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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】中空球状アルミナ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/30 20220101AFI20250616BHJP
【FI】
C01F7/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2025062609
(22)【出願日】2025-04-04
【審査請求日】2025-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399127625
【氏名又は名称】浅田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】竹中 亜優菜
(72)【発明者】
【氏名】正井 利哉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】筒井 義也
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特許第7560195(JP,B1)
【文献】特開2023-129187(JP,A)
【文献】特開2023-068864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPa、エアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で、180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分で供給してスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%充填する第2の工程と、
第2の工程で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中で50~200ml/分で空気を導入しながら降温する第3の工程と、からなる中空球状アルミナ粒子の製造方法において、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl換算で8~13質量%で含み、
前記中空球状アルミナ粒子が、レーザー回折式粒度分布測定において、D50が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であり、内部が中空でかつ球状であり、比表面積が1~20m/gである、ことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記中空球状アルミナ粒子は、嵩比重が0.3~0.7g/cm3であり、中空球状アルミナ粒子の結晶相がα相であることを特徴とする請求項1記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記中空球状アルミナ粒子は、容量法で測定した周波数f=1MHzでの比誘電率が1.7~2.4を示すことを特徴とする請求項1または2記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムのいずれかまたは両方と、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、得られたゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られることを特徴とする請求項1または2記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空球状アルミナ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空のアルミナ粒子は各種方法で作製されている。本発明者等は、日本特許7560195号(特許文献1)で中空球状アルミナ粒子の製造方法を提案した。この特許では、内部が中空で外部との貫通孔を有する球状のアルミナ粒子が、塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、第1の工程で得られた乾燥造粒物を1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて2~8時間焼成し、中空球状アルミナ粒子を得る第2の工程とからなる2工程で製造する方法であって、その塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl換算で8~13質量%で含み、得られた中空球状アルミナ粒子が、粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、かつD90が200μm以下であり、内部が中空であり、かつ外部と貫通孔を持ち、比表面積が1~20m/gであり、結晶相がα相を示すことを特徴とするものを提案した。
【0003】
特許文献1で得られる中空球状アルミナ粒子は、αアルミナ由来の耐熱性、耐熱衝撃性、耐薬品性及び高温強度特性を持ち、中空かつ球状の特性が軽量性、断熱性、流動性等などに優れているため、樹脂、ゴム等への高機能配合材、電子材料関連の放熱用フィラー、電子部材の研磨用フィラー等へ応用することができる。しかし、特許文献1で得られるアルミナ粒子は、前述の通り、平均粒径(D50)が5~50μmであり、D90は200μm以下であるが、より小さな粒径のアルミナ粒子の需要が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許7560195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、上記特許文献1で得られる中空球状アルミナ粒子より粒径の小さな粒径の中空球状のアルミナ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の態様を包含する:
[1] 塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPa、エアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で、180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分で供給してスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%充填する第2の工程と、
第2の工程で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中で50~200ml/分で空気を導入しながら降温する第3の工程と、からなる中空球状アルミナ粒子の製造方法において、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl換算で8~13質量%で含み、
前記中空球状アルミナ粒子が、レーザー回折式粒度分布測定において、D50が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であり、内部が中空でかつ球状であり、比表面積が1~20m/gである、ことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[2] 前記中空球状アルミナ粒子は、嵩比重が0.3~0.7g/cm3であり、中空球状アルミナ粒子の結晶相がα相であることを特徴とする[1]に記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[3] 前記中空球状アルミナ粒子は、容量法で測定した周波数f=1MHzでの比誘電率が1.7~2.4を示すことを特徴とする[1]または[2]に記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[4] 前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムのいずれかまたは両方と、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、得られたゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られることを特徴とする[1]または[2]に記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明による中空球状アルミナ粒子は、特許文献1のアルミナ粒子と同様にαアルミナ由来であるが、平均粒径(D50)が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であるものを提供する。得られたアルミナ粒子は、特許文献1と同様に、耐熱性、耐熱衝撃性、耐薬品性及び高温強度特性を持ち、中空かつ球状の特性が軽量性、断熱性、流動性等などに優れていて、樹脂、ゴム等への高機能配合材、電子材料関連の放熱用フィラー、電子部材の研磨用フィラー等への展開が期待される。特に、粒径の小さなアルミナ粒子で中空のものは、薄膜の樹脂シートの比誘電率を低下することに寄与することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1で得られた中空球状アルミナ粒子のレーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定した粒度分布のグラフである。グラフの縦軸が体積分率(%)で横軸が粒度(μm)である。
