IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Solution Creators株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図1
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図2
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図3
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図4
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図5
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図6
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図7
  • 特許-二酸化炭素貯留システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-12
(45)【発行日】2025-06-20
(54)【発明の名称】二酸化炭素貯留システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/19 20160101AFI20250613BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20250613BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20250613BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20250613BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20250613BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20250613BHJP
【FI】
F03D9/19
B01D53/22
B01D53/04
B01D53/14 220
F25J1/00 D
F25J3/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024218259
(22)【出願日】2024-11-27
【審査請求日】2024-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519006506
【氏名又は名称】Solution Creators株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第221525005(CN,U)
【文献】国際公開第2010/149953(WO,A2)
【文献】米国特許第07992409(US,B1)
【文献】国際公開第2022/248869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/19
B01D 53/22
B01D 53/04
B01D 53/14
F25J 1/00
F25J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のタワーと、
前記タワーに配置された風力タービン装置と、
前記風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、前記タワーに具備された開口部から吸気された気体から二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置と、
前記風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、前記二酸化炭素分離回収装置によって分離回収された二酸化炭素ガスを圧縮する二酸化炭素ガス圧縮機と、
前記風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、前記二酸化炭素ガス圧縮機により圧縮された二酸化炭素を地中の二酸化炭素貯留槽内に圧送する圧入ポンプと、
地中の二酸化炭素貯留槽に、前記気体から分離回収された二酸化炭素を圧入して貯留させる圧入井戸と、を備え、
前記タワーの筒内に、前記二酸化炭素分離回収装置と、前記二酸化炭素ガス圧縮機と、前記圧入ポンプと、を備える二酸化炭素貯留システム。
【請求項2】
筒状のタワーと、
前記タワーに配置された風力タービン装置と、
前記風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、前記タワーに具備された開口部から吸気された気体から二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置と、
前記風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、前記二酸化炭素分離回収装置によって分離回収された二酸化炭素ガスを液化する二酸化炭素ガス液化装置と、
前記風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、前記二酸化炭素ガス液化装置により液化された二酸化炭素を地中の二酸化炭素貯留槽内に圧送する圧入ポンプと、
地中の二酸化炭素貯留槽に、前記気体から分離回収された二酸化炭素を圧入して貯留させる圧入井戸と、を備え、
前記タワーの筒内に、前記二酸化炭素分離回収装置と、前記二酸化炭素ガス液化装置と、前記圧入ポンプと、を備える二酸化炭素貯留システム。
【請求項5】
前記二酸化炭素分離回収装置は、二酸化炭素の分離膜を備え、
前記分離膜に供給する気体は、前記タワーの上部に設けられる開口である給気口から給気され、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力によって駆動される気体圧縮機により昇圧された気体が分離膜に供給されるか、前記分離膜の二酸化炭素ガス吸引流路上に具備され、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力によって駆動される二酸化炭素ガス吸引ポンプによって吸引分離されることで、前記の給気気体から二酸化炭素ガスを分離回収することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素貯留システム。
