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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】筒体キットおよびガスケット
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20250616BHJP
   A61M 1/02 20060101ALI20250616BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20250616BHJP
   G01N 1/16 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
A61J1/05 351B
A61M1/02 120
G01N1/00 101P
G01N1/16 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023516350
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012526
(87)【国際公開番号】W WO2022224656
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021072801
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】坂井 久
(72)【発明者】
【氏名】森 悠
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200444(US,A1)
【文献】米国特許第05324258(US,A)
【文献】登録実用新案第3213458(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61J 1/05
G01N 1/00
G01N 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒体と、
前記第1筒体内を筒軸方向に移動可能なガスケットと、
前記ガスケットを刺通する針を導く貫通孔を有するガイド部材と、
を備え、
前記第1筒体は、
前記ガスケットによって区画され、液体を貯留可能な貯留室を有し、
前記ガスケットは、
前記貯留室に面する第1面、および前記第1面と対向する第2面を有し、
前記第1面は、平面状または凹面状であり、かつ、第1凹部を有し、
前記第2面は、前記ガイド部材と係合する第2凹部を有し、
前記第2凹部の内側面の少なくとも一部、および、前記ガイド部材の少なくとも一部には、たがいに螺合するネジ溝を有し、
前記ガイド部材は、前記ガイド部材側の前記ネジ溝が、前記内側面側の前記ネジ溝に沿って摺動することによって、前記ガスケットから前記筒軸方向に移動可能であり、
前記針は、前記針によって前記第1筒体内の前記液体から抽出された所定の液体を収容可能な第2筒体に取付けられ、
前記針が取付けられた前記第2筒体は、前記針が前記ガスケットを刺通する際に、前記ガイド部材の上方に配置され、前記ガスケットから前記ガイド部材とともに前記筒軸方向に移動することにより、前記ガスケットを刺通する前記針の先端の位置を筒軸方向に調整可能であり、
前記液体から多血小板血漿を調製するための、筒体キット。
【請求項2】
第1筒体と、
前記第1筒体内を筒軸方向に移動可能なガスケットと、
前記ガスケットを刺通する針を導く貫通孔を有するガイド部材と、
を備え、
前記第1筒体は、
前記ガスケットによって区画され、液体を貯留可能な貯留室を有し、
前記ガスケットは、
前記貯留室に面する第1面、および前記第1面と対向する第2面を有し、
前記第1面は、平面状または凹面状であり、かつ、第1凹部を有し、
前記第2面は、前記ガイド部材と係合する凸部を有し、
前記凸部の少なくとも一部、および、前記ガイド部材の少なくとも一部には、たがいに螺合するネジ溝を有し、
前記ガイド部材は、前記ガイド部材側の前記ネジ溝が、前記凸部側の前記ネジ溝に沿って摺動することによって、前記ガスケットから前記筒軸方向に移動可能であり、
前記針は、前記針によって前記第1筒体内の前記液体から抽出された所定の液体を収容可能な第2筒体に取付けられ、
前記針が取付けられた前記第2筒体は、前記針が前記ガスケットを刺通する際に、前記ガイド部材の上方に配置され、前記ガスケットから前記ガイド部材とともに前記筒軸方向に移動することにより、前記ガスケットを刺通する前記針の先端の位置を筒軸方向に調整可能であり、
前記液体から多血小板血漿を調製するための、筒体キット。
【請求項3】
前記凸部は、前記第2面の前記第1凹部と対向する領域を囲み、該第2面から前記筒軸方向に突出する、請求項2に記載の筒体キット。
【請求項4】
前記第2面は、前記第1凹部と対向する位置に第2凹部を有し
前記凸部は、前記第2凹部を囲み、前記第2面から前記筒軸方向に突出する、請求項2または3に記載の筒体キット。
【請求項5】
前記第1凹部は、前記第1面の中心領域に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の筒体キット。
【請求項6】
前記第1筒体および前記第2筒体は、シリンジ筒であり、
前記ガスケットは、前記シリンジ筒内を移動可能なプランジャに前記ネジ溝により着脱自在に取付け可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載の筒体キット。
【請求項7】
前記第1筒体および前記第2筒体は、閉鎖端および開放端を有する筒状容器である、請求項1から6のいずれか1項に記載の筒体キット。
【請求項8】
前記開放端を塞ぐ栓体をさらに有し、
前記ガスケットは、前記栓体に着脱自在に取付け可能である、請求項7に記載の筒体キット。
【請求項9】
第1面と対向する第2面を有し、液体を貯留可能な第1筒体内を筒軸方向に移動可能なガスケットであって、
前記液体は、前記第1筒体と前記第1面とによって区画される貯留室に貯留され、
前記第1面は、平面状または凹面状であり、かつ、第1凹部を有し、
前記第2面は、前記第1凹部と対向する位置に第2凹部を有し、
前記第2凹部は、前記ガスケットを刺通する針を導く貫通孔を有するガイド部材と係合し、
前記第2凹部の内側面の少なくとも一部には、前記ガイド部材の少なくとも一部に形成されるネジ溝と、たがいに螺合するネジ溝を有し、
前記ガイド部材は、前記ガイド部材側の前記ネジ溝が、前記内側面側の前記ネジ溝に沿って摺動することによって、前記ガスケットから前記筒軸方向に移動可能であり、
前記針は、前記針によって前記第1筒体内の前記液体から抽出された所定の液体を収容可能な第2筒体に取付けられ、
前記針が取付けられた前記第2筒体は、前記針が前記ガスケットを刺通する際に、前記ガイド部材の上方に配置され、前記ガスケットから前記ガイド部材とともに前記筒軸方向に移動することにより、前記ガスケットを刺通する前記針の先端の位置を筒軸方向に調整可能であり、
前記液体から多血小板血漿を調製するための、ガスケット。
【請求項10】
第1面と対向する第2面を有し、液体を貯留可能な第1筒体内を筒軸方向に移動可能なガスケットであって、
前記液体は、前記第1筒体と前記第1面とによって区画される貯留室に貯留され、
前記第1面は、平面状または凹面状であり、かつ、第1凹部を有し、
前記第2面は、凸部を有し、
前記凸部は、前記ガスケットを刺通する針を導く貫通孔を有するガイド部材と係合し、
前記凸部の少なくとも一部には、前記ガイド部材の少なくとも一部に形成されるネジ溝と、たがいに螺合するネジ溝を有し、
前記ガイド部材は、前記ガイド部材側の前記ネジ溝が、前記凸部側の前記ネジ溝に沿って摺動することによって、前記ガスケットから前記筒軸方向に移動可能であり、
前記針は、前記針によって前記第1筒体内の前記液体から抽出された所定の液体を収容可能な第2筒体に取付けられ、
前記針が取付けられた前記第2筒体は、前記針が前記ガスケットを刺通する際に、前記ガイド部材の上方に配置され、前記ガスケットから前記ガイド部材とともに前記筒軸方向に移動することにより、前記ガスケットを刺通する前記針の先端の位置を筒軸方向に調整可能であり、
前記液体から多血小板血漿を調製するための、ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液等を分画して所望の成分を含む液を調製するために使用可能な筒体キットおよびガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
採血された血液から血清または血漿成分を分離する器具等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0209502号明細書
【文献】特開平5-188053号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る筒体キットは、筒体と、前記筒体内を筒軸方向に移動可能なガスケットと、を備え、前記筒体は、前記ガスケットによって区画され、液体を貯留可能な貯留室を有し、前記ガスケットは、前記貯留室に面する第1面を有し、前記第1面は、平面状または凹面状であり、かつ、第1凹部を有する。
【0005】
