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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-11
(45)【発行日】2025-06-19
(54)【発明の名称】結束テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/21 20180101AFI20250612BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20250612BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20250612BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250612BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20250612BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20250612BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250612BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
C09J7/21
B32B5/02 A
B32B7/022
B32B27/00 M
B32B27/12
B65D63/10 L
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022561350
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021037979
(87)【国際公開番号】W WO2022102331
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2020188496
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楯 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳明
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084481(JP,A)
【文献】特開2001-040302(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069577(WO,A1)
【文献】特表2004-524376(JP,A)
【文献】特開2009-137296(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213521(WO,A1)
【文献】特開2011-088654(JP,A)
【文献】特開2006-210228(JP,A)
【文献】特開平11-335637(JP,A)
【文献】特開2005-162958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 4/00-43/00
B65D 63/10
D04H 13/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、前記不織布の一方の面に積層された樹脂層と、を備える基材層と、前記樹脂層の上に直接積層された粘着層とを有する結束テープであって、
前記樹脂層の積層量が50~350g/mであり、
前記結束テープの長手方向及び幅方向の引張弾性率が、0.08~1.5MPaである、結束テープ。
【請求項2】
前記不織布の目付が20~350g/mである、請求項1に記載の結束テープ。
【請求項3】
前記不織布が、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含む、請求項1または2に記載の結束テープ。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の結束テープ。
【請求項5】
前記樹脂層が、ポリ塩化ビニル、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1つの樹脂を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項6】
前記不織布が融着部を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項7】
前記融着部が、前記不織布の前記樹脂層が積層されていない他方の表面に設けられており、前記融着部の合計面積の割合が、前記不織布の他方の表面の総面積に対して、20~80%である、請求項6に記載の結束テープ。
【請求項8】
電線類の結束用である、請求項1から7のいずれか一項に記載の結束テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束テープに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の配線においては、電線類を結束テープで所定の形状に束ねたものが用いられる。電線類等を結束するためのテープには、電線類が周辺の壁や内装材と接触して傷つくのを防ぐ観点から、耐摩耗性に優れることが求められる。また、近年、電気自動車の普及に伴い、結束後の電線類の径が増大しているが、設計自由度の観点から結束テープを巻いた状態でも屈曲させられることが求められている。
これまで、耐摩耗性の高いテープとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)編布を基材として用いた結束テープ、特定の厚みを有する不織布と樹脂フィルムとを貼り合わせた基材を有する結束テープ等が提案されている(例えば、特許文献1、2等)。しかしながら、このような結束テープは長手方向に伸びないため、結束後の電線類の屈曲性が悪いという課題がある。
【0003】
結束後の電線類を屈曲可能な柔軟性を備える結束テープとして、例えば、特許文献3には、芳香族ビニル系エラストマー、スチレン系共重合体及びスチレン系樹脂とを含有するフィルム基材と、粘着剤層とを備える粘着テープが提案されている。また、特許文献4には、熱可塑性樹脂からなり、100%引張モジュラスが50MPa以下であるシートが周方向に巻かれた保護チューブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-154634号公報
【文献】特開2009-137296号公報
【文献】特開2008-143976号公報
