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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20250616BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024520263
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2023006378
(87)【国際公開番号】W WO2023218726
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2022078074
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-242176(JP,A)
【文献】特開2017-44486(JP,A)
【文献】特開2020-85544(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100778(WO,A1)
【文献】特開2019-113430(JP,A)
【文献】特開2014-119409(JP,A)
【文献】国際公開第2021/241586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3方向をそれぞれ第1方向、第2方向および第3方向としたときに、
前記第1方向に延在するバスバと、
前記第3方向に沿って前記バスバに対向する部分を有する磁気シールドと、
前記第3方向に沿って、前記バスバにおける前記磁気シールドが配置された側とは反対側で前記バスバに対向する磁気センサと、
前記バスバの一部が一体に成形されたケースと、
を備える電流センサであって、
前記磁気シールドは、
前記第3方向に沿って前記バスバに対向する部分を含む底壁部および前記底壁部の前記第2方向の端部から前記第3方向に沿って屹立し前記第2方向に対向配置される2つの側壁部を有するU字部と、
前記U字部に連設され、前記ケースに固定される取付部と、
前記U字部と前記取付部とを連結する連結部と、
を有し、
前記ケースは、前記U字部を収容し前記磁気センサを収容しない収容凹部を有し、
前記磁気シールドは、前記U字部を前記収容凹部に挿入した状態で、
前記ケースの外面に対して、前記取付部において固定されること
を特徴とする電流センサ。
【請求項3】
前記ケースには複数の前記バスバが前記第2方向に並んで設けられ、
前記磁気シールドは、複数の前記バスバのそれぞれに対応する複数の前記U字部を有し、複数の前記U字部は共通する前記取付部に連設される、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項12】
前記磁気シールドを複数備え、
複数の前記磁気シールドが有する複数の前記U字部のそれぞれに対応する複数の前記バスバが前記第2方向に沿って並ぶように、複数の前記磁気シールドは前記ケースに固定される、請求項1または請求項2に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、U字型の磁気シールドを有する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサを用いてバスバに流れる電流量を測定する電流センサでは、磁気センサに及ぶ外部磁界の影響を低減する目的で磁気シールドが設けられる場合がある。例えば特許文献1から特許文献3には、断面形状がU字型である磁気シールド(U字型磁気シールド)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-223868号公報
【文献】国際公開第2018-159229号
【文献】特開2021-107800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流センサの測定精度の確保の観点から、磁気シールドは、その形状にかかわらず、バスバおよび磁気センサに対する相対位置が適切に設定されることが重要である。ここで、磁気センサは基板上に設けられ、バスバは磁気センサに対向する部分は平板状である場合が一般的であるため、U字型磁気シールドは、電流センサを構成する他の部材に比べて立体的な形状を有している。このため、U字型の磁気シールドをケースに適切に固定するための様々な検討が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では、U字型磁気シールドの底壁部に貫通孔を設け、この貫通孔に樹脂製のハウジングに設けられた凸部が挿通され、貫通孔から突出する凸部を熱溶融させて自然冷却することによって、U字型磁気シールドをハウジングに対して固定している。特許文献2では、樹脂などの絶縁材料からなる支持部材がセンサ基板と主基板との間に設けられ、この支持部材に設けられた凹部に磁気シールドが嵌め込まれている。特許文献3では、U字型磁気シールドの底壁部を覆う樹脂部と、側壁部に沿って樹脂部から延設された脚部および脚部の先端に設けられ基板に引っ掛ける爪部を有するシールド固定部とによって、U字型磁気シールドは基板に対して固定されている。
【0006】
特許文献1に開示される構造では、外部磁界を減衰させるための磁気シールドに一部貫通孔を設けており、外部磁界減衰機能に影響が及ぶことが懸念される。特許文献2や特許文献3に開示される構造では、磁気シールドを保持する樹脂と磁気シールドとの間にずれが生じる可能性が排除できない。
【0007】