本開示の一態様に係るガスケットは、第1面と対向する第2面を有し、液体を貯留可能な筒体内を筒軸方向に移動可能なガスケットであって、前記液体は、前記筒体と前記第1面とによって区画される貯留室に貯留され、前記第1面は、平面状または凹面状であり、かつ、第1凹部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の実施形態1に係るシリンジシステムおよび筒体キットの構成例を示す分解図である。
図2図1に示す筒体キットの断面図の一例を示す図である。
図3図1に示すガスケットの一例を示す模式図である。
図4図1に示すガスケットを従来のガスケットと比較して説明する図である。
図5図1に示す筒体キットを用いて、PRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
図6】本開示の変形例1に係る真空採血管の一例を示す図である。
図7図6に示す筒体キットを用いて、PRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
図8】本開示の実施形態2に係るシリンジシステムおよび筒体キットの構成例を示す図である。
図9図8に示すシリンジシステムを用いて、PRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
図10】本開示の変形例2に係るガスケットの一例を示す模式図である。
図11】本開示の変形例3に係るガスケットの一例を示す模式図である。
図12】本開示の変形例4に係るガスケットの一例を示す模式図である。
図13】本開示の実施形態3に係るガスケットの一例を示す模式図である。
図14】本開示の変形例5に係るガスケットの一例を示す模式図である。
図15】本開示の変形例6に係るガスケットの一例を示す模式図である。
図16】本開示の実施形態4に係るガイド部材の一例を示す模式図である。
図17】本開示の実施形態4に係るシリンジシステムおよび筒体キットの構成例を示す図である。
図18】ガイド部材を使用した筒体キットを用いて、PRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
図19】ガイド部材とガスケットとの接合部の構造の一例を示す図である。
図20】ガイド部材とガスケットとの接合部の構造の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
患者から採取された血液等を分画して所望の成分を含む液を調製するための技術および方法への関心が高まっている。例えば、再生医療においては、血液から調製された多血小板血漿(platelet rich plasma、以下、PRPと称する)の利用が注目されている。
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面を用いて説明する。以下では、血液から多血小板血漿(以下、PRP)を調製するためのシリンジシステム100を例に挙げて説明する。
【0009】
本開示はこの例に限らず、例えば、血液、骨髄液、もしくは脾臓等から採取された血小板を含む液体、生体外(in vitro)にて作製された血小板を含む液体、脂肪組織由来間質血管分画を含む液体、または、白血球を含む液体等を調製するために用いられるシリンジシステム100について適用してもよい。白血球を含む液体としては、例えば、骨髄単核球を含む液体、末梢血単核細胞を含む液体、白血球多核顆粒球を含む液体等が挙げられる。
【0010】
〔実施形態1〕
<シリンジシステム100および筒体キット110の構成>
以下、本開示の実施形態1に係るシリンジシステム100および筒体キット110の構成について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1はシリンジシステム100および筒体キット110の構成例を示す分解図の一例であり、図2は筒体キット110の断面図の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、筒体キット110は、シリンジシステム100と、第1プランジャ14と、第1キャップ15(栓体)とを備えている。シリンジシステム100は、第1シリンジ筒(筒体)11、第1ガスケット13を備える第1シリンジ10を含んで構成される。ここで、第1シリンジ筒11は、閉鎖端および開放端を有する筒状容器である。
【0013】
<第1シリンジ10>
図1および図2に示すように、第1シリンジ10は、第1シリンジ筒11、および第1ガスケット13を備えている。第1シリンジ10は、例えば、血液等を採血し、採血した血液等を収容するために用いられる。また、詳しくは後述するように、第1シリンジ10は、採血した血液等を遠心分離処理するための、遠心分離容器として用いられる。
【0014】
第1シリンジ筒11は、例えば、略円筒形に構成され、内部に血液等の液体を収容する貯留室を形成する収容空間を有している。また、第1シリンジ筒11は、第1シリンジ筒11の内部が視認できるように、透明または半透明部材で構成されている。
【0015】
第1シリンジ筒11は、一方の端部に、後述する第1プランジャ14等を出し入れする開口部111を備えている。また、他方の端部に、第1シリンジ筒11本体より径が小さい略筒状の第1ポート12を備えている。また、第1シリンジ筒11の内底面は、例えば、略円弧状に貯留室に向けて突出した形状、平面状、または貯留室とは反対側に向けて突出した形状であってもよい。本実施形態では、第1シリンジ筒11の内底面は、後述する第1ガスケット13の底面である第1面131の形状に沿うように、平面状に構成されている。第1面131は、第1シリンジ筒11内の貯留室に面する面である。液体は、第1シリンジ筒11と第1面131とによって区画される貯留室に貯留される。
【0016】
第1ポート12は、採血チューブまたは注射針(例えば、採血針)等を取付ける取付部として機能してもよい。第1シリンジ筒11内の貯留室と、第1ポート12の内部空間とは連通しており、第1ポート12に取付けられた採血チューブまたは注射針を介して、血液等の液体を第1シリンジ筒11内の貯留室に収容することができる。また、第1ポート12は、ルアーロック式(ISO80369-7:2016)の構造を有し、その構造により、採血チューブ、注射針、または後述する第1キャップ15を取付けてもよい。
【0017】
第1ガスケット13は、第1シリンジ筒11内を移動可能な第1プランジャ14に着脱自在に取付け可能である。第1ガスケット13は、後述する第1キャップ15とともに、第1シリンジ筒11内を液密に封止する。第1ガスケット13は、第1シリンジ筒11内を筒軸方向に往復移動してもよい。このとき、第1ガスケット13の外周面は、第1シリンジ筒11内の液密を維持した状態で、第1シリンジ筒11の内壁面を摺動してもよい。これにより、第1ガスケット13が第1シリンジ筒11内を往復移動しても、第1シリンジ筒11内を液密に封止することができる。
【0018】
また、第1シリンジ10は、第1ガスケット13に着脱可能に取付けられる第1プランジャ14を、さらに備えていてもよい。第1プランジャ14は、一方の端部141に第1ガスケット13の上部が取付けられる。第1プランジャ14と第1ガスケット13の取付けはネジ溝で螺合してもよい。また、第1プランジャ14は、他方の端部に、例えば、操作部として用いられるフランジ142を備えてもよい。
【0019】
第1プランジャ14は、第1ガスケット13を取付けた後、上述した開口部111から第1シリンジ筒11内に挿入される。医療関係者等のユーザは、第1プランジャ14のフランジ142を操作して、第1プランジャ14を、第1シリンジ筒11内を筒軸方向に往復移動させてもよい。これによって、上述したように、第1プランジャ14に取付けられた第1ガスケット13を、第1シリンジ筒11内で往復移動させることができる。
【0020】
採血する際には、第1プランジャ14を移動させて、第1プランジャ14の少なくとも一部を、第1シリンジ筒11内から引き出し、第1ガスケット13を開口部111方向に移動することにより、第1シリンジ筒11内の貯留室に血液等を収容することができる。
【0021】
また、第1シリンジ10は、第1ポート12に着脱可能に取付けられる第1キャップ15をさらに備えてもよい。上述したように、第1ポート12に第1キャップ15を取付けることによって、第1シリンジ筒11内の貯留室を液密に封止することができる。これにより、ユーザは、血液等を採血した後、第1シリンジ筒11内に血液を収容した状態で、遠心分離処理を行うことができる。
【0022】
具体的には、ユーザは、採血後、第1ポート12に第1キャップ15を取付けた後、第1シリンジ筒11を遠心分離容器として用い、第1ガスケット13側から第1ポート12側に向かう遠心力を利用した遠心分離処理を行う。このとき、ユーザは、第1プランジャ14を遠心分離処理の妨げとならないように、第1ガスケット13から取り外してもよいし、取り外さなくてもよい。
【0023】
遠心分離処理によって、第1シリンジ筒11内の血液、すなわち全血50(図5参照)は、赤血球を主に含む第1画分51(図5参照)、白血球を主に含む第2画分52(図5参照)、および主に血小板を含む血漿である第3画分53(図5参照)の各層に遠心分離される。
【0024】
