(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】バッテリー制御装置及びバッテリー制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20250617BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250617BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
H02J7/10 B
H01M10/44 P
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2024533135
(86)(22)【出願日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2023005332
(87)【国際公開番号】W WO2023204612
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0049483
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0050321
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ドン-イン
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0281093(US,A1)
【文献】特表2020-515207(JP,A)
【文献】国際公開第2021/043563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の充電率と、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順に続く他の定電流充電手順に用いられる第2の充電率と、前記第1の充電率
を用いた定電流充電手順におけるバッテリーのリチウム析出に応じて予め設定された第1の基準SOC
と、を含む多段充電プロトコルデータを記憶するメモリと、
前記バッテリーのSOCを識別するプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
前記第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中に、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達した場合、一時的な放電手順を実行し、
前記一時的な放電手順の放電情報に基づいて、前記第2の充電率とは異なる調整された第2の充電率を決定し、
前記一時的な放電手順の終了後、前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する
、バッテリー制御装置。
【請求項2】
バッテリーの電圧または電流を測定し、前記測定された電圧または電流を示す測定値を出力するように構成された測定部を備え、
前記プロセッサは、前記測定部から受信した前記測定値に基づいて前記バッテリーのSOCを識別する、請求項1に記載のバッテリー制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記放電情報に含まれる前記一時的な放電手順が実行される間の前記バッテリーのSOC変化量に基づいて、前記調整された第2の充電率を決定する
、請求項1に記載のバッテリー制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記一時的な放電手順による前記バッテリーのSOC変化量を補償する
ように、前記第2の充電率よりも大きくなるように前記調整された第2の充電率を決定する
、請求項2に記載のバッテリー制御装置。
【請求項5】
前記メモリは、
前記第2の充電率
を用いた定電流充電手順における前記バッテリーのリチウム析出に応じて予め設定された第2の基準SOC
をさらに記憶する、請求項
4に記載のバッテリー制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記第1の基準SOC、前記第2の基準SOC及び前記第2の充電率にさらに基づいて、前記調整された第2の充電率を決定する
、請求項
5に記載のバッテリー制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中に、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達した時点から直ちに前記第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する場合に、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCから前記第2の基準SOCに到達するのに要すると予測される基準時間を演算する
、請求項
6に記載のバッテリー制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
(i)前記放電情報に含まれる前記一時的な放電手順の時間長と、(ii)前記一時的な放電手順の終了時点から直ちに前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順によって前記バッテリーのSOCが前記第2の基準SOCに到達するのに要する時間との合計を、前記基準時間と同じにする
ように、前記調整された第2の充電率を決定する
、請求項
7に記載のバッテリー制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有する
ように、前記一時的な放電手順の時間長を決定する
、請求項
8に記載のバッテリー制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記第1の基準SOCと前記第2の基準SOCとの差と、前記一時的な放電手順によるSOC変化量との合計に比例し、前記基準時間と、前記放電情報に含まれる前記一時的な放電手順の時間長との差に反比例する
ように、前記調整された第2の充電率を決定する
、請求項
7に記載のバッテリー制御装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記バッテリーを、前記第1の充電率以下の定電流で放電する
ように、前記一時的な放電手順を実行する
、請求項1に記載のバッテリー制御装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、前記一時的な放電手順のための定電流の大きさを決定する
、請求項
11に記載のバッテリー制御装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記バッテリーの使用程度に基づいて、前記一時的な放電手順を実行する必要があるか否かを判定し、
前記一時的な放電手順を実行する必要があると判定された場合、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達すると、前記一時的な放電手順を実行し、
前記一時的な放電手順を実行する必要がないと判定された場合、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達すると、前記一時的な放電手順を実行せずに、前記第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する
、請求項1に記載のバッテリー制御装置。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載のバッテリー制御装置を含む、バッテリーパック。
【請求項15】
請求項1から
13のいずれか一項に記載のバッテリー制御装置を含む、電気車両。
【請求項16】
バッテリー制御装置によって実行されるバッテリー制御方法であって、
第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中に
、バッテリーのSOCが、前記第1の充電率
を用いた定電流充電手順における前記バッテリーのリチウム析出に応じて予め設定された第1の基準SOC
に到達した場合、一時的な放電手順を実行するステップと、
前記一時的な放電手順の放電情報に基づいて、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順に続く他の定電流充電手順に用いられるように、予め設定された第2の充電率とは異なる調整された第2の充電率を決定するステップと、
前記一時的な放電手順の終了後、前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行するステップと、
を含む、バッテリー制御方法。
【請求項17】
前記バッテリーのSOCは、前記バッテリーの測定された電圧または電流を示す測定値に基づいて識別される、請求項16に記載のバッテリー制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー制御装置及び方法に関し、より詳細には、バッテリーの充電状態(SOC:State Of Charge)に合わせて充電電流の大きさが少なくとも1回変化する多段充電手順の実行中に、少なくとも1回の一時的な放電期間を設けることでリチウムの析出を抑制しつつバッテリーを高効率で充電できるように、多段充電プロトコルを用いた充電手順を制御する装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2022年4月21日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0049483号及び第2023年4月17日付け出願の韓国特許出願第10-2023-0050321号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などの携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気車両、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返し充放電が可能な高性能二次電池に対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、商用化されている二次電池としてはニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウム二次電池などが挙げられるが、そのうちリチウム二次電池は、ニッケル系の二次電池に比べてメモリ効果が殆ど起きないため充放電が自在であり、自己放電率が非常に低くエネルギー密度が高いという長所で脚光を浴びている。