図2】実施例1で得られた中空球状アルミナ粒子のX線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を示す図である。
図3】比較例6で得られたアルミナ粒子のX線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を示す図である。
図4】電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子の50,000倍のSEM画像である。
図5】電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子の断面の50,000倍のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(用語の定義)
本明細書において、「中空」とは、粒子の内部に空隙があることを意味し、完全な球状の空間があることを意味していない。従って、アルミナ粒子の内部の一部に空隙あるいは空間が存在している。また、アルミナ粒子が小さいので、粒子形成が不十分な場合もあるので、例えば図5に見られるような籠状と言えるものも発生する。本明細書において、「球状」とは、完全な球体を意味しているのではなく、不完全な球体、例えば籠状のものも「球状」と表現される。
【0010】
(発明の内容)
本発明では、塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPa、エアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で、180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分で供給してスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%に充填する第2の工程と、
第2の工程で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中で50~200ml/分で空気を導入しながら降温する第3の工程と、
からなる中空球状アルミナ粒子の製造方法において、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl換算で8~13質量%で含み、
前記中空球状アルミナ粒子が、レーザー回折式粒度分布測定において、D50が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であり、内部が中空でかつ球状であり、比表面積が1~20m/gである、ことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法を提供できることを特徴とする。
【0011】
(原料)
本発明の中空球状アルミナ粒子の合成用に使用する原料としては、以下を選定することが必要である:
(I)塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%に制御されていること。
(II)塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、アルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、AlをAl換算質量で8~13質量%を有するものであること。
(III)前記の塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、必要に応じて、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウム溶液若しくはその両者の組み合わせと、水とを混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、そのゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られるものであること。
【0012】
本発明では、主要原料として塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%を含み、アルカリ金属量を制御し、塩基度、アルミニウム含有量を所定範囲に制御し、それを噴霧乾燥し、1050℃以上1200℃未満の温度で2~8時間焼成すること、および所定の粒度、比表面積、乾燥減量、強熱減量の規格を満たし、所定の嵩比重を満たす中空球状アルミナ粒子を提供することが可能である。
【0013】
本発明は上記(I)、(II)、(III)に記載の材料を用い、下記の製造方法で製造するものである。
【0014】
(製造方法)
(工程1)上記(I)および(II)(必要に応じて(III))の要件を満足する塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPaでエアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分でスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した乾燥造粒物を形成すること。
(工程2)工程1で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%に充填すること。
(工程3)工程2で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中にて50~200ml/分で空気を導入しながら降温すること。
【0015】
以下、中空球状アルミナ粒子の製造に使用する原料と製造方法について、詳述する。
【0016】
(塩基性乳酸アルミニウム水溶液)
本発明で使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、以下の(I)~(II)の特性を有する:
(I)塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%に制御されていること。
(II)塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、アルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、AlをAl換算質量で8~13質量%をふくむものであること。
【0017】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(I)に記載するように、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%に制御されている。塩基性乳酸アルミニウム水溶液が含有するFe含有量、Ca含有量、Mg含有量、Si含有量が0.01質量%をこえると焼成時にアルミナ以外の異なる結晶相を形成することや着色等の不良を発生させる原因になる。Fe、Ca、MgおよびSiの含有量は、好ましくはそれぞれ0.007質量%以下、より好ましくは0.006質量%以下である。
【0018】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(II)に記載するように、アルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量の量で含むことが必要である。より好ましくはアルカリ金属元素イオンを0.01~0.5質量%含むことが好ましい。アルカリ金属元素イオンが0.005質量%未満になるとアルカリ金属元素イオン量が少なすぎて、αアルミナへの相転移する温度が高くなり、1200℃未満ではαアルミナが生成しなくなる。一方、アルカリ金属元素イオンが1.2質量%を超えるとアルカリ金属元素イオンが多すぎて、αアルミナ以外のβアルミナ等が生成して、所望のαアルミナが得られなくなる。
【0019】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液に含有するアルカリ金属元素イオン種としてはナトリウム、カリウムから選ばれる1つ以上であることが必要である。
