(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-12
(45)【発行日】2025-06-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/31 20130101AFI20250613BHJP
【FI】
G06F21/31
(21)【出願番号】P 2025005382
(22)【出願日】2025-01-15
【審査請求日】2025-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520102587
【氏名又は名称】ピーツーテック プライベートカンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】弁理士法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 要
【審査官】酒井 大門
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140540(JP,A)
【文献】渡名喜 瑞稀 ほか,ブラウザフィンガープリントを用いた会員ID推定を提供するWeb APIシステムの提案と構築,情報処理学会 研究報告 コンピュータセキュリティ(CSEC),日本,情報処理学会,2021年03月08日,2021-CSEC-092,pp.1-7,ISSN: 2188-8655
【文献】高山 眞樹 ほか,iOS端末のフィンガープリントを用いたWebユーザの識別における手法ごとの精度の比較,2021年 暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集,2021年01月15日,pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/00- 21/88
H04L 9/00- 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部と、
前記ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部と、
前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記ユーザIDを管理する管理部と、
前
記ユーザの同一性を判定する判定部と、を備え、
前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、
前記判定部は、
新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う
情報処理装置。
【請求項2】
前記属性情報のうち、第1のレイヤーに分類されるのは、ユーザを特定する上で極めて重要な項目であり、同一ユーザの場合、変更されない項目であり、第2のレイヤーに分類されるのは、同一ユーザであれば変化する可能性が低い項目であり、第
3のレイヤーに分類されるのは、頻繁に変化する項目である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記属性情報を変換したベクター情報を照合することで、前記同一性の判定を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
ユーザの端末装置と情報処理装置と人工知能サーバとからなる情報処理システムであって、
前記端末装置は、
前記情報処理装置に属性情報を送信する送信部を備え、
前記情報処理装置は、
ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部と、
前記ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部と、
前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記ユーザIDを管理する管理部と、
前
記ユーザの同一性を判定する判定部と、を備え、
前記人工知能サーバは、
前記属性情報を入力として学習済モデルを用いてベクター情報を生成する生成部を備え、
前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、
前記判定部は、
新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う
情報処理システム。
【請求項5】
取得部が、ユーザの端末装置から属性情報を取得し、
ID発行部が、前記ユーザに係るユーザIDを発行し、
記憶部が、前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶し、
管理部が、前記ユーザIDを管理し、
判定部が
、前記ユーザの同一性を判定し、
前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、
前記判定部は、 前記判定部は、
新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う
情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部、
前記ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部、
前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶する記憶部、
前記ユーザIDを管理する管理部、
前
記ユーザの同一性を判定する判定部、として機能させ、