【0005】
このようなバッテリーは、高容量化及び高密度化の面で多くの研究が盛んに行われているが、寿命と安全性を向上させることも重要である。そのためには、電極表面での電解液との分解反応の抑制が必要であり、過充電及び過放電を防止することが求められている。
【0006】
特に、負極の表面にリチウムが析出する現象であるリチウムめっき(Li-plating)を防止する必要がある。負極の表面にリチウムが析出すると、電解液との副反応及び電池の運動力学的バランス(kinetic balance)の変化などをもたらし、バッテリーの劣化につながる。また、負極の表面にリチウムが析出することでバッテリーの内部短絡の発生可能性が高くなり、発火や爆発などの危険を引き起こす。
【0007】
高速充電の場合、低速充電に比べてバッテリーの負極の表面でのリチウムめっきが促進されるため、充電の効率及びバッテリーの耐久性が低下する可能性がある。
【0008】
そのため、バッテリーの充電時における負極の表面へのリチウムの析出を最小限に抑え、高速充電の効率を高める技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するために案出されたものであり、多段充電プロトコルに従ってバッテリーが充電される過程で、互いに隣接する2つの充電ステージの間で一時的な放電手順を行うことにより、リチウムの析出量を減少させるか、または既に析出したリチウムの少なくとも一部を除去することができるバッテリー制御装置及びその方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、一時的な放電手順に続く定電流充電手順における充電率を調整することにより、一時的な放電手順による充電状態(SOC)の低下量を補償するバッテリー制御装置及びその方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組み合わせによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によるバッテリー制御装置は、バッテリーの電圧を測定し、前記測定された電圧を示す電圧測定値を出力するように構成された測定部と;第1の充電率と、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順に続く他の定電流充電手順に用いられる第2の充電率と、前記第1の充電率に関連する第1の基準SOC-前記第1の基準SOCは、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順において前記バッテリーのリチウム析出を防止するために予め設定された値である-と、を含む多段充電プロトコルデータを記憶するメモリと;前記測定部から受信した前記電圧測定値に基づいて前記バッテリーのSOCを識別するプロセッサと;を含む。前記プロセッサは、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中に、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達した場合、一時的な放電手順を実行し、前記一時的な放電手順の放電情報に基づいて、前記第2の充電率とは異なる調整された第2の充電率を決定し、前記一時的な放電手順の終了後、前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行するように構成され得る。
【0013】
前記プロセッサは、前記放電情報に含まれる前記一時的な放電手順が実行される間の前記バッテリーのSOC変化量に基づいて、前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。
【0014】
前記プロセッサは、前記一時的な放電手順による前記バッテリーのSOC変化量を補償するために、前記第2の充電率よりも大きくなるように前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。
【0015】
前記メモリは、前記第2の充電率に関連する第2の基準SOC-前記第2の基準SOCは、前記第2の充電率を用いた定電流充電手順において前記バッテリーのリチウム析出を防止するために予め設定された値である-をさらに記憶し得る。
【0016】
前記プロセッサは、前記第1の基準SOC、前記第2の基準SOC及び前記第2の充電率にさらに基づいて、前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。
【0017】
前記プロセッサは、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中に、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達した時点から直ちに前記第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する場合に、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCから前記第2の基準SOCに到達するのに要すると予測される基準時間を演算するように構成され得る。
【0018】
前記プロセッサは、(i)前記放電情報に含まれる前記一時的な放電手順の時間長と、(ii)前記一時的な放電手順の終了時点から直ちに前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順によって前記バッテリーのSOCが前記第2の基準SOCに到達するのに要する時間との合計を、前記基準時間と同じにするために、前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。
【0019】
前記プロセッサは、前記バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、前記一時的な放電手順の時間長を決定するように構成され得る。
【0020】
前記プロセッサは、前記第1の基準SOCと前記第2の基準SOCとの差と、前記一時的な放電手順によるSOC変化量との合計に比例し、前記基準時間と、前記放電情報に含まれる前記一時的な放電手順の時間長との差に反比例するために、前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。
【0021】
前記プロセッサは、前記バッテリーを、前記第1の充電率以下の定電流で放電するために、前記一時的な放電手順を実行するように構成され得る。
【0022】
前記プロセッサは、前記バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、前記一時的な放電手順のための定電流の大きさを決定するように構成され得る。
【0023】
前記プロセッサは、前記バッテリーの使用程度に基づいて、前記一時的な放電手順を実行する必要があるか否かを判定し、前記一時的な放電手順を実行する必要があると判定された場合、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達すると、前記一時的な放電手順を実行し、前記一時的な放電手順を実行する必要がないと判定された場合、前記バッテリーのSOCが前記第1の基準SOCに到達すると、前記一時的な放電手順を実行せずに、前記第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行するように構成され得る。
【0024】
本発明の他の側面によるバッテリーパックは、前記バッテリー制御装置を含み得る。
【0025】
本発明のさらに他の側面による電気車両は、前記バッテリー制御装置を含み得る。
【0026】
本発明の他の側面によるバッテリー制御方法は、バッテリー制御装置によって実行されるバッテリー制御方法であって、第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中に、バッテリーの測定電圧を示す電圧測定値に基づいて識別される前記バッテリーのSOCが、前記第1の充電率に関連する第1の基準SOC-前記第1の基準SOCは、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順において前記バッテリーのリチウム析出を防止するために予め設定された値である-に到達した場合、一時的な放電手順を実行するステップと、前記一時的な放電手順の放電情報に基づいて、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順に続く他の定電流充電手順に用いられるように、予め設定された第2の充電率とは異なる調整された第2の充電率を決定するステップと、前記一時的な放電手順の終了後、前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、多段充電プロトコルに従ってバッテリーが充電される途中で少なくとも1回の一時的な放電手順を設けることにより、バッテリーの内部に析出したリチウムの少なくとも一部を除去することができ、その結果、充電効率を向上させることができる。このとき、一時的な放電手順は、互いに隣接する2つの充電ステージの間で行うことができる。
【0028】
また、本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、一時的な放電手順に続く定電流充電手順における充電率を調整することにより、一時的な放電手順による充電状態(SOC)の低下量を補償し、これにより、前記一時的な放電期間による充電所要時間全体の長期化を抑制することができる。
【0029】
