IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガス改質装置 図1
  • 特許-ガス改質装置 図2
  • 特許-ガス改質装置 図3
  • 特許-ガス改質装置 図4
  • 特許-ガス改質装置 図5
  • 特許-ガス改質装置 図6
  • 特許-ガス改質装置 図7
  • 特許-ガス改質装置 図8
  • 特許-ガス改質装置 図9
  • 特許-ガス改質装置 図10
  • 特許-ガス改質装置 図11
  • 特許-ガス改質装置 図12
  • 特許-ガス改質装置 図13
  • 特許-ガス改質装置 図14
  • 特許-ガス改質装置 図15
  • 特許-ガス改質装置 図16
  • 特許-ガス改質装置 図17
  • 特許-ガス改質装置 図18
  • 特許-ガス改質装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-12
(45)【発行日】2025-06-20
(54)【発明の名称】ガス改質装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20250613BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20250613BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024541779
(86)(22)【出願日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2023026273
【審査請求日】2024-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 皓貴
(72)【発明者】
【氏名】稲永 康隆
(72)【発明者】
【氏名】生沼 学
(72)【発明者】
【氏名】塩田 有波
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352599(JP,A)
【文献】国際公開第2022/234039(WO,A1)
【文献】特開2011-005418(JP,A)
【文献】特開2016-193428(JP,A)
【文献】国際公開第2023/078735(WO,A1)
【文献】特開2009-189958(JP,A)
【文献】特開2014-156622(JP,A)
【文献】特開2022-127786(JP,A)
【文献】特開2003-038932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-96
B01J 19/08
C01B 3/00-58
F01N 3/00
F02M 27/04
H05H 1/00-54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生じさせて被改質ガスを改質するガス改質装置であって、
前記被改質ガスが流入する第一反応室と、前記第一反応室を通流した前記被改質ガスが流入する、前記第一反応室とは熱的に仕切られた第二反応室と、を備える反応容器と、
前記第一反応室内に設けられ第一電極と、
前記第一反応室と前記第二反応室とを仕切るように設置されるか、または前記第一反応室と前記第二反応室とを仕切る仕切り部に設置されて、前記第一電極との間でプラズマを生じさせる第二電極と、
前記第二反応室内に設けられ、前記第二電極との電位差によって前記第一反応室から前記第二反応室内に前記プラズマを引き出す引出電極と、
前記プラズマによる前記被改質ガスの改質反応を促進させる反応促進剤と、を備え、
前記反応促進剤は、前記引出電極に配置されている、ガス改質装置。
【請求項2】
前記第二電極が前記第一反応室と前記第二反応室とを仕切るように設置されている場合には前記第二電極に、前記第二電極が前記仕切り部に設置されている場合には前記仕切り部に、前記第一反応室と前記第二反応室とを連絡する開口部が形成されている、請求項1に記載のガス改質装置。
【請求項3】
前記引出電極は、前記開口部と対向する位置に設けられている、請求項2に記載のガス改質装置。
【請求項4】
前記反応促進剤は、前記引出電極のうち、前記開口部と対向する部分に配置されている、請求項2に記載のガス改質装置。
【請求項5】
前記反応容器は軸対称形状である、請求項2に記載のガス改質装置。
【請求項6】
前記開口部は、前記反応容器の対称軸上に形成されている、請求項5に記載のガス改質装置。
【請求項7】
前記第一反応室に前記被改質ガスを流入させるガス流入口が、前記反応容器の側面のうち、前記第一電極が配置されている側の端部に設けられ、
前記反応容器は、前記ガス流入口から流入した前記被改質ガスが前記第一反応室の内壁面に沿って流れる構造を備える、請求項5に記載のガス改質装置。
【請求項8】
前記ガス流入口は、前記反応容器の対称軸方向から見たときに、前記反応容器の対称軸に関して回転対称となるように複数設けられている、請求項7に記載のガス改質装置。
【請求項9】
前記反応容器は軸対称形状であり、
前記反応容器の側面には、前記第一反応室に前記被改質ガスを流入させるガス流入口が、前記第二電極又は前記仕切り部と接するように設けられ、
前記反応容器は、前記ガス流入口から流入した前記被改質ガスが前記第一反応室の内壁面に沿って流れる構造を備える、請求項2に記載のガス改質装置。
【請求項10】
前記ガス流入口は、前記反応容器の対称軸方向から見たときに、前記反応容器の対称軸に関して回転対称となるように複数設けられている、請求項9に記載のガス改質装置。
【請求項11】
前記第一反応室は、前記第二反応室の重力方向上方に設けられ、
前記引出電極の先端面が、重力方向上方から見て窪んでいる、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【請求項12】
前記第二反応室は、前記第一反応室の重力方向上方に設けられ、
前記引出電極は、前記第二反応室に流入した前記被改質ガスを通過させる貫通孔を有している、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【請求項13】
前記第二反応室は、前記第一反応室の重力方向上方に設けられ、
前記引出電極は、前記第二反応室に流入した前記被改質ガスを通過させる貫通孔を有し、
前記引出電極は、前記貫通孔が前記開口部に対向するように配置されている、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【請求項14】
前記第二電極と前記引出電極との間に、前記被改質ガスが前記第二電極と前記引出電極との間を通過することを抑制する絶縁部材が配置されている、請求項12に記載のガス改質装置。
【請求項15】
前記反応容器は金属を含んで構成され、
前記第一電極と前記第二電極、前記第一電極と前記引出電極及び前記第二電極と前記引出電極は、それぞれ電気的に絶縁されている、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【請求項16】
前記第一電極の先端部の形状が、リング形状である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【請求項17】
前記反応促進剤は、触媒である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【請求項18】
前記被改質ガスは二酸化炭素を含み、前記反応促進剤はカーボンを含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被改質ガスをプラズマと反応させて、被改質ガスを付加価値のある物質に改質するプラズマリアクタが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2022/234039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマを生じさせて被改質ガスを改質するガス改質装置においては、ガス改質装置に投入したエネルギー量に対して、より多くの改質後のガスを得ることが求められていた。
