(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】車両用シートの支持構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20250616BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/16
(21)【出願番号】P 2021209615
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米持 光恭
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239373(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017208875(DE,A1)
【文献】特表2018-502779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/427
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションフレームに回動可能に支持されるとともに、貫通孔が形成されたアーム部を有し、前記シートクッションフレームを昇降させるリフタ機構を構成するリンク部材と、
略車両上下方向に延在する長孔部を有する支持フレームと、
前記長孔部の上縁部に固着された張出部と、該張出部が連結部を介して一体に設けられ、前記長孔部の上縁側と連通する貫通孔が形成されたリング部と、を有する座金と、
前記アーム部の貫通孔、前記長孔部の上縁側、前記リング部の貫通孔に挿通される軸部を有し、前記アーム部が前記支持フレームに回動可能に支持されるようにする締結具と、
を備えた車両用シートの支持構造。
【請求項2】
前記連結部が、前記リング部よりも強度の低い脆弱部とされている請求項1に記載の車両用シートの支持構造。
【請求項3】
前記リング部の前記連結部とは反対側が、前記連結部側よりも幅広に形成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの支持構造。
【請求項4】
前記締結具は、前記リング部に固着されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートの支持構造。
【請求項5】
前記長孔部の幅は、略車両下方向へ行くに従って、前記軸部の外径よりも小さくなるように形成されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シートの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションフレームを上下方向に移動可能とするリフタ機構を有する車両用シートは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用シートでは、車両が後方から衝突を受けたときに、乗員に作用する荷重により、リフタ機構を構成するリンク部材の脆弱部を変形させ、シートクッションの位置を少なくとも後方に移動させて、その衝突による衝撃を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リフタ機構を構成するリンク部材の脆弱部を変形させるなど、そのリンク部材を破損させることによって、車両の後面衝突時における衝撃を吸収する構造は、リンク部材の再利用を不能にするため、望ましくない。つまり、車両の後面衝突時における衝撃(車両後方側から加えられた荷重)を吸収する構造において、リフタ機構を構成するリンク部材の破損を抑制できる構造には、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両に車両後方側から荷重が加えられても、リフタ機構を構成するリンク部材の破損を抑制できる車両用シートの支持構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用シートの支持構造は、シートクッションフレームに回動可能に支持されるとともに、貫通孔が形成されたアーム部を有し、前記シートクッションフレームを昇降させるリフタ機構を構成するリンク部材と、略車両上下方向に延在する長孔部を有する支持フレームと、前記長孔部の上縁部に固着された張出部と、該張出部が連結部を介して一体に設けられ、前記長孔部の上縁側と連通する貫通孔が形成されたリング部と、を有する座金と、前記アーム部の貫通孔、前記長孔部の上縁側、前記リング部の貫通孔に挿通される軸部を有し、前記アーム部が前記支持フレームに回動可能に支持されるようにする締結具と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車両に車両後方側から荷重が加えられると、乗員に作用する荷重により、シートクッションフレーム及びリンク部材のアーム部を介して、そのアーム部の貫通孔に挿通されている締結具に略車両下方側へ向かう荷重が伝達される。すると、その締結具が挿通されている座金のリング部にも、略車両下方側へ向かう荷重が伝達されるが、その座金の張出部は、支持フレームにおける長孔部の上縁部に固着されている。そのため、連結部に対して略車両下方側へ向かう荷重が伝達され、その連結部が伸長するように変形又は破断する。これにより、締結具は、支持フレームの長孔部に沿って略車両下方側へ移動することが可能となるため、リンク部材のアーム部の破損を低減しつつ、入力された荷重が吸収可能となる。このように、本発明によれば、車両に車両後方側から荷重が加えられても、リフタ機構を構成するリンク部材の破損が抑制される。
【0008】