【請求項6】
前記二酸化炭素分離回収装置は、二酸化炭素の吸着剤を内蔵した圧力容器を備え、
前記圧力容器に供給される気体は、前記タワーの上部に設けられる開口である給気口から給気され、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力によって駆動される気体圧縮機による高圧気体の圧力容器への供給と、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力によって駆動される吸引ポンプを用いた圧力容器からの減圧吸引によって、前記の給気気体から二酸化炭素を分離回収することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素貯留システム。
【請求項7】
前記二酸化炭素分離回収装置は、二酸化炭素の吸収液を利用した分離回収塔を備え、
前記分離回収塔に供給される気体は、前記タワーの上部に設けられる開口である給気口から給気され、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力によって駆動される送気ブロワと吸収液の循環ポンプによって、給気送気と吸収液の循環が行われながら、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力を利用して二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱再生させながら循環送液することで、前記の給気気体から二酸化炭素を分離回収することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素貯留システム。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素分離回収装置において、二酸化炭素が分離され二酸化炭素の濃度が低くなった気体が、前記タワーに具備された排気口から排気されることを特徴とする、二酸化炭素貯留システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素貯留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、風力発電機関室内に設けられる風力発電ユニット、空気圧縮機ユニット、空気膨張機ユニット及び電動発電機と、前記風力発電機関室の外部に設けられる複合空気貯蔵装置を備え、前記電動発電機が第1入力軸と第1出力軸とを備え、前記第1入力軸が第1切替器を介して前記風力発電ユニットと接続し、前記第1出力軸が前記空気圧縮機ユニットと接続し、前記複合空気貯蔵装置が、塔状筒内に設けられた第1空気貯蔵装置と地下に設けられた第2空気貯蔵装置とを備え、前記第1空気貯蔵装置と前記第2空気貯蔵装置との内部空洞が相互に連通し、前記複合空気貯蔵装置の入力端が前記空気圧縮機ユニットと接続し、前記複合空気貯蔵装置の出力端が前記空気膨張機ユニットと接続することを特徴とする、圧縮空気貯蔵システム付き陸上風力発電ユニットが開示されている。
【0003】
また特許文献2では、風力タービンタワーに結合されているナセルを形成するように組立られた2つの分離ユニットを少なくとも備える風力タービンであって、前記2つの分離ユニットはロータ支持組立体を内蔵する第1ユニットと、発電機により電力が供給される電解セルスタックを内蔵する第2ユニットと、を備える風力タービンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3246982号公報
【文献】特表2023-503456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石油や天然ガスの採掘を終えた油田やガス田は、地下の地層に石油や天然ガスを採掘した後の空隙が残されており、この空隙に発電所から分離回収した二酸化炭素ガスを昇圧して地中に圧入することで貯留させるCCSを行ったり、二酸化炭素の圧入によって、空隙に残留する石油や天然ガスを押し出して増進回収させるEORやEGRを行うことがあるが、地中に圧入する二酸化炭素の発生地で二酸化炭素を分離回収する際に、多量の電力や熱を消費することに加え、二酸化炭素の貯留を行う油田やガス田との距離が離れているため、長距離のパイプライン敷設による高圧二酸化炭素ガスの圧送や、二酸化炭素を昇圧液化して車両や船舶で貯留地に輸送する過程で、多大なコスト負担とエネルギー消費を伴うほか、二酸化炭素の分離回収や貯留地までの輸送過程で化石燃料起源のエネルギーを消費する場合には、分離回収や輸送の過程で排出する二酸化炭素の影響によって、二酸化炭素を油田やガス田に貯留させることによる削減効果が減少してしまう課題がある。
【0006】
また、風況の良い陸上や洋上に風力発電設備を整備することで、二酸化炭素の排出を伴わない再生可能エネルギー電力を得ることができるが、陸上や洋上の発電設備整備地と電力消費地が離れていることが多く、発電電力を消費地まで送電する際に長距離の送電網を整備する必要が生じ、送電網整備に多大なコストと時間を要するほか、送電距離が長すぎる場所では、風況に恵まれていても風力発電設備を整備して発電利用できないという課題がある。
【0007】
一方、風況の良い陸上や洋上の風力発電整備適地と、二酸化炭素の貯留に適した陸上および海底の枯渇油田や枯渇ガス田は、いずれも電力や燃料の消費地からは離れているものの、両者が近接していることから、未利用の風力エネルギーを利用して二酸化炭素を効率よく分離回収し、枯渇油田や枯渇ガス田に貯留することが可能となるが、その具体的な方法や装置が開示されていない。例えば海底の石油や天然ガスを洋上プラットフォームで採掘して輸送している海域には、風況が良く風力発電適地でもあるが、送電網の構築が困難で風力エネルギーが利用されず、また、採掘後の海底油田や海底ガス田が二酸化炭素の貯留地としても有効活用されていないという課題がある。