【0005】
本開示にかかる発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、効率的に被改質ガスを改質できるガス改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるガス改質装置は、
プラズマを生じさせて被改質ガスを改質するガス改質装置であって、
前記被改質ガスが流入する第一反応室と、前記第一反応室を通流した前記被改質ガスが流入する、前記第一反応室とは熱的に仕切られた第二反応室と、を備える反応容器と、
前記第一反応室内に設けられ第一電極と、
前記第一反応室と前記第二反応室とを仕切るように設置されるか、または前記第一反応室と前記第二反応室とを仕切る仕切り部に設置されて、前記第一電極との間でプラズマを生じさせる第二電極と、
前記第二反応室内に設けられ、前記第二電極との電位差によって前記第一反応室から前記第二反応室内に前記プラズマを引き出す引出電極と、
前記プラズマによる前記被改質ガスの改質反応を促進させる反応促進剤と、を備え、
前記反応促進剤は、前記引出電極に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかるガス改質装置によれば、効率的に被改質ガスを改質できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図2図1に示すA-A部の断面図である。
図3図1に示すB-B部の断面図である。
図4】実施の形態1にかかるガス改質装置における電源回路の別構成例を示す模式図である。
図5】実施の形態1にかかるガス改質装置におけるガスの流れの一例を示す模式図である。
図6】実施の形態1の変形例1にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図7】実施の形態1の変形例2にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図8図7に示すC-C部の断面図である。
図9】実施の形態1の変形例3にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図10図9に示すD-D部の断面図である。
図11】実施の形態1の変形例4にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図12】実施の形態1の変形例5にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図13図12に示すE-E部の断面図である。
図14】実施の形態1の変形例5にかかるガス改質装置の別構成を示す断面図である。
図15】実施の形態1の変形例6にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図16】実施の形態2にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図17図16に示すF-F部の断面図である。
図18】実施の形態2の変形例にかかるガス改質装置を示す断面図である。
図19図18に示すG-G部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態にかかるガス改質装置を、図面に基づいて説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比及び構成要素の個数は、必ずしも実際の寸法比及び構成要素の個数と一致していない。
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1にかかるガス改質装置100の構成を、図1から図4を参照して説明する。図1から図4は、実施の形態1にかかるガス改質装置100の構成を模式的に示す図面である。図2は、図1に示すA-A部の断面図である。図3は、図1に示すB-B部の断面図である。図4は、図1に示すガス改質装置100における電源回路の別構成例を模式的に示す図面である。
【0011】
図1に示すように、ガス改質装置100は、被改質ガスG1が流入する第一反応室41及び第一反応室41を通流した被改質ガスG1が流入する第二反応室42を備える反応容器2と、第一反応室41内に設けられ第一反応室41内にプラズマPを生じさせる第一電極31及び第二電極32と、第二反応室42内に設けられ第一反応室41から第二反応室42内にプラズマPを引き出す引出電極である第三電極33と、引出電極である第三電極33に配置された反応促進剤7とを備える。
【0012】
ここで、本明細書においては、第一反応室41と第二反応室42とが対向する方向をZ軸とし、Z軸に直交する平面をXY平面として規定する。以下の説明では、このように規定したXYZ座標系を適宜参照しながら説明される。なお、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「Z方向」と記載されている場合には、「+Z方向」と「-Z方向」の双方が含まれる。本実施の形態においては、第一反応室41から第二反応室42に向かう方向が-Z方向である。
【0013】
反応容器2の形状は、図1に示すZ1軸を対称軸とする軸対称形状である。本実施の形態においては、Z1軸はZ軸に対して平行である。反応容器2の形状は、具体的には、例えば、両端に端面を有する円筒形状である。ただし、反応容器2の形状は、中空の容器であれば特に限定されず、軸対称形状及び対称構造であることも必須ではない。
【0014】
反応容器2を構成する材料は、特に限定されないが、絶縁性及び耐久性が高い材料であるのが好適である。具体的には、反応容器2は、ガラス又はセラミックスで構成されるのが好ましい。反応容器2を構成するガラスの具体例としては、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスが挙げられる。また、反応容器2を構成するセラミックスの具体例としては、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)が挙げられる。
【0015】
図1に示すように、反応容器2には、被改質ガスG1を第一反応室41に流入させるためのガス流入口51が設けられている。ガス流入口51を設ける位置は、被改質ガスG1を第一反応室41に流入させることができれば特に限定されない。また、ガス流入口51は、複数箇所に設けられていても構わない。本実施の形態においては、ガス流入口51は、反応容器2の+Z方向側の端面に1箇所設けられている。
【0016】
図1に示すように、反応容器2には、改質後のガスG2を第二反応室42から流出させるためのガス流出口53が設けられている。ガス流出口53を設ける位置は、改質後のガスG2を第二反応室42から流出させることができれば特に限定されない。また、ガス流出口53は、複数箇所に設けられていても構わない。本実施の形態においては、ガス流出口53は反応容器2の-Z方向側の端面に1箇所設けられている。
【0017】
図1に示すように、反応容器2の、第二反応室42から第一反応室41に向かう方向(+Z方向)側の端面には、第一電極31が配置されている。また、第一電極31は、第一反応室41内に露出しているため、第一反応室41内に設けられているともいえる。
【0018】
図1及び図2に示すように、第一電極31の形状は、円柱状である。ただし、第一電極31の形状は、これに限定されない。
【0019】
第一電極31は、導電性の材料で構成される。第一電極31を構成する材料の具体例としては、ステンレス鋼、チタン、モリブデン、タングステンが挙げられる。ただし、第一電極31を構成する材料は、耐食性、耐熱性が高い導電性の材料であれば、これらに限定されずに用いることができる。
