(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】カバーテープ及びそれを含む電子部品包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250616BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20250616BHJP
B65D 85/90 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B65D75/36
B65D85/90 300
(21)【出願番号】P 2025511363
(86)(22)【出願日】2024-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2024038037
【審査請求日】2025-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2023183781
(32)【優先日】2023-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北山 智大
(72)【発明者】
【氏名】阿津坂 高範
(72)【発明者】
【氏名】徳永 久次
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-70266(JP,A)
【文献】特開2023-49018(JP,A)
【文献】特開2023-64753(JP,A)
【文献】特開2023-121080(JP,A)
【文献】特開2023-119675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 67/00-85/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーテープであって、
前記カバーテープは、基材層と、支持層と、ヒートシール層とがこの順に積層されており、
前記支持層は、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とを含み、
前記樹脂(A)の総質量に対するバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)の割合が0~50質量%であり、
前記樹脂(B)の総質量に対するバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)の割合が50~100質量%である、カバーテープ。
【請求項2】
AMS法により測定した前記カバーテープ全体のバイオマス度が10%以上である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】
前記支持層中の、前記樹脂(b1)を含むバイオマス由来の樹脂の合計量が、前記支持層を構成する樹脂成分の総質量に対して、30質量%以上である、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項4】
前記支持層において、前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)の合計(100質量%)に対する前記樹脂(A)の割合が、50~70質量%である、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項5】
前記樹脂(B)が低密度ポリエチレン樹脂を含み、
前記樹脂(b1)がバイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項6】
前記樹脂(A)が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含み、
前記樹脂(a1)がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項7】
前記支持層が前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)の混合物からなり、
前記混合物の総質量に対する前記樹脂(a1)及び前記樹脂(b1)の合計量が30質量%以上である、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項8】
電子部品包装体用である、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項9】
請求項1または2に記載のカバーテープを含む、電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーテープ及びそれを含む電子部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型化、高性能化が進み、併せて電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に電子部品を自動的に実装することが行われている。このようなチップ型表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて熱成形された収納ポケットが連続的に形成されたキャリアテープに収納されている。各収納ポケットに電子部品を収納後、キャリアテープの上面に蓋材としてカバーテープを重ね、加熱したシールコテでカバーテープの両端を長さ方向に連続的にヒートシールして電子部品の包装体とされる。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、いわゆる「カーボンニュートラル」な再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチック(バイオマス由来の樹脂)の実用化が急速に進んでおり、電子部品包装体用のカバーテープやキャリアテープにおいても、石油由来の樹脂からバイオマス由来の樹脂への置き換えが検討されている。例えば、特許文献1には、ポリ乳酸ポリマーを含む層を備えるカバーフィルムが提案されている。
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本願発明者らがバイオマス由来の樹脂を含むカバーテープについて検討を行ったところ、石油由来樹脂をバイオマス由来の樹脂に単純に置き換えるだけでは、カバーテープに求められる機械物性を満足できないことが判明した。
【0006】
そこで本発明は、バイオマス由来の樹脂を一定量含む、環境に配慮したカバーテープであって、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できるカバーテープ、及びそれを含む電子部品包装体の提供を課題とする。
【0007】
上記課題に対して、本願発明者らは鋭意検討した結果、基材層と、支持層と、ヒートシール層とがこの順に積層されたカバーテープであって、前記支持層が、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とを含み、前記樹脂(A)の総質量に対するバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)の割合が0~50質量%であり、前記樹脂(B)の総質量に対するバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)の割合が50~100質量%である、カバーテープであれば、驚くべきことに、バイオマス由来の樹脂を一定量含みつつ、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できることを見出した。