詳しくは後述するが、このときユーザは、最上層に位置する第3画分53を、注射針26によって、第2シリンジ20内へ抽出する。これにより、ユーザは、全血からPRP調製に必要な第3画分53を抽出することができる。
【0025】
<第1ガスケット13の構造>
次に、第1ガスケット13の構造について、図2および図3に基づいて詳細に説明する。図3は、第1ガスケット13の一例を示す模式図である。
【0026】
第1ガスケット13は、上述したように、第1キャップ15とともに、第1シリンジ筒11内を液密に封止する。また、第1ガスケット13は、第1プランジャ14を介して、第1シリンジ筒11内の液密を維持した状態で、第1シリンジ筒11内を筒軸方向に往復移動することができる。
【0027】
図2および図3に示すように、第1ガスケット13は、例えば、大略的に円柱形状に構成される。また、第1ガスケット13の底面である第1面131は、平面状または凹面状に構成され、第1凹部133を有している。第1凹部133は、第1ガスケット13の第1面131の略中心領域に位置してもよい。第1凹部133は、後述する注射針26を第1ガスケット13に穿き刺し貫通させた際に、注射針26の針先部27が突出する。
【0028】
(従来のガスケット13a)
図4は、第1ガスケット13を従来のガスケット13aと比較して説明する図である。図4の左側の図は、従来のガスケット13aについて説明する図であり、右側の図は、本開示の実施形態1に係る第1ガスケット13について説明する図である。
【0029】
図4の左側の図に示すように、従来のガスケット13aは、第1ガスケット13と同様に大略的に円柱形状に構成されているが、底面である第1面131aの形状が第1ガスケット13の第1面131の形状と相違する。ガスケット13aの第1面131aは、第1シリンジ筒11の内容物を全て排出するために、第1シリンジ筒11の内底部の形状に沿った形状を有しており、例えば、略円錐状に突出した形状を有している。
【0030】
また、ガスケット13aは、第1ガスケット13が第1面131に有している、注射針26の針先部27が突出する第1凹部133を有していない。
【0031】
ここで、従来のガスケット13aによる第3画分53の抽出について説明する。まず、ユーザは、注射針26の針先部27を、ガスケット13aの第1面131aと対向する第2面132aから突き刺し、ガスケット13a内を貫通させ、針先部27をガスケット13aの第1面131aの先端131bから突出させる。そして、ユーザは、針先部27から、第1面131aの下に位置する第3画分53を、第2シリンジ20内へ抽出する。ここで、注射針26は、ガスケット13aを貫通して、ガスケット13aの第1面131aの下に位置する第3画分53を抽出するのに、充分な長さに構成されていればよい。
【0032】
このとき、ガスケット13aは、針先部27を突き刺した部分が、筒軸方向下方へ引っ張られて、第1面131aが筒軸方向下方へ3mm程度伸長する。針先部27が第1面131aから突出すると、第1面131aの伸長していた部分が元に戻り、その結果、針先部27が第1面131aから3mm程度突出する。よって、針先部27を第1面131aから突出させるためには、注射針26は第1面131aから針先部27が3mm程度突出する長さが必要となる。このため、針先部27の先端131bからの突出長T2は長くなり、約3mm程度となる。
【0033】
また、図4の左側の図に示すように、第3画分53と第2画分52との界面61は略水平面であるが、ガスケット13aの第1面131aは、上述したように、略円錐状に突出している。さらに、針先部27が、先端131bからT2ほど突出するため、第3画分53を全量抽出することが困難であり、抽出できない部分L2が比較的多く生じていた。
【0034】
(第1ガスケット13)
ここで、再び図3を参照し、第1ガスケット13の構造の説明に戻る。上述したように、第1ガスケット13は、第1面131の形状が、平面状または凹面状に構成され、注射針26の針先部27が突出する第1凹部133を有している。
【0035】
図3に示すように、第1凹部133は、第1ガスケット13の第1面131から凹んだ部分であり、例えば、周壁面がやや傾斜した円柱状の孔部として形成される。第1凹部133の深さ、すなわち第1面131から第1凹部133の底面134までの長さは、例えば、約2mm程度に構成される。第1凹部133は、第1面131から凹んだ部分であればよく、例えば、台形円錐形、円錐形、円柱形、直方体等の孔部であってもよく、形状は特に限定されない。
【0036】
次に、本開示の実施形態1に係る第1ガスケット13による第3画分53の抽出について説明する。
【0037】
図4の右側の図に示すように、第1ガスケット13を使用して、第3画分53を抽出する際には、まず、ユーザは、注射針26の針先部27を、第1ガスケット13の第1面131と対向する第2面132から突き刺す。その後、ユーザは、針先部27を、第1ガスケット13内を貫通させ、第1凹部133から突出させる。
【0038】
このとき、第1ガスケット13は、針先部27が突き刺された部分が、筒軸方向下方へ引っ張られて伸長するため、針先部27が第1凹部133の底面134から約3mm程度突出する。しかし、第1凹部133が第1面131から約2mm程度凹んでいるため、針先部27の第1面131からの突出長T1は、約1mm程度となる。
【0039】
ユーザは、針先部27から、第1面131の下に位置する第3画分53を第2シリンジ20内へ抽出する。
【0040】
この際、第1ガスケット13は、第1面131が平面状または凹面状に構成されており、上述したように、第1面131と針先部27の位置がほぼ一致している。このため、ユーザは、第2画分52と第3画分53との界面61を乱すことなく、第2画分52と第3画分53との界面61近傍まで第3画分53を抽出することができ、抽出できない部分L1を少なくすることができる。
【0041】
上記のように、第1ガスケット13を使用することによって、調製するPRPの量や濃縮率の向上を図ることができる。
【0042】
<筒体キット110を用いたPRPの調製方法>
次に、筒体キット110を用いてPRPを調製する処理について、図5を用いて説明する。図5は、図1に示す筒体キット110を用いて、血液からPRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
【0043】
状態<1>
図5の状態<1>に示すように、まず、第1シリンジ10は、血液等の採血のために使用される。採血の際には、ユーザは、まず、第1シリンジ10の第1ポート12に、採血チューブまたは採血針等を取付け、第1ガスケット13に取付けた第1プランジャ14を筒軸方向上方に移動させて採血する。第1シリンジ筒11の貯留室には、採血した血液が注入される。この採血した血液は全血50であり、赤血球、白血球、血小板および血漿を含んでいる。血液凝固を抑制するため、採血前に、第1シリンジ筒11の貯留室に血液保存液を採血量の10%程度注入してもよい。血液保存液はACD-A液(Anticoagulant Citrate Dextrose Solution, Solution A)等を用いてもよい。
【0044】
所定量の血液を第1シリンジ筒11内に注入した後、ユーザは、採血チューブまたは採血針を第1ポート12から取り外し、代わりに第1キャップ15を第1ポート12に取付ける。また、このときユーザは、第1プランジャ14も取り外す。第1キャップ15は、第1ガスケット13とともに、第1シリンジ筒11内を液密に封止する。これにより、第1シリンジ10を、採血した血液等を遠心分離処理するための、遠心分離容器として使用することができる。
【0045】
状態<2>
次に、ユーザは、第1シリンジ10に、第1ガスケット13側から第1ポート12側に向かう遠心力を利用した、遠心分離処理を行う。遠心分離処理条件は、例えば、遠心加速度600xg、処理時間7分である弱遠心条件であってもよい。
【0046】
図5の状態<2>に示すように、遠心分離処理によって、第1シリンジ筒11内の全血50は、赤血球を主に含む第1画分51、白血球を主に含む第2画分52、および主に血小板を含む血漿である第3画分53の各層に分画される。
【0047】
状態<3>
次に、図5の状態<3>に示すように、第2シリンジ20に取付けた注射針26は第1ガスケット13を貫通する。注射針26は、白血球を主に含む第2画分52を残し、最上層に位置する第3画分53を、後述する第2シリンジ20内へ抽出する。これにより、ユーザは、全血50から全血よりも白血球濃度が低いPRP調製に必要な第3画分53を抽出することができる。ここで、抽出に用いた長い注射針26は第1ガスケット13を貫通させる場合、注射針26が曲がりやすいので、ユーザは、ガイド筒等を用いて、注射針26の曲がりを抑止してもよい。
【0048】
第3画分53を抽出する際には、まず、ユーザは、注射針26の針先部27を、第1ガスケット13の第2面132から突き刺し、第1ガスケット13内を貫通させ、針先部27を第1凹部133から突出させる。そして、ユーザは、針先部27から、第1面131の下に位置する第3画分53を第2シリンジ20内へ抽出する。
【0049】