【0020】
図1に示すように、反応容器2には、第一電極31から見て、第二反応室42に向かう方向(-Z方向)に離間した位置に、第二電極32が配置されている。なお、第二電極32は、第一反応室41内に設けられているともいえる。第二電極32は、第一反応室41内で第一電極31と対向している。第一電極31及び第二電極32は、第一反応室41内にプラズマPを生じさせる電極である。
【0021】
図1及び図2に示すように、第二電極32の形状は、円板状である。第二電極32には、開口部52が設けられている。開口部52は、第一反応室41と第二反応室42とを連絡する開口である。また、第二電極32は、第一反応室41と第二反応室42とを熱的に仕切る部材でもある。ここで、本明細書において「熱的に仕切る」とは、ある部材又は構造により、熱伝導、対流又は輻射による熱伝達を抑制することをいい、断熱することも含む。
【0022】
第二電極32は、第一電極31と同様、導電性の材料で構成される。第二電極32を構成する材料の具体例は、第一電極31と同様であるため、記載を省略する。なお、第二電極32は、第一電極31と異なる材料で構成されていても構わない。例えば、第一電極31がタングステンを含んで構成され、第二電極32がモリブデンを含んで構成されていても構わない。
【0023】
図1に示すように、反応容器2の、第一反応室41から第二反応室42に向かう方向(-Z方向)側の端面には、第三電極33が設けられている。なお、第三電極33は、第二反応室42内に設けられているともいえる。第三電極33は、開口部52を介して、第一電極31と対向している。また、第三電極33は、第二反応室42内で第二電極32と対向している。
【0024】
図1及び図3に示すように、第三電極33は、先端部33aと軸部33bを有する形状である。本実施の形態において、先端部33aの形状は、円板状である。また、軸部33bの形状は、円柱状である。ただし、本実施の形態における第三電極33の形状はあくまで一例である。例えば、先端部33aは、先端に向かうにしたがって径が小さくなるテーパー形状であっても構わない。また、第三電極33が、先端部33aを有する形状であることは必須ではなく、第三電極33の形状は、軸部33bのみの円柱状であっても構わない。
【0025】
第三電極33は、第一電極31と同様、導電性の材料で構成される。第三電極33を構成する材料の具体例は、第一電極31と同様であるため、記載を省略する。なお、第三電極33は、第一電極31又は第二電極32と異なる材料で構成されていても構わない。
【0026】
図1に示すように、第三電極33の先端部33aのうち、開口部52と対向する面には、反応促進剤7が配置されている。反応促進剤7は、プラズマPによる被改質ガスG1の改質反応を促進させる物質である。反応促進剤7は、先端部33aのうち、開口部52と対向する面の全面に亘って設けられていても構わないし、その面の一部に設けられていても構わない。なお、プラズマPによる被改質ガスG1の改質反応の詳細については、後述する。反応促進剤7は、被改質ガスG1の種類に応じて適切な物質が選択される。反応促進剤7は、例えば、触媒又は還元剤、酸化剤である。
【0027】
第三電極33への反応促進剤7の配置は、第三電極33の表面に反応促進剤7を載せる態様又は付着させる態様が代表的である。ただし、反応促進剤7を第三電極33に配置する態様は、これらに限定されない。例えば、第三電極33の表面を、反応促進剤7を含む物質に改質させる態様により、反応促進剤7を第三電極33に配置しても構わない。具体的には、例えば、第三電極33がタングステンで、反応促進剤7が、還元剤としてのカーボンである場合に、第三電極33を炭化処理して、第三電極33の表面をタングステンカーバイドに改質させても構わない。なお、炭化処理は、例えば、カーボンの粉末を溶媒に分散させた溶液を準備し、その溶液を第三電極33の表面に塗布した後、第三電極33を電気炉等で熱処理することにより行われる。
【0028】
図1に示すように、第一電極31と第二電極32とは、第一電源61を介して接続されている。第一電源61は、第一電極31と第二電極32との間に電圧を印加する直流電源である。第一電極31と第二電極32との間に所定の電圧が印加されることで、第一反応室41の内部にプラズマPを発生させることができる。
【0029】
第一電源61が出力する電圧値は、プラズマPを安定して発生させられるように、諸条件に応じて適宜設計される。第一電源61が出力する電圧値を設計するために考慮される条件としては、例えば、第一電極31と第二電極32との間の距離、被改質ガスG1の組成、被改質ガスG1の流量、第一反応室41内部の圧力が挙げられる。
【0030】
なお、第一電源61は、直流電源に限定されない。第一反応室41の内部にプラズマPを発生させることができれば、第一電源61は、交流電源又はパルス電源であっても構わない。第一電源61が交流電源である場合の波高値及び周波数は、第一電源61が直流電源である場合と同様、諸条件に応じて適宜設計される。また、第一電源61がパルス電源である場合の波高値及びデューティ比は、第一電源61が直流電源である場合と同様、諸条件に応じて適宜設計される。
【0031】
図1に示すように、第二電極32と第三電極33とは、第二電源62を介して接続されている。また、第三電極33は接地されている。第二電源62は、第二電極32と第三電極33との間に電圧を印加する直流電源である。第二電極32と第三電極33との間に所定の電圧が印加されることで、第一反応室41の内部に発生したプラズマPを、第二反応室42の内部に引き出すことができる。そのため、第三電極33は、第一反応室41の内部に発生したプラズマPを、第二反応室42の内部に引き出す引出電極であるともいえる。
【0032】
第二電源62が出力する電圧値は、第一反応室41の内部に発生したプラズマPを、第二反応室42の内部に引き出すことができるよう、諸条件に応じて適宜設計される。第二電源62が出力する電圧値を設計するために考慮される条件としては、例えば、第一電極31と第三電極33との間の距離、第二電極32と第三電極33との間の距離、被改質ガスG1の組成、被改質ガスG1の流量、第二反応室42内部の圧力が挙げられる。第二電源62についても、直流電源に代えて、交流電源又はパルス電源を採用することができる。
【0033】
また、ガス改質装置100が第二電源62を備えることは必須ではない。ガス改質装置100は、図4に示すように、第二電源62に代えて受動素子63を備えて構成されていても構わない。受動素子63は、例えば、抵抗又はキャパシタである。
【0034】
図4に示す構成の場合には、第一電源61と受動素子63の作用によって、第二電極32と第三電極33との間に、接地電位との電位差が生じる。そして、この電位差によって、プラズマPは、第二反応室42に引き出される。
【0035】
第二電源62に代えて受動素子63を備える構成とすることで、ガス改質装置100の電源回路の構成を簡素化できる。ガス改質装置100の電源回路の構成を簡素化することで、ガス改質装置100の保守が容易になるという効果を奏する。
【0036】
なお、第二電極32と第三電極33とを接続するリード線が、プラズマPを第二反応室42の内部に引き出す電位差を生じさせる場合、ガス改質装置100は、受動素子63を備えていなくても構わない。受動素子63を省略した構成とすることで、ガス改質装置100の電源回路の構成をより簡素化することができる。
【0037】
次に、実施の形態1にかかるガス改質装置100の動作を、図1及び図5を参照して説明する。図5は、実施の形態1にかかるガス改質装置100における被改質ガスG1の流れの一例を示す模式図である。
【0038】
まず、ガス改質装置100における被改質ガスG1の流れを説明する。図5に示すように、ガス流入口51から、被改質ガスG1を第一反応室41内に流入させる。第一反応室41の内部を通流した被改質ガスG1は、開口部52から第二反応室42に流入し、第二反応室42の内部を通流する。そして、第一反応室41の内部及び第二反応室42の内部で改質されたガスG2が、ガス流出口53から流出される。
