(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20250616BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20250616BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
E01C19/26
E02F9/24 B
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2022053357
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2024-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】切田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 貴尚
(72)【発明者】
【氏名】池田 豊
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-050579(JP,A)
【文献】特開2021-078467(JP,A)
【文献】特開2021-069294(JP,A)
【文献】特開2000-314104(JP,A)
【文献】特開2022-011315(JP,A)
【文献】特開2021-140478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
E02F 9/24- 9/26
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体の進行方向を切り替える前後進レバーと、
前記機体の前方および後方に位置する障害物を検出する障害物検出装置と、
前記前後進レバーの指示方向と前記障害物検出装置により出力された検出情報とに基づいて前記障害物の有無を判定する制御装置と、
を備え、
前記障害物検出装置は、
前記機体の前方に位置する前記障害物を検出する第1障害物検出装置と、
前記機体の後方に位置する前記障害物を検出する第2障害物検出装置と、
から構成される作業機械において、
前記機体の進行方向を含む走行状態を検出する走行状態検出手段を備え、
前記制御装置は、
前記走行状態検出手段により検出された走行状態に基づき、前記機体が走行しているか停止しているかを判定し、
前記機体が走行していると判定された場合には、前記第1障害物検出装置および前記第2障害物検出装置のうち、前記走行状態検出手段により検出された前記機体の進行方向に対応する一方の検出情報に基づいて、前記障害物の有無を判定し、
前記機体が停止していると判定された場合には、前記第1障害物検出装置および前記第2障害物検出装置のうち、前記前後進レバーの指示方向に対応する一方の検出情報に基づいて、前記障害物の有無を判定する
作業機械。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記走行状態検出手段により検出された走行状態に基づき前記機体が走行していると判定され、かつ、前記前後進レバーの指示方向と、前記走行状態検出手段により検出された前記機体の進行方向とが一致している場合には、前記障害物までの距離が第1所定距離以下であるときに、前記機体の進行方向に前記障害物があると判定し、
前記走行状態検出手段により検出された走行状態に基づき前記機体が走行していると判定され、かつ、前記前後進レバーの指示方向と、前記走行状態検出手段により検出された前記機体の進行方向とが一致していない場合には、前記障害物までの距離が前記第1所定距離よりも短い第2所定距離以下であるときに、前記機体の進行方向に前記障害物があると判定する
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記走行状態検出手段は、前記機体の車輪の回転軸の回転速度および回転方向を検出する回転センサである請求項1または請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記走行状態検出手段により検出された走行状態に基づき前記機体が停止していると判定され、かつ、前記前後進レバーの指示方向がニュートラルである場合には、前記第1障害物検出装置および前記第2障害物検出装置による前記障害物の検出を無効にする請求項1または請求項2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械に関し、特に機体の進行方向を切り替える前後進レバーと、機体の前後に設けられた障害物検出センサとを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械において、機体の前後に設けられた障害物検出センサにより障害物を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、機体の前後に設けられた障害物検出センサのいずれを使用して障害物を検出するかを、前後進レバーの設定位置に応じて切り替えるタイヤローラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械では、機体が走行している最中に、進行方向を変更するためにオペレータが前後進レバーを切り替えることがある。このとき、機体の実際の進行方向は、前後進レバーを切り替えた直後に切り替わらず、機体が前後進レバーの切り替え前の進行方向へと慣性で動き続けることがある。その場合、特許文献1に記載の障害物検出手法では、機体が前後進レバーの切り替え前の進行方向に動いているにも関わらず、前後進レバーの切り替え後の方向側の障害物検出センサで障害物を検出してしまい、機体の進行方向側の障害物を検出できない場合がある。また、前後進レバーがニュートラルに設定されている状態で、例えば機体が坂道を自重によって逸走することがある。この場合、特許文献1に記載の障害物検出手法では、前後進レバーがニュートラルに設定されているため、いずれの方向側に設けられた障害物検出センサも動作せず、機体の進行方向側の障害物を検出することができない。