このとき、上述したように、第1ガスケット13の第1面131は、平面状または凹面状に構成されている。第1凹部133が形成されているため、第1面131と針先部27の位置がほぼ一致しており、第2画分52と第3画分53との界面61近傍まで第3画分53を抽出することができ、抽出できない部分L1を少なくすることができる。さらに、針先部27を第1ガスケット13に挿通するときの抵抗が軽減するため、第1凹部133が形成されていないガスケットと比較して、容易に針先部27を挿通させることができる。
【0050】
このように、シリンジシステム100を用いて、第1シリンジ筒11内の第3画分53を、無駄なく効率的に第2シリンジ20内に収容することができる。また、これにより、調製するPRPの量や濃縮率の向上を図ることができる。
【0051】
上記では、第3画分53を第2シリンジ20内に抽出する例を示したが、第1シリンジ筒11内の液体を第2シリンジ20内へ抽出する際、ユーザは、第2画分52および第3画分53を、抽出してもよい。この場合、全血50から全血よりも白血球濃度が高いPRPを調製することができる。
【0052】
〔変形例1〕
上記の実施形態1で説明した構成は、適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1では、血液からPRPを調製するための筒体キットを、シリンジ筒に適用した例について説明したが、例えば、真空採血管に適用してもよい。
【0053】
<採血管システム300および筒体キット310の構成>
図6は、本開示の変形例1に係る真空採血管(筒体)71の一例を示す図である。図6に示すように、筒体キット310は、採血管システム300と、ホルダー75と、注射針76とを備えている。採血管システム300は、真空採血管71、ガスケット72、栓体73、第1部材74を備えている。ユーザは、予め、血液凝固を抑制するため、血液保存液であるACD-A液等を採血量の10%程度を真空採血管71に充填してもよい。
【0054】
真空採血管71は、例えば、血液等を採血し、採血した血液等を収容するために用いられる。また、後述するように、真空採血管71は、採血した血液等を遠心分離処理するための遠心分離容器として用いられる。
【0055】
真空採血管71は、例えば、内部に貯留室を有する略円筒形に構成される。また、真空採血管71は、一方の端部に開口部711を備え、開口部711の周囲にはフランジ712を備えている。真空採血管71は、閉鎖端および開放端を有する筒状容器である。
【0056】
栓体73は、真空採血管71の開放端を塞ぐ部材である。栓体73は、真空採血管71のフランジ712に貼着され、後述するガスケット72とともに、真空採血管71内の貯留室を、真空状態に維持して封止する。栓体73は、例えば、金属、合成樹脂等から構成され、略円板状の形状を有している。また、栓体73は、後述する第1部材74を備えている。
【0057】
ガスケット72は、例えば、大略的に円柱形状に構成され、ガスケット72の底面である第1面721は、平面状または凹面状に構成される。また、ガスケット72は、第1凹部723を有している。第1凹部723は、後述する針先部761を穿き刺し貫通させた際に、針先部761が突出する。ガスケット72は、栓体73に着脱自在に取付け可能であってもよい。
【0058】
また、ガスケット72は、後述する第1部材74が挿入される挿入孔が形成されている。
【0059】
注射針76は、後述するホルダー75に取付けられており、長手方向両端部に、それぞれ、一方の針先部761、他方の針先部762を備えている。
【0060】
第1部材74は、栓体73に取付けられ、第1部材74の下部はガスケット72に形成された挿入孔に挿入される。
【0061】
第1部材74は可撓性のある材料で構成されていればよい。例えば、第1部材74は天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーといったゴム材料であってもよい。第1部材74が、可撓性を有することにより、第1部材74とガスケット72とが密着する。これにより、針先部761が、第1部材74とガスケット72とを貫通する際に、栓体73とガスケット72とに囲まれた空間の真空を維持できる。
【0062】
第1部材74は、注射針76の一方の針先部761を、栓体73の外部から、栓体73とガスケット72とに囲まれた空間へと案内する案内孔741を有している。
【0063】
ホルダー75は、一方の端部に、真空採血管71を出し入れする開口部751を備え、他方の端部に、例えば、操作部として用いられるフランジ752を備えている。
【0064】
ホルダー75は、さらに、針先部761をその全長に亘って被覆する、ゴムスリーブ763を有していてもよい。
【0065】
真空採血管71を用いて採血する際には、注射針76の他方の針先部762は、血管等に挿入される。真空採血管71は、上述した開口部751から、ホルダー75内に挿入される。ユーザは、フランジ752に指をかけ、真空採血管71をホルダー75内へ押し込む。
【0066】
このとき、ホルダー75に取付けられた注射針76の一方の針先部761は、第1部材74の案内孔741に挿入され、第1部材74の底面を突き破る。そして、さらにガスケット72を貫通し、針先部761は、ガスケット72の第1凹部723から突出する。
【0067】
これにより、血液は注射針76を介して、真空状態の真空採血管71の貯留室へ流入する。
【0068】
<筒体キット310を用いたPRPの調製方法>
次に、筒体キット310を用いてPRPを調製する処理について、図7を用いて説明する。図7は、図6に示す筒体キット310を用いて、血液からPRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
【0069】
状態<1a>
図7の状態<1a>に示すように、まず、真空採血管71は、血液等の採血のために使用される。採血の際には、まず、ユーザは、注射針76の他方の針先部762を血管等に挿入する。
【0070】
状態<2a>
図7の状態<2a>に示すように、真空採血管71は、ホルダー75内へ押し込められる。このとき、注射針76の一方の針先部761は、第1部材74の案内孔741に挿入され、第1部材74の底面を突き破る。
【0071】
状態<3a>
図7の状態<3a>に示すように、注射針76の一方の針先部761が、ガスケット72を貫通し、ガスケット72の第1凹部723から突出すると、血液すなわち全血50が注射針76を介して、真空状態の真空採血管71の貯留室へ流入する。
【0072】
状態<4a>
図7の状態<4a>に示すように、ユーザは、ホルダー75および注射針76から真空採血管71を取り外す。その後、ユーザは、注射針76の他方の針先部762を血管等から抜く。
【0073】
状態<5a>
図7の状態<5a>に示すように、ユーザは、真空採血管71のフランジ712に貼着された栓体73を、第1部材74とともに取り除く。これにより、真空採血管71は大気解放され、ガスケット72は、外圧により収容された全血50の液面まで押し下げられる。
【0074】
真空採血管71の全血50が収容されている貯留室は、ガスケット72によって液密に封止されている。これにより、ユーザは、真空採血管71内に全血50を収容した状態で、遠心分離処理を行うことができる。
【0075】
状態<6a>
図7の状態<6a>に示すように、遠心分離処理によって、全血50は、成分ごとに分離される。これにより、第1シリンジ10を用いた場合と同様に、ユーザは、注射針76をガスケット72に挿通して、必要な成分を抽出することができる。
【0076】
また、ガスケット72の第1面721は、第1ガスケット13の第1面131と同様に、注射針76が突出する第1凹部723を有しているため、第1面721と針先部761の位置がほぼ一致する。これにより、ユーザは、界面近傍まで、必要な画分を抽出することができる。
【0077】
このように、第1シリンジ10を用いた場合と同様に、ユーザは、真空採血管71を用いて、無駄なく効率的に、真空採血管71内に収容された血液成分等を分離、抽出することができる。また、これにより、調製するPRPの量や濃縮率の向上を図ることができる。
【0078】
〔実施形態2〕
続いて、本開示の実施形態2について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、対応する符号を付記し、その説明を繰り返さない。実施形態2より後の実施形態等についても、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、対応する符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0079】
図8は、本開示の実施形態2に係るシリンジシステム200および筒体キット210の構成例を示す図である。
【0080】
図8に示すように、シリンジシステム200は、第1シリンジ10の他に、さらに、第2シリンジ20、第3シリンジ30を備えている点で、第1実施形態と異なる。
【0081】
実施形態2の第1シリンジ10は、実施形態1において説明した構成と同じである。よって、ここでは、第1シリンジ10の説明を省略し、主に、第2シリンジ20および第3シリンジ30について説明する。
【0082】
<第2シリンジ20>
第2シリンジ20は、例えば、第1シリンジ10によって分離された液体の一部を抽出するために用いられる。実施形態1において説明した、第3画分53を抽出する注射針26は、実施形態2における第2シリンジ20の注射針26と同じである。