【文献】特開2018-152983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車等の配線用途においては、近年、より高度な耐摩耗性を有することが要求されている。すなわち、スクレープ摩耗試験において、100回以上の摩耗回数を達成できる結束テープが求められている。しかしながら、従来の結束テープでは、上記の摩耗試験をクリアできないという問題がある。
また、結束テープは結束作業時にテープを長手方向に引っ張りながら対象物を結束するが、テープが伸びすぎると対象物を固定しづらくなり、作業性が低下する。そのため、柔軟性と結束作業性とを両立できる結束テープが求められている。
そこで本発明は、高耐摩耗性と、電線類を屈曲可能な柔軟性とを有し、かつ結束作業性にも優れる結束テープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本願発明者らは鋭意検討した結果、不織布と、樹脂層とを備える基材層を有し、かつ結束テープの長手方向及び幅方向の引張弾性率が特定の範囲である結束テープであれば、前述の全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]不織布と、前記不織布の一方の面に積層された樹脂層と、を備える基材層と、粘着層とを有する結束テープであって、前記結束テープの長手方向及び幅方向の引張弾性率が、0.08~1.5MPaである、結束テープ。
[2]前記不織布の目付が20~350g/mである、[1]に記載の結束テープ。
[3]前記樹脂層の積層量が20~350g/mである、[1]または[2]に記載の結束テープ。
[4]前記不織布が、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[5]前記熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1つを含む、[4]に記載の結束テープ。
[6]前記樹脂層が、ポリ塩化ビニル、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1つの樹脂を含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[7]前記不織布が融着部を備える、[1]から[6]のいずれか一項に記載の結束テープ。
[8]前記融着部が、前記不織布の前記樹脂層が積層されていない他方の表面に設けられており、前記融着部の合計面積の割合が、前記不織布の他方の表面の総面積に対して、20~80%である、[7]に記載の結束テープ。
[9]電線等の結束用である、[1]から[8]のいずれか一項に記載の結束テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高耐摩耗性と、電線類を屈曲可能な柔軟性とを有し、かつ結束作業性にも優れる結束テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の結束テープの1つの態様を表す断面図である。
図2】本発明の結束テープの不織布の1つの態様を表すレーザー顕微鏡写真である。
図3】実施例において、結束テープの柔軟性を評価するための、3点曲げ荷重の測定方法を示す説明図である。
図4】引張強度測定用試験片を作成するための3号ダンベルの形状を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[結束テープ]
本発明に係る結束テープは、不織布と、前記不織布の一方の面に積層された樹脂層と、を備える基材層と、粘着層とを有する結束テープであって、前記結束テープの長手方向及び幅方向の引張弾性率が、0.08~1.5MPaであることを特徴とする。本明細書において「結束テープの長手方向」とは、ロール状に巻かれた状態の結束テープにおいて、テープを引き出す際の方向を意味する。また、「結束テープの幅方向」とは、前記長手方向に対して直交する方向を意味する。本明細書においては、結束テープの長手方向を「MD方向」と記載し、「幅方向」を「TD方向」と記載することもある。
【0010】
本発明に係る結束テープは、テープの長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の引張弾性率は、0.08~1.5MPaである。本発明に係る結束テープは、不織布と樹脂層とを含む基材層を備え、かつ結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率が0.08~1.5MPaであることにより、結束テープの柔軟性が良好となり、結束後の電線類を屈曲させることができる。また、結束作業時にテープが伸びすぎて作業性が低下することを防ぐことができる。またこのような結束テープは、耐摩耗性にも優れる。すなわち、本発明に係る結束テープは、スクレープ摩耗試験における摩耗回数を100回以上とすることができる。
結束テープのMD方向とTD方向の引張弾性率は、共に、0.08~1.5MPaの範囲であり、0.08~0.92MPaであることが好ましく、0.08~0.7MPaであることがより好ましく、0.08~0.5MPaであることが特に好ましい。結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を0.08MPa以上とすることにより、高耐摩耗性と良好な結束作業性が得られる。前記引張弾性率を1.5MPa以下とすることにより、柔軟性に優れた結束テープが得られる。なお、本明細書において、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率は、JIS Z0237(2008)における引張強さ及び伸びの測定条件に従って測定した値のことを指す。具体的には、以下の方法で測定した値のことを指す。
(結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率)
幅19mm、長さ200mmの結束テープ試験片を、チャック間距離が100mmとなるように引張試験機のチャック部に挟んで固定する。室温23℃、相対湿度50%RHの環境下、300mm/minの速さで試験片を引っ張り、引張応力と歪とを測定する。歪5~10%間の引張応力と歪との比を、線形回帰により算出した値を引張弾性率とする。なお結束テープのMD方向の測定において、前記試験片の「幅」はTD方向の長さを意味し、「長さ」はMD方向の長さを意味する。また、結束テープのTD方向の測定においては、前記試験片の「幅」はMD方向の長さを意味し、「長さ」はTD方向の長さを意味する。
【0011】
1つの態様において、結束テープのTD方向の引張弾性率と、MD方向の引張弾性率との比(テープのTD方向の引張弾性率/テープのMD方向の引張弾性率、以下、単に「TD/MD」と記載することもある)は、0.8~1.3であることが好ましく、0.9~1.2であることがより好ましい。結束テープの引張弾性率の比が前記範囲内であれば、柔軟性と結束作業性とがより良好となりやすい。