また、請求項2に記載の車両用シートの支持構造は、請求項1に記載の車両用シートの支持構造であって、前記連結部が、前記リング部よりも強度の低い脆弱部とされている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、連結部が、リング部よりも強度の低い脆弱部とされている。したがって、連結部に対して略車両下方側へ向かう荷重が伝達された際には、その連結部が効率よく変形又は破断される。
【0010】
また、請求項3に記載の車両用シートの支持構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの支持構造であって、前記リング部の前記連結部とは反対側が、前記連結部側よりも幅広に形成されている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、リング部の連結部とは反対側が、連結部側よりも幅広に形成されている。つまり、リング部の連結部とは反対側の強度が、連結部側よりも高くされている。したがって、締結具を介して座金のリング部に略車両下方側へ向かう荷重が伝達されても、そのリング部が破損することが抑制又は防止される。これにより、座金の連結部が効率よく変形又は破断される。
【0012】
また、請求項4に記載の車両用シートの支持構造は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートの支持構造であって、前記締結具は、前記リング部に固着されている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、締結具が、座金のリング部に固着されている。したがって、締結具が、座金のリング部に固着されていない場合に比べて、その締結具から座金のリング部へ略車両下方側へ向かう荷重が効率よく伝達される。
【0014】
また、請求項5に記載の車両用シートの支持構造は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シートの支持構造であって、前記長孔部の幅は、略車両下方向へ行くに従って、前記軸部の外径よりも小さくなるように形成されている。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、支持フレームにおける長孔部の幅が、略車両下方向へ行くに従って、締結具の軸部の外径よりも小さくなるように形成されている。したがって、支持フレームにおける長孔部の幅が一定とされている場合に比べて、締結具が略車両下方側へ急激に移動することが緩和される。また、締結具の軸部は、長孔部の幅を広げるように、支持フレームにおける長孔部の周縁部を変形させつつ略車両下方側へ移動することになるため、その支持フレームにより、入力された荷重の吸収効率が向上される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、車両に車両後方側から荷重が加えられても、車両用シートのリフタ機構を構成するリンク部材の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を示す側面図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する後方リンク部材及び支持フレームと支持フレームに設けられる座金とを拡大して示す側面図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する後方リンク部材及び支持フレームと支持フレームに設けられる座金とを拡大して示す分解斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する支持フレームに設けられる座金を拡大して示す側面図である。
【
図5】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する支持フレームに設けられる座金の連結部が破断した状態を拡大して示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する支持フレームに設けられる座金に締結具のナット部がアーク溶接された状態を拡大して示す断面図である。
【
図7】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する支持フレームに設けられる座金に締結具のナット部がプロジェクション溶接された状態を拡大して示す断面図である。
【
図8】本実施形態に係る車両用シートのリフタ機構を構成する支持フレームに形成された長孔部の変形例を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両用シートの上方向、矢印FRを車両用シートの前方向、矢印LHを車両用シートの左方向とする。そして、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両用シートの上下方向の上下、車両用シートの前後方向の前後、車両用シートの左右方向の左右を示すものとする。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係る支持構造10を備えた車両用シート12は、乗員(図示省略)の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、乗員の背部を支持するシートバック18と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、を含んで構成されている。シートクッション14の内部には、左右一対のシートクッションフレーム16が配置されている。
【0020】
車両用シート12は、車室のフロア(床面)20に固定された左右一対のシート支持装置22に取り付けられている。シート支持装置22は、フロア20に固定された前後一対の支持具24と、前後方向に延在するとともに各支持具24に固定されたロアレール26と、ロアレール26にスライド可能に支持されたアッパレール28と、を有している。
【0021】