【0083】
また、詳しくは後述するように、第2シリンジ20は、第1シリンジ10から抽出した液体をさらに、遠心分離処理するための、遠心分離容器として用いられる。
【0084】
ここで、第1シリンジ10から第2シリンジ20に抽出する液体は、第1シリンジ10によって分離された液体の一部であればよく、例えば、第3画分53であってもよいし、第2画分52および第3画分53であってもよい。本実施形態では、ユーザは、第3画分53を、第1シリンジ10から第2シリンジ20に抽出している。
【0085】
また、さらに、第2シリンジ20は、第2シリンジ筒21内でPRPを調製し、調製したPRPを、患者等に投与するために用いられる。ここで、第2シリンジ筒21は、閉鎖端および開放端を有する筒状容器である。
【0086】
第2シリンジ20は、第2シリンジ筒21、および第2ガスケット23を備えている。また、第2シリンジ20は、第2プランジャ24、第2キャップ25、注射針26をさらに備えていてもよい。
【0087】
第2シリンジ筒21は、例えば、略円筒形に構成され、内部に第3画分53等の液体を収容する貯留室が形成されている。また、第2シリンジ筒21は、第2シリンジ筒21の内部が視認できるように、透明または半透明部材で構成されている。
【0088】
第2シリンジ筒21は、一方の端部に、第2プランジャ24等を出し入れする開口部211を備えている。また、他方の端部に、第2シリンジ筒21本体より径が小さい略筒状の第2ポート22を備えている。また、第2シリンジ筒21の内底面は、例えば、略円弧状に貯留室に向けて突出した形状、平面状、または貯留室とは反対側に向けて突出した形状であってもよい。本実施形態では、第2シリンジ筒21の内底面は、後述する第2ガスケット23の底面である第1面231の形状に沿うように、平面状に構成されている。第1面231は、第2シリンジ筒21内の貯留室に面する面である。
【0089】
第2ポート22は、注射針26等を取付ける取付部として機能してもよい。第2シリンジ筒21内の収容空間と、第2ポート22の内部空間とは連通している。このため、ユーザは、第2ポート22に取付けられた注射針26を介して、第1シリンジ筒11内に収容されている第3画分53等の液体を抽出して、第2シリンジ筒21内の貯留室に収容することができる。上述したように、注射針26は、第1ガスケット13を貫通して、第1ガスケット13の第1面131の下に位置する液体を抽出するのに、充分な長さに構成されている。
【0090】
第2ガスケット23は、第2シリンジ筒21内を移動可能な第2プランジャ24に着脱自在に取付け可能である。第2ガスケット23は、第2キャップ25とともに、第2シリンジ筒21内を液密に封止する。第2ガスケット23は、第2シリンジ筒21内を筒軸方向に往復移動してもよい。このとき、第2ガスケット23の外周面は、第2シリンジ筒21内の液密を維持した状態で、第2シリンジ筒21の内壁面を摺動してもよい。これにより、第2ガスケット23が第2シリンジ筒21内を往復移動しても、第2シリンジ筒21内を液密に封止することができる。
【0091】
また、第2ガスケット23は、例えば、大略的に円柱形状に構成される。第2ガスケット23の底面である第1面231は、平面状または凹面状に構成され、第1凹部233を有している。第1凹部233は、第2ガスケット23の第1面231の略中心領域に位置してもよい。第1凹部233は、後述する注射針36を穿き刺し貫通させた際に、注射針36の針先部37が突出する。
【0092】
第2プランジャ24は、一方の端部241に第2ガスケット23の上部が取付けられ、他方の端部に、例えば、操作部として用いられるフランジ242を備えてもよい。
【0093】
第2プランジャ24は、第2ガスケット23を取付けた後、開口部211から第2シリンジ筒21内に挿入される。ユーザは、第2プランジャ24のフランジ242を操作して、第2プランジャ24を、第2シリンジ筒21内を筒軸方向に往復移動させてもよい。これによって、第2プランジャ24に取付けられた第2ガスケット23を、第2シリンジ筒21内で往復移動させることができる。
【0094】
注射針26によって、第1シリンジ筒11内から液体の一部を抽出する際には、ユーザは、第2プランジャ24を移動させて、第2プランジャ24の少なくとも一部を、第2シリンジ筒21内から引き出し、第2ガスケット23を移動させる。これにより、ユーザは、第2シリンジ筒21内の貯留室に、第1シリンジ筒11内の液体の一部を収容することができる。第2シリンジ筒21内の貯留室に収容する液体は、第1シリンジ10によって分離された液体の一部であればよく、例えば、第3画分53であってもよいし、第2画分52および第3画分53であってもよい。本実施形態では、ユーザは、第3画分53を、第1シリンジ10から第2シリンジ20に抽出している。
【0095】
第2キャップ25は、第2ポート22に着脱可能に取付けられる。ユーザは、第2ポート22に第2キャップ25を取付け、第2ガスケット23を第2シリンジ筒21内に挿入することによって、第2シリンジ筒21内の貯留室を液密に封止することができる。これにより、ユーザは、第2シリンジ筒21内に第1シリンジ筒11内の液体の一部を収容した後、第1シリンジ筒11内の液体の一部を収容した状態で、遠心分離処理を行うことができる。本実施形態では、ユーザは、第2シリンジ筒21内に第3画分53を収容した後、第3画分53を収容した状態で、遠心分離処理を行っている。
【0096】
具体的には、ユーザは、第2ポート22に第2キャップ25を取付けた後、第2シリンジ筒21を遠心分離容器として用い、第2ガスケット23側から第2ポート22側に向かう遠心力を利用した遠心分離処理を行う。このとき、ユーザは、第2プランジャ24を遠心分離処理の妨げとならないように、第2ガスケット23から取り外してもよいし、取り外さなくてもよい。
【0097】
遠心分離処理によって、第2シリンジ筒21内の液体は、血小板を主に含む第4画分54(図9<5b>参照)、および主に血漿である第5画分55(図9<5b>参照)の各層に遠心分離される。
【0098】
詳しくは後述するが、このとき、ユーザは、最上層に位置する第5画分55を、後述する第3シリンジ30の注射針36によって、第3シリンジ30内へ抽出する。これにより、第3画分53から、PRP調製に不要な第5画分55を取り除くことができる。
【0099】
このように、第5画分55を取り除いた後、第2シリンジ20内には、血小板の濃度が濃いPRP(図9<8b>参照)が収容されている。
【0100】
液体中の各血球成分の濃度の指標としては、例えば、単位体積当たりの所定の血球成分の個数(個/μL)を用いることが可能である。液体中の各血球成分は、例えば、フローサイトメトリー法、シースフローDC検出方式、電気抵抗検出方式、シアンメトヘモグロビン法、蛍光法等で測定されていればよい。本開示において、特に比較対象を挙げずに各血球成分の濃度が高いまたは低いと記載する場合、全血と比較して、各血球成分の濃度が高いまたは低いことを意味している。例えば、「血小板の濃度が高い」という記載は、全血と比較して血小板の濃度が高いことを意味し、「血小板の濃度が低い」という記載は、全血と比較して血小板の濃度が低いことを意味している。本開示において、PRPは、全血と比較して血小板の濃度が高い液体を意味している。
【0101】
また、第2ガスケット23の第1面231は、第1ガスケット13の第1面131と同様に、注射針36が突出する第1凹部233を有している。このため、注射針36の針先部37の突出長が少なくなり、第1面231と針先部37の位置がほぼ一致する。これにより、ユーザは、第4画分54と第5画分55との界面近傍まで、第5画分55を抽出することができ、血小板の濃度の高いPRPを調製することができる。
【0102】
第2シリンジ20は、上述したように、第2シリンジ筒21内で調製したPRPを、患者等に投与するために用いることができる。
【0103】
PRPを患者等に投与する際には、ユーザは、図9<8b>のようにPRPを攪拌する。まず、ユーザは、第2ポート22から第2キャップ25を取り外し、代わりに注射針28等を取付ける。注射針28は、通常の注射針より長さが長い注射針26と異なり、一般的な注射針の長さに構成されている。
【0104】
ユーザは、第2ガスケット23に、第2プランジャ24を取付け、注射針28の針先を患者の患部に挿入する。そして、ユーザは、第2プランジャ24を介して、第2ガスケット23を筒軸方向下方へ移動させる。これにより、ユーザは、調製したPRPを患者等の患部に投与することができる。
【0105】
<第3シリンジ30>
第3シリンジ30は、例えば、第2シリンジ20によって分離された第5画分55を抽出して、第3シリンジ筒31に収容するために用いられる。これにより、ユーザは、第2シリンジ筒21に収容されている第3画分53から、PRPの調製に不要な第5画分55を取り除くことができる。ここで、第3シリンジ筒31は、閉鎖端および開放端を有する筒状容器である。
【0106】
第3シリンジ30は、第3シリンジ筒31、および第3ガスケット33を備えている。また、第3シリンジ30は、第3プランジャ34、注射針36をさらに備えていてもよい。
【0107】
第3シリンジ筒31は、例えば、略円筒形に構成され、内部に第5画分55を収容する貯留室が形成されている。また、第3シリンジ筒31は、第3シリンジ筒31の内部が視認できるように、透明または半透明部材で構成されている。