【0008】
本発明によれば、バイオマス由来の樹脂を一定量含む、環境に配慮したカバーテープであって、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できるカバーテープ、及びそれを含む電子部品包装体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のカバーテープの一例を示す断面図である。
【
図2】実施例に記載のカバーテープの層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明するが、本開示の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、特定のパラメーターについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。また、本開示に記載されている数値範囲の下限値及び/又は上限値は、その数値範囲内の数値であって、実施例で示されている数値に置き換えてもよい。数値範囲を示す「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。
【0011】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはない。
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0012】
[カバーテープ]
本開示における第1の実施形態は、カバーテープに関する。
第1の実施形態は、カバーテープであって、前記カバーテープは、基材層と、支持層と、ヒートシール層とがこの順に積層されており、前記支持層は、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とを含み、前記樹脂(A)の総質量に対するバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)の割合が0~50質量%であり、前記樹脂(B)の総質量に対するバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)の割合が50~100質量%である、カバーテープに関する。第1の実施形態に係るカバーテープによれば、バイオマス由来の樹脂を一定量含む、環境に配慮したカバーテープでありながら、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できる。第1の実施形態に係るカバーテープにおいて、「従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できる」ことには、バイオマス由来の成分を含まない従来のカバーテープと同程度の、ラミネート強度やテープ切れ強度を達成できることを含む。
【0013】
第1の実施形態に係るカバーテープは、例えば、
図1に示すように、基材層1、支持層2、及びヒートシール層3がこの順に積層された構造を有する。このうち、支持層2にバイオマス由来の樹脂(a1)及び/又は樹脂(b1)を配合することにより、前述の課題を解決できる。
【0014】
<基材層>
第1の実施形態に係るカバーテープは、基材層を備える。基材層は、カバーテープの製造時や、電子部品包装体の製造時等に、外部から加わる応力や熱履歴に耐え得る機械強度及び耐熱性を有することが好ましい。また、基材層を構成する材料は、加工が容易である観点から、フィルム状に加工された形態であることが好ましい。
【0015】
基材層の上記の特性は、これを構成する材料を適宜選択することにより調整することができる。基材層を構成する材料の具体例としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。中でも、第1の実施形態に係るカバーテープの機械物性と柔軟性とが向上しやすい観点からは、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。基材層にはさらに、滑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0016】
基材層は、上述した材料を含む単層フィルムであってもよく、上述した材料を各層に含む多層フィルムであってもよい。また、基材層を形成するために使用するフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。一実施形態において、カバーテープの機械強度が向上しやすい観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムが好ましく、二軸方向に延伸したフィルム(二軸延伸フィルム)であることがより好ましい。特に好ましい実施形態においては、基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
一実施形態において、バイオマス度の高いカバーテープを得る観点からは、基材層は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0017】
基材層の厚みは、カバーテープのラミネート強度や、キャリアテープとのヒートシール性が良好となりやすい観点からは、12~25μmが好ましい。基材層の厚みは、前記範囲内で適宜調整できる。
【0018】
一実施形態において、基材層としては、帯電防止処理のための帯電防止剤が塗布または練り込まれたもの、またはコロナ処理や易接着処理などを施したものを用いることが出来る。好ましい実施形態においては、基材層の支持層が積層されていない側の表面に、帯電防止層が設けられた構成とすることができる。以下、基材層の支持層が積層されていない側の表面に設けられた帯電防止層を、「帯電防止層I」として説明する。
【0019】
(帯電防止層(I))
帯電防止層(I)には、バインダー樹脂と帯電防止剤とを含むことができる(以下、帯電防止層(I)に含まれるバインダー樹脂及び帯電防止剤を、「バインダー樹脂(I)」、「帯電防止剤(I)」と記載する)。
帯電防止剤(I)としては、無機系帯電防止剤;硫酸バリウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の導電性微粒子;環状第4級窒素含有カチオンを含むイオン液体;第4級アンモニウム塩等のカチオン型界面活性剤;ポリアルキレンオキサイド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体等)、ポリオキシアルキレン構造とエステル結合を有するポリエーテルエステル等のポリアルキレングリコール等から選択できる。このうち、基材層側の表面抵抗率を好適な範囲に制御しやすく、かつ石油由来の成分の少ないカバーテープとなりやすい観点からは、帯電防止剤(I)は、無機系帯電防止剤を含むことが好ましい。無機系帯電防止剤としては、例えば、ケイ酸マグネシウム、スメクタイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サボナイトのいずれか、又はこれらの組み合わせが挙げられる。このうち、ケイ酸マグネシウムを含むことが好ましい。無機系帯電防止剤は、帯電防止層(I)を構成する全成分の合計(100質量%)に対して、40~80質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0020】