また、本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、バッテリーの使用程度に応じて、一時的な放電手順における放電電流の大きさ及び一時的な放電手順の時間長の少なくとも一方を調整することにより、バッテリーの長寿命化を図ることができる。
【0030】
本発明の効果は以上で言及した効果に限定されるものではなく、言及されていないまた他の効果は請求範囲の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【0031】
本明細書に添付される図面は、後述する本発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態によるバッテリー制御装置を示す図である。
【
図2】バッテリーが充電されている間にリチウムが析出する様子を例示的に示す図である。
【
図3a】多段充電プロトコルに従ってバッテリーが充電される過程における、SOCに応じた負極の電圧を示すグラフである。
【
図3b】
図3aの第2の区間を拡大した拡大図である。
【
図4a】本発明の一実施形態によるプロセッサによってバッテリーが充電される過程における、SOCに応じた負極の電圧を示すグラフである。
【
図4b】本発明の一実施形態によるプロセッサによってバッテリーが充電される過程における、SOCに応じた負極のdV/dQを示すグラフである。
【
図4c】
図4bの特定領域を拡大した拡大図である。
【
図5】本発明の他の実施形態によるバッテリー制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。
【0034】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを表すものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解されたい。
【0035】
また、本発明を説明するに当たって、本発明と関わる公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨を余計に曖昧にする虞があると認められる場合にはその詳細な説明を省略する。
【0036】
第1、第2などの序数を含む用語は、様々な構成要素のうちのいずれか一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これらの用語によって構成要素が限定されることはない。
【0037】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0038】
ちなみに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「接続(連結)」されているというとき、これは「直接的に接続(連結)」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「間接的に接続(連結)」されている場合も含む。
【0039】
以下、添付図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリー制御装置を示す。
【0041】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリー制御装置100は、測定部110、メモリ120及びプロセッサ130を含み得る。
【0042】
測定部110は、バッテリーの電圧及び電流の少なくとも一方を測定し得る。
【0043】
測定部110は、バッテリーの充電または放電過程中にバッテリーの両端にかかる電圧を測定するように構成され得る。本明細書において、バッテリーは、負極端子及び正極端子を備え、物理的に分離可能な1つの独立したセル、または、2つ以上のセルが直列、並列または直並列に接続されたバッテリーモジュールを意味し得る。一例として、リチウムイオン電池またはリチウムポリマー電池をバッテリーとして見なし得る。以下では、説明の便宜上、バッテリーは1つの独立したセルを意味するものとして説明する。様々な例において、測定部110によって測定されるバッテリーの電圧は、バッテリーの開回路電圧(OCV:open circuit voltage)またはバッテリーに負荷が連結されている状態で測定される負荷電圧の少なくとも一方であり得る。
【0044】
測定部110は、本発明の出願時点で公知の様々な電圧測定技術を採用することができる。例えば、測定部110は、本発明の出願時点で公知の電圧センサーを備え得る。特に、本発明によるバッテリー制御装置100がバッテリーパックに適用される場合、バッテリーパックに既に設けられた電圧センサーを本発明による測定部110として利用することもできる。
【0045】
測定部110は、バッテリーの充電や放電の過程中にバッテリーを流れる電流を測定するように構成され得る。この場合、測定部110は、電流が流れる際にシャント(shunt)抵抗の両端に印加される電圧を測定し、オームの法則を用いて測定された電圧を電流に変換し得る。あるいは、測定部110は、ホールセンサーなどの他の公知の電流センサーを含み得、前記電流センサーを利用して電流を測定することもできる。
【0046】
メモリ120は、多段充電プロトコルデータをはじめとして、バッテリーに対する多段充電手順を実施するのに必要なプログラムを記憶するように構成され得る。前述のように、多段充電プロトコルとは、バッテリーの完全放電状態を表すSOC(state of charge)から完全充電状態を表すSOCまでの全SOC範囲の少なくとも一部の範囲において、定電流の大きさが少なくとも1回変化する充電手順である。すなわち、多段充電プロトコルは、全SOC範囲の少なくとも一部の範囲が2つ以上のサブSOC範囲に区分されている場合、それぞれのサブSOC範囲(「ステージ」と呼び得る)での充電に用いられる充電率が予め決められている充電手順を指し得る。ちなみに、完全放電状態を示すSOCは通常0%に設定されるが、バッテリーの長寿命化を目的として0%より大きい値に予め設定され得る。同様に、完全充電状態を示すSOCは通常100%に設定されるが、バッテリーの長寿命化を目的として100%より小さい値に予め設定され得る。
【0047】
多段充電プロトコルデータは、第1の充電率と、第1の充電率を用いた定電流充電手順に続く他の定電流充電手順で使用される第2の充電率と、第1の充電率に関連する第1の基準SOCと、を含む。第1の基準SOCは、第1の充電率を用いた定電流充電手順においてバッテリーのリチウム析出を防止するために予め設定された値である。
【0048】
メモリ120は、少なくとも1つの基準SOCを記憶し得る。ここで、基準SOCとは、バッテリーを所定の充電率(current rateまたはC-rate)で充電する場合にバッテリーの負極上にリチウムが析出すると予測されるSOCであり得る。例えば、多段充電手順が、異なる充電率を有する3つの定電流充電手順の逐次的な流れである場合、基準SOCは2つである。すなわち、メモリ120に既に記憶される基準SOCの数は、多段充電手順に含まれる定電流充電手順の数よりも1つ少なくてもよい。
【0049】
メモリ120は、充電率に基づいてバッテリーの負極上にリチウムが析出されるバッテリーのSOCに関する情報を記憶し得る。バッテリーを定電流で充電する際、バッテリーの負極上にリチウムの析出が発生するSOCは、定電流の大きさ、すなわち、充電率に応じて変化し得る。例えば、定電流充電に用いられる充電率が高いほど、リチウム析出が発生するSOCは小さくなり得る。このように、事前に制御対象となるバッテリーと同じ特性を有するように設計されたバッテリーについて、充電過程を経て、充電率及びその充電率に応じてリチウムが析出するSOCに関する情報を、予め実験的に取得し得る。例えば、負極、正極及び基準電極を含む3電極型のリチウム二次電池において、負極のみの電位を分離して充電率を変化させながらリチウムの析出の有無を実験することにより、リチウムが析出するSOCに関する情報を予め取得し得る。メモリ120に記憶されるそれぞれの基準SOCは、前述のように取得された充電率とリチウム析出SOC(基準SOC)との関係を示す。メモリ120は、充電率と基準SOCとの関係を示す曲線データ及び/またはルックアップテーブルを記憶し得る。
【0050】
例えば、多段充電手順が、第1の充電率を用いた定電流充電手順及びそれに続く第2の充電率を用いた定電流充電手順を含むとする。この場合、メモリ120は、第1の基準SOCを記憶し得る。第1の基準SOCは、第1の充電率を用いた定電流充電手順の終了条件、すなわち、定電流充電手順に用いられる定電流の大きさが第1の充電率から調整された第2の充電率に切り替わる基準となる。
【0051】
第1の基準SOCは、バッテリーのSOCが第1の基準SOC未満であるときから第1の充電率を用いた定電流充電中に、バッテリーの負極上にリチウムの析出が発生しないか、またはリチウムの析出量が一定量未満である閾値(限界値)であり得る。すなわち、第1の充電率を用いた定電流充電によりバッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達したときからバッテリーのリチウムの析出が開始されるか、または第1の充電率を用いた定電流充電によるリチウムの析出量が一定量以上であり得る。
【0052】
多段充電手順が、第2の充電率を用いた定電流充電手順に続く第3の充電率による定電流充電手順をさらに含むとする。この場合、メモリ120は、第2の基準SOCをさらに記憶し得る。第2の基準SOCは、定電流充電手順に用いられる定電流の大きさが第2の充電率から第3の充電率に切り替わる基準となる。第2の基準SOCは、第2の充電率を用いた定電流充電が終了した後、第3の充電率を用いた定電流充電中に、バッテリーの負極上にリチウムの析出が発生しないか、またはリチウムの析出量が一定量未満である閾値(限界値)である。
【0053】
