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特許7696823非晶質シリカの製造装置および非晶質シリカの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】非晶質シリカの製造装置および非晶質シリカの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20250616BHJP
   C10J 3/54 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
C01B33/18 B
C10J3/54 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021214487
(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公開番号】P2023098018
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】釜田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛士
(72)【発明者】
【氏名】横田 修
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-104916(JP,A)
【文献】米国特許第04592762(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102992335(CN,A)
【文献】特開平08-048515(JP,A)
【文献】特許第5213120(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C10J 1/00 - 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉と、前記反応炉にケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、前記反応炉の前記原料が滞留する底部から水蒸気と酸素含有ガスを供給するガス供給機構と、前記原料を前記水蒸気と酸素含有ガスと接触させて流動させながら熱処理することにより非晶質シリカを生成する非晶質シリカの製造装置であって、
前記ガス供給機構が前記ガスを噴出する複数の噴出孔を備え、
前記ガス供給機構から供給される平面視における前記ガスの前記噴出孔の分布、または其々の前記噴出孔から噴出される前記ガスの供給量の差である供給分布の少なくとも一つを調整することにより前記原料の流動状態を調節して、生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する流動状態調節機構を備えている非晶質シリカの製造装置。
【請求項2】
前記ガス供給機構から供給される前記酸素含有ガスの前記原料の供給量に対する比率を調節することにより生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する熱処理状態調節機構、をさらに備える請求項1記載の非晶質シリカの製造装置。
【請求項3】
前記流動状態調節機構は、前記ガス供給機構による前記ガスの前記噴出孔の分布を密にして前記ガスとの接触機会が均一な状態で前記原料を攪拌する第1流動状態と、前記ガス供給機構による前記ガスの前記噴出孔の分布を粗にして前記ガスとの接触機会が不均一な状態で前記原料を攪拌する第2流動状態と、に少なくとも調節可能に構成されている請求項1または2記載の非晶質シリカの製造装置。
【請求項4】
前記熱処理状態調節機構は、前記反応炉の内部空間の燃焼温度を前記非晶質シリカの結晶化を抑制する所定温度以下に維持する温度調節機構を含む請求項記載の非晶質シリカの製造装置。
【請求項5】
原料供給機構により反応炉に原料を供給する原料供給工程と、ガス供給機構により前記反応炉の前記原料が滞留する底部から水蒸気と酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、前記原料を前記水蒸気と酸素含有ガスと接触させて流動させながら熱処理することにより非晶質シリカを生成する非晶質シリカの製造方法であって、
前記ガス供給機構が前記ガスを噴出する複数の噴出孔を備え、
前記ガス供給工程で供給される平面視における前記ガスの前記噴出孔の分布、または其々の前記噴出孔から噴出される前記ガスの供給量の差である供給分布の少なくとも一つを調整することにより、前記原料の流動状態を調節して、生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する流動状態調節工程を備えている非晶質シリカの製造方法。
【請求項6】
前記ガス供給工程で供給される前記酸素含有ガスの前記原料の供給量に対する比率を調節することにより生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する熱処理状態調節工程、を含む請求項5記載の非晶質シリカの製造方法。
