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特許7696541堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20250616BHJP
   E02B 3/12 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E02B3/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024214425
(22)【出願日】2024-12-09
【審査請求日】2024-12-09
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509270904
【氏名又は名称】冨田 穣
(72)【発明者】
【氏名】冨田 盟子
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050456(JP,A)
【文献】特開2024-040608(JP,A)
【文献】特開2016-164344(JP,A)
【文献】特開2013-256833(JP,A)
【文献】特開2013-092033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E02B 3/04-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の堤防の天端高さに高さを合わせて、背面に、一体的に高さ寸法に比し底辺寸法が大とした横長形状の津波避難シェルターを設けるもので、前記津波避難シェルターの天端をほぼ水平の平らな面とすることで越流を滑らかな水流とし巻き込みの渦流を軽減し、前面となる堤防を盾とし、背面に位置することで津波の直撃波力を回避でき、前記堤防に係る転倒モーメントを受け持つことで後ろ盾となって支える堤防補強の役割を果たし、これら補強から堤防の転倒、欠損、破堤を回避できるとし、堤防の長い延長を利用して延長方向に前記シェルターを延ばすことができるとし、津波進入時には出入口高さで水面を張り、津波で水没しても、水中で生存できる必要空気体積を有する気密性の上部閉塞の中空構造で、同時に2人、2輪が飛び込める広さの幅を確保した出入口を陸側に設けた非密閉構造体とし、このことで躯体壁面に大きな曲げモーメントを受けないことから壁厚を比較的薄くでき、それでもコンクリート躯体重量が水没時の躯体に掛かる浮力に勝り浮上しないとし、長さ方向の任意の両端部に端部壁を設け中空の箱型を形成し、津波波力に堤防と前記シェルターが前面と背面で重なることで堤防の補強、決壊防止ともなることを特徴とした堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【請求項2】
開放構造の出入口のシェルター内の近傍部を、出入口高さよりやや高いプール壁で平面視コの字形に囲うこと、または両端部の端部壁まで延長して囲うことで、漂流物の侵入を緩和するとともに一時的に津波水の溜まり場を形成し、このことで津波の直撃波を緩和できるダンパーとして貢献するとともに、大きな津波には溜まり場のプール壁高さで水面を張ることで前記シェルターの床高さからの空気を内部空気として逃さない、すなわち圧縮空気とすることで内部保持生存空気体積を前記囲いのない開放構造に比べて増やすことができるとしたことを特徴とする請求項1に記載の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【請求項3】
前記津波避難シェルターの天端上を堤防管理用道路または一般車両、自転車の通行に供することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【請求項4】
高さに限界があるとした既設堤防天端高さに対して、少しでも高い津波高さに対応するとしたもので、背後の津波避難シェルターの転倒抵抗モーメントの範囲内で設けることができるとした小堤防を天端上に設置すること、または既存堤防天端を取り入れて嵩上げすること、あるいは背後地にシェルターを延長することで転倒抵抗力を増やすことができ、さらに高くなる小堤防を設置できるとしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【請求項5】
より迅速な避難に資するため民家の方向にシェルターを伸長するもので、堤防の直角方向に拡張または伸長するとしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【請求項6】
より迅速な避難に資するため民家の方向にシェルターを伸長するもので、堤防の直角方向に拡張または伸長するとしたことを特徴とする請求項3に記載の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【請求項7】
より迅速な避難に資するため民家の方向にシェルターを伸長するもので、堤防の直角方向に拡張または伸長するとしたことを特徴とする請求項4に記載の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波が急襲する沿岸地域において、既存堤防の背面で一体とすることで津波の波力の直撃を回避し、水中となっても内部の生存空気量を保持でき、住宅に近いことから避難が早いとする津波避難シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