メモリ120は、バッテリー制御装置100の各構成要素が動作及び機能を実行するために必要なデータやプログラム、または動作及び機能が実行される過程で生成されるデータなどを記憶し得る。メモリ120は、プロセッサ130の内部または外部に存在し得、周知の様々な手段によってプロセッサ300と接続され得る。メモリ120は、プロセッサ130によって実行される少なくとも1つのプログラム、アプリケーション、データ、または命令(instructions)を記憶し得る。メモリ120は、データを記録、消去、更新及び読出できることが知られている公知の情報記憶手段であれば、その種類に特別な制限はない。一例として、メモリ120は、フラッシュメモリタイプ、ハードディスクタイプ、ソリッドステートディスク(SSD:Solid State Disk)タイプ、ソリッドディスクドライブ(SDD:Solid Disk Drive)タイプ、マルチメディアカードマイクロタイプ、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)、スタティックRAM(SRAM:Static RAM)、読み出し専用メモリ(ROM:Read Only Memory、リードオンリーメモリ)、電気的に消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ)、及びプログラマブル読み出し専用メモリ(PROM:Programmable Read Only Memory、プログラマブルリードオンリーメモリ)のうちの少なくとも1つとして実現できるが、本発明は、必ずしもこのようなメモリ120の具体的な形態に限定されるものではない。また、メモリ120は、プロセッサ130によって実行可能なプロセスが定義されたプログラムコードを記憶し得る。
【0054】
プロセッサ130は、測定部110からバッテリーの電圧測定値を受信し得る。例えば、プロセッサ130は、測定部110からバッテリーの電圧値をリアルタイムで受信したり、または一定時間間隔で周期的に受信したりし得る。
【0055】
プロセッサ130は、バッテリーの多段充電手順が実行される間、受信された電圧測定値に基づいてバッテリーの現在のSOC(最新SOC)を識別し得る。すなわち、プロセッサ130は、多段充電手順中の所定の時間間隔で、バッテリーのSOCをリアルタイムでモニタリングし得る。
【0056】
プロセッサ130は、様々な方法でバッテリーの現在のSOCを識別し得る。例えば、メモリ120は、電圧測定値(例えば、OCV)に対応するSOCをマッピングした第1のマッピング情報をさらに含み、プロセッサ130は、測定部110から電圧測定値を受信した後、メモリ120にアクセスして、受信した電圧測定値に対応するSOCを読み出し得る。または、メモリ120は、測定部110によって出力された電圧測定値及び電流測定値の少なくとも一方に基づいてバッテリーのSOCを演算するための数式(例えば、アンペアカウンティング、拡張カルマンフィルタ)などを記憶し、プロセッサ130は、メモリ120に記憶された数式などを用いてSOCを演算し得る。
【0057】
例えば、プロセッサ130は、バッテリーの等価回路モデル(equivalent circuit model)を用いて、電圧測定値に基づいてバッテリーの開回路電圧を識別し得る。ここで、メモリ120は、バッテリーの開回路電圧に対応するSOCをマッピングした第2のマッピング情報をさらに含み、プロセッサ130は、メモリ120にアクセスして、開回路電圧に対応するSOCを読み出し得る。他の例において、プロセッサ130は、メモリ120に記憶された拡張カルマンフィルタを用いて、バッテリーの現在のSOCを識別し得る。ここで、拡張カルマンフィルタは、等価回路モデルまたは電気化学的ROM(reduced order model)に基づくアルゴリズムであり、本発明が属する技術分野において周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0058】
または、測定部110は、バッテリーが充電されている間に印加される電流の測定値を経時的に積算することによってSOC変化量を演算し、初期SOCに演算されたSOC変化量を加えることによってバッテリーのSOCを識別することもできる。
【0059】
このように、プロセッサ130は、測定部110からバッテリーの電圧測定値を受信し、受信した電圧測定値に対応するSOCを取得して、取得したSOCをバッテリーの現在のSOCとして識別し得る。
【0060】
プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電中に、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達した場合、バッテリーを所定時間放電する一時的な放電手順を実行するように構成され得る。すなわち、第1の充電率を用いた定電流充電手順と後述する調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順との間に、一時的な放電期間が存在することである。プロセッサ130は、バッテリーが第1の充電率で充電されている間に、バッテリーのSOCの最新値をリアルタイムでまたは一定時間間隔で識別して、バッテリーが第1の基準SOCに到達したことを認識し得る。プロセッサ130は、バッテリーが第1の充電率で充電されている間に、メモリ120に記憶された第1の基準SOCを取得して、第1の基準SOCとバッテリーのSOCとをリアルタイムでまたは一定時間間隔で比較し得る。プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに対応することを認識すると、バッテリーを所定時間放電するように構成され得る。例えば、プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電過程中にバッテリーのSOCが第1の基準SOCである70%に到達した場合、充電を停止した状態で一定時間(例えば、6秒間)バッテリーを放電するように構成され得る。このとき、バッテリーは、所定の大きさを有する定電流で放電され得る。
【0061】
プロセッサ130は、バッテリーが前記所定時間放電された後、元の第2の充電率とは異なるように調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行するように構成され得る。
【0062】
図2は、バッテリーが充電されている間にリチウムが析出する様子を例示的に示している。
【0063】
プロセッサ130は、多段充電手順に従ってバッテリーを充電するように構成され得る。第1の充電率を用いた定電流充電手順の実行中にバッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達すると、負極の表面にリチウムが析出する可能性があることは前述の通りである。第1の例示
図210を参照すると、様々な理由で劣化したバッテリーが、第1の充電率を用いた定電流充電の過程で第1の基準SOCに到達したときに、バッテリーの負極の表面上に既に若干の金属リチウムが析出していることが分かる。
【0064】
プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電手順によって第1の基準SOCに到達したバッテリーを所定時間放電するように構成され得る。第2の例示
図220を参照すると、第1の充電率を用いた定電流充電手順と調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順との間でバッテリーが一時的に放電されることにより、充電電流によって蓄積されたヒステリシスが逆方向の放電電流によって解消され、バッテリーの負極の表面に析出していたリチウムが除去されることが示されている。すなわち、一時的な放電手順を行うことで、第1の充電率を用いた定電流充電手順において深刻化したリチウム析出の進行を解消するか、または少なくともその進行を遅らせることができる。これにより、第1の充電率を用いた定電流充電手順の終了後、直ちに第2の充電率を用いた定電流充電手順を開始する従来の方式に比べて、バッテリーの充電効率及び安全性を向上させることができる。
【0065】
一時的な放電手順の放電情報は、メモリ120に記憶し得る。ここで、放電情報は、一時的な放電手順の時間長、放電に用いられる定電流の大きさ、及び放電によるSOC変化量のうちの少なくとも1つを含む。
【0066】
プロセッサ130は、第2の例示
図220に関連する一時的な放電手順が終了した後、第1の充電率とは異なる第2の充電率でバッテリーを充電するように構成され得る。参考までに、第2の充電率(例えば、1.5℃)は、第1の充電率(例えば、2.5℃)よりも小さくてもよい。多段充電手順に含まれるそれぞれの定電流充電手順に用いられる充電率は、バッテリーの種類や仕様、バッテリーが使用される装置の仕様などの様々な条件に基づいて適切に予め設定され得る。
【0067】
第3の例示
図230を参照すると、第2の充電率を用いた定電流充電手順の開始時に負極に析出しているリチウムの量が、第1の例示
図210に示した量よりも減少したことが示されている。
【0068】
プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電の終了後、第1の充電率より小さい第2の充電率を用いてバッテリーを充電することにより、第1の充電率を用いた定電流充電手順に続く他の充電手順が実行される間に発生するリチウム析出量が減少するように、またはリチウム析出速度が減少するようにできる。
【0069】
本発明の前記構成要素によれば、バッテリーの充電時に、析出したリチウムの少なくとも一部を除去し得る。プロセッサ130は、バッテリーを充電する動作中にバッテリーを所定時間放電して、充電電流によるヒステリシスを緩和することはもとより、既に析出したリチウムの少なくとも一部を除去することにより、バッテリーの充電量をより正確かつ容易に予測し得る。
【0070】
プロセッサ130は、バッテリー制御装置100の他の構成要素と動作的に接続されており、バッテリー制御装置100の様々な動作を制御し得る。プロセッサ130は、メモリ120に記憶された1つ以上の命令を実行することにより、バッテリー制御装置100の様々な動作を実行し得る。プロセッサ130は、本発明で行われる様々な制御ロジックを実行するために、当業界で公知のプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)、チップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含み得る。また、前記制御ロジックがソフトウェアで実現されるとき、前記プロセッサ130は、プログラムモジュールの集合で実現され得る。このとき、プログラムモジュールは、メモリ120に記憶され、プロセッサ130によって実行され得る。