本発明は、送電網の整備が困難な風力エネルギー利用適地と二酸化炭素の貯留適地が近接している場所において、二酸化炭素の排出を伴わない風力エネルギーを利用することで、送電網を整備することなく、また二酸化炭素の長距離輸送を必要とせず、二酸化炭素を効率よく分離回収して地中に貯留することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が適用される二酸化炭素貯留システムは、筒状のタワーと前記タワーに配置された風力タービン装置と、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機により得られる発電電力の供給によって、前記タワーに具備された開口部から吸気された気体から二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置と、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機により得られる発電電力の供給によって駆動され、前記二酸化炭素分離回収装置によって分離回収された二酸化炭素ガスを圧縮する二酸化炭素ガス圧縮機と、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機により得られる発電電力の供給によって駆動され、前記圧縮機により圧縮された二酸化炭素を地中の二酸化炭素貯留槽内に圧送する圧入ポンプと、地中の二酸化炭素貯留槽に、前記気体から分離回収された二酸化炭素を圧入して貯留させる圧入井戸を備え、前記タワーの筒内に、前記二酸化炭素分離回収装置と前記二酸化炭素ガス圧縮機と前記圧入ポンプを備える二酸化炭素貯留システムである。
【0009】
ここで、前記タワーの上部に設けられる開口である給気口から給気される気体は、前記タワー周囲から吸気できる空気のほか、前記タワーに近接設置したメタン発酵槽から得られるバイオガスや、当該バイオガスから二酸化炭素を分離した後に得られるバイオメタンを燃焼させた際に得られる燃焼排ガス、あるいは化石燃料を燃焼させた際に発生する燃焼排ガスでもよい。
【0010】
また、前記の給気から二酸化炭素を分離回収する方法としては、風力タービンの回転駆動力によって得られる軸動力か発電電力を利用して圧縮機を駆動して給気圧縮し、高圧の給気ガスを二酸化炭素分離膜に供給して分離するか、二酸化炭素分離膜下流側の二酸化炭素ガス流路上に、二酸化炭素ガスを分離吸引する吸引ポンプを具備させ、この吸引ポンプを風力タービンの回転駆動力により得られる軸動力か発電電力を利用して分離吸引する分離膜法を利用して分離回収する方法のほか、二酸化炭素の吸着剤を内蔵した圧力容器を前記タワー内に内蔵させ、前記圧力容器に圧縮機を介して昇圧された高圧の給気ガスを供給して供給ガス中の二酸化炭素を吸着剤に吸着させた後に、前記圧力容器を、吸引ポンプを介して減圧することで二酸化炭素を脱離回収する吸着法によって分離回収してもよい。
また、前記の給気から二酸化炭素を分離回収する方法として、前記タワー内に二酸化炭素の吸収液を利用した分離回収塔を備え、前記分離回収塔に供給される気体は、前記タワーの上部に設けられる開口である給気口から給気され、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力によって駆動される送気ブロワと吸収液の循環ポンプによって、給気送気と吸収液の循環が行われながら、前記風力タービン装置に接続された発電機から得られる発電電力を利用して二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱再生させながら循環送液することで、前記の給気気体から二酸化炭素を分離回収する方法を適用しても良い。
【0011】
さらに、前記の方法によって分離回収された二酸化炭素ガスは、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機により得られる発電電力の供給によって駆動され、前記二酸化炭素分離回収装置によって分離回収された二酸化炭素ガスを圧縮する二酸化炭素ガス圧縮機と、前記風力タービン装置から得られる回転軸動力か、前記風力タービン装置に接続された発電機により得られる発電電力の供給によって駆動され、前記圧縮機により圧縮された二酸化炭素を地中の二酸化炭素貯留槽内に圧送する圧入ポンプによって、前記タワー設置場所の直下または近傍に有する地中の二酸化炭素貯留槽に、前記気体から分離回収された二酸化炭素を圧入して貯留させる圧入井戸を通じて地中に圧入することで、二酸化炭素を地中貯留できる構成としている。
【0012】
ここで、二酸化炭素の分離回収装置により二酸化炭素が分離され二酸化炭素の濃度が低くなった気体は、前記タワーの開口であって、前記給気口の位置より下部に位置する開口である排気口から排気されるよう構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本願の発明によると、送電網の整備が困難な風力エネルギー利用適地と、二酸化炭素の貯留適地が近接している場所において、二酸化炭素の排出を伴わない未利用の風力エネルギーを利用することで、送電網を整備することなく、また二酸化炭素の長距離輸送を必要とせず、二酸化炭素を効率よく分離回収して地中に貯留することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る二酸化炭素貯留システムの全体を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る風力タワー内の構成の一例を示す模式図である。
図3】二酸化炭素分離膜を利用した分離部の構成の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態の変形例1に係る風力駆動部とタワー内構成の一例を示す模式図である。
図5】二酸化炭素吸着剤を利用した分離部の構成の一例を示す図である。
図6】二酸化炭素吸収液を利用した分離部の構成の一例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る二酸化炭素貯留システムの全体を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る風力駆動部とタワー内構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔二酸化炭素貯留システムの全体構成〕