【0012】
図1は、本発明の結束テープの1つの態様を表す断面図である。結束テープ100は、不織布10、樹脂層20及び粘着層30がこの順に積層された構成を有する。結束テープ100のMD方向及びTD方向の引張弾性率は0.08~1.5MPaの範囲である。このような構成を有する結束テープ100は、高耐摩耗性と、電線類を屈曲可能な柔軟性とを有し、かつ結束作業性にも優れている。
【0013】
(基材層)
本発明に係る結束テープにおける基材層は、不織布と、前記不織布の一方の面に積層された樹脂層とを備えている。
【0014】
<不織布>
基材層に用いられる不織布としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、スパンボンド法で作成された不織布、スパンレース法で作成された不織布、メルトブロー法で作成された不織布等を用いることができる。また、不織布は単層であってもよく、複数の層からなる積層不織布であってもよい。また積層不織布の場合、複数の方法で作成された不織布を積層させたものであってもよい。このうち、機械的強度の観点から、スパンボンド法で作成された不織布(スパンボンド不織布)を用いることが好ましい。
また、不織布の目付は、20~350g/mが好ましく、30~320g/mがより好ましく、50~300g/mがさらに好ましい。不織布の目付が前記範囲内であれば、テープ重量の増加を抑えつつ、耐摩耗性が向上しやすくなる。また、その空隙率としては、40~90%が好ましい。
また、見かけ密度としては、0.1~0.5g/cmが好ましく、0.2~0.45g/cmであることがより好ましい。不織布の見かけ密度が前記範囲内であれば、高い耐摩耗性を維持しつつ、結束品の柔軟性が良好となりやすい。
【0015】
不織布は、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーは、加熱により軟化して流動性を示し、冷却するとゴム状に戻る性質を有し、常温ではゴム弾性を示すエラストマーを意味する。不織布が、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含むことにより、結束テープの柔軟性が向上しやすくなる。また、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を、0.08~1.5MPaの範囲に調整しやすくなる。
【0016】
<繊維(A)>
本明細書において、「熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)」とは、繊維(A)を構成する成分中に、少なくとも熱可塑性エラストマー成分が含まれていることを意味する。本発明に係る不織布は、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含む繊維から構成されていることが好ましい。
繊維(A)に含まれる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K7311-1995の規格に沿って測定した引張強度が2~40MPaであるものが好ましい。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、熱可塑性エラストマーの引張強度の具体的な測定方法は以下のとおりである。
(熱可塑性エラストマーの引張強度の測定方法)
JIS K7311-1995の規格に沿って引張強度を測定する。具体的には、熱可塑性エラストマー樹脂を射出成形して、大きさ100mm角、厚さ2mmに成形した平板状試料を作製する。この試料をJIS K6251で規定される3号ダンベル(図4参照)で打抜いたものを試験片とし、チャック間距離が70mmとなるように引張試験機のチャック部に試験片を挟んで固定する。標線間距離を20mmとし、試験速度300mm/minの速さで試験片を引っ張り、試験片が破断するまでの荷重を測定し、その最大値を断面積で除した値を引張強度とする。なお、図4の3号ダンベルの説明図において、表記の数字は寸法(単位:mm)を意味する。
【0017】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム分散ポリプロピレン(PP+EPDM)等が挙げられる。
ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)としては、例えば、ポリエステル系TPU、ポリエーテル系TPU等が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)としては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。
エステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエーテルエステル-ポリエステルブロック共重合体(TPC-EE)、ポリエーテルエステルブロック共重合体(TPC-ET)、ポリエステルブロック共重合体(TPC-ES)等が挙げられる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)としては、例えば、ポリアミド-ポリエーテルエステル-ポリエステルブロック共重合体(TPA-EE)、ポリアミド-ポリエステルブロック共重合体(TPA-ES)、ポリアミド-ポリエーテルエステルブロック共重合体(TPA-ET)等が挙げられる。
これらのうち、柔軟性と引張強度とを両立しやすい観点から、繊維(A)に含まれる熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)が好ましく、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)を含むことがより好ましい。また、ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系TPUがより好ましい。
【0018】
繊維(A)が、前記熱可塑性エラストマー以外の成分(その他の成分)を含む場合、繊維(A)を構成する成分(100質量%)に対する、熱可塑性エラストマーの割合は、柔軟性の観点から、80~99質量%であることが好ましく、90~99質量%がより好ましく、95~99質量%であることが特に好ましい。1つの好ましい態様においては、繊維(A)は熱可塑性エラストマーのみからなる繊維であってもよい。すなわち、繊維(A)を構成する成分中の熱可塑性エラストマー成分の割合が100質量%であってもよい。