来る南海トラフ巨大地震に伴う津波では32万人の死者が予測されている。内閣府の2011年の予測発表から10年が経つというのに何万人が助かるようになったのか、成果の公表が待たれる。10mの高防潮堤建設だけでは海岸線延長が長く国家財政が破綻する。かつ海が見えず、住民の反対が大きい。かといって、何もしないで良いというわけではない。高台移転は莫大な費用と労力が掛かる。津波タワーも莫大な費用が掛かる。5分で高さ10mの津波が来襲するというのに、「逃げ切れ」との掛け声、住民を集めて高所、高台に逃げるテレビ用避難訓練など全く的外れといえる。既存堤防を利用すれば、沿岸近くの住民の避難も早く多くが助かる。特許情報プラットホームで検索したところ「防潮堤 シェルター」で1件、「堤防 シェルター」で9件あった。うち、該当するのが4件あった。特許文献1は越流を許さない新たな高堤防を盛土で築くものであり、かつシェルターを堤防内部に単に洞穴構造で設けるもので浸水では土塁が崩れる。特許文献2および特許文献3も新築で規模、費用が過大すぎ、かつ空間が大きく浮力で浮く可能性がある。3棟構築のように途切れ途切れでは本来の堤防の役割を持っていない。特許文献4はさらに大規模で、堤防内部にアパート、学校、ホテルなど形成するもので費用も膨大で論外といえる。本願は全国津々浦々にある高さの低い既存の堤防を活用し、背後にシェルターを一体とすることで費用的にも廉価で、長い堤防延長を生かして多くの堤防沿岸住民を救うことができるとしたもので異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-225996
【文献】特開2024-040608
【文献】特願2016-164344
【文献】特開平04―309611
【0004】
【文献】中川工業所論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
津波被害者予測の死者32万人、犠牲者100万人を救うことが課題であり命題である。32万人は津波が来襲する海岸沿いに住んでいる。そこで、先人が築いた全国津々浦々の海岸線に配備されている堤防を活用することが最も自然な発想であり、最も効果的であると考える。堤防は、海沿いにあり、当然沿岸の津波来襲地域にあり、このことは津波被害地域にあるということであり、被害人数のほとんどがそこに住み最も影響を受ける。海辺にあり、住民に密接、身近である。沿岸地域を囲んで堤防延長も長い。重さもあり、波力に対して頑丈である。ただ、高さが足りないだけである。高さが足りないということで役に立たないと切り捨てるのは短絡すぎる。堤防高さを超える分の高さだけが不足しているにすぎない。でも、10m高さの高防潮堤とするにはさすがに無理がある。そこで、この高さ不足を機能で補うことを考えた。すなわち、水没しても空気を保持して生存できる津波避難シェルターと堤防とを一体、兼用工作物とすれば、堤防の弱点を補うことができ、高い津波に効果のない長物とみられていた堤防が生き返り、32万人を救う光明が見えると考えた。
【0006】
内閣府発表で32万人の死者が予測される津波だが、この10年間の対策で何万人の命が助かることになったのか成果の公表が待たれる。まさか東京電力福島第一原発の二の舞ではないと思うが、津波が来るまではバレない、来ない、来るはずがないという神頼み、おまじない頼みではないのか。東京電力の当時の社長は裁判で、津波が予見できたのに対策を怠ったということで、有罪となった。堤防の管理者は、告発され被告にならないためにも、予見される10mの津波であれば堤防を10m以上に嵩上げする必要がある。しかし進捗してないように感じる。予見されているのに実施されていないとなると、東京電力の社長の有罪例から、堤防管理者の国、自治体の長が有罪となることは容易に想定できる。いつもの想定外という常套の言い訳は聞き飽きた。住民は命の危険に晒されたままだ。イスラエルによるガザ地区住民の命の軽さ、死に晒された命を放置する現状に似ていないか。堤防の嵩上げのほかに津波対策で提唱されているのは、津波タワー、高台移転があるが、特に津波タワーでは、最大被害が予測される真冬真夜中の熟睡中の時間帯に32万人中何人がたどり着けるというのか。費用対効果は極度に低い、ゼロともいえる。最大被害が真冬真夜と予測されているのに、対策は最悪を想定してない。真冬真夜中にたどり着けない高齢者、妊婦、車いす使用者を置き去りにした対策でもあり税金を使う予算計上で著しく公平性を欠くといえる。タワーの入り口は不信者防止柵に鍵がかかっている。常駐、宿直の管理人費用が嵩みエレベーターがあるとしても非常用電源、法定点検費、更新費はままならない。高さ35mの津波タワーなら別だがそれ以下では助からないことも。想定外の嵩上げ対応をするにはタワーの割り増し建設費も倍増する。都度の予測見直しで高さが足りなければ危険なむしろ無用の建造物となる。まさしく税金の無駄使い。どの程度の高さなら命が保証とかは全くない。死ねば想定外の高さだったというだけだ。しかも町並みはたやすく流され壊滅する。少なくとも住民を命の危険に晒してはならない。これでは国土強靭化にならない。過去の事例、特に東日本大震災から学ばなくてはならない。高台移転は、町全体が移転するのではなく役場だけが移転している。町の賑わい、住民を見捨てていいのか。先の能登水害で中3女子の行方を必死に捜索する父親の姿があまりにも悲しかった。10日後に海上で漁船によりたまたま発見されて安堵したのだが、家族がバラバラになるということは如何に悲惨なことかわかった。役場職員が助かってもその家族、一般住民の多くが行方不明となっては悲劇が待っている。勤務時間外の1日の多くの残り16時間は平地にいる。何を守っているのか。重要書類があるにしてもデジタル化で倉庫はいらないのに。住民台帳にしてももはや住民はこの世にはいないのに。捜索人数、費用、期間も際限がない。高台移転は再考を要する、もしくは移転するにしても税金を納めている住民から先に移転する、下の平地の住民の命を救う対策も並行して行う必要がある。
【0007】
