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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-12
(45)【発行日】2025-06-20
(54)【発明の名称】光送受信機
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/00 20060101AFI20250613BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20250613BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20250613BHJP
【FI】
G01T1/00 A
G01M11/00 R
G01D5/353 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025521938
(86)(22)【出願日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2023039537
【審査請求日】2025-04-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 隼也
(72)【発明者】
【氏名】竹本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】望月 敬太
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-303206(JP,A)
【文献】特開平7-218352(JP,A)
【文献】特開2004-309219(JP,A)
【文献】特開2004-251739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01M 11/00-11/08
G01D 5/26-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似乱数符号を示す信号を出力する疑似乱数符号生成器と、
前記疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して送信する、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光送信機と、
入力された光を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換するアナログ光受信機と、
前記デジタル光送信機により送信された送信光を光ファイバの一端に出力し、当該光ファイバからの光を前記アナログ光受信機に出力する送受切り替え器と、
前記アナログ光受信機により得られた受信信号に基づいて、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、
前記疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号、および、前記アナログデジタル変換器により得られた受信信号に基づいて、当該疑似乱数符号を示す信号と当該受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する相関処理部と、
前記相関処理部により算出された損失曲線データに基づいて、微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する微分処理部と、
前記光ファイバの設置前における損失微分データ、および、前記微分処理部により算出された損失曲線微分データに基づいて、当該損失微分データと当該損失曲線微分データとの差分を算出する差分計算部とを備え、
前記デジタル光送信機および前記アナログ光受信機は、デジタル光トランシーバにより構成され、
前記デジタル光トランシーバの受信側は、リミッティングアンプを有し、
前記送受切り替え器は、前記デジタル光トランシーバの送信側により送信された送信光の漏れ光であって、前記リミッティングアンプの利得を固定可能な漏れ光を、前記デジタル光トランシーバの受信側に出力する
ことを特徴とする光送受信機。
【請求項2】
疑似乱数符号を示す信号を出力する疑似乱数符号生成器と、
前記疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して送信する、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光送信機と、
入力された光を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換するアナログ光受信機と、
前記デジタル光送信機により送信された送信光を光ファイバの一端に出力し、当該光ファイバからの光を前記アナログ光受信機に出力する送受切り替え器と、
前記アナログ光受信機により得られた受信信号に基づいて、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、
前記疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号、および、前記アナログデジタル変換器により得られた受信信号に基づいて、当該疑似乱数符号を示す信号と当該受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する相関処理部と、
前記相関処理部により算出された損失曲線データに基づいて、微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する微分処理部と、
前記光ファイバの設置前における損失微分データ、および、前記微分処理部により算出された損失曲線微分データに基づいて、当該損失微分データと当該損失曲線微分データとの差分を算出する差分計算部とを備え、
前記デジタル光送信機および前記アナログ光受信機は、デジタル光トランシーバにより構成され、
前記デジタル光トランシーバの受信側は、リミッティングアンプを有し、
前記送受切り替え器は、前記光ファイバを介して入力された当該光ファイバの他端側に設けられた光送受信機からの送信光であって、自機で用いる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号に基づく送信光を、前記デジタル光トランシーバの受信側に出力する
ことを特徴とする光送受信機。
【請求項3】
前記デジタル光送信機は、OOK変調を行うデジタル光送信機である
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光送受信機。
【請求項4】
漏れ光は、-20dB以上である
ことを特徴とする請求項記載の光送受信機。
【請求項5】
前記光ファイバの他端側に設けられた光送受信機で用いられる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号を示す信号を出力するダミー符号生成器と、
前記疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号、または、前記ダミー符号生成器により出力されたダミー符号を示す信号を出力するセレクタとを備え、
前記デジタル光トランシーバの送信側は、前記セレクタにより出力された信号に基づいて送信光を生成して出力する
ことを特徴とする請求項記載の光送受信機。
【請求項6】
前記疑似乱数符号生成器は、疑似乱数符号を示す信号、または、前記光ファイバの他端側に設けられた光送受信機で用いられる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号を示す信号を出力し、