そして、シート支持装置22は、車両用シート12の前後方向の位置を調整するために、ロアレール26に対するアッパレール28のスライドロック機構を解除するスライドレバー(図示省略)を有している。また、シート支持装置22は、アッパレール28に固定された支持フレーム30を有しており、支持フレーム30には、後述するリフタ機構40を介してシートクッションフレーム16が接続されている。
【0022】
リフタ機構40は、シートクッション14(シートクッションフレーム16)の高さを調整可能とする機構であり、車室のフロア20に取り付けられたシート支持装置22に対してシートクッションフレーム16を上下方向に移動(昇降)可能となるように構成されている。リフタ機構40は、車両用シート12の両側部に左右一対で設けられており、ここでは、主に一方(
図1に示される右側)のリフタ機構40を例に採って説明する。
【0023】
リフタ機構40は、シートクッションフレーム16の前部に設けられた平板状の前方リンク部材42と、シートクッションフレーム16の後部に設けられたリンク部材としての平板状の後方リンク部材50と、シートクッションフレーム16の一方(右側)の側部に回転可能に軸支されたピニオンギア48と、を有している。
【0024】
前方リンク部材42は、左右で同一形状に形成されている。そして、前方リンク部材42の一端部(上端部)は、回動軸44によりシートクッションフレーム16の前部に回動可能に支持されており、前方リンク部材42の他端部(下端部)は、回動軸46により支持フレーム30の前部に回動可能に支持されている。
【0025】
図1~
図3に示されるように、後方リンク部材50は、略扇型形状の本体部52を有しており、ピニオンギア48が設けられている側(右側)の本体部52における円弧状とされている前端部には、そのピニオンギア48と噛合するギア歯58が形成されている。つまり、ピニオンギア48が設けられていない側(左側)の後方リンク部材(図示省略)における本体部の前端部には、ギア歯が形成されていない。
【0026】
また、本体部52の後端部には、円形状の貫通孔52B(
図2、
図3参照)が形成されており、その貫通孔52B及びシートクッションフレーム16の後部に形成された貫通孔(図示省略)に回動軸54が挿通されて取り付けられることにより、本体部52が、シートクッションフレーム16の後部に回動可能に支持されている。
【0027】
また、本体部52の略中央部には、円弧状の長孔部52Aが形成されており、その長孔部52Aには、シートクッションフレーム16に突設された円柱状のガイドピン16A(
図1参照)が挿入されている。このガイドピン16Aにより、本体部52の回動軸54を中心とした回動範囲が制限されるようになっている。
【0028】
後方リンク部材50の本体部52における下部には、ギア歯58よりも前方下側へ延在するアーム部56が一体に形成されている。そして、そのアーム部56の先端部(下端部)が、支持フレーム30に回動可能に支持されている。具体的に説明すると、
図2、
図3に示されるように、アーム部56の先端部には、円形状の貫通孔56Aが形成されている。
【0029】
一方、支持フレーム30の後部には、略上下方向(詳細には、やや前方下側)に延在する長孔部32が形成されている。そして、支持フレーム30には、座金34が設けられている。
図3、
図4に示されるように、座金34は、締結具60の軸部62が挿通される貫通孔36Aを有するリング部36と、そのリング部36から連結部37を介して一体に前後方向へ張り出した張出部38と、を有している。
【0030】
つまり、この座金34は、連結部37と張出部38とで略「T」字状をなすように形成されている。そして、その張出部38が、長孔部32の上縁部(周縁部における上側部分)32Aに溶接等によって固着されている。なお、
図4、
図5において、その溶接領域を仮想線Kで示す。これにより、座金34のリング部36が長孔部32の上縁側に位置するように保持され、リング部36の貫通孔36Aと長孔部32の上縁側とアーム部56の貫通孔56Aが連通する構成になっている。
【0031】
そして、その連通された貫通孔56A、長孔部32、貫通孔36Aに締結具60の軸部62が挿通されてナット部64に嵌められるようになっており、これによって、アーム部56が支持フレーム30の後部で、かつ上部に回動可能に支持される構成になっている。なお、座金34の連結部37は、リング部36よりも強度の低い脆弱部とされている。すなわち、例えば連結部37の板厚は、リング部36の板厚よりも薄く形成されている。
【0032】
また、リング部36の連結部37とは反対側の部分が、連結部37側の部分よりも幅広に形成されている。すなわち、リング部36の下部側は幅広部36Bとなっている。また、
図6に示されるように、ナット部64は、締結具60の軸部62が嵌められた後、座金34のリング部36にアーク溶接等によって固着されるようになっている。
【0033】
以上のような構成のリフタ機構40は、乗員がリフタレバー(図示省略)を操作することにより、シートクッションフレーム16の左右方向内側に設けられたモータ(図示省略)が駆動し、ピニオンギア48が図示の時計回り方向と反時計回り方向とに切り替えられて回転するように構成されている。つまり、リフタレバーの操作により、シートクッションフレーム16の上下方向の位置が調整可能となっている。
【0034】
具体的には、ピニオンギア48が図示の時計回り方向回転すると、そのピニオンギア48にギア歯58が噛合していることにより、本体部52が回動軸54を中心に上方向へ回動し、シートクッションフレーム16を下降させるようになっている。そして、ピニオンギア48が図示の反時計回り方向回転すると、そのピニオンギア48にギア歯58が噛合していることにより、本体部52が回動軸54を中心に下方向へ回動し、シートクッションフレーム16を上昇させるようになっている。