バインダー樹脂(I)としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される熱可塑性樹脂が挙げられる。このうち、ポリエステル系樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂(I)としてポリエチレン樹脂を採用する場合、該ポリエチレン樹脂として、バイオマス由来のポリエチレン樹脂(例えば、後述するバイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂等)を用いてもよい。
【0021】
帯電防止層Iの厚みは、所望の表面抵抗率を達成しやすい観点からは、0.1~1.0μmが好ましい。
【0022】
<支持層>
第1の実施形態に係るカバーテープは、基材層の上に設けられた支持層を備える。支持層は直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とを含み、前記樹脂(A)の総質量に対するバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)の割合が0~50質量%であり、前記樹脂(B)の総質量に対するバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)の割合が50~100質量%である。第1の実施形態に係るカバーテープにおいては、このように、支持層中に配合するバイオマス由来の樹脂を、バイオマス由来の樹脂(a1)及び/又は樹脂(b1)とし、かつその割合を制御することにより、カバーテープのバイオマス度を一定値以上としつつ、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できる。
【0023】
(直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A))
支持層は、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)を含む。また樹脂(A)は、樹脂(A)の総質量に対して、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)を0~50質量%含む。すなわち、樹脂(A)は、石油由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂のみからなる、又はその一部がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)に置き換えられた樹脂である。
【0024】
樹脂(A)に含まれる石油由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂としては、柔軟性及び適度な剛性を有し、かつ、常温での引裂き強度(例えば、後述するテープ切れ強度等)が良好となりやすい観点から、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、又は直鎖状低密度ポリプロピレン樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を含むことがより好ましい。石油由来のLLDPEとしては、密度が0.880~0.925g/cm3の範囲の樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
石油由来のLLDPEには、チグラー型触媒で重合されたもの、及びメタロセン系触媒で重合されたもの(m-LLDPE)がある。このうち、m-LLDPEは分子量分布が狭く制御されているため、より高い引裂強度が得られやすい。
【0026】
石油由来のm-LLDPEは、コモノマーとして炭素数3以上のオレフィン、好ましくは炭素数3~18の直鎖状、分岐状、又は芳香族基を有するα-オレフィンと、エチレンとの共重合体である。直鎖状のモノオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が挙げられる。また、分岐状モノオレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン等を挙げることができる。また、芳香族基を有するモノオレフィンとしては、スチレン等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独または2種以上を組み合わせて、エチレンと共重合することができる。この共重合では、ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等のポリエン類を共重合させてもよい。
【0027】
・バイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)
樹脂(A)に含まれる樹脂(a1)としては、再生可能な天然原料(例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、マニオク等)から製造された、植物由来のエタノールやプロパノールを原料とし、化学的に反応精製したエチレンモノマーやプロピレンモノマー等のオレフィンモノマーを含むモノマーを重合して得られる、直鎖状の低密度ポリオレフィン樹脂である。樹脂(a1)の天然原料としては特に限定されないが、サトウキビ由来の樹脂を含むことが好ましい。サトウキビ由来の樹脂は、砂糖の製造過程で発生する副産物を活用して得られるため、より環境負荷の少ないカバーテープとなりやすく、さらにカバーテープの機械物性も向上しやすい。
樹脂(a1)は、樹脂(A)を構成する石油由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂と同じ樹脂を選択することが好ましい。好ましい一実施形態において、樹脂(A)が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を含む場合、樹脂(a1)も、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(バイオマス由来のLLDPE)を含むことが好ましい。一実施形態において、バイオマス由来のLLDPEは、植物由来のエチレンモノマーと、炭素数4~6のα-オレフィンとを共重合して得られる、植物由来のLLDPEが好ましい。なお樹脂(a1)としては、2種以上のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
【0028】
バイオマス由来のLLDPEとしては、石油由来のLLDPEと同等の物性が発現しやすい観点からは、石油由来のLLDPEと同様に、コモノマーとして炭素数3以上のオレフィン、好ましくは炭素数3~18の直鎖状、分岐状、芳香族基を有するα-オレフィンとエチレンモノマーとの共重合体が好ましい。前記コモノマーとしては、より好ましくはブテン-1(C4)である。