前記デジタル光トランシーバの送信側は、前記疑似乱数符号生成器により出力された信号に基づいて送信光を生成して出力する
ことを特徴とする請求項記載の光送受信機。
【請求項7】
前記差分計算部は、算出した差分に基づいて、吸収線累積量分布を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光送受信機。
【請求項8】
前記差分計算部による算出結果を示すデータを通信信号として出力し、前記アナログデジタル変換器により得られた受信信号から、前記光ファイバの他端側に設けられた前記光送受信機からの通信信号を取得する通信機能部と、
前記疑似乱数符号生成器により生成された疑似乱数符号を示す信号、または、前記通信機能部により出力された通信信号を出力するセレクタとを備え、
前記デジタル光送信機は、前記セレクタにより出力された信号に基づいて送信光を生成して出力し、
前記差分計算部は、算出結果、および、前記通信機能部により取得された通信信号に基づいて、算出結果の統合を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の光送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光損失を計測可能な光送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線量分布情報を得るための装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示された装置では、センサ用の光ファイバに沿った放射線量分布情報を得るために、パルス幅がtwでありパルス周期がtpである光源で駆動する単パルス方式のOTDR計測手法が用いられている。
この手法は、ストークス光およびアンチストークス光などの複数波長をOTDR処理することで、放射線による劣化量の波長依存性(差分)も利用して放射線被爆量を推定するものである。また、特許文献1では、パルス列で駆動する擬似ランダムパルス方式のOTDR計測手法を用いてもよいとの記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-274787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来手法では、距離分解能の高い放射線量分布計測が困難である。また、放射線量分布の計測だけではなく、光損失の計測についても距離分解能の高い計測が困難である。
また、従来手法において、高分解能化のためにOTDR送信光を狭パルス化すると、後方散乱パワーが低下する。そのため、この場合、計測距離のダイナミックレンジが低下し、放射線環境下での光ファイバの損失が増加することから、計測レンジの維持が困難である。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来に対し、光損失を高距離分解能で計測可能となる光送受信機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光送受信機は、疑似乱数符号を示す信号を出力する疑似乱数符号生成器と、疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して送信する、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光送信機と、入力された光を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換するアナログ光受信機と、デジタル光送信機により送信された送信光を光ファイバの一端に出力し、当該光ファイバからの光をアナログ光受信機に出力する送受切り替え器と、アナログ光受信機により得られた受信信号に基づいて、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、疑似乱数符号生成器により出力された疑似乱数符号を示す信号、および、アナログデジタル変換器により得られた受信信号に基づいて、当該疑似乱数符号を示す信号と当該受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する相関処理部と、相関処理部により算出された損失曲線データに基づいて、微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する微分処理部と、光ファイバの設置前における損失微分データ、および、微分処理部により算出された損失曲線微分データに基づいて、当該損失微分データと当該損失曲線微分データとの差分を算出する差分計算部とを備え、デジタル光送信機およびアナログ光受信機は、デジタル光トランシーバにより構成され、デジタル光トランシーバの受信側は、リミッティングアンプを有し、送受切り替え器は、デジタル光トランシーバの送信側により送信された送信光の漏れ光であって、リミッティングアンプの利得を固定可能な漏れ光を、デジタル光トランシーバの受信側に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、上記のように構成したので、従来に対し、光損失を高距離分解能で計測可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る光送受信機の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る光送受信機の動作例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る光送受信機で扱われる損失データおよび損失曲線データの一例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る光送受信機で扱われる損失微分データ、損失曲線微分データおよび吸収線累積量分布の一例を示す図である。
図5】実施の形態2に係る光送受信機の構成例を示すブロック図である。
図6】実施の形態2におけるデジタル光トランシーバの受信側の構成例を示すブロック図である。
図7】実施の形態2に係る光送受信機におけるLAの利得を説明するための図である(漏れ光を用いた場合)。
図8】実施の形態2に係る光送受信機におけるLAの利得を説明するための図である(漏れ光が小さいまたは漏れ光を用いない場合)。
図9】実施の形態3に係る光送受信システムの構成例を示すブロック図である。
図10】実施の形態3に係る光送受信システムの別の構成例を示すブロック図である。
図11】実施の形態4に係る光送受信システムの構成例を示すブロック図である。
図12】実施の形態4に係る光送受信システムの動作例を示すフローチャートである。
図13】実施の形態4に係る第1の光送受信機および第2の光送受信機で扱われる損失データおよび損失曲線データの一例を示す図である。
図14】実施の形態4に係る第1の光送受信機および第2の光送受信機で扱われる損失微分データ、損失曲線微分データおよび吸収線累積量分布の一例を示す図である。
図15】実施の形態4に係る光送受信機による統合後の吸収線累積量分布の一例を示す図である。
図16図16A図16Bは、実施の形態1~4に係る光送受信機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る光送受信機1の構成例を示す図である。図1では、光送受信機1が、吸収線累積量分布(放射線量分布)を計測するファイバ型放射線分布計である場合を例に示している。なお、図1では、光ファイバ2が、接着手段を介して、放射線が照射される被測定対象物に取り付けられる場合を例に示している。図1において、光ファイバ2の上側に示される複数の矢印は、放射線の照射を示している。