【請求項7】
前記流動状態調節工程は、前記ガス供給工程で供給される前記ガスの前記噴出孔の分布を密にしてガスとの接触機会が均一な状態で前記原料を攪拌する第1流動状態と、前記ガス供給工程で供給される前記ガスの前記噴出孔の分布を粗にして前記ガスとの接触機会が不均一な状態で前記原料を攪拌する第2流動状態と、に少なくとも調節する工程である請求項5または6記載の非晶質シリカの製造方法。
【請求項8】
前記熱処理状態調節工程は、前記反応炉の内部空間の燃焼温度を前記非晶質シリカの結晶化を抑制する所定温度以下に維持する温度調節工程を含む請求項6記載の非晶質シリカの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応炉と、前記反応炉にケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、前記反応炉の下方から水蒸気と酸素含有ガスを供給するガス供給機構と、前記ガス供給機構を介して供給するガスと接触させながら熱処理することにより非晶質シリカを生成する非晶質シリカの製造装置および非晶質シリカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、効率的にエネルギー回収するとともに純度の高い高品質なシリカを得ることができる非晶質シリカの製造方法及び製造装置が提案されている。
【0003】
当該非晶質シリカの製造方法は、ケイ酸植物由来のバイオマスを熱分解処理してガス化するガス化ステップと、前記ガス化ステップで生じたバイオマス残渣を焼成処理する焼成ステップと、を含む。
【0004】
また、当該非晶質シリカの製造装置は、ケイ酸植物を含むバイオマスを熱分解処理してガス化するガス化炉と、前記ガス化炉から排出された熱分解ガスとバイオマス残渣の混合物からバイオマス残渣を分離する分離機構と、前記分離機構で分離されたバイオマス残渣を焼成して非晶質シリカを得る焼成炉と、を備えている。
【0005】
上述した非晶質シリカの製造方法によれば、ガス化ステップによってケイ酸植物由来のバイオマスが熱分解されて燃料として回収され、残ったバイオマス残渣が焼成処理されることによってバイオマス残渣に残存していた炭素成分などの不純物が除去され、純度の高い白色の非晶質シリカが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-040861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された非晶質シリカの製造方法は、炭素成分などの不純物が除去され、純度の高い非晶質シリカを得るための製造方法および製造装置である。
【0008】
しかし、炭素成分などの不純物が含まれた非晶質シリカであっても再生資源として有効に活用できる用途が見出され、用途に応じて純度の異なる非晶質シリカを製造できる共用可能な製造装置が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、様々な用途に応じて純度の異なる非晶質シリカが得られる非晶質シリカの製造装置および非晶質シリカの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による非晶質シリカの製造装置の第一の特徴構成は、反応炉と、前記反応炉にケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、前記反応炉の前記原料が滞留する底部から水蒸気と酸素含有ガスを供給するガス供給機構と、前記原料を前記水蒸気と酸素含有ガスと接触させて流動させながら熱処理することにより非晶質シリカを生成する非晶質シリカの製造装置であって、前記ガス供給機構が前記ガスを噴出する複数の噴出孔を備え、前記ガス供給機構から供給される平面視における前記ガスの前記噴出孔の分布、または其々の前記噴出孔から噴出される前記ガスの供給量の差である供給分布の少なくとも一つを調整することにより前記原料の流動状態を調節して、生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する流動状態調節機構を備えている点にある。
【0011】
反応炉と、原料供給機構と、ガス供給機構と、を備えた製造装置を用いて、熱処理時に流動状態調節機構を介して、ガス供給機構から供給される平面視における前記ガスの前記噴出孔の分布、または其々の前記噴出孔から噴出される前記ガスの供給量の差である供給分布の少なくとも何れかを調整することで、原料の流動状態が調節され、性状が異なる非晶質シリカが生成されるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記ガス供給機構から供給される前記酸素含有ガスの前記原料の供給量に対する比率を調節することにより生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する熱処理状態調節機構、をさらに備える点にある。
【0013】