【0020】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、更に塩基度60~80%であり、AlをAl換算質量で8~13質量%含有することが必要である。塩基度が60%未満になると乳酸分が多すぎて水への溶解性が悪化する課題がある。一方で80%を超えると不溶解の水酸化アルミニウムが析出し、液が白濁し、噴霧乾燥した際に中空の乾燥造粒物が得られなくなる課題がある。またAlをAl換算質量で8質量%未満になると噴霧乾燥で乾燥した際に中空の乾燥造粒物が得られなくなる課題がある。一方で13質量%を超えるとAlの量が多すぎて、保管安定性が悪く、塩基性乳酸アルミニウム水溶液に析出物が発生し、噴霧乾燥に適さない課題がある。塩基性乳酸アルミニウム水溶液の塩基度は、好ましくは62~78%、より好ましくは64~76%である。「塩基度」は塩基で置換し得る価数の何%が埋まっているかを示す値であり、アルミニウムは3価であるので、2/3(3価の内2価)が使用されれば、66.66%(即ち、約67%)となることを意味し、JIS K1475の水道用液体ポリ塩化アルミニウムの塩基度の測定方法に準拠して測定される。塩基性乳酸アルミニウム水溶液のアルミニウム(Al)のAl換算質量は、このましくは8.5~12.5質量%、より好ましくは9~12質量%である。AlのAl換算質量は、アルミニウムの塩を用いるときに通常使用されるもので、Alの質量に換算してアルミニウム量を特定する。
【0021】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、(III)に記載する方法で得られるものであることが好ましい。具体的には、
(III)塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウム溶液若しくはその両者の組み合わせと、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、そのゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られる。
もちろん、塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(I)および上記(II)を満足すれば、どのような方法で得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液であっても良いが、上記(III)で得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液がより好適である。
【0022】
(中空球状アルミナ粒子の製造方法)
本発明の中空球状アルミナ粒子は、以下の工程1~工程3から製造される:
(工程1)上記(I)および(II)(必要に応じて上記(III))の要件を満足する塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPaでエアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分でスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した乾燥造粒物を形成すること。
(工程2)工程1で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%に充填すること。
(工程3)工程2で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中にて50~200ml/分で空気を導入しながら降温すること。
【0023】
(工程1)
工程1では、塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPaでエアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分でスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した乾燥造粒物を形成する。ガス圧0.4MPa未満であれば、ガス圧が低すぎてレーザー回折式粒度分布測定において、乾燥造粒物のD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下である乾燥造粒物を得ることができない。一方、1MPaを超える際には、大型のコンプレッサーや増圧器等が必要になり、生産性が悪くなる課題がある。ガス圧は、好ましくは0.2~0.8MPa、より好ましくは0.3~0.7MPaである。エアー流量が200L/分未満であれば、エアー流量が低すぎて細かい造粒体を得ることができない。一方、4,000L/分を超える際には、大型のコンプレッサー等が必要になり、生産性が悪くなる。エアー流量は、好ましくは、300~3500L/分、より好ましくは500~3000L/分である。
【0024】
工程1は大気または不活性ガス中で乾燥造粒されるが、不活性ガスは、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオンまたはアルゴン)または窒素ガスがあげられる。通常は、大気中で行われる。乾燥温度は、180~280℃、好ましくは190~260℃である。180℃より少ない温度で乾燥造粒すると、乾燥物の水分量が多いため、乾燥状態で凝集物を発生しやすくなり、焼成後に独立の中空球状アルミナにならない欠点を有し、280℃を超える温度で乾燥造粒すると、塩基性乳酸アルミニウムの有機分の一部が酸化を起こし、乾燥物が茶変し、物性劣化し、焼成時に球状の形状が崩れる欠点を有する。
【0025】
液供給量が100ml/分未満であれば、液供給量が少なすぎて生産性が悪化する課題があり、500ml/分を超えると造粒体が大きくなりすぎて、所望の粒子径の造粒体が得られないこと及び揮発分が10質量%を超える課題がある。
【0026】
乾燥造粒は、スプレードライで行われる。スプレードライは、乾燥造粒物のD50とD90を所定の範囲にするために、例えば二流体ノズルや四流体ノズルを用いる方法が用いられる。もちろん、乾燥造粒物の粒径を表すD50とD90が所定の範囲内にあれば、どのような乾燥造粒方法を用いても良い。
【0027】
乾燥造粒物はD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御する必要がある。D50とD90は後述する最終の中空球状アルミナ粒子のD50およびD90の説明でも述べるが、レーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定することにより得られる。D50は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味で、D90は母集団の90%がこの値より下にあるという意味である。D50が1.0より少ないと、粒子の凝集性が強く分散した状態で使用することが難しく、D50が4.5μmより大きいと、薄層樹脂シートの誘電率調整用途のフィラーや薄層樹脂シートの放熱フィラーの誘電率調整用途のフィラーとして使用用途が狭くなる。乾燥造粒物のD50は、好ましくは1.2~4.0μm、より好ましくは1.5~3.0μmである。乾燥造粒物のD90は、好ましくは5.0~7.5μm、より好ましくは5.5~6.5μmである。
【0028】
工程1で得られた乾燥造粒物は、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御する。揮発分は、10質量%を超えると、乾燥が不十分で、乾燥物の水分量が多いため、乾燥状態で凝集物を発生しやすくなり、焼成後に独立の中空球状アルミナにならない欠点を有する。揮発分は0質量%であるのが好ましい。揮発分は好ましくは1.0~9.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%である。乾燥造粒物は、嵩比重0.20~0.7g/cm、好ましくは0.25~0.65g/cm、より好ましくは0.3~0.6g/cmである。嵩比重が0.2g/cmより小さいと、中空度が大きくなり、外殻部の厚みが薄くなるため、中空球状アルミナ粒子の強度が低下する欠点を有し、0.70g/cmより大きいと、造粒時の中空度が小さくなり、外殻部の厚みが大きくなるため、変形しやすくなり、球状形状ができにくくなる欠点を有する。揮発分はエー・アンド・デイ製加熱乾式水分計MX50を用いて、105℃で30分の条件で測定する。嵩比重は、質量を体積で割った値である。本発明の実施例では、1mmの目開きの篩通しをした粉体を0.1質量%の精度で秤量した約40gの試料(M)を100mlのメスシリンダー(最小メモリ単位1ml)に入れ、表面を軽くならし、ゆるみ嵩体積(V)を読み取り、嵩比重:M/V(g/cm)を算出している。揮発分は造粒時の温度と送液速度により調整することができ、嵩比重は、噴霧造粒時のガス圧力で制御することができる。
【0029】
(工程2)
本発明の中空球状アルミナ粒子の製造方法の工程2では、工程1で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に入れて鞘内部の体積の50~80体積%に充填する。焼成用鞘への充填量が50体積%未満であれば、焼成時の投入量が少なくなり、生産性が悪化する課題があり、80体積%を超えると焼成時に鞘底面に不完全焼成部が残り、安定して焼成することができなくなる。焼成用鞘への充填量は、好ましくは鞘内部の体積の55~75体積%、より好ましくは60~70体積%である。焼成用鞘は、焼成条件に耐えるものであれば特に制限はないが、アルミナ製やムライドーコージライト製が好ましい。アルミナ製やムライドーコージライト製であると、焼成温度範囲であれば、焼成用鞘に変形等がないことや中空球状アルミナに焼成用鞘から中空球状アルミナへの元素移動により、異なる結晶相ができないことが優れている。