【0029】
一実施形態において、バイオマス由来のLLDPEの密度は、0.910~0.925g/cm3が好ましく、0.910~0.920g/cm3がより好ましく、0.913~0.918g/cm3がさらに好ましい。ここで、バイオマス由来LLDPEの密度は、JIS K 7112に沿って測定できる。
【0030】
一実施形態において、バイオマス由来のLLDPEのMFR(190℃、荷重2.16N)は、0.5~4.0g/10分が好ましく、1.5~3.0g/10分がより好ましく、2.0~2.5g/10minがさらに好ましい。
【0031】
一実施形態において、樹脂(a1)としては、放射性炭素年代測定14Cによるバイオマス度が、80~100%の樹脂を用いることが好ましい。樹脂(a1)の特に好ましい実施形態は、前記バイオマス度が80~100%のバイオマス由来のLLDPEである。
【0032】
ここで「放射性炭素年代測定14Cによるバイオマス度」(本開示におけるバイオマス度)とは、14C(放射性炭素14、半減期5730年)の濃度を加速器質量分析により測定(AMS法)して求めた、樹脂中のバイオマス由来成分の割合である。石油由来の樹脂の炭素には14Cが含まれないことから、この14Cの濃度を測定することにより、樹脂中のバイオマス由来成分の割合を求めることができる。バイオマス度は以下の方法により測定できる。
(バイオマス度(AMS法)の測定方法)
測定対象試料を燃焼させて二酸化炭素を発生させる。発生した二酸化炭素を真空ラインで精製したあと、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成させる。生成したグラファイトを、タンデム加速器をベースとした14C-AMS専用装置(例えば、NEC社製)に装着して、14Cの計数、13Cの濃度(13C/12C)、14Cの濃度(14C/12C)の測定を行う。得られた測定値から標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合を算出する。この測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸(HOxII)を標準試料とする。
【0033】
樹脂(A)に含まれる樹脂(a1)の割合は0~50質量%である。本願発明者らは、カバーテープの支持層において、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)を配合すること、さらに、該樹脂(A)中のバイオマス由来の樹脂(a1)の割合を低く制御することにより、環境に配慮したカバーテープとしつつ、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できることを見出した。
カバーテープの機械物性を維持しやすい観点からは、樹脂(A)中の樹脂(a1)の割合はより低いことが好ましい。一実施形態において、樹脂(A)中の樹脂(a1)の割合は、0~40質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~25質量%がさらに好ましい。また、樹脂(A)が樹脂(a1)を含まない(すなわち、樹脂(A)が石油由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂のみを含む)ことが特に好ましい。
【0034】
好ましい一実施形態において、樹脂(A)は、石油由来LLDPEのみを含む、または石油由来LLDPEの一部(50質量%以下)がバイオマス由来のLLDPEに置き換えられた樹脂であってもよい。
【0035】
(樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B))
支持層は、前述の樹脂(A)と、樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)を含む。また樹脂(B)は、樹脂(B)の総質量に対してバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)を、50~100質量%含む。すなわち樹脂(B)は、樹脂(A)以外の石油由来のポリオレフィン樹脂の一部又は全部が、バイオマス由来のポリオレフィン樹脂(樹脂(a1)を除く)に置き換えられた樹脂である。
【0036】
樹脂(B)に含まれる石油由来のポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂等のポリエチレン樹脂;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエチレンとα-オレフィンとの共重合体;エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-エチレングラフト共重合体、スチレン-プロピレングラフト共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体等のエチレンとその他のモノマーとの共重合体;ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂等のポリプロピレン樹脂等が挙げられる。このうち、より加工性が向上しやすい観点からは、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を含むことが好ましく、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)がより好ましい。
【0037】
・バイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)
樹脂(B)に含まれる樹脂(b1)は、樹脂(a1)と同じく、再生可能な天然原料(例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、マニオク等)から製造された、植物由来のエタノールやプロパノールを原料とし、化学的に反応精製したエチレンモノマーやプロピレンモノマー等のオレフィンモノマーを重合して得られる、ポリオレフィン樹脂である。樹脂(b1)の天然原料としては特に限定されないが、植物由来の樹脂が好ましく、サトウキビ由来の樹脂を含むことが好ましい。サトウキビ由来の樹脂であれば、より環境負荷の少ないカバーテープとなりやすく、さらにカバーテープの機械物性も向上しやすい。
【0038】
樹脂(b1)は、樹脂(B)を構成する石油由来のポリオレフィン樹脂と同じ樹脂を選択することが好ましい。好ましい一実施形態において、樹脂(B)が低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を含む場合、樹脂(b1)も、バイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂(バイオマス由来のLDPE)を含むことが好ましい。一実施形態においては、バイオマス由来のLDPEは、植物由来のLDPEであってもよい。なお樹脂(b1)としては、2種以上のバイオマス由来の低密度ポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
【0039】