繊維(A)中のその他の成分としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらその他の成分は、一種単独で用いられてよく、二種以上を併用してもよい。繊維(A)がその他の成分を含む場合は、不織布の強度が向上しやすいことから、ポリオレフィンを含むことが好ましい。
【0019】
繊維(A)の繊維径は、不織布の強度と柔軟性を両立しやすい観点から、1~40μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。なお、前記繊維径は、レーザー顕微鏡を用いて、任意の繊維(A)10本の直径を測定し、その平均値から算出した値を指す。
【0020】
不織布は、前記繊維(A)以外の繊維(その他の繊維)を含んでいてもよい。不織布がその他の繊維を含む場合、不織布を構成する繊維の総質量に対する繊維(A)の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。不織布を構成する繊維の総質量に対する繊維(A)の割合が前記範囲内であれば、柔軟性が良好となりやすい。1つの好ましい態様においては、不織布は、繊維(A)のみから構成されていてもよい。
不織布に含まれるその他の繊維としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。これらその他の繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。1つの態様において、不織布は、繊維(A)と、その他の繊維としてポリオレフィン繊維との混繊であってもよい。
その他の繊維は繊維(A)と同程度の繊維径を有することが好ましい。すなわち、繊維径は1~40μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。その他の繊維の繊維径は、繊維(A)と同じ方法にて求めることができる。
【0021】
不織布は融着部を備えていてもよい。前記融着部は、不織布を構成する繊維同士が接合することによって、不織布表面に凹み部として形成されている。前記融着部は、機械的処理によって形成されていてもよく、エンボス加工によって形成されたものであってもよい。本発明の1つの態様においては、前記融着部は、熱エンボス加工により前記不織布を構成する繊維を熱融着して形成されたものであることが好ましい。このような融着部を有することにより、摩耗時に働く水平方向の応力緩和が大きくなり、耐摩耗性がより向上しやすくなる。また、結束作業時に結束テープが伸びすぎて作業性が低下することを防ぎやすくなる。
また、前記融着部は、不織布の「樹脂層が積層されていない側の表面」(以下、「不織布の他方の表面」と記載する)に設けられていることが好ましい。すなわち、1つの好ましい態様においては、不織布の一方の面上に樹脂層が積層されており、前記不織布の他方の表面に、融着部が設けられていてもよい。
不織布の他方の表面に形成された融着部は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。ここで、「2種類以上の融着部」とは、形状の異なる融着部が2種類以上設けられていること、大きさ(面積)が異なる融着部が2種類以上設けられていること、またはそれらが混在していることを意味する。
【0022】
融着部の形状は、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、円形状(真円または楕円形)、ひし形状(ひし形やそれに類似する形状(ただし、正方形は含まない))、四角形状(長方形、正方形、台形等。角丸四角形も含む)等の形状が挙げられる。このうち、結束テープの耐摩耗性及び結束作業性がより向上しやすい観点から、円形状、または四角形状であることが好ましく、正方形を含むことが特に好ましい。
融着部の面積は、耐摩耗性及び結束作業性が向上しやすい観点から、0.5~4.0mmであることが好ましく、0.8~3.8mmであることがより好ましく、1.2~3.5mmであることが特に好ましい。
融着部は、不織布の他方の表面上にランダムに配置されていてもよく、直線状または格子状に配置されていてもよい。このうち、耐摩耗性がより向上しやすい観点から、格子状に配置されていることが好ましい。
不織布が融着部を備える場合、不織布上に設けられた融着部の合計面積の割合は、不織布の他方の表面の総面積に対して、20~80%であることが好ましく、50~75%であることがより好ましい。融着部の合計面積が前記範囲内であれば、耐摩耗性、結束作業性がより向上しやすい。
【0023】
不織布が融着部を備える場合、前述の通り、熱エンボス加工により不織布を構成する繊維を熱融着して形成されたものであることが好ましい。すなわち、本発明の融着部を形成するための凸部が表面に形成された熱エンボスロールと、フラットロールとの間に不織布を挟み込んで加圧することによって形成されたものであることが好ましい。
熱エンボス加工を施す際の温度としては、例えば、100~150℃が好ましく、100~130℃がより好ましい。
【0024】
図2は、結束テープ100の不織布10の表面上に設けられた融着部1の一例を示すレーザー顕微鏡写真である。図2では、正方形の融着部1を不織布10の表面(他方の表面)に格子状に設けた構成となっている。
【0025】
<樹脂層>
樹脂層は、前記不織布の一方の面に積層されている。1つの態様において、前記樹脂層は、前記不織布の一方の表面上に直接積層されていることが好ましい。
基材層が前記不織布と樹脂層とを含むことにより、結束テープの耐摩耗性が向上する。また、結束作業時に結束テープが伸びすぎて作業性が低下することを防ぐことができる。また、基材層が樹脂層を備えることにより、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を、0.08~1.5MPaの範囲に調整しやすくなる。
樹脂層を構成する樹脂としては、本発明の効果を有する限り特に限定されない。耐摩耗性がより向上しやすい観点からは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンと酢酸ビニルの共重合体(EVA)から選択される少なくとも1つの樹脂を含むことが好ましく、PVC及びEVAから選択される少なくとも1つの樹脂を含むことがより好ましい。なお、これらPVC、PP、PE、PVA及びEVAには、本発明の効果を阻害しない範囲で、少量の添加剤やコモノマーが含まれていてもよい。
【0026】
PVCとしては、例えば、平均重合度が500~3000のものが好ましく、700~2000のものがより好ましく、800~1500のものが特に好ましい。前記平均重合度は、樹脂200mgをニトロベンゼン50mLに溶解させ、このポリマー溶液の比粘度を30℃恒温槽中において、ウベローデ型粘度計を用いて測定し、JIS-K6720-2により算出した値を意味する。