【0071】
特に、バッテリー制御装置100がバッテリーパックに含まれる形態で実現される場合、バッテリーパックは、マイクロコントローラユニット(MCU:micro controller unit)やバッテリー管理システム(BMS:battery management system)などの用語で呼ばれる制御装置を含み得る。このとき、プロセッサ130は、そのような一般的なバッテリーパックに設けられたMCUやBMSなどの構成要素によって実現され得る。
【0072】
本明細書において、プロセッサ130の動作や機能に関する「~する」または「~するように構成される」などの用語は、「~するようにプログラムされる」という意味を含み得る。
【0073】
一実施形態によれば、完全放電状態から第1の基準SOC以下のSOC範囲における定電流充電に用いられる第1の充電率とは異なり、第1の基準SOC以上のSOC範囲における定電流充電には、第2の充電率の代わりに調整された第2の充電率が用いられ得る。プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達したときから行われた一時的な放電によるバッテリーのSOC値の変化量(低下量)に基づいて、一時的な放電手順の終了を条件として開始される定電流充電手順に用いられる、調整された第2の充電率を決定し得る。これについて、
図3a及び
図3bを参照して詳細に説明する。
【0074】
図3aは、多段充電プロトコルに従ってバッテリーが充電される過程における、SOCに応じた負極の電圧を示すグラフである。
図3bは、
図3aの第2の区間を拡大した拡大図である。
【0075】
図3aを参照すると、グラフのX軸値は、バッテリーのSOC(%)(またはSOC値(%))を示し、グラフのY軸値は、バッテリーの負極の電圧(Voltage)(または電圧値)を示し得る。
図3を参照すると、バッテリーが充電されている間、バッテリーの負極の電圧が徐々に低下していることが分かる。
【0076】
第1の区間P1は、プロセッサ130の制御下で、バッテリーが第1の充電率で充電される区間に対応し得る。第2の区間P2は、プロセッサ130の制御下で、第1の区間P1と第3の区間P3との間の少なくとも一部の時間の間、固定されたまたはプロセッサ130によって決定された大きさを有する定電流でバッテリーが放電される区間に対応し得る。第3の区間P3は、プロセッサ130の制御下で、バッテリーが第1の充電率よりも低い調整された第2の充電率で充電される区間に対応し得る。具現例によっては、第1の区間P1の終了時点と第2の区間P2の開始時点との間及び/または第2の区間P2の終了時点と第3の区間P3の開始時点との間に、所定の休憩時間を設けることもよい。一時的な放電手順における定電流の大きさは、第1の充電率以下であり、調整された第2の充電率の大きさ以上であり得る。例えば、第1の充電率は1Cであり、調整された第2の充電率は0.8Cであり、一時的な放電手順における定電流の大きさは0.9Cであり得るが、これらは例示であり、限定的に解釈されるものではない。
【0077】
第1の区間P1を参照すると、プロセッサ130は、第1の充電率でバッテリーを充電する場合にリチウムが析出する第1の基準SOCをメモリ120から取得し、前記第1の充電率で第1の基準SOCまでバッテリーを充電し得る。例えば、
図3aの実施グラフにおいて、第1の基準SOCは46%であり得る。プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第1の基準SOC未満である任意のSOCから第1の基準SOCに到達するまで、第1の充電率でバッテリーを充電し得る。
【0078】
第2の区間P2を参照すると、プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに対応することを認識すると、充電動作を停止し、バッテリーを所定時間放電し得る。第2の区間P2では、バッテリーを所定時間放電することにより、使用による劣化や第1の充電率を用いた定電流充電手順によって既に析出しているリチウムの少なくとも一部が除去され得る。
【0079】
図3bを参照すると、バッテリーのSOCと負極電圧が、バッテリーの放電に伴って変化する様子が示されている。ここで、
図3bにおいて、「デルタSOC(delta SOC)」は、第2の区間P2における放電によって変化したSOC(SOCの変化量)を示し得る。プロセッサ130は、第2の区間P2において、第1の充電率と同じ大きさを有する定電流で所定時間バッテリーを放電し得る。例えば、第1の充電率が0.5Cである場合、第2の区間P2における放電に用いられる定電流の大きさも0.5Cであり得る。このように、第2の区間P2において、第1の区間P1の充電率と同じ大きさの定電流でバッテリーを放電する場合、プロセッサ130は、第2の区間P2におけるSOCの変化量を容易に演算し得る。ただし、他の様々な実施形態において、プロセッサ130は、バッテリーの劣化を考慮して、第1の充電率を用いた定電流充電手順で深刻化したリチウム析出の前兆症状を迅速に緩和するために、第1の充電率よりも大きな値でバッテリーを放電することもできる。
【0080】
バッテリーのSOCは、第2の区間P2における放電手順によって減少する。具体的には、第2の区間P2におけるバッテリーのSOC変化量は、以下の数式1を用いて導出し得る。
【0081】
【0082】
数式1において、delta SOC(デルタSOC、ΔSOC)は、バッテリーを所定の定電流でt1間放電した場合のSOC変化量である。t1は、バッテリーを放電する時間(前記所定時間=一時的な放電手順の時間長)を意味する。
【0083】
数式1の分母の「60」は、放電手順に用いられる定電流の大きさであるa1の単位に関連するAh(Amphere-hour、アンペア時)に従って、t1の単位で使用される分(minute)を時間(hour)に換算するためのものであり、「100」は、%で表すためのものである。したがって、数式1の「60」及び「100」は、単なる例示的な係数として理解されるべきである。
例えば、数式1に基づいて、バッテリーを2.5Cの定電流で5秒間放電させた場合、deltaSOC=(5/60)×100/60×2.5=約0.347%の減少と判断できる。例えば、数式1によれば、5秒間2.5Cの定電流でバッテリーを放電した場合、delta SOC=(5/60)×100/60×2.5=約0.347%の減少であると判断できる。
【0084】
図3aの第3の区間P3を参照すると、プロセッサ130は、バッテリーを放電した後、第1の充電率とは異なる調整された第2の充電率でバッテリーを充電し得る。このとき、プロセッサ130は、前記一時的な放電手順によるバッテリーのSOC値の変化(数式1によるSOC低下量の推定値)に基づいて元の第2の充電率を調整することにより、調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。例えば、プロセッサ130は、第3の区間P3中に調整された第2の充電率でバッテリーのSOCが第2の基準SOCまで充電されるようにする一方、バッテリーの放電により減少したSOCを補償し得る。
【0085】
より具体的には、プロセッサ130は、バッテリー放電後のSOC値の変化量を識別し、前記識別したSOC変化量を補償するために、前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。
【0086】
プロセッサ130は、予め設定された充電スケジュール(多段充電プロトコルによる充電順序)に従ってバッテリーの充電過程を制御し得る。プロセッサ130は、バッテリーの第2の区間P2における放電によるSOC変化量を補償しながら、予め設定された充電スケジュールに対応するようにバッテリーを充電し得る。以下では、プロセッサ130が、予め設定された充電スケジュールを有する場合に、放電中のSOC変化量が補償されるように、前記調整された第2の充電率を決定する実施形態について説明する。
【0087】
プロセッサ130は、予め設定された充電スケジュールに基づいて予め設定された充電時間に対応するように、調整された第2の充電率を決定し得る。例えば、予め設定された充電スケジュールに応じて充電が終了するまでにかかる時間が予め設定され得る。プロセッサ130は、放電に必要な時間を許容しながら第2の基準SOCまでの充電にかかる時間が、予め設定された充電スケジュール(一時的な放電手順なし)に基づく所要時間と同じになるように、調整された第2の充電率を決定し得る。したがって、プロセッサ130は、全体の充電時間を増加させることなく、バッテリーの充電中に所定時間放電することにより、リチウム析出現象を緩和(リチウムの少なくとも一部を除去)することができ、これにより、バッテリーの充電効率を向上させることができる。
【0088】
予め設定された充電スケジュールでバッテリーを充電するということは、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達するまで第1の充電率でバッテリーを充電し、バッテリーのSOCが第1の基準SOCから第2の基準SOCに到達するまで、一時的な放電手順なしで第2の充電率でバッテリーを充電することを意味し得る。
【0089】
メモリ120は、予め設定された充電スケジュールに対応して第2の充電率で充電する場合にリチウムが析出すると予測される第2の基準SOCを記憶し得る。メモリ120は、予め設定された充電スケジュールに対応して第1の充電率で充電する場合に、バッテリーの負極上にリチウムが析出すると予測される第1の基準SOCと共に、前記第2の基準SOCを記憶し得る。前記第1の基準SOC及び第2の基準SOCは、メモリ120に予め記憶された状態で、プロセッサ130がメモリ120にアクセスして第1の基準SOC及び第2の基準SOCを取得し得る。
【0090】