本発明は、U字型磁気シールドを有する電流センサにおいて、U字型磁気シールドの外部磁界減衰機能に影響が及ぶことなく、U字型磁気シールドをケースに対して位置精度高く固定することが可能な電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の一態様に係る電流センサは、互いに直交する3方向をそれぞれ第1方向、第2方向および第3方向としたときに、前記第1方向に延在するバスバと、前記第3方向に沿って前記バスバに対向する部分を有する磁気シールドと、前記第3方向に沿って、前記バスバにおける前記磁気シールドが配置された側とは反対側で前記バスバに対向する磁気センサと、前記バスバの一部が一体に成形されたケースと、を備える電流センサであって、前記磁気シールドは、前記第3方向に沿って前記バスバに対向する部分を含む底壁部および前記底壁部の前記第2方向の端部から前記第3方向に沿って屹立し前記第2方向に対向配置される2つの側壁部を有するU字部と、前記U字部に連設され、前記ケースに固定される取付部と、前記U字部と前記取付部とを連結する連結部と、を有する電流センサである。
【0009】
磁気シールドにおいて外部磁界減衰機能を主体的に果たすU字部のケースに対する相対位置を固定する、すなわち取り付ける際に、U字部から連設される取付部を用いることにより、U字部は外部磁界減衰機能に特化した形状とすることができる一方、取付部はケースへの固定機能に特化できるため、磁気シールドの配置精度を高めることができ、磁気センサの測定精度向上が期待される。
【0010】
上記の電流センサにおいて、前記取付部は、前記U字部の前記底壁部の前記第1方向の端部に位置する前記連結部から設けられていてもよい。この場合には、一枚の金属板の一部を折り曲げてU字部の側壁部またはその一部を形成し、平板のままの部分からU字部の底壁部またはその一部ならびに連結部および取付部を形成することができるため、磁気シールドを効率的に形成することが可能である。
【0011】
上記の電流センサにおいて、前記ケースには複数の前記バスバが前記第2方向に並んで設けられていてもよい。この場合において、前記磁気シールドは、複数の前記バスバのそれぞれに対応する複数の前記U字部を有し、複数の前記U字部は共通する前記取付部に連設されることが好ましい。
【0012】
1つの取付部に複数のU字部が連設されるため、取付部の位置決めを行うことにより、複数のU字部を同時に正確に位置決めすることができる。また、複数のU字部は取付部を介して一体化されているため、複数のU字部の相対位置ずれが生じにくい。また、一度の取り付け工程で、複数のU字部の取り付けを行うことができる。
【0013】
上記の複数のU字部を有する磁気シールドを備える電流センサにおいて、隣り合う2つの前記バスバに対応する2つの前記U字部は、前記第1方向にずれて配置されていてもよい。さらに、隣り合う2つの前記バスバに対応する2つの前記U字部は、前記第1方向に沿って見たときに一部重複していてもよい。このような配置とすることにより、隣り合う2つのバスバの第2方向の間隔を狭めることが可能である。
【0014】
上記の電流センサにおいて、前記取付部は、軟磁性体からなり、前記U字部と磁気ノイズ発生源との間に位置するように配置されてもよいし、前記U字部の前記第1方向の両端に連設されてもよい。取付部が軟磁性体からなることにより、取付部が外部磁界減衰機能を果たすことが可能となる。
【0015】
上記の電流センサにおいて、前記ケースに対して前記第3方向から前記ケースに当接するカバーをさらに備えていてもよい。カバーが設けられることにより、ケースの内部に異物が侵入することが安定的に防止される。また、磁気シールドを構成する部材(特に金属板を切断加工した後の破断面)から錆が発生することがあっても、その錆が電流センサの外部に出にくいため、錆による不具合(ショートなどが具体例として挙げられる。)が防止される。
【0016】
上記の電流センサにおいて、前記磁気シールドは金属板からなり、前記U字部の前記側壁部は前記金属板の一部が曲げ加工されてなるものであってもよい。かかる磁気シールドは生産性に優れ、品質安定性にも優れるため、電流センサの品質安定が期待される。
【0017】
上記の電流センサにおいて、前記U字部は複数の金属板が重ねられた重層体からなり、前記取付部は、複数の前記金属板の少なくとも1つに前記連結部により連結されていてもよい。この場合において、前記取付部は、前記重層体を構成する前記金属板のうち、前記バスバから最も遠位の金属板から構成されていてもよい。
【0018】
上記の電流センサが磁気シールドを複数備え、複数の前記磁気シールドが有する複数の前記U字部のそれぞれに対応する複数の前記バスバが前記第2方向に沿って並ぶように、複数の前記磁気シールドは前記ケースに固定されていてもよい。例えば、磁気シールドが3つのU字部を有する場合には、その磁気シールドが3相配線の測定に対応させるなど、磁気シールドを計測のユニットとして位置づけることが可能であり、設計自由度が高まる場合がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、U字型磁気シールドを有する電流センサであって、U字型磁気シールドの外部磁界減衰機能に影響が及ぶことなく、U字型磁気シールドをケースに対して位置精度高く固定することが可能な電流センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明の第1実施形態に係る電流センサの説明図である。
図1B図1AのA-A’線での断面を示す図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。