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機体の進行方向側に位置する障害物を適切に検出可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の作業機械は、機体と、前記機体の進行方向を切り替える前後進レバーと、前記機体の前方および後方に位置する障害物を検出する障害物検出装置と、前記前後進レバーの指示方向と前記障害物検出装置により出力された検出情報とに基づいて前記障害物の有無を判定する制御装置と、を備え、前記障害物検出装置は、前記機体の前方に位置する前記障害物を検出する第1障害物検出装置と、前記機体の後方に位置する前記障害物を検出する第2障害物検出装置と、から構成される作業機械において、前記機体の進行方向を含む走行状態を検出する走行状態検出手段を備え、前記制御装置は、前記走行状態検出手段により検出された走行状態に基づき、前記機体が走行しているか停止しているかを判定し、前記機体が走行していると判定された場合には、前記第1障害物検出装置および前記第2障害物検出装置のうち、前記走行状態検出手段により検出された前記機体の進行方向に対応する一方の検出情報に基づいて、前記障害物の有無を判定し、前記機体が停止していると判定された場合には、前記第1障害物検出装置および前記第2障害物検出装置のうち、前記前後進レバーの指示方向に対応する一方の検出情報に基づいて、前記障害物の有無を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業機械によれば、機体の進行方向側に位置する障害物を適切に検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかる作業機械としての転圧機械を示す側面図である。
【
図2】機体後方から視た操作ユニットの斜視図である。
【
図3】コントローラの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態にかかる転圧機械において実行される障害物の検出制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】表1のパターンP1における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図6】表1のパターンP2における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図7】表1のパターンP3における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図8】表1のパターンP4における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図9】表1のパターンP5における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図10】表1のパターンP6における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図11】表1のパターンP7における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図12】表1のパターンP8における転圧機械の動作例を示す説明図である。
【
図13】第2実施形態にかかる転圧機械において実行される障害物の検出制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、図面に基づき本発明の第1実施形態について説明する。以下の説明では、転圧機械の運転シートに着座したオペレータを基準として前後方向、左右方向および上下方向を表現する。
【0010】
図1は、第1実施形態にかかる作業機械としての転圧機械を示す側面図である。転圧機械100は、転圧施工をすることでアスファルト舗装工事における締固め作業をするタイヤローラである。転圧機械100は、機体1と、前輪3と、後輪4と、駆動ユニット5と、散水装置7と、操作ユニット9と、コントローラ(制御装置)10とを備える。
【0011】
(機体および前後輪)
機体1は、構造体としてのフレーム内に駆動ユニット5やコントローラ10といった各種装置を内蔵する。前輪3および後輪4は、ゴム製であって接地面が平らな転圧輪であり、後輪4を駆動することで機体1を走行させることが可能であり、後輪4を減速することで機体1を減速させることが可能である。
【0012】
(駆動ユニット)
駆動ユニット5は、エンジン11、HST(Hydraulic Static Transmission)13およびドライブシャフト15を備えている。エンジン11は、図示しない燃料タンクから燃料が供給されることで稼働する内燃機関である。HST13は、油圧ポンプ13a、油圧走行モータ13bおよび油圧経路13cを有する閉油圧回路である。油圧ポンプ13aは、エンジン11の駆動力を利用して作動油を循環させる、いわゆる両傾転油圧ポンプであり、図示しない斜板の傾斜角度を調整することで作動油の循環量や循環方向を調整することが可能である。これにより、HST13は、エンジン11の駆動力を利用して油圧ポンプ13aを稼働することで、油圧経路13cを介して作動油を油圧走行モータ13bに循環させ、油圧走行モータ13bを駆動することが可能である。
【0013】
ドライブシャフト15は、一端がHST13の油圧走行モータ13bと連動可能に接続し、他端が後輪4の回転軸であるアクスル14と連動可能に接続するシャフト部材である。これにより、後輪4は、油圧走行モータ13bの駆動力がドライブシャフト15およびアクスル14を介して伝達されることで機体1を走行させることが可能である。また、HST13は、油圧走行モータ13bがドライブシャフト15およびアクスル14を介して後輪4と連動するため、油圧ポンプ13aによる作動油の循環量を調整することで後輪4を減速させることが可能である。
【0014】
ここで、油圧走行モータ13bには、パーキングブレーキ装置13dが内設され、アクスル14には、サービスブレーキ装置13eが配設されている。パーキングブレーキ装置13dは、図示しない駐機ボタンを押圧することで作動するディスク式の摩擦ブレーキ装置である。このパーキングブレーキ装置13dを作動させることで、油圧走行モータ13bの駆動を停止することが可能である。これにより、例えば機体1による作業後に機体1を駐機する際は、パーキングブレーキ装置13dを作動させて機体1が坂道などで重力により移動することを防止する(駐機状態)ことが可能である。サービスブレーキ装置13eは、オペレータが図示しないブレーキペダルを踏圧することでアクスル14の回動を制動するディスク式の摩擦ブレーキ装置である。
【0015】