【0108】
第3シリンジ筒31は、一方の端部に、第3プランジャ34等を出し入れする開口部311を備えている。また、他方の端部に、第3シリンジ筒31本体より径が小さい略筒状の第3ポート32を備えている。
【0109】
また、第3シリンジ筒31の内底面の形状は、例えば、略円弧状に貯留室に向けて突出した形状、平面状、または貯留室とは反対側に向けて突出した形状であってもよい。本実施形態では、第3シリンジ筒31の内底面は、一般的な注射器と同様の略円錐状に突出した形状を有していてもよい。このとき、一般的なガスケットと同様の略円錐状に突出した形状の底面331を有する第3ガスケット33を使用した場合に、第3ガスケット33の底面331を第3シリンジ筒31の内底面に沿わせることができる。
【0110】
第3ガスケット33は、第3シリンジ筒31内を移動可能な第3プランジャ34に着脱自在に取付け可能である。第3ガスケット33は、第1ガスケット13および第2ガスケット23と異なり、注射針36を挿通して第3シリンジ筒31内の収容物を抽出する必要がない。このため、第3ガスケット33は、平面状または凹面状である必要が無く、一般的なガスケットの形状であってもよい。また、第1ガスケット13および第2ガスケット23のように、注射針36が突出する第1凹部133、233を有しなくてもよい。
【0111】
第3ポート32は、注射針36等を取付ける取付部として機能してもよい。第3シリンジ筒31内の収容空間と、第3ポート32の内部空間とは連通している。このため、ユーザは、第3ポート32に取付けられた注射針36を介して、第2シリンジ筒21内に収容されている第5画分55を抽出して、第3シリンジ筒31内の貯留室に収容することができる。
【0112】
注射針36は、第2ガスケット23を貫通して、第2ガスケット23の第1面231の下に位置する第5画分55を抽出するために、充分な長さに構成されている。
【0113】
第3プランジャ34は、一方の端部341に第3ガスケット33の上部が取付けられ、他方の端部に、例えば、操作部として用いられるフランジ342を備えてもよい。
【0114】
第3プランジャ34は、第3ガスケット33を取付けた後、開口部311から第3シリンジ筒31内に挿入される。ユーザは、第3プランジャ34のフランジ342を操作して、第3プランジャ34を、第3シリンジ筒31内を筒軸方向に往復移動させてもよい。これによって、ユーザは、第3プランジャ34に取付けられた第3ガスケット33を、第3シリンジ筒31内で往復移動させることができる。
【0115】
注射針36によって、第2シリンジ筒21から第5画分55を抽出する際には、ユーザは、第3プランジャ34を移動させて、第3プランジャ34の少なくとも一部を、第3シリンジ筒31内から引き出し、第3ガスケット33を移動させる。これにより、ユーザは、第3シリンジ筒31内の収容空間に、第5画分55を収容することができる。
【0116】
<シリンジシステム200を用いたPRPの調製方法>
次に、シリンジシステム200を用いてPRPを調製する処理について、図9を用いて説明する。図9は、シリンジシステム200を用いて、PRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
【0117】
図9の状態<1b>から状態<3b>については、図5における状態<1>から状態<3>と同様であるため、説明を省略する。
【0118】
状態<4b>
図9の状態<4b>に示すように、ユーザは、所定量の第3画分53を第2シリンジ20の第2シリンジ筒21内に注入した後、注射針26を第2ポート22から取り外し、代わりに第2キャップ25を第2ポート22に取付ける。また、このとき第2プランジャ24も取り外される。第2キャップ25は、第2ガスケット23とともに、第2シリンジ筒21内を液密に封止する。これにより、第2シリンジ20を、抽出した第3画分53を遠心分離処理するための、遠心分離容器として使用することができる。
【0119】
状態<5b>
次に、ユーザは、第2シリンジ20に、第2ガスケット23側から第2ポート22側に向かう遠心力を利用した、遠心分離処理を行う。遠心分離処理条件は、例えば、遠心加速度2000xg、処理時間5分である強遠心条件であってもよい。
【0120】
図9の状態<5b>に示すように、遠心分離処理によって、第2シリンジ筒21内の第3画分53は、血小板を主に含む第4画分54、および主に血漿である第5画分55の各層に遠心分離される。
【0121】
状態<6b>
次に、図9の状態<6b>に示すように、ユーザは、第2シリンジ筒21内の最上層に位置する第5画分55を、第3シリンジ30の注射針36によって、第3シリンジ筒31内へ抽出する。これにより、ユーザは、第2シリンジ筒21に収容された第3画分53からPRP調製に不要な第5画分55を取り除くことができる。
【0122】
状態<7b>
ユーザは、第2シリンジ筒21に挿入されている第2ガスケット23に、取り外していた第2プランジャ24を、再び取付ける。
【0123】
状態<8b>
ユーザは、第2シリンジ筒21内に残存する収容液を撹拌して、PRPを調製する。
【0124】
第2シリンジ20は、上述したように、第2シリンジ筒21内のPRPを、患者等に投与するために用いられる。PRPを患者等に投与する際には、ユーザは、まず、第2ポート22から第2キャップ25を取り外し、代わりに注射針28等を取付ける。注射針28は、通常の注射針より長さが長い注射針26、36と異なり、一般的な長さの注射針である。
【0125】
ユーザは、注射針28の針先を患者の患部に挿入し、第2プランジャ24を介して、第2ガスケット23を筒軸方向下方へ移動させる。これにより、ユーザは、調製したPRPを患者等の患部に投与することができる。
【0126】
上記のように、シリンジシステム200を用いることによって、ユーザは、採血、2回の遠心分離処理、2回の必要成分の抽出、PRPの調製まで、効率よくPRPの調製処理を行うことができる。また、第1ガスケット13および第2ガスケット23を使用することにより、調製するPRPの量や濃縮率の向上を図ることができる。
【0127】
次に、ガスケットの種々の変形例について説明する。ガスケットの構造は、以下に示すように適宜変更することが可能である。
【0128】
〔変形例2〕
本開示の変形例2のガスケット43aの構造について、図10に基づいて説明する。図10は、変形例2に係るガスケット43aの一例を示す模式図である。
【0129】
図10に示すように、ガスケット43aは、大略的に円柱形状に構成される。また、ガスケット43aの底面である第1面431は、平面状または凹面状に構成され、注射針26、36の針先部27、37が突出する第1凹部433を有している点で第1ガスケット13等と同様である。
【0130】
第1凹部433は、ガスケット43aの第1面431から凹んだ部分であり、例えば、周壁面がやや傾斜した円柱状の孔部に形成される。第1凹部433は、第1面431から凹んだ部分であればよく、例えば、円錐形、直方体等の孔部であってもよく、形状は特に限定されない。
【0131】
ガスケット43aは、さらに、ガスケット43aの第1面431と対向する第2面432に、第2凹部434を有している。本実施形態では、第2凹部434は、ガスケット43aを第2面432側から円柱状にくり抜いた形状に形成される。第2凹部434は、ガスケット43aの厚みを薄くする形状であればよく、形状は特に限定されない。第2凹部434は、例えば、直方体、多角柱、円錐状の窪み等であってもよい。
【0132】
これにより、注射針26、36を挿通させる部分のガスケット43aの厚みが薄くなり、挿通するときの抵抗が軽減する。このため、ユーザは、さらに容易に、針先部27、37をガスケット43aに挿通させることができる。
【0133】
第2凹部434の開口部の広さは、第1凹部433の開口の広さと比較して、大きくてもよいし、同じでもよいし、狭くてもよい。本実施形態では、第2凹部434の開口部の広さは、第1凹部433の開口の広さと比較して大きくなるように形成される。しかし、第2凹部434は、第1凹部433の開口の広さと同じ、または、第1凹部の開口より狭くなるように構成されてもよい。この場合、注射針26、36をガスケット43aに挿通させる際に、注射針26、36の針先部27、37を効果的に第1凹部433へ案内することができる。
【0134】
〔変形例3〕
本開示の変形例3のガスケット43bの構造について、図11に基づいて説明する。図11は、変形例3に係るガスケット43bの一例を示す模式図である。
【0135】
図11に示すように、ガスケット43bは、ガスケット43aの構造に加えて、さらに第1面431に、第3凹部435を有している。
【0136】
第3凹部435は、例えば、第1凹部433の開口部より広くなるように、ガスケット43bの第1面431側から円柱状にくり抜いた形状に構成される。このとき、第1凹部433は、第3凹部435の底面に位置していてもよい。第3凹部435は、直方体、多角柱、円錐状の窪み等であってもよく、形状は特に限定されない。
【0137】
これにより、注射針26、36を挿通させる部分のガスケット43bの厚みがさらに薄くなり、ユーザは、より容易に、針先部27、37をガスケット43bに挿通させることができる。