高防潮堤建設も全国津々浦々に適応するには費用が莫大すぎることは理解できる。そこで、先人により全国津々浦の海岸線に沿って設置されている既存の堤防を活用できないかを考える。堤防は、海岸線に沿って長きにわたる連続性があり、コンクリートの硬さで頑丈、耐久に優れる。重量があり浮き上がらず、当然波力に対する耐力も十分である。ただし大津波の高さに高さが足りないのが最大の弱点である。津波は堤防のはるか上を越流するのでこのままでは越流、あるいは破堤で町全体が呑み込まれてしまう。やはり低い堤防では町の住民の命は救えない。特に狭い入り江のような陸前高田市では一網打尽の無残な姿であった。そこで、津波に水没しても空気さえ保持できればせめて人は生きられると考える。東日本大津波の場合に比べて波高の南海トラフ巨大津波では、6時間に6波の繰り返し予測があり、水没時間は有限ですぐ引き潮となり空気が供給される。堤防は重さ、剛度は十分である。高さだけが足りない。一方、空気を含むシェルターは人の生存に役立つ。まず、堤防の重さ、剛度の背後に隠れて一体となって支えるシェルターの抵抗力と組み合わせることで、大きな波力の影響を一体となって回避できる。長い堤防延長と一体となったシェルターを考えることができる。生活圏の直近のシェルターにいち早く逃げ込むことができる、また低い堤防、越流で弱い堤防、古い堤防を、破堤から補強できるという大きなメリットがある。1箇所でも破堤すれば重さ、剛度に優れるといえど一巻の終わりである。町を離れたくない、希望者人数分に対処できる。目前の堤防は日常生活にも馴染んでいて避難も早い。何より費用が安く、全国津々浦々どの地域でも適用でき、希望する地域が名のりを上げれば国土強靭化で比較的予算もつきやすく、多くの人を救うことができ、不安もなく安心な日々を送ることができる。なんと幸せなことか。特に、若い人、未来のある小学生の命を奪ってはならない。東日本大津波の大川小学校のニュースが一瞬で世界中を駆け巡った。教員も裁判でつらい。この苦しみを繰り返してはならない。町並みは犠牲になるとしても一時的で、命さえあれば生活はまた復旧できる。生き残った人が多いほど新しい街の復興が期待できる。例えば、土地を集約して高い堅固な建物に入れ替えることも逆の意味可能である。災害に強い新しい街に生まれ変わる。人々の暮らし、地域生活の安全が図れる。
堤防管理者も、弱く低い堤防でも多くの命を救うことに貢献できるとなれば安堵し、積極的になる。想定外だったといういつもの慣用句の言い訳はいつまでも容認されない。人の役に立つ、貢献できるということはなんと尊いことか。国土強靭化に最適解を与えるといっても過言でない。
【0008】
そこで、多くの命を救うこと、身近にあり、廉価であり、さらには最大被害の深夜には多くは自宅にいることは明らかであり、住民の安全を含む切れ目のない24時間を通した人々の暮らし、地域生活の安全が図れるとした津波シェルターを実現化することこそが課題解決の一助となるといえる。津波は、いつどこでどの時間帯に来襲するかわからない。津波避難困難地域では、「逃げ切る」と提唱されているが、逃げ切れば助かるのは当たり前でほとんどの人は逃げ切れない。騙されてはいけない。特に高齢者、妊婦、車いす使用者の災害避難弱者は逃げ切れない。自己責任で知らないというのは行政としてあまりにも酷すぎる。一方、日常生活に目を向けると車は特に地方では仕事、買い物、通院の足に欠かせない。車で遠くに逃げられればいいが、幹線道路に集中すると渋滞に巻き込まれる。何時ともわからない津波であるが、来る南海トラフ巨大地震に伴う津波は、内閣府の発表で最大津波高さ34.4m、死者32万人、死傷者100万人が予測されている。沿岸部では高さ10mの津波が2~5分で急襲するとされ、最大被害は、真冬、真夜中の深夜である。発表から10年、そのうちの何万人が助かるようになったのか。近年、関東大震災での大津波の映像が発見されたところ。警告ばかりで、膨大な命をどう救うのか本当の責任者の顔が見えないのも問題を解決しない根本原因。あれやこれやと議論、検討、研究ばかりで、これが仕事をしている気分で自己満足している。結果を見出すことが仕事である。これを世間では小田原評定という。それでも、避難所は32万人の安置所に役立つ。人数分が足りているのか今さらながら検証、公表が必要だ。火葬場の用地取得、建設の進捗率の発表も待たれる。身元特定証明書がないと火葬もできない。DNA鑑定、歯形照合、指紋照合など事務手続きで1年~3年待ち、腐敗しないよう冷凍倉庫の建設も急がれる。こういう非常時、大災害時を見据えて顔写真入りマイナンバーカードが身元特定に有効であることを政府は積極的にPRすべきだ。まさか何時までも放置するつもりではないと信じたいが。英知はないのか。早く対処すれば人々はそれだけ日々安心して暮らせるというのに。10年間放置した責任は軽くない。といっても責任者がいないのだからどこ吹く顔。先の東日本大震災の津波は、地震後最短で15分後、多くは1時間後の来襲で避難余裕があったといえるが、南海トラフ巨大地震、日本海巨大地震による津波では波形の立ち上がりが急峻で全くそうはならない。奥尻島沖津波のように1分の急襲では、外に避難する時間、猶予時間などさえない。実際の津波で学んできたはずだ。6時間に及んで6波が繰り返し襲ってくる。1日のうちいつ来襲するか分からないので、24時間備えなくてはならない。でも、その予期不能の残酷な津波であるが、来襲はいつも決まりきって地震の揺れの後で、という自然秩序、ルールを守り、引き潮、轟音などで事前予告をする正義感がある。これに活路を見出し答えなくてはならない。津波来襲が5分後という意味は、揺れが収まるのが地震発生後2、3分として、引き算で逆に逃げる猶予は3、2分あるといえばあるし、ないといえばない。正確とする地震の解析に時間と予算を費やし、それが仕事とする自己満足に浸り、避難警告システムが最速で地震発生後の3分後に発表したのでは多くは時すでに遅し、である。小学生にも分かる。沿岸地域の生死の境界にある住民には何の役にも立たないことを知るべきである。最大級の大きな地震発生、とのけたたましいサイレン、アナウンスでもいい、イスラエル、パレスチナの数秒後のミサイル警報サイレンなどを見習い、瞬時に自動発信されるべきである。津波被害の甚大さはミサイル空襲より桁外れに大きいのだから。正確とされるシステムの作成責任者は、正確さには責任を持つが命の助けに役立つかどうかまでは責任を持ってないともいえる。先のトンガ火山噴火による津波警告もほとんどの人が避難しなかったと答えている。高知で船舶が転覆したというのに。直ちにけたたましいサイレンが鳴らないと尻に火がつかない。即座に、地震の揺れの大きさから自己判断、自己防衛する覚悟、訓練を常々身に着けていなければならない。