(散水装置)
散水装置7は、機体1のフレーム内に形成される図示しない水タンクに貯留された水を前輪3並びに後輪4および路面に噴霧および散水する装置である。これにより、散水装置7は、前輪3および後輪4とアスファルト舗装材との接着性を低下させて舗装路面が荒れることを抑制することが可能である。
【0016】
(操作ユニット)
図2は、機体後方から視た操作ユニット9の斜視図が示されている。操作ユニット9は、前後進レバー21、ステアリング23および操作パネル25を備えている。この操作ユニット9は、オペレータが機体1の走行、転舵、制動その他の機体1の各種操作をするための装置である。
【0017】
前後進レバー21は、オペレータが指示方向、すなわち、前後進レバー21の設定位置を操作することでHST13を制御して後輪4の回転方向を変更し、機体1の進行方向を前進、後進およびニュートラル(前進でも後進でもない中立の状態)のいずれかに切り替えるレバーである。ステアリング23は、オペレータが操作することで機体上下方向を軸にして前輪3を回動させ、機体左右方向における進行方向を調整する転舵装置である。
【0018】
操作パネル25は、モニタ31、スピーカ33、ランプ34を有する操作装置である。モニタ31は、機体1の走行速度や燃料の残量その他各種設定状態などを表示する液晶パネルである。スピーカ33は、ブザー音などを吹鳴することが可能である。ランプ34は、オペレータに視認可能な可視光を点灯することが可能な警告灯である。
【0019】
また、オペレータが搭乗した際の足元にあたる操作ユニット9の下方には、アクセルペダル37が配設されている(
図1参照)。これにより、オペレータは、アクセルペダル37の踏圧量を調整することで機体1を加減速及び停止させることが可能である。
【0020】
(その他の機体搭載装置)
図1の説明に戻る。機体1には、警告灯41、赤外線センサ43(障害物検出装置)および回転センサ45(走行状態検出手段)が配設されている。警告灯41は、例えばルーフ2に取り付けられ、機体1の周囲に位置する作業者に向けて赤、黄色、緑、青などの複数の色の可視光を発する警告灯である。この警告灯41は、着脱可能に配設されており、機体1が公道を走行する際には緊急車両との識別のため取り外されている。
【0021】
赤外線センサ43は、機体1の進行方向に赤外線を発し進行方向における障害物の有無や機体1と障害物との距離を検出する障害物検出装置である。赤外線センサ43は、機体1の前側に配設され、機体1の前方に位置する障害物を検出する前側赤外線センサ43a(第1障害物検出装置)と、後側に配設され、機体1の後方に位置する障害物を検出する後側赤外線センサ43b(第2障害物検出装置)とを含む。前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bは、障害物の検出情報をコントローラ10に出力する。
【0022】
回転センサ45は、例えば前輪3の回転軸に配設され、前輪3の回転数に基づいて機体1の速度を検出することが可能である。また、回転センサ45は、前輪3の回転方向を検出することで、機体1の現在の進行方向を検出することが可能である。回転センサ45は、機体1の走行状態、すなわち、機体1が前進しているか、後進しているか、停止(停車)しているかを検出する。なお、ここでの「走行」とは、機体1が慣性により一方向に進行する場合や、坂道などで自重により一方向に進行する場合も含む。回転センサ45は、例えばローターリーエンコーダといった回転速度および回転方向を検出可能な周知の回転センサを用いればよい。回転センサ45は、機体1の走行状態の検出結果をコントローラ10に出力する。
【0023】
(コントローラ)
図3は、コントローラ10の概略構成を示すブロック図である。コントローラ10は、駆動ユニット5の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM:Read Only Memory、RAM:Random Access Memory、不揮発性RAMなど)、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)などを含んで構成されている。
【0024】
コントローラ10の入力側には、前後進レバー21、回転センサ45、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bが電気的に接続されている。これにより、コントローラ10には、前後進レバー21から指示方向に関する情報、すなわち、機体1の進行方向が前進、後進およびニュートラルのいずれに設定されているかの情報が入力される。また、コントローラ10には、回転センサ45から機体1の速度に関する情報および機体1の現在の進行方向に関する情報が入力される。また、コントローラ10には、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bから機体1の前後における障害物の有無や機体1と障害物との距離に関する情報が入力される。コントローラ10は、前後進レバー21の指示方向および回転センサ45で検出される機体1の走行状態に応じて、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bのいずれを使用して障害物を検出させるかを切り替える。
【0025】
また、コントローラ10の出力側には、駆動ユニット5、モニタ31、スピーカ33、ランプ34および警告灯41が電気的に接続されている。これにより、コントローラ10は、駆動ユニット5のエンジン11およびHST13の油圧ポンプ13aを制御することで、機体1の加速度および減速度を制御することやパーキングブレーキ装置13dを制御することで機体1を駐機状態にすることができる。
【0026】
また、コントローラ10は、モニタ31を制御することで、所定の報知映像をオペレータに表示させる。また、コントローラ10は、スピーカ33を制御することで、ブザー音をオペレータに聞こえるように吹鳴させる。また、コントローラ10は、ランプ34を制御することで、点滅などの所定の点灯態様でオペレータに視認可能なように点灯させる。また、コントローラ10は、警告灯41を制御することで、機体1の周囲に報知や警告などを行わせる。
【0027】
(障害物の検出制御)
次に、コントローラ10により実行される障害物の検出制御について説明する。