【0035】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両用シート12の支持構造10において、次にその作用について説明する。
【0036】
車両用シート12の支持構造10を備えた車両が後面衝突すると(車両に後方側から荷重が加えられると)、乗員に作用する荷重(衝突荷重)により、シートクッションフレーム16及び後方リンク部材50のアーム部56を介して、そのアーム部56の貫通孔56Aに軸部62が挿通されている締結具60に、略下方側(詳細には、やや前方下側)へ向かう荷重が伝達される。
【0037】
すると、長孔部32の上縁側に位置し、かつ締結具60の軸部62が挿通されている座金34のリング部36にも、略下方側へ向かう荷重が伝達される。ここで、その座金34の張出部38は、支持フレーム30における長孔部32の上縁部32Aに固着されている。したがって、リング部36に略下方側へ向かう荷重が伝達されると、連結部37に対して略下方側へ向かう荷重が伝達され、その連結部37が伸長するように変形するか、又は
図5に示されるように破断する。
【0038】
これにより、締結具60(軸部62)は、支持フレーム30の長孔部32に沿って(長孔部32に案内されて)略下方側へ移動することが可能となるため、その移動により、後方リンク部材50のアーム部56に加えられる荷重が低減されつつ、換言すれば後方リンク部材50のアーム部56の破損が低減されつつ、入力された荷重が吸収される。
【0039】
このように、本実施形態に係る車両用シート12の支持構造10によれば、車両が後面衝突しても(車両に後方側から荷重が加えられても)、リフタ機構40を構成する後方リンク部材50の破損を抑制又は防止することができる。
【0040】
また、座金34において、連結部37が、リング部36よりも強度の低い脆弱部とされている。したがって、連結部37に対して略下方側へ向かう荷重が伝達された際には、その連結部37が伸長するように、その連結部37を効率よく変形させることができ、更には効率よく破断させることができる。
【0041】
また、リング部36の連結部37とは反対側の部分が、連結部37側の部分よりも幅広に形成された幅広部36Bとされている。つまり、リング部36の連結部37とは反対側の強度が、連結部37側の強度よりも高くされている。したがって、締結具60を介して座金34のリング部36に略下方側へ向かう荷重が伝達されても、そのリング部36が破損することを抑制又は防止することができる。これにより、座金34の連結部37が伸長するように、その連結部37を効率よく変形させることができ、更には効率よく破断させることができる。
【0042】
また、締結具60のナット部64が、座金34のリング部36に固着されている。したがって、締結具60のナット部64が、座金34のリング部36に固着されていない場合に比べて、その締結具60(軸部62)から座金34のリング部36へ略下方側へ向かう荷重が効率よく伝達される。
【0043】
なお、締結具60のナット部64を座金34のリング部36に固着する手段は、
図6に示されるアーク溶接に限定されるものではなく、例えば
図7に示されるように、プロジェクション溶接であってもよい。
【0044】
また、支持フレーム30に形成される長孔部32は、
図8に示されるような形状とされていてもよい。すなわち、
図8に示されるように、長孔部32の幅(側面視で長孔の延在方向と直交する方向の長さ)が、略下方向へ行くに従って、締結具60の軸部62の外径よりも小さくなるように形成してもよい。
【0045】
これによれば、長孔部32の幅が一定とされている場合に比べて、締結具60が略下方側へ急激に移動することを緩和させることができる。また、締結具60の軸部62は、長孔部32の幅を広げるように、支持フレーム30における長孔部32の周縁部を変形させつつ略下方側へ移動することになるため、その支持フレーム30により、入力された荷重の吸収効率を向上させることができる。
【0046】
つまり、座金34の連結部37が変形又は破断されることによる1段階目のエネルギー吸収に引き続き、長孔部32の周縁部が変形されることによる2段階目のエネルギー吸収が行われるため、座金34の連結部37が変形又は破断されることによる1段階目のエネルギー吸収だけの場合に比べて、入力された荷重をより多く吸収することができる。
【0047】
以上、本実施形態に係る車両用シート12の支持構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用シート12の支持構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、連結部37は、リング部36よりも強度の低い脆弱部とされていればよく、図示は省略するが、張出部38のような細長い平板状等に形成されていてもよい。
【0048】
また、連結部37が、車両の後面衝突時における衝突荷重の入力によって変形又は破断可能に構成されているのであれば、その連結部37に積極的に脆弱部を形成しなくてもよい。更に、リング部36の強度が充分に確保されているのであれば、リング部36の連結部37とは反対側の部分が、連結部37側の部分よりも幅広に形成されていなくてもよい。
【0049】
また、締結具60のナット部64をリング部36に固着する手段は、溶接に限定されるものではなく、例えば接着剤等であってもよい。また、車両の後面衝突によって衝突荷重が入力されてもナット部64が外れ難い構成になっている場合には、そのナット部64がリング部36に固着されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 支持構造
12 車両用シート
16 シートクッションフレーム
30 支持フレーム
32 長孔部
32A 上縁部
34 座金
36 リング部
36A 貫通孔
37 連結部
38 張出部
40 リフタ機構
50 後方リンク部材(リンク部材)
56 アーム部
56A 貫通孔
60 締結具
62 軸部