より具体的な例として、プロセッサ130は、バッテリーを2.5Cで充電してバッテリーのSOCが46%に到達すると、直ちに充電率を変更して1.5Cで充電してバッテリーのSOCが62.1%に到達するようにする、予め設定された充電スケジュールを有し得る。このとき、2.5Cは第1の充電率に対応し、46%は第1の基準SOCに対応し、1.5Cは第2の充電率に対応し、62.1%は第2の基準SOCに対応し得る。
【0091】
プロセッサは、前記第2の基準SOCを識別し、前記第2の充電率でバッテリーを充電する場合に、前記バッテリーのSOCが第1の基準SOCから第2の基準SOCに到達するのに要すると予測される基準時間を演算するように構成され得る。予め設定された充電スケジュールによれば、プロセッサ130は、メモリ120から取得した基準SOCに関する情報に基づいて、特定の充電率(第2の充電率など)でバッテリーを充電するのに要する時間を、以下の数式2を用いて導出し得る。
【0092】
【0093】
数式2において、b1は充電率を意味し、c1はSOCの変化量を意味する。数式2によって導出されるt2は、b1の充電率でバッテリーを充電する際に、バッテリーのSOCがc1だけ増加するのに要する時間を意味する。
【0094】
数式2において、t2の単位は分(minute)として例示されている。すなわち、前記数式2によれば、プロセッサ130は、予め設定された充電スケジュールに基づいて、バッテリーのSOCが第1の基準SOCである46%に到達した直後から第2の充電率である1.5Cでバッテリーを充電する場合、第2の基準SOCである62.1%に到達するまで約6.44分かかることを予測し得る。ここで、演算された6.64分を基準時間とすることができる。
【0095】
プロセッサ130は、第2の区間P2、すなわち、一時的な放電手順の終了時点でのバッテリーのSOC(第1の基準SOC未満)が第2の基準SOCに到達するのに必要な残存充電時間が前記基準時間に対応(一致)するように、前記調整された第2の充電率を決定し得る。すなわち、プロセッサ130は、前記第1の充電率を用いた定電流充電手順の終了時に行われる一時的な放電手順の時間長と、前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順の所要時間との合計が、第1の充電率を用いた定電流充電手順の終了時点(バッテリーのSOC=第1の基準SOC)から放電せずに直ちに元の第2の充電率を用いた定電流充電手順を開始してバッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達するのに要する時間よりも長くならないように、前記調整された第2の充電率を決定し得る。
【0096】
プロセッサ130は、(i)前記第1の基準SOCと前記第2の基準SOCとの差、(ii)第2の区間P2中のSOC変化量、及び(iii)一時的な放電手順の時間長に基づいて、前記基準時間に対応(一致)するように前記調整された第2の充電率を決定するように構成され得る。すなわち、前記調整された第2の充電率は、第1の基準SOCと第2の基準SOCとの差と、放電によるSOC変化量との合計に比例し、基準時間と前記所定時間との差に反比例し得る。
【0097】
具体的には、プロセッサ130は、予め設定された充電スケジュール(一時的な放電期間なし)に基づいて、第2の充電率でバッテリーを充電する際に、6.44分間バッテリーを16.1%充電する必要がある。
【0098】
プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電手順の後に一時的な放電手順を実行し、その後に再び定電流充電手順を実行する順序でバッテリーを充電する場合、一時的な放電手順の時間長(例えば、5秒=約0.083分)及び前記一時的な放電手順によって減少したSOC値(例えば、約0.347%)が補償されるように、前記調整された第2の充電率を決定し得る。すなわち、プロセッサ130は、第2の区間P2において減少したSOCを補償するために、約6.357分(6.44分-0.083分)の間に16.447%(16.1%+0.347%)だけバッテリーを充電できる大きさの定電流値である、前記調整された第2の充電率を決定し得る。例えば、プロセッサ130は、数式2を用いて、前記調整された第2の充電率を約1.552Cと決定し得る。
【0099】
したがって、本発明によれば、第1の充電率による定電流充電手順が完了した後に第2の区間P2による一時的な放電区間を追加しても、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達した時点から第2の基準SOCに到達する時点までの全体的な充電時間が実質的に同じレベルに維持できるという利点がある。
【0100】
特に、プロセッサ130は、第1の充填率よりも小さく、第2の充填率よりも大きい値を有するように、前記調整された第2の充填率を決定するように構成され得る。
【0101】
また、プロセッサ130が多段充電手順において充電率を1回変更する実施形態を中心に例示的に説明したが、プロセッサ130が充電率を変更する回数は限定的に解釈されるものではない。一例として、プロセッサ130は、バッテリーを使用する負荷の種類によって、充電率を2回以上変更し得る。具体的には、本発明によるバッテリー制御装置100が電気車両に適用される場合、プロセッサ130は、前述の放電によるSOC変化量を補償する方法で充電率を10回以上変更することもできる。
【0102】
特に、バッテリーが一定レベル以上の充放電を繰り返すと、劣化して負極上に析出するリチウムの量が増加することがある。メモリ120に記憶された基準SOCは、初期状態のバッテリーを基準としたデータであるため、劣化したバッテリーに前記基準SOCを適用すると、新品のバッテリーに比べて充電効率が低下せざるを得ない。例えば、バッテリーがある程度劣化している場合、第1の充電率で定電流充電しても、第1の基準SOCより小さいSOCで既にリチウムの析出が始まることがある。そのため、バッテリーの初期状態(新品状態)を基準とした基準SOCを用いてバッテリーの充電スケジュールを設定すると、実際にバッテリーに充電される充電量に誤差が生じる可能性がある。本発明の一実施形態によれば、充電中に放電動作を行ってリチウムを除去することにより、実際のバッテリーの充電量を正確に予測し得る。
【0103】
また、第1の基準SOCよりも小さいSOCで一時的な放電手順を開始する場合、第1の充電率を用いた定電流充電手順において既に析出したリチウムが存在しないか、または微々たるレベルであるため、一時的な放電手順による充電効率の向上効果が得られない可能性がある。一実施形態によるプロセッサ130は、第1の基準SOCに到達することを条件としてバッテリーを放電することで、第1の充電率を用いた定電流充電手順で析出したリチウムを可能な限り迅速に除去することができ、これにより、バッテリーの充電効率を向上させることができる。
【0104】
図4aは、本発明の一実施形態によるプロセッサによってバッテリーが充電される過程における、SOCに応じた負極の電圧を示すグラフである。
図4bは、本発明の一実施形態によるプロセッサによってバッテリーが充電される過程における、SOCに応じた負極のdV/dQを示すグラフである。
図4cは、
図4bの特定領域R1を拡大した拡大図である。
【0105】
図4aの第1のグラフにおいて、X軸はバッテリーのSOCを示し、Y軸はバッテリーの負極電圧を示す。
図4bの第2のグラフにおいて、X軸はバッテリーのSOCを示し、Y軸はバッテリーの負極のdV/dQを示す。
【0106】
図4aの第1のグラフを参照すると、プロセッサ130は、2.5Cの充電率でバッテリーのSOCが46%に到達するまで充電し得る。プロセッサ130は、バッテリーの現在のSOCが46%に対応することを認識すると、バッテリーを前述の所定時間放電し得る。
【0107】
特に、プロセッサ130は、第1の充電率と同じ値の定電流でバッテリーを前記所定時間放電し得る。これにより、プロセッサ130は、前記所定時間の放電によるSOC変化量を容易に演算し得る。
【0108】
図4aの第1のグラフを参照すると、
図3aと同様に、バッテリーのSOCが第1の基準SOCに到達したときからバッテリーが前記所定時間(例えば、5秒間)放電されることにより、負極の電圧値及びバッテリーのSOCが変化する部分が示されている。これについては、
図3a及び
図3bを参照して既に説明したので、重複する説明は省略する。
【0109】
プロセッサ130は、放電時間に応じて変化するSOC値を補償し、予め設定された充電スケジュールに基づく充電時間に対応するように調整された第2の充電率を決定し得る。プロセッサ130は、一時的な放電手順の終了時に直ちに1.552Cでバッテリーを充電し得る。
【0110】
図4bの第2のグラフは、第1のグラフの曲線に対して微分を行うことで得られた微分曲線であり、すなわち、負極の電圧をSOC(または容量Q)に対して微分を行って得られたグラフである。特定領域R1は、調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順が行われるように多段充電プロトコルに予め設定されたSOC範囲におけるバッテリーの負極のdV/dQを例示している。第2のグラフの特定領域R1を拡大して示す
図4cを参照すると、グラフの線図の傾向(傾き)が急激に変化する点(例えば、極小点、極大点)に対応する急変点R2がプロットされている。急変点R2は、負極上にリチウムが析出して負極のdV/dQが急激に変化する点に対応し得る。
【0111】
プロセッサ130は、そのような急変点R2を把握するように構成され得る。このとき、前記プロセッサ130は、このような急変点R2を把握するために、メモリ120にアクセスして関連データを読み出したり、関連する数式や演算過程などを実行したりし得る。
【0112】
プロセッサ130は、バッテリーが充電されている間、一定時間間隔で負極のdV/dQを認識し得る。プロセッサ130は、認識したdV/dQに基づいて、dV/dQ値が変化する傾向を識別し得る。プロセッサ130は、一定時間間隔で負極のdV/dQを認識する過程で、dV/dQの変化量が急激である点を識別し得る。例えば、プロセッサ130は、一定時間間隔でdV/dQを表す情報を取得し、以前のdV/dQからの変化量を算出し得る。プロセッサ130は、dV/dQ値が、以前のdV/dQ値から閾値以上の変化量だけ減少し、その後は、dV/dQ値が、閾値以上の変化量だけ増加する、特定の点を急変点R2として検出し得る。急変点R2は、負極に析出するリチウムにより、前述のdV/dQの急変が生じるSOCに関連する。