図4は、第1実施形態にかかる転圧機械100において実行される障害物の検出制御の処理の一例を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、転圧機械100がキーオンされた後にコントローラ10により所定周期で繰り返し実行される。
【0028】
まず、コントローラ10は、現在の前後進レバー21の指示方向および回転センサ45による機体1の走行状態の検出結果を取得する(ステップS1)。回転センサ45による機体1の走行状態とは、上述したように、機体1が前進しているか、後進しているか、停止(停車)しているかの各状態である。なお、第1実施形態において、コントローラ10は、回転センサ45により検出される前輪3の回転速度が所定の閾値よりも大きい場合に、機体1が走行していると判定し、前輪3の回転速度が所定の閾値以下である場合に、機体1が停止していると判定する。
【0029】
次に、コントローラ10は、ステップS1で取得した機体1の走行状態に基づいて、機体1が走行中であるか否かを判定する(ステップS2)。コントローラ10は、機体1が走行中であると判定した場合(ステップS2でYes)、回転センサ45により検出される機体1の現在の進行方向に対応する赤外線センサ43を有効にする(ステップS3)。なお、ここでの「赤外線センサ43を有効にする」とは、一方の赤外線センサ43による障害物の検出を有効にし、他方の赤外線センサ43による障害物の検出を無効にするという意味である。
【0030】
一方、コントローラ10は、機体1が停止(停車)中であると判定した場合(ステップS2でNo)、前後進レバー21の指示方向が前進および後進のいずれかに設定されているか否かを判定する(ステップS4)。コントローラ10は、前後進レバー21の指示方向がニュートラルではなく、前進および後進のいずれかに設定されていると判定した場合(ステップS4でYes)、前後進レバー21の指示方向に対応する赤外線センサ43を有効にする(ステップS5)。また、コントローラ10は、前後進レバー21の指示方向が前進および後進のいずれにも設定されておらず、ニュートラルに設定されていると判定した場合(ステップS4でNo)、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bの双方を無効とする(ステップS6)。
【0031】
コントローラ10は、ステップS3およびステップS5の処理で、いずれの赤外線センサ43を有効にするかを決定すると、機体1から赤外線センサ43により検出された障害物まで距離が所定距離L以下であるか否かを判定する(ステップS7)。コントローラ10は、機体1から障害物までの距離が所定距離L以下であると判定した場合(ステップS7でYes)、オペレータに対して警報を報知させる。具体的には、コントローラ10は、モニタ31、スピーカ33およびランプ34の少なくともいずれか一つを制御してオペレータに対して警報を報知させる(ステップS8)。より詳細には、コントローラ10は、障害物が前側または後側にあることを示すために、警告を含む画像をモニタ31に表示させたり、スピーカ33からブザー音を吹鳴させたり、ランプ34を所定の点灯態様で点灯させたりする。コントローラ10は、警報を報知させると、再びステップS1以降の処理を繰り返し実行する。
【0032】
一方、コントローラ10は、障害物と機体1との距離が所定距離L以下でないと判定した場合(ステップS7でNo)、ステップS8の処理を省略して、警報を報知させず、再びステップS1以降の処理を繰り返し実行する。また、コントローラ10は、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bによる障害物の検出の双方を無効とした場合(ステップS6)、ステップS7およびステップS8の処理を省略して、警報を報知させず、再びステップS1以降の処理を繰り返し実行する。
【0033】
(障害物の検出制御のパターン例)
障害物の検出処理について、各パターンを参照しながら、より詳細に説明する。表1は、転圧機械100において、障害物を検出する際の複数のパターンを示している。複数のパターンは、前後進レバー21の指示方向と、回転センサ45で検出される機体1の走行状態との組み合わせに応じて、いずれの赤外線センサ43を使用するかを切り分けた9つのパターンを含む。
【0034】
【0035】
(パターンP1:前後進レバーの指示方向が前進、現在の進行方向が前進)
まず、
図4のステップS2で機体1が走行していると判定され、ステップS3の処理が実行される場合の例として、パターンP1からパターンP6の処理を説明する。
図5は、表1のパターンP1における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP1は、前後進レバー21の指示方向が前進であり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「前進」の状態である。パターンP1は、表1の“状態”の欄に示すように、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが一致した状態である。いま、
図5に破線で示す前後進レバー21の指示方向が前進に設定されて機体1が前進している状態が、実線で示すように、そのまま継続されたとする。このとき、表1の“選択基準”の欄に示すように、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「前進」であることから、コントローラ10は、表1の“赤外線センサ”の欄に示すように、前側赤外線センサ43aを有効にする。その結果、前側赤外線センサ43aにより、機体1の前側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0036】
(パターンP2:前後進レバーの指示方向が後進、現在の進行方向が後進)
図6は、表1のパターンP2における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP2は、前後進レバー21の指示方向が後進であり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「後進」の状態である。パターンP2は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが一致した状態である。パターンP2は、パターンP1に対して機体1の進行方向が後進になった例である。コントローラ10は、パターンP1と同様に、回転センサ45により検出される機体1の走行状態に対応させて、後側赤外線センサ43bを有効にする。その結果、後側赤外線センサ43bにより、機体1の後側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0037】