【0030】
(工程3)
本発明の中空球状アルミナ粒子の製造方法の工程3では、工程2で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中にて50~200ml/分で空気を導入しながら降温することを必要とする。
【0031】
工程3での昇温速度が0.3℃/分未満になると昇温に要する時間が長すぎて、生産性が悪化する。3℃/分を超えると鞘内の粉体に焼成ばらつきが発生し、安定した中空球状アルミナ粒子が得られなくなる課題がある。昇温速度は、好ましくは0.5~2.8℃/分であり、より好ましくは1.0~2.5℃/分である。焼成温度が1050℃未満だと焼成が不十分になり、αアルミナ以外の結晶相が残る。焼成温度が1200℃を超えると耐熱対策を施した焼成炉必要になり、生産性が悪化する。焼成温度は、好ましくは1070~1190℃、より好ましくは1090~1180℃であある。焼成時間も、2時間未満だと焼成が不十分になり、αアルミナ以外の結晶相が残る。8時間を超えると生産性が悪化する課題がある。焼成時間は、好ましくは2.5~7.5時間、より好ましくは3.0~7.0時間である。
【0032】
降温時は、降温速度0.3~10℃/分で降温することが必要である。降温速度が0.3℃/分未満になると降温に要する時間が長すぎて、生産性が悪化する課題がある。10℃/分を超えると鞘が熱応力で破損し、安定して焼成終了した中空球状アルミナ粒子が回収できなくなる課題がある。降温速度は、好ましくは0.5~2.8℃/分、より好ましくは1.0~2.5℃/分である。
【0033】
焼成炉において、昇温中、焼成中および降温中のいずれの段階でも、大気中で50~200ml/分で空気を導入しながら焼成を行うことが必要である。空気導入量が50ml/分未満になると空気導入量が少なすぎて、鞘底面部の焼成が不十分になり、焼成不良が発生する。一方、空気導入量が200ml/分を超えると1050~1200℃の範囲で2~8時間焼成する際に投入する空気量が多すぎて炉内が冷えてしまい、焼成時の最高温度に到達せずに焼結不良が発生する課題がある。空気導入量は、好ましくは60~180ml/分、より好ましくは70~170ml/分である。
【0034】
(中空球状アルミナ粒子)
本発明の中空球状アルミナ粒子は、上記の工程1~工程3により製造される。この方法で得られた中空球状アルミナ粒子は、粒度分布測定において、D50が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であり、球状で内部が中空のアルミナ粒子であり、比表面積が1~20m/gであり、結晶系(結晶相とも言う)がα相を示す。
【0035】
粒度分布はレーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定することにより得られる。図1には、実施例1のアルミナ粒子の粒度分布結果を示している。粒度分布において、D50は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味で、D90は母集団の90%がこの値より下にあるという意味である。図1に示すように実施例1のアルミナ粒子の粒度分布はD50が2.5μmで、D90が6μm未満であることが確認できている。D50が1.0μm未満になると凝集が強くなり、分散が難しくなる課題があり、D50が3.5μmを超えると薄層樹脂シートの誘電率調整用途のフィラーや薄層樹脂シートの放熱フィラーとして使用が難しくなる課題がある。更にD90が6μmを超えると薄層樹脂シートの誘電率調整用途のフィラーや薄層樹脂シートの放熱フィラーの誘電率調整用途のフィラーとして使用用途が狭くなる課題がある。
【0036】
本発明の製造方法で得られたアルミナ粒子は、球状で内部が中空である。「中空」は、用語の定義に記載されているように、完全に球状の中空を意味していないが、例えば実施例1のアルミナ粒子の電子顕微鏡写真を図4および図5に示しているように、球状ではあるが空洞があるように見えているもの(図4)や、球状の形成が不十分で籠のような形状のままで存在しているものも含まれる。
【0037】
本発明の製造方法で得られた中空球状アルミナ粒子は、比表面積が1~20m/gであり、結晶系がα相を示す。比表面積は、ある物体について単位質量当たりの表面積または単位体積当たりの表面積のことであるが、本発明では、比表面積は自動比表面積測定装置((株)島津製作所製Gemini7 2390)にてNで測定し、BET法で解析したデータを用いる。本発明のアルミナ粒子の比表面積が、1m/gより小さいと、比表面積が小さすぎて、分散剤等を用いた表面処理をする際に吸着サイトが少ない為、表面処理が難しくなる欠点を有し、20m/gより大きいと、アルミナ表面に窒素ガス(N)の吸着量が多すぎて、αアルミナとしての結晶成長が不十分である欠点を有する。本発明の中空球状アルミナ粒子の比表面積は、好ましくは3~15m/g、より好ましくは5~13m/gである。結晶系は、本発明の中空球状アルミナ粒子では、α型である。本発明では、アルミナ粒子の他の結晶系であるγ型等が混じることは想定していない。結晶系はX線回折装置(具体的には、(株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定したものを主として用いる。
【0038】
本願における中空球状アルミナ粒子は、嵩比重が0.3~0.7g/cmが好ましい。より好ましくは0.45~0.65g/cmである。嵩比重が0.3未満になると外皮が薄くなりすぎて、中空球状アルミナ粒子として保形できない。一方、嵩比重が0.7g/cmを超えると外皮が厚くなりすぎて、中空球状アルミナ粒子としての機能を果たさなくなる。嵩比重は、質量を体積で割った値であるが、具体的には1mmの目開きの篩通しをした粉体を0.1質量%の精度で秤量した約40gの試料(M)を100mlのメスシリンダー(最小メモリ単位1ml)に入れ、表面を軽くならし、ゆるみ嵩体積(V)を読み取り、嵩比重:M/V(g/cm)を算出している。
【0039】
本発明における中空球状アルミナ粒子は結晶相がα相であることが必要である。α相を形成しない場合、容量法で測定した周波数f=1MHzでの比誘電率が1.7~2.4を満たさなくなる。f=1MHzでの比誘電率の測定は、誘電率測定システムWKR6510P((株)東陽テクニカ製)を用いて、容量法で測定を実施した。比誘電率が1.7より小さいと、空気含有率が大きすぎて中空球状アルミナ粒子の形状を保てない。2.4を超えると、誘電率が大きすぎて低比誘電率材料としての利用ができない。比誘電率が大きいと樹脂薄膜に配合した場合に高周波数がかかった時に発熱することがあるので、樹脂薄膜での使用に適さなくなる。f=1MHzでの比誘電率は、好ましくは1.75~2.3、より好ましくは1.8~2.2である。
【0040】
(実施例)
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。実施例中、特に支持しない限り、%や部などは質量に基づく。
【0041】
(実施例1)
容量10Lのジャケット付きガラスライニング(GL)攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0042】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2gおよび水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0043】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160:(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー流量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.8質量%)を得た。得られた乾燥造粒物をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行った。次に、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件1100℃×5時間保持して焼成し、降温速度1℃/分で降温を行って中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量(第3の工程の「50~200ml/分」で空気を導入することに相当)は100ml/分で一定に保持した。
【0044】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表1に記載した。粒度分布は、後述する中空球状アルミナ粒子D50およびD90の測定で同じであるが、レーザー散乱式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定した。D50は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味で、D90は母集団の90%がこの値より下にあるという意味である。