前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、
前記判定部は、
新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンガープリンティング(fingerprinting)技術を用いてユーザの同一性を精度よく認証する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Webサイトにアクセスしたユーザの特定にCookieやフィンガープリンティング技術が用いられている。
【0003】
フィンガープリンティング技術とは、ユーザが使用しているデバイス(ブラウザ)を特定するための技術であり、デバイスで利用しているソフトウェアに関する情報や、デバイスのスペックに関する情報や、ネットワークに関する情報等の属性情報を総称して、フィンガープリント情報と称する。フィンガープリンティング技術によれば、これらフィンガープリント情報に基づいて、ユーザの同一性を認証する。
【0004】
ここで、例えば、特許文献1では、ユーザ装置が不変である場合、装置のデバイスフィンガープリンティングが実行され、その結果は、認証の成功時点で取られた装置のスナップショットと比較され、当該比較が変化又は閾値内である場合、認証の持続性が許容される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、フィンガープリント情報に含まれる各属性情報を、同一性判定の上での重要度に応じて分類し、それら分類をふまえて、更にAI技術を活用して、同一性判定を実行することは何ら開示されていない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィンガープリンティング技術を用いて、フィンガープリント情報の重要度に応じた分類をふまえて、ユーザの同一性を精度よく認証することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る情報処理装置は、ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部と、前記ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部と、前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶する記憶部と、前記ユーザIDを管理する管理部と、前記ユーザの同一性を判定する判定部と、を備え、前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、前記判定部は、新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う。
【0009】
本発明の他の態様に係る情報処理システムは、ユーザの端末装置と情報処理装置と人工知能サーバとからなる情報処理システムであって、前記端末装置は、前記情報処理装置に属性情報を送信する送信部を備え、前記情報処理装置は、ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部と、前記ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部と、前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶する記憶部と、前記ユーザIDを管理する管理部と、前記ユーザの同一性を判定する判定部と、を備え、前記人工知能サーバは、前記属性情報を入力として学習済モデルを用いてベクター情報を生成する生成部を備え、前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、前記判定部は、新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う。
【0010】
本発明の他の態様に係る情報処理方法は、取得部が、ユーザの端末装置から属性情報を取得し、ID発行部が、前記ユーザに係るユーザIDを発行し、記憶部が、前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶し、管理部が、前記ユーザIDを管理し、判定部が、前記ユーザの同一性を判定し、前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、前記判定部は、新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う。
【0011】
本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータを、ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部、前記ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部、前記ユーザIDと前記属性情報とを関連付けて記憶する記憶部、前記ユーザIDを管理する管理部、前記ユーザの同一性を判定する判定部、として機能させ、前記属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、前記判定部は、新規に発行された新規ユーザIDが前記記憶部に既に存在するかを確認し、存在しない場合、変化の度合の低いレイヤー1に係る情報を照合し、類似度が高い場合には、次いで変化の度合の低いレイヤー2に係る情報を照合することで、前記同一性判定を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィンガープリンティング技術を用いて、フィンガープリント情報の重要度に応じた分類をふまえて、ユーザの同一性を精度よく認証する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成図である。