【0113】
また、急変点R2は、第1の充電率を用いた定電流充電及び一時的な放電手順を経た後 、前記一時的な放電手順の実行によるSOC低下量を補償するために決定された前記調整された第2の充電率で定電流充電を実行する間にバッテリーの負極でリチウムが析出するSOCであり、前記一時的な放電手順なしで第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する場合にリチウム析出が発生するもので、所定の第2の基準SOC(例えば、62.1%)よりも高いSOCであり得る。すなわち、プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電手順の終了時に、第2の充電率を用いた定電流充電手順の代わりに、一時的な放電手順及び調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行するように多段充電プロトコルを変更することにより、バッテリーの充電中に生じるリチウム析出を遅延させることができ、バッテリーを高い効率で充電することができる。
【0114】
また、プロセッサ130は、公知の様々なバッテリー状態検出アルゴリズムなどを活用して、バッテリーの使用程度(例えば、充放電サイクル数、容量保持率)を認識し、認識した使用程度に基づいてバッテリーを放電する時間の長さを決定し得る。例えば、バッテリーの繰り返し使用によってバッテリーが劣化するにつれて、バッテリーの負極に析出するリチウムの量が増加する可能性がある。析出するリチウムの量が増加すると、バッテリーが放電される第2の区間P2の時間の長さを長くする必要がある。
【0115】
プロセッサ130は、バッテリーの使用程度(例えば、充放電サイクル数、劣化度)が閾値より大きいと認識する場合、一時的な放電手順の時間長を設定時間(例えば、5秒)より長い時間(例えば、6秒)に決定し得る。あるいは、プロセッサ130は、バッテリーの使用程度が閾値より小さいと認識する場合、一時的な放電手順の時間長を設定時間(例えば、5秒)と同じかより短い時間(4秒)に決定し得る。プロセッサ130は、バッテリーの充放電サイクル数が閾値を超える場合、バッテリーの放電時間を増加させて6秒間放電し、バッテリーの充放電サイクル数が閾値以下である場合、一時的な放電手順の時間長を設定時間に対応する5秒に決定し得る。前記数値は例示的なものであり、限定的に解釈されるものではない。
【0116】
本発明のこのような実施構成によれば、バッテリーが充電されている間に所定時間放電し、放電によるSOCの変化量を補償できる充電率で充電を再開することで、予め設定された充電スケジュールに応じてバッテリーの充電を完了することができる。また、本発明のこのような実施構成によれば、析出したリチウムが除去されることにより、バッテリーのSOCをより正確に予測することができる。さらに、バッテリーの劣化度に応じて放電時間を制御することにより、充電効率及びSOC予測の精度をさらに向上させることができる。
【0117】
本発明によるバッテリー制御装置100は、バッテリーパックに適用することができる。すなわち、本発明によるバッテリーパックは、上述した本発明によるバッテリー制御装置100を含み得る。また、本発明によるバッテリーパックは、本発明によるバッテリー制御装置100の他に、バッテリーパックに通常含まれる構成要素、例えば、1つ以上のバッテリー、バッテリー管理システム(BMS:battery management system)、電流センサー、リレー、ヒューズ、パックケースなどをさらに含み得る。この場合、バッテリーパックに含まれる二次電池が、本発明によるバッテリー制御装置100が制御する対象、すなわち対象電池であり得る。また、本発明によるバッテリー制御装置100の少なくとも一部の構成要素は、バッテリーパックに含まれる従来の構成要素によって実現され得る。例えば、本発明によるバッテリー制御装置100の測定部110は、バッテリーパックに含まれる電圧センサーによって実現され得る。また、本発明によるバッテリー制御装置100のプロセッサ130の少なくとも一部の機能や動作は、バッテリーパックに含まれるBMSによって実現され得る。
【0118】
また、本発明によるバッテリー制御装置100は、電気車両に適用することができる。すなわち、本発明による電気車両は、上述した本発明によるバッテリー制御装置100を含み得る。特に、電気車両の場合、バッテリーパックは駆動源として非常に重要な構成要素であるため、本発明によるバッテリー制御装置100をより有用に適用することができる。また、本発明による電気車両は、このようなバッテリー制御装置100の他に、他の様々な装置、例えば、車体、ECUなどの車両制御ユニット、モータ、接続端子、DC-DCコンバータなどをさらに含み得る。この他に、本発明による電気車両は、電気車両に通常含まれる構成要素をさらに採用できることは言うまでもない。
【0119】
図5は、本発明の他の実施形態によるバッテリー制御方法を概略的に示すフローチャートである。
図5の方法は、外部充放電器等からバッテリーの充電手順の開始を知らせるメッセージをバッテリー制御装置100が受信したことに応答して実行され得る。
図5において、各ステップの主体は、前述した本発明によるバッテリー制御装置100の各構成要素とすることができる。説明の便宜上、
図5の方法が開始される時点におけるバッテリーのSOCは、第1の基準SOC未満であると仮定する。
【0120】
図1~
図5を参照すると、ステップS510において、プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電手順を実行する。例えば、プロセッサ130は、第1の充電率に対応する大きさの充電電流の供給を外部充放電器に要求し得る。
【0121】
ステップS520において、プロセッサ130は、測定部110から受信したバッテリーの電圧を示す電圧測定値に基づいて決定されるバッテリーのSOCが、第1の基準SOCに到達したか否かを判定する。バッテリーの電圧測定値は、バッテリーが第1の充電率で充電されている間、測定部110によって周期的にまたは所定時間間隔で測定され得る。
【0122】
第1の基準SOCは、バッテリーが第1の充電率を用いた定電流充電手順が行われる場合に、バッテリーの負極上におけるリチウム析出を防止するために予め設定された値である。例えば、第1の基準SOCは、バッテリーのSOCが第1の基準SOCより低いときから第1の充電率で定電流充電を行い続けた場合に、バッテリーの負極でリチウム析出が発生し始めるか、またはリチウム析出の深刻度が一定レベルまで高くなると予測されるSOC値または予め設定されたSOC値であり得る。
【0123】
ステップS520の値が「Yes(はい)」である場合、ステップS530に進む。ステップS520の値が「No(いいえ)」である場合、プロセッサ130は、ステップS510に戻り、第1の充電率を用いた定電流充電手順を継続する。
【0124】
ステップS530において、プロセッサ130は、一時的な放電手順を実行する。すなわち、ステップS530では、第1の充電率を用いた定電流充電手順から一時的な放電手順に切り替わる。一時的な放電手順は、所定時間、所定の大きさの定電流で実行され得る。すなわち、第1の充電率を用いた定電流充電手順と第2の充電率を用いた定電流充電手順との間でバッテリーは放電される。バッテリーが放電されると、バッテリーの負極上に析出したリチウムの少なくとも一部が除去され得る。
【0125】
ステップS540において、プロセッサ130は、第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する。すなわち、ステップS540では、一時的な放電手順から第2の充電率を用いた定電流充電手順に切り替わる。
【0126】
ステップS550において、プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達したか否かを判定する。ステップS540の値が「Yes(はい)」である場合、
図5の方法は終了し得る。ステップS550の値が「No(いいえ)」である場合、プロセッサ130は、ステップS540に戻り、第2の充電率を用いた定電流充電手順を継続する。
【0127】
図5は、バッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達する時点で終了することを図示しているが、これは一例に過ぎない。仮に、多段充放電手順が3つ以上の定電流充電手順を含む場合、追加の定電流充電手順や定電圧充電手順が続いて実行され得る。
【0128】
図6は、本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー制御方法を概略的に示すフローチャートである。
図6の方法は、外部充放電器等からバッテリーの充電手順の開始を知らせるメッセージをバッテリー制御装置100が受信したことに応答して実行され得る。
図6において、各ステップの主体は、前述した本発明によるバッテリー制御装置100の各構成要素とすることができる。説明の便宜上、
図6の方法が開始される時点におけるバッテリーのSOCは、第1の基準SOC未満であると仮定する。
【0129】
図1~
図4及び
図6を参照すると、ステップS610において、プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電手順を実行する。
【0130】
ステップS620において、プロセッサ130は、測定部110から受信したバッテリーの電圧を示す電圧測定値に基づいて決定されるバッテリーのSOCが、第1の基準SOCに到達したか否かを判定する。バッテリーの電圧測定値は、バッテリーが第1の充電率で充電されている間、測定部110によって周期的にまたは所定時間間隔で測定され得る。
【0131】
第1の基準SOCは、バッテリーが第1の充電率を用いた定電流充電手順が行われる場合に、バッテリーの負極上におけるリチウム析出を防止するために予め設定された値である。例えば、第1の基準SOCは、バッテリーのSOCが第1の基準SOCより低いときから第1の充電率で定電流充電を行い続けた場合に、バッテリーの負極でリチウム析出が発生し始めるか、またはリチウム析出の深刻度が一定レベルまで高くなると予測されるSOC値または予め設定されたSOC値であり得る。