【0045】
また、得られたアルミナ粒子の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表5に記載した。粒度分布はレーザー散乱式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定した。図1に実施例1のアルミナ粒子の粒度分布結果をグラフで示した。前述のように、D50は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味で、D90は母集団の90%がこの値より下にあるという意味であるので、図1に示すように実施例1のアルミナ粒子の粒度分布はD50が2.5μmで、D90が5.0μm以下であることが確認できた。
【0046】
表1には、得られたアルミナ粒子の比表面積(m/g)、嵩比重(g/cm)、結晶系、f=1MHzでの比誘電率および不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も記載した。比表面積は自動比表面積測定装置((株)島津製作所製Gemini7 2390)を用いてNで測定し、BET法で解析したデータを示す。嵩比重は、質量を体積で割った値であるが、具体的には1mmの目開きの篩通しをした粉体を0.1質量%の精度で秤量した約40gの試料(M)を100mlのメスシリンダー(最小メモリ単位1ml)に入れ、表面を軽くならし、ゆるみ嵩体積(V)を読み取り、嵩比重:M/V(g/cm)を算出した。結晶系(結晶相)は、X線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を基に表1に記載した。f=1MHzでの比誘電率の測定は、誘電率測定システムWKR6510P((株)東陽テクニカ製)を用いて、容量法で測定を実施した。Na、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量は、卓上走査電子顕微鏡(SEM:日本電子(株)製JCM-7000)を用い、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を用いて測定を実施した。図2には実施例1で得られたアルミナ粒子の結晶系の測定結果を示した。
【0047】
上記実施例1のアルミナ粒子の図2のX線回折結果より、実施例1のアルミナ粒子はαアルミナができていることが確認された。またアルミナ粒子を容量法でf=1MHzの比誘電率を測定したとき、比誘電率が2.0であることも確認された。
【0048】
図4および図5には、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子のSEM画像である。図4は50,000倍のSEM画像であり、αアルミナの微結晶が集合して、中空球状アルミナの外皮を形成していることが確認される。図5の実施例1のアルミナ粒子の断面の50,000倍のSEM像より、中空球状アルミナ粒子が球状構造を持つことが確認される。従って、実施例1で得られたアルミナ粒子は、中空球状アルミナ粒子であると、確認できた。
【0049】
(実施例2)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0050】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0051】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー流量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:7.1質量%)をアルミナの焼成鞘に70体積%で充填を行った。次に、焼成鞘を1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1170℃×5時間保持し、降温を1℃/分で降温を行った。これにより結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0052】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表1に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表5に記載した。表5には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0053】
(実施例3)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0054】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを 加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0055】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度118℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:150ml/分、エアー供給量:350L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施した。捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.0質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×6時間保持し、1℃/分で降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は85ml/分で一定に保持した。
【0056】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表1に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表5に記載した。表5には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0057】
(実施例4)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1531.6gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量20.0質量%、NaO換算Na量18.9%)1559.0gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0058】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは1920gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水159.1gを加えて30分間撹拌して262.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時 間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.9質量%、塩基度71.5%、ナトリウムイオン0.04質量%、Si:0.0048質量%、Ca:0.0038質量%、Mg:0.001質量%、Fe:0.001質量%)を作製した。
【0059】
得られた当該塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160 (株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー供給量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施した。捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.5質量%)をアルミナの焼成鞘に70体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件1170℃×5時間保持し、1℃/分で降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0060】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表1に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表5に記載した。表5には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0061】