図1は、第1の実施形態に係る二酸化炭素貯留システム1の全体を示す図である。二酸化炭素貯留システム1は、周囲の空気を吸気して大気中の二酸化炭素を分離回収し、地中に二酸化炭素を圧入して貯留する。二酸化炭素貯留システム1は、海底の枯渇油田や枯渇ガス田の採掘跡地の海底に据え付けられた洋上プラットフォーム100と、タワー90と、風力駆動部10と、二酸化炭素圧入配管8と、を備える。以下、このタワー90が伸びる方向を上下方向と称し、風力駆動部10が設けられている側を上側と称し、洋上プラットフォーム100側を下側と称する場合がある。
洋上プラットフォーム100は、海底に固定され海面上まで伸びる複数の脚部110と、複数の脚部110の海面上の端部に固定されるデッキ120とを備える。本実施の形態では、洋上プラットフォーム100は、送電線の整備が困難な風況に恵まれた海域において、石油が枯渇して使用しなくなった海底油田上の洋上プラットフォームを利用している。石油を掘削するための掘削リグが撤去された洋上プラットフォーム100のデッキ120上にタワー90が設けられる。
【0016】
二酸化炭素圧入配管8は、例えば、石油を汲み上げるために使用されていた油井に設けられていた石油採掘用の配管を再利用できる。二酸化炭素圧入配管8は、タワー90内の後述する圧入ポンプ51から伸びて、二酸化炭素を通さない岩盤または地層より深くにある石油採掘後の空隙層、すなわち二酸化炭素の地中圧入貯留槽まで伸びる。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る風力駆動部10とタワー90内の構成の一例を示す図である。タワー90は、ガス圧縮部20と、分離部30と、液化部40と、圧入部50と、を備える。タワー90は、内部が空洞となっている円筒形である。タワー90は、筒状の側面91を、備える。側面91には、大気中の空気を取り込む気体取込口911と二酸化炭素の濃度が薄まった空気を排出する気体排出口912とを備える。気体取込口911は気体排出口912より上部に配置されている。気体取込口911は給気口の一例である。
タワー90の寸法は特に限定されないが、例えば上下方向の高さが100~200m、上下方向に垂直な方向の断面の直径が5~10mであることを例示することができる。
【0018】
本実施形態では、風力駆動部10がタワー90の上側に設けられ、続いてガス圧縮部20、分離部30、液化部40、圧入部50の順で上側から上下方向に並んで配置されている。ガス圧縮部20と分離部30とは、配管93を介して接続されており、分離部30と液化部40とは、配管93を介して接続されている。また液化部40と圧入部50の圧入ポンプ51(後述)とは、配管93を介して接続されている。
【0019】
また本実施形態において、風力駆動部10は、風力により回転動力を得る回転部11と、回転部11によって得られる水平軸回転動力を、タワー90内に配置されたガス圧縮機や圧入ポンプを駆動させる垂直軸回転動力に変換する直交ギア変速装置16を内蔵した風力ナセル部12を備え、回転部11は、回転軸となるロータ軸13と、ロータ軸13の一端部に固定されるハブ14と、ハブ14に固定される複数のブレード15とを備える。
複数のブレード15はハブ14に取り付けられ、ブレード15に風を受けることでハブ14を中心に回転する。ブレード15の数は特に限定されないが、図1ではブレード15を3つ備えている。
【0020】
また風力ナセル部12には、ロータ軸13の回転力を検知し、風況が悪くロータ軸13の回転力が不足する際にガスの圧縮やポンプ稼働を停止したり、圧入配管上に具備させた二酸化炭素の逆流防止弁を閉止させ、風況が改善して二酸化炭素の分離回収と地中圧入に十分な回転力が得られる場合にガス圧縮機や圧入ポンプの稼働を再開させるとともに、二酸化炭素の逆流防止弁の開度を制御して風況に応じた二酸化炭素の分離回収と圧入の起動停止や圧入量を制御するための制御装置17を備える。
【0021】
風力駆動部10においては、ブレード15が風力を受けると、ブレード15がハブ14を中心に回転する。ハブ14が回転することでロータ軸13が回転する。ロータ軸13が回転する回転エネルギーを直交ギア変速装置16がタワー90内への垂直方向の回転力に変換する。直交ギア変速装置16により垂直方向に変換され、調速装置により回転速度を制御された回転駆動力は、上下方向に伸びる動力伝達シャフト94を介して二酸化炭素貯留システム1を構成する圧縮機やポンプに回転駆動力が供給される。
【0022】
ここで動力伝達シャフト94は、ロータ軸13の回転動力をガス圧縮部20、分離部30、二酸化炭素圧縮機41、圧入ポンプ51に伝達するが、動力伝達シャフト94の回転数と、ガス圧縮機、二酸化炭素圧縮機および圧入ポンプの各構成機器の最適運転回転数が異なる場合には、それぞれの構成機器を最適回転数で運転できるよう、各構成機器の回転軸上に変速機を設けて接続させることで、動力伝達シャフトの回転駆動力を最適回転数に変速して駆動できるように構成してもよいし、変速させる必要がなければ動力伝達シャフトを直結させても良い。このように、風力駆動部10で得られる回転駆動力が、ガス圧縮部20のガス圧縮機と液化部40の二酸化炭素圧縮機41および圧入部50の圧入ポンプ51の回転駆動力に伝達されることで、風力駆動部で得られる回転軸動力が、発電機を介することなく直接、ガス圧縮や二酸化炭素の圧入のために効率よく利用される構成となっている。
【0023】
また制御装置17は、風力ナセル部12の天面に設置された、不図示の太陽光発電設備に接続され、風力ナセル部12内に設置された蓄電池により、太陽光発電設備が発電した電力の余剰分を蓄電しながら制御装置17に常時電力供給を行うことで、風況が悪く二酸化炭素の分離回収や圧入ができない状態も含めて、二酸化炭素貯留システム1を構成する機器の状態を監視するセンサに電力を供給することで、二酸化炭素貯留システム1の稼働状態の監視と制御を行う。
【0024】
なお、ガス圧縮部20は、気体を圧縮するコンプレッサである。本実施形態では、ガス圧縮部20は、大気中の空気を圧縮し、分離部30に圧縮された空気を供給する。本実施形態では、ガス圧縮部20は、風力駆動部10から直交ギア変速装置16を介して得られる回転駆動力で駆動される。ガス圧縮部20は、気体を圧縮することができればよく、圧縮する手段は、特に限定されるものではない。ガス圧縮部20は、ターボ式の圧縮機や容積型の圧縮機を例示することができる。またターボ式の圧縮機としては、軸流式や遠心式の圧縮機を例示することができる。また容積型の圧縮機としては、往復動式の圧縮機や回転式の圧縮機を例示することができる。