なお、この光送受信機1は、例えば、衛星および原子炉などの発電所で適用可能である。例えば、光送受信機1が原子炉のような人が侵入できない場所で適用された場合であっても、光送受信機1は遠隔から吸収線累積量分布を計測可能である。
【0010】
この光送受信機1は、図1に示すように、疑似乱数符号生成器101、デジタル光送信機102、光サーキュレータ(送受切り替え器)103、アナログ光受信機104、ADC(アナログデジタル変換器)105、相関処理部106、微分処理部107、微分データ取得部108、および、差分計算部109を備えている。この光送受信機1は、光ファイバ2の一端側に設けられている。
【0011】
疑似乱数符号生成器101は、疑似乱数符号を生成する。すなわち、疑似乱数符号生成器101は、「0」または「1」がランダムに配列された符号を生成する。
この疑似乱数符号生成器101により生成された疑似乱数符号を示す信号は、デジタル光送信機102および相関処理部106に出力される。
【0012】
デジタル光送信機102は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して光サーキュレータ103に送信する。このデジタル光送信機102により生成される送信光は、連続的な光である。
このデジタル光送信機102は、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光送信機である。
【0013】
このデジタル光送信機102としては、例えば、SFP(Small Form-factor Pluggable)を用いることができる。また、デジタル光送信機102としては、SFPに限らず、例えば、SFP+,QSFP,SFP28などのようにより高速なものを用いてもよく、OOK(On-Off-Keying)デジタル変調を行うデジタル光送信機であればよい。
【0014】
光サーキュレータ103は、デジタル光送信機102により送信された送信光を光ファイバ2の一端に出力する。
また、光サーキュレータ103は、光ファイバ2からの光(後方散乱光)をアナログ光受信機104に出力する。
【0015】
なお、図1では、送受切り替え器として光サーキュレータ103が用いられた場合を示した。しかしながら、送受切り替え器としてはこれに限らず、例えば、送受切り替え器として光カプラが用いられてもよい。
【0016】
アナログ光受信機104は、光サーキュレータ103からの光を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換する。アナログ光受信機104により得られる受信信号はアナログ信号である。このアナログ光受信機104により得られた受信信号は、ADC105に出力される。
【0017】
このアナログ光受信機104としては、例えば、PD(フォトダイオード)を用いることができる。
【0018】
ADC105は、アナログ光受信機104により得られた受信信号に基づいて、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。このADC105による得られたデジタル信号である受信信号は、相関処理部106に出力される。
【0019】
なお、ADC105は、受信信号のSNR向上のため、受信信号を複数回取得し、当該複数の受信信号に対して平均化処理を行うことで、相関処理部106へ出力する受信信号を得てもよい。
【0020】
相関処理部106は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号、および、ADC105により得られた受信信号に基づいて、当該疑似乱数符号を示す信号と当該受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する。この損失曲線データは、光ファイバ2に沿った距離方向の光損失を示すデータである。この相関処理部106による損失曲線データの算出は、従来から知られた算出方法を適用可能であり、その説明を省略する。この相関処理部106により算出された損失曲線データは、微分処理部107に出力される。
【0021】
微分処理部107は、相関処理部106により算出された損失曲線データに基づいて、微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する。この損失曲線微分データは、光ファイバ2に沿った距離方向の光損失の変化率を示すデータである。この微分処理部107により算出された損失曲線微分データは、差分計算部109に出力される。
【0022】
微分データ取得部108は、光ファイバ2の設置前における損失微分データを取得する。なお、損失微分データは、光ファイバ2が放射線環境下に置かれる前の状態において、光ファイバ2に沿った距離方向の光損失の変化率を示すデータであり、事前に計測される。この微分データ取得部108により取得された損失微分データは、差分計算部109に出力される。
【0023】
差分計算部109は、微分データ取得部108により取得された損失微分データ、および、微分処理部107により算出された損失曲線微分データに基づいて、当該損失微分データと当該損失曲線微分データとの差分を算出する。この差分は、光ファイバ2に沿った距離方向の単位長さあたりの光損失を示す。
また、光送受信機1がファイバ型放射線分布計として機能する場合、差分計算部109は、上記算出した差分に基づいて、吸収線累積量分布を算出する。この吸収線累積量分布は、光ファイバ2に沿った距離方向の放射線量を示す分布である。
【0024】
次に、図1に示す実施の形態1に係る光送受信機1の動作例について、図2を参照しながら説明する。すなわち、以下では、光送受信機1がファイバ型放射線分布計として機能する場合での動作例について示す。
図1に示す実施の形態1に係る光送受信機1の動作例では、例えば図2に示すように、まず、疑似乱数符号生成器101は、疑似乱数符号を生成する(ステップST101)。この疑似乱数符号生成器101により生成された疑似乱数符号を示す信号は、デジタル光送信機102および相関処理部106に出力される。
【0025】
次いで、デジタル光送信機102は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して光サーキュレータ103に送信し、光サーキュレータ103は、当該送信光を光ファイバ2の一端に出力する(ステップST102)。
【0026】
次いで、光サーキュレータ103は、光ファイバ2からの光(後方散乱光)をアナログ光受信機104に出力し、アナログ光受信機104は、当該光を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換する(ステップST103)。このアナログ光受信機104により得られた受信信号は、ADC105に出力される。
【0027】
次いで、ADC105は、アナログ光受信機104により得られた受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換する(ステップST104)。このADC105による得られたデジタル信号である受信信号は、相関処理部106に出力される。
【0028】
次いで、相関処理部106は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号、および、ADC105により得られた受信信号に基づいて、当該疑似乱数符号を示す信号と当該受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する(ステップST105)。この相関処理部106により算出された損失曲線データは、微分処理部107に出力される。
【0029】
次いで、微分処理部107は、相関処理部106により算出された損失曲線データに基づいて、微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する(ステップST106)。この微分処理部107により算出された損失曲線微分データは、差分計算部109に出力される。
