めることができる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
Z単位ベクトルは、XY平面にZ単位ベクトル118(
図5を参照)として射影される。XY平面への伸縮ブーム38の射影120は、伸縮ブーム38のスイング(又は回転)角に基づいて求めることができる。伸縮ブーム38の実際の位置に対する傾斜角度は、最大傾斜角度、射影されたZ単位ベクトル118、及びXY平面での射影されたブーム120に基づいて求めることができる。
【0061】
Z単位ベクトルのXY平面への射影118は次のように求められる:
【0062】
伸縮ブーム38のXY平面への射影120は、次のように求められる:
【0063】
そして、伸縮ブーム38の実際の位置に対する傾斜角度は、次のようになる:
【0064】
ここで
図6を参照して、傾斜角度が分かっている状況で、座標変換はキャリアユニット20(クレーン10)のピッチ及びロールを考慮に入れるために使用されるようにできる。クレーン10は、キャリアユニット20上の、例えばZ軸から水平距離h
cにある点の周りで回転する。その点は、垂直距離(
図6でのh
p2d)に示されている。ある実施形態においては、その垂直距離は伸縮ブーム38のベース枢動軸線「u」からキャリアデッキ26までの距離に対応するようにできる。別のセンサが仰角を検知するために使用されるので、伸縮ブームベース部40の仰角は傾斜の効果を考慮に入れるときに維持されるようにできる。点「v」は、ターンテーブルではなくブームの位置とすることができる。点「u」でのベース枢動軸線は移動するであろう。よって、調整された座標が求められる。
【0065】
【0066】
一実施形態においては、ブームシステム上の点の一般座標は、X座標及びZ座標を有する。座標は、伸縮ブームシステム上の点の一般座標及びキャリアの回転点に対する座標に基づいて、キャリアの回転点(
図6を参照)を原点として変換される。座標は、傾斜角度及び変換された座標に基づいてY軸の周りで回転される。座標は、元の位置、すなわちブームベース枢動軸線「u」が元々あった位置に原点を有するように再び変換される。
【0067】
ブームシステム上の点の一般座標は以下のように示される:
【0068】
座標は、次のようにして、キャリアの回転点を原点として有するように変換される:
【0069】
座標は、以下(以前に計算されている傾斜角度を利用することができる)を使用して、Y軸の周りで回転される:
【0070】
座標は、(ブームが元々枢動していた)元の場所に原点を有するように、次のように再変換される:
【0071】
さらに
図6を参照して、伸縮ブーム38の座標は上述の方法で変換され、傾斜情報を考慮して、変換された伸縮ブーム38’は破線で示されている。加えて、変換された作業半径はR’で示され、一方で元の作業半径はRで示されている。傾斜情報を考慮して、変換された参照点u’、v’、及びw’は
図6に示されている。オンラバー吊り上げ作業においては、RCL54は、キャリアユニット20のピッチ及び/又はロールに応じて移動している、上部構造体の回転の中心線からの作業半径を測定する。RCL54は、オンラバー吊り上げ作業中の作業半径を上述の方法で求めることができる。例えば、クレーン上の様々な点の座標が、キャリアユニット20のピッチ及び/又はロールを考慮に入れるために調整される。
【0072】
図7は、一実施形態にかかる、伸縮ブーム38及びキャリアユニット20の一部の幾何学的配置を示す概略図である。
図7を参照して、オンラバー吊り上げ作業中の傾きを考慮に入れる別のアプローチは、ブームの枢動に対する回転座標系変換を使用することである。そのようなアプローチでは、ブームの枢動「u」は、原点のままである。しかしながら、点「W」は移動し、角度αzは変化する。角度の変化は、予測値を改善しうるブームシステムのFBDに影響を与える可能性がある。
【0073】
図8を参照して、一実施形態にかかるクレーン吊り上げられた荷重を監視するための方法800は、ステップ810においてクレーン10の伸縮ブーム38により吊り上げられた荷重を求めること、ステップ820においてクレーン10のキャリアユニット20のピッチ及び/又はロールの情報を、例えば傾斜センサ80から受信すること、及びステップ830において座標系でのクレーン10の座標をピッチ及び/又はロールの情報に基づいて調整すること、を含み得る、この方法はさらに、ステップ840において調整された座標を使用して変換された作業半径R’を求めること、及びステップ850において吊り上げられた荷重を変換された作業半径R’での定格荷重と比較すること、を含むことができる。
【0074】
したがって、上述の実施形態においては、RCL54は、傾斜センサ80から受信したピッチ及び/又はロールの情報、すなわち傾斜情報を使用して、例えばオンラバー吊り上げ作業中のクレーン10の作業半径(変換された作業半径R’とも呼ばれる)を求めることができる。ある実施形態においては、変換された作業半径R’は、クレーン10のピッチ及び/又はロールを考慮に入れて調整されている作業半径Rとして参照される。ピッチ及び/又はロールの情報は、キャリアユニット20のピッチ及び/又はロールを示している。ピッチ及び/又はロールの情報はまた、上部構造体30のピッチ及び/又はロールを示している。
【0075】
RCL54は、クレーン10のピッチ及び/又はロールを考慮に入れるために、クレーン10の座標を傾斜センサ80からのピッチ及び/又はロールの情報に基づいて変換することができる。クレーン10のピッチ及び/又はロールを考慮に入れることによって、RCL54は、例えばオンラバー吊り上げ作業中にクレーン10の変換された作業半径を求めることができる。
【0076】
上述のようにして、RCL54は、クレーン10によって吊り上げられた荷重を監視して、オンラバー吊り上げ作業中のクレーン10の動作状態(例えば荷重の利用)を、クレーン10によって吊り上げられた荷重と変換された作業半径R’での定格荷重との比較に基づいて、求めることができる。すなわち、RCL54は、傾斜センサ80から受信したピッチ及び/又はロールの情報に基づいて求められた作業半径を使用して、クレーン10によって吊り上げられた荷重を監視し、クレーンの動作状態を判断することができる。
【0077】
上記の相対的な方向、例えば、「上方」、「下方」、「上」、「下」、「~の上」、「~の下」は、単に説明の目的で使用されたものであり、特定の構成要素の向きに応じて変化しうる。したがって、これらの語は事実上何らの限定もしない。加えて、上記実施形態の1つ又は複数の様々な特徴は、ここに開示された異なる実施形態の他の特徴において使用することができ、それらと組み合わせて使用することができ、又はそれらに代えて使用することができることが理解される。
【0078】
ここに参照された全ての特許文献は、この開示の記載内に具体的に示されているか否かに関わらず、参照によってそれらの全体がここに組み入れられる。
【0079】
単数で示された単語は、単数及び複数の両方を含むものととされる。逆に、複数形での如何なる参照も、適切な場合には、単数を含む。
【0080】
この先、多くの変更や変改が本願発明の新規な技術思想の真の精神と範囲から逸脱することなく達成されることが見出されるであろう。説明された特定の実施形態を参照することで何らの限定も意図されていないし、また示唆もしていない。本開示は、添付の特許請求の範囲によって、特許請求の範囲内に含まれる全てのそのような変更をカバーすることが意図されている。