図2B】本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図3A】本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図である。
図3B】本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図である。
図4A】従来技術に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図である。
図4B】従来技術に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図6】本発明の第3実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図7A】本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図7B】本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。
図7C】本発明の第4実施形態に係る電流センサの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図8A】本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの一部の製造法の説明図(折曲げ加工前)である。
図8B】本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの一部の製造法の説明図(折曲げ加工後、Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図8C】本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの一部の製造法の説明図(折曲げ加工後、Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。
図9】本発明の第4実施形態に係る電流センサに対応させた従来技術に係る電流センサの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図10A】本発明の第5実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図10B】本発明の第5実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。
図11】本発明の第6実施形態に係る電流センサの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
図12A】本発明の第7実施形態に係る電流センサの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に見た断面図)である。
図12B】本発明の第7実施形態の変形例に係る電流センサの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に見た断面図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。以下の説明では、Y1-Y2方向を第1方向、X1-X2方向を第2方向、Z1-Z2方向を第3方向と定義する。なお、Z1-Z2方向(第3方向)Z1側を「上」、Z1-Z2方向(第3方向)Z2側を「下」と称する場合がある。
【0022】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電流センサの説明図である。図1Bは、図1AのA-A’線での断面を示す図である。A-A’線は、方向の変わる部分を2箇所有する。図1Bでは、説明の関係で蓋部、固定部材および基板を図示せず、磁気センサは仮想線としてある。図2Aは、本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。図2Bは、本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。
【0023】
図1Aおよび図1Bに示されるように、本発明の第1実施形態に係る電流センサ100は、バスバ10、磁気センサ20、磁気シールド30、ケース40、基板50、および固定部材60を備える。バスバ10は第1方向(Y1-Y2方向)に延在し、バスバ10には第1方向に被測定電流が流れる。より具体的には、例えば、電気自動車等においてインバータからモータへ流れる電流を計測する場合には、バスバ10の第1方向における一端がインバータに接続され、他端がモータに接続される。磁気センサ20は、第2方向(X1-X2方向)に沿う感度軸を有し、第1方向(Y1-Y2方向)に交差(本実施形態では直交)する第3方向(Z1-Z2方向)に沿ってバスバ10に対向する。具体的には、磁気センサ20は、バスバ10のZ1-Z2方向Z1側に対向配置される。
【0024】
図2Aおよび図2Bに示されるように、磁気シールド30は、U字部31と、取付部32と、U字部31と取付部32とを連結する連結部33とを備え、本実施形態では軟磁性体からなる金属板の曲げ加工体からなる。
【0025】
U字部31は、第3方向(Z1-Z2方向)に沿ってバスバ10に対向する部分を含む底壁部31Bと、底壁部31Bの第2方向(X1-X2方向)の端部から第3方向(Z1-Z2方向)に沿って屹立し第2方向(X1-X2方向)に対向配置される2つの側壁部31W、31Wを有する。それゆえ、U字部31は、第1方向(Y1-Y2方向)に沿って見たときにU字型の形状を有している。
【0026】