PVCには、柔軟性の観点から、可塑剤が含まれていてもよい。
可塑剤としては、フタル酸系可塑剤、イソフタル酸系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤及びそれらのポリエステル系可塑剤、リン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤等を使用することができる。
可塑剤の具体例としては、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ-n-オクチル(n-DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOIP)、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)、ベンジルブチルフタレート(BBP)、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、トリクレジルホスフェート(TCP)、ベンジルオクチルアジペート(BOA)、アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル、アジピン酸-ブチレングリコール系ポリエステル、フタル酸-プロピレングリコール系ポリエステル、ジフェニルクレジルホスフェート(DPCP)、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記可塑剤のうち、安価で可塑化効果の高いDINPがより好ましい。
PVCが可塑剤を含む場合、その含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、40~70質量部が好ましく、50~65質量部がより好ましく、57~65質量部がさらに好ましい。
PVCには、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、無機充填剤、改質剤、及びその他添加剤等を配合することができる。その他添加剤としては、例えば、着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等が挙げられる。これらの配合量は、任意である。
【0027】
PPとしては、例えば、アイソタクティックまたはシンジオタクティックの結晶性を有する樹脂が挙げられる。また、PPは、少量のコモノマーが共重合したものであってもよい。このようなPPとしては、例えば、示差走査熱量測定(DSC)による融点が155~175℃、好ましくは160~170℃の範囲のものであってもよい。
【0028】
PVAとしては、例えば、けん化度が70~90モル%のPVAが好ましい。
またEVAとしては、耐摩耗性と結束作業性の観点から、エチレン含有量が5~99%、好ましくは10~98%の範囲のものが好ましい。
【0029】
PEとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。LDPEとしては、例えば、密度が0.91g/cm以上0.95g/cm未満、好ましくは0.93~0.94g/cmのものが挙げられる。また、HDPEとしては、例えば、密度が0.95g/cm以上0.97g/cm以下、好ましくは0.95~0.96g/cmのものが挙げられる。また、示差走査熱量測定(DSC)による融点が110~140℃、好ましくは120~135℃の範囲のものであってもよい。
【0030】
樹脂層は、前述の樹脂を不織布に含浸または塗工することによって構成されたものであってもよく、前述の樹脂を含むフィルムまたはシートを不織布に積層させたものであってもよい。
樹脂層が、前述の樹脂を不織布に含浸または塗工することによって構成された層である場合、樹脂層を形成する方法としては、例えば、グラビアコーター、コンマコーター、ダイコーター等によって塗布する方法が挙げられる。
一方、前述の樹脂を含むフィルムまたはシートを不織布に積層させて樹脂層を形成する場合、前記フィルムまたはシートとしては、例えば、シート押出機による押出し製膜によって得られたフィルムまたはシートであることが好ましい。
【0031】
樹脂層の積層量は、20~350g/mが好ましく、30~320g/mがより好ましく、50~300g/mがさらに好ましい。樹脂層の積層量が前記範囲内であれば、耐摩耗性が向上しやすい。また、柔軟性と結束作業性をより両立しやすい。
1つの態様において、基材層は、不織布と樹脂層のみから構成されていてもよい。
【0032】
基材層の厚みは、300~1200μmであることが好ましく、300~600μmであることがより好ましい。基材層の厚みが前記範囲内であれば、耐摩耗性及び柔軟性が良好となりやすい。なお、基材層の厚みは、JIS B 7503に規定するダイヤルゲージを用いて3箇所測定し、その平均の値のことを意味する。
【0033】
基材層は、前述の不織布及び樹脂層以外の層(中間層)を備えていてもよい。中間層を設ける場合は、不織布と樹脂層との間、もしくは樹脂層の不織布が積層されていない側の面に設けられていてもよい。
【0034】
(粘着層)
本発明に係る結束テープにおいて、粘着層は、前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられている。また、粘着層は、樹脂層の上に直接積層されていることが特に好ましい。
粘着層は粘着剤により構成されていることが好ましい。粘着剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来結束テープに用いられている粘着剤を適宜用いることができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を用いることができる。
【0035】
前記アクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーを主成分とするものを用いることができる。
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシ基含有不飽和単量体の重合体等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、n-ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
カルボキシ基含有不飽和単量体としては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等を用いることができる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記アクリル系ポリマーは、上記に例示したような(メタ)アクリル酸アルキルエステルやカルボキシ基含有不飽和モノマー以外のその他のモノマーを含む共重合体とすることもできる。