【0025】
また、分離部30は、ガス圧縮部20から供給された圧縮空気に含まれる二酸化炭素を、二酸化炭素の分離膜を介して分離回収する二酸化炭素分離回収装置の一例である。ここで図3を参照して分離部30の説明を行う。図3は、分離部30の構成の一例を示す図である。
分離部30は、単数または複数の分離膜モジュール31と、単数または複数の二酸化炭素ガス吸引ポンプ32と、を備える。分離膜モジュール31の数は特に限定されないが、図示の例では分離部30は、3つの分離膜モジュール31a、31b、31cを備える。分離膜モジュール31a~31cとは直列に配置され、最も上流側に分離膜モジュール31aが配置され、最も下流側に分離膜モジュール31cが配置され、分離膜モジュール31aと分離膜モジュール31cとの間に分離膜モジュール31bが配置されている。分離膜モジュール31は、ハウジング311と、流入口312と、分離膜313と、上流側排出口314と、下流側排出口315、とを備える。
【0026】
ハウジング311は、略円筒状の容器である。流入口312は、気体をハウジング311内に流入させるための開口である。
分離膜313は、分離膜313を挟んだ領域においてガスの圧力差がある場合に、圧力が高い側から圧力が低い側に二酸化炭素ガスを選択的に透過させる。分離膜313は、ハウジング311の内部に固定され、ハウジング311の内部を2つの領域に分ける。以下、分離膜313によって分けられた2つの領域のうち流入口312が配置されている側の領域を上流側領域と称し、上流側領域に対して他方側を下流側領域と称する場合がある。
上流側排出口314と下流側排出口315とは、ハウジング311内の気体をハウジング311の外部に排出ための開口である。上流側排出口314は、ハウジング311の上流側領域に配置され、下流側排出口315は、ハウジング311の下流側領域に配置される。なお、図示の例では上流側排出口314から、圧縮空気から二酸化炭素が分離回収された後の窒素(N)と酸素(O)が排出されることが示されている。
【0027】
二酸化炭素ガス吸引ポンプ32は、上流側の気体を吸込み、下流側に送り込む。図示の例では、分離部30は、2つの二酸化炭素ガス吸引ポンプ32a、32bを備える。二酸化炭素ガス吸引ポンプ32aは、分離膜モジュール31aと分離膜モジュール31bとの間に設けられ、分離膜モジュール31aの下流側領域の減圧し、分離膜モジュール31bの上流側領域を加圧して圧送する。また、二酸化炭素ガス吸引ポンプ32bは、分離膜モジュール31bと分離膜モジュール31cとの間に設けられ、分離膜モジュール31bの下流側領域の減圧し、分離膜モジュール31cの上流側領域を加圧して圧送する。
【0028】
ここで、二酸化炭素ガス吸引ポンプ32の回転駆動軸もガス圧縮部20と同様に、風力駆動部10から直交ギア変速装置16を介して得られる回転駆動力が、動力伝達シャフト94に伝達されることで、風力の回転駆動力を直接的にポンプ駆動力として利用されている。二酸化炭素ガス吸引ポンプ32の減圧吸引方法は特に限定されるものではないが、真空ポンプや減圧ポンプが一例であり、ポンプで吸引されたガスを昇圧して圧送する際には、ガス圧縮機や送風機を駆動させればよい。
【0029】
図2に示すように、液化部40は、二酸化炭素圧縮機41と、ターボ冷凍機42とを備える。二酸化炭素圧縮機41は、分離部30が分離した二酸化炭素ガスが供給され、供給された二酸化炭素ガスを加圧する。二酸化炭素圧縮機41は、気体を圧縮することができればよく、圧縮する手段は、特に限定されるものではない。二酸化炭素圧縮機41は、ガス圧縮部20と同様に、ターボ式の圧縮機や容積型の圧縮機を例示することができる。ターボ冷凍機42は、内部に圧縮機を有しており、圧縮機を用いて冷媒を圧縮して、冷凍サイクルを実行する。このターボ冷凍機42により冷却された二酸化炭素ガスは液化して、液化二酸化炭素となる。この例では、二酸化炭素圧縮機41とターボ冷凍機42の圧縮機は、いずれもタワー内で動力伝達シャフト94を介して得られる回転駆動力で駆動されることで、風力の回転駆動力を直接的に、分離回収した二酸化炭素ガスの圧縮とターボ冷凍機の圧縮機駆動に利用し、二酸化炭素の液化にも利用している。
【0030】
なお、二酸化炭素の地中圧入にあたっては、二酸化炭素ガスを7.38MPa以上となるように圧力をかけることで、二酸化炭素を超臨界流体に変化させることが望ましい。ここで超臨界流体とは、二酸化炭素の状態の1つであり、気体と液体の区別がなくなる状態で、体積が小さく粘性が低くなり、圧入を行い易くなるという特長がある。二酸化炭素は圧力が7.38MPa以上であり、温度が31.1℃以上となる場合に超臨界流体となる。超臨界流体化した二酸化炭素は、動力伝達シャフト94を介した動力により駆動する圧入部50の圧入ポンプ51により加圧されて、二酸化炭素圧入配管8に流し込まれる。二酸化炭素圧入配管8に流し込まれた二酸化炭素は、逆止弁55を通って二酸化炭素貯留層に流される。
【0031】
ここで圧入部50には、圧入ポンプ51の他に、流量調整弁52と、圧力計測器53、54と、を備える。このうち圧入ポンプ51は、二酸化炭素圧入配管8に接続され、液化部40で液化した二酸化炭素にエネルギーを加えて、液化二酸化炭素を地層に圧入する。圧入ポンプ51もタワー90内で動力伝達シャフト94に接続され、風力駆動部10から直交ギア変速装置16を介して得られる回転駆動力で駆動されることで、風力の回転駆動力を直接的に、分離回収した二酸化炭素ガスの地中への圧入に利用する。ここで圧入ポンプ51としては、例えば、容積式のポンプが考えられるが、容積式ポンプではなく、非容積式ポンプであってもよい。非容積式ポンプは、例えば遠心ポンプやプロペラポンプを例示することができる。
【0032】
また流量調整弁52は二酸化炭素圧入配管8の中途部に設けられ、二酸化炭素圧入配管8内に流れる液化二酸化炭素の流量を調整する。流量調整弁52は、電磁弁であることを例示することができる。この場合、流量調整弁52は、電磁弁に流れる電流の大きさを制御して、弁の開度を調整する。なお、流量調整弁52は、逆流を防止するために一方向へのみ液化二酸化炭素が流れる逆流防止弁であってもよい。