熱処理時に熱処理状態調節機構を介して酸素含有ガスの前記原料の供給量に対する比率を調節することで、非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合が調整され、性状が異なる非晶質シリカを生成することができる。例えば、純度の高い白色の非晶質シリカや、炭素を含む黒色の非晶質シリカが得られるようになる。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記流動状態調節機構は、前記ガス供給機構による前記ガスの前記噴出孔の分布を密にして前記ガスとの接触機会が均一な状態で前記原料を攪拌する第1流動状態と、前記ガス供給機構による前記ガスの前記噴出孔の分布を粗にして前記ガスとの接触機会が不均一な状態で前記原料を攪拌する第2流動状態と、に少なくとも調節可能に構成されている点にある。
【0015】
第1流動状態では、ガス供給機構から供給されるガスの噴出孔の分布が密となり、ガスが原料に均一に供給されるようになり、良好な燃焼反応が促進され、第2流動状態では、ガス供給機構から供給されるガスの噴出孔の分布が粗となり、ガスの上昇流に伴って原料が上昇する領域とガスが供給されずに原料が下降する領域とが生成されるようになり、良好なガス化反応が促進される。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述した第の特徴構成に加えて、前記熱処理状態調節機構は、前記反応炉の内部空間の燃焼温度を前記非晶質シリカの結晶化を抑制する所定温度以下に維持する温度調節機構を含む点にある。
【0017】
反応炉の内部でバイオマスが燃焼反応することにより上昇する温度が所定温度を超えると、非晶質のシリカが結晶化して発がん性を示すクリストバライトが生成される虞がある。そのような場合でも、温度調節機構により燃焼温度が所定温度以下に調節されることで、前記非晶質シリカの結晶化を防止して安定的に非晶質シリカを得ることができるようになる。
【0018】
また、本発明による非晶質シリカの製造方法の第一の特徴構成は、原料供給機構により反応炉に原料を供給する原料供給工程と、ガス供給機構により前記反応炉の前記原料が滞留する底部から水蒸気と酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、前記原料を前記水蒸気と酸素含有ガスと接触させて流動させながら熱処理することにより非晶質シリカを生成する非晶質シリカの製造方法であって、前記ガス供給機構が前記ガスを噴出する複数の噴出孔を備え、前記ガス供給工程で供給される平面視における前記ガスの前記噴出孔の分布、または其々の前記噴出孔から噴出される前記ガスの供給量の差である供給分布の少なくとも一つを調整することにより、前記原料の流動状態を調節して、生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する流動状態調節工程を備えている点にある。
【0019】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記ガス供給工程で供給される前記酸素含有ガスの前記原料の供給量に対する比率を調節することにより生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する熱処理状態調節工程、を含む点にある。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記流動状態調節工程は、前記ガス供給工程で供給される前記ガスの前記噴出孔の分布を密にしてガスとの接触機会が均一な状態で前記原料を攪拌する第1流動状態と、前記ガス供給工程で供給される前記ガスの前記噴出孔の分布を粗にして前記ガスとの接触機会が不均一な状態で前記原料を攪拌する第2流動状態と、に少なくとも調節する工程である点にある。
【0021】
同第四の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記熱処理状態調節工程は、前記反応炉の内部空間の燃焼温度を前記非晶質シリカの結晶化を抑制する所定温度以下に維持する温度調節工程を含む点にある。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した通り、本発明によれば、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、様々な用途に応じて純度の異なる非晶質シリカが得られる非晶質シリカの製造装置および非晶質シリカの製造方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による非晶質シリカの製造装置の一例を示す説明図
図2】(a)は熱処理が主に燃焼反応となる場合のガス供給機構の平面視の説明図、(b)は同ガス供給機構の要部断面図
図3】(a)は熱処理が主にガス化反応となる場合のガス供給機構の平面視の説明図、(b)は同ガス供給機構の要部断面図
図4】熱処理が主に燃焼反応となる場合の非晶質シリカの製造装置の説明図
図5】熱処理が主にガス化反応となる場合の非晶質シリカの製造装置の説明図