【
図2】
図2は、同システムのフィンガープリントサーバの機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、同システムのフィンガープリントサーバのハードウェア構成図である。
【
図4】
図4は、同システムの端末装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、同システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、AIサーバによるデータ変換を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、フィンガープリントサーバによる判定処理を説明するための概念図である。
【
図8】
図8は、フィンガープリントサーバによる判定処理の詳細な処置手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、visitorテーブルの登録例を示す図である。
【
図10】
図10は、アフェリエイトサービスに適用した場合の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、アクセス履歴テーブルの登録例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係る情報処理システムの構成を示し説明する。
【0017】
同図に示されるように、本発明の実施形態に係る情報処理システムは、情報処理装置としてのフィンガープリントサーバ1と、ユーザの端末装置2と、AIサーバ3と、訓練装置4と、データベース13とを有している。これら各デバイスは、インターネット等のネットワークを介して無線又は有線で通信自在に接続されている。端末装置2としては、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータなど、各種のものを採用することができる。
【0018】
このような構成において、ユーザは、端末装置2により、閲覧を所望とするWebサイト5にアクセスする。Webサイト5には、制御タグ5Aが埋め込まれており、当該制御タグ5Aに係る機能により、端末装置2からフィンガープリントサーバ1へとデバイス等の属性情報としてのフィンガープリント情報が送信される。
【0019】
フィンガープリントサーバ1は、フィンガープリント情報を取得すると、個人識別情報(ID)を発行し、当該IDと紐づけて、取得したフィンガープリント情報をDB13に登録する。フィンガープリントサーバ1は、更にフィンガープリント情報をAIサーバ3に送信し、当該AIサーバ3にて、学習済モデルを用いて、フィンガープリント情報をベクター情報に変換する。このベクター情報は、フィンガープリントサーバ1に送られ、DB13に判定処理用のデータとして登録される。
【0020】
フィンガープリントサーバ1は、詳細は後述するがユーザの同一性の認証に際して、IDと紐づけられているベクター情報の類似度を求め、当該類似度によりユーザが同一人物か別人物かを判定する。判定結果は、Webサイト5に送られる。従って、Webサイト5を運営している不図示の広告サーバは、ユーザの同一性に係る認証結果を受けて、最適な広告をWebサイト5において実行できるようになる。
【0021】
このほか、訓練装置4は、DB13の登録データ(ID、フィンガープリント情報)を取得し、AIサーバ3の学習モデルを訓練し、学習済モデル3Bを更新することで、ベクター情報の生成の精度を高める工夫をしている。
【0022】
図2は、フィンガープリントサーバの機能ブロック図である。
【0023】
同図に示されるように、フィンガープリントサーバ1は、制御部11、通信部12、及び記憶部13を有している。通信部12は、例えばNIC(Network Interface Card)等で実現されており、インターネット等の通信網を介して、ユーザの端末装置2からの各種情報を受信し、Webサイト5にユーザの同一性の判定結果等を送信する。
【0024】
記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリと、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置とで実現され、例えば、ユーザ情報、判定処理用の学習済モデル、及び各種プログラムを記憶している。
【0025】
すなわち、記憶部13は、ユーザ情報として、ユーザIDと紐づけて、フィンガープリント情報、ベクター情報等を記憶している。
【0026】
ここで、フィンガープリント情報は、以下の3つのレイヤーに分類される。
【0027】
a)レイヤー1
これは、ユーザを特定する上で極めて重要な項目であり、通常、同一ユーザの場合、変更されない項目である。例えば、高い安全性を持つ情報(常に検出可能な情報)、ユーザの端末装置2のハードウェアから取得され、変更不可能又は稀に変更される情報、ユーザのブラウザから取得され、変更不可能又は稀に変更される情報等がレイヤー1の項目に相当する。
【0028】
b)レイヤー2
これは、同一ユーザであれば変化する可能性が低い項目である。例えば、高い安全性を持つ情報(常に検出可能な情報)、ユーザの端末装置2のハードウェアから取得され、、変更可能な情報、ユーザのブラウザから取得され、変更可能な情報等がレイヤー2の項目に相当する。
【0029】
c)レイヤー3