また圧力計測器53、54は、二酸化炭素圧入配管8を流れる液化二酸化炭素の圧力を計測する。圧力計測器53は、流量調整弁52の上流側に設けられ、圧力計測器54は、流量調整弁52の下流側に設けられる。
【0033】
本実施形態では、圧入ポンプ51と、流量調整弁52と、圧力計測器53、54とは、風力ナセル部12の天面に設置された、不図示の太陽光発電設備に接続され、風力ナセル部12内に設置された蓄電池から電力が供給される。なお、圧力計測器53、54は、例えば、タワー表面や近傍に併設された太陽光発電パネルや風力ナセル部12の天面に設置された、小型風力発電機に接続された、風力ナセル部12内に設置された蓄電池から電力供給してもよい。
【0034】
〔二酸化炭素を分離回収する動作〕
まず、大気中の空気は、タワー90の気体取込口911からガス圧縮部20に供給される。ガス圧縮部20は、大気中の空気を圧縮し、圧縮した空気を分離部30に供給する。分離部30では、まず分離膜モジュール31aの流入口312から分離膜モジュール31aの上流側領域に空気が流入する。分離膜モジュール31aの上流側領域の空気は、圧縮されているため圧力が高く、二酸化炭素が選択的に分離膜313を通って、分離膜モジュール31aの下流側領域に流れる。分離膜モジュール31aの上流側領域に残された気体は、上流側排出口314からハウジング311の外部に排出され、気体排出口912からタワー90の外部に排出される。
【0035】
分離膜モジュール31aの下流側領域に流れた気体は、二酸化炭素の濃度が高まる。分離膜モジュール31aの下流側領域の気体は、上流側領域の気体より二酸化炭素の濃度が高くなる。分離膜モジュール31aの下流側領域の気体は、二酸化炭素ガス吸引ポンプ32によって分離膜モジュール31bに供給される。分離膜モジュール31bの上流側領域の気体は、一部が分離膜313を通って、分離膜モジュール31bの下流側領域に流れる。分離膜モジュール31bの上流側領域に残された気体は、上流側排出口314からハウジング311の外部に排出され、気体排出口912からタワー90の外部に排出される。
【0036】
同様に、分離膜モジュール31bの下流側領域に流れた気体は、分離膜モジュール31bの下流側領域の気体は上流側領域の気体より二酸化炭素の濃度が高くなる。分離膜モジュール31bの下流側領域の気体は、二酸化炭素ガス吸引ポンプ32によって分離膜モジュール31cに供給される。分離膜モジュール31cの上流側領域の気体は、一部が分離膜313を通って、分離膜モジュール31cの下流側領域に高濃度の二酸化炭素ガスとして分離回収され流れる。分離膜モジュール31cの上流側領域に残された気体は、上流側排出口314からハウジング311の外部に排出され、気体排出口912からタワー90の外部に排出される。
【0037】
分離膜モジュール31cの下流側領域に流れた高濃度の二酸化炭素ガスは、分離部30から液化部40に供給される。液化部40に供給された高濃度の二酸化炭素ガスは、二酸化炭素圧縮機41で加圧され、ターボ冷凍機42によって冷却されることで液化する。液化した二酸化炭素は、圧入部50の圧入ポンプ51により加圧されて二酸化炭素圧入配管8に流し込まれる。
液化二酸化炭素は、流量調整弁52によって流量が調整され、海底の地層に搬送される。流量調整弁52は、圧力計測器53、54の計測結果に応じて流量を調整する。例えば、流量調整弁52の上流側の圧力が、下流側の圧力より小さくなっている場合は、弁を閉止して液化二酸化炭素が逆流することを抑制する。また、例えば、上流側の圧力が下流側の圧力より大きい場合に、上流側の圧力と下流側の圧力との差の値に応じて、開度を変化させてもよい。
【0038】
本実施の形態では、石油やガスを掘削するための洋上プラットフォーム100を利用して二酸化炭素貯留システム1を設置しているため、分離回収した二酸化炭素の輸送配管を削減または省略し、貯留地で二酸化炭素を回収固定化することが可能となる。また、洋上プラットフォーム100を建設する工期と設備・工事コストを大幅に削減することが可能となる。また、既存の枯渇油田やガス田を二酸化炭素の貯留・固定化に有効活用することで、二酸化炭素の貯留槽の探査や掘削開発を省略化し、貯留槽の探査開発の工期とコストを大幅に削減することが可能となる。
【0039】
さらに本実施の形態では、送電線の敷設が困難な電力消費地から離れた風況の良い洋上で、二酸化炭素の排出を伴わない、風力エネルギーを利用した回転駆動軸動力を、二酸化炭素の分離回収と、回収した二酸化炭素の圧縮、液化および液化した二酸化炭素の地中への圧入貯留までの工程でそれぞれ発電を介さずに直接利用するため、二酸化炭素の分離回収と固定化を再生可能エネルギー利用によって効率よく実現することが可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態では、気体取込口911がタワー90の上部に配置され、上部から空気を取り込むため、海面近くの塩分を含んだ空気を取り込むことを抑制している。
【0041】
〔変形例1〕
図4は、第1の実施形態の変形例1に係る風力駆動部10とタワー90内の構成の一例を示す模式図である。第1の実施形態の変形例1に係る二酸化炭素貯留システム2は、風力発電機18と、ガス圧縮部20と、分離部130と、液化部40と、圧入部50と、タワー90とを備える。これらの風力発電機18と、ガス圧縮部20と、分離部130と、液化部40と、圧入部50とは、タワー90に収容される。本実施形態では、風力発電機18がタワー90の上側に設けられ、続いてガス圧縮部20、分離部130、液化部40、圧入部50の順で上側から上下方向に並んで配置している。
【0042】
本システムは第1の実施形態と比べて、風力を利用した気体の圧縮や二酸化炭素の圧縮、液化および液化二酸化炭素の地中圧入において駆動させる圧縮機やポンプ等の構成機器を、風力ナセル部12の内部に具備された風力発電機18の発電電力供給によって行われている点と、二酸化炭素を分離する分離部130の構成が異なっている。