その他のモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル等の含窒素(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニリテン、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の1つの態様において、粘着層を構成する粘着剤として、アクリル系粘着剤を用いる場合、前記アクリル系粘着剤に含まれる低分子量成分が、基材層の不織布を透過する現象(裏抜け)を防止する観点から、前記アクリル系ポリマーが架橋されていることが好ましい。
アクリル系ポリマーの架橋方法としては、例えば、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)を照射する方法、任意の架橋剤を添加する方法等が挙げられる。
任意の架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、多官能イソシアネート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム(NR)、及び合成ゴムから選択される少なくとも1種のゴム成分に、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂等からなる群より選択される少なくとも1つの粘着付与剤を適宜配合したもの等が挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、前記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物(SIPS、SEBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、クロロプレンゴム(CR)、及びブチルゴム(IIR)等からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。これらのうち、高粘着力と背面糊残り防止とを両立しやすい観点から、天然ゴム(NR)と、SBR、CR及びIIRから選択される少なくとも1つの合成ゴムとの組み合わせが好ましく、天然ゴム(NR)とSBRとの組み合わせが特に好ましい。
【0040】
シリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴムに、シリコーンレジンやシリコーンオイル等を適宜配合したもの等が挙げられる。
【0041】
ウレタン系粘着剤としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のポリイソシアネートとを反応させてなるものが挙げられる。
【0042】
粘着層を形成する粘着剤には、前述の粘着剤に任意の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の1つの態様においては、粘着層を構成するための粘着剤としては、高粘着力と背面糊残り防止の観点から、ゴム系粘着剤を用いることが好ましい。
粘着層の積層量としては、10~100g/mが好ましく、20~80g/mがより好ましく、20~60g/mが特に好ましい。粘着層の積層量が前記範囲内であれば耐摩耗性と柔軟性とがより良好となりやすい。
また、粘着層は、複数の層から構成されていてもよい。粘着層が複数の層から構成される場合、粘着層の総積層量が前記範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0045】
1つの態様において、本発明の結束テープは、その総厚みが、200~1300μmであることが好ましく、240~1100μmであることがより好ましく、250~650μmであることがさらに好ましい。前述の構成を有する本発明の結束テープは、その総厚みが200~1300μmの範囲であっても、柔軟性が良好となりやすく、かつ結束作業性が良好となりやすい。
また、1つの態様において、結束テープの総積層量(基材層及び粘着層の合計積層量)は、柔軟性と高耐摩耗とをより両立しやすい観点から、100~500g/mが好ましく、200~460g/mがより好ましく、250~450g/mが特に好ましい。
【0046】
1つの態様において、本発明に係る結束テープは、ISO6722に沿って測定した耐スクレープ摩耗回数が100回以上であることが好ましく、1000回以上であることがより好ましい。なお、スクレープ摩耗回数は、具体的には、以下の方法で測定した値のことを指す。
<耐スクレープ摩耗回数の測定方法>
直径10mmの鋼棒の長手方向に、幅19mm、長さ50mmの結束テープを1層貼り付ける。次に、直径0.45mmのピアノ線を結束テープの基材層側に接触させ、7Nの荷重をかけて、60回/分の速度で長手方向15.5mmの距離を往復運動させる。このときピアノ線は結束テープを擦過し、結束テープが貫通するまでの往復回数を耐スクレープ摩耗回数とする。
【0047】
また、1つの態様において、本発明に係る結束テープは、JIS Z0237(2000)の8に従って測定した、結束テープのMD方向の引張破断強度が20N/10mm以上であることが好ましい。結束テープのMD方向の引張破断強度が20N/10mm以上であれば、結束テープの柔軟性及び結束作業性がより良好となりやすい。前記引張破断強度は、20N/10mm以上70N/10mm以下であることがより好ましく、22~60N/10mmであることがさらに好ましく、24~50N/10mmであることが特に好ましい。なお、結束テープのMD方向の引張破断強度は、具体的には以下の方法で測定した値のことを指す。
<結束テープのMD方向の引張破断強度の測定方法>
室温23℃、相対湿度50%RHの環境下にて、結束テープの試験片(幅(TD方向の長さ)19mm、長さ(MD方向の長さ)200mm、厚み0.2~1.3mm)をチャック間距離が100mmとなるように引張試験機のチャック部に挟んで固定する。その後、300mm/minの速さで試験片を引張り、試験片が破断するまでの荷重を測定し、その最大値を引張破断強度とする。
【0048】
なお、結束テープのTD方向の引張破断強度としては、特に限定されない。結束した電線の屈曲によるテープ破断を防止しやすい観点からは、結束テープのTD方向の引張破断強度は、5~70N/10mmであってもよく、10~50N/10mmであってもよい。
【0049】
[結束テープの製造方法]