一実施形態において、バイオマス由来のLDPEの密度は、0.910~0.930g/cm3が好ましく、0.915~0.925g/cm3がより好ましく、0.918~0.925g/cm3がさらに好ましい。バイオマス由来のLDPEの密度は、前述のバイオマス由来のLLDPEの密度と同じ方法で測定できる。
【0040】
一実施形態において、バイオマス由来LDPEのMFR(190℃、荷重2.16N)は、0.1~2.0g/10分が好ましく、0.1~1.0g/10分がより好ましく、0.1~0.5g/10minがさらに好ましい。
【0041】
一実施形態において、樹脂(b1)としては、前述の放射性炭素年代測定14Cによるバイオマス度が、80~100%の樹脂を用いることが好ましく、90~100%の樹脂がより好ましい。樹脂(b1)の特に好ましい実施形態は、前記バイオマス度が80~100%のバイオマス由来LDPEである。
【0042】
カバーテープのバイオマス度を高く維持しつつ、かつカバーテープの機械物性が良好となりやすい観点からは、樹脂(B)中の樹脂(b1)の割合はより高いことが好ましい。一実施形態において、樹脂(B)中の樹脂(b1)の割合は、60~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましい。また、バイオマス度を高く維持しつつ、カバーテープの機械物性も向上させる観点からは、樹脂(B)が樹脂(b1)のみを含む(すなわち、樹脂(B)が石油由来のポリオレフィン樹脂を含まない)ことが特に好ましい。
【0043】
好ましい一実施形態において、樹脂(B)は、バイオマス由来のLDPEのみを含む、またはバイオマス由来のLDPEの一部(50質量%以下)が石油由来のLDPEに置き換えられた樹脂であってもよい。
【0044】
一実施形態において、支持層中の樹脂(A)及び樹脂(B)の合計(100質量%)に対する樹脂(A)の割合は、50~70質量%が好ましく、55~70質量%がより好ましい。樹脂(A)の割合が前記範囲内であれば、カバーテープのバイオマス度を高く維持しつつ、従来のカバーテープと同程度の機械強度を達成しやすい。
【0045】
一実施形態において、支持層中の樹脂(b1)を含むバイオマス由来の樹脂の合計量は、支持層を構成する樹脂成分の総質量に対して、30質量%以上であることが好ましい。バイオマス由来の樹脂の割合が30質量%以上であれば、カバーテープのバイオマス度が高くなりやすく、環境に配慮したカバーテープとなりやすい。一方で、バイオマス由来の樹脂の割合が高くなりすぎると、カバーテープの機械強度が低下しやすくなる。従って、カバーテープの機械強度を高く維持しやすい観点からは、支持層中の樹脂(b1)を含むバイオマス由来の樹脂の合計量は、30質量%以上70質量%未満が好ましく、30~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。
【0046】
好ましい一実施形態において、支持層は、樹脂成分として、樹脂(A)及び樹脂(B)の混合物のみを含む。支持層が、樹脂成分として前記混合物のみを含む場合、混合物中の樹脂(a1)及び樹脂(b1)の合計量(すなわち、バイオマス由来成分の合計量)は、混合物の総質量に対して、30質量%以上が好ましい。カバーテープの機械強度の観点からは、樹脂(a1)及び樹脂(b1)の合計量は、30質量%以上70質量%未満が好ましく、30~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。
【0047】
一実施形態において、支持層が樹脂成分として前記混合物のみを含む場合、混合物の総質量に対する樹脂(b1)の割合は、30~50質量%が好ましく、35~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。
【0048】
一実施形態において、支持層の厚みは5~50μmが好ましく、10~40μmがより好ましい。支持層の厚みが前記範囲内であれば、キャリアテープにカバーフィルムをヒートシールする際のヒートシールコテの当り斑を緩和しやすく、ヒートシール時の剥離強度が良好となりやすい。
【0049】
<ヒートシール層>
第1の実施形態に係るカバーテープは、基材層、支持層、及びヒートシール層がこの順に積層されている。ヒートシール層は、キャリアテープに対してヒートシール性を有し、かつ必要に応じてキャリアテープから容易に剥がすことのできる易剥離性を示す熱可塑性樹脂からなり、例えば下記の樹脂(C)及び樹脂(D)の溶融混合物を用いることができる。
(樹脂(C))
ポリエチレン樹脂(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の各種のポリエチレン樹脂)、及びエチレン共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン-ブテン-1共重合体等)から選択される少なくとも1つの樹脂。
(樹脂(D))
ポリスチレン、及びスチレンを共重合成分として含むスチレン系樹脂(例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体の水添物、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体の水添物、スチレン-ブテン-ブタジエン共重合体、メタクリル酸とスチレンの共重合体、耐衝撃性ポリスチレン等)から選択される少なくとも1つの樹脂。
なお、樹脂(C)におけるポリエチレン樹脂としては、前述の樹脂(a1)や樹脂(b1)のような、バイオマス由来の樹脂を用いてもよい。ヒートシール層がバイオマス由来の樹脂を含む場合、ヒートシール層を構成する樹脂組成物の総質量に対して、40質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
上記の樹脂(C)及び樹脂(D)の溶融混合物のうち、キャリアテープにヒートシールしたのち、前記キャリアテープから剥離する際の剥離強度が、連続して安定しやすい観点からは、エチレン共重合体と、スチレン-ブタジエン共重合体及び耐衝撃性ポリスチレン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂との溶融混合物が好ましい。更に、前記の混合物中のエチレン共重合体としては、エチレン-ブテン-1共重合体が特に好ましい。
【0051】
好ましい一実施形態において、ヒートシール層が樹脂(C)及び樹脂(D)の混合物で構成される場合、混合物を100質量%としたとき、エチレン共重合体を15~60質量%、及びスチレン-ブタジエン共重合体を40~85質量%含む混合物を用いることが、剥離強度の安定性の点でより好ましい。
【0052】
一実施形態において、ヒートシール層の厚みは、3~25μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。ヒートシール層の厚みが前記範囲内であれば、良好な剥離強度が得られやすく、かつ剥離強度のばらつきが生じにくい。
【0053】
一実施形態において、ヒートシール層には、帯電防止処理のための帯電防止剤が塗布または練り込まれたもの、またはコロナ処理や易接着処理などを施したものを用いることが出来る。好ましい実施形態においては、ヒートシール層の支持層が積層されていない側の表面に、帯電防止層が設けられた構成とすることができる。以下、ヒートシール層の支持層が積層されていない側の表面に設けられた帯電防止層を、「帯電防止層(II)」として説明する。