【0132】
ステップS620の値が「Yes(はい)」である場合、ステップS624に進む。ステップS620の値が「No(いいえ)」である場合、プロセッサ130は、ステップS610に戻り、第1の充電率を用いた定電流充電手順を継続する。
【0133】
ステップS624において、プロセッサ130は、バッテリーの一時的な放電手順を実行する必要があるか否かを判定する。プロセッサ130は、バッテリーの使用程度に基づいて、一時的な放電手順を実行する必要性を決定し得る。例えば、バッテリーの使用程度が閾値以上である場合、ステップS624の値は「Yes(はい)」となり、そうでない場合、ステップS624の値は「No(いいえ)」と出力され得る。ステップS624の値が「Yes(はい)」である場合、ステップS630に進む。ステップS624の値が「No(いいえ)」である場合、ステップS640に進み得る。
【0134】
これに関連して、電流衝撃の大きさが同じであっても、バッテリーの劣化が進むにつれて、バッテリーの内部損傷が大きくなる。このような劣化特性を考慮して、一時的な放電手順を実行する必要があると判定された場合、プロセッサ130は、(i)バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、一時的な放電手順の時間長を決定する動作、及び(ii)バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、一時的な放電手順のための定電流の大きさを決定する動作の少なくとも一方を実行し得る。すなわち、バッテリーの使用程度が増加するにつれて(すなわち、バッテリーの劣化が進むにつれて)、一時的な放電手順の時間長及び定電流(放電電流)の大きさは、連続的または離散的に減少する。前記負の相関は、バッテリーの使用程度を入力変数とし、一時的な放電手順の時間長及び放電電流の大きさの少なくとも一方を出力する所定の関数として定義され得る。
【0135】
これにより、第1の充電率に関連する定電流充電手順から一時的な放電手順への移行時にバッテリーに加わる電流衝撃(すなわち、第1の充電率と放電電流の大きさとの差)のレベル、及び、一時的な放電手順から第2の充電率に関連する定電流充電手順への移行時にバッテリーに加わる電流衝撃(すなわち、放電電流の大きさと調整された第2の充電率との差)のレベルが、バッテリーの劣化に伴って緩和されるという技術的利点がある。
【0136】
ステップS630において、プロセッサ130は、一時的な放電手順を実行する。例えば、プロセッサ130は、一時的な放電手順の放電情報に合わせて、バッテリーに放電電流を流すことを外部充放電器に要求し得る。
【0137】
ステップS640において、プロセッサ130は、第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する。
【0138】
ステップS650において、プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達したか否かを判定する。ステップS650の値が「Yes(はい)」である場合、
図6の方法は終了し得る。ステップS650の値が「No(いいえ)」である場合、プロセッサ130は、ステップS640に戻り、第2の充電率を用いた定電流充電手順を継続する。
【0139】
図6は、バッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達する時点で終了することを図示しているが、これは一例に過ぎない。仮に、多段充放電手順が3つ以上の定電流充電手順を含む場合、追加の定電流充電手順や定電圧充電手順が続いて実行され得る。
【0140】
一時的な放電手順を無条件に実行した
図5の前述の実施形態とは異なり、
図6の前述の実施形態は、一時的な放電手順をバッテリーの使用程度に応じて選択的に実行し得るという点で異なる。
【0141】
図7は、本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー制御方法を概略的に示すフローチャートである。
図7の方法は、外部充放電器等からバッテリーの充電手順の開始を知らせるメッセージをバッテリー制御装置100が受信したことに応答して実行され得る。
図7において、各ステップの主体は、前述した本発明によるバッテリー制御装置100の各構成要素とすることができる。説明の便宜上、
図7の方法が開始される時点におけるバッテリーのSOCは、第1の基準SOC未満であると仮定する。
【0142】
図1~
図4及び
図7を参照すると、ステップS710において、プロセッサ130は、第1の充電率を用いた定電流充電手順を実行する。
【0143】
ステップS720において、プロセッサ130は、測定部110から受信したバッテリーの電圧を示す電圧測定値に基づいて決定されるバッテリーのSOCが、第1の基準SOCに到達したか否かを判定する。バッテリーの電圧測定値は、バッテリーが第1の充電率で充電されている間、測定部110によって周期的にまたは所定時間間隔で測定され得る。
【0144】
第1の基準SOCは、バッテリーが第1の充電率を用いた定電流充電手順が行われる場合に、バッテリーの負極上におけるリチウム析出を防止するために予め設定された値である。例えば、第1の基準SOCは、バッテリーのSOCが第1の基準SOCより低いときから第1の充電率で定電流充電を行い続けた場合に、バッテリーの負極でリチウム析出が発生し始めるか、またはリチウム析出の深刻度が一定レベルまで高くなると予測されるSOC値または予め設定されたSOC値であり得る。
【0145】
ステップS720の値が「Yes(はい)」である場合、ステップS724に進む。ステップS720の値が「No(いいえ)」である場合、プロセッサ130は、ステップS710に戻り、第1の充電率を用いた定電流充電手順を継続する。
【0146】
ステップS724において、プロセッサ130は、バッテリーの一時的な放電手順を実行する必要かあるか否かを判定する。プロセッサ130は、バッテリーの使用程度に基づいて、一時的な放電手順を実行する必要性を決定し得る。例えば、バッテリーの使用程度が閾値以上である場合、ステップS724の値は「Yes(はい)」となり、そうでない場合、ステップS724の値は「No(いいえ)」と出力され得る。ステップS724の値が「Yes(はい)」である場合、ステップS726に進む。ステップS724の値が「No(いいえ)」である場合、ステップS742に進み得る。
【0147】
これに関連して、一時的な放電手順を実行する必要があると判定された場合に、(i)バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、一時的な放電手順の時間長を決定する動作、及び(ii)バッテリーの使用程度に対して連続的または離散的な負の相関を有するように、一時的な放電手順のための定電流の大きさを決定する動作の少なくとも一方が実行され得ることは、
図6を参照して前述したものと共通する。
【0148】
ステップS726において、プロセッサ130は、一時的な放電手順の放電情報に基づいて、調整された第2の充電率を決定する(数式2参照)。調整された第2の充電率は、多段充電プロトコルデータに基づく元の第2の充電率とは異なる。
【0149】
ステップS730において、プロセッサ130は、一時的な放電手順を実行する。
【0150】
ステップS740において、プロセッサ130は、調整された第2の充電率(ステップS726で決定)を用いた定電流充電手順を実行する。
【0151】
ステップS742において、プロセッサ130は、第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行する。
【0152】
ステップS750において、プロセッサ130は、バッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達したか否かを判定する。ステップS750の値が「Yes(はい)」である場合、
図7の方法は終了し得る。ステップS750の値が「No(いいえ)」である場合、プロセッサ130は、ステップS740またはステップS742に戻り、第2の充電率を用いた定電流充電手順を継続する。ここで、ステップS724の値が「Yes(はい)」と判定され、ステップS750の値が「No(いいえ)」と判定された場合には、ステップS740に戻る一方、ステップS724及びステップS750の値が両方とも「いいえ」と判定された場合には、ステップS742に戻り得る。
【0153】
図7は、バッテリーのSOCが第2の基準SOCに到達した時点で終了することを図示しているが、これは一例に過ぎない。仮に、多段充電手順が3つ以上の定電流充電手順を含む場合、追加の定電流充電手順や定電圧充電手順が続いて実行され得る。
【0154】
一時的な放電手順を無条件に実行した
図5の前述の実施形態とは異なり、
図7の前述の実施形態は、一時的な放電手順が必要な場合に、多段充電プロトコルデータに含まれる元の第2の充電率の代わりに、前記調整された第2の充電率を用いた定電流充電手順を実行したという点で異なる。
【0155】
以上説明した本発明の実施形態は、装置および方法によってのみ実現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体によって実現されてもよい。このような実現は、上述した実施形態の記載から本発明が属する技術分野の専門家であれば容易に実現できるものである。
【0156】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
また、以上で説明した本発明は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるため、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるのではなく、様々な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。