図6】非晶質シリカの製造装置に備えた制御装置の説明図
図7】(a),(b)は別実施形態を示す上部空気供給機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による非晶質シリカの製造装置および非晶質シリカの製造方法の一例を説明する。
[非晶質シリカの製造装置の構成]
図1には、本発明による非晶質シリカの製造装置1の一態様が示されている。非晶質シリカの製造装置1は、上下方向中央部に絞り部が形成され、下方が上方より縮径された円筒形状の反応炉2と、反応炉2にケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構4と、反応炉2の下方から水蒸気と酸素含有ガスの一例である空気の混合ガスを供給するガス供給機構3などを備え、反応炉2の底部には、噴流床を形成する所定量の珪砂が充填されている。
【0025】
原料供給機構4は、筒状のケーシングと筒状のケーシングに収容されたスクリュー羽根とを備えたスクリューコンベア機構で構成され、ケーシングの先端側が反応炉2の絞り部より下方の側壁にフランジ接続されている。図示していないが、ケーシングの基端側には定量供給機構を備えたホッパーが設けられている。
【0026】
ホッパーに充填されたバイオマスが、スクリュー羽根で圧密に搬送されて反応炉2に投入される。バイオマスとして、農家で生産された籾米が籾摺りされた後に生じる大量の籾殻が用いられる。
【0027】
ガス供給機構3は、反応炉2の下部側方に配置されたヘッダー管30と、ヘッダー管30に互いに平行な姿勢で接続された断面が円形の複数本の散気管31を備えて構成される。ヘッダー管30には、空気供給管32および蒸気供給管33が接続され、空気および蒸気の混合ガスがヘッダー管30を介して各散気管31に供給される。水蒸気として、飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられる。
【0028】
反応炉2の底部には少量の珪砂が充填されており、ガス供給機構3から供給される混合ガスにより反応炉2の下部で珪砂が流動する噴流床9が形成される。当該噴流床9で原料となる籾殻が珪砂により攪拌され、流動しながら空気の存在下で水蒸気により加熱されることで、熱処理されて非晶質シリカが生成される。熱処理には、籾殻に含まれる炭素成分が酸素と結合する燃焼反応と、籾殻に含まれる炭素成分が水蒸気と反応して一酸化炭素と水素が生じるガス化反応が含まれる。
【0029】
反応炉2の下方つまり縮径部で熱処理されて微粉体となった非晶質シリカは、燃焼排ガスとともに炉内を上昇して、反応炉2の頂部に接続された排気管10から排出される。なお、反応炉2の上方つまり拡径部では燃焼排ガスの流速が低下するため、熱処理が不十分な籾殻は自らの重量により下方に落下する。
【0030】
排気管10から排出された非晶質シリカは、サイクロン7に導かれて燃焼排ガスと分離して回収され、非晶質シリカが分離された後の燃焼排ガスは、二次燃焼設備8で二次燃焼された後に大気放出される。
【0031】
[熱処理状態調節機構の構成]
上述した非晶質シリカの製造装置1には、さらに熱処理状態調節機構Aを備えている。熱処理状態調節機構Aは、反応炉2に供給された原料の熱処理条件を調節する機構であり、同一の製造装置1でありながらも、原料を主に燃焼反応させるか、主にガス化反応させるかを切り替えることで、生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する機構である。
【0032】
原料に含まれる炭素などの不純物を十分に燃焼させる燃焼反応が主に起こるように熱処理状態調節機構Aを調節することで、純度の高い非晶質の白色シリカが得られる。また、原料に含まれる炭素などの不純物が残存する状態で主にガス化反応が起こるように熱処理状態調節機構Aを調節することで、非晶質の黒色シリカが得られる。
【0033】
本願明細書中において、白色シリカとは、非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合が5重量%未満であり、外見が白色または白っぽい非晶質シリカを指し、黒色シリカとは、非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合が5重量%を超え、外見が黒色または黒っぽい非晶質シリカのことを指すものとする。
【0034】
白色シリカは、白色の化粧品原料、吸着剤、白色の塗料や樹脂などの添加剤などの工業用材料、作物へのシリカ付与のための肥料など農業用材料に有効利用され、黒色シリカは、黒色の化粧品原料、吸着剤、黒色の塗料や樹脂などの添加剤、タイヤの添加在などの工業用材料、作物へのシリカおよび炭素付与のための肥料など農業用材料に有効利用される。
【0035】
熱処理状態調節機構Aは、ガス供給機構3から供給される酸素含有ガスの原料の供給量に対する比率を調節する酸素含有ガス比調節機構(本実施形態では酸素含有ガスとして空気が用いられるので空気比調節機構となる。)と、ガス供給機構3から供給されるガスの総量、供給位置、供給分布の少なくとも何れか一つを調整することにより、反応炉2の内部に形成される噴流床における原料の流動状態を調節する流動状態調節機構と、を含む。