U字部31は、自らにおける磁気センサ20に対向する側とは反対側から磁気センサ20へと向かう外部磁場を減衰させ、バスバ10から生成する誘導磁界を検出する磁気センサ20の測定精度を高めることができる。U字部31は断面がU字型の形状を有し、側壁部31WがZ1-Z2方向Z1側に延在しているため、底壁部31BのZ1-Z2方向Z2側からの外部磁場のみならず、側壁部31Wの側方(X1-X2方向X1側、X1-X2方向X2側)からの外部磁場についても減衰させることができる。
【0027】
第3方向(Z1-Z2方向)に沿って見たときに、バスバ10および磁気センサ20は、2つの側壁部31W、31Wの間に位置する。第1方向(Y1-Y2方向)に沿って見たときに、バスバ10は2つの側壁部31W、31Wの間に位置することにより、U字部31は、外部磁界減衰機能のみならず、バスバ10からの誘導磁界を優先的に通すヨークの役割を果たすことができる。
【0028】
本実施形態では、第1方向(Y1-Y2方向)に沿って見たときに、磁気センサ20は2つの側壁部31W、31Wの間には位置せず、2つの側壁部31W、31Wの上端(Z1-Z2方向Z1側の端部)のやや上方に位置する(図1B参照)。このように配置されることにより、バスバ10からの誘導磁界は、U字部31の内部を通り、一方の側壁部31Wの上端から放出され、他方の側壁部31Wの上端からU字部31の内部に入り込む磁気回路を通る。この磁気回路では、一方の側壁部31Wの上端から放出され他方の側壁部31Wの上端に向かう磁路は、磁気センサ20の感度軸方向である第2方向(X1-X2方向)に通過する成分が多くなる。それゆえ、バスバ10からの誘導磁界が効率的に磁気センサ20に印加される。
【0029】
なお、磁気センサ20は、第1方向(Y1-Y2方向)に沿って見たときに、2つの側壁部31W、31Wの間に位置してもよい。そのように配置された場合には、U字部31の外部磁界減衰機能が特に高くなることが期待される。
【0030】
本実施形態では、U字部31は、軟磁性を有する3枚の金属板301、302、303の曲げ加工体からなり、金属板301の上(Z1-Z2方向Z1側)に2つの金属板302、303がZ1-Z2方向に重ねられた重層体となっている。なお、金属板302は金属板301の内側の面に密接した状態で配置され、金属板303は金属板302の内側の面に密接した状態で配置されている。また、金属板301、302、303はカシメなどにより一体に保持されている。
【0031】
重層体を構成する3枚の金属板301、302、303のうち、バスバ10から最も遠位(Z1-Z2方向Z2側)の金属板301は、U字部31の底壁部31Bを構成する部分の第1方向(Y1-Y2方向)の端部に連結部33を有する。金属板301は、連結部33からさらに第1方向(Y1-Y2方向)に延設された部分を有し、この部分が取付部32を構成する。すなわち、金属板301は一部が曲げ加工されてU字部31の一部を構成し、曲げ加工されていない部分が連結部33および取付部32を構成している。連結部33を有することにより、金属板301を曲げ加工して側壁部31Wを構成する部分を立ち上げる際に、周囲に位置する他の部分に干渉して側壁部31Wを構成する部分が適切に立ち上がらなかったり、周囲の他の部分に想定外の変形が生じたりする可能性を低減させることができる。
【0032】
本実施形態においては取付部32および連結部33を金属板301にのみ設けたが、3枚の金属板301、302、303に設けても良い。その場合には、金属板301、302、303に設けた取付部32および連結部33は、Z1-Z2方向から見たときに同一形状で重なる位置に設けられていることが望ましい。また、取付部32および連結部33を金属板302または金属板303にのみ設けても良い。なお、図1Aに示すように、金属板301はケース40に設けられた収容凹部41にU字部31を挿入した状態でケース40に固定される。そのため、本実施形態の様に金属板301にのみ取付部32および連結部33を設ける構成とすることで、U字部31が収容凹部41からZ1-Z2方向Z2側へ突出する量を最小限に抑えることができ、電流センサ100のZ1-Z2方向における外形サイズを小さくすることができる。
【0033】
図2Bにおいて仮想線で示される部分301Wは、側壁部31Wのうち金属板301により構成される部分が曲げ加工を受ける前の形状である。この部分301Wの形状が示すように、曲げ加工してU字部31を形成する前の状態の金属板301は、U字部31になる部分のX1-X2方向における端部と、取付部32のX1-X2方向における端部と、はX1-X2方向において同じ位置にある。それゆえ、金属板301を加工するにあたり材料の無駄が少ない。
【0034】
取付部32は連結部33を介してU字部31に連設され、取付部32においてケース40に固定される。本実施形態では、取付部32には貫通孔32hが複数(本実施形態では2つ)設けられ、この貫通孔32hを挿通した固定部材60がケース40に固定されることにより、取付部32はケース40に固定されている。固定部材60の具体例はねじやボルトである。
【0035】
ケース40は例えば樹脂系材料から構成される。ケース40には、例えばインサート成形によりバスバ10の一部が埋め込まれている。ケース40の下側(Z1-Z2方向Z2側)には、U字部31の形状に合わせて凹み、U字部31を収容する収容凹部41が設けられている。さらに、ケース40の下側(Z1-Z2方向Z2側)には、収容凹部41の内部にU字部31が配置された状態を保持するために、取付部32の貫通孔32hを挿通した固定部材60を受け入れる固定用穴43が設けられている。固定部材60を用いた取付部32のケース40への固定は、平板状の部材(取付部32)を平面(ケース40の下面)に対して固定するため、位置決め精度を高めることが容易である。これに対し、立体形状を有するU字部31を収容凹部41の内部に正確に位置決めすることは容易でない。したがって、取付部32をケース40に対して位置決めして固定することにより、取付部32と連結部33を介して連設されるU字部31について、ケース40に対する位置決めを正確に行うことができる。