【0039】
次に、ガス改質装置100におけるプラズマPの作用を説明する。第一電極31と第二電極32との間に高電圧が印加されることで、第一反応室41の内部にプラズマPが生じる。このプラズマPにより、第一反応室41の内部を通流する被改質ガスG1が改質される。なお、プラズマPによる被改質ガスG1の改質のメカニズムについては後述する。
【0040】
第二電極32と第三電極33との間に高電圧が印加されることで、第一反応室41の内部に発生したプラズマPが、第二反応室42の内部に引き出される。このプラズマPにより、第二反応室42の内部を通流する被改質ガスG1が改質される。
【0041】
また、第三電極33に配置された反応促進剤7の作用により、プラズマPによる被改質ガスG1の改質反応が促進される。ここで、反応促進剤7は、第三電極33に配置されているため、プラズマPから熱を受け取って加熱された第三電極33から熱を受け取り、加熱される。さらに、反応促進剤7は、第一反応室41とは熱的に仕切られた第二反応室42に配置されているため、放熱されにくく、温度が低下しにくい。反応促進剤7は、温度が高い程被改質ガスG1との反応効率が向上するため、本実施の形態にかかるガス改質装置100によれば、被改質ガスG1の改質効率(投入したエネルギー量に対する、改質後のガスG2の生成量)が向上する。
【0042】
また、反応促進剤7は、第三電極33のうち、開口部52と対向する側(+Z側)に配置されているため、プラズマPと接触する。このとき、反応促進剤7は、プラズマPから受け取る熱、及び被改質ガスG1の改質反応で発生する熱によって加熱される。このように、プラズマPが反応促進剤7と接触するように反応促進剤7を配置することで、より効率的に被改質ガスG1を改質できる。
【0043】
また、本実施の形態にかかるガス改質装置100は、プラズマPが反応促進剤7と接触するように反応促進剤7を配置しているため、プラズマPで励起された分子が反応促進剤7に到達するまでのエネルギー損失が抑制される。また、プラズマPで励起された分子が再結合又は拡散によって消滅する前に、反応促進剤7に到達させることができる。このような作用によっても、プラズマPによる被改質ガスG1の改質効率が向上する。
【0044】
次に、実施の形態1にかかるガス改質装置100によるガス改質のメカニズムを説明する。ここでは、被改質ガスG1が二酸化炭素(CO)、反応促進剤7がカーボン(C)であり、改質後のガスG2として一酸化炭素(CO)を生成する場合を例に説明する。なお、カーボンは、還元剤として機能する。また、この例は、ガス改質装置100によって、被改質ガスG1(CO)を、燃料として利用できる物質(CO)に改質することを想定した場合の一例である。被改質ガスG1、反応促進剤7及び改質後のガスG2は、これらに限定されない。
【0045】
第一電極31と第二電極32との間に印加された高電圧により、第一反応室41内の空間に存在する電子が加速される。このとき、COの分子が高エネルギーの電子と衝突すると、(1)式の分解反応によってCOが生成される。
e+CO→CO+O ‥‥(1)
【0046】
ここで、(1)式において、eは電子、Oは原子状酸素を示している。なお、(1)式の分解反応には、電子による直接解離又はCOの振動励起準位を介した解離など、複数の反応経路が存在する。ただし、(1)式では、これら複数の反応経路をまとめて表現している。
【0047】
(1)式の反応によって発生したOの一部は、別のOと結合することで酸素(O)に変換される。また、(1)式の反応によって発生したOの一部は、COと再結合してCOに変換される。また、(1)式の反応によって発生したCOの一部は、(1)式の反応によって発生したOによって酸化されて、COに変換される。ここでは、改質後のガスG2としてCOを生成しようとしているため、(1)式の反応によって発生したCOがCOに変換されることは、ガス改質の効率が低下することを意味する。そのため、(1)式の反応によって発生したO及び、O同士の結合により生じるOは、速やかに取り除かれることが望ましい。
【0048】
ここで、実施の形態1にかかるガス改質装置100では、反応促進剤7であるカーボン(C)は第三電極33に配置され、プラズマPは、反応促進剤7であるカーボン(C)に接触する。このとき、(2)式の酸化反応によって、(1)式の反応によって発生したOが除去される。また、(3)式の酸化反応によって、(1)式の反応によって発生したO同士の結合により生じるOが除去される。
C+O→CO ‥‥(2)
C+O→CO ‥‥(3)
【0049】
また、C(カーボン)及びCOと、COとの間には、(4)式のブードア(Boudouard)平衡の関係が成立する。
C+CO←→2CO ‥‥(4)
【0050】
ここで、(2)式及び(4)式によるCOの生成は、温度が高くなる程増加する。すなわち、被改質ガスG1であるCOから改質後のガスG2であるCOへの改質効率は、温度が高くなる程向上する。
【0051】
実施の形態1にかかるガス改質装置100では、引出電極である第三電極33によって第二反応室42内にプラズマPを引き出し、プラズマPと反応促進剤7であるカーボン(C)とを接触させる。したがって、プラズマPによってCOから生じたO((1)式参照)について、OがCOと再結合する前に、Oを反応促進剤7であるカーボン(C)と反応させることによって((2)式参照)、Oを除去することができる。すなわち、実施の形態1にかかるガス改質装置100によれば、被改質ガスG1の改質効率が低下することが防止される。
【0052】
さらに、実施の形態1にかかるガス改質装置100では、反応促進剤7であるカーボン(C)が、第一反応室41とは熱的に仕切られた第二反応室42に配置されているため、反応促進剤7であるカーボン(C)を高温状態に維持することができる。Oを除去する化学反応((2)式)、及びOを除去する化学反応((3)式)は、温度が高い程反応が活性化するため、反応促進剤7であるカーボン(C)を高温状態に維持することで、ガス改質の効率低下の原因となるO及びOをより除去することができる。また、反応促進剤7であるカーボン(C)を高温状態に維持することで、(4)式によるCOの生成をより促進させることができる。したがって、実施の形態1にかかるガス改質装置100によれば、COを、効率的にCOに改質することができる。
【0053】
なお、被改質ガスG1がCOである場合を例示したガス改質の説明は、ガス改質装置100によって、被改質ガスG1を、燃料として利用できる物質に改質する場合の一例についての説明である。ガス改質装置100は、他の用途にも利用可能である。例えば、ガス改質装置100は、被改質ガスG1に含まれる有害性の高い物質を、有害性の低い物質に改質する用途にも利用可能である。具体的には、例えば、トルエン又はキシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を、プラチナ(Pt)又はパラジウム(Pd)などの触媒を用いて分解する場合が挙げられる。
【0054】
また、ガス改質装置100は、地球温暖化係数が高い被改質ガスを、地球温暖化係数が低い物質に改質する用途にも利用可能である。具体的には、例えば、亜酸化窒素(NO)を、プラチナ(Pt)又はパラジウム(Pd)などの触媒を用いて、窒素(N2)と酸素(O2)に分解する場合が挙げられる。
【0055】
上述したガス改質装置100の構成はあくまで一例であり、本実施の形態のガス改質装置100は、種々のバリエーションの採用が可能である。以下、変形例における構造について、図を参照しながら説明する。なお、実施の形態1にかかるガス改質装置100と共通する点については、説明を省略又は簡単にする。また、実施の形態1にかかるガス改質装置100と共通する構成については、同一の符号を付している。
【0056】
変形例1.