【0036】
ガスの総量を増加させることにより原料の流動状態が激しくなり、ガスの総量を減少させることにより原料の流動状態が穏やかになる。ガスの供給位置の分布を密に調節することにより、原料とガスとの接触機会が均一な状態となるように原料を攪拌することができ、ガスの供給位置の分布を粗に調節することにより、原料とガスとの接触機会が不均一な状態となるように原料を攪拌することができる。ガスの供給分布を密に調節することにより、原料とガスとの接触機会が均一な状態となるように原料を攪拌することができ、ガスの供給分布を粗に調節することにより、原料とガスとの接触機会が不均一な状態となるように原料を攪拌することができる。例えば、ガスの供給位置の分布が同じであっても、各ノズルから噴出されるガス供給量を個々に異ならせることによってガスの供給分布を調節することができる。
【0037】
図2(a),(b)には、反応炉2で主に燃焼反応を生起させて白色シリカを得るためのガス供給機構3(3A)が示され、図3(a),(b)には、反応炉2で主にガス化反応を生起させて黒色シリカを得るためのガス供給機構3(3B)が示されている。上述したように、ガス供給機構3(3A,3B)は、反応炉2の下部側方に配置されたヘッダー管30と、ヘッダー管30に互いに平行な姿勢で接続された断面が円形の複数本の散気管31を備えている。ヘッダー管30には、空気供給管32および蒸気供給管33が接続され、空気および蒸気の混合ガスがヘッダー管30を介して各散気管31に供給される。
【0038】
各散気管31は、反応炉2の下部周壁に沿う断面弧状のアタッチメント31Fに支持されている。アタッチメント31Fは、反応炉2の下部側壁に形成された弧状の切欠きを覆う形状に形成され、各散気管31の先端側を反応炉2に進入させた状態でアタッチメント31Fを反応炉2の側壁に固定することにより、複数本の散気管31が互いに並行姿勢で反応炉2に固定される。
【0039】
図2(a),(b)に示すように、燃焼反応用のガス供給機構3(3A)を構成する散気管31は、原料供給機構4から供給された籾殻が、反応炉2の軸心に直交する任意の平面内で局所的に高温領域が生じることなく均一に撹拌および燃焼するように、小径かつ多数本で構成されている。
【0040】
詳述すると、散気管31には、水平方向に対して角度θで斜め下方に傾斜する二方向に向けた混合ガスの噴出孔31Hが形成されている。各散気管31に形成された噴出孔31Hは、軸心方向および軸心方向に交差する方向のピッチL2がほぼ等しくなるように設定され、また、散気管31同士のピッチL3は、軸心方向に交差する方向に沿って噴出孔31Hのピッチが略等しくなるように、L3≒2L2に設定されている。
【0041】
噴出孔31Hから反応炉2の下方に向けて吐き出された混合ガスは、珪砂を上方に吹き上げて噴流床を形成し、原料供給機構4から供給された籾殻を均一に撹拌する。角度θは、45°を中心にして30°~60°の範囲、好ましくは40°~50°の範囲に設定されている。各散気管31の径および本数は、反応炉2の下部の径に応じて設定される。例えば、反応炉2の下部の径L1が300mm~1800mmの範囲であれば、散気管31の径は20A(27.2mm)~80A(89.1mm)の範囲で選択でき、本数は6本~30本の範囲で選択できる。
【0042】
図3(a),(b)に示すように、ガス化反応用のガス供給機構3(3B)を構成する散気管31は、原料供給機構4から供給された籾殻が、反応炉2の軸心に直交する任意の平面内で不均一に流動することで大きな撹拌効果が得られるように、大径かつ少数本で構成されている。
【0043】
詳述すると、散気管31には、水平方向に対して角度θ斜め下方に傾斜する二方向に向けた混合ガスの噴出孔31Hおよび鉛直下方に向けた噴出孔31Hが形成されている。各散気管31に形成された噴出孔31Hは、軸心方向および軸心方向に交差する方向のピッチL2がほぼ等しくなるように設定され、散気管31同士のピッチL3は、L3>L2に設定されている。
【0044】
噴出孔31Hから反応炉2の下方に向けて吐き出された混合ガスは、珪砂を上方に吹き上げて噴流床を形成し、原料供給機構4から供給された籾殻に対して上方に巻き上げて撹拌する。L3>L2に設定されているため、混合ガスにより上方に巻き上げられた籾殻は各散気管31の間の上昇流の弱い領域を降下する、という大きな循環経路に沿って不均一に流動して大きく撹拌される。
【0045】
角度θは、45°を中心にして30°~60°の範囲、好ましくは40°~50°の範囲に設定されている。各散気管31の径および本数は、反応炉2の下部の径に応じて設定される。例えば、反応炉2の下部の径が300mm~1800mmの範囲であれば、散気管31の径は40A(48.6mm)~80A(89.1mm)の範囲で選択でき、本数は3本~6本の範囲で選択できる。
【0046】