【0036】
ケース40の上側(Z1-Z2方向Z1側)には、基板50に固定された磁気センサ20を収容するキャビティ部42および基板50を固定するための固定用穴44が設けられている。磁気センサ20は基板50に対して位置決めされて固定されているため、基板50の貫通孔50hを挿通した固定部材60を固定用穴44に固定することにより、磁気センサ20はケース40に対して正確に位置決めされ、キャビティ部42は基板50に覆われて閉空間となる。
【0037】
図3Aは、本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図である。図3Bは、本発明の第1実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図である。図3Aおよび図3Bに示される磁気シールド30aは、U字部31が一枚の金属板から構成され、図1Aおよび図1Bに示される磁気シールド30よりも、側壁部31Wが長く、第1方向(Y1-Y2方向)に沿って見たときに、磁気センサ20は2つの側壁部31W、31Wの間に位置している。
【0038】
図4Aは、従来技術に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図である。図4Bは、従来技術に係る電流センサが備える磁気シールドのシールド効果を確認するためのシミュレーション結果を示す、Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図である。図4Aおよび図4Bに示される磁気シールド30Xは、図2Aおよび図2Bに示される磁気シールド30aにおいて、連結部33および取付部32が設けられておらず、その全体がU字部31からなる構造を有する。
【0039】
シミュレーション結果を示す図3Aおよび図3Bに示される複数の矢印は、外部磁場の各位置での向きを示している。なお、図3Aおよび図3Bに示されるシミュレーションと図4Aおよび図4Bに示されるシミュレーションとは、基本的なモデルが異なるため、シミュレーション結果を示す矢印の配置密度が相違しているが、磁束の向きや強さ(磁束密度)については対比可能である。
【0040】
図3Aおよび図3Bに示されるように、磁気シールド30aにおいて、X1-X2方向X1側からX1-X2方向X2側へと向かう外部磁場は、Z1-Z2方向Z1側に屹立する2つの側壁部31W、31Wにより減衰される。また、透磁率が高い取付部32がU字部31に隣接して存在するため、U字部31の2つの側壁部31W、31Wの間を流れる磁界は、空気中よりも取付部32を優先的に流れようとする。すなわち、2つの側壁部31W、31Wの間を流れる磁界の一部が、取付部32に吸い寄せられる。
【0041】
このため、磁気シールド30aでは、側壁部31Wを迂回して磁気センサ20が位置する領域に流れ込む外部磁場は少ないが、磁気シールド30Xでは相対的に多くの外部磁場が流れ込む。これを反映して、2つの側壁部31Wの間で磁気センサ20のY1-Y2方向Y2側の領域について対比すると、図3Bに示される磁気シールド30aのシミュレーション結果では、図4Bに示される磁気シールド30Xのシミュレーション結果よりも、外部磁場の入り込みが浅い(破線矢印参照)。
【0042】
このように磁気シールド30aの方が外部磁場の入り込みが少ないため、磁気センサ20を通る磁束密度は、磁気シールド30aの方が低い。具体的には、印加された外部磁場の磁束密度を500μTとする本シミュレーションでは、磁気センサ20を通る磁束密度は、磁気シールド30Xの場合(図4A図4B)には100μT程度であるのに対し、磁気シールド30aの場合(図3A図3B)には30μT程度である。なお、図3Aから図4Bは本来カラーの図をモノクロ化しているため、矢印の濃淡は磁束密度の強弱に対応していない。
【0043】
取付部32が有する外部磁界減衰機能を有効に活用するには、取付部32がノイズ発生源に近くなるように配置されていることが好ましい。すなわち、取付部32は、U字部31と磁気ノイズ発生源との間に位置するように配置されることが好ましい。
【0044】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。本発明の第2実施形態に係る電流センサは、磁気シールド30A以外は基本的に第1実施形態に係る電流センサ100と同じであるから、磁気シールド30Aについてのみ説明し、他の構成については説明を省略する。
【0045】
本発明の第2実施形態に係る電流センサの磁気シールド30Aは、第1実施形態に係る電流センサ100の磁気シールド30との対比で、金属板301に代えて金属板301Aが用いられているため、取付部32Aの形状が相違する。具体的には、磁気シールド30Aの取付部32Aは、磁気シールド30の取付部32の第2方向(X1-X2方向)の両側において、Y1-Y2方向Y1側にさらに延在し、貫通孔32hが第1実施形態の場合よりも2つ多い4つ設けられている。このように取付部32Aが貫通孔32hを多く有するため、磁気シールド30Aでは、取付部32Aのケース40に対する固定が安定化される。これはすなわち、第2実施形態に係る電流センサは、第1実施形態に係る電流センサ100よりも測定精度が高くなりうることを意味している。
【0046】