(実施例5)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0062】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを 加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン 0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0063】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度118℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:150ml/分、エアー供給量:350L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施した。捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.9質量%)をムライトコージライトの焼成鞘に60体積%で充填を行い、2℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×6時間、2℃/分で降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0064】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表2に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表6に記載した。表6には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0065】
(実施例6)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0066】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:52ppm、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0067】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(MDP-050(株)GF製)で入り口温度200℃、出口温度100℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:650ml/分、エアー供給量:1000L/分で四流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.6質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0068】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表2に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表6に記載した。表6には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0069】
(実施例7)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0070】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを 加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時 間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0071】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(MDP-050 (株)GF製)で入り口温度180℃、出口温度101℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:500ml/分、エアー供給量:1,000L/分で四流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:7.6質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0072】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表2に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表6に記載した。表6には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0073】
(実施例8)
容量1Lのジャケット付きGL撹拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水153.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)190.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量20.0質量%、NaO換算Na量18.9%)153.9g、アルミン酸カリウム粉末2gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液500gを得た。
【0074】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を5回繰り返した。得られた洗浄ゲルは195gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.7g、次いで水道水156.6gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で1.5時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.8質量%、塩基度72.4%、ナトリウムイオン0.02質量%、カリウムイオン0.01質量%、Si:0.0047質量%、Ca:0.0050質量%、Mg:0.0006質量%、Fe:0.0011質量%)を作製した。
【0075】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー供給量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:7.0質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0076】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表2に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表6に記載した。表6には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0077】
(比較例1)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0078】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0079】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度105℃、液供給量:400ml/分、アトマイザーを用いて18000rpmで造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:7.3質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施した。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0080】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表3に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表7に記載した。表7には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0081】
比較例1では、表3に記載するように、塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒物のD50が49μmで、D90が110μmであり、本発明の要件である乾燥造粒物のD50(1~4.5μm)およびD90(8μm以下)を満足せず、最終的に得られた中空球状アルミナ粒子もD50が43μmでD90が105μmであって、本発明の要件であるD50(1.0~3.5μm)およびD90(6μm以下)を満足せず、中空球状アルミナ粒子の粒径を小さくすることができない。これは塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒において、小さな乾燥造粒物を製造できないアトマイザーを用いたことによると思われる。噴霧乾燥において、液滴をつくる部分をノズルからアトマイザーの方式に変更すると、生産性はあがるが、液滴の大きなもの、即ち細かいものができない。
【0082】