【0138】
〔変形例4〕
本開示の変形例4のガスケット43cの構造について、図12に基づいて説明する。図12は、変形例4に係るガスケット43cの一例を示す模式図である。
【0139】
図12に示すように、ガスケット43cは、上述したガスケット43aと同様に、第1面431と対向する位置にある第2面432に、第2凹部434を有している。しかし、ガスケット43cは、第2面432が第1面431と反対側に位置するガスケット43cの底面に開口する凹部の底面である点で、ガスケット43aと相違する。また、ガスケット43cの第1面431と第2面432との間の厚みは、ガスケット43aの第1面431と第2面432との間の厚みと比較して厚くてもよい。
【0140】
第2凹部434の開口部の広さは、第1凹部433の開口の広さと同じ、または、第1凹部の開口より狭くなるように構成されていてもよい。また、第2凹部434は、周壁がやや傾斜した円柱形状に構成されてもよい。第2凹部434は、例えば、直方体、多角柱、円錐状の窪み等であってもよく、形状は特に限定されない。
【0141】
これにより、ガスケット43cの厚みを増して、ガスケット43cの強度を向上させつつ、第2凹部434を設けることによって、ガスケット43cへの注射針26、36の挿入を容易にすることができる。
【0142】
また、第2凹部434を、第1凹部433の開口部より狭くなるように構成することによって、注射針26、36の針先部27、37を効果的に第1凹部433へ案内することができる。
【0143】
〔実施形態3〕
続いて、本開示の実施形態3について、以下に説明する。上記では、ガスケットに凹部が形成されている例について説明したが、実施形態3のガスケットは凸部が形成される点で、上記のガスケットと相違する。
【0144】
図13は、本開示の実施形態3に係るガスケット43dの一例を示す模式図である。図13に示すように、ガスケット43dは、実施形態1に係る第1ガスケット13の構造に加えて、さらに、ガスケット43dの第1面431と対向する第2面432に、第2面432から筒軸方向に突出する凸部437を有している。
【0145】
凸部437は、例えば、周壁がやや傾斜した円柱形状であり、かつ、略中心部に案内孔437aを有していてもよい。案内孔437aによって、注射針26、36の針先部27、37を案内することができる。凸部437は、第2面432が有する、第1凹部433と対向する領域を囲むように第2面432に位置すればよい。すなわち、凸部437の軸線と、第1凹部433の軸線とは、ほぼ同じ位置になるように構成され、注射針26、36の針先部27、37を効果的に案内することができる。凸部437は、注射針26、36の針先部27、37を案内する形状であればよく、形状は特に限定されない。
【0146】
これによって、針先部27、37を効果的に第1凹部433へ案内することができる。
【0147】
次に、実施形態3のガスケットの種々の変形例について説明する。ガスケットの構造は、以下に示すように適宜変更することが可能である。
【0148】
〔変形例5〕
本開示の変形例5のガスケット43eの構造について、図14に基づいて説明する。図14は、変形例5に係るガスケット43eの一例を示す模式図である。
【0149】
図14に示すように、ガスケット43eは、上述したガスケット43dと同様に、第1面431と対向する位置にある第2面432に、第2面432から筒軸方向に突出する凸部437を有している。しかし、ガスケット43cは、第2面432が第1面431と反対側に位置するガスケット43cの底面に開口する凹部の底面である点で、ガスケット43dと相違する。
【0150】
凸部437は、例えば、周壁がやや傾斜した円柱形状であり、かつ、注射針26、36の針先部27、37を案内する案内孔を略中心部に有していてもよい。凸部437は、第2面432が有する、第1凹部433と対向する領域を囲むように第2面432に位置すればよい。すなわち、凸部437の軸線と、第1凹部433の軸線とは、ほぼ同じ位置になるように構成されてもよく、このとき、注射針26、36の針先部27、37を効果的に案内することができる。凸部437は、注射針26、36の針先部27、37を案内する形状であればよく、形状は特に限定されない。
【0151】
これによって、針先部27、37を効果的に第1凹部433へ案内することができる。
【0152】
〔変形例6〕
本開示の変形例6のガスケット43fの構造について、図15に基づいて説明する。図15は、変形例6に係るガスケット43fの一例を示す模式図である。
【0153】
図15に示すように、ガスケット43fは、ガスケット43eの構造に加えて、第2面432の第1凹部433と対向する位置に、第2凹部434をさらに有している。
【0154】
第2凹部434は、第1凹部433の開口部より狭くなるように、周壁がやや傾斜した円柱形状に構成される。第2凹部434は、直方体、多角柱、円錐状の窪み等であってもよく、形状は特に限定されない。
【0155】
第2凹部434を設けることによって、ガスケット43fへの注射針26、36の挿入を容易にすることができる。また、第2凹部434を、第1凹部433の開口部より狭くなるように構成することによって、針先部27、37をさらに効果的に第1凹部433へ案内することができる。
【0156】
また、ユーザは、注射針26、36の針先部27、37を導く貫通孔を有する、後述のガイド部材80、90を用いてもよい。ガイド部材80、90を用いる場合、ガイド部材80、90の軸線と、第1凹部433の軸線とが、ほぼ同じ位置になるように構成されていてもよい。ガイド部材80、90の端部を第2面432に当接させた状態において、注射針26、36をガイド部材80、90に挿入すれば、針先部27、37は第1凹部433へ案内される。このように、ユーザは、ガイド部材80、90を用いることによって、第1凹部433に針先部27、37を容易に突出させることができる。
【0157】
〔実施形態4〕
続いて、本開示の実施形態4に係るシリンジシステム400および筒体キット410の構成について、図16に基づいて詳細に説明する。
【0158】
図16は、ガイド部材80の一例を示す模式図であり、図17は、シリンジシステム400および筒体キット410の構成例の一例を示す図である。
【0159】
図17に示すように、シリンジシステム400は、シリンジシステム200の構成に加えて、ガイド部材80、90をさらに備えてもよい点で、実施形態2と異なる。
【0160】
ガイド部材80、90は、ガスケット43aを貫通する注射針26、36を導く貫通孔81、91を有している。ガイド部材80、90を備えることにより、ガスケット43aを貫通する際に、通常の注射針より長さの長い注射針26、36が折れたり曲がったりするのを防ぐと共に、注射針26、36を貯留室へ案内することができる。
【0161】
シリンジシステム400は、上記のガイド部材80、90を備えている点、およびガイド部材80、90を嵌め込むガスケット43aの構造以外は、実施形態2において説明した構成と同じである。よって、ここでは主に、ガイド部材80、90、およびガスケット43aについて説明し、その他の構成については、説明を省略する。
【0162】
図16に示すように、ガイド部材80は、第1シリンジ筒11内に挿入できるように、例えば略円筒形に構成され、貫通孔81、取付部82を備える。
【0163】
貫通孔81は、上述したように、ガスケット43aを刺通する注射針26を導く孔であり、ガイド部材80の筒軸方向のほぼ全長にわたって、形成されている。貫通孔81は、筒軸方向両端部に、それぞれ一方の開口部81a、他方の開口部81bを有している。
【0164】
取付部82は、例えば、ガイド部材80の本体より径が小さい略円筒形に構成され、内部に他方の開口部81bを含む貫通孔81の一部が配置されている。ガイド部材80は、取付部82をガスケット43aに嵌め込むことによって、着脱可能にガスケット43aに取付けられる。
【0165】
ガスケット43aは、上述したように、大略的に円柱形状に構成される。また、ガスケット43aの底面である第1面431は、平面状または凹面状に構成され、注射針26の針先部27が突出する第1凹部433を有している。第1凹部433は、例えば、周壁面がやや傾斜した円柱状の孔部に形成されるが、第1面431から凹んだ部分であればよく、例えば、円錐形、直方体等の孔部であってもよく、形状は特に限定されない。
【0166】
また、ガスケット43aは、ガスケット43aの第1面431と対向する第2面432に、第2凹部434を有している。第2凹部434は、ガスケット43aを第2面432側から略円柱状にくり抜いた形状に形成され、ガイド部材80の取付部82より僅かに径が大きく構成される。
【0167】
これにより、上述したように、ユーザは、ガイド部材80の取付部82を、ガスケット43aの第2凹部434内へ挿入し嵌め込むことによって、ガイド部材80を、着脱可能にガスケット43aに取付けることができる。このとき、ガスケット43aは、第1シリンジ筒11内に位置していてもよい。
【0168】
また、ガイド部材80は、ガイド部材80の貫通孔81の軸が、第2凹部434および第1凹部433の軸とほぼ同じ位置に位置するように、ガスケット43aに取付けられる。
【0169】