また、磁気シールド30の金属板301と同様に(図2B参照)、曲げ加工してU字部31を形成する前の状態の金属板301Aは、U字部31になる部分のX1-X2方向における端部が、取付部32AのY1-Y2方向Y1側にさらに延在した部分に接近して配置され長方形状をしている。また、金属板301AからU字部31の外形を形成するための切断代の幅寸法と同じ長さで連結部33を形成している。すなわち、金属板301Aを加工するにあたり材料の無駄が少ない。
【0047】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。本発明の第3実施形態に係る電流センサは、磁気シールド30B以外は基本的に第1実施形態に係る電流センサ100と同じであるから、磁気シールド30Bについてのみ説明し、他の構成については説明を省略する。
【0048】
本発明の第3実施形態に係る電流センサの磁気シールド30Bは、第1実施形態に係る電流センサ100の磁気シールド30との対比で、金属板301に代えて金属板301Bが用いられているため、U字部31以外の形状が相違する。具体的には、磁気シールド30では、底壁部31BのY1-Y2方向Y2側の端部に連結部33が設けられていたが、磁気シールド30Bでは、底壁部31BのY1-Y2方向の両側の端部に連結部33Bが設けられている。これに伴い、取付部32Bが底壁部31Bの第1方向(Y1-Y2方向)の両側に設けられている。
【0049】
図3Aから図4Bを用いて説明したように、取付部32は外部磁界減衰機能を有する。したがって、バスバ10が延在する方向である第1方向(Y1-Y2方向)の両側に位置することで、磁気センサ20が設けられている部分は外部磁界の影響をより受けにくくなる。
【0050】
(第4実施形態)
図7Aは、本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。図7Bは、本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。図7Cは、本発明の第4実施形態に係る電流センサの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。本発明の第4実施形態に係る電流センサ110は、磁気シールド30C以外は基本的に第1実施形態に係る電流センサ100と同じであるから、磁気シールド30Cについてのみ説明し、他の構成については説明を省略または簡略化する。図7Cでは、バスバ10、磁気センサ20および磁気シールド30Cの配置のみが示されている。
【0051】
本発明の第4実施形態に係る電流センサでは、ケース40に複数(具体的には3つ)のバスバ10が第2方向(X1-X2方向)に並んで設けられている。磁気シールド30Cは、3つのバスバ10のそれぞれに対応する3つのU字部31C1、31C2、31C3を有し、これらの3つのU字部31C1、31C2、31C3は、それぞれの連結部33Cを介して、共通する取付部32Cに連設される。
【0052】
1つの取付部32Cに複数のU字部31C1、31C2、31C3が連設されるため、取付部32Cの位置決めを行うことにより、複数のU字部31C1、31C2、31C3を同時に正確に位置決めすることができる。また、複数のU字部31C1、31C2、31C3は取付部32Cを介して一体化されているため、複数のU字部31C1、31C2、31C3の相対位置ずれが生じにくい。さらに、一度の取り付け工程で、複数のU字部31C1、31C2、31C3の取り付けを行うことができるため、生産性の観点からも有利である。
【0053】
図7Aに示されるように、第2方向(X1-X2方向)に並ぶ3つのU字部31C1、31C2、31C3のうち、中央のU字部31C2は、両端の2つのU字部31C1、31C3よりもY1-Y2方向Y2側に位置している。すなわち、3つのU字部31C1、31C2、31C3は、いわゆる千鳥配置となっている。このため、図7Bに示されるように、第1方向(Y1-Y2方向Y2側)に沿って見たときに、U字部31C1のX1-X2方向X1側の側壁部31Wは、U字部31C1のX1-X2方向X1側に位置するU字部31C3のX1-X2方向X2側の側壁部31Wと重複し、U字部31C1のX1-X2方向X2側の側壁部31Wは、U字部31C1のX1-X2方向X2側に位置するU字部31C2のX1-X2方向X1側の側壁部31Wと重複する。このように3つのU字部31C1、31C2、31C3が配置されることにより、図7Cに示されるように、隣り合うバスバ10の間隔を狭めることができ、Y1-Y2方向における電流センサ110の小型化が実現される。
【0054】
図7Bに示されるように、磁気シールド30Cは3つの金属板301C、302、303を備え、金属板301Cが3つのU字部31C1、31C2、31C3の一部、3つの連結部33Cおよび取付部32Cを構成する。2つの金属板302、303は、U字部31C1の一部をなす金属板301Cに重ねて配置され、3つのU字部31C1、31C2、31C3はこれらの金属板301C、302、303の重層体となっている。
【0055】
図8Aは、本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの一部の製造法の説明図(折曲げ加工前)である。図8Bは、本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの一部の製造法の説明図(折曲げ加工後、Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。図8Cは、本発明の第4実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの一部の製造法の説明図(折曲げ加工後、Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。