【0054】
(帯電防止層(II))
帯電防止層(II)も、帯電防止層(I)と同様に、バインダー樹脂と帯電防止剤とを含むことができる(以下、帯電防止層(II)に含まれるバインダー樹脂、帯電防止剤を、「バインダー樹脂(II)」、「帯電防止剤(II)」と記載する)。
帯電防止剤(II)としては、帯電防止剤(I)と同じく、無機系帯電防止剤;硫酸バリウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の導電性微粒子;環状第4級窒素含有カチオンを含むイオン液体;第4級アンモニウム塩等のカチオン型界面活性剤;ポリアルキレンオキサイド(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体等)、ポリオキシアルキレン構造とエステル結合を有するポリエーテルエステル等のポリアルキレングリコール等から選択できる。帯電防止層(II)は、電子部品包装体とした際に、電子部品等の内包物と接する側の表面に設けられるため、より表面抵抗率の低い層とすることが好ましい。例えば、帯電防止層(II)表面の表面抵抗率は、1012Ω以下が好ましい。帯電防止剤(II)としては、前述の表面抵抗率、及びキャリアテープとのヒートシール性、並びにカバーテープの石油由来の成分の割合を低下しやすい観点から、導電性微粒子が好ましく、酸化アルミニウムを含むことがより好ましい。帯電防止剤(II)の割合は、後述するバインダー樹脂(II)の100質量部に対して、100~1000質量部が好ましく、100~700質量部がより好ましい。
【0055】
バインダー樹脂(II)としては、キャリアテープとの剥離性、特に高速剥離性が良好となりやすい観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。(メタ)アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル等の、少なくとも一種以上の(メタ)アクリル残基を50質量%以上含む樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
帯電防止層(II)の厚みは、帯電防止性及び剥離強度の観点からは、0.1~2.0μmが好ましく、0.15~1.0μmがより好ましい。
【0057】
(ラミネート層)
一実施形態において、支持層と基材層との間にラミネート層を設けてもよい。ラミネート層を設けることで、カバーテープのラミネート強度が向上しやすくなる。
ラミネート層は、例えば、基材層の片面に直接設けられてもよく、アンカーコート層を介して設けられてもよい。すなわちラミネート層を設ける場合、「基材層/ラミネート層/支持層/ヒートシール層」の順に設けてもよく、「基材層/アンカーコート層/ラミネート層/支持層/ヒートシール層」の順に設けてもよい。
ラミネート層を構成する樹脂としては、特に柔軟性を有していて、かつ適度の剛性があり、常温での引裂き強度に優れるLLDPEを好適に用いることができ、石油由来LLDPEがより好ましい。このうち、特に密度が0.880~0.925g/cm3の範囲のLLDPEを用いることで、ヒートシールする際の熱や圧力による、カバーフィルム端部からのラミネート層の食み出しが起こりにくい。またカバーフィルムをヒートシールする際にラミネート層が軟化することによるヒートシールコテの当り斑を緩和しやすくなるため、カバーフィルムを剥離する際に安定した剥離強度が得られ易い。
【0058】
前述の通り、LLDPEには、チグラー型触媒で重合されたLLDPEや、m-LLDPEがある。このうち、高い引裂強度を発現しやすい観点から、ラミネート層は、m-LLDPE(より好ましくは石油由来のm-LLDPE)を用いることが好ましい。
ここで、ラミネート層と、支持層中の樹脂(A)とは、その密度が異なるLLDPEを用いることが好ましい。一実施形態においては、ラミネート層は、密度が0.910g/cm3以上0.916g/cm3未満のm-LLDPEを用いることが好ましく、支持層中の樹脂(A)は、0.916g/cm3以上0.920g/cm3以下のm-LLDPEを用いることが好ましい。
【0059】
一実施形態において、ラミネート層の厚みは、良好なラミネート強度が得られやすい観点からは、10~20μmが好ましい。
【0060】
第1の実施形態に係るカバーテープの、前述のAMS法により測定したカバーテープ全体のバイオマス度は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましい。カバーテープ全体のバイオマス度が10%以上となるように、支持層及びその他の層中のバイオマス由来の樹脂の割合を設定することが好ましい。
【0061】
一実施形態において、後述の方法で測定されたカバーテープのラミネート強度は、6.5N/15mm以上であることが好ましく、7.0N/15mm以上であることがより好ましい。バイオマス由来の樹脂を含まない従来のカバーテープのラミネート強度は、例えば、参考例1に示すように、約7.0N/15mmである。第1の実施形態に係るカバーテープは、バイオマス由来の樹脂を含みながら、従来のカバーテープと同程度のラミネート強度を達成できる。
またカバーテープには、100m/分以上の高速で剥離した際に、テープ切れが生じないことも要求される。高速剥離の際のテープ切れは、例えば、後述の方法で測定されるテープ切れ強度によって評価できる。従来の、高速剥離性に優れるカバーテープでは、高速針におけるテープ切れ強度が約1.2N程度である。第1の実施形態に係るカバーテープは、従来のカバーテープと同程度のテープ切れ強度も達成できる。すなわち、一実施形態において、後述の方法で測定されたカバーテープのテープ切れ強度は、1.2N以上であってもよく、1.3N以上であってもよい。
【0062】
[カバーテープの製造方法]
第1の実施形態に係るカバーテープの製造方法としては特に限定されず、一般的な方法を採用できる。
例えば、ヒートシール層を予めTダイキャスト法、あるいはインフレーション法などの方法によって製膜しておく。さらに、基材層(好ましくは、二軸延伸ポリエステルフィルム)の表面に、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンイミンなどのアンカーコート剤(アンカーコート層)を塗布しておき、該アンカーコート剤の塗布面と、ヒートシール層のフィルムとの間に、支持層を構成する樹脂組成物(樹脂(A)及び樹脂(B)を含む。好ましくは、LLDPEとLDPEの混合物)をTダイから押出しするサンドラミネート法により、基材層、支持層、ヒートシール層とがこの順に積層された三層のカバーテープを得ることができる。
【0063】
一実施形態において、基材層、ラミネート層、支持層、及びヒートシール層がこの順に積層されたカバーテープを得る場合は、支持層を構成する樹脂組成物と、ヒートシール層を構成する樹脂組成物を個別の単軸押出機から押し出しし、マルチマニホールドダイで積層することにより、支持層とヒートシール層とからなる二層フィルムを作成する。さらに、基材層の表面に前述のアンカーコート剤(アンカーコート層)を塗布しておき、当該アンカーコート剤の塗布面と、前記二層フィルムとの間に、ラミネート層を構成する樹脂組成物(好ましくは、m-LLDPE)をTダイから押出しするサンドラミネート法により、基材層、ラミネート層、支持層、及びヒートシール層からなる四層のカバーテープを得ることができる。