死ねば後悔することもないといえるが後悔しないためにも少なくとも1つは自分ならどうすると決めておく必要がある。やはり、ゴーという轟音、地響き、高波が目前に迫らないことには我がこととして危機回避のスイッチが入らないようだ。寒い冬はあきらめが先立ち思考停止になる。入浴中とか就寝中ではパジャマを着替える暇はない。ぐずる子供に靴を履かせるだけでも5分はすぐ経過する。ともかく考えている猶予はない。防災リュックを抱えて飛び出さなければならない。本音かどうかわからないがあきらめているという人も多いのも確か。もちろん自分だけは何とかなる、大丈夫というバイアスから脱却しなければならない。瞬時の無条件反射、反復行動トレーニングが必要である。住宅事情も影響する。一般住宅では、木端みじん、ひとたまりもない。堅固なマンションでは、高い階であれば助かると考えられるが、津波高さが予想高さ以下である保証は一つもない。垂直避難、屋上避難で助かると考えがちだが、結果としてみれば津波高さより低い建物、その屋上では津波に丸呑みされる。押し寄せる津波の恐怖、容赦ない残酷さはいかほどであったか。先の地方銀行の屋上避難で落命し裁判があった。国は何を考えているのか。「ともかく逃げ切る」との避難計画はいかがなものか。24時間のうち、在宅は半分の時間として、周辺に高く堅固な建物がない地域での避難は容易でない。それでも、在宅時、勤務時、学校なども含めて日常生活の24時間、真冬真夜中を含む四六時中、危険を予想していなければならない。ともかく、住民の近くに避難シェルターを設置することが、心の平穏も含めて課題解決に向かう。一方、明日にも来襲するかもしれない津波に待っていられないとする人、自助の人には、割り切って家庭用、個人用のシェルターを各自設置することも瞬時の避難が可能で解決の一助になる。1人当たり20万円~100万円の予算で命が助かるとなれば一考の価値ありといえる。というより墓場にお金は持っていけない。生きているうちに活きた使い方、一世一代の決断だ。また地域の地盤が少しでも高いところのシェルター、たとえば地盤高1、2mほどでも、新鮮な空気の入れ替えが早いので生存の可能性が高まる。
【0009】
堤防と一体となった津波避難シェルターは、沿岸地域の住民にとって、身近、直近となる。あらかじめ住民主体で自分の飛び込む専用シェルターの入口を振り分けておけば、迅速避難が可能である。留守を預かる家族を忘れてはならない。1日のうち、高台から帰ってきた役場の人も8時間の仕事で、家には不在で、帰宅後の残る16時間の危険な時間帯が多くを占める。シェルターで24時間を通した安全、安心時間数が増え、命を守る公平な成果、可能性の実効値が上がるといえる。このように地震、津波が24時間中のいつ来襲してもいいように家族として迅速な避難に備える。家族でバラバラにならないことが大切。漂流してバラバラだと捜索費用も数倍となる。単に遭難するという個人の問題だけでなく、遭難すれば、膨大な国家費用が掛かることを認識すべきである。いつ、どこで襲われるか分からない津波、自分だけは大丈夫というバイアスに対して家族主体の24時間の発想トレーニングができる。非常時の備えは日頃からの思考、訓練があってこそ役立つもの。いつどこで襲われるか分からない津波に対して、切れ目があってはいけない。いつでもどこでも、24時間を途切れることなく対応できるという課題が解決できる。個人、家族単位で助かるとなれば、想定力、想像力が必要である。我々には東日本での貴重な事例があるのだから。他人任せでは同じ結果となることは容易に想定できる。立派な教育を受けていても、不作為で命を失ってはならない。この10年、何を考え、何を行動したのか、行動しようとしたのか。その避難方法、行動は逆に危険にさらしているのではないか。果たして何人の将来ある若い命を救うことができるようになった
のか厳しい自己評価が求められる。
【0010】
南海トラフの津波は、沿岸地域では、6時間にわたって6波が繰り返すので、繰り返す6波は1時間に1波として、半分の時間は波が引くため、引き潮時の水位がシェルター出入口高さより低くなると新鮮な空気が自動的に補充、入れ替わるので、半分の30分の浸水に耐えればよいという考えがある。危機回避のヒントとなる。すなわち、地域特性値、0.5m3/人・時を用いることができる。子供、高齢者は肺活量が少ないのでさらにその半分、0.25m3/人・時とすることも勝手な解釈で可能である。人は水中で空気なしでは生きられない。ほぼ即死といえる。そう考えると、極端にはシェルターがないよりはあった方がまし、と考えることもでき、より少ない体積の、0.5m3、0.3m3、0.25m3の現実的な数値、定員オーバー分に対して採用もありうる。いつとも言えない津波なので季節に応じた装備、冬の寒さ対策が必要である。このように、地域ごと、人員ごと、季節ごとに応じた対応を可能とする課題が解決できる。出入口は下部に設けるので内部の排水が早く、平素の湿気、結露が少なく、構造物で問題の多い維持管理、腐食対策の課題が解決できる。内空に余裕があれば、内にゴムボート、空気マットのようなものを準備しておけば高齢者などの避難弱者には浸水があっても濡れないという課題は解決できる。特に冬の時期には低体温症が懸念され直接体が冷たい水に触れないよう空気マット、毛布でもありがたい。季節ごとの最適対応を考えておく。生活の場面、人数に応じた避難を可能とすることでさらに広い地域の課題を解決できる。海に直近する職場の魚市場では、かたずをのむ。目の前の直近の避難であり、ほぼ日常生活の中で安心安全が確保できる。身近、早い、ともかく簡明である。32万人の多くの命を救うにはいうことが大事である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルターは、既存の堤防の背面に一体的に津波避難シェルターを設けるもので、重量のある堤防を盾とし、背面に位置することで津波の直撃波力を回避でき、かつ前記シェルターにかかる転倒モーメントによる転倒を回避できるとし、堤防の長い延長を利用して延長方向に前記シェルターを延ばすことができるとし、津波進入時には出入口高さで水面を張り、津波で水没しても、水中で生存できる必要空気体積を有する気密性の上部閉塞の中空構造で、出入口を陸側に設けた非密閉構造体とし、このことで躯体壁面に大きな曲げモーメントを受けないことから壁厚を比較的薄くでき、それでもコンクリート躯体重量が水没時の躯体に掛かる浮力に勝り浮上しないとし、長さ方向の任意の両端部に端部壁を設け中空の箱型を形成し、津波波力に堤防と前記シェルターが重なることで堤防の補強、破堤防止ともなることを特徴とした。