【0030】
また、微分データ取得部108は、光ファイバ2の設置前における損失微分データを取得する(ステップST107)。この微分データ取得部108により取得された損失微分データは、差分計算部109に出力される。
【0031】
次いで、差分計算部109は、微分データ取得部108により取得された損失微分データ、および、微分処理部107により算出された損失曲線微分データに基づいて、当該損失微分データと当該損失曲線微分データとの差分を算出し、吸収線累積量分布を算出する(ステップST108)。
【0032】
図3は実施の形態1に係る光送受信機1で扱われる損失データおよび損失曲線データの一例を示している。
図3において、符号31は光ファイバ2の設置前における損失データ(Lo(x))を示し、符号32は損失曲線データ(L(x))を示し、符号33は光デバイス(デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104)の劣化があった場合での損失曲線データ(L(x))を示している。また、図3の例では、符号34に示す箇所が、光パワーが著しく減少している箇所であり、多量被爆箇所である。
この図3に示すように、符号33に示す光デバイスの劣化があった場合での損失曲線データでは、符号32に示す光デバイスの劣化がない場合での損失曲線データに対し、光デバイスの劣化に伴い光パワーが全体的に減少している。
【0033】
図4は実施の形態1に係る光送受信機1で扱われる損失微分データ、損失曲線微分データおよび吸収線累積量分布の一例を示している。
図4において、符号41は光ファイバ2の設置前の損失微分データ({Lo(x)}’)を示し、符号42は損失曲線微分データ({L(x)}’)を示し、符号43は光デバイスの劣化があった場合での損失曲線微分データ({L(x)}’)を示している。また、図4の例では、符号44に示す箇所が、パワーが著しく減少している箇所であり、多量被爆箇所である。
また、図4に示すように、吸収線累積量分布は、E(x)=S{Lo(x)-L(x)}’となる。なお、Sは、センサ用の光ファイバ2の持つ劣化量と放射線量との関係を示す係数([Gy/(dB/m)])であり、事前に計測される。
この図4に示すように、符号43に示す光デバイスの劣化があった場合での損失曲線微分データでは、符号42に示す光デバイスの劣化がない場合での損失曲線微分データに対し、光デバイスの劣化によらず変化がない。
【0034】
このように、実施の形態1に係る光送受信機1では、光ファイバ2の設置前における損失微分データと損失曲線微分データの差分をとることで、放射線照射による光デバイスの劣化の影響を受けず、光損失の計測および放射線量分布の計測が可能になる。すなわち、実施の形態1に係る光送受信機1では、光ファイバ2の設置前における損失微分データと損失曲線微分データの差分をとることで、光デバイスの劣化有無によって、光損失の計測結果および放射線量の計測結果は変わらない。
【0035】
また、従来技術では、光ファイバ2のサイズおよび送信光のパルス幅によって、分解能が制約されていた。
これに対し、実施の形態1に係る光送受信機1では、デジタル光送信機102のビットレートに対応した高分解能データが得られる。そのため、実施の形態1に係る光送受信機1では、微分処理により局所的な被爆量の増加などを検出可能となる。
【0036】
以上のように、この実施の形態1によれば、光送受信機1は、疑似乱数符号を示す信号を出力する疑似乱数符号生成器101と、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して送信する、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光送信機102と、入力された光を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換するアナログ光受信機104と、デジタル光送信機102により送信された送信光を光ファイバ2の一端に出力し、当該光ファイバ2からの光をアナログ光受信機104に出力する送受切り替え器と、アナログ光受信機104により得られた受信信号に基づいて、当該受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するADC105と、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号、および、ADC105により得られた受信信号に基づいて、当該疑似乱数符号を示す信号と当該受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する相関処理部106と、相関処理部106により算出された損失曲線データに基づいて、微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する微分処理部107と、光ファイバ2の設置前における損失微分データ、および、微分処理部107により算出された損失曲線微分データに基づいて、当該損失微分データと当該損失曲線微分データとの差分を算出する差分計算部109とを備えた。
また、実施の形態1によれば、デジタル光送信機102は、OOK変調を行うデジタル光送信機である。
これらにより、実施の形態1に係る光送受信機1は、従来に対し、光損失を高距離分解能で計測可能となる。
【0037】
また、この実施の形態1によれば、差分計算部109は、算出した差分に基づいて、吸収線累積量分布を算出してもよい。これにより、実施の形態1に係る光送受信機1は、従来に対し、放射線量分布を高距離分解能で計測可能となる。
【0038】
実施の形態2.
図5は実施の形態2に係る光送受信機1の構成例を示す図である。この図5に示す実施の形態2に係る光送受信機1は、図1に示す実施の形態1に係る光送受信機1に対し、デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104がデジタル光トランシーバ110により構成されている。この図5に示す実施の形態2に係る光送受信機1におけるその他の構成例については、実施の形態1に係る光送受信機1の構成例と同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0039】
デジタル光トランシーバ110の送信側は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して光サーキュレータ103に出力する。
また、デジタル光トランシーバ110の受信側は、光サーキュレータ103からの光(後方散乱光および漏れ光)を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換する。このデジタル光トランシーバ110の受信側により得られた受信信号は、ADC105に出力される。また、デジタル光トランシーバ110の受信側は、光サーキュレータ103からの漏れ光により後述するLA1043の利得を固定する。
このデジタル光トランシーバ110は、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光トランシーバである。
【0040】
このデジタル光トランシーバ110としては、例えば、SFPの送信ポートと受信ポートを用いることができる。また、デジタル光トランシーバ110としては、SFPに限らず、SFP+,QSFP,SFP28などのようにより高速なものを用いてもよく、OOKデジタル変調を行うデジタル光トランシーバであればよい。このデジタル光トランシーバ110として、例えば、PAM4(4 Pulse Amplitude Modulation)用のデジタル光トランシーバを用いることができる。