本発明に係る結束テープの製造方法としては、例えば、シート押出し法で樹脂フィルムを製膜し、不織布の一方の面に、熱ラミネート法で不織布に樹脂を積層して、不織布と樹脂層とを含む基材層を構成することを含む方法が挙げられる。不織布が熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含む場合、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含む繊維を用いて、スパンボンド法、又はメルトブロー法で不織布を形成する、または、繊維(A)を含む繊維から構成された不織布を準備する工程を含んでいてもよい。また、不織布が融着部を備える場合、前記不織布の他方の表面に、例えば、熱エンボス加工で融着部を形成する工程を含んでいてもよい。
不織布と樹脂層とを含む基材層を構成したのち、前述の粘着剤を前記基材層に直接塗布して粘着層を形成する、または一旦、別のシートに塗布した粘着剤を前記基材層に転写することにより、結束テープを製造することができる。なお、粘着層を形成するための粘着剤は、基材層が不織布と樹脂層とで構成されている場合、前記樹脂層上に直接粘着剤を塗布して粘着層とすることが好ましい。
基材層や別のシートへの粘着剤の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアナイフコート法等が挙げられる。
【0050】
[用途]
前述の通り、本発明の結束テープは、高耐摩耗性と、電線類を屈曲可能な柔軟性とを有し、かつ結束作業性にも優れる。よって、これらの性能が要求される分野、例えば、自動車の電線類等の結束用テープとして好適に用いることができる。なお、当然ながら本実施形態の結束テープは、その用途が自動車の電線類等の結束用途に限定されるわけではない。
【0051】
本発明の結束テープのその他のより好ましい態様は、不織布と、前記不織布の一方の面に積層された樹脂層と、を備える基材層と、粘着層とを有する結束テープであって、前記結束テープの長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の引張弾性率が、0.08MPa以上であり、前記結束テープの長手方向及び幅方向の引張弾性率の比(TD/MD)が、0.08~1.3である、結束テープである。前記結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率は、1.5MPa以下であることが好ましい。前記不織布は、熱可塑性エラストマーを含む繊維(A)を含むことが好ましい。また、前記不織布の目付が30g/m以上であり、前記樹脂層の積層量が30g/m以上であることがより好ましい。
【実施例
【0052】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
(基材層の作成)
繊維径20μm、目付100g/m、見かけ密度0.33g/mのウレタン製不織布(商品名:「エスパンシオーネ(登録商標)」、KBセーレン(株)製)の一方の面に、シート押出機(Tダイ幅500mm、φ40mmのエキストルーダー、田辺機械プラスチック(株)製)にて押出し製膜した、PVCフィルムを熱ラミネート法で積層して樹脂層を形成し、基材層を得た。樹脂層の積層量は130g/mであった。なお、樹脂層を構成するPVCとしては、以下の組成のものを用いた。
(PVC樹脂の組成)
PVC(塩化ビニルのホモポリマー、平均重合度1300、製品名:「TH-1300」、大洋塩ビ(株)製)100質量部に対し、DINP((株)ジェイプラス製)58質量部、エポキシ化大豆油(製品名:「ケミサイザーSNE-50」、三和合成化学(株)製)2質量部、Ca-Zn-Mg系複合安定剤(製品名:「OW-5200」、堺化学工業(株)製)2質量部、炭酸カルシウム(製品名:「カルシーズ(登録商標)P」、神島化学工業(株)製)28質量部、を配合した。
【0054】
(結束テープの作成)
天然ゴムラテックス(製品名:「HA LATEX」、(株)レヂテックス製)10質量部(固形分)、スチレン-ブタジエンゴムラテックス(製品名:「T-093A」、JSR(株)製)40質量部(固形分)、石油樹脂系エマルション粘着付与剤(製品名:「AP-1100-NT」、荒川化学工業(株)製)50質量部(固形分)を混合して、ゴム系粘着剤エマルジョンを調製した。次に、コンマコーター法で、前記基材層の前記樹脂層の上(すなわち、不織布が積層されていない側の面)に粘着層を形成して結束テープを得た。粘着層の積層量は40g/mであった。得られた結束テープの総積層量は270g/mであり、総厚みは440μmであった。また、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を以下の方法で測定した。実施例1の結束テープのMD方向の引張弾性率は0.15MPaであり、TD方向の引張弾性率は0.16MPaであった。
(結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率)
幅19mm、長さ200mmの結束テープ試験片を作成し、チャック間距離が100mmとなるように引張試験機のチャック部に挟んで固定した。室温23℃、相対湿度50%RHの環境下、300mm/minの速さで試験片を引っ張り、引張応力と歪を測定した。歪5~10%間の引張応力と歪との比を、線形回帰により算出した値を引張弾性率とした。なお結束テープのMD方向の測定において、前記試験片の「幅」とはTD方向の長さを意味し、「長さ」とはMD方向の長さを意味する。また、結束テープのTD方向の測定においては、前記試験片の「幅」とはMD方向の長さを意味し、「長さ」とはTD方向の長さを意味する。
また、得られた結束テープの耐摩耗性、柔軟性、結束作業性、及びMD方向の引張破断強度を、以下の手順に沿って評価した。結果を表1に示す。
【0055】
<耐摩耗性の評価>
直径10mmの鋼棒の長手方向に、幅19mm、長さ50mmの結束テープを1層貼り付けた。直径0.45mmのピアノ線を結束テープの不織布側に接触させ、23℃、湿度50%RHの条件にて7Nの荷重をかけて、60回/分の速度で結束テープの長手方向15.5mmの距離を往復運動させた。このときピアノ線は結束テープを擦過し、結束テープが貫通するまでの往復回数を耐スクレープ摩耗回数とした。また、以下の評価基準に沿って耐摩耗性を評価し、B以上を合格(高耐摩耗性を有する)とした。なお、以下の評価基準において、A評価(耐スクレープ摩耗回数が1000回以上)の結束テープは、欧州自動車規格LV312における、クラスDの耐摩耗性を有する。
(評価基準)
A:耐スクレープ摩耗回数が1000回以上である。
B:耐スクレープ摩耗回数が100回以上1000回未満である。
C:耐スクレープ摩耗回数が100回未満である。
【0056】
<柔軟性の評価>