すなわちガス圧縮部20、分離部30および液化部40を構成する機器が、風力発電機18の発電電力がタワー内で不図示の電力供給配線によって接続され、発電電力の供給によって駆動する、タワー内消費型の電動機群で構成されているとともに、第1の実施形態では分離膜モジュール31を用いて二酸化炭素を分離していた点が、第1の実施形態の変形例1の分離部130では、二酸化炭素の吸着剤が充填された複数の圧力容器で構成される物理吸着式の分離方法によって二酸化炭素を分離する点が異なっている。なお二酸化炭素の吸着材は、例えば、ゼオライトや活性炭などが一例である。なお、第1の実施形態と同様の機能については同様の符号を用い、ここではその説明を省略する。
【0043】
図5は、分離部130の一例を示す図である。分離部130は、吸着タンク131と、加熱器132と、減圧ポンプ133とを備える。吸着タンク131は、圧力容器であり、二酸化炭素を吸着する吸着材を内部に貯蔵する。また、吸着タンク131は、開閉可能な排出口131aを備える。排出口131aは、吸着タンク131内の気体を入れ替えるために用いられる。
加熱器132は、吸着タンク131の内部を加熱する。加熱器132は、電気ヒータが一例である。減圧ポンプ133は吸着タンク131内の圧力を減圧する。減圧ポンプ133は電力により駆動される。
〔二酸化炭素を分離回収する動作〕
物理吸着法では図5に示す通り、圧力差または温度差を利用して他の気体と二酸化炭素を分離する。具体的には、まず吸着タンク131の排出口131aを閉じて、ガス圧縮部20を駆動させる。ガス圧縮部20により圧縮した空気が吸着タンク131に供給されることで、吸着タンク131内の圧力が高まる。吸着タンク131内の圧力が高くなると吸着材が二酸化炭素を吸着する。次に、排出口131aを開放し二酸化炭素の濃度が低くなった気体を排出する。そして、排出口を閉じた後に減圧ポンプ133を駆動させて吸着タンク131内の圧力を減圧する。吸着タンク131内の圧力が低くなると、吸着材から二酸化炭素が脱離されることで、脱離した二酸化炭素を回収できる。
【0044】
〔変形例2〕
図6は、二酸化炭素吸収液を利用した分離部230の構成の一例を示す図である。
第1の実施形態の変形例2では、第1の実施の形態の変形例1と比べて分離部130を、二酸化炭素吸収液を利用した分離部230とした点が異なっている。分離部230は、吸収塔231と、微細気泡供給管232と、再生塔233と、加熱部234と、吸収液配管235、236とを備えている。吸収塔231には、二酸化炭素を吸収する吸収液が貯められ、ガス圧縮部20が圧縮した空気を注入する微細気泡供給管232が、挿入されている。吸収液は、例えばアミン水溶液が一例である。
微細気泡供給管232は、吸収液中に微細気泡を噴出させる。ここで微細気泡とは、二酸化炭素が吸収液に吸収されやすいように気体を微細な気泡にしたものであり、例えば気泡のサイズが0.001mm未満であるナノバブルや、0.001mm以上0.1mm未満のマイクロバブルなどである。
【0045】
再生塔233は、二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を脱離させて、二酸化炭素を回収する。加熱部234は、再生塔233内の吸収液を加熱する。吸収液配管235は、吸収塔231と再生塔233とを接続する。吸収液配管235は、吸収塔231から再生塔233に吸収液を送液する送液ポンプ235aを備える。吸収液配管236は、吸収塔231と再生塔233とを接続する。吸収液配管236は、再生塔233から吸収塔231に吸収液を送液する送液ポンプ236aを備える。ここで、二酸化炭素吸収液を加熱する電気ヒータや吸収液を送液する送液ポンプは、風力発電機18から得られる発電電力によって供給される。
【0046】
〔二酸化炭素を分離回収する動作〕
まず大気中の空気は、タワー90の気体取込口911からガス圧縮部20に供給される。ガス圧縮部20は大気中の空気を圧縮し、圧縮した空気を分離部230に供給する。分離部230では供給された空気を、微細気泡供給管232を介して、吸収塔231内に供給する。吸収塔231内に供給された空気のうちの二酸化炭素の一部が吸収液に吸収される。以下、二酸化炭素を吸収した吸収液をリッチ吸収液と称する場合がある。吸収塔231は、二酸化炭素が吸収されて二酸化炭素濃度が低くなった空気を、気体排出口912を介して大気中に放出する。
【0047】
吸収塔231のリッチ吸収液は、送液ポンプ235aによって吸収液配管235を通って再生塔233に供給される。再生塔233では、加熱部234が熱を発生させ、リッチ吸収液を加熱する。加熱されたリッチ吸収液は、吸収液と二酸化炭素とに分離される。ここで、分離された二酸化炭素は、液化部40に供給される。また、再生済の吸収液は、送液ポンプ236aによって吸収液配管236を通って再度吸収塔231へ供給され循環する。分離部230が二酸化炭素分離装置の一例である。なお、加熱されて再生済の吸収液となっていても、吸収液の温度が高い場合は、再度二酸化炭素を吸収する際の吸収性能が低下してしまう。そこで、再生済の吸収液を冷却する冷却器を、吸収液配管236に設け、冷却器に供給する冷熱も、風力発電機18から得られる発電電力によって稼働させる冷凍機から得る構成としてもよい。また、化学吸収液を利用した二酸化炭素の分離回収では、前記の圧縮空気を気泡化して吸収液容器内に放出する方法の他に、風力タワー内を流下する空気と吸収液が接触する開放系の吸収塔を設置し、風力タワー内で二酸化炭素を吸収液に吸収させたうえで、回収部の下部に溜まった二酸化炭素吸収液を加熱再生して二酸化炭素ガスを分離回収したうえで、再生した吸収液をタワー上部にポンプアップしても良い。
【0048】
このようにして分離された二酸化炭素は、第1の実施形態と同様に、液化部40において、二酸化炭素圧縮機41で加圧され、ターボ冷凍機42によって冷却されることで液化する。液化した二酸化炭素は、圧入部50の圧入ポンプ51により加圧されて二酸化炭素圧入配管8に流し込まれる。ここで、二酸化炭素圧縮機41とターボ冷凍機42および圧入ポンプ51の稼働についても、それぞれ風力発電機18から得られる発電電力をタワー内で配線接続して供給して稼働させれば良く、風力発電の変動によりシステムの稼働状態が変動して二酸化炭素の安定的な圧入やシステムの構成機器に悪影響を及ぼす場合には、風力タワーに大容量の蓄電池設備を併設させて風力発電機に接続し、運用時の変動緩和や長期安定稼働のために、大容量蓄電池設備から安定的に電力を供給してシステムを稼働させてもよい。
【0049】
〔第2の実施形態〕