【0041】
なお、光サーキュレータ103は、デジタル光トランシーバ110の送信側により送信された送信光の漏れ光であって、LA1043の利得を固定可能な漏れ光を、デジタル光トランシーバ110の受信側に出力する。なお、上記漏れ光は、例えば、-20dB以上である。
【0042】
また、例えば図6に示すように、デジタル光トランシーバ110における受信側は、一般的に、PD1041、TIA(トランスインピーダンスアンプ)1042、および、LA(リミッティングアンプ)1043から構成される。
【0043】
PD1041は、光サーキュレータ103からの光を受信光として受信し、当該受信光を電気信号に変換する。このPD1041により得られた電気信号は、TIA1042に出力される。
TIA1042は、PD1041による変換後の電気信号に基づいて、電気信号の電流を電圧に変換する。このTIA1042による変換後の電気信号は、LA1043に出力される。
LA1043は、TIA1042による変換後の電気信号に基づいて、当該電気信号に対するリミッティングを行う。このLA1043による処理後の電気信号は、受信信号としてADC105に出力される。
【0044】
ここで、LA1043は、平均的な光パワーに応じて利得が増減し、入力された電気信号の電圧振幅をその利得で飽和させるように動作する。
これに対し、漏れ光は、疑似乱数符号で変調された送信光が一定の損失を受けたものであり、平均パワーの時間変動がない。
よって、この漏れ光をLA1043に入力することで、漏れ光の平均パワーに応じてLA1043の利得が決定されることになる。その結果、漏れ光以下で平均パワーに大きく寄与しないレイリー散乱成分は、検出時間に関わらずおよそ一定の利得で出力されることになる。なお、検出時間は、距離に比例する。
【0045】
例えば図7の左側において、符号71は漏れ光成分のTIA1042からの出力パワーを示し、符号72は検出時間がt1である場合でのレイリー散乱成分のTIA1042からの出力パワーを示し、符号73は検出時間がt2(≠t1)である場合でのレイリー散乱成分のTIA1042からの出力パワーを示している。また、符号74は漏れ光成分のLA1043からの出力パワーを示し、LA1043は一定のパワーの漏れ光を出力する。また、符号75は検出時間がt1である場合でのレイリー散乱成分のLA1043からの出力パワーを示し、符号76は検出時間がt2である場合でのレイリー散乱成分のLA1043からの出力パワーを示している。
この図7の左側に示すように、デジタル光トランシーバ110における受信側に常時入力される漏れ光は、レイリー散乱成分よりも入力パワーが大きい。そのため、LA1043では、利得(G)が、この漏れ光を飽和させる利得に固定される。その結果、検出時間がt1の場合でのレイリー散乱成分と検出時間がt2の場合でのレイリー散乱成分は、検出時間の違いに関わらず共通の利得(G)で出力され、アナログ的な値となる。
【0046】
一方、図7の右側に示すように、相関処理では、漏れ光成分は直近の時間(符号77に示すt=0付近)に対応した点でのみ高い相関利得を持つ。そのため、漏れ光成分と疑似乱数符号の相関値が低い時間についてはレイリー散乱成分を検出でき、正しく損失曲線データが得られる。
なお、図7の右側において、符号78は漏れ光による雑音レベルを示している。
【0047】
このように、漏れ光成分によりLA1043の利得を固定することで、より正しく損失曲線データが得られる。
これに対し、実施の形態2に係る光送受信機1において、漏れ光成分が小さい場合または漏れ光成分が無い場合には、想定の動作はできない。
【0048】
すなわち、図8の左側に示すように、漏れ光成分が小さい場合または漏れ光成分が無い場合は、LA1043では、検出時間がt1の場合には、利得(G1)が検出時間がt1である場合でのレイリー散乱成分を飽和させる利得に固定され、検出時間がt2の場合には、利得(G2)が検出時間がt2である場合でのレイリー散乱成分を飽和させる利得に固定される。この場合、図8の右側に示すように、検出時間がt1の場合でのレイリー散乱成分と検出時間がt2の場合でのレイリー散乱成分とで出力パワーがほぼ同じとなってしまい、損失変化がなくなってしまい、損失曲線が正しく得られない。
図8において、符号81は検出時間がt1,t2の場合でのレイリー散乱成分のLA1043からの出力パワーを示している。
【0049】
実施の形態2に係る光送受信機1における上記以外の動作例については、実施の形態1に係る光送受信機1における動作例と同様である。
【0050】
以上のように、この実施の形態2によれば、デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104は、デジタル光トランシーバ110により構成され、デジタル光トランシーバ110の受信側は、LA1043を有し、送受切り替え器は、デジタル光トランシーバ110の送信側により送信された送信光の漏れ光であって、LA1043の利得を固定可能な漏れ光を、デジタル光トランシーバ110の受信側に出力する。
また、実施の形態2によれば、漏れ光は、-20dB以上である。
これらにより、実施の形態2に係る光送受信機1は、実施の形態1に係る光送受信機1における効果に加え、デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104として安価なデジタル光トランシーバ110を用いることが可能であるため、光送受信機1を安価に構成可能となる。
【0051】
実施の形態3.
実施の形態2では、漏れ光を用いてLA1043の利得を固定する場合を示した。これに対し、実施の形態3では、対向先の光送受信機1から送信された送信光(ダミー光)を用いてLA1043の利得を固定する場合を示す。
【0052】
図9は実施の形態3に係る光送受信システムの構成例を示す図である。
光送受信システムは、一対の光送受信機1(第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2)を備えている。
第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2は、同一構成の光送受信機1である。この第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2は、光ファイバ2を介して対向配置されている。すなわち、第1の光送受信機1-1は光ファイバ2の一端側に設けられ、第2の光送受信機1-2は光ファイバ2の他端側に設けられている。なお、図9では、第2の光送受信機1-2の詳細構成については図示を省略している。
【0053】
この図9に示す実施の形態3に係る光送受信システムが備える光送受信機1では、図1に示す実施の形態1に係る光送受信機1に対し、デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104がデジタル光トランシーバ110により構成され、ダミー符号生成器111、セレクタ112、および、光パワー調整部113が追加されている。この図9に示す実施の形態3に係る光送受信システムが備える光送受信機1におけるその他の構成例は、図1に示す実施の形態1に係る光送受信機1の構成例と同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0054】
ダミー符号生成器111は、ダミー符号を生成する。ダミー符号は、対向先の光送受信機1で用いられる疑似乱数符号とは相関のない符号である。このダミー符号生成器111により生成されたダミー符号を示す信号は、セレクタ112に出力される。
【0055】