(比較例2)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0質量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0質量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0083】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを 加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時 間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン 0.01質量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0084】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度150℃、出口温度85℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー供給量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:13.4質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件 1100℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施した。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0085】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表3に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表7に記載した。表7には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0086】
比較例2でも、表3に記載するように、塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒物のD50が130μmで、D90が8800μmであり、本発明の要件である乾燥造粒物のD50(1~4.5μm)およびD90(8μm以下)を満足せず、最終的に得られた中空球状アルミナ粒子もD50が125μmでD90が865μmであって、本発明の要件であるD50(1.0~3.5μm)およびD90(6μm以下)を満足せず、中空球状アルミナ粒子の粒径を小さくすることができない。これはスプレードライヤーの入り口温度150℃および出口温度が出口温度85℃と、スプレードライ時に使用する温度範囲である180℃~280℃の範囲に無いために、乳酸アルミニウム乾燥造粒物の揮発分が高くなり、焼成前に粉の固着(凝集塊)が発生し、焼成時に凝集塊のまま焼成されてしまうため、粒子径の大きなものができるからと考えられる。
【0087】
(比較例3)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0重量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0088】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0089】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160 (株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー流量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.8質量%)をアルミナの焼成鞘に95体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件1100℃×5時間、1℃/分で降温を行った。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0090】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表3に記載した。また、焼成は行ったが焼成不良により得られたアルミナ粒子のD50、D90およびその他の測定が不可能であった。これは、焼成時に焼成用鞘への乾燥造粒物の充填量が95体積%と高く、焼成が不十分となり、残留炭素が多数発生し、アルミナになっていないことが確認された。
【0091】
(比較例4)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0重量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0092】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0093】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160 (株)プリス)製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー流量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:6.8質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件800℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施した。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0094】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表3に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表7に記載した。表7には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0095】
この場合、焼成時の焼成温度が800℃であり、1050℃より低温であるため、得られたアルミナ粒子の結晶系がαではなく、γであるため比表面積が高くなる。
【0096】
(比較例5)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1451.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1911.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0重量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0097】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水162.1gを加えて30分間撹拌して265.4gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.4質量%、塩基度70.3%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0009質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0098】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度108℃、ガス圧力:0.2MPa、液供給量:200ml/分、エアー流量:150L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:7.3質量%)をアルミナの焼成鞘に70体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件1100℃×5時間、1℃/分降温を行い、焼成を実施し、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子を得た。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0099】
焼成前の乾燥造粒物の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表4に記載した。得られたアルミナ粒子の粒度分布(D50およびD90)、比表面積、嵩比重、結晶系、およびf=1MHzでの比誘電率を、実施例1に記載する方法で測定し、結果を表8に記載した。表8には、得られたアルミナ粒子の不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も実施例1と同様に記載した。
【0100】
比較例5では、スプレードライ時のガス圧力が0.2MPaと低く、エアー流量も150L/分と低いため、スプレードライの二流体ノズルで乳酸アルミニウムの乾燥造粒物を作る際に細かいものが製造できない。そのことは、表4から明らかなように、得られた中空球状アルミナ粒子のD50が12μmでD90も34μmと粒径が大きくなる。尚、比較例5は特許文献1に相当するアルミナ粒子に相当する。