【0012】
また、本発明の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルターは、前記開放構造の出入口のシェルター内の近傍部を、出入口高さよりやや高いプール壁で平面視コの字形に囲うこと、または両端部の端部壁まで延長して囲うことで、漂流物の侵入を緩和するとともに一時的に津波水の溜まり場を形成し、このことで津波の直撃波を緩和できるダンパーとして貢献するとともに、大きな津波には溜まり場のプール壁高さで水面を張ることで前記シェルターの床高さからの空気を内部空気として逃さない、すなわち圧縮空気とすることで内部保持生存空気体積を前記囲いのない開放構造に比べて増やすことができるとしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルターは、堤防天端上を堤防管理用道路または一般車両、自転車の通行に供することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルターは、高さに限界があるとした既設堤防天端高さに対して、少しでも高い津波高さに対応するとしたもので、背後の津波避難シェルターの転倒抵抗モーメントの範囲内で設けることができるとした小堤防を天端上に設置すること、または既存堤防天端を取り入れて嵩上げすること、あるいは背後地にシェルターを延長することで転倒抵抗力を増やすことができ、さらに高くなる小堤防を設置できるとしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の堤防と一体、兼用工作物の津波避難シェルターは、より迅速な避難に資するため民家の方向にシェルターを伸長するもので、堤防の直角方向に拡張または伸長するとしたことを特徴とする。
堤防には、岸壁、防波堤、高潮堤、防潮堤、護岸など各種呼称があるが、ここではこれらを総称して堤防という。津波避難シェルターは、津波のほかに、洪水、高潮、台風、強風、竜巻、ミサイル爆風対策の避難シェルターともなる。
【発明の効果】
【0016】
既存の堤防を利用することで、従来のような津波対策の、高台移転、高防潮堤、津波タワーなどの莫大な費用を必要とせず、その分で、津波の直撃、急襲で不安な沿岸の多くの住民の命が救える。しかも、24時間のうちのいつ来襲するか分からない津波に助かる。絶望の淵からの奇跡だ。家族もバラバラにならず、なんと幸せなことか。既存の低く古い堤防も津波避難シェルターと一体とすることで、一気に補強されるといえる。先人の長い海岸線にわたる堤防建設のご苦労に感謝しつつ有効利用させてもらう。生き返らせてもらう。堤防管理者もこれを推進することで胸をなでおろすことができる。さらに堤防管理者は津波避難シェルターを堤防との兼用工作物とすれば、国土強靭化としての事業推進が図れる。多くの住民の命を救うことに貢献できるとなればやりがい、励みとなる。管理者責任を問われ、被告となり、不本意で不幸な末路をたどることもない。
堤防背後の津波避難シェルターは、津波がたちどころに悪魔のように襲う狭隘な入り江の沿岸地域では特に有効であり、家屋密集地域、あまり庭の広さがない地域ではさらに有効といえる。津波が同時に遡上する河川部の高さ不足となる堤防部、矢板式護岸部でも地盤の問題を解決できれば応用できる。堤防の避難シェルターの出入口は住民毎の指定席、天からのプレゼントといえ、すぐ飛び込める。対策があり助かるとなれば協力も一体となり事前防災ができる。予測被害総額170兆円とされているのでそのうちの人命がどれくらいを占めるか分からないが、ともかく尊い命である。まずは人命に対して事前防災を考えるべきである。あきらめていた、むしろ放置されていた32万人の命、100万人の犠牲者に助かる光明が見えてくる。本人はそのうちの一人にカウントされていることを全く知らない。漠然と理解しているが死ぬとは思ってない。助かる光明が見えると人は前向きになる。いろんな知恵が出てくる。年間の、24時間対応の切れ目ない避難が可能となれば、自助で訓練を重ねることができる。瞬時に避難の対応ができるようになる。その努力で安心な日々の暮らしを送れる。なんと幸せなことか。地域の連帯が期待できる。東北の復興の予算にこの膨大な誰の目にも遅々として進まない津波対策でさらなる災害時負担が増えれば日本沈没は目に見えている。ならば、32万人分の火葬場の建設、用地確保をすれば経済効果は大きい。10年前から被害が予測されているのに対応ができてないとはまさしく世界に恥をさらけ出すことになる。非難の的となることは明々白々である。責任者は誰か。堤防管理者以外に確定してないこと、自意識がないことで遅々として進まない。自業自得で、自助、共助、公助のいつまで待っても進まないこれらであるが、まず自分の命は自分で守る決別の決意が必要だ。学校、職場に行く家族の行動位置が日々想定され、家族で一緒に行動でき、一体感、絆が強まり家族がバラバラにならない。身近な堤防の津波避難シェルターはすぐ飛び込める安心ゾーン、心の支えとなる指定席といえる。国家予算はこんなところに使われるべきである。明日かもしれない津波、今日備えれば明日から安泰なことはだれの目も明らか。社会の財産となる。生きている今の大切な時間に感謝できる。これを誰も無駄使いとは言わない。命が助かるとなれば、生命保険会社も倒産しないで済む。いつ来襲するかわからない津波、明日かもしれない津波だが、シェルター建設に国費投入となれば32万人の命が救われるかもしれない。32万人とされる冬の、真冬夜間在宅時の死者数予測は、家もろとも一気に流されての即死、溺死と考えられるが、本発明では家が流されても堤防に逃げた命は流されない。命の尊さに比べればあまりにも安価である。いまだにテレビ用訓練ごっこばかりで10年の歳月を重ね、自己満足、アリバイ作りが得意で何もしないで凋落する日本、世界中から嘲笑されるだけである。ここで一花咲かせましょう。シェルターをプレキャストコンクリート製品とすれば、工場製作で、品質も良くそのままの運搬にも適している。工期も短い。急げ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】既存堤防の高潮波力を受けるイメージ断面図