これは、頻繁に変化する項目である。例えば、低い安定性を持つ情報(検出可能な場合と検出不可能な場合が混在する情報)、ユーザの端末装置2のハードウェアから取得されるが頻繁に変更される情報、ユーザのブラウザから取得されるが頻繁に変更される情報等がレイヤー3の項目に相当する。
【0030】
より詳細には、レイヤー1の項目には、ブラウザで使用可能なフォントリスト、ブラウザのセッションストレージの有効性、ブラウザのローカルストレージの有効性、ブラウザでのDの使用可能性、DB(Database)のAPI(Application Programming Interface)の使用可能性、ブラウザのベンダー情報及び拡張機能や特徴、ブラウザの数学関連の機能サポートの有無、オペレーティングシステム、デバイスのメモリ量やCPU(Central Processing Unit)のスレッド数、デバイスのデバイスプラットフォーム、ビデオカードの搭載の有無等が含まれる。
【0031】
レイヤー2の項目には、ブラウザの種類、設定言語、プラグインリスト、ブラウザのCookieの有効性、ブラウザのモノクロモードへの対応の有無、ブラウザの設計コントラスト、ブラウザのPDFビューアの有効性、ユーザーエージェント、ユーザのタイムゾーン情報、タッチスクリーンへの対応性等が含まれる。
【0032】
レイヤー3の項目には、ブラウザへのDOMブロッカーのインストールの有無、ブラウザの設定フォント、ブラウザの反転カラーへの対応性、IPアドレス、スクリーンフレーム(解像度やサイズに関する情報)、オペレーティングシステムとCPUに関する情報、ブラウザでのカラーの深さ(24ビット等)、スクリーンの解像度、CPUのクラス、デバイスでの色域(sRGB、P3等)、強制的なカラースキームの有効性、ブラウザのハイダイナミックレンジへの対応性、データ収集にかかった時間、サイトにアクセスした時間、現在アクセスしているURL、初回登録時のタイムスタンプ、最終更新時のタイムスタンプ等が含まれる。
【0033】
制御部11は、CPU、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサで実現されており、記憶部13のプログラムを読み出し、実行することで、例えば、取得部11a、ID(識別情報;identification)発行部11b、管理部11c、判定部11d、通信制御部11e、訓練部11f、及び決済部11gとして機能する。
【0034】
取得部11aは、Webサイト5に埋め込まれている制御タグ5Aの作用により端末装置2から送られてきたフィンガープリント情報を取得する。フィンガープリント情報の詳細については前述した通りであり、その項目は、重要度の応じて3つのレイヤー1~3に大別される。ID発行部11bは、フィンガープリント情報を取得したタイミングで、ユーザID(VisitorID)を発行する。管理部11cは、発行されたVisitorIDとフィンガープリント情報を関連付けて記憶部13に記憶し、管理する。
【0035】
取得部11aは、取得したフィンガープリント情報をAIサーバ3に送信し、当該AIサーバ3において、
図6に示されるように、学習済モデル3Bを用いてフィンガープリント情報よりベクター情報を生成させ、当該ベクター情報を取得し、管理部11cが、VisitorIDと関連付けて記憶部13にベクター情報を記憶させる。ベクター情報は、後述するユーザの同一性判定の際に用いられる。
【0036】
判定部11dは、ユーザの同一性を判定する。すなわち、より詳細には、判定部11dは、VisitorIDが既に記憶部13のVisitorテーブル(例えば、
図9参照)に存在するかを確認し、存在する場合には、VisitorID及びフィンガープリント情報を管理テーブルに登録し、既に登録されているオリジナルのユーザID(OriginalVisitorID)を判定結果として端末装置2に送信する。一方、VisitorIDが記憶部13のVisitorテーブルに存在しない場合、フィンガープリント情報に係るベクター情報のうち、レイヤー1に係るベクター情報を照合し、類似度が高い場合には、次いでレイヤー2に係るベクター情報を照合し、所定数以上の項目で一致が確認できた場合、VisitorID及びフィンガープリント情報を管理テーブルに登録し、既に登録されているオリジナルのユーザID(OriginalVisitorID)を判定結果として端末装置2に送信する。その一方、レイヤー2について、所定数以上の項目でベクター情報の一致が確認できなかった場合、新しいVisitorIDを発行し、端末装置2に判定結果として送信する。
【0037】
この判定の様子は、
図7に示される通りであり、前回取得したフィンガープリント情報に係るベクター情報と、今回取得したフィンガープリント情報に係るベクター情報を判定処理により照合し、算出される類似度により、同一性の判定を行う。この例では、類似度は0~1の値で示され、1の場合には同一人物、0.90~0.99の場合には同一人物とみなし、0.01~0.89の場合には別人物とみなし、0の場合には別人物と判定する。但し、これは一例であって、これには限定されないことは勿論である。
【0038】
判定部11dによる判定処理においては、学習済モデルを用いた判定とルールベースによる判定を併用することも可能である。即ち、判定部11dは、記憶部13に記憶されている学習済モデルを用いて、前回取得した登録済のフィンガープリント情報に係るベクター情報と今回取得したフィンガープリント情報に係るベクター情報とを入力データとして学習済モデルにより同一性の判定を行い、第1類似度を出力として得る。次いで、予め定められたフィンガープリント情報に係るレイヤー区分に係るテーブルを参照して、レイヤー1,レイヤー2の各項目についてルールベースで照合し、第2類似度を出力として得る。そして、第1類似度と第2類似度とを、例えば重みづけ平均を取るなどして統合し、最終的な第3類似度を算出し、第3類似度によりユーザの同一性を判定する。