実施の形態1の変形例1を、図6を参照して説明する。図6は、実施の形態1の変形例1にかかるガス改質装置100を示す断面図である。
【0057】
ガス改質装置100内に形成されるプラズマPの形状は、第一反応室41及び第二反応室42の内部の電界と、第一反応室41及び第二反応室42の内部における被改質ガスG1の流れ方に依存する。
【0058】
図6に示すように、変形例1のガス改質装置100では、第一電極31が、第三電極33が配置されているZ1軸からずれた位置に配置されている。図6に示す構成の場合、プラズマPは、Y方向に見て湾曲した形状をとる。プラズマPの形状が湾曲している場合、湾曲していない場合と比べて、第一反応室41内のプラズマPの長さを延長することができる。そして、第一反応室41内のプラズマPの長さが延長されると、より多くの被改質ガスG1がプラズマPと接触するため、プラズマPによって改質される被改質ガスG1の比率が高められる。
【0059】
変形例2.
実施の形態1の変形例2を、図7及び図8を参照して説明する。図7は、実施の形態1の変形例2にかかるガス改質装置100を示す断面図である。図8は、図7に示すC-C部の断面図である。
【0060】
第一電極31と第二電極32との間に生じるプラズマPの経路は、第一反応室41の内部の電界と、第一反応室41の内部における被改質ガスG1の流れ方によって変化する。また、第一電極31と第三電極33との間に生じるプラズマPの経路は、第一反応室41及び第二反応室42の内部の電界と、第一反応室41及び第二反応室42の内部における被改質ガスG1の流れ方によって変化する。また、プラズマPの経路が変化する際には、各電極において、プラズマPとの接触箇所が移動する場合がある。
【0061】
図7及び図8に示すように、変形例2のガス改質装置100では、第一電極31の先端形状が、リング状である。この場合、第一電極31が円柱状である場合(図1及び図2参照)と比べて、第一電極31の先端面が、第一電極31と第二電極32とが対向する方向とは垂直の平面(XY平面)において大きく広がっている。
【0062】
このため、先端形状をリング状とした第一電極31は、プラズマPとの接触箇所の移動範囲が大きくなる。第一電極31とプラズマPとの接触箇所が大きく移動する場合、第一電極31が局所的に加熱されることを防ぐことができる。第一電極31が局所的に加熱されることを防ぐことで、第一電極31の消耗及び変形を抑えることができるため、第一電極31を長寿命化させることができる。
【0063】
このように、変形例2のガス改質装置100では、第一電極31を長寿命化させることができるため、ガス改質装置100を長期間に亘って安定して稼働させることができる。また、第一電極31を長寿命化させることで、第一電極31の交換頻度を減らせるため、ガス改質装置100の保守作業工数を抑えることができる。なお、変形例2における第一電極31の形状は、第一電極31を長寿命化させるための変形例の一例である。第一電極31の形状は、長寿命化又はその他を目的として、適宜設計される。
【0064】
変形例3.
実施の形態1の変形例3を、図9及び図10を参照して説明する。図9は、実施の形態1の変形例3にかかるガス改質装置100を示す断面図である。図10は、図9に示すD-D部の断面図である。
【0065】
実施の形態1については、第一反応室41と第二反応室42とを連絡する開口である開口部52が、第二電極32に設けられている場合を例示して説明した。しかし、開口部52が第二電極32に設けられていることは必須でなく、別の構成要素に開口部52が設けられていても構わない。
【0066】
図9に示すように、変形例3のガス改質装置100では、反応容器2が、第一反応室41と第二反応室42とを仕切る仕切り部21を有する構造となっている。仕切り部21には、第一反応室41と第二反応室42とを連絡する開口である開口部52が設けられている。また、仕切り部21の第一電極31と対向する面(+Z方向側の面)に、第二電極32が配置されている。また、図10に示すように、第二電極32は、4つの矩形状の平板から構成されている。
【0067】
仕切り部21を構成する材料は、特に限定されない。仕切り部21には第二電極32が取り付けられるため、仕切り部21を構成する材料は、加工が容易な材料であることが好ましい。また、仕切り部21を構成する材料は、プラズマPに対する耐久性が良好な材料であることが好ましい。仕切り部21は、例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)などのセラミックスによって構成される。
【0068】
変形例3のガス改質装置100では、仕切り部21が、第一反応室41と第二反応室42とを熱的に仕切る部材として機能する。
【0069】
なお、第二電極32の形状をリング形状として、第二電極32と仕切り部21の両方に、第一反応室41と第二反応室42とを連絡する開口である開口部52を設ける構成としても構わない。この場合、仕切り部21と第二電極32の両方が、第一反応室41と第二反応室42とを熱的に仕切る部材として機能する。
【0070】
また、変形例3のガス改質装置100では、仕切り部21に第二電極32が設けられている構成となっているため、第二電極32が消耗又は変形した場合の第二電極32の交換を容易に行うことができる。変形例3のガス改質装置100によれば、第二電極32の交換を容易に行うことができるため、ガス改質装置100の保守にかかる工数を低減させることができる。
【0071】
変形例4.