図2】既存堤防の津波波力を受けるイメージ断面図
図3】堤防と背後の逆台形箱型の津波避難シェルターで波力を受持つイメージ断面図
図4】堤防と斜面に沿った平行四辺形、箱型の津波避難シェルター断面図
図5】堤防と背後の矩形プレキャスト製品、カルバートボックスの津波避難シェルター断面図
図6】シェルターの重量と浮力の関係から必要壁厚を計算するための概略断面図
図7】Aタイプ、避難弱者用のシェルターの断面図
図8】Bタイプ、健常者用のシェルターの断面図
図9】A、A、B、Bの連続のシェルター配列平面図
図10】A、B、A、Bの交互のシェルター配列平面図
図11】プール壁を境界壁どん付きとし、境界壁の下部に貫通通行穴を設けた説明平面図
図12】シェルターの上部面を管理車道路、一般車道、自転車道に開放した構成図
図13】シェルターの上部面に小堤防を設けた断面図
図14】既存堤防の天端に嵩上げし全体をさらに高くした断面図
図15】堤防を背後地に延伸して転倒抵抗力を高めて嵩上げした断面図
図16】堤防の直角方向に、連結シェルターを地域側、小学校側に拡張、延長した説明平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面及び詳細な説明の全体を通じて同じ要素を示すために共通の参照符号が用いられる。
【0019】
堤防沿いの沿岸地域には多くの住民が暮らしている。さらには狭い入り江地区では多くの住居が海岸線に近く密集している。入り江では津波は増幅された高さとなり、勢いを増した津波で家々は一網打尽、総なめの様相だ。波に呑み込まれ、もまれる様相は容易に想像できる。対策を急がなければならない。シェルターは堤防背後でささえるので、既存の堤防の剛度、重さ、長い延長を活用できる。既存の堤防も一体になることで耐力も向上し、かつ沿岸地域の多くの生命も助かるということの複合効果で津波避難シェルターは相互に好影響のある堤防との兼用構造物といえる。シェルターは2種類とし、Aタイプは、出入口に壁なしとした車いす利用者、高齢者、妊婦など避難弱者用、Bタイプは、出入口奥に出入り口高さより高い約80cm高さの立壁、プール壁を設け漂流物侵入防止、避難空間、水中保持空気量を広げるもので、乗り越える必要があるため健常者用とする。できれば取っ手をつけるとよい。
【0020】
図1に、全国津々浦々に備えられている既存の堤防の高波を受ける状況下の、一般的波力のイメージ断面を示す。図2に10m程の津波が襲う波力の状況をイメージした図である。波力が静水圧の3倍といわれる。激しい越流の影響を受ける。図3は堤防背面の傾斜に合わせて津波避難シェルターを設け、大きい津波の波力に海側側壁、台形箱型構造体の一体となって抵抗する様子をイメージ化した一般的図である。図4は堤防斜面に合わせた勾配を持った平行四辺形とした図、図5は矩形のプレキャスト製品とした例であるボックスカルバートがある。堤防の背面との空間にはコンクリートを詰めて一体とする。いずれの津波避難シェルターも、越流の影響を軽減するために基本的にはシェルター天端の高さを既存堤防の天端高さと同一または以下とし、堤防の長さ方向に既存の堤防の継ぎ目間隔、切れ目を考慮し一定間隔で隔壁を設け、中空の部屋分けする。シェルターの延長は10m程度で1ブロックとし、場合によっては中間壁を補強のために設けるとよい。空気を保持する中空のシェルターは軽くては浮き上がってしまう。まずは津波避難シェルターの浮き上り防止として、中空のコンクリート躯体重量が躯体に作用する浮力より大とする。図6は、比重2.5の鉄筋コンクリートとして必要壁厚を求めるための矩形とした計算簡易とする概略図である。出入口は陸側側壁または端部壁の下部に設ける。構造体は、密閉構造でない非密閉構造体で、パスカルの原理でシェルターの内外の気圧、水圧は等しいことから、壁に曲げモーメントはかからず構造的壁厚はそれほど必要でない。極端には壁は紙1枚程度で良いといえる。ただし、堤防に係る強烈な波力を堤防の後ろでささえ、補助する箱型としての壁厚は必要である。
塩害に対する必要かぶり、壁厚も必要である。ねじれ、変形に対する構造体としての適度な剛性、抵抗力も必要である。背面、後部に延長された箱型のシェルターは越流、転倒に対する抵抗モーメントが自ずから箱型特性で備わるといえる。簡明のため矩形とした壁厚の試算例を以下に示す。躯体重量が浮力より大となる必要がある。概略として堤防高さ2mとして、同じの高さ2m、幅3m、延長1m、出入口高さ0.7m、プール壁高さ0.8m、壁厚0.3m、鉄筋コンクリートの比重2.5として、重量=(2*3―0.7*2.7―0.7*2.4)*2.5=6.075トン>浮力=2*3-0.7*2.7=4.11トン、壁厚が0.2mと薄いプラキャスト製品とすると、重量=(2*3―0.7*2.8―0.8*2.6)*2.5=4.9トン>浮力=2*3-0.7*2.8=4.04トンで、浮かないが、薄いと重量に余裕が少ないといえる。プール壁のあるBタイプではプール壁分の重量が加算される。壁厚0.3mでは0.3*0.8*2.5=0.6トン増える。壁厚0.2mでは4トン増える。出入口までの距離1mとして、浮力=2*3―0.8*1=5.2トンなので、壁厚0.3mでは重量6.075+0.6=6.675>5.2、プレキャスト製品の壁厚0,2mでは重量4.9+0.4=5.3>5.2なのでプラキャスト製品とする場合は、壁厚は0.25m以上とすべきである。ただし、延長10m当たりとすれば出入口の残りの陸側壁部が7m、端部壁が2*3*0.2mから0.3m、さらに中間壁、隅角部補強ハンチがあり計算上は大丈夫となるが、余裕が欲しいといえる。