【0039】
通信制御部11eは、判定部11dによる判定結果をWebサイト5の広告サーバ等に送信するよう制御する送信部として機能する。訓練部11fは、判定部11dによる判定処理で用いられる学習モデルを訓練する。具体的には、ユーザID(visitorID)とフィンガープリント情報とを学習データセットとして、学習モデルを訓練し、学習済モデルを生成して記憶部13に記憶、更新する。
【0040】
以上のほか、決済部11gは、本システムがアフェリエイトサービス等に適用された場合などにおいて、ユーザに対する還元金等を電子決済する。
【0041】
図3は、フィンガープリントサーバのハードウェア構成図である。
【0042】
同図に示されるように、情報処理装置1は、プロセッサ101と、メモリ102と、記憶装置103と、通信インタフェース104と、入力装置105と、出力装置106とを備えている。プロセッサ101は、CPU、MPU、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成されている。
【0043】
メモリ102は、RAM、ROM等で構成されている。記憶装置103は、所謂ストレージであり、HDD、SSD、フラッシュメモリ等で構成されている。
【0044】
通信インタフェース104は、通信網4に接続するためのアダプタ、モデム、ルータ、各種コネクタ等で構成されている。入力装置105は、キーボード、マウス、操作スイッチ、マイク等で構成されている。そして、出力装置106は、ディスプレイ、スピーカ等で構成されている。
【0045】
このような構成において、プロセッサ101は、記憶装置103に予め記憶されている制御プログラムを読み出し、メモリ102に展開して実行することで、
図2で詳述したような制御部11として各種機能を奏することとなる。
【0046】
【0047】
同図に示されるように、端末装置2は、制御部21、通信部22、入力部23、出力部24、及び記憶部25を有している。通信部22は、例えばNIC等で実現され、インターネット等の通信網を介して、情報処理装置としてのフィンガープリントサーバ1へとフィンガープリント情報等を送信し、情報処理装置1からの判定結果(visitorID)等を受信する。
【0048】
入力部23は、カメラと、マイクロフォンと、センサと、キーボードやマウス等の操作デバイス等を有している。操作デバイスからは入力データが制御部21に入力される。出力部24は、スピーカと、ディスプレイ等を有している。スピーカからは音声が発音され、ディスプレイでは入力画面などが表示される。
【0049】
記憶部25は、例えば、RAM、ROM等のメモリと、HDD、SSD、フラッシュメモリ等の記憶装置とで実現され、例えば、取得した入力情報、受信した作品に関わる画像データ等、及び各種プログラムを記憶している。
【0050】
制御部21は、CPU、MPU等のプロセッサで実現されており、記憶部23のプログラムを読み出し、実行することで、例えば、通信制御部21a、ブラウザ部21b、主制御部21c等として機能する。通信制御部21aは、情報処理装置としてのフィンガープリントサーバ1にフィンガープリント情報等を送信する送信部、及びフィンガープリントサーバ1からの判定結果等を受信する受信部として機能する。ブラウザ部21bは、出力部24に含まれるディスプレイでの各種画面表示を制御する。主制御部21cは、そのほか各種の制御を司る。
【0051】
以下、
図5のフローチャートを参照して、本発明の実施形態に係る情報処理装置としてのフィンガープリントサーバによる処理手順を詳細に説明する。
【0052】
処理を開始すると、取得部11aは、Webサイト5に埋め込まれている制御タグ5Aの作用により端末装置2から送られてきたフィンガープリント情報を取得する(S1)。フィンガープリント情報の詳細については前述した通りであり、その項目は、重要度の応じて3つのレイヤー1~3に大別される。続いて、ID発行部11bは、フィンガープリント情報を取得したタイミングで、ユーザID(VisitorID)を発行する(S2)。管理部11cは、発行されたVisitorIDとフィンガープリント情報を関連付けて記憶部13に記憶し管理する(S3)。
【0053】
取得部11aは、取得したフィンガープリント情報をAIサーバ3に送信し、当該AIサーバ3において、
図6に示されるように、生成部2Bにより学習済モデル3Bを用いてフィンガープリント情報よりベクター情報を生成させ、当該ベクター情報を取得し、管理部11cがVisitorIDと関連付けて記憶部13にベクター情報を記憶させる(S4)。このベクター情報は、後述するユーザの同一性判定の際に用いられる。
【0054】
続いて、判定部11dは、ユーザの同一性を判定する(S5)。即ち、判定部11dは、VisitorIDが既に記憶部13のVisitorテーブル(
図9参照)に存在するかを確認し、存在する場合には(S6をYesに分岐)、VisitorID及びフィンガープリント情報を管理テーブルに登録し、既に登録されているオリジナルのユーザID(OriginlVisitorID)を判定結果として端末装置2に送信する(S8)。
【0055】
一方、VisitorIDが記憶部13のVisitorテーブルに存在しない場合には(S6をNoに分岐)、フィンガープリント情報に係るベクター情報のうち、レイヤー1に係るベクター情報を照合し、類似度が高い場合には、次いでレイヤー2に係るベクター情報を照合し、所定数以上の項目で一致が確認できた場合(S7をYesに分岐)、VisitorID及びフィンガープリント情報を管理テーブルに登録し、既に登録されているオリジナルのユーザID(OriginalVisitorID)を判定結果として端末装置2に送信する(S8)。