(パターンP3:前後進レバーの指示方向が後進、現在の進行方向が前進)
図7は、表1のパターンP3における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP3は、前後進レバー21の指示方向が後進であり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「前進」の状態である。パターンP3は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが不一致の状態である。いま、
図7に破線で示すように、前後進レバー21の指示方向が前進に設定されて、機体1が前進している最中に、オペレータが前後進レバー21を前進から後進へと切り替えたとする(
図7の一点鎖線参照)。この場合、
図7に実線で示すように、前後進レバー21の指示方向が後進に設定されたものの、機体1が慣性力で前進し続ける場合がある。この状態で、仮に、前後進レバー21の指示方向に基づいて使用する赤外線センサ43を選択すると、機体1が前進しているにも関わらず、後側赤外線センサ43bが選択されてしまう。そこで、パターンP5の場合、表1の“選択基準”の欄に示すように、コントローラ10は、回転センサ45により検出される機体1の走行状態に基づいて、使用する赤外線センサ43を選択する。パターンP5では、機体1の走行状態が「前進」であることから、表1の“赤外線センサ”の欄に示すように、コントローラ10は、前側赤外線センサ43aを有効にする。その結果、前側赤外線センサ43aにより、機体1の前側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0038】
(パターンP4:前後進レバーの指示方向が前進、現在の進行方向が後進)
図8は、表1のパターンP4における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP4は、前後進レバー21の指示方向が前進であり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「後進」の状態である。パターンP4は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが不一致の状態である。パターンP4は、パターンP3に対して機体1の進行方向が後進になった例である。コントローラ10は、パターンP3と同様に、回転センサ45により検出される機体1の走行状態に対応させて、後側赤外線センサ43bを有効にする。その結果、機体1が前進している最中に、オペレータが前後進レバー21を後進から前進へと切り替えたものの(一点鎖線参照)、機体1が慣性力で後進し続けたとしても(実線白抜き矢印参照)、後側赤外線センサ43bにより、機体1の後側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0039】
(パターンP5:前後進レバーの指示方向がニュートラル、現在の進行方向が前進)
図9は、表1のパターンP5における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP5は、前後進レバー21の指示方向がニュートラルであり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「前進」の状態である。パターンP5は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが不一致の状態である。いま、前後進レバー21の指示方向がニュートラルに設定された状態で、転圧機械100が前側かつ下側に向けて傾斜する坂道に位置している場合を想定する。この場合、パーキングブレーキ装置13dが作動していないと、白抜き矢印に示すように、機体1が自重により坂道を逸走して前進することがある。このとき、前後進レバー21の指示方向がニュートラルに設定されていることから、前後進レバー21の指示方向に基づいて使用する赤外線センサ43を選択することができない。そこで、パターンP5の場合、表1の“選択基準”の欄に示すように、コントローラ10は、回転センサ45により検出される機体1の走行状態に基づいて、使用する赤外線センサ43を選択する。パターンP5では、機体1が「前進」であることから、表1の“赤外線センサ”の欄に示すように、コントローラ10は、前側赤外線センサ43aを有効にする。その結果、前後進レバー21の指示方向がニュートラルの状態で、機体1が前進した場合にも、前側赤外線センサ43aにより、機体1の前側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0040】
(パターンP6:前後進レバーの指示方向がニュートラル、現在の進行方向が後進)
図10は、表1のパターンP6における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP6は、前後進レバー21の指示方向がニュートラルであり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「後進」の状態である。パターンP6は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが不一致の状態である。パターンP6は、パターンP5に対して機体1の進行方向が後進になった例である。コントローラ10は、パターンP5と同様に、回転センサ45により検出される機体1の走行状態に対応させて、後側赤外線センサ43bを有効にする。その結果、前後進レバー21の指示方向がニュートラルの状態で、機体1が後進した場合にも、後側赤外線センサ43bにより、機体1の後側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0041】
次に、
図4のステップS2で機体1が停止していると判定され、ステップS4で前後進レバー21の指示方向が前進または後進に設定されていると判定され、ステップS5の処理が実行される場合の例として、パターンP7およびパターンP8の処理を説明する。