セレクタ112は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号、または、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号を、デジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。
【0056】
ここで、セレクタ112は、自機で計測が行う場合には、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、セレクタ112は、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号はデジタル光トランシーバ110の送信側に出力しない。
一方、セレクタ112は、対向先の光送受信機1が計測を行う場合には、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、セレクタ112は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号はデジタル光トランシーバ110の送信側に出力しない。
【0057】
デジタル光トランシーバ110の送信側は、セレクタ112により出力された信号に基づいて送信光を生成して光サーキュレータ103に出力する。なお、デジタル光トランシーバ110が、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号で変調した送信光を生成する場合、この送信光をダミー光とも称す。また、ダミー符号が全て「1」から成る符号である場合、ダミー光はCW光となる。
また、デジタル光トランシーバ110の受信側は、光サーキュレータ103からの光(後方散乱光およびダミー光)を受信光として受信し、当該受信光を受信信号に変換する。このデジタル光トランシーバ110の受信側により得られた受信信号は、ADC105に出力される。また、デジタル光トランシーバ110の受信側は、光サーキュレータ103からのダミー光によりLA1043の利得を固定する。
このデジタル光トランシーバ110は、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光トランシーバである。
【0058】
このデジタル光トランシーバ110としては、例えば、SFPの送信ポートと受信ポートを用いることができる。また、デジタル光トランシーバ110としては、SFPに限らず、SFP+,QSFP,SFP28などのようにより高速なものを用いてもよく、OOKデジタル変調を行うデジタル光トランシーバであればよい。このデジタル光トランシーバ110として、例えば、PAM4用のデジタル光トランシーバを用いることができる。
【0059】
このデジタル光トランシーバ110の構成自体は、実施の形態2に示したデジタル光トランシーバ110の構成と同様の構成である。
【0060】
光パワー調整部113は、デジタル光トランシーバ110の送信側における送信光の光パワーを調整する。
なお、光パワー調整部113は、光送受信機1に必須の構成ではなく、光送受信機1に設けられていなくてもよい。
【0061】
なお、図9では、疑似乱数符号生成器101とは別に、ダミー符号を生成するダミー符号生成器111が光送受信機1に設けられた場合を示した。
しかしながら、これに限らず、例えば図10に示すように、ダミー符号生成器111は光送受信機1に設けられず、疑似乱数符号生成器101において、疑似乱数符号の他に、対向先の光送受信機1における疑似乱数符号とは相関のないダミー符号を生成してもよい。この場合、図10に示すように、光送受信機1にセレクタ112は不要である。
【0062】
図10に示す構成の場合、疑似乱数符号生成器101は、自機で計測が行う場合には、疑似乱数符号を生成し、当該疑似乱数符号を示す信号をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、疑似乱数符号生成器101は、ダミー符号は生成しない。
一方、疑似乱数符号生成器101は、対向先の光送受信機1が計測を行う場合には、ダミー符号を生成し、当該ダミー符号を示す信号をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、疑似乱数符号生成器101は、疑似乱数符号は生成しない。
【0063】
次に、実施の形態3に係る光送受信システムの動作例について説明する。ここでは、第1の光送受信機1-1が計測を行う場合について説明する。
第1の光送受信機1-1が計測を行う場合、第2の光送受信機1-2が、光ファイバ2を介して第1の光送受信機1-1に向かって、ダミー光を送信する。このダミー光の基となるダミー符号は、第1の光送受信機1-1で用いられる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号である。
そして、第1の光送受信機1-1は、この第2の光送受信機1-2からのダミー光により、自機のデジタル光トランシーバ110の受信側が有するLA1043の利得を固定する。すなわち、実施の形態3に係る光送受信システムでは、実施の形態2に示したような漏れ光を用いずに、ダミー光を用いてLA1043の利得固定を行う。
【0064】
なお、ダミー光のレベルが高すぎる場合、相関処理後にノイズフロアが高くなり計測不能と成り得る。そのため、このような場合には、光パワー調整部113によりデジタル光トランシーバ110の光パワーを低下させる調整を行い、計測可能なレベルに調整する。
【0065】
実施の形態3に係る光送受信機1における上記以外の動作例については、実施の形態1に係る光送受信機1における動作例と同様である。
【0066】
以上のように、この実施の形態3によれば、デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104は、デジタル光トランシーバ110により構成され、デジタル光トランシーバ110の受信側は、LA1043を有し、送受切り替え器は、光ファイバ2を介して入力された当該光ファイバ2の他端側に設けられた光送受信機1からの送信光であって、自機で用いる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号に基づく送信光を、デジタル光トランシーバ110の受信側に出力する。
また、この実施の形態3によれば、光ファイバ2の他端側に設けられた光送受信機1で用いられる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号を示す信号を出力するダミー符号生成器111と、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号、または、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号を出力するセレクタ112とを備え、デジタル光トランシーバ110の送信側は、セレクタ112により出力された信号に基づいて送信光を生成して出力する。
または、この実施の形態3によれば、疑似乱数符号生成器101は、疑似乱数符号を示す信号、または、光ファイバ2の他端側に設けられた光送受信機1で用いられる疑似乱数符号とは相関のないダミー符号を示す信号を出力し、デジタル光トランシーバ110の送信側は、疑似乱数符号生成器101により出力された信号に基づいて送信光を生成して出力する。
これらにより、実施の形態3に係る光送受信機1は、実施の形態1に係る光送受信機1における効果に加え、デジタル光送信機102およびアナログ光受信機104として安価なデジタル光トランシーバ110を用いることが可能であるため、光送受信機1を安価に構成可能となる。また、実施の形態3に係る光送受信システムは、実施の形態2に係る光送受信機1に対し、送受切り替え器における漏れ光レベルなどのスペック要求を緩和可能となり、光送受信機1のレベル調整性能を向上することが可能となる。
【0067】
実施の形態4.