図7は、第2の実施形態に係る二酸化炭素貯留システム3の全体構成を示す図である。第2の実施形態に係る二酸化炭素貯留システム3は、第1の実施形態と比べて、陸域に存在する二酸化炭素貯留槽の地上部に、陸上風力利用設備が設置され、陸上風力利用設備に近接させて、バイオガス発酵槽210と、浄化フィルタ211と、メタンガスタンク220と、をさらに備える点で異なっている。なお、第1の実施形態と同様の機能については同様の符号を用い、ここではその説明を省略する。
バイオガス発酵槽210は、食品残渣や農業非可食部分あるいは家畜排泄物などのメタン発酵用のバイオマス資源101から、嫌気性メタン発酵菌によりメタンと二酸化炭素を主成分とするバイオガスを生成する。浄化フィルタ211は、バイオガス発酵槽210から発生したバイオガスに含まれる硫化水素や過度な湿度分を除去する。
メタンガスタンク220は、バイオガスから分離されたメタンガスを貯蔵するタンクである。メタンガスタンク220に貯蔵されるメタンガスは、例えば、ガスボンベ等に充填し利用してしてもよい。また、メタンガスは、例えば、二酸化炭素貯留システム4のいずれかの装置を駆動するめの燃料として利用してもよい。
【0050】
図8は、第2の実施形態に係る風力駆動部10とタワー90内の構成の一例を示す模式図である。
第2の実施形態に係る二酸化炭素貯留システム3は、風力駆動部10とガス圧縮部20と、分離部30と液化部40と、圧入部50と、を備える。これらの風力駆動部10と、ガス圧縮部20と、分離部30と、液化部40と、圧入部50とは、タワー90に収容される。風力駆動部10がタワー90の上側に設けられ、続いてガス圧縮部20、分離部30、液化部40、圧入部50の順で上側から上下方向に並んで配置している。
【0051】
〔二酸化炭素を分離回収する動作〕
バイオガス発酵槽210から生じたバイオガスは、浄化フィルタ211によって、不純物や過度な湿度分が除去される。浄化フィルタ211を通過したバイオガスは、二酸化炭素ガスとメタンガスとが含まれ、タワー90の気体取込口911からガス圧縮部20に供給される。ガス圧縮部20は、のバイオガスを圧縮し、圧縮したバイオガスを分離部30に供給する。分離部30において、バイオガスは、二酸化炭素ガスとメタンガスとに分離される。分離されたメタンガスは、気体排出口912からメタンガスタンク220に搬送されて、貯蔵される。
【0052】
分離部30において分離された二酸化炭素ガスは、液化部40に供給される。液化部40において、二酸化炭素ガスは二酸化炭素圧縮機41で加圧され、ターボ冷凍機42によって冷却されることで液化する。液化した二酸化炭素は、圧入部50の圧入ポンプ51により加圧されて二酸化炭素圧入配管8に流し込まれる。また、分離されたメタンガスも、ターボ冷凍機42によって冷却して液化することで、貯蔵や輸送しやすい液化メタンにすることも可能である。
また、第2の実施形態ではバイオガスから二酸化炭素を分離回収した。しかしながら、二酸化炭素を分離回収する気体はバイオガスに限られず、例えば、化石燃料やバイオガスを燃焼させた際に発生する排ガスから二酸化炭素を分離回収してもよい。第2の実施形態では、分離部30を用いて二酸化炭素を分離したが、分離部130、分離部230を用いて二酸化炭素分離してもよい。
【0053】
〔その他〕
図示の例ではロータ軸13は、略水平方向に伸びている。しかしながらロータ軸13の向きは特に限定されるものではなく、略垂直方向に伸びてもよい。すなわち、回転部11を所謂垂直軸式風車としていてもよい。垂直軸式風車としては、例えば、ダリウス式風車やサボニウス式風車を例示することができる。例えば、第3の実施形態では、垂直軸式風車を用いると、ロータ軸13が垂直方向に沿って配置されることとなり、ロータ軸13を動力伝達シャフト94として二酸化炭素ガス吸引ポンプ32等を駆動することができる。
【0054】
また本実施形態では、圧入ポンプ51を用いて、地中貯留槽内に液化二酸化炭素を貯留させたが、液化二酸化炭素を商工業用の原料ガスとして用いてもよい。この場合、圧入ポンプ51を用いて、炭酸ボンベに高圧の二酸化炭素ガスを充填したり、タンクローリ等に液化二酸化炭素を充填させたりしてもよい。また、回収した二酸化炭素を固形化させドライアイスとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3…二酸化炭素貯留システム、8…二酸化炭素圧入配管、10…風力駆動部、11…回転部、12…風力ナセル部、13…ロータ軸、14…ハブ、15…ブレード、16…直交ギア変速装置、17…制御装置、18…風力発電機、20…ガス圧縮部、30、130、230…分離部、31…分離膜モジュール、32…ポンプ、40…液化部、41…二酸化炭素圧縮機、42…ターボ冷凍機、50…圧入部、51…圧入ポンプ、53、54…圧力計測器、55…逆止弁、60…バイオガス発酵槽、90…タワー、91…側面、911…気体取込口、912…気体排出口、94…動力伝達シャフト、100…洋上プラットフォーム、311…ハウジング、312…流入口、313…分離膜、314…上流側排出口、315…下流側排出口、911…気体取込口、912…気体排出口
【要約】      (修正有)
【課題】風力タービン装置を利用した二酸化炭素貯留システムを提供する。
【解決手段】筒状のタワーと、タワーに配置された風力タービン装置と、風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、タワーに具備された開口部から吸気された気体から二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置と、風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、二酸化炭素分離回収装置によって分離回収された二酸化炭素ガスを圧縮する二酸化炭素ガス圧縮機と、風力タービン装置から得られる回転軸動力により駆動され、圧縮機により圧縮された二酸化炭素を地中の二酸化炭素貯留槽内に圧送する圧入ポンプと、地中の二酸化炭素貯留槽に、気体から分離回収された二酸化炭素を圧入して貯留させる圧入井戸と、を備え、タワーの筒内に、二酸化炭素分離回収装置と、二酸化炭素ガス圧縮機と、圧入ポンプと、を備える二酸化炭素貯留システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8