【0021】
自然定理の活用も役立つ。アルキメデスの定理で、水に比して比重の軽い空気は水中で上昇する。上昇した空気は上に凸の空間に集約される。浮力は、アルキメデスの定理でシェルターには物体が排除した水の体積相当の浮力がかかる。空気を含む中空シェルターなので軽いとはいえ、構造体重量が浮力を上回る必要がある。さらに10mの津波が来るとボイルの法則で内部体積が1/2に圧縮されるので同時に浮力が半減する。パスカルの原理で、シェルター内外の圧力は等しい。このことで、側面壁下部に出入り口のあるシェルターの全周の壁には密閉構造のような内外圧力差はかからない。紙1枚の厚みの壁でもよい。ボイルの法則で、シェルターの出入口高さ部、下部近辺にできる水平な水面が密閉空間を形成し、津波高10mで水圧2気圧なので、シェルター内の空気は上に1/2に圧縮、20mでは1/3、30mでは1/4に圧縮されそれに伴って水位、水面も上がるので慌てないように。内部は閉塞空間であるので水位は、内水位0.5mに対して外水位10mが連動するので、上昇速度は1/20の速度でゆっくり上昇し、必ず空気は上の天井部に残る。空気を吸う口は当然上にして、頂板の天井あたりに圧縮されて上昇し溜まった空気を吸う。浮力は、水中のシェルター空気体積相当なので、シェルターの水位が上がり浮力も徐々に上がる。ただし、水位がシェルターの出入口高さより上昇すると内部空気が圧縮され、体積も減るので浮力は減る。シェルターの定員を設定するにあたっては、高齢者また肺活量の少ない子供、高齢者は半分の酸素消費量と考えることもできるので定員のオーバー分をカバーできることも、余裕代と考えることもできる。高さ34mの最大津波による水圧負担には、2013年にナイジェリア沖の水深30mで難破船の船底から62時間後に救出されたニュースがある。第一波が終われば、水位が下がるので新鮮な空気と入れ替わる。1m3/時の設計で、それほど心配する必要がない。まずはこれで四の五のいわずシェルターを作ることが先決である。いつまでも躊躇し行動しないと、何もない生身で津波の来襲を受ければ水没し、空気が一瞬でもなければ人は絶命なのだ。それこそ小田原評定、時間の無駄、検討、研究ばかりで、目的である人の命を救うことに成果を得てない。この10年間で失った時間は戻ってこない。次の10年間も何も期待できない。成果を出す必要のある責任者がいないのだから。しかし勇気をもって前に進めば次の10年間で成果のある時間を取り戻すことができると考えたい。
【0022】
津波高さがいくら高くても、最大6時間で6波が繰り返すので、波の谷ができ自然な空気入れ替えが期待でき、これにより設計の空気量も津波周期、1時間単位でよいことになる。小学校が近ければ津波避難シェルターを近くまで伸ばすことも考える。極端ではあるが極寒では低体温症の突然死防止のためにも飛行機のタラップのように覆われた風胴とした接続通路設置、そのように工夫すれば犠牲が予測される100万人の数字、提示された無機質な一人ひとりの命の塊に光明が見える。運搬寸法の制限を受けるものの工場製作のプレキャストコンクリートとすれば、より高い品質、工期短縮が期待できる。矩形ボックスカルバートの適用を検討する。堤防の斜面とカルバートの間にはコンクリートを打設すると一体となる。そのほか、もし空気が足りず息苦しくなった時のため、10mのロープ付き浮き輪を配置するとよい。浮上して息を吸い、引き潮となった後の帰還に役立つ。そのロープのアンカーはシェルターの壁内側、浮き輪はシェルターの外側に設置するとよい。浮き輪の体積分の合計空気量が損失しないように。ただし、浮き輪だけが浮上しないようにロープを丸めるかの工夫は必要だ。
【実施例1】
【0023】
堤防は高波の波力、横力に対して頑丈にできている。そこで箱型のシェルターの海側側壁は堤防の背面に密着した一体とすることを基本とする。波力の反力の一部を受け持つとも、隠れて波力の直撃を避けるともいえる相互効果がある。一方、堤防は天端を超える越流に弱い。そこで、シェルターの天端は基本的には堤防の天端高さ以下とし、越流による影響を回避する。シェルターの躯体はコンクリートとし、非密閉構造の中空構造で1m3/人の生存必要空気量を確保できる空間とし、出入口は高さ0.7m程度とし、幅は、2m~5mで可能である。陸側の側壁、端部壁の下部に設ける。シェルターの両端は鉛直方向の立壁、端部壁で空間を囲む。コンクリートの躯体は水中となっても浮かないよう浮力に打ち勝つ重量を有する。すなわち、コンクリート躯体の壁厚は一般の鉄筋コンクリートで30cm以上必要とする。プレキャスト製品では25cm以上が望ましい。10m間隔で端部壁を設けるとして、内空気体積から図7のA タイプで0.7*2.4*10=16.8人用となる。出入口で奥へ勾配、スロープをつけるとよい。高齢者、妊婦、車いす利用者の避難が早くない避難弱者用のAタイプでは手すりが必要。このため底版を0.3mほど下げると地面から0.7mの出入口高さが確保できる。堤防背面と新設の津波シェルターの隙間はコンクリートモルタルで埋めるか一体化すればよい、もしくは防水シート、繊維シート、ベニヤ板、エラスタイトなどの目地材、薄材で新旧コンクリートの影響を緩和する方法も考えられる。ただし、新設と既設の古い堤防には温度変化の伸縮量の差異と、経年による乾燥収縮の差異があるので、相互干渉しないためにもひび割れ防止として適度に目地材を介在する必要がある。既存堤防には一定間隔で継ぎ目があるので、新しいコンクリートのシェルターの端部壁の間隔はその影響を受けないようそれに合わせるなど考慮する必要がある。出入口は人が同時に集中しないようシェルターの高さは0.7m程度だが、幅は同時に2人、2輪が飛び込むことも考えて2m~5mが良い。
【実施例2】
【0024】
図8のBタイプは健常者用で、壁を乗り越える必要がある。シェルターの出入口に溜まり場、プールを設けると津波の波力緩和できるダンパーとなるとともに生存必要空気量を大きく保てる。Bタイプで0.6*2.4+0.8*1.4=25.2人用となる。図9図10にプール壁、立壁はコの字型、または図11の両端の立壁、端部壁までの壁とする平面図を示す。後者は前者に比べて存空気体積が少なくなるので注意が必要。高さは出入口高さより10cmほど高くするとよい。出入口の壁の上部やプール壁に取っ手を設けるとよい。室内には長椅子を用意すれば楽に過ごせる。