図11は実施の形態4に係る光送受信システムの構成例を示す図である。
図11に示す実施の形態4に係る光送受信システムが備える光送受信機1は、図9に示す実施の形態3に係る光送受信システムが備える光送受信機1に対し、通信機能部114が追加されている。この図11に示す実施の形態4に係る光送受信システムが備える光送受信機1におけるその他の構成例については、図9に示す実施の形態3に係る光送受信システムが備える光送受信機1の構成例と同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0068】
なお、ADC105により得られた受信信号は、相関処理部106および通信機能部114に出力される。
【0069】
通信機能部114は、差分計算部109による算出結果を通信信号(TX)としてセレクタ112に出力する。
また、通信機能部114は、ADC105により得られた受信信号から、対向先の光送受信機1からの通信信号(RX)を取得する。そして、通信機能部114は、上記取得した通信信号を差分計算部109に出力する。
【0070】
なお、セレクタ112は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号、または、通信機能部114により出力された通信信号(TX)を、デジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。
【0071】
ここで、セレクタ112は、自機が計測を行う場合には、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、セレクタ112は、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号および通信機能部114により出力された通信信号(TX)はデジタル光トランシーバ110の送信側に出力しない。
また、セレクタ112は、対向先の光送受信機1が計測を行う場合には、ダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、セレクタ112は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号および通信機能部114により出力された通信信号(TX)はデジタル光トランシーバ110の送信側に出力しない。
一方、セレクタ112は、対向先の光送受信機1に対して通信を行う場合には、通信機能部114により出力された通信信号(TX)をデジタル光トランシーバ110の送信側に出力する。すなわち、この場合には、セレクタ112は、疑似乱数符号生成器101により出力された疑似乱数符号を示す信号およびダミー符号生成器111により出力されたダミー符号を示す信号はデジタル光トランシーバ110の送信側に出力しない。
【0072】
また、デジタル光トランシーバ110の送信側は、セレクタ112により出力された信号に基づいて送信光を生成して光サーキュレータ103に出力する。
【0073】
また、差分計算部109は、自身の算出結果、および、通信機能部114により取得された通信信号(RX)である対向先の光送受信機1における差分計算部109での算出結果に基づいて、算出結果の統合を行う。
【0074】
なお、ADC105は、常時、受信信号を相関処理部106および通信機能部114に出力してもよいし、セレクタ112の切り替えに応じて、相関処理部106または通信機能部114を出力先として切り替えて出力を行ってもよい。
ADC105が出力先の切り替えを行う場合、自機が計測を行う場合には受信信号を相関処理部106に出力し、対向先の光送受信機1に対して通信を行う場合には受信信号を通信機能部114に出力する。
【0075】
次に、図11に示す実施の形態4に係る光送受信システムの動作例について、図12を参照しながら説明する。以下では、第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2がファイバ型放射線分布計として機能する場合での動作例について示す。
まず、一方の光送受信機1が吸収線累積量分布の計測を行う(ステップST201)。例えば、第1の光送受信機1-1が吸収線累積量分布の計測を行う。この際の計測動作は、実施の形態3で示した動作と同様である。
【0076】
その後、他方の光送受信機1が吸収線累積量分布の計測を行う(ステップST202)。例えば、第2の光送受信機1-2が吸収線累積量分布の計測を行う。この際の計測動作は、実施の形態3で示した動作と同様である。
【0077】
そして、第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2において吸収線累積量分布の計測が完了した後、一方の光送受信機1が他方の光送受信機1による計測結果を取得する(ステップST203)。例えば、第1の光送受信機1-1が第2の光送受信機1-2による計測結果を取得する。この際、第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2は通信モードとして動作し、第2の光送受信機1-2が、自身で算出した吸収線累積量分布を示すデータを通信信号(TX)として送信し、第1の光送受信機1-1が、当該通信信号(TX)を通信信号(RX)として取得する。これにより、第1の光送受信機1-1は、第2の光送受信機1-2による吸収線累積量分布を示すデータを取得することができる。
【0078】
その後、一方の光送受信機1が吸収線累積量分布の統合を行う(ステップST204)。例えば、第1の光送受信機1-1が吸収線累積量分布の統合を行う。この際、第1の光送受信機1-1は、自身で算出した吸収線累積量分布と、第2の光送受信機1-2で算出された吸収線累積量分布とを統合する。
【0079】
ここで、例えば図11に示すように、第1の光送受信機1-1側である光ファイバ2の一端の座標をx=0とし、第2の光送受信機1-2側である光ファイバ2の他端の座標をx=L2とする。また、その中間の位置をx=L1とする。
【0080】
この場合、まず、第1の光送受信機1-1は図13の左側に示すような損失曲線データを算出し、第2の光送受信機1-2は図13の右側に示すような損失曲線データを算出する。
なお、図13において、符号131-1,131-2は光ファイバ2の設置前における損失データ(Lo(x))を示し、符号132-1,132-2は損失曲線データ(L(x))を示している。この図13の例では、符号133-1,133-2に示す箇所が、光パワーが著しく減少している箇所であり、多量被爆箇所である。
【0081】
その後、第1の光送受信機1-1は図14の左側に示すような損失曲線微分データおよび吸収線累積量分布を算出し、第2の光送受信機1-2は図14の右側に示すような損失曲線微分データおよび吸収線累積量分布を算出する。
なお、図14において、符号141-1,141-2は光ファイバ2の設置前の損失微分データ({Lo(x)}’)を示し、符号142-1,142-2は損失曲線微分データ({L(x)}’)を示している。この図14の例では、符号143-1,143-2に示す箇所が、パワーが著しく減少している箇所であり、多量被爆箇所である。
【0082】
そして、第1の光送受信機1-1は、図15に示すように、双方の光送受信機1-1,1-2で結果が得られている座標で吸収線累積量分布の接続を行うことで、データの統合を行う。図14の例では、第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2はともにx=L1の吸収線累積量分布の計測を行っている。そのため、この場合には、第1の光送受信機1-1は、このx=L1で互いの吸収線累積量分布の接続を行うことで、データの統合を行うことができる。