つまり、ガス供給機構3(3A,3B)により流動状態調節機構が構成され、ガス供給機構3A,3Bの何れを用いるかにより籾殻の流動状態が調節されることになり、主に燃焼反応させるか、主にガス化反応させるかを切り替えることができる。ガス供給機構3Aをガス供給機構3Bに交換することで、原料を主に燃焼反応させることができ、ガス供給機構3Bをガス供給機構3Aに交換することで、原料を主にガス化反応させることができる。すなわち、ガス供給機構3(3A,3B)により噴流床による原料の流動状態を切り替える流動状態調節工程が実行される。なお、上述したL1,L2,L3の数値は例示であり、示された数値に限るものではない。
【0047】
換言すると、流動状態調節機構は、原料を主に燃焼反応させるべくガス供給機構3によるガスの供給位置の分布を密にしてガスとの接触機会が均一な状態で原料を攪拌する第1流動状態と、原料を主にガス化反応させるべくガス供給機構3によるガスの供給位置の分布を粗にしてガスとの接触機会が不均一な状態で原料を攪拌する第2流動状態との何れかに調節可能に構成されている。
【0048】
第1流動状態では、ガス供給機構3から供給されるガスの供給位置の分布が密となり、ガスが原料に均一に供給されるようになり、良好な燃焼反応が促進され、第2流動状態では、ガス供給機構3から供給されるガスの供給位置の分布が粗となり、ガスの上昇流に伴って原料が上昇する領域とガスが供給されずに原料が下降する領域とが生成されるようになり、良好なガス化反応が促進される。
【0049】
第1流動状態では、ガス供給機構3から供給される平面視における空気の供給位置の分布が密となり、流動層およびその上方空間で籾殻が均一に流動して空気との安定した接触機会が得られ、良好な燃焼反応が促進される。第2流動状態では、ガス供給機構3から供給される平面視における空気の供給位置の分布が粗となり、空気が供給されて籾殻に対して大きな上昇流が生じる領域と、空気が供給されずに籾殻に対して下降流が生じる領域とが生成され、流動層およびその上方空間で籾殻の上昇と下降が不均一な状態で繰り返される攪拌効果により、良好なガス化反応が促進される。
【0050】
以上の説明では、流動状態を調節するためにガスの供給位置の分布を調整する例を説明したが、流動状態を調節するためには、ガスの総量、供給位置、供給分布の少なくとも何れか一つを調整すればよく、ガスの総量、供給位置、供給分布の何れかを組み合わせて調節することも可能である。
【0051】
図1に戻り、ヘッダー管30に接続された空気供給管32には、コンプレッサやブロワファンから供給される圧縮空気が供給され、空気供給管32に備えたバルブ32V(ダンパでもよい。)によりその供給量が調節される。また、ヘッダー管30に接続された蒸気供給管33には、二次燃焼設備8に備えた熱交換器で生成された過熱蒸気または反応炉2に備えた熱交換器である熱回収機構5で生成された過熱蒸気が供給され、蒸気供給管33に備えたバルブ33V(ダンパでもよい。)によりその供給量が調節される。符号34は、蒸気の流量計である。
【0052】
バルブ32Vが空気比調節機構として機能し、原料供給機構4から供給された籾殻に対する空気比を調節することで、籾殻を燃焼反応させるかガス化反応させるかの何れかに調節することができる。
【0053】
空気比調節機構は、籾殻を主に燃焼反応させるべく籾殻に対する理論空気比が1より大きな値となる第1の範囲と、籾殻を主にガス化反応させるべく理論空気比1未満の値となる第2の範囲との何れかに調節する機構であり、空気比調節機構により空気比調節工程が実行される。
【0054】
籾殻に対する空気比を、理論空気比である1より大きな値となる第1の範囲に調節することで、籾殻を良好に燃焼反応させることができ、理論空気比である1未満の値となる第2の範囲に調節することで、籾殻を良好にガス化反応させることができる。
【0055】
第1の範囲は、空気比が1.3以上1.5以下の範囲であることが好ましい。空気比が1.3未満であると、シリカに炭素成分が残存して高品質の白色シリカが得られず、空気比が1.5より大きくなると、余剰空気による持ち出し熱量が多くなり、燃焼温度が低下して良好な燃焼状態を維持できない。また、第2の範囲は、空気比が0.2以上0.5以下の範囲であることが好ましい。空気比が0.2未満であると、熱分解が促進されず、空気比が0.5より大きくなると、炭素の一部が燃焼して良好な黒色シリカが得られない。
【0056】
なお、酸素含有ガスとして酸素富化空気など、空気以外を用いる場合には、酸素含有ガス比調節機構を介して、原料に対する酸素含有ガスの比率が空気比換算して理論空気比1より大きな値となる第1の範囲に調節することで、原料である籾殻を良好に燃焼反応させることができ、原料に対する酸素含有ガスの比率が空気比換算して理論空気比1未満の値となる第2の範囲に調節することで、原料である籾殻を良好にガス化反応させることができる。酸素富化空気を用いる場合は、ガス量が減少するため、ガス供給機構から供給されるガスの総量を調整することにより、原料の流動状態を調節してもよい。
【0057】
同様に、第1の範囲は1.3以上1.5以下の範囲であることが好ましく、第2の範囲は0.2以上0.5以下の範囲であることが好ましい。
【0058】