【0042】
(パターンP7:前後進レバーの指示方向が前進、機体が停止)
図11は、表1のパターンP7における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP7は、前後進レバー21の指示方向が前進であり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「停止(停車)」の状態である。パターンP7は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが不一致の状態である。パターンP7は、オペレータが前後進レバー21を前進に設定したものの、アクセルペダル37を踏み込んでいない状態である。また、パターンP7は、オペレータが前後進レバー21を前進に設定し、アクセルペダル37を踏み込んだ後、回転センサ45が前輪3の回転を検出し、検出結果がコントローラ10に入力されるまでに遅れが生じている状態も含む。このとき、表1の“選択基準”の欄に示すように、コントローラ10は、前後進レバー21の指示方向に基づいて、使用する赤外線センサ43を選択する。パターンP7では、前後進レバー21の指示方向が前進であることから、表1の“赤外線センサ”の欄に示すように、コントローラ10は、前側赤外線センサ43aを有効にする。その結果、オペレータが前後進レバー21を前進に設定し、停止中の機体1を前進させようとした場合に、前側赤外線センサ43aにより、機体1の前側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0043】
(パターンP8:前後進レバーの指示方向が後進、機体が停止)
図12は、表1のパターンP8における転圧機械100の動作例を示す説明図である。パターンP8は、前後進レバー21の指示方向が後進であり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「停止(停車)」の状態である。パターンP8は、前後進レバー21の指示方向と機体1の現在の進行方向とが不一致の状態である。パターンP8は、パターンP7に対して前後進レバー21の指示方向が後進になった例である。コントローラ10は、パターンP7と同様に、前後進レバー21の指示方向に対応させて、後側赤外線センサ43bを有効にする。その結果、オペレータが前後進レバー21を後進に設定し、停止中の機体1を後進させようとした場合に、後側赤外線センサ43bにより、機体1の後側に位置する障害物50を検出可能な状態となる。
【0044】
(パターンP9:前後進レバーの指示方向がニュートラル、機体が停止中)
表1のパターンP9は、
図4のステップS8の処理が実行される場合の例である。パターンP9は、前後進レバー21の指示方向がニュートラルであり、かつ、回転センサ45により検出される機体1の走行状態が「停止(停車)」の状態である。このとき、コントローラ10は、表1の“選択基準”および“赤外線センサ”の欄に示すように、いずれの赤外線センサ43も有効とせず、すなわち、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bの双方を無効とし、障害物の検出を行わない。
【0045】
(第1実施形態の効果)
以上説明したように、第1実施形態にかかる作業機械としての転圧機械100は、機体1と、機体1の進行方向を切り替える前後進レバー21と、機体1の前方および後方に位置する障害物を検出する赤外線センサ43(障害物検出装置)と、前後進レバー21の指示方向と赤外線センサ43により出力された検出情報とに基づいて障害物の有無を判定するコントローラ10(制御装置)とを備え、赤外線センサ43は、機体1の前方に位置する障害物を検出する前側赤外線センサ43a(第1障害物検出装置)と、機体1の後方に位置する障害物を検出する後側赤外線センサ43b(第2障害物検出装置)と、から構成される転圧機械100(作業機械)において、機体1の進行方向を含む走行状態を検出する回転センサ45(走行状態検出手段)を備え、コントローラ10は、回転センサ45により検出された走行状態に基づき、機体1が走行しているか停止しているかを判定し、機体1が走行していると判定された場合には、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bのうち、回転センサ45により検出された機体1の進行方向に対応する一方の検出情報に基づいて、障害物の有無を判定し、機体1が停止していると判定された場合には、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bのうち、前後進レバー21の指示方向に対応する一方の検出情報に基づいて、障害物の有無を判定する。
【0046】
この構成により、機体1が前進および後進のいずれかの走行状態である場合(パターンP1からパターンP6の場合)に、回転センサ45により検出される現在の進行方向側の障害物を赤外線センサ43により検出することができる。特に、パターンP3、P4のように、前後進レバー21の指示方向が機体1の走行中に切り替えられた後、機体1が慣性力により元の進行方向にそのまま進行し、前後進レバー21の指示方向と実際の進行方向とが異なっている場合でも、実際の進行方向側に位置する障害物を検出することができる。また、パターンP5、P6のように、前後進レバー21の指示方向がニュートラルの状態で、坂道などで機体1が意図せず動いたとしても、実際の進行方向側に位置する障害物を検出することができる。一方、機体1が停止している場合(パターンP7、P8の場合)には、前後進レバー21の指示方向に対応した方向側の障害物を赤外線センサ43により検出することができる。その結果、オペレータがアクセルペダル37を踏み込む前や、オペレータがアクセルペダル37を踏み込んだ後に回転センサ45が前輪3の回転を検出して検出結果がコントローラ10に入力されるまでの間に、予め、機体1が進行する予定の方向にある障害物を検出することができる。したがって、第1実施形態にかかる転圧機械100によれば、機体1の進行方向側に位置する障害物を適切に検出可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、アクセルペダル37を踏み込んでから機体1が走行を開始するものを想定したが、作業機械の種類によっては、前後進レバー21の指示方向を前進および後進のいずれかに設定した時点で、機体1が走行を開始するように駆動装置が制御される場合もある。その場合においても、前後進レバー21の指示方向が前進および後進のいずれかに設定されてから、実際に機体1が動き出すまでには、若干の時間を要することが多い。そのため、当該構成の作業機械においても、予め前後進レバー21の指示方向に対応した方向側の赤外線センサ43を選択し、機体1が進行する予定の方向にある障害物を検出しておくことは、障害物をより確実に検出するために好適であるといえる。