実施の形態1の変形例4を、図11を参照して説明する。図11は、実施の形態1の変形例4にかかるガス改質装置100を示す断面図である。
【0072】
実施の形態1にかかるガス改質装置100では、ガス改質装置100が重力方向に対してどのように配置されているかは規定していない。一方、変形例4にかかるガス改質装置100は、第二反応室42が第一反応室41に対して重力方向下方になるように配置された場合を想定している。
【0073】
図11に示すように、第一反応室41の重力方向下方(-Z方向)に第二反応室42が位置するよう配置される場合、反応促進剤7が粒状又は粉状の物質であっても、第三電極33に安定して配置させることができる。
【0074】
さらに、変形例4のガス改質装置100では、引出電極である第三電極33の先端面が、重力方向上方(+Z方向)から見て窪んでいる。すなわち、第三電極33は、その先端部33aのうち、重力方向上方側の面が窪んでいる。このように構成することで、反応促進剤7が粒状又は粉状の物質であっても、反応促進剤7を第三電極33により安定して配置させることができる。
【0075】
変形例5.
実施の形態1の変形例5を、図12から図14を参照して説明する。図12及び図14は、それぞれ、実施の形態1の変形例5にかかるガス改質装置100の構成例を示す断面図である。また、図13は、図12に示すE-E部の断面図である。
【0076】
実施の形態1については、第一反応室41内における被改質ガスG1の流れ方については特に規定せずに説明した。変形例5においては、第一反応室41内での被改質ガスG1の流れが順渦流(Forword Vortex Flow)となる場合と、逆渦流(Reverse Vortex Flow)となる場合について説明する。
【0077】
まず、第一反応室41内での被改質ガスG1の流れを順渦流にするための、ガス改質装置100の構成の一例を説明する。図12に示すガス改質装置100では、反応容器2の側面のうち、第一電極31が配置されている側(+Z方向側)端部に2か所、ガス流入口51が設けられている。
【0078】
ここで、図13に示すように、反応容器2の形状は、両端に端面を有する円筒形状である。また、ガス流入口51は、流入した被改質ガスG1が、第一反応室41の内壁面に沿って流れるような形状となっている。具体的には、図13に示すように、ガス流入口51は、反応容器2の対称軸方向(Z方向)から見たとき、ガス流入口51の開口の向きが反応容器2の内壁面の接線方向に向くように形成されている。ただし、ガス流入口51から流入する被改質ガスG1を第一反応室41の内壁面に沿って流す構造は、これに限定されない。例えば、反応容器2が、ガス流入口51から流入する被改質ガスG1の流れを、第一反応室41の内壁面に沿った流れにする部材を別途備える構成でも構わない。
【0079】
被改質ガスG1は、円筒形状である反応容器2の対称軸(Z1軸)の周方向に旋回しながら、開口部52に向かって流れる。このようにして、第一反応室41の内部に、順渦流が生じる。
【0080】
また、図12に示すガス改質装置100では、第二電極32が、第二反応室42側(-Z方向側)に向かうにしたがって内径が狭くなる円錐形状の内壁を有している。このように構成することで、被改質ガスG1の渦流を維持しつつ、流速を高めて、被改質ガスG1を第二反応室42に流入させることができる。
【0081】
なお、ガス流入口51が2箇所であることは必須ではなく、1箇所であっても構わない。また、ガス流入口51が2箇所より多く設けられていても構わない。ただし、ガス流入口51が1箇所である場合よりも、複数箇所設けられている場合の方が、より安定して順渦流を生じさせることができる。また、ガス流入口51を複数箇所設ける場合、ガス流入口51は、反応容器2の対称軸方向(Z方向)から見たときに、反応容器2の対称軸に関して回転対称となるように設けることが好ましい。ここで、回転対称とは、反応容器2の対称軸(Z1軸)に関して(360°/n)回転させるとガス流入口51の配置が重なる構成をいい、nは2以上の整数である。ガス流入口51を、反応容器2の対称軸方向(Z方向)から見たときに、反応容器2の対称軸に関して回転対称となるように設けることで、より安定して順渦流を生じさせることができる。
【0082】
また、図13においては、被改質ガスG1が、第一反応室41から第二反応室42に向かう方向(-Z方向)に見て時計回りに旋回する例を示しているが、被改質ガスG1が旋回する方向は、これと逆方向であっても構わない。
【0083】
第一反応室41内における被改質ガスG1の流れが順渦流である場合、プラズマPが、第一反応室41の内壁から離れて(Z1軸側に近づいて)安定的に維持されるため、プラズマPの温度が高い状態を維持しやすい。
【0084】
また、第一反応室41内における被改質ガスG1の流れが順渦流である場合、渦流を生じさせていない場合と比べて、被改質ガスG1を第一反応室41内に長く留めることができる。
【0085】
次に、第一反応室41内での被改質ガスG1の流れを逆渦流にするための、ガス改質装置100の構成の一例を説明する。図14に示すガス改質装置100では、ガス流入口51が、反応容器2の側面のうち、第二電極32と接する位置に2箇所設けられている。反応容器2の形状は、順渦流の例と同様、両端に端面を有する円筒形状である。また、順渦流の例と同様、反応容器2は、ガス流入口51から流入した被改質ガスG1が第一反応室41の内壁面に沿って流れる構造を備えている。
【0086】
被改質ガスG1は、円筒形状である反応容器2の対称軸(Z1軸)の周方向に旋回しながら、第一反応室41の第一電極31側(+Z方向側)に向かって流れる。そして、第一反応室41の第一電極31側(+Z方向側)の内壁に到達した後は、第一電極31側の内壁に到達する前の旋回する流れの中心側(Z1軸側)を、開口部52側(-Z方向側)に流れる。このようにして、第一反応室41の内部に、逆渦流が生じる。
【0087】
第一反応室41内における被改質ガスG1の流れが逆渦流である場合にも、プラズマPが、第一反応室41の内壁から離れて(Z1軸側に近づいて)安定的に維持される。ここで、第一反応室41内における被改質ガスG1の流れが順渦流である場合よりも、逆渦流である場合の方が、プラズマPを安定的に維持する効果が大きく、プラズマPの温度が高い状態を維持する効果も大きい。
【0088】
また、第一反応室41内における被改質ガスG1の流れが逆渦流である場合にも、渦流を生じさせていない場合と比べて、被改質ガスG1を第一反応室41内に長く留めることができる。
【0089】
なお、第一反応室41内における被改質ガスG1の流れが逆渦流である場合においても、ガス流入口51の個数、及び渦流の旋回方向は限定されない。また、逆渦流をより安定して生じさせるため、ガス流入口51は、反応容器2の対称軸方向(Z方向)から見たときに、反応容器2の対称軸に関して回転対称となるように設けることが好ましい。
【0090】
また、反応容器2が、第一反応室41と第二反応室42とを仕切る仕切り部21を有する構造である場合には(図9参照)、ガス流入口51は、反応容器2の側面のうち、仕切り部21と接する位置に設けられていても構わない。
【0091】
変形例5のガス改質装置100によれば、プラズマPが、第一反応室41の内壁から離れて(Z1軸側に近づいて)安定的に維持されるため、プラズマPの温度が高い状態を維持しやすいという効果が得られる。そして、変形例5のガス改質装置100によれば、温度が高い状態が維持されたプラズマPを第三電極33に到達させることができるため、被改質ガスG1と反応促進剤7との反応効率をさらに高めることができる。
【0092】
また、変形例5のガス改質装置100によれば、渦流によって被改質ガスG1が第一反応室41内に長く留まるため、被改質ガスG1がプラズマPと接触する時間を延長することができ、被改質ガスG1の改質効率を向上させることができる。
【0093】
変形例6.