なお、図15において、符号151は光ファイバ2の設置前の損失微分データ({Lo(x)}’)(統合後)を示し、符号152は損失曲線微分データ({L(x)}’)(統合後)を示している。
【0083】
なお、上記では、第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2がファイバ型放射線分布計として機能する場合での動作例について示した。しかしながら、これに限らず、第1の光送受信機1-1および第2の光送受信機1-2が光損失の計測を行う場合には、光損失の統合を行ってもよい。
【0084】
なお、上記では、図9に示す実施の形態3に係る光送受信機1に対し、通信機能部114を追加した場合を示した。しかしながら、これに限らず、実施の形態2に係る光送受信機1または図10に示す実施の形態3に係る光送受信機1に対し、通信機能部114およびセレクタ112を追加してもよく、上記と同様の効果が得られる。
【0085】
なお、実施の形態2に係る光送受信機1に対して、通信機能部114およびセレクタ112を追加する場合、すなわち、漏れ光を用いてLA1043の利得を固定する構成に対して通信機能部114およびセレクタ112を追加する場合において、一方の光送受信機1が計測を行う場合には、他方の光送受信機1は、送信光の出力を0、または、デジタル光トランシーバ110の送信側をオフとした状態とする。
【0086】
以上のように、この実施の形態4によれば、差分計算部109による算出結果を示すデータを通信信号として出力し、アナログデジタル変換器105により得られた受信信号から、光ファイバ2の他端側に設けられた光送受信機1からの通信信号を取得する通信機能部114と、疑似乱数符号生成器101により生成された疑似乱数符号を示す信号、または、通信機能部114により出力された通信信号を出力するセレクタ112とを備え、デジタル光送信機102は、セレクタ112により出力された信号に基づいて送信光を生成して出力し、差分計算部109は、算出結果、通信機能部114により取得された通信信号に基づいて、算出結果の統合を行う。これにより、実施の形態4に係る光送受信システムは、実施の形態2,3に係る光送受信機1における効果に加え、計測距離のダイナミックレンジを向上できる。
【0087】
最後に、図16を参照して、実施の形態1~4に係る光送受信機1のハードウェア構成例を説明する。以下では、実施の形態1に係る光送受信機1のハードウェア構成例について説明するが、実施の形態2~4に係る光送受信機1のハードウェア構成例についても同様である。
光送受信機1における疑似乱数符号生成器101、ADC105、相関処理部106、損失曲線データ算出部、微分処理部107、および、差分計算部109の各機能は、処理回路51により実現される。処理回路51は、図16Aに示すように、専用のハードウェアであってもよいし、図16Bに示すように、メモリ53に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)ともいう)52であってもよい。
【0088】
処理回路51が専用のハードウェアである場合、処理回路51は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。疑似乱数符号生成器101、ADC105、相関処理部106、損失曲線データ算出部、微分処理部107、および、差分計算部109の各部の機能それぞれを処理回路51で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路51で実現してもよい。
【0089】
処理回路51がCPU52の場合、疑似乱数符号生成器101、ADC105、相関処理部106、損失曲線データ算出部、微分処理部107、および、差分計算部109の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ53に格納される。処理回路51は、メモリ53に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、光送受信機1は、処理回路51により実行されるときに、例えば図2に示した各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを備える。また、これらのプログラムは、疑似乱数符号生成器101、ADC105、相関処理部106、損失曲線データ算出部、微分処理部107、および、差分計算部109の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ53としては、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0090】
なお、疑似乱数符号生成器101、ADC105、相関処理部106、損失曲線データ算出部、微分処理部107、および、差分計算部109の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、疑似乱数符号生成器101については専用のハードウェアとしての処理回路51でその機能を実現し、ADC105、相関処理部106、損失曲線データ算出部、微分処理部107、および、差分計算部109については処理回路51がメモリ53に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0091】
このように、処理回路51は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0092】
なお、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示に係る光送受信機1は、従来に対し、光損失を高距離分解能で計測可能となり、光損失を計測可能な光送受信機1などに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0094】
1 光送受信機、1-1 第1の光送受信機、1-2 第2の光送受信機、2 光ファイバ、51 処理回路、52 CPU、53 メモリ、101 疑似乱数符号生成器、102 デジタル光送信機、103 光サーキュレータ(送受切り替え器)、104 アナログ光受信機、105 ADC(アナログデジタル変換器)、106 相関処理部、107 微分処理部、108 微分データ取得部、109 差分計算部、110 デジタル光トランシーバ、111 ダミー符号生成器、112 セレクタ、113 光パワー調整部、114 通信機能部、1041 PD、1042 TIA、1043 LA。
【要約】
疑似乱数符号を示す信号を出力する疑似乱数符号生成器(101)と、疑似乱数符号を示す信号に基づいて送信光を生成して送信する、1Gbit以上の送信が可能なデジタル光送信機(102)と、入力された光を受信光として受信して受信信号に変換するアナログ光受信機(104)と、送信光を光ファイバ(2)の一端に出力し、当該光ファイバ(2)からの光をアナログ光受信機(104)に出力する送受切り替え器と、受信信号をデジタル信号に変換するADC(105)と、疑似乱数符号を示す信号とADC(105)により得られた受信信号との相関処理を行うことで損失曲線データを算出する相関処理部(106)と、損失曲線データに基づいて微分処理を行うことで損失曲線微分データを算出する微分処理部(107)と、光ファイバ(2)の設置前における損失微分データと損失曲線微分データとの差分を算出する差分計算部(109)とを備えた。
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