図4(a),(b)には、熱処理状態調節機構により籾殻を主に燃焼反応させるように調節され、白色の非晶質シリカを得る製造装置1およびガス供給機構3Aが示されている。制御装置(図6参照。)により、空気比が1.3以上1.5以下の範囲に入るようにバルブ32Vの開度が調節され、反応炉2の縮径部での温度が500℃~600℃の範囲に調節される。また拡径部での温度が750℃~800℃までの範囲に入るように、バルブ6Vを介して上部空気供給機構6からの供給空気量、およびバルブ5Vを介して熱回収機構5による熱回収量が調節される。そのために、熱回収機構5の下流側および上流側に設置された第1および第2の温度センサTH1,TH2の出力が制御装置に入力されている。
【0059】
この時の燃焼反応は、以下の反応式により表される。
C+O → CO
CO+(1/2)・O → CO
【0060】
図5(a),(b)には、熱処理状態調節機構により籾殻を主にガス化反応させるように調節され、黒色の非晶質シリカを得る製造装置1およびガス供給機構3Bが示されている。図外の制御装置により、空気比が0.2以上0.5以下の範囲に入るようにバルブ32Vの開度が調節され、反応炉2の縮径部での温度が500℃~600℃の範囲に、また拡径部での温度が700℃~750℃までの範囲に入るようにバルブ6Vを介して上部空気供給機構6からの供給空気量などが調節される。このとき蒸気供給管33に供給される蒸気は、二次燃焼設備8に備えた熱交換器で生成された過熱蒸気が使用される。
【0061】
この時のガス化反応は、主に水性ガス反応であり、以下の反応式により表される。
【0062】
水性ガス反応とは、次式に示すように、500℃以上の高温環境下でバイオマスである固体炭素Cと水蒸気HOとから一酸化炭素COと水素Hが生成される吸熱反応をいう。蒸気に加えて少量の空気を反応炉2に供給することで、籾殻の一部の燃焼により必要な反応熱が与えられ、かつ、炉内温度が500℃以上の高温環境下に保持される。
C+HO → CO+H
【0063】
本実施形態では、蒸気供給管33から圧力1MPa以下で、温度120℃~160℃の過熱蒸気が供給される。
反応炉2に供給される蒸気は、原料の初期加熱のため、水性ガス反応や燃焼反応によるシリカの比表面積の上昇などを含む賦活化のため、またその後の燃焼反応による炉内の雰囲気温度の異常な上昇の抑制のために用いられ、バルブ33Vによりその供給量が適切に調節される。主に水性ガス反応させる場合は、水蒸気の比率を高めて賦活化を促進させ、酸素含有ガスは炉内温度を保持できる最少量を供給する。主に燃焼反応させる場合は、酸素含有ガスの比率を高めて燃焼反応を促進させ、水蒸気は燃焼反応による局所高温場の生成を抑制する効果を有している。
【0064】
本実施形態では、バイオマスとして籾殻が用いられる。籾殻は約70%がセルロース、ヘミセルロース、リグニン等の炭水化物であり、約15~20%がシリカ、残部の大半が水分でアルカリ不純物を僅かに含んでいる。このようなシリカを含むバイオマスを資源として再生する場合に本発明が好適に用いられる。従って、本発明の適用対象は籾殻に限るものではなく、稲わら、麦わら、竹、トウモロコシ、サトウキビ、薄、トクサなどケイ酸植物由来のバイオマスを用いることも可能になる。
【0065】
即ち、上述した非晶質シリカの製造装置1により、原料供給機構により反応炉に原料を供給する原料供給工程と、ガス供給機構により反応炉の原料が滞留する底部から水蒸気と酸素含有ガスを供給するガス供給工程と、原料を水蒸気と酸素含有ガスと接触させながら熱処理することにより非晶質シリカを生成する非晶質シリカの製造方法が実現される。
【0066】
そして、熱処理状態調節機構に備えた酸素含有ガス比調節機構(空気比調節機構)により酸素含有ガス比調節工程(空気比調節工程)が実行され、ガス供給工程で供給される酸素含有ガスの原料の供給量に対する比率を調節することにより生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合が調整される。
【0067】
また、流動状態調節機構により、ガス供給工程で供給されるガスの総量、供給位置、供給分布の少なくとも何れか一つを調整することにより、原料の流動状態を調節する流動状態調節工程が実行される。
【0068】
さらに、熱処理状態調節機構は、籾殻を燃焼反応させる場合に、反応炉2の内部空間の燃焼温度を所定温度以下、具体的には約800℃以下に維持する温度調節機構を含む。反応炉2に備えた熱回収機構5が温度調節機構として機能する。即ち、原料を燃焼反応させる場合に、反応炉2の内部空間の燃焼温度を非晶質シリカの結晶化を抑制する所定温度以下に維持する温度調節工程が熱回収機構5によって実行される。
【0069】
反応炉2で籾殻が発熱反応である燃焼反応することにより炉内温度が上述した所定温度を超えると、非晶質のシリカが結晶化して、発がん性を示すクリストバライトが生成される虞がある。そのような場合でも、熱回収機構5により燃焼温度が所定温度以下に調節されることで、非晶質シリカの結晶化を防止して安定的に非晶質シリカを得ることができるようになる。反応炉2の内部で主に籾殻がガス化反応する場合には、吸熱反応であるため、熱回収機構5を用いなくても反応炉2の内部空間の燃焼温度は所定温度未満に収まる場合もあるが、付随する燃焼反応により、上述した所定温度を超える場合には、熱回収機構5を備えることも可能である。