実施の形態1の変形例6を、図15を参照して説明する。図15は、実施の形態1の変形例6にかかるガス改質装置100を示す断面図である。
【0094】
実施の形態1につき、反応容器2を構成する材料は、絶縁性及び耐久性が高い材料であるのが好適であるとして説明した。しかし、反応容器2は、第一電極31、第二電極32、第三電極33のそれぞれが電気的に絶縁されていれば、金属を含んで構成されていても構わない。
【0095】
図15は、反応容器2のうち、第二反応室42を構成する部分が、金属を含んで構成された場合の一例を示している。図15に示すガス改質装置100では、反応容器2が、絶縁材料により構成された第一本体部2aと、絶縁材料により構成された絶縁部2bと、金属により構成された第二本体部2cと、を備えている。
【0096】
第一本体部2aの構成は、実施の形態1のガス改質装置100と同様であるため、説明を省略する。第二本体部2cには、第三電極33が取り付けられている。第二本体部2cと第三電極33とは、電気的にも接続されている。第二本体部2cと第二電極32との間には絶縁部2bが介在しているため、第二本体部2cと第二電極32とは電気的に絶縁されている。そして、第三電極33と第二電極32も、電気的に絶縁されている。
【0097】
第二本体部2cを構成する金属の種類は、特に限定されない。例えば、ガス改質装置100の耐熱性を向上させることを目的として、第二本体部2cを構成する金属としてタングステンを採用することができる。また、ガス改質装置100を軽量化させることを目的として、第二本体部2cを構成する金属としてアルミニウムを採用することができる。
【0098】
絶縁部2bを構成する絶縁材料は、特に限定されない。絶縁部2bを構成する絶縁材料の例としては、ガラス、セラミックス、樹脂が挙げられる。絶縁部2bを構成するガラスの具体例としては、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスが挙げられる。また、絶縁部2bを構成するセラミックスの具体例としては、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)が挙げられる。また、絶縁部2bを構成する樹脂の具体例としては、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PEEK(polyetheretherketone)が挙げられる。
【0099】
変形例6のガス改質装置100によれば、反応容器2が、金属を含んで構成されるため、耐熱性又は軽量化など、金属の特性に応じた機能を反応容器2に付与できるという効果が得られる。
【0100】
実施の形態2.
実施の形態2にかかるガス改質装置200の構成を、図16及び図17を参照して説明する。実施の形態1にかかるガス改質装置100の変形例4として、第二反応室42が第一反応室41に対して重力方向下方になるように配置された場合を説明した。実施の形態2にかかるガス改質装置200は、第一反応室41が第二反応室42に対して重力方向下方に配置された場合の構成例を説明する。そこで、実施の形態1にかかるガス改質装置100と共通する点については、説明を省略又は簡単にする。また、実施の形態1にかかるガス改質装置100と共通する構成については、同一の符号を付している。
【0101】
本実施の形態のガス改質装置200は、実施の形態1のガス改質装置100と同様に、反応容器2と、第一電極31と、第二電極32と、引出電極である第三電極33と、反応促進剤7と、を備える。また、反応容器2は、第一反応室41と、第二反応室42とを備える。
【0102】
図16は、実施の形態2にかかるガス改質装置200を示す断面図である。図17は、図16に示すF-F部の断面図である。また、図16及び図17においては、第一反応室41から第二反応室42に向かう方向(+Z方向)が重力方向上方に対応する。
【0103】
実施の形態2にかかるガス改質装置200においても、反応促進剤7が、第一反応室41とは熱的に仕切られた第二反応室42の内部に配置されているため、反応促進剤7を高温状態に維持することができる。そのため、実施の形態2にかかるガス改質装置200によれば、被改質ガスG1を効率的に改質することができる。
【0104】
図16に示すように、実施の形態2にかかるガス改質装置200では、第一反応室41の重力方向上方(+Z方向)に、第二反応室42が位置している。そして、第二反応室42内に引出電極である第三電極33が配置されている。また、図16及び17に示すように、反応容器2の重力方向上方の面には、ガス流出口53とは別に、反応促進剤7を第三電極33に供給するための投入口9が設けられている。
【0105】
図16及び図17に示すように、第三電極33の先端部33aには、被改質ガスG1が通過する貫通孔331が設けられている。なお、本実施の形態における第三電極33の形状はあくまで一例であり、例えば、先端部33aの、第一電極31と第二電極32とが対向する方向とは垂直の平面(XY平面)における断面形状は、矩形であっても構わない。また、貫通孔331についても、XY平面における断面形状は円形でなくても構わない。例えば、貫通孔331のXY平面における断面形状は、矩形であっても構わない。
【0106】
反応促進剤7が、被改質ガスG1を改質させる過程で消費される物質である場合、ガス改質装置200による被改質ガスG1の改質効率を維持するために、反応促進剤7を第三電極33に供給する必要がある。具体例を挙げれば、反応促進剤7がカーボンで、被改質ガスG1に含まれるCOからCOを生成する場合、以下に再掲する(4)式に示す通り、カーボンが消費される。
C+CO←→2CO ‥‥(4)
【0107】
実施の形態2にかかるガス改質装置200では、第三電極33よりも重力方向上方(+Z方向)に設けられた投入口9から反応促進剤7を投入すると、反応促進剤7は、重力に従って第三電極33に供給される。そのため、実施の形態2にかかるガス改質装置200によれば、ガス改質装置200の動作を停止させることなく、容易に反応促進剤7を第三電極33に供給することができる。
【0108】
図16及び図17を参照して上述したガス改質装置200の構成はあくまで一例であり、本実施の形態のガス改質装置200は、種々のバリエーションの採用が可能である。以下、変形例における構造について、図を参照しながら説明する。
【0109】
変形例.