【0064】
前記の工程に加え、必要に応じて、カバーフィルムの基材層の表面に、及び/又はヒートシール層の表面に帯電防止層(I)、(II)を設けることができる。帯電防止層(I)、(II)は、グラビアロールを用いたロールコーターやリップコーター、スプレー等により、帯電防止層(I)又は(II)を構成する樹脂組成物を、各層の所定の表面に塗工して設けることができる。また、帯電防止処理を行う前に、基材層又はヒートシール層の表面を、コロナ放電処理やオゾン処理を行ってもよい。
【0065】
[用途]
第1の実施形態に係るカバーテープは、電子部品包装体のためのカバーテープとして用いることができる。
【0066】
[電子部品包装体]
第2の実施形態は、第1の実施形態に係るカバーテープを含む電子部品包装体である。第2の実施形態に係る電子部品包装体は、例えば、キャリアテープの電子部品等を収納するための窪みに電子部品等を収納した後に、第1の実施形態に係るカバーテープを蓋材とし、カバーテープの長手方向の両縁部を、ヒートシールコテ等を用いて連続的にヒートシールして包装し、リールに巻き取ることで得られる。この形態に包装されて電子部品等は保管、搬送される。本実施形態に係る包装体は、コネクタ、IC、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ、抵抗器、LED等の各種電子部品の収納および搬送に用いることができる。
【0067】
電子部品包装体は、キャリアテープの長手方向の縁部に設けられたキャリアテープ搬送用のスプロケットホールと呼ばれる孔を用いて搬送しながら断続的にカバーテープを引き剥がし、部品実装装置により電子部品等の存在、向き、位置を確認しながら電子部品を取り出し、基板への実装が行われる。
【0068】
第2の実施形態に係る電子部品包装体に含まれるキャリアテープとは、電子部品を収納するための窪みを有した幅8mmから100mm程度の帯状物である。第1の実施形態に係るカバーテープを蓋材としてヒートシールする場合、キャリアテープを構成する材質は特に限定されるものではないが、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂を含むキャリアテープを好適に使用することができる。キャリアテープは、カーボンブラックやカーボンナノチューブを樹脂中に練り込むことにより導電性を付与したもの、カチオン系、アニオン系、非イオン系などの界面活性剤型の帯電防止剤やポリエーテルエステルアミドなどの持続性帯電防止剤が練り込まれたもの、あるいは表面に界面活性剤型の帯電防止剤やポリピロール、ポリチオフェンなどの導電物を(メタ)アクリル系樹脂などの有機バインダーに分散した塗布液を塗布することにより、帯電防止性を付与したものを用いてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0070】
[実施例1~3、比較例1~3、及び参考例1]
下記の樹脂(C)及び樹脂(D)をプリブレンドした後、単軸押出機を用いて混練してヒートシール層用の樹脂組成物を得た。このヒートシール層用樹脂組成物と、表1に記載の支持層用の樹脂組成物を、それぞれ個別の単軸押出機から押し出しし、マルチマニホールドTダイで積層押出しすることにより、ヒートシール層及び支持層の厚みが、それぞれ5μm及び20μmの二層のフィルムを得た。
次に、基材層(厚み13μm)に二液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤を、ロールコーターを用いて塗布しておき、該塗布面と上記の二層フィルムの支持層表面との間に、ラミネート層を構成する溶融樹脂組成物を厚みが13μmとなるように押し出しし、押出しラミネート法によって積層フィルムを得た。
上記積層フィルムの基材層の表面及びヒートシール層の表面をコロナ処理した後、帯電防止層(I)用樹脂組成物と、帯電防止層(II)用樹脂組成物を、グラビアコーターを用いて、乾燥後の厚みがそれぞれ0.4μmになるように塗工して、
図2に示す通り、帯電防止層I/基材層/(アンカーコート層)/ラミネート層/支持層/ヒートシール層/帯電防止層(II)の層構成を有するカバーテープを得た。なお
図2では、アンカーコート層の表示を省略している。
【0071】
なお、各例で用いた材料は以下のとおりである。
<基材層>
・PET:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み13μm。
<ラミネート層>
・m-LLDPE1:石油由来のm-LLDPE(密度:0.92g/cm3)。
<支持層>
(樹脂(A))
・m-LLDPE2:石油由来のm-LLDPE(密度:0.918g/cm3)。
(樹脂(a1))
・バイオマス由来LLDPE:植物由来のLLDPE(植物由来のエチレンと、ヘキセンとの共重合体)MFR:2.3g/10分、密度:0.916g/cm3、バイオマス度:約84%)。
(樹脂(B))
・LDPE:石油由来のLDPE(密度:0.922g/cm3)。
(樹脂(b1))
・バイオマス由来LDPE:植物由来のLDPE(MFR:0.32g/10分、密度:0.923g/cm3、バイオマス度:約95%)。
<ヒートシール層>
・樹脂(C):エチレン-α・オレフィン共重合体(密度:0.885g/cm3)
・樹脂(D):スチレン-ブタジエンブロック共重合体(密度:1.03g/cm3)
<帯電防止層(I)>
・帯電防止層(I)用樹脂組成物:バインダー樹脂(I)(ポリオレフィン系樹脂)、及び帯電防止剤(I)(ケイ酸マグネシウム)を含む樹脂組成物。
<帯電防止層(II)>
・帯電防止層(II)用樹脂組成物:バインダー樹脂(II)((メタ)アクリル系樹脂)、及び帯電防止剤(II)(アルミナ)を含む樹脂組成物。
【0072】
<カバーテープのバイオマス度(AMS法)の測定>
各例で得られたカバーテープについて、以下の方法でバイオマス度を測定した。結果を表1に示す。
(バイオマス度(AMS法)の測定方法)
測定対象試料を燃焼させて二酸化炭素を発生させた。発生した二酸化炭素を真空ラインで精製したあと、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成させた。生成したグラファイトを、タンデム加速器をベースとした14C-AMS専用装置(NEC社製)に装着して、14Cの計数、13Cの濃度(13C/12C)、14Cの濃度(14C/12C)の測定を行った。得られた測定値から標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合を算出した。この測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸(HOxII)を標準試料とした。
【0073】
<カバーテープの機械物性評価>
(ラミネート強度)
各例で得られたカバーテープについて、以下の方法でラミネート強度を測定した。結果を表1に示す。
カバーテープから、幅15mm×縦250mmのサンプルを5枚切り出した。サンプルの上部に幅方向に対して切れ込みをいれ、切れ込み箇所をエタノール溶剤につけて、ラミネート層だけが伸びるように、指先又はピンセットを使って割いた。