【0048】
また、第1実施形態において、走行状態検出手段は、機体1の車輪の回転軸の回転速度および回転方向を検出する回転センサ45である。この構成により、機体1の走行状態、すなわち、機体1が前進しているか、後進しているか、停止(停車)しているかの各状態を、簡易な構成で検出することができる。
【0049】
また、第1実施形態において、コントローラ10は、回転センサ45により検出された走行状態に基づき機体1が停止していると判定され、かつ、前後進レバー21の指示方向がニュートラルである場合には、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bによる障害物の検出を無効とする。この構成により、機体1が停止中であり、かつ、走行する予定もない場合には、いずれの赤外線センサ43でも障害物の検出を行わないため、頻繁に警報が報知されることを抑制し、オペレータや周囲の作業者に煩わしさを与えないようにすることが可能となる。
【0050】
また、第1実施形態にかかる転圧機械100のように、回転センサ45により検出された走行状態および前後進レバー21の指示方向に基づいて、一方の赤外線センサ43を有効にし、他方の赤外線センサ43を無効とすることで、機体1の進行方向または進行する予定の方向と反対側、つまり、機体1が離れていく側の障害物によって警報が報知されることを抑制することができる。その結果、オペレータや周囲の作業者に煩わしさを与えないようにすることが可能となる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる転圧機械100について説明する。
図13は、第2実施形態にかかる転圧機械100において実行される障害物の検出制御の処理の一例を示すフローチャートである。第2実施形態にかかる転圧機械100は、コントローラが
図4に示す処理に代えて
図13に示す処理を実行すること以外、第1実施形態にかかる転圧機械100と同様の構成を有する。そのため、第2実施形態においても、各構成要素には、第1実施形態にかかる転圧機械100と同一の符号を付し、同一の構成についての説明は省略する。
【0052】
第2実施形態において、コントローラ10は、転圧機械100がキーオンされた後に、
図13に示す処理を所定周期で繰り返し実行する。なお、
図13に示す処理において、ステップS10からステップS16の処理は、
図4に示すステップS1からステップS6の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0053】
コントローラ10は、ステップS13およびステップS15の処理で、いずれの赤外線センサ43を有効にするかを決定すると、回転センサ45により検出される機体1の現在の進行方向と、前後進レバー21の指示方向とが一致しているか否かを判定する(ステップS17)。コントローラ10は、機体1の現在の進行方向と、前後進レバー21の指示方向とが一致していると判定した場合(ステップS17でYes)、赤外線センサ43により検出された障害物と機体1との距離が第1所定距離L1以下であるか否かを判定する(ステップS18)。機体1の現在の進行方向と、前後進レバー21の指示方向とが一致している場合とは、表1のパターンP1、P2(
図5、
図6)の場合である。第1所定距離L1は、後述する第2所定距離L2よりも長い距離とされる。コントローラ10は、障害物と機体1との距離が第1所定距離L1以下であると判定した場合(ステップS18でYes)、オペレータに対して警報を報知させる(ステップS19)。コントローラ10は、警報を報知させると、再びステップS11以降の処理を繰り返し実行する。一方、コントローラ10は、障害物と機体1との距離が第1所定距離L1以下でないと判定した場合(ステップS18でNo)、ステップS19の処理を省略して、警報を報知させず、再びステップS11以降の処理を繰り返し実行する。
【0054】
また、コントローラ10は、機体1の現在の進行方向と、前後進レバー21の指示方向とが一致していないと判定した場合(ステップS17でNo)、赤外線センサ43により検出された障害物と機体1との距離が第2所定距離L2以下であるか否かを判定する(ステップS20)。機体1の現在の進行方向と、前後進レバー21の指示方向とが一致していない場合とは、表1のパターンP3からパターンP8(
図7から
図12)の場合である。第2所定距離L2は、第1所定距離L1よりも短い距離として設定される。コントローラ10は、障害物と機体1との距離が第2所定距離L2以下であると判定した場合(ステップS20でYes)、オペレータに対して警報を報知させる(ステップS19)。コントローラ10は、警報を報知させると、再びステップS11以降の処理を繰り返し実行する。一方、コントローラ10は、障害物と機体1との距離が第2所定距離L2以下でないと判定した場合(ステップS20でNo)、ステップS19の処理を省略して、警報を報知させず、再びステップS11以降の処理を繰り返し実行する。
【0055】
また、コントローラ10は、前側赤外線センサ43aおよび後側赤外線センサ43bによる障害物の検出の双方を無効とした場合(ステップS16)、ステップS17以降の処理を省略して、警報を報知させず、再びステップS11以降の処理を繰り返し実行する。
【0056】
以上説明したように、第2実施形態にかかる転圧機械100において、コントローラ10は、回転センサ45により検出された走行状態に基づき機体1が走行していると判定され、かつ、前後進レバー21の指示方向と、回転センサ45により検出された機体1の進行方向とが一致している場合には、障害物までの距離が第1所定距離L1以下であるときに、機体1の進行方向に障害物があると判定し、回転センサ45により検出された走行状態に基づき機体1が走行していると判定され、かつ、前後進レバー21の指示方向と、回転センサ45により検出された機体1の進行方向とが一致していない場合には、障害物までの距離が第1所定距離L1よりも短い第2所定距離L2以下であるときに、機体1の進行方向に障害物があると判定する。