【0056】
レイヤー2について、所定数以上の項目で一致が確認できなかった場合(S7をNoに分岐)、新しいVisitorIDを発行し、端末装置2に判定結果として送信する(S10)。
【0057】
このような判定処理の様子は、先に
図7で説明した通りであり、前回取得したフィンガープリント情報に係るベクター情報と、今回取得したフィンガープリント情報に係るベクター情報を判定処理により照合し、算出される類似度により、同一性の判定を行う。この例では、類似度は0~1の値で示され、1の場合には同一人物、0.90~0.99の場合には同一人物とみなし、0.01~0.89の場合には別人物とみなし、0の場合には別人物と判定する。但し、これは一例であって、これには限定されない。
【0058】
判定部11dによる判定処理(S4)においては、学習済モデルを用いた判定と、ルールベースによる判定を併用している。即ち、
図8に示されるように、判定部11dは、先ず記憶部13に記憶されている学習済モデルを用いて、前回取得した登録済のフィンガープリント情報に係るベクター情報と、今回取得したフィンガープリント情報に係るベクター情報とを入力データとして、学習済モデルにより同一性の判定を行い、第1類似度を出力として得る(S4-1)。次いで、予め定められたフィンガープリント情報に係るレイヤー区分に係るテーブルを参照して、レイヤー1,レイヤー2の各項目についてルールベースで照合し、第2類似度を出力として得る(S4-2)。そして、第1類似度と第2類似度とを、例えば重みづけ平均を取るなどして統合し、最終的な第3類似度を算出し、第3類似度によりユーザの同一性を判定する(S4-3)。
【0059】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、フィンガープリント情報を変更の頻度の等の度合により3つのレイヤーに区分し、各レイヤーの重要度に応じて、適確な同一性判定を行うことができるので、判定結果を得た広告サーバ等は、当該ユーザに最適な広告などを実施することが可能となる。
【0060】
<第2実施形態>
【0061】
第2実施形態に係る情報処理システムは、第1実施形態に係る情報処理システムをアフェリエイトサービスに適用したものである。尚、各装置の構成は、
図1乃至
図4で前述した通りであるので、以下では同一構成については同一符号を用いて説明する。
【0062】
以下、
図10のフローチャートを参照して、本発明の第2実施形態に係る情報処理システムによる処理手順を詳細に説明する。
【0063】
処理を開始すると、公告サーバは、Webサイトへのユーザのアクセスを受け付けると(S21)、フィンガープリントサーバ1に問い合わせてOriginalVisitorIDを取得し(S22)、アクセス履歴テーブルに登録する(S23)。アクセス履歴テーブルの一例は、
図11に示される通りであり、OriginalVisitorIDと紐づけてパートナーコード、キャンペーンコード、及び更新の日付が記憶されている。
【0064】
続いて、ユーザが口座登録を行うと(S24)、再びOriginalVisitorIDを取得し(S25)、アクセス履歴テーブルを参照して、OriginalVisitorID似紐づいているキャンペーンコードを取得し(S26)、取引口座データを更新し(S27)、こうして一連の処理を終了する。
【0065】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、フィンガープリントサーバが発行するOriginalVisitorIDとキャンペーンコードを関連付けて管理することで、アフェリエイトなどの報酬をユーザに適確に分配することが可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0067】
例えば、本実施形態の適用例は、前述したアフェリエイトサービスに限定されるものではなく、多種多様な用途に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1…フィンガープリントサーバ、2…端末装置、3…AIサーバ、3A…生成部、3B…学習済モデル、4…訓練装置、5…Webサイト、5A…タグ、11…制御部、11a…取得部、11b…ID発行部、11c…管理部、11d…判定部、11e…通信制御部、11f…訓練部、11g…決済部、12…通信部、13…記憶部、21…制御部、21a…通信制御部、21b…ブラウザ部、21c…主制御部、22…通信部、23…操作部、24…表示部、25…記憶部25、101…プロセッサ、102…メモリ、103…記憶装置、104…通信インタフェース、105…入力装置、106…出力装置。
【要約】
【課題】フィンガープリンティング技術を用いてユーザの同一性を精度よく認証する。
【解決手段】本発明は、ユーザの端末装置から属性情報を取得する取得部11aと、ユーザに係るユーザIDを発行するID発行部11bと、ユーザIDと属性情報とを関連付けて記憶する記憶部13と、ユーザIDを管理する管理部11cと、記憶部に記憶されているユーザIDと新規に発行された新規ユーザIDとを照合することでユーザの同一性を判定する判定部11dとを備え、属性情報は、変化の度合に応じて第1乃至第3のレイヤーに分類されており、判定部は、属性情報に含まれる情報のうち、変化の度合の高い第1及び第2のレイヤーに係る情報を照合することで、同一性判定を行う情報処理装置である。
【選択図】
図2