【実施例3】
【0025】
シェルターの中間壁、止め壁の立壁の下部を隣室との往来、貫通通行穴とすることで、延長の長い方向に、長屋のように多くのシェルターを連続化で設置することができる。図9に並びの例として、A、A、B、B の連続配列とすればBの下部に通行穴を設ければ一方が破損などで天井まで浸水しても隣室に逃げ込むことができる。図10に並びの例としてA、B、A、B の交互配列とすれば、避難する人はあらかじめどのシェルターに逃げ込むかを決めておくとよい。ただし、A とBの隣接間に穴を開けるとBの空気量が失われる可能性があるので注意が必要だ。住民はいずれも事前訓練でどちらに逃げ込むか決めておくと避難も一直線で早い。ただし、図11に示すようにBタイプのプール壁を境界壁まで伸ばし、プール壁高さ、または出入口高さの貫通穴を境界壁下部に設けるとA、B間の連続通行、連続としたシェルター全長での往来通行が可能となる。
【実施例4】
【0026】
シェルターの天端を管理用道路、一般車両の通行車線、もしくは自転車道として利用する。図12参照。
【実施例5】
【0027】
津波高さに対して、たとえばL1レベルに対して既存堤防の天端高さをあと少し高くできれば多くの住家、住民を救えるとなれば、シェルターの天端に、シェルターの転倒に対する抵抗力、強さの範囲で立ち上げ小堤防を設けることを考える。さらには、堤防との合作で、既存堤防の天端を含めて嵩上げすることができるとなれば、全体として小堤防の高さをさらに嵩上げできることになる。また、津波避難シェルターを背後地に延長できれば転倒に対しても強くなるとともに小堤防も高くできる。図13図14、15参照。
【実施例6】
【0028】
津波の波力には、堤防とシェルターの組み合わせでより抵抗できると期待される。それでもシェルターからやや離れている人は避難協定ビル、山、高台に逃げようか判断に迷う。そこで、町の方向に、すなわち堤防の直角方向にシェルターを延伸、拡張する。手を差し伸べるといっていい。特に、小学校方向に延長、拡張すれば出入口も真近かとなり、避難も迅速になる。未来のある小学生の命を奪ってはならない。守ることこそが大人の最大の責務である。人口減少の地域であれば、空き地提供など住民の協力も期待できる。図15参照。
【実施例7】
【0029】
中空のシェルターであるが、ひび割れが生じると水中で空気が抜ける。空気漏れが致命傷となる。原因はコンクリートの経年の乾燥収縮、津波の前の巨大地震で躯体にひずみ、ひび割れ、さらには既存堤防との経年差、継ぎ目位置、面接触による相互干渉によるひび割れなどが考えられ対策が必要である。そこで内部壁沿いに上に凸形状のポリ袋、気密性シート袋などのプラスチック袋を天地逆にして配置すると万が一の時の2重の安全で空気が漏れない。個人的にはごみ袋でも役に立つ。必要空気量は基本1.0m3/人・時であるが、子供、高齢者は、肺活量も少なく半分の特性値で考えると定員超過の場合に足しになる。浮き輪、通水性の漂流物侵入防止枠組、小型空気ボンベ、小型酸素ボンベ、 漂流物からの保護板、懐中電灯、スマホ、ラジオ、カイロ、パン、水、簡易トイレ、毛布、防寒着、ごみ袋などを入れた防災リュック、防水シート、外に堆積した泥除去のスコップ、さらに、息苦しくなった時のために、10m程度長のロープを付けた浮き輪もありがたい。浮上し、引き潮でまた元の場所に帰還することができる。出入口近傍に通水性の蛇篭を配置すれば漂流物侵入防止、中に引き入れると腰掛けとして役立つ。長椅子はベンチに利用できる。6時間程度の避難にも楽に耐えることができる。その他、木製の筏も。浮き輪はシェルターの外が良い、そのアンカー定着はシェルター内とする。10人程度分でも仕方ない。陸側側壁に、漂流物衝突力緩和のための防護装置やタイヤなどのクッション装置を備えるとよい。津波の内部浸水で濡れないため、内部に、桟敷やゴムボート、ビニール浮き床、空気マット、板を配備するとよい。隣室からの貫通穴で万が一に備えることも考えるとよい。ともかく津波対策には定期的に啓蒙、教育、訓練が必要だ。
【符号の説明】
【0030】
1堤防
2津波避難シェルター
3シェルターの壁
4シェルター内部空気空間
5出入口
6堤防天端
7既存堤防の背面、傾斜斜面
8高波波力
9地面
10海面
11津波波力
12越流津波波力
13逆台形箱型シェルター
14平行四辺形箱型シェルター
15矩形シェルター、カルバートボックス形シェルター
16間詰めコンクリート
17プール壁
18車いす
19手すり
20透水性漂流物侵入防止柵組
21長椅子
22浮き輪
23取っ手、アンカー
24ロープ
25津波進入時に出入口高さでできる水平水面
26津波進入時にプール壁高さでできる水平水面
27プール壁高さの浸水まで空気を保つシェルター床面
28車両
29自転車
30ガードレール
31小堤防
32ハンチ
33隣接を仕切る隔壁、仕切り壁、境界壁、または止め壁、端部壁
34隔壁下部の隣接部屋との連絡口、通路
35控え壁
36前面壁
37既存堤防天端嵩上げコンクリート部
38中間壁、補強壁
39津波波力に対する抵抗力
40住家
41陸側側壁
【要約】
【課題】
津波避難シェルターの建設が進んでない。南海トラフの巨大津波では、真冬、真夜中の来襲で32万人の死者、100万人の犠牲者が予測されている。内閣府発表から10年、火葬場の建設が進んでいると推測する。地域により10mの津波が5分で襲うとされ、避難の猶予さえない。24時間の切れ目ない地域住民の日常生活、その時のいかに多くの住民の命を救うかが課題である。
【解決手段】
地域には提防があり、生活の中で避難所が目の前にあるのと同じで、家族で迅速な避難が可能。24時間安心。備えあれば患いなし。安全、安心に日々暮らせるということはなんと幸せなことか。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16