【0057】
この構成により、機体1が前進および後進のいずれかの走行状態であり、前後進レバー21の指示方向と、回転センサ45により検出された機体1の進行方向とが一致している場合(パターンP1、P2の場合)には、不一致の場合(パターンP3からパターンP6)の場合に比べて、機体1と障害物との距離がより長い時点で、障害物があると判定することができる。
【0058】
つまり、パターンP1(
図5)、P2(
図6)の場合には、駆動ユニット5が現在の進行方向側へと機体1を進ませようとする一方で、パターンP3(
図7)、P4(
図8)の場合には、駆動ユニット5がすでに現在の進行方向とは逆方向に向けて機体1を進ませようとしている可能性がある。また、パターンP5(
図9)、P6(
図10)の場合には、前後進レバー21の指示方向がニュートラルであり、駆動ユニット5が機体1を走行させようとはしていない。そのため、パターンP1、P2の場合、パターンP3からパターンP6の場合に比べて、機体1がより速く現在の進行方向側へと進む可能性が高くなる。そこで、パターンP1、P2の場合に障害物があると判定する機体1から障害物までの第1所定距離L1が、パターンP3からパターンP6の場合に障害物があると判定する機体1から障害物までの第2所定距離L2よりも長く設定される。それにより、パターンP1、P2の場合には、パターンP3からパターンP6の場合に比べて、より遠い領域にある障害物の検出判定を行い、オペレータや周囲の作業者に対して警報を報知するため、オペレータや周囲の作業者が機体1と障害物とが接近していることをより早い時点で認識可能となる。すなわち、制動距離が比較的長くなるパターンP1、P2の場合では、オペレータまたは周囲の作業者は、機体1と障害物とが十分に離間した状況下で回避行動を実施することができる。一方、制動距離が比較的短いパターンP3からパターンP6の場合には、パターンP1、P2の場合に比べて、機体1に近い領域に限定して障害物の検出判定を行うため、頻繁に警報が報知されることを抑制し、オペレータや周囲の作業者に煩わしさを与えないようにすることが可能となる。
【0059】
(変形例)
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態および第2実施形態では、転圧機械100を例として説明したが、第1実施形態および第2実施形態の構成は、転圧機械100に限らず、機体の進行方向を切り替える前後進レバー、機体の前後に設けられた障害物検出装置および機体の現在の進行方向を検出する走行状態検出手段を備えるものであれば、いかなる作業機械に適用されてもよい。
【0060】
また、第1実施形態および第2実施形態では、前輪3の回転軸の回転方向を検出する回転センサ45により、機体1の現在の進行方向を検出するものとしたが、走行状態検出手段は、機体1の現在の進行方向を検出することさえできれば、回転センサ45以外であってもよい。走行状態検出手段は、例えば、機体1の前後を撮影する撮影装置と、撮影装置で撮影された画像に画像処理を施すことで、機体1の進行方向を検出する処理装置とで構成されてもよい。なお、画像処理は、周知の画像処理手法であればよい。
【0061】
また、第1実施形態および第2実施形態では、赤外線センサ43により障害物を検出するものとしたが、障害物検出装置は、障害物を検出して距離を計測できるものであれば、赤外線センサに限らず、例えば、超音波センサといったセンサであってもよい。
【0062】
また、第1実施形態および第2実施形態では、コントローラ10で障害物の検出判定を行うと、オペレータに対して警報を報知させる警報制御を行うものとしたが、障害物検出判定後の制御は、これに限られない。コントローラ10は、例えば、障害物の検出判定を行うと、機体1を障害物に対して減速させる傾向となるように、駆動ユニット5(エンジン11およびHST13)を制御する減速制御を行ってもよい。また、コントローラ10は、例えば、障害物の検出判定を行うと、機体1を停止させるように駆動ユニット5(エンジン11およびHST13)を制御したり、パーキングブレーキ装置13dやサービスブレーキ装置13eにより機体1に制動をかけたりする制動制御を行ってもよい。
【0063】
なお、警報制御、減速制御および制動制御は、機体1と障害物との距離に応じて、段階的に実行されるものとしてもよい。つまり、障害物の検出判定を行う上記所定距離L(第1所定距離L1、第2所定距離L2)を警報制御、減速制御、制動制御に対応させて段階的に複数設定しておき、機体1から障害物までの距離が上記所定距離L(第1所定距離L1、第2所定距離L2)以下となった場合に、警報制御、減速制御、制動制御を順次行うものとしてもよい。その場合、上記所定距離L(第1所定距離L1、第2所定距離L2)は、警報制御、減速制御、制動制御の順に長く設定されることが好ましい。
【0064】
また、例えば、第2実施形態において、機体1が前進および後進のいずれかの走行状態であり、前後進レバー21の指示方向と、回転センサ45により検出された機体1の進行方向とが一致している場合(パターンP1、P2の場合)には、障害物の検出判定後、減速制御または制動制御を行い、不一致の場合(パターンP3からパターンP6の場合)には、障害物の検出判定後、警報制御のみを行うものとしてもよい。ただし、機体1の速度が所定値以上であれば、パターンP3からパターンP6の場合にも、減速制御または制動制御を行うものとしてもよい。
【0065】
また、第1実施形態および第2実施形態において、コントローラ10は、機体1から障害物までの距離が所定距離L(第1所定距離L1、第2所定距離L2)以下である場合に、障害物があると判定したが、コントローラ10は、機体1から障害物まで距離のみでなく、機体1の速度を考慮してもよい。すなわち、コントローラ10は、機体1の速度と、機体1から障害物までの距離とに基づいて、機体1が障害物に到達するまでの推定時間を算出し、推定時間が所定時間以内である場合に、障害物があると判定してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 機体
10 コントローラ(制御装置)
21 前後進レバー
43 赤外線センサ(第1障害物検出装置および第2障害物検出装置)
43a 前側赤外線センサ(第1障害物検出装置)
43b 後側赤外線センサ(第2障害物検出装置)
45 回転センサ(走行状態検出手段)
50 障害物
100 転圧機械