実施の形態2の変形例を、図18及び図19を参照して説明する。図18は、実施の形態2の変形例にかかるガス改質装置200を示す断面図である。図19は、図18に示すG-G部の断面図である。なお、実施の形態2の変形例の効果を説明するために、図16も参照する。
【0110】
図18及び図19に示すように、変形例にかかるガス改質装置200は、第二電極32と第三電極33との間に絶縁部材8が配置されている。絶縁部材8は、反応容器2に取り付けられている。なお、絶縁部材8が、反応容器2と同種の絶縁材料で構成される場合には、絶縁部材8は、反応容器2と一体的に構成されていても構わない。また、絶縁部材8が反応容器2に取り付けられていることは必須でなく、第二電極32又は第三電極33に取り付けられていても構わない。
【0111】
図18及び図19に示すように、絶縁部材8の形状は、リング形状である。ただし、絶縁部材8の形状は一例であり、リング形状に限定されない。例えば、開口部52の開口の形状が矩形である場合に、絶縁部材8の形状は、矩形の開口を有する形状であっても構わない。
【0112】
絶縁部材8を構成する絶縁材料は、特に限定されない。絶縁部材8を構成する絶縁材料の例としては、ガラス、セラミックス、樹脂が挙げられる。絶縁部材8を構成するガラスの具体例としては、石英ガラス又はホウ珪酸ガラスが挙げられる。また、絶縁部材8を構成するセラミックスの具体例としては、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)が挙げられる。また、絶縁部材8を構成する樹脂の具体例としては、PTFE、PEEKが挙げられる。
【0113】
実施の形態2の変形例にかかるガス改質装置200の効果を、実施の形態2にかかるガス改質装置200と対比して説明する。実施の形態2にかかるガス改質装置200では、第三電極33は、第二電極32と接触しないように離間して配置されていた(図16参照)。そのため、開口部52から流入した被改質ガスG1がガス流出口53に向かう経路として、貫通孔331を通過する経路と、第二電極32と第三電極33との間を通過する経路があった。
【0114】
ここで、被改質ガスG1の改質効率を高めるためには、できるだけ被改質ガスG1を反応促進剤7と接触させることが望ましい。そして、被改質ガスG1が、第二電極32と第三電極33との間よりも、貫通孔331を通過する方が、より効率良く被改質ガスG1を反応促進剤7と接触させることができる。
【0115】
そして、変形例にかかるガス改質装置200では、被改質ガスG1が第二電極32と第三電極33との間を通過することを抑制して、貫通孔331により多くの被改質ガスG1が通過するように、絶縁部材8が、第二電極32と第三電極33との間に配置されている。
【0116】
変形例にかかるガス改質装置200では、絶縁部材8が配置されていない場合と比べて、より多くの被改質ガスG1を貫通孔331に流入させることができる。そのため、変形例にかかるガス改質装置200によれば、被改質ガスG1と反応促進剤7とを効率よく接触させることができ、被改質ガスG1の改質効率を高めることができる。
【0117】
なお、絶縁部材8は、被改質ガスG1が第二電極32と第三電極33との間を通過することを抑制して、より多くの被改質ガスG1を貫通孔331に流入させられるように配置されていればよい。例えば、絶縁部材8と第二電極32との間、又は絶縁部材8と第三電極33の間に、隙間があっても構わない。すなわち、開口部52から流入する被改質ガスG1のすべてについて貫通孔331に流入させることは必須でない。
【0118】
以上、本開示の実施の形態1及び実施の形態2について説明した。本開示は、上述した例に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。例えば、本開示における少なくとも一つの構成を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも一つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせることが可能である。
【0119】
本開示にかかるガス改質装置は、被改質ガスに含まれる有害性の高い物質を、有害性の低い物質に改質できる。そのため、本開示にかかるガス改質装置は、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に貢献する。
【0120】
また、本開示にかかるガス改質装置は、被改質ガスを、燃料として利用できる物質に改質できる。そのため、本開示にかかるガス改質装置は、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを可能にする」に貢献する。
【0121】
また、本開示にかかるガス改質装置は、地球温暖化係数が高い被改質ガスを、地球温暖化係数が低い物質に改質できる。そのため、本開示にかかるガス改質装置は、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献する。
【符号の説明】
【0122】
100、200 ガス改質装置
2 反応容器
21 仕切り部
2a 第一本体部
2b 絶縁部
2c 第二本体部
31 第一電極
32 第二電極
33 第三電極(引出電極)
33a 先端部
33b 軸部
331 貫通孔
41 第一反応室
42 第二反応室
51 ガス流入口
52 開口部
53 ガス流出口
61 第一電源
62 第二電源
63 受動素子
7 反応促進剤
8 絶縁部材
9 投入口
G1 被改質ガス
G2 改質後のガス
P プラズマ
【要約】
ガス改質装置(100)は、被改質ガス(G1)が流入する第一反応室(41)と、前記第一反応室(41)を通流した前記被改質ガス(G1)が流入する、前記第一反応室(41)とは熱的に仕切られた第二反応室(42)と、を備える反応容器(2)と、前記第一反応室(41)内に設けられ、前記第一反応室(41)内にプラズマ(P)を生じさせる第一及び第二電極(31、32)と、前記第二反応室(42)内に設けられ、前記第一反応室(41)から前記第二反応室(42)内に前記プラズマ(P)を引き出す引出電極(33)と、前記引出電極(33)に配置された反応促進剤(7)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19