伸びたラミネート層をピンセット等で把持して伸ばしながら、基材層からゆっくりと剥がした。ラミネート層と基材層とが剥がれてきたら、剥離部分に少量のエタノール溶剤を付けてさらにゆっくりと剥がし、サンプルの把持部分(約3cm)を作成した。この時、基材層面に白色部ができていた場合は、白色部が無くなるまで、基材層とラミネート層を剥離した。
次に、小型卓上試験機((株)島津製作所製、製品名「EZ-TEST」)の引張治具に把持部分を挟み込み、基材層とそれ以外の層とを剥離した。剥離速度は200mm/min、測定長さは50mm、サンプル幅は15mmとした。引張治具に付属のロードセルで抵抗力を測定して、測定中の最大強度をラミネート強度として求めた。
【0074】
(テープ切れ強度)
各例で得られたカバーテープについて、以下の方法でテープ切れ強度を測定した。結果を表1に示す。
まず、各例で得られたカバーテープ(幅21.5mm)を、テーピング機((株)バンガードシステムズ製、製品名「VS-120」)を用いて、以下の条件で24.0mm幅のポリスチレン製キャリアテープ(デンカ(株)製)にヒートシールして、電子部品包装体を得た。
〇シールヘッド幅0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力5.0Kg、送り長16mm、シール時間0.4秒×2回、シールコテ温度150℃から200℃まで5℃間隔。
まず、シールコテ温度200℃の電子部品包装体のサンプル(長さ500mm×幅24.0mm)を、鉛直な壁に両面粘着テープで貼り付けた。この時、キャリアテープ側が壁と接するようにサンプルを貼り付けた。次に、カバーテープの上部に荷重(1kg)を付けて、最大180m/分の剥離速度でカバーテープをキャリアテープから高速剥離した。次に、シールコテ温度150℃から195℃までのサンプルについても同様の高速剥離試験を実施した。各温度のサンプルについて、高速剥離試験を3回ずつ実施し、カバーテープに切れが発生したサンプルの数が0~1枚となるまで、試験を実施した。その後、評価を実施した全てのサンプルについて、以下の条件で剥離強度を測定した。全サンプルのうち、切れが発生したサンプルの剥離強度を最低剥離強度とし、切れが発生しなかったサンプルの剥離強度を最高剥離強度として、最低剥離強度と最高剥離強度の平均値を、テープの切れ強度とした。
(剥離強度の測定)
サンプル(長さ300mm×幅24.0mm)を、剥離強度テスター((株)バンガードシステムズ製、製品名「VG-35」)を用いて、剥離角度170~180°、剥離速度300mm/分の速度で剥離して剥離強度を測定した。
【0075】
【0076】
表1に示す通り、第1の実施形態の構成を満たす実施例1~3のカバーテープは、バイオマス度が13~14.5%と高く、環境に配慮したカバーテープであった。さらに実施例1~3のカバーテープは、参考例1に示す従来のカバーテープと同程度のラミネート強度及びテープ切れ強度を有していた。驚くべきことに、ラミネート強度、テープ切れ強度共に、参考例1のカバーテープよりも向上していた。一方で、第1の実施形態の構成を満たさない比較例1~3のカバーテープでは、ラミネート強度、テープ切れ強度共に大幅に低下していた。以上の結果より、第1の実施形態に係るカバーテープによれば、バイオマス由来の樹脂を一定量含む、環境に配慮したカバーテープでありながら、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できることが確認された。
【0077】
本開示の例示的な実施形態及び例示的な実施形態の組み合わせの非限定的なリストを以下に記載する。
[1]カバーテープであって、
前記カバーテープは、基材層と、支持層と、ヒートシール層とがこの順に積層されており、
前記支持層は、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とを含み、
前記樹脂(A)の総質量に対するバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)の割合が0~50質量%であり、
前記樹脂(B)の総質量に対するバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)の割合が50~100質量%である、カバーテープ。
[2]AMS法により測定した前記カバーテープ全体のバイオマス度が10%以上である、[1]に記載のカバーテープ。
[3]前記支持層中の、前記樹脂(b1)を含むバイオマス由来の樹脂の合計量が、前記支持層を構成する樹脂成分の総質量に対して、30質量%以上である、[1]または[2]に記載のカバーテープ。
[4]前記支持層において、前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)の合計(100質量%)に対する前記樹脂(A)の割合が、50~70質量%である、[1]から[3]のいずれかに記載のカバーテープ。
[5]前記樹脂(B)が低密度ポリエチレン樹脂を含み、
前記樹脂(b1)がバイオマス由来の低密度ポリエチレン樹脂を含む、[1]から[4]のいずれかに記載のカバーテープ。
[6]前記樹脂(A)が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含み、
前記樹脂(a1)がバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む、[1]から[5]のいずれかに記載のカバーテープ。
[7]前記支持層が前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)の混合物からなり、
前記混合物の総質量に対する前記樹脂(a1)及び前記樹脂(b1)の合計量が30質量%以上である、[1]から[6]のいずれかに記載のカバーテープ。
[8]電子部品包装体用である、[1]から[7]のいずれかに記載のカバーテープ。
[9][1]から[8]のいずれかに記載のカバーテープを含む、電子部品包装体。
【産業上の利用可能性】
【0078】
第1の実施形態に係るカバーテープは、バイオマス由来の樹脂を一定量含みながら、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できる。そのため、環境に配慮した、電子部品包装体のためのカバーテープとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0079】
1:基材層
2:支持層
3:ヒートシール層
4:ラミネート層
5:帯電防止層(I)
6:帯電防止層(II)
10,20:カバーテープ
【要約】
バイオマス由来の樹脂を一定量含む、環境に配慮したカバーテープであって、従来のカバーテープと同等の機械物性を達成できるカバーテープ、及びそれを含む電子部品包装体の提供。
カバーテープであって、前記カバーテープは、基材層と、支持層と、ヒートシール層とがこの順に積層されており、前記支持層は、直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂(B)とを含み、前記樹脂(A)の総質量に対するバイオマス由来の直鎖状低密度ポリオレフィン樹脂(a1)の割合が0~50質量%であり、前記樹脂(B)の総質量に対するバイオマス由来のポリオレフィン樹脂(b1)の割合が50~100質量%である、カバーテープ。