【0056】
金属板301Cは、U字部31C1、31C2、31C3の形状加工が行われる前は全体が平板状であり、図8Aに示されるように、U字部31C1とU字部31C2との隙間およびU字部31C1とU字部31C3との隙間、さらにU字部31C2と取付部32Cとの隙間およびU字部31C3と取付部32Cとの隙間が、打抜き加工により形成されている。これにより、U字部31C1、31C2、31C3と取付部32との間に位置する3つの連結部33Cが形成されている。このように隙間を設けること、換言すれば連結部33Cを設けることにより、次の工程である折曲げ加工において側壁部31Wを構成する部分を立ち上げる際に、周囲に位置する他の部分に干渉して側壁部31Wを構成する部分が適切に立ち上がらなかったり、周囲の他の部分に想定外の変形が生じたりする可能性を低減させることができる。
【0057】
また、前述の磁気シールド30の金属板301および磁気シールド30Aの金属板301Aと同様に、曲げ加工してU字部31を形成する前の状態の金属板301Cは、U字部31C2のX1-X2方向X2側の側壁部31Wになる部分のX1-X2方向X2側の端部と、取付部32CのX1-X2方向X2側の端部と、がX1-X2方向において同じ位置にある。同様に、U字部31C3のX1-X2方向X1側の側壁部31Wになる部分のX1-X2方向X1側の端部と、取付部32CのX1-X2方向X1側の端部と、がX1-X2方向において同じ位置にある。また、U字部31C1ないしU字部31C3にそれぞれ対応した取付部32Cを個別に設けずに、共通の取付部32Cに連結部33Cで連結させている。このため、金属板301Cを加工するにあたり材料の無駄が少ない。
【0058】
折曲げ加工を行うと、図8Bおよび図8Cに示されるように、側壁部31Wを構成する部分が第3方向に立ち上がる。こうして側壁部31Wを構成する部分および底壁部31Bを構成する部分が形成されたら、同様に折曲げ加工した金属板302、303を順次積層することにより重層体からなるU字部31が形成され、磁気シールド30Cの製造が完成する。
【0059】
図9は、本発明の第4実施形態に係る電流センサに対応させた従来技術に係る電流センサの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。図9に示される電流センサ110Xでは、取付部32および連結部33を有さずU字部31からなる磁気シールド30Xが3つ、本発明の第4実施形態に係る電流センサ110の磁気シールド30Cの3つのU字部31C1、31C2、31C3と同様に千鳥配置されている。電流センサ110Xについて外部磁場の影響を測定した結果、外部磁場強度の1.8%となった。これに対し、本発明の第4実施形態に係る電流センサ110の場合には、同様の外部磁場の影響を測定したところ、外部磁場強度の0.8%となった。すなわち、外部磁場強度の影響が1/2以下になった。
【0060】
これをさらに定量的に検討すれば、定格1000Aの場合、電流センサ110Xでは最大18Aの測定誤差が生じることになる。これに対し、電流センサ110では8Aの測定誤差となり、その差は10Aである。定格が1000Aであっても、通常使用する電流範囲は100Aから200A程度であるから、この通常の電流範囲で使用しているバスバ10の隣のバスバ10に、定格いっぱいの電流が流れる異常状態を想定すると、電流センサ110Xの場合には、外部磁界に基づく誤差は約10%から約20%となるのに対し、電流センサ110の場合には、約5%から約10%となる。電流センサが電気自動車に適用された場合には、これらの誤差の相違である5%から10%は、単位電力量あたりの航続距離(電費)を計算する際に無視できない大きさである。
【0061】
(第5実施形態)
図10Aは、本発明の第5実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。図10Bは、本発明の第5実施形態に係る電流センサが備える磁気シールドの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に沿って見た図)である。本発明の第5実施形態に係る電流センサは、磁気シールド30D以外は基本的に第1実施形態に係る電流センサ100と同じであるから、磁気シールド30Dについてのみ説明し、他の構成については説明を省略する。
【0062】
図10Aおよび図10Bに示される磁気シールド30Dは、2つのU字部31D1、31D2を有する。これらの2つのU字部31D1、31D2は、いずれも、底壁部31Bの第1方向(Y1-Y2方向)の両端に連結部33Dが設けられ、結果、2つのU字部31D1、31D2のいずれについても、第1方向(Y1-Y2方向)の両側に取付部32Dが延在する構造となっている。
【0063】
しかも、U字部31D1、31D2の一部ならびに連結部33Dおよび取付部32Dを構成する金属板301Dは、第4実施形態の磁気シールド30Cと同様に、平板に対して抜き加工および折曲げ加工を行うことにより、側壁部31Wを形成することができる。U字部31D1のX1-X2方向X1側の空隙部HPの位置にあった金属板を折曲げ加工することにより、U字部31D1のX1-X2方向X1側の側壁部31Wの一部が形成されている。U字部31D2のX1-X2方向X2側の空隙部HPの位置にあった金属板を折曲げ加工することにより、U字部31D2のX1-X2方向X2側の側壁部31Wの一部が形成されている。
【0064】