ユーザは、注射針26(図17参照)を、ガイド部材80に形成された貫通孔81の一方の開口部81aから貫通孔81内へ挿入し、他方の開口部81bから、注射針26の針先部27を突出させる。その後、針先部27は、ガスケット43aの第2凹部434を突き刺し、ガスケット43aを貫通して第1凹部433から突出する。
【0170】
このように、ガイド部材80は、通常の注射針より長い注射針26が貫通孔81に挿通されることにより、注射針26がガスケット43aを貫通する際の抵抗によって折れたり曲がったりするのを防ぐことができる。ガイド部材90も、通常の注射針より長い注射針36が貫通孔91に挿通されることにより、注射針36がガスケット43aを貫通する際の抵抗によって折れたり曲がったりするのを防ぐことができる。
【0171】
図17に示すように、筒体キット410は、第1シリンジ10、第2シリンジ20、第3シリンジ30を含んで構成される。
【0172】
第1シリンジ10は、上述したように、血液等を採血し、採血した血液等を遠心分離処理するための遠心分離容器として用いられる。第1シリンジ10は、第1シリンジ筒11、ガスケット43aを備える。
【0173】
ガスケット43aは、第1プランジャ14が着脱可能に取付けられ、第1シリンジ筒11の第1ポート12は、採血する際には採血針が取付けられ、貯留室を液密に封止する際には、第1キャップ15が取付けられる。
【0174】
第2シリンジ20は、上述したように、第1シリンジ10によって分離された液体の一部を抽出するために用いられる。また、第2シリンジ20は、抽出した液体を遠心分離処理するための遠心分離容器として用いられ、さらに、調製したPRPを患者に投与するために用いてもよい。第2シリンジ20は、第2シリンジ筒21、ガスケット43aを備える。
【0175】
第2シリンジ20のガスケット43aは、第2プランジャ24が着脱可能に取付けられる。第2シリンジ筒21の第2ポート22は、貯留室を液密に封止する際に、第2キャップ25が取付けられ、第1シリンジ10から液体の一部を抽出する際には、注射針26が取付けられる。また、PRPを患者に投与する際には、注射針28が取付けられる。
【0176】
ここで、ユーザは、第2シリンジ20によって、第1シリンジ10から液体の一部を抽出する際に、第1シリンジ10のガスケット43aから第1プランジャ14を取り外し、ガスケット43aにガイド部材80を取付ける。その後、ユーザは、ガイド部材80の貫通孔81に、注射針26を挿通する。これにより、注射針26が第1シリンジ10のガスケット43aを貫通する際に、注射針26が折れたり曲がったりすることが回避され得る。
【0177】
第3シリンジ30は、上述したように、第2シリンジ20によって分離された液体の一部を抽出するために用いられる。第3シリンジ30は、第3シリンジ筒31、第3ガスケット33を備える。
【0178】
第3ガスケット33は、第3プランジャ34が着脱可能に取付けられ、第3シリンジ筒31の第3ポート32は、第2シリンジ20から液体の一部を抽出する際には、注射針36が取付けられる。
【0179】
ここで、ユーザは、第3シリンジ30によって、第2シリンジ20から液体の一部を抽出する際に、第2シリンジ20のガスケット43aから第2プランジャ24を取り外し、第2シリンジ20のガスケット43aにガイド部材90を取付ける。
【0180】
その後、ユーザは、ガイド部材90の貫通孔91に、注射針36を挿通する。これにより、ユーザは、注射針36が第2シリンジ20のガスケット43aを貫通する際に、注射針36が折れたり曲がったりするのを防ぐことができる。
【0181】
図18は、ガイド部材80、90を使用した筒体キット310を用いて、PRPを調製する処理の流れの一例を示す図である。
【0182】
各処理については、図9と同様であるため、説明を省略するが、状態<3c>および状態<6c>において、それぞれガイド部材80、90が使用されている。
【0183】
これにより、ユーザは、第1シリンジ10または第2シリンジ20から、液体の一部を抽出する際に、注射針26、36がガスケット43aを貫通するときに、注射針26、36が折れたり曲がったりするのを防ぐことができる。
【0184】
<接合部>
次に、ガイド部材80の取付部82と、ガスケット43aの第2凹部434との接合部の構造について、図19に基づいて、詳細に説明する。図19は、ガイド部材80とガスケット43aとの接合部の構造の一例を示す図である。
【0185】
図19に示すように、ガイド部材80の取付部82の外周面の少なくとも一部に、雄ネジ82bが形成され、ガスケット43aの第2凹部434の内周面(内側面)の少なくとも一部に、雌ネジ434bが形成されてもよい。雄ネジ82bと雌ネジ434bとが互いに螺合することによって、筒軸方向に移動可能に、ガイド部材80をガスケット43aに接合することができる。
【0186】
これにより、ユーザは、針先部27の位置を筒軸方向上下に調整することができ、より正確に安定して血液成分を抽出することができる。
【0187】
また、ガイド部材80の取付部82は、ガスケット43b、43c、43eまたは43fのような特徴を持つガスケット43aと接合してもよい。すなわち、ガスケット43aは、ガスケット43bのように、第1面431に第3凹部435を有してもよい。また、第2面432は、第1面431と反対側に位置するガスケット43cの底面に開口する凹部の底面であってもよい。また、第1面431と対向する第2面432に、第2面432から筒軸方向に突出する凸部437を有していてもよい。
【0188】
また、ガイド部材90の取付部92と、ガスケット43aの第2凹部434との接合部の構造についても、ガイド部材80の取付部82と第2凹部434との接合部の構造と同様に、構成してもよい。すなわち、ガイド部材90の取付部92は、ガスケット43b、43c、43eまたは43fのような特徴を持つガスケット43aと接合してもよい。
【0189】
また、ガイド部材80は、ガスケット43eに取付けてもよい。図20は、ガイド部材80とガスケット43eとの接合部の構造の他の一例を示す図である。
【0190】
図20に示すように、ガイド部材80の筒部83と、ガスケット43eの凸部437とが係合することによって、ガイド部材80はガスケット43eに取付けられてもよい。ガイド部材80の筒部83は、内部に注射針26が挿通する貫通孔81が形成される。
【0191】
ガスケット43eは、上述したように、第2面432に、第2面432から筒軸方向に突出する凸部437を有している。凸部437は、例えば、周壁がやや傾斜した円柱形状であり、かつ、注射針26の針先部27を案内する案内孔487aを略中心部に有している。凸部437は、第1凹部433と対向する領域を囲むように第2面432に位置しており、凸部437の軸線と、第1凹部433の軸線とは、ほぼ同じ位置になるように構成されている。
【0192】
ガイド部材80の筒部83の外周面の少なくとも一部に、ネジ溝である雄ネジ83bが形成され、凸部437の案内孔437aの内周面の少なくとも一部に、ネジ溝である雌ネジ437bが形成されてもよい。雄ネジ83bと雌ネジ437bとが互いに螺合することによって、筒軸方向に移動可能に、ガイド部材80をガスケット43eに係合することができる。
【0193】
これにより、ユーザは、針先部27の位置を筒軸方向上下に調整することができ、より正確に安定して血液成分を抽出することができる。
【0194】
また、ガイド部材80の筒部83は、ガスケット43d、43fの凸部437と嵌合してもよい。この場合、筒部83の外周面の少なくとも一部に、ネジ溝である雄ネジ83bが形成され、凸部437の案内孔437aの内周面の少なくとも一部に、ネジ溝である雌ネジ437bが形成されてもよい。雄ネジ83bと雌ネジ437bとが互いに螺合することによって、筒軸方向に移動可能に、ガイド部材80をガスケット43d、43fに接合することができる。
【0195】
また、ガイド部材90についても、ガイド部材90に、ガイド部材80の筒部83と同様の筒部を形成することによって、ガイド部材80と第2凹部434との接合部の構造と同様の接合部を構成することができる。
【0196】
これにより、ユーザは、針先部27、37の位置を筒軸方向上下に調製することができ、より正確に安定して血液成分を抽出することができる。
【0197】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0198】
11 第1シリンジ筒(筒体)
13 第1ガスケット
14 第1プランジャ
21 第2シリンジ筒(筒体)
23 第2ガスケット
24 第2プランジャ
26、36 注射針
31 第3シリンジ筒(筒体)
33 第3ガスケット
34 第3プランジャ
71 真空採血管(筒体)
72 ガスケット
73 栓体
80、90 ガイド部材
81、91 貫通孔
82b、83b 雄ネジ(ネジ溝)
110、210、310、410 筒体キット
131、231、331 第1面
132 第2面
133、233 第1凹部
433 第1凹部
434 第2凹部
434b 雌ネジ(ネジ溝)
437 凸部
437b 雌ネジ(ネジ溝)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図18
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図20