JIS K7171(2016)(ISO 178:2010)に沿って、試験片の3点曲げ荷重を測定した。具体的には、図3に示すように、300mmの長さにカットした直径1mmの自動車用薄肉電線200(製品名:「AVS050」、住友電装(株)製)7本を、結束テープ100でハーフラップ巻きして試験片Xを作成した。次に、100mm間隔で配置した支持台300で支持した試験片Xの中央部に、ロードセル400に接続した押し込み治具を当て、変位量が30mmとなるまで押し込み、その時の最大荷重を測定した。なお、曲げ荷重は以下の測定条件にて行った。また、以下の評価基準に沿って柔軟性を評価し、B以上を合格(柔軟性に優れる)とした。
(測定条件)
測定環境:温度23℃、湿度50%RH
試験速度:100mm/min
(評価基準)
A:3点曲げ荷重が4.0N未満。
B:3点曲げ荷重が4.0N以上5.0N未満。
C:3点曲げ荷重が5.0N以上。
【0057】
<結束作業性の評価>
幅19mmで1.3インチ紙管に15m巻き取ったロール状の結束テープを用意し、直径1mmの自動車用薄肉電線200(製品名:「AVS050」、住友電装(株)製)7本を結束テープでハーフラップ巻きする作業を行って結束作業性を評価した。また、以下の評価基準に沿って結束作業性を評価し、B以上を合格(結束作業性が良好である)とした。
(評価基準)
A:結束作業時に結束テープが伸びず対象物を結束しやすかった。
B:結束作業時に結束テープが少し伸びるが対象物を結束することができた。
C:結束作業時に結束テープが伸びてしまい、対象物を結束しづらかった。
【0058】
<結束テープのMD方向の引張破断強度>
室温23℃、相対湿度50%RHの環境下にて、得られた結束テープを、幅(TD方向の長さ)19mm、長さ(MD方向の長さ)200mmで切り出して試験片を作成した。次に、試験片をチャック間距離が100mmとなるように引張試験機のチャック部に挟んで固定したのち、300mm/minの速さで引張り、試験片が破断するまでの荷重を測定し、その最大値を引張破断強度とした。
【0059】
[実施例2~10及び比較例1]
不織布及び樹脂層の構成を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法にて結束テープを作成した。また各例の結束テープについて、実施例1と同様の方法で、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を測定した。また、実施例1と同様の方法で耐摩耗性、柔軟性、結束作業性、及びMD方向の引張破断強度を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例11]
繊維径20μm、目付100g/m、見かけ密度0.33g/mのウレタン製不織布(商品名:「エスパンシオーネ」、KBセーレン(株)製)不織布の表面に、エンボス加工法で融着部を形成した。融着部の形状は正方形であり、その面積は2.8mmであった。融着部は不織布の表面に格子状に形成した。また不織布の表面積(融着部を設けた表面の総面積)に対する融着部の合計面積は69%であった。
次に、前記不織布の融着部が設けられていない側の面に、実施例1と同様の方法にて樹脂層を形成して基材層を得た。樹脂層は実施例1と同じPVC樹脂で構成されており、その積層量は130g/mであった。その後、実施例1と同様の方法で粘着層を形成して結束テープを得た。使用した粘着剤は実施例1と同じゴム系粘着剤であり、粘着層の積層量は40g/mであった。得られた結束テープの総積層量は270g/mであり、総厚みは440μmであった。また、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定した。さらに、得られた結束テープの耐摩耗性、柔軟性、結束作業性、及びMD方向の引張破断強度を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
樹脂層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法で結束テープを作成した。得られた結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率を実施例1と同様の方法で測定した。さらに、得られた結束テープの耐摩耗性、柔軟性、結束作業性、及びMD方向の引張破断強度実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0062】
なお、表1中、「NR/SBR」とは、天然ゴム(NR)と合成ゴム(スチレン-ブタジエンゴム(SBR))のことを意味する。実施例2~11及び比較例1~2の粘着剤(NR/SBR)は、実施例1で用いたものと同じ粘着剤を用いた。
また、表1中、「PET」は、ポリエチレンテレフタレート系繊維(繊維径10μm)を意味する。
実施例2~9、11、及び比較例1の「PVC」は、実施例1と同じPVC樹脂を用いた。また、実施例8の「TPO」、実施例9の「TPS」、及び実施例10の「EVA」としては、以下の組成のものを用いた。
(TPO)
オレフィン系熱可塑性エラストマーであるエチレンプロピレンジエンゴム分散ポリプロピレン(TPO、商品名:「EXCELINK(登録商標)1300B」、JSR(株)製)からなる、繊維径20μmの繊維。
(TPS)
スチレン系熱可塑性エラストマーであるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)(TPS、商品名:「タフテック(登録商標)H1043」、旭化成(株)製)からなる、繊維径10μmの繊維。
(EVA)
エチレン含量が18%であるEVA樹脂(製品名:「デンカEVAテックス(登録商標)」、デンカ(株)製)。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示す通り、本発明の構成を満たす実施例1~11の結束テープは、高耐摩耗性と、電線類を屈曲可能な柔軟性とを有しており、かつ結束作業性も良好であった。さらに、実施例3、5及び7の結束テープは、欧州自動車規格LV312のクラスDに相当する、優れた耐摩耗性も有していることが分かった。一方、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率が1.5MPa超であった比較例1の結束テープは、耐摩耗性及び結束作業性は良好であったものの、柔軟性が低かった。また、結束テープのMD方向及びTD方向の引張弾性率が0.08MPa未満であった比較例2の結束テープは、柔軟性は良好であったものの、結束作業時にテープが伸びすぎてしまい、対象物を結束することが難しかった。また耐摩耗性も低かった。以上の結果から、本発明の結束テープは、高耐摩耗性と、電線類を屈曲可能な柔軟性とを有し、かつ結束作業性にも優れることが確認された。
【符号の説明】
【0065】
1:融着部
10:不織布
20:樹脂層
30:粘着層
40:基材層
100:結束テープ
200:電線
300:支持台
400:ロードセル
図1
図2
図3
図4