【0101】
(比較例6)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算Al量23.0重量%、NaO換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0102】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水152.1gを加えて30分間撹拌して255.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)34.7g、塩化カルシウム10.0g投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al換算Al量8.2質量%、塩基度70.5%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:1.26質量%、Mg:0.0007質量%質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0103】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライヤー(TR-160(株)プリス製)で入り口温度250℃、出口温度115℃、ガス圧力:0.5MPa、液供給量:200ml/分、エアー流量:300L/分で二流体ノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒物(揮発分:7.4質量%)をアルミナの焼成鞘に60体積%で充填を行い、1℃/分で昇温を行い、ピーク焼成条件1100℃×5時間、1℃/分で降温を行い、焼成を実施した。尚、昇温時、保持時および降温時の空気導入量は100ml/分で一定に保持した。
【0104】
比較例6では、Caの不純物としてのCaの含有量が高く、焼成時にαアルミナではない、結晶相を形成してしまうため、本発明の目的とする中空球状アルミナ粒子が得られなかった。表8には、そのことを記載している。図3には、比較例6で得られたアルミナ粒子のX線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を示す図である。図3図2とX線回折のピークパターンが大きく異なり、αアルミナ結晶系ではないことが解る。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
尚、表5~8中、「n.d.」は測定できないことを意味する。
【0114】
表1~2に示すように、実施例1~8の中空球状アルミナ粒子の製造時に得られる塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒物の粒度分布におけるD50およびD90の値は、D50が1.0~4.5μmの範囲内であり、D90が8μm以下であることが確認できた。また、表5および表6に示すように、実施例1~実施例8に示す中空球状アルミナ粒子は、いずれもα-アルミナを示し、粒度分布測定においてD50が1.0~3.5μm、D90が6μm以下であることが確認できた。また比表面積が1~20m/gであることが確認された。また、これらの中空球状アルミナ粒子は、エネルギー分散型蛍光X線で元素分析を行った際に、アルカリ金属元素イオン(NaおよびK)を0.005~1.2質量%の範囲で含み、Ca、Mg、SiおよびFeの濃度が検出されないことが確認された。更に、表5および6には、容量法で測定した周波数f=1MHzでの比誘電率も1.7~2.4の範囲内にあり、薄膜の樹脂シートに混入した場合に粒径が小さくしかも比誘電率が低くできる。
【0115】
表3および表7に示すように、比較例1はスプレードライの造粒部分にアトマイザーを用いているため、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が43μmでD90が105μmと大きく、細かい液滴を作製することができないため、粒子径の小さい乾燥造粒物を作製することができない。そのため焼成しても細かい粒子径の中空球状アルミナを得ることができない。比較例2はスプレードライの入り口温度、出口温度が低い為、乳酸アルミニウムの乾燥造粒物の揮発分が高く、固着による凝集物が多数確認される。それを焼成用鞘に投入し、焼成することで凝集塊のままの中空球状アルミナができるため、本発明の目的とする小さな粒子径(D50が1.0~3.5μm、D90が6μm以下)の中空球状アルミナが得られない。比較例3は焼成用鞘に乳酸アルミニウムの乾燥造粒物を95体積%と過剰に充填して焼成するため、焼成が不十分な箇所が発生し、残炭が残るため、焼成不良となる課題がある。比較例4は乾燥造粒物の焼成時の焼成温度が800℃であり、1050℃より低温であるため、結晶系が比表面積の大きなγ相を呈し、α相にならない課題がある。比較例5はスプレードライ時のガス圧力とエアー流量が低い為、粒子径の小さい乾燥造粒物を得ることができない。結果として焼成後にも本発明の目的とする小さな粒子径(D50が1.0~3.5μm、D90が6μm以下)の中空球状アルミナが得られない。比較例6はCaの含有量が多すぎるため、アルミニウムとカルシウムの複合酸化物が生成しており、αアルミナ単相になっていない。
【0116】
本発明は、以下の態様も提案している。
[1]
塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.4~1MPa、エアー流量200~4,000L/分で大気または不活性ガス中で、180~280℃の温度で液供給量を100~500ml/分で供給してスプレードライにて乾燥造粒し、乾燥造粒物のレーザー回折式粒度分布測定においてD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%、嵩比重を0.2~0.7g/cmに制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%充填する第2の工程と、
第2の工程で得られた焼成用鞘を0.3~3℃/分で昇温し、1,050℃以上1,200℃未満の温度範囲内の焼成温度で2~8時間焼成し、次に0.3~10℃/分で大気中で50~200ml/分で空気を導入しながら降温する第3の工程と、からなる中空球状アルミナ粒子の製造方法において、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl換算で8~13質量%で含み、
前記中空球状アルミナ粒子が、レーザー回折式粒度分布測定において、D50が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であり、内部が中空でかつ球状であり、比表面積が1~20m/gである、ことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[2]
前記中空球状アルミナ粒子は、嵩比重が0.3~0.7g/cm3であり、中空球状アルミナ粒子の結晶相がα相であることを特徴とする[1]に記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[3]
前記中空球状アルミナ粒子は、容量法で測定した周波数f=1MHzでの比誘電率が1.7~2.4を示すことを特徴とする[1]または[2]に記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[4]
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムのいずれかまたは両方と、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、得られたゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【要約】
【課題】
平均粒径(D50)が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下である中空で球状のアルミナ粒子を提供する。
【解決手段】
本発明は、所定の塩基性乳酸アルミニウム水溶液をスプレードライにて乾燥造粒して、乾燥造粒物のD50が1.0~4.5μm、D90が8μm以下であり、揮発分を0~10質量%に制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を焼成用鞘に鞘内部の体積の50~80体積%充填する第2の工程と、
第2の工程で得られた焼成用鞘を焼成する第3の工程と、からなる中空球状アルミナ粒子の製造方法であって、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液の不純物を所定の範囲に制御し、
前記中空球状アルミナ粒子が、レーザー回折式粒度分布測定において、D50が1.0~3.5μmであり、かつD90が6μm以下であり、内部が中空でかつ球状であるものを提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5