さらに、図10Aに示されるように、第3方向(Z1-Z2方向)に沿って見たときに、磁気シールド30Dは点対称の形状を有する。すなわち、図10AにおけるX1-X2方向において磁気シールド30Dを2等分する仮想線L1と、Y1-Y2方向において磁気シールド30Dを2等分する仮想線L2と、の交点Pに対して、2つのU字部31D1、31D2や2つの取付部32Dなどが点対称となる位置に配置されている。このように対称性に優れることは、生産性の観点(金属板301Dの製造効率、形状加工性、および組立性)から有利となる場合がある。より具体的には、磁気シールド30Dをケース(図示せず)に取り付ける際に、取り付け方向を間違え難くなるなどの利点がある。
【0065】
(第6実施形態)
図11は、本発明の第6実施形態に係る電流センサの説明図(Z1-Z2方向(第3方向)に沿って見た図)である。本実施形態に係る電流センサ200は、複数のバスバ10を備え、磁気シールドを複数備える。具体的には、図11に示されるように、第3実施形態に係る磁気シールド30Bと、2つの第4実施形態に係る磁気シールド30Cとが第2方向(X1-X2方向)に並んでいる。
【0066】
このように、複数のバスバ10に対応した複数の磁気シールドを1つのケース40に複数設けることにより、多数のバスバ10を計測可能な電流センサ200を容易に形成することができる。
【0067】
また、電流センサ200において、使用目的が共通なバスバ10を同一の磁気シールドに対応させることにより、磁気シールド単位で測定ユニットを構成することができる。具体例として、電流センサ200が電気自動車に用いられる場合において、U字部31を1つ備える磁気シールド30Bを含むユニットU1を昇圧コンバータの電流検出の目的で使用し、U字部31を3つ備える磁気シールド30Cを含むユニットU2およびユニットU3をそれぞれ別の3相モータの電流測定の目的で使用することが挙げられる。このように構成すれば、ユニットU2で測定する3相モータとユニットU3で測定する3相モータとについて定格電流量が相違していることがあっても、磁気シールド30Cを単位としてそれぞれの定格電流量に対応することができるため、電流センサ200の設計を容易にすることが可能である。
【0068】
図12Aは、本発明の第4実施形態に係る電流センサの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に見た断面図)である。図12Bは、本発明の第7実施形態に係る電流センサの説明図(Y1-Y2方向(第1方向)に見た断面図)である。
【0069】
図12Aに示される第4実施形態に係る電流センサ120は、図1Aに示される第1実施形態に係る電流センサ100との対比で、磁気シールド30CがU字部31を3つ有する点で相違するが、基本構成は共通である。このため、固定部材60は、取付部32の貫通孔32hまたは基板50に設けられた貫通孔50hを挿通して、ケース40に固定されている。これに対し、図12Bに示される第7実施形態に係る電流センサ130は、第4実施形態に係る電流センサ120との対比で、取付部32の下側(Z1-Z2方向Z2側)にカバー部材71が設けられ、基板50の上側(Z1-Z2方向Z1側)にもカバー部材72が設けられている。なお、取付部32はカバー部材71に設けられた凹部にその全体が収容されるため、磁気シールド30Cが外部に露出しない構造となっている。
【0070】
図12Bに示される電流センサ130では、カバー部材71およびケース40に貫通孔(貫通孔71h、貫通孔40h)が設けられ、固定部材60は下側(Z1-Z2方向Z2側)からカバー部材71の貫通孔71h、取付部32の貫通孔32h、および基板50の貫通孔50hを挿通している。そして、固定部材60の先端がカバー部材72に埋入されることにより、電流センサ130を構成する各部材の位置が固定されている。
【0071】
このようにカバー部材71、72が設けられることにより、磁気シールド30Cの一部(特に破断面)から錆が生じた場合であっても、錆が電流センサ130の外部にこぼれ出ることがない。それゆえ、外部にこぼれた錆が配線の間に落ちて短絡を生じる不具合が防止されている。
【0072】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0073】
例えば、上記の実施形態では、連結部33は底壁部31Bの端部に設けられているが、側壁部31Wに設けられていてもよい。そのような場合の具体例として、連結部33が側壁部31Wの上端(Z1-Z2方向Z1側の端部)に設けられ、第2方向(X1-X2方向)の外側に取付部32が延在していてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100、110、110X、120、130、200 :電流センサ
10 :バスバ
20 :磁気センサ
30、30a、30A、30B、30C、30D、30X :磁気シールド
31、31C1、31C2、31C3、31D1、31D2 :U字部
31B :底壁部
31W :側壁部
32、32A、32B、32C、32D :取付部
32h、40h、50h、71h :貫通孔
33、33B、33C、33D :連結部
40 :ケース
41 :収容凹部
42 :キャビティ部
43、44 :固定用穴
50 :基板
60 :固定部材
71、72 :カバー部材
301、301A、301B、301C、301D、302、303 :金属板
301W :曲げ加工前の金属板301の一部
HP :空隙部
L1、L2 :仮想線
P :仮想線L1と仮想線L2との交点
U1、U2、U3 :ユニット
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B