【0070】
図6には非晶質シリカの製造装置1を制御する制御装置Cの構成が示されている。制御装置Cには、第1の温度センサTH1、第2の温度センサTH2、蒸気流量計34、二次燃焼設備8に備えたボイラから出力される蒸気の温度を検出する蒸気温度センサTH3などのセンサの値が入力されるとともに、熱処理状態調節機構により調節された熱処理状態が主に燃焼反応を促すものであるのか、主にガス化反応を促すものであるのかの識別信号が入力されている。
【0071】
制御装置Cは、熱処理状態調節機構により調節された熱処理状態が主に燃焼反応である場合には、反応炉2の縮径部の燃焼温度が500℃~600℃に入るように、第2の温度センサTH2の値に基づいて、バルブ32Vの開度を調節するとともにバルブ6Vの開度を調節して上部空気供給機構6からの給気量を調節し、併せてバルブ33Vの開度を調節する。さらに、第1の温度センサTH1の値に基づいて、反応炉2の拡径部の燃焼温度が750℃~800℃に入るように、換言すると、非晶質シリカが結晶化する相転移温度域より低い温度となるように、バルブ5Vの開度を調節して熱回収機構5に供給するボイラ水の流量を調節する。
【0072】
例えば、空気供給機構からの給気量を減少制御することで、反応炉2の温度を低下させることができ、ボイラ水の流量を増量制御することで反応炉2の拡径部の温度を低下させることができ、その結果、燃焼温度が所定温度を超えないように調節できるようになる。
【0073】
制御装置Cは、熱処理状態調節機構により調節された熱処理状態が主にガス化反応である場合には、第2の温度センサTH2の値に基づいて、反応炉2の縮径部の燃焼温度が500℃~600℃に入るように、また第1の温度センサTH1の値に基づいて、拡径部の燃焼温度が700℃~750℃に入るように、バルブ32Vの開度を調節するとともに上部空気供給機構6からの給気量を調節し、併せてバルブ33Vの開度を調節する。
【0074】
上述と同様に、空気供給機構からの給気量を減少制御することで、反応炉2の温度を低下させることができ、ボイラ水の流量を増量制御することで反応炉2の拡径部の温度を低下させることができ、その結果、燃焼温度が所定温度を超えないように調節できるようになる。なお、この場合、拡径部の燃焼温度が800℃を超えることが無ければ、熱回収機構5に供給するボイラ水の流量を調節する必要はない。第2の温度センサTH2は、縮径部の温度がモニタできる位置であればよく、熱回収機構5より上流側であれば、縮径部または拡径部の何れに設置されていてもよい。
【0075】
図1図4図5では、噴流床9の上方空間における燃焼状態を調整するための上部空気供給機構6として、反応炉2の絞り部近傍に側壁から給気管を挿入して、反応炉2の中央部から下方に向けて給気する給気ノズルを給気管の先端に備えた構成を説明したが、上部空気供給機構6の構成は、この例に限るものではなく、反応炉2のサイズなどに応じて適宜構成することができる。
【0076】
例えば、図7(a)に示すように、反応炉2の天頂部から先端に給気ノズルを備えた給気管を垂下するように設けてもよく、図7(b)に示すように、反応炉2の絞り部近傍に複数本の給気ノズルを設けてもよい。例えば、平面視で同心円上に複数本の給気ノズルを均等に配することができる。
【0077】
上述した実施形態では、ガス供給機構3が、水蒸気と酸素含有ガスの一例である空気の混合ガスを供給するように構成された例を説明したが、上述した酸素含有ガス比調節機構および流動状態調節機構の各構成を備えていれば、水蒸気と酸素含有ガスを其々個別に供給するように構成してもよい。
【0078】
上述した実施形態では、原料を熱処理するために反応炉2の内部に噴流床を形成し、噴流床で珪砂とともに原料を攪拌および流動させる態様を説明したが、反応炉2の底部近傍で流動床を形成し、流動床で珪砂とともに原料を攪拌および流動させる態様を採用してもよい。なお、何れの場合でも、噴流床または流動床により原料をガスと良好に接触させるためには、珪砂の粒径は0.05mmから2mmの範囲であることが好ましい。また、反応炉2の内部で原料をガスと接触させながら熱処理できれば、反応炉2の内部に珪砂を投入することが必須ではない。
【0079】
上述した実施形態は、本発明による非晶質シリカの製造装置および製造装置の一具体例を説明したに過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1:非晶質シリカの製造装置
2:反応炉
3:ガス供給機構
30:ヘッダー管
31:散気管
32:空気供給管
32V:バルブ
33:蒸気供給管
33V:バルブ
4:原料供給機構
5:熱回収機構
6:上部空気供給機構
7:サイクロン
8:二次燃焼設備
9:噴流床
10:排